説明

ガスタービン

【課題】 蒸気冷却方式のガスタービンにおいて、ロータ内部とタービン部のガスパスとの間のシール性を向上して冷却蒸気の漏洩を防止すると共に、ロータディスク間の温度分布の不均一性に対しても対応できるシール構造を提供することを課題とする。
【解決手段】 軸方向に並べられた複数のロータディスクを有するガスタービンにおいて、隣接するロータディスク間で互いに向き合って張り出された一対の環状のディスクランドと、ディスクランドにそれぞれ接続された一対の環状の接合部材と、両端が一対の接合部材に一体的に形成された環状の弾性部材とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインドサイクル発電プラント等に採用される蒸気冷却方式のガスタービンにおいて、冷却蒸気の漏洩を防止すべくロータディスク間を密閉するシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインドサイクル発電プラントは、ガスタービンプラントと蒸気タービンプラントを組み合わせた発電プラントであり、熱エネルギーの高温域をガスタービンで、また、低温域を蒸気タービンでそれぞれ分担して受持ち、熱エネルギーを有効に回収し、利用するようにしたものであり、近年特に脚光を浴びている発電プラントである。
【0003】
このようなコンバインドサイクル発電プラントにおいては、トッピングサイクルのガスタービンを冷却する手法が技術開発の一つの大きなテーマであり、より効果的な冷却手法を求めて試行錯誤が重ねられた結果、冷媒として圧縮空気を使用した空気冷却方式から、ボトミングサイクルで得られる蒸気を使用する蒸気冷却方式へと進展している状況にある。
【0004】
一方、蒸気冷却方式を採用するに際しては、冷却媒体である蒸気が経路の途中で漏洩するのを極力防止することが大切であり、そのためのシール構造も種々改良が重ねられている。
【0005】
従来のガスタービンにおけるロータディスク間のシール構造について図11、図12、図13に基づいて説明する。
【0006】
同図に示す構造のものは、冷却媒体として圧縮空気を採用したものに対して使用が始まり、その後の蒸気冷却方式に際しても一部において用いられて来たものである。
【0007】
タービン部のロータは、図11、図12に示すように複数(通常4組程度)のロータディスク1で構成されている。そしてロータ内部2の冷却媒体3がタービン部のガスパス4に流出するのを防ぐとともに、タービン部のガスパス4を流れている高温ガス5がロータ内部2に流入するのを防ぐために、図13に示すようなシール構造が採用されている。
【0008】
即ち、図13に示すように、隣接するロータディスク1の対峙面に回転軸を囲んで互いに向き合うように環状の突出部であるディスクランド50を形成し、これ等ディスクランド50の突端面に周方向に沿う溝51をそれぞれ設けて、この溝51の周方向2分割あるいは4分割のシール板(バッフルプレート)52を挿入し、回転による遠心力でこのバッフルプレート52を溝51の外側に押付けてシールするように構成されている。(例えば、特許文献1参照)
なお、図11中、6はボルト孔、7はボルトである。
【0009】
【特許文献1】特開平11−257015号公報(第1頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のガスタービンにおけるロータディスク間のシール構造にあっては、回転による遠心力でロータディスク1のディスクランド50に設けた溝51の外側にバッフルプレート52を押し付けてシールするように構成されているが、ロータディスク1間に温度差があるので溝51の半径方向伸び差が異なっている。また、遠心力による半径方向伸びにもロータディスク1間で差が生じる。
【0011】
一方、バッフルプレート52は一定の剛性を持っているので、前記伸び差のためにロータディスク1間のディスクランド50の溝51の外側にきちんと押し付けられなくなり、溝51とバッフルプレート52との間に微小な隙間ができる。
【0012】
この結果、ロータ内部2の冷却媒体3がタービン部のガスパス4に流出したり、更にこの流出に止まらず、この微小な隙間を漏れる流れにより、バッフルプレート52が自励振動を起こしてバッフルプレート52自体が摩耗減肉する等の問題がある。
【0013】
従ってこの様な形式のものは、冷却媒体3が圧縮空気の場合はともかく、冷却媒体3として蒸気を用いるガスタービンへの適用は、排ガスボイラ等のボトミングサイクルからの蒸気が大量に失われるために、効率上の損失が大きく、併せてメイキャップ蒸気量が増加する等のことからして、プラントの成立性にかかわる大きな問題点を含んでいる。
