説明

ガスバリアシート材、及び、ガスバリアシート材の製造方法

【課題】使用するアルミニウムを減少してゴミ処理の容易化を図ることができ、しかもホログラムの微細凹凸を高い精度で形成し、高温加熱することなく効率良く生産することができるガスバリアシート材、及び、ガスバリアシート材の製造方法を提供する。
【解決手段】シート状基材1上に、光硬化樹脂を塗布して光硬化樹脂層2を形成する光硬化樹脂層形成工程と、光硬化樹脂層上に、ホログラムの微細凹凸が形成された透光性の版フィルムを該微細凹凸が光硬化樹脂層に密着する状態で被せ、この状態で版フィルムを通して光照射することにより前記ホログラムの微細凹凸4´を光硬化樹脂層の表面に転写するとともに当該光硬化樹脂層を硬化させるホログラム微細凹凸転写工程と、該ホログラム微細凹凸転写工程の後、版フィルムを剥離する剥離工程と、基材の光硬化樹脂層側の面にアルミニウムを蒸着させてガスバリア層7を形成するガスバリア層形成工程と、を経て処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムなどのシート状基材の表面にホログラムを形成するガスバリアシート材、及び、ガスバリアシート材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポテトチップスなどの酸化し易い食品を包装するために、ガスバリアシート材を用いた包装袋を使用し、商品と共に窒素等の不活性ガスを封入することが行われている。この様な包装袋用に使用されるガスバリアシート材としては、ポリプロピレンやポリエチレン等の基材フィルムとアルミニウム箔とを間にポリエチレン等のラミネート樹脂を介在させてラミネート加工したものがある(特許文献1)。そして、この様な包装袋における装飾は、単なる印刷による装飾だけである。
【0003】
また、近年、雑誌や書籍の表紙、パッケージ、包装紙、あるいはカード等の偽造防止などにホログラムが広く使用されている。紙やフィルムなどの基材にホログラムを形成してホログラムシート材を製造する方法は種々提案されている。例えば、ホログラムシート材の一種であるホログラム金属蒸着積層体を製造する方法としては、基材としての紙の表面に、エチレンとエチレン系不飽和カルボン酸からなる共重合体樹脂などのホログラム形成樹脂層を形成し、このホログラム形成樹脂層上に、レリーフ型ホログラムスタンパによりホログラムを形成し、ホログラムが形成されたホログラム形成樹脂層上に、アルミニウム等の金属を蒸着させて金属蒸着層を形成する(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−98880号公報
【特許文献2】特開平10−160936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記した従来のガスバリアシート材は、アルミニウム箔とフィルム基材とのラミネート加工品であるため、ゴミとして廃棄する場合に、多くの自治体においては不燃物扱いとなる。すなわち、アルミニウム箔をラミネートしているので、ガスバリア性に優れる反面、焼却処理に支障が生じるという不都合があった。
【0006】
また、装飾効果を高めるためにホログラム処理を施そうとすると、従来のホログラム金属蒸着積層体は、ホログラム形成樹脂層を構成する樹脂がエチレンとエチレン系不飽和カルボン酸からなる共重合体樹脂が熱可塑性であるために、表面にホログラムを形成する際にも220℃以上に加熱しなければならない。したがって、製造の各工程で温度による影響を受け易く、前記樹脂上にレリーフ型ホログラムスタンパによりホログラムを形成する際にも、ホログラムスタンパの微細な凹凸形状を高い精度で転写するには温度管理が難しく、ホログラム形成後の冷却時には収縮することが回避できないこともあり、凹凸の端部にシャープさが不足するダレが生じ易い。そして、ホログラムの微細凹凸にダレが生じると、光の反射方向に予期し得ない乱れを生じるので、蒸着層により輝度を確保したとしてもホログラムの色彩が混濁したり像が不鮮明になるなどの不都合が生じる。また、製造工程における温度管理を厳密に行うためには、加熱に長い時間を要するばかりでなく、冷却にも時間がかかってしまい、生産効率を高めることが困難である。さらに、熱可塑性樹脂の場合には、熱で溶かした流動状態で転写するので、溶かした状態で流動性があって尚且つ切れない程度の厚みを確保しなければならない。即ち、厚く塗布しないとホログラムの微細凹凸を転写することができない。
さらに、金属蒸着は真空室内で行うので、熱可塑性樹脂の場合には残留している溶剤が真空室内に蒸発して樹脂が収縮する樹脂やせが発生することも前記したダレの一因であると推測できる。また、真空室内に溶剤が蒸発すると、溶剤分子が蒸着の邪魔になり、仕上がりにムラを生じ易い。
