説明

ガスハイドレート製造装置

【課題】流水を利用した脱水器の水切り部の目詰まりを防止する。脱水器の安定した運転を実現すると共に定脱水率の運転を可能にする。
【解決手段】原料ガスgと水wを反応させてガスハイドレートnを生成し、該ガスハイドレートと水とが混合したガスハイドレートスラリーsを脱水器12によって水切りして低含水率のガスハイドレートを製造する装置である。前記脱水器12を、ガスハイドレートスラリーsの導入部18と、ガスハイドレートスラリーの水wを脱水する水切り部19と、水切り部で脱水されたガスハイドレートnを導出する導出部20からなる縦型筒状本体21と、前記水切り部19でガスハイドレートから分離した水wを集合する脱水集合部22により構成する。前記水切り部19の外面に沿って水wを流下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ガスと水とを反応させてガスハイドレートを生成し、このガスハイドレートを脱水器によって水切りして低含水率のガスハイドレートを製造するガスハイドレート製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、メタンなどの炭化水素を主成分とする天然ガスを貯蔵および輸送する方法として、ガス田から天然ガスを採取した後、液化温度まで冷却し、液化天然ガス(LNG)とした状態で貯蔵および輸送する方法が一般的に採られている。
【0003】
しかしながら、上記のように、天然ガスをLNGとして貯蔵し、または輸送するためには、多大の費用が必要になっている。
【0004】
従って、近年、天然ガスを水と水和させて固体状態の水和物、すなわち、天然ガスハイドレート(NGH)を生成し、そのままの状態で貯蔵、あるいは輸送することが検討されている。この天然ガスハイドレートは、比較的容易に得られる温度および圧力条件下において製造可能であり、そのため、製造、貯蔵および輸送コストが少なくなり、斯界から注目されている。
【0005】
ところで、天然ガスハイドレートは、原料ガスと水とを接触させて水和物として固体化させたものであるが、通常、多量の水を含んだスラリー状となる。したがって、このスラリー状の天然ガスハイドレートを貯蔵および輸送すれば、この貯蔵および輸送にかかるコストが膨大になってしまう。
【0006】
そこで、含水率の低い天然ガスハイドレートを生成し、その貯蔵や輸送にかかるコストを低減することを目的として、スラリー状の天然ガスハイドレートを脱水器に導入して、未反応水を脱水除去する必要がある。そして、この脱水器として、横型スクリュープレス型脱水装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−105362号(第7−10頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、このようなスクリュープレス型脱水装置は、メッシュ加工した内壁と、この内壁の外側にあって外殻を構成する筒体との二重構造になっており、内壁内に設置したスクリュー軸によってスラリー状の天然ガスハイドレートを強制的に前進させることによって内壁に加工したメッシュから水を除去するようにしている。
【0008】
このため、脱水中に天然ガスハイドレートの多くが水と一緒に内壁のメッシュ孔をすり抜け、結果的に天然ガスハイドレートの回収率が低下するという問題がある。
【0009】
また、スクリュー軸を高トルクで回転させるための動力費がかかるという問題がある。更に、内部が高圧の状態で高トルクを発生させるため、設備全体が過重になっており、スクリュー軸を高圧から大気圧の領域までシールする必要がある。
【0010】
このような問題を解決するため、本発明者らは、従来のような強制脱水ではなく、重力を利用した天然ガスハイドレートスラリーの脱水器について検討した。この脱水器1は、図4に示すように、ガスハイドートスラリーsを導入する導入部4と、ガスハイドレートスラリーsの水wを脱水する水切り部6と、該水切り部6で脱水されたガスハイドレートnを導出する導出部5からなる縦型筒状本体2と、前記水切り部6でガスハイドレートnから分離した水wを集合する脱水集合部3により構成したものである。
【0011】
しかし、このような脱水器を有するガスハイドレート製造装置は、水切り部6の脱水が設計通りに行われなくなる恐れがある。即ち、この水切り部6には、金網製の筒体、あるいは多孔筒を用いているが、ガスハイドレートの回収率や目詰まりを考慮すると、孔径は、0.1〜5mmの範囲内で設定するのがよい。
【0012】
ところが、このような小孔を有する水切り部6で長時間脱水していると、未反応の水wに含まれるガスハイドレートが小孔に詰まったり、あるいは金網製の筒体や多孔筒の外面部で新たに生成したガスハイドレートが金網製の筒体や多孔筒の小孔に堆積して小孔を塞ぐ恐れがある。