【0014】
本発明はこの様な従来のものにおける問題点を解消し、ロータ内部とタービン部のガスパスとの間のシール性を向上して、蒸気冷却方式の実現性を大きく前進させたシール構造を有するガスタービンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その第1の手段として、軸方向に並べられた複数のロータディスクを有するガスタービンにおいて、隣接するロータディスク間で互いに向き合って張り出された一対の環状のディスクランドと、該ディスクランドにそれぞれ接続された一対の環状の接合部材と、両端が該一対の接合部材に一体的に形成された環状の弾性部材とを備えたことを特徴とする。
【0016】
第2の手段としては、第1の手段のガスタービンにおいて、前記接合部材の前記ディスクランドとの接合部の軸方向断面形状がコの字型に形成されていることを特徴とする。
【0017】
第3の手段としては、第2の手段のガスタービンにおいて、前記ディスクランドと前記接合部材との接合部にネジ部が形成され、該ネジ部の奥に窪みが形成されたことを特徴とする。
【0018】
第4の手段としては、第2の手段のガスタービンにおいて、前記ディスクランドと前記接合部材とが複数のボルトにより接続されたことを特徴とする。
【0019】
第5の手段としては、第1の手段のガスタービンにおいて、前記ディスクランドと前記接合部材との接合面は、階段状シール面とギヤ構造部とを有し、且つ、前記ディスクランドと前記接合部材とが複数の通しボルトナットにより接合されていることを特徴とする。
【0020】
上述の第1の手段、第2の手段、第3の手段、第4の手段または第5の手段のガスタービンによれば、ガスタービンディスク間のシールを行う中間に弾性部材は、環の伸長方向、換言すれば周方向で蛇腹状の弾性による構成であるために、遠心力による周方向の応力を発生することなしにロータディスクの熱伸びに追従して伸びるため、シール性が確実に維持される。
【発明の効果】
【0021】
上述の請求項1〜請求項5記載のガスタービンによれば、ガスタービンディスク間のシールを行う中間に弾性部材は、環の伸長方向、換言すれば周方向で蛇腹状の弾性による構成であるために、遠心力による周方向の応力を発生することなしにロータディスクの熱伸びに追従して伸びるため、シール性が確実に維持され、以て蒸気冷却方式の採用の実現性を大幅に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態を説明するための参考となる第1の検討例に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す断面図、図2は参考となる第1の検討例に係わるシールリングの正面図(a)及び断面図(b)である。
【0024】
図3は参考となる第2の検討例に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す断面図、図4は参考となる第3の検討例に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す断面図、図5は参考となる第2、3の検討例に係わるシールリングの正面図(a)及び断面図(b)である。
【0025】
図6は本発明の第1の実施の形態に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す断面図、図7は本発明の第2の実施の形態に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す断面図、図8は本発明の第3の実施の形態に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す断面図である。
【0026】
図9は本発明の第4の実施の形態に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す断面図、図10は本発明の第4の実施の形態に係わるガスタービンロータディスクのボルト孔及びギア構造を概略的に示す説明図である。
【0027】
第1の検討例に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を図1、図2に基づき説明する。
【0028】
なお、第1の検討例に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造は、従来のものと同様に対峙するロータディスク1間に、ロータ内部2の冷却媒体3(蒸気)がタービン部のガスパス4に流出するのを防ぐとともに、タービン部のガスパス4を流れている高温ガス5がロータ内部2に流入するのを防ぐために設けられている。
【0029】
また、第1の検討例に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造は、従来のものがバッフルプレート52を用いてシールを行っていたのに対して、継ぎ目の無い一材型の環状のシールリングを採用し、かつ同環状のシールリングの固定に工夫を行ったものである。
【0030】
図1に示すように、ロータディスク1、1間の対峙する側には、各々環状のディスクランド10、10が互いに向き合って張り出している。また、各々ディスクランド10、10の回転軸中心側の面にはネジ部12が形成されている。
【0031】
そして、各々のディスクランド10、10には、それぞれ環状の接合部材11、11が接合されている。
【0032】
一方の接合部材11のディスクランド10との接合部のロータ軸方向断面形状はコの字型で、その内端にはネジ部12を有しており、かつネジ部12の奥には螺入時に拡張して螺入後には狭小化するような弾性を持たせるために円状の窪み13が設けられている。
【0033】
また、一方の接合部材11の非接合側には、円環状のシールリング台座14a、およびシールリング保持部材15がロータ軸方向断面八の字状に突出して形成されている。
【0034】
他方の接合部材11のディスクランド10との接合部のロータ軸方向断面形状もコの字型で、上記の一方の接合部材11と同様にネジ部12、円状の窪み13が設けられている。
【0035】
また、他方の接合部材11の非接合側にも、円環状のシールリング台座14bが突出して形成されている。
【0036】
そして、断面形状が円形或いは楕円状のシールリング16が、上述の3個のシールリング台座14a、14b、およびシールリング保持部材15に囲まれるように、シールリング台座14a、14bの内壁面17、およびシールリング保持部材15の内壁面17に当接して配置されている。
【0037】
このシールリング16は、図2に示すように、継ぎ目の無い単一部材で形成されると共に内部が中空で連続した環状体となっている。なお、この環状のシールリング16のスリーブの外径の一例としては24mmである。
【0038】
このように構成されたガスタービンのシール構造では、ロータディスク1の回転とともにシールリング16も回転して遠心力が生じて、2個のシールリング台座14a、14bの内壁面17に確実に当接し、隣接するロータディスク1、1相互間のシールが行われる。
【0039】
なお、シールリング16は環状体として周方向に構成されているので、遠心力による周方向応力を緩和するとともに、ロータディスク1の熱伸びに対して追従させることができ、このシールリング16と内壁面17との間に隙間をつくるようなことはない。また相隣接するロータディスク1、1の間に熱伸び差があっても熱伸びの大きい方にシールリング16が移動する為問題とはならず、この位置で確実なシールを行うことができるものである。
【0040】
また、このシールリング16の自重を増加させることにより、遠心力によるシール面圧を増加させ、より一層の確実なシールをすることができる。
【0041】
次に、第2の検討例にかかるガスタービンロータディスク1間のシール構造について図3、図5を用いて説明する。
【0042】
なお、図3においては、第1の検討例と同一の部位については同一の符号を付して示している。また、第1の検討例と同一の部位についての説明は省略して、第1の検討例との相違点について重点的に説明する。
【0043】
第1の検討例と異なる点は、ロータ軸方向断面形状が円形或いは楕円状のシールリング16に代えて、ロータ軸方向断面形状がタービンの回転軸中心側を扁平にした断面半円状のシールリング18を配設したことにある。
【0044】
図3に示すように、断面半円状のシールリング18は、一方の接合部材11のシールリング台座14a、シールリング保持部材15、及び他方の接合部材11のシールリング台座14bの3個の内壁面17に囲まれるように配置されている。
【0045】
そして、シールリング18の回転軸中心側の扁平部分は、シールリング保持部材15に面で接するようになっている。
【0046】
また、シールリング18は、図5に示すように、継ぎ目の無い単一部材で形成されると共に内部が中実で連続した環状体となっている。
【0047】
このように構成されたシール構造では、第1の検討例のものと同様に、ロータ部の回転とともにシールリング18も回転して遠心力が生じて、2個のシールリング台座14a、14bの内壁面17に確実に当接し、隣接するロータディスク1、1相互間のシールが行われる。
【0048】
第3の検討例にかかるガスタービンロータディスク間のシール構造について図4を用いて説明する。
【0049】