【0013】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、流水を利用した脱水器の水切り部の目詰まりを防止し、脱水器の安定した運転を実現するとともに、定脱水率の運転を可能にするためのガスハイドレート製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、次のように構成される。
【0015】
請求項1に記載の発明は、原料ガスと水とを反応させてガスハイドレートを生成し、該ガスハイドレートと水とが混合したガスハイドレートスラリーを脱水器によって水切りして低含水率のガスハイドレートを製造するガスハイドレート製造装置において、前記脱水器を、ガスハイドレートスラリーを導入する導入部と、ガスハイドレートスラリー中の水を脱水する水切り部と、該水切り部で脱水されたガスハイドレートを導出する導出部からなる縦型筒状本体と、前記水切り部でガスハイドレートから分離した水を集合する脱水集合部により構成すると共に、前記水切り部の外面に沿って水を流下させるように構成したことを特徴とするガスハイドレート製造装置である。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記水切り部に検出器を配置し、該検出器の信号に基づいて前記水切り部の外面に沿って水を流下させるように構成したことを特徴とする請求項1記載のガスハイドレート製造装置である。
【発明の効果】
【0017】
上記したように、請求項1に記載の発明は、原料ガスと水とを反応させてガスハイドレートを生成し、該ガスハイドレートと水とが混合したガスハイドレートスラリーを脱水器によって水切りして低含水率のガスハイドレートを製造するガスハイドレート製造装置において、前記脱水器を、ガスハイドレートスラリーを導入する導入部と、ガスハイドレートスラリー中の水を脱水する水切り部と、該水切り部で脱水されたガスハイドレートを導出する導出部からなる縦型筒状本体と、前記水切り部でガスハイドレートから分離した水を集合する脱水集合部により構成すると共に、前記水切り部の外面に沿って水を流下させるように構成したので、水切り部の小孔内にガスハイドレートが詰まったり、あるいはガスハイドレートが水切り部の外面に付着又は堆積してこの小孔を塞いだとしても、この水切り部の外面に沿って流下する水の作用によってガスハイドレートを容易に溶解することができる。
【0018】
そのため、脱水器の安定した運転を実現するとともに、定脱水率の運転が可能になるのである。もちろん、この水を必要により常時流下させることにより、水切り部の小孔の目詰まりや閉塞を防止することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載にガスハイドレート製造装置において、前記水切り部に検出器を配置し、該検出器の信号に基づいて前記水切り部の外面に沿って水を流下させるようにしたので、検出器によって水切り部に設けられた小孔の目詰まりや閉塞の状態を監視し、この目詰まりや閉塞が生じたときに、水を流下させて小孔に詰まったり、小孔を塞いでいるガスハイドレートを溶解させることができるため、効率的に、かつ、安定した脱水器の運転が実現できるとともに、定脱水率の運転が可能となるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0021】
図1において、11はガスハイドレート生成器、12はガスハイドレート生成器11で生成されたスラリー状のガスハイドレートsを脱水するための脱水器、13は脱水器12でほぼ脱水されたガスハイドレートnを次工程(図示せず)に横移送するガスハイドレート搬送装置である。
【0022】
ガスハイドレート生成器11は、耐圧容器14と、原料ガスである天然ガスgを気泡状に噴出するガス噴出ノズル15と、耐圧容器14内を攪拌する攪拌機16により構成されている。
【0023】
脱水器12は、ガスハイドレートスラリーsを導入する導入部18と、ガスハイドレートスラリー中の水wを脱水する水切り部19と、該水切り部19で脱水されたガスハイドレートnを導出する導出部20からなる縦型筒状本体21と、水切り部19でガスハイドレートnから分離した水wを集合する脱水集合部22により構成されている。
【0024】
この水切り部19は、金網製の筒体あるいは多孔筒体で構成され、その小孔23(図2参照。)の孔径は、0.1〜5mmの範囲内となるように形成されている。この孔径が0.1mm未満の場合は、目詰まりが発生し易くなる。逆に、5mmを超えると、ガスハイドレートが流失し易くなり、回収率が低下する。
【0025】
そして、脱水集合部22内の上部に、図1及び図2に示すように、円周方向に沿って複数の水噴射ノズル24を配置し、給水タンク25内の水(洗浄用清水)w’を給水ポンプ26によって給水ライン27から水噴射ノズル24に供給し、水噴射ノズル24から水切り部20の外面に向けて水w’を噴射するようにしている。
【0026】
図中、符号28は、未反応の水と洗浄用の水とが混ざった混合水w”をポンプ29によってガスハイドレート生成器11に戻すための戻しラインである。