なお、図4において、第1の検討例、或いは第2の検討例と同一の部位については同一の符号を付して示している。また、第1の検討例或いは第2の検討例と同一の部位についての説明は省略して、相違点について重点的に説明する。
【0050】
図4に示すように、第2の検討例における一方の接合部材11に代えて、シールリング保持部材15を省略し、シールリング台座14aのみを有する接合部材19がディスクランド10に接合されている。
【0051】
そして、図5に示すような内部が中実で連続した環状体のシールリング18が、接合部材19、11のシールリング台座14a、14bの内壁面17に密着して当接させて配置されている。
【0052】
さて、本発明の第1の実施の形態にかかるガスタービンロータディスク間のシール構造について図6を用いて説明する。
【0053】
なお、図6において、第1、2、3の検討例と同一の部位については同一の符号を付して示している。また、第1、2、3の検討例と同一の部位についての説明は省略して、第1、2、3の検討例との相違点について重点的に説明する。
【0054】
図6に示すように、ロータディスク1間の対峙する側には、各々ディスクランド10、20が互いに向き合って張り出している。
【0055】
そして、このディスクランド10、20間に、環状の接合部材21、22が配設されている。
【0056】
一方の接合部材21は、第1、2、3の検討例における接合部材11と同様に、ディスクランド10との接合する側のロータ軸方向断面形状がコの字型で、内面にネジ部12を有し、ネジ部12の奥には接合時は拡張して螺入後には狭小化するような弾性を持たせるための円状の窪み13が設けられている。
【0057】
他方の接合部材22は、ロータ軸方向断面形状がコの字型で、ネジ部がなく、奥に接合時に拡張して接合後には狭小化するような弾性を持たせるための円状の窪み13が設けられている。
【0058】
そして、一方の接合部材21と他方の接合部材22との中間部には、蛇腹状の弾性部材23が周方向に形成されている。
【0059】
なお、接合部材21、22および蛇腹状の弾性部材23は、継ぎ目の無い同一部材により環状体として周方向に一体的に形成しても良く、あるいは、接合部材21、22と蛇腹状の弾性部材23とを別の部材で各々製造し、その後溶接等により接合しても良い。
【0060】
上述のごとく、接合部材21、22および蛇腹状の弾性部材23からなるシール部材は、一方のディスクランド10へネジにより螺入すると共に、他方のディスクランド20へ嵌め込まれる。なお、シール部材の組み立て時には、他方のディスクランド20を超低温に冷却して、接合部材22が嵌め込まれる。
【0061】
そして、タービンが回転すると、蛇腹状の弾性部材23により遠心力による周方向応力は緩和されとともに、ロータディスク1の熱伸びに対して追従させることができる。したがって、この位置に隙間をつくるようなことはなく、また相隣接するロータディスク1の間に熱伸び差があっても蛇腹状の弾性部材23により吸収されるため問題とはならず、この位置で確実なシールを行うことができるものである。
【0062】
次に、本発明の第2の実施の形態にかかるガスタービンロータディスク1間のシール構造について図7を用いて説明する。
【0063】
なお、図7において、第1の実施の形態と同一の部位については同一の符号を付して示している。また、第1の実施の形態と同一の部位についての説明は省略して、相違点について重点的に説明する。
【0064】
本発明の第2の実施の形態のものは、第1の実施の形態に対し、図7に示すように、両方のディスクランド及び接合部材ともネジを省略したものである。
【0065】
すなわち、隣接するロータディスク1、1相互間で互いに向き合って張り出したディスクランド20、20には接合部材22、22が嵌め込まれている。そして、接合部材22、22間には、蛇腹状の弾性部材23が接合部材22、22と一体的に形成されている。
【0066】
なお、接合部材22、22および蛇腹状の弾性部材23も、継ぎ目の無い同一部材により環状体として周方向に一体的に形成しても良く、あるいは、接合部材22、22と蛇腹状の弾性部材23とを別の部材で各々製造し、その後溶接等により接合しても良い。
【0067】
また、シール部材の組み立て時には、ディスクランド20、20を超低温に冷却して、接合部材22、22が嵌め込まれる。
【0068】
このように、両方の接合部材22、22は各々ディスクランド20、20へ冷し嵌めされ、かつ接合部材22、22の中間には、継ぎ目の無い一材からなる蛇腹状の弾性部材23が設けられており、遠心力による周方向応力を緩和するとともに、ロータディスク1の熱伸びに対して追従させることができ、この位置に隙間をつくるようなことはなく、また相隣接するロータディスク1の間に熱伸び差があっても蛇腹状の弾性部材23により吸収されるため問題とはならず、この位置で確実なシールを行うことができるものである。