【0027】
次に、上記のガスハイドレート製造装置の作用について説明する。
【0028】
上記のガスハイドレート生成器11において生成されたガスハイドレートnは、ガスハイドレートの濃度が20%程度のスラリー状である。このガスハイドレートスラリーsは、スラリーポンプ30により脱水器12の導入部18内に供給される。
【0029】
そして、その液面が水切り部19に達すると、ガスハイドレートスラリーs中の未反応の水wが水切り部19の小孔23から脱水集合部3内に排出(脱水)される。こうして含水率が約50〜55%となったガスハイドレートnは、脱水器12内を上昇して導出部5に至り、ここからガスハイドレート排出装置13により次工程に移送される。
【0030】
この水切り部19における脱水過程で粒子状のガスハイドレートの一部が未反応の水wに含まれて小孔23内を通過するが、上記の如く、水切り部19ー外面は、水噴射ノズル24から噴射する水(洗浄用清水)w’によって洗浄されているので、水切り部19の外面に沿って流下する水(洗浄用清水)w’の作用によって水切り部19の小孔23が詰まることがない。すなわち、小孔23の目詰まりを防止することができるのである。
【0031】
図3は、本発明に係るガスハイドレート製造装置の他の実施形態を示すものであり、図1や図2と同一部材には、同じ符号を付与し、詳しい説明を省略した。
【0032】
図3において、符号31は、水切り部19に配置した流量計等の検出器であり、この検出器31のオン・オフ信号により給水ポンプ26を作動又は停止するようにしている。33は、制御装置である。
【0033】
このようなガスハイドレート製造装置によれば、ガスハイドレート粒子によって水切り部19の小孔23が目詰まり又は閉塞したことを検出器31で検知し、このとき、給水ポンプ26を作動させて水(洗浄用清水)w’を水切り部20の外面に沿って流下させることにより、水切り部19の小孔23に詰まったり、あるいは閉塞させているガスハイドレート粒子を溶解除去することができる。
【0034】
したがって、給水ポンプ26を必要時のみ作動させるため、効率的で、かつ、安定した脱水器12の運転が実現できるとともに、定脱水率の運転が可能となる。
【0035】
なお、水切り部19の外面に噴射される水w’は、原料水や未反応の原料水の一部を用いても良い。また、その噴射量も必要に応じて、適宜、選択すればよい。すなわち、未反応の原料水wの中にガスハイドレートnが多く含まれるような状態においては、この原料水wをガスハイドレート生成器11に戻すための戻しライン28が閉鎖する恐れがある。したがって、このような状態が発生する恐れがあるときは、水(洗浄用清水)w’の噴射量を増大させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るガスハイドレート製造装置の概略構成図である。
【図2】脱水器の一部破断斜視図である。
【図3】本発明に係るガスハイドレート製造装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
【図4】重力を利用した脱水器の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
g 原料ガス
n ガスハイドレート
s ガスハイドレートスラリー
w 水
1,12 脱水器
4,18 導入部
6,19 水切り部
5,20 導出部
2,21 縦型筒状本体
3,22 脱水集合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスと水とを反応させてガスハイドレートを生成し、該ガスハイドレートと水とが混合したガスハイドレートスラリーを脱水器によって水切りして低含水率のガスハイドレートを製造するガスハイドレート製造装置において、前記脱水器を、ガスハイドレートスラリーを導入する導入部と、ガスハイドレートスラリー中の水を脱水する水切り部と、該水切り部で脱水されたガスハイドレートを導出する導出部からなる縦型筒状本体と、前記水切り部でガスハイドレートから分離した水を集合する脱水集合部により構成すると共に、前記水切り部の外面に沿って水を流下させるように構成したことを特徴とするガスハイドレート製造装置。
【請求項2】
前記水切り部に検出器を配置し、該検出器の信号に基づいて前記水切り部の外面に沿って水を流下させるように構成したことを特徴とする請求項1記載のガスハイドレート製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−111775(P2006−111775A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302131(P2004−302131)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】