【0069】
なお、一方のディスクランド20と接合部材22との接合する面の半径方向の外側には、交互に軸方向の凸凹を有し、接合時にはディスクランド20側の凸凹形状と接合部材22の凹凸形状とがお互いに合致するようなギヤ構造部44aが円周方向に形成されている。
【0070】
次に、本発明の第3の実施の形態にかかるガスタービンロータディスク1間のシール構造について図8を用いて説明する。
【0071】
なお、図8において、第1、2の実施の形態と同一の部位については同一の符号を付して示している。また、第1、2の実施の形態と同一の部位についての説明は省略して、相違点について重点的に説明する。
【0072】
本発明の第3の実施の形態は、上記の本発明の第1の実施の形態における、ディスクランド10および接合部材21のネジ部12を廃止するとともに、他方のディスクランド20と接合部材22との冷や嵌めをも廃止し、代わりに、各ディスクランド30、30と接合部材31、31とを各ボルト32により固定するようにしたものである。
【0073】
図8に示すように、隣接するロータディスク1、1相互間で互いに向き合って張り出した環状のディスクランド30、30には、ロータ軸方向断面形状がコの字型の接合部材31、31が嵌め込まれている。そして、接合部材31、31間には、蛇腹状の弾性部材23が接合部材31、31と一体的に形成されている。
【0074】
そして、各ディスクランド30、30および各接合部材31、31は、周方向にボルト孔が設けられ、ボルト32を螺入させ締結されている。
【0075】
このように、両方の接合部材31、31はボルト32により各々ディスクランド30、30へ締結され、かつ接合部材31、31の中間には、継ぎ目の無い一材からなる蛇腹状の弾性部材23が設けられており、遠心力による周方向応力を緩和するとともに、ロータディスク1の熱伸びに対して追従させることができ、この位置に隙間をつくるようなことはなく、また相隣接するロータディスク1の間に熱伸び差があっても蛇腹状の弾性部材23により吸収されるため問題とはならず、この位置で確実なシールを行うことができるものである。
【0076】
次に、本発明の第4の実施の形態にかかるガスタービンロータディスク間のシール構造について図9、図10を用いて説明する。
【0077】
なお、図9において、第3の実施の形態と同一の部位については同一の符号を付して示している。また、第3の実施の形態と同一の部位についての説明は省略して、相違点について重点的に説明する。
【0078】
本発明の第4の実施の形態は、上記の本発明の第3の実施の形態に対し、ディスクランド40と接合部材41とをボルトナット42により接合するようにしたものである。
【0079】
図9に示すように、隣接するロータディスク1、1相互間で互いに向き合って張り出したディスクランド40、40には接合部材41、41が接続されている。そして、接合部材41、41間には、第3の実施の形態と同様に蛇腹状の弾性部材23が接合部材41、41と一体的に形成されている。
【0080】
次に、ディスクランド40、40と接合部材41、41との接合構造につき詳細に説明する。
【0081】
ディスクランド40、40と接合部材41、41との接合する面の半径方向の外側には、接合時に互いに密着する階段状シール面43が円周方向に形成されている。
【0082】
そして、一方の半径方向内側には、交互に半径方向の凸凹を有し、接合時にはこれらの凸凹形状がお互いに隙間をおいて合致するようなギヤ構造部44が円周方向に形成されている。
【0083】
また、他方の半径方向内側には、交互に軸方向の凸凹を有し、接合時にはディスクランド40側の凸凹形状と接合部材41の凹凸形状とがお互いに合致するようなギヤ構造部44aが円周方向に形成されている。
【0084】
そして、ディスクランド40、40と接合部材41、41とには、階段状シール面43を横切るように複数組のボルト孔45が穿設されており、ディスクランド40、40と接合部材41、41とは複数の通しボルトナット42とにより接合されている。
【0085】
このように、ディスクランド40、40と接合部材41、41とは、凸凹形状のギヤ構造部44および通しボルトナット42により締結され、かつ継ぎ目の無い一材からなり中間には蛇腹状の弾性部材23を設けた環状体として周方向に構成されているので、遠心力による周方向応力を緩和するとともに、ロータディスク1、1の熱伸びに対して追従させることができ、この位置に隙間をつくるようなことはなく、また相隣接するロータディスク1、1の間に熱伸び差があっても蛇腹状の弾性部材23により吸収されるため問題とはならず、また階段状シール面43とによりこの位置で確実なシールを行うことができる。
【0086】
以上、本発明を図示の実施の形態について説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されず、本発明の範囲内でその具体的構造に種々の変更を加えてもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】参考となる第1の検討例に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す断面図である。
【図2】参考となる第1の検討例に係わるシールリングの正面図(a)及び断面図(b)である。
【図3】参考となる第2の検討例に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す断面図である。
【図4】参考となる第3の検討例に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す断面図である。
【図5】参考となる第2、3の検討例に係わるシールリングの正面図(a)及び断面図(b)である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す断面図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係わるガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係わるガスタービンロータディスクのボルト孔及びギア構造を概略的に示す説明図である。
【図11】従来のガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す説明図である。
【図12】従来のガスタービンロータディスク間のシール構造を概略的に示す説明図である。
【図13】従来のガスタービンにおけるロータディスク間のシール構造を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0088】
1 ロータディスク
2 ロータ内部
3 冷却媒体
4 ガスパス
5 高温ガス
6 ボルト孔
7 ボルト
10、20、30、40 ディスクランド
11、19、21、22、31、41 接合部材
12 ネジ部
13 窪み
14a、14b シールリング台座
15 シールリング保持部材
16、18 シールリング
17 内壁面
23 蛇腹状の弾性部材
32 ボルト
42 通しボルトナット
43 階段状シール面
44 ギヤ構造部
45 ボルト孔
50 ディスクランド
51 溝
52 バッフルプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に並べられた複数のロータディスクを有するガスタービンにおいて、隣接するロータディスク間で互いに向き合って張り出された一対の環状のディスクランドと、該ディスクランドにそれぞれ接続された一対の環状の接合部材と、両端が該一対の接合部材に一体的に形成された環状の弾性部材とを備えたことを特徴とするガスタービン。
【請求項2】
前記接合部材の前記ディスクランドとの接合部の軸方向断面形状がコの字型に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン。
【請求項3】
前記ディスクランドと前記接合部材との接合部にネジ部が形成され、該ネジ部の奥に窪みが形成されたことを特徴とする請求項2に記載のガスタービン。
【請求項4】
前記ディスクランドと前記接合部材とが複数のボルトにより接続されたことを特徴とする請求項2に記載のガスタービン。
【請求項5】
前記ディスクランドと前記接合部材との接合面は、階段状シール面とギヤ構造部とを有し、且つ、前記ディスクランドと前記接合部材とが複数の通しボルトナットにより接合されていることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−332973(P2007−332973A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218604(P2007−218604)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【分割の表示】特願2003−285031(P2003−285031)の分割
【原出願日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】