【0007】
本発明は、前記した事情に鑑み提案されたものであり、その目的は、使用するアルミニウムを減少してゴミ処理の容易化を図ることができ、しかもホログラムの微細凹凸を高い精度で形成し、高温加熱することなく効率良く生産することができるガスバリアシート材、及び、ガスバリアシート材の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記した目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のガスバリアシート材は、シート状基材上に、光硬化樹脂層を形成するとともに、該光硬化樹脂層の基材とは反対側の面にホログラム用の微細凹凸を形成し、この微細凹凸を被覆する状態でアルミニウムを蒸着して構成したガスバリア層が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のガスバリアシート材製造方法は、シート状基材上に、光硬化樹脂を塗布して光硬化樹脂層を形成する光硬化樹脂層形成工程と、
前記した光硬化樹脂層上に、表面にホログラムの微細凹凸が形成された透光性の版フィルムを該微細凹凸が光硬化樹脂層に密着する状態で被せ、この状態で版フィルムを通して光照射することにより前記ホログラムの微細凹凸を前記光硬化樹脂層の表面に転写するとともに当該光硬化樹脂層を硬化させるホログラム微細凹凸転写工程と、
該ホログラム微細凹凸転写工程の後、版フィルムを剥離する剥離工程と、
前記基材の光硬化樹脂層側の面にアルミニウムを蒸着させてガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、
を経て処理することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載のガスバリアシート材は、シート状基材上に第1光硬化樹脂層をべたに形成し、該第1光硬化樹脂層上には、第2光硬化樹脂層を形成するとともに、該第2光硬化樹脂層の基材とは反対側の面にホログラム用の微細凹凸を形成し、この微細凹凸を被覆する状態でアルミニウムを蒸着して構成したガスバリア層が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載のガスバリアシート材製造方法は、シート状基材上に、第1光硬化樹脂を塗布して第1光硬化樹脂層をべたに形成する第1光硬化樹脂層形成工程と、
前記第1光硬化樹脂層に光照射して第1光硬化樹脂層を硬化させる第1光硬化樹脂層硬化工程と、
前記第1光硬化樹脂層の基材とは反対側の面に第2光硬化樹脂を塗布して第2光硬化樹脂層を形成する第2光硬化樹脂層形成工程と、
前記した第2光硬化樹脂層上に、表面にホログラムの微細凹凸が形成された透光性の版フィルムを該微細凹凸が第2光硬化樹脂層に密着する状態で被せ、この状態で版フィルムを通して光照射することにより前記ホログラムの微細凹凸を前記第2光硬化樹脂層の表面に転写するとともに当該第2光硬化樹脂層を硬化させるホログラム微細凹凸転写工程と、
該ホログラム微細凹凸転写工程の後、版フィルムを剥離する剥離工程と、
前記第1光硬化樹脂層の第2光硬化樹脂層側の面にアルミニウムを蒸着させてガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、
を経て処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シート状基材上に、光硬化樹脂を塗布して光硬化樹脂層を形成し、この層の上に、表面にホログラムの微細凹凸が形成された透光性の版フィルムを該微細凹凸が光硬化樹脂層に密着する状態で被せ、この状態で版フィルムを通して光照射することにより前記ホログラムの微細凹凸を前記光硬化樹脂層の表面に転写するので、光硬化樹脂を加熱する必要がなく、また、光照射するだけでホログラムの微細凹凸を転写することができるので、冷却に要する時間も不要であり、熱可塑性樹脂を用いる従来に比較して、熱操作に要する時間が不要となる分だけ作業時間の短縮化を図ることができ、しかも微細な凹凸を高い精度で転写することができ、光の方向が設計通りの鮮明なホログラムを期待することができる。そして、常温で流動性を有する光硬化樹脂を使用するので、加熱することにより流動性を生じさせる従来に比較して、ホログラムを形成する樹脂層の厚さを従来よりも薄くでき、樹脂使用量の節約ばかりでなく、廃棄する場合に燃えるゴミとして処理し易い。
また、本発明は、いわゆる反応タイプといわれる光硬化樹脂を使用するので、熱可塑性樹脂と比較して輝度の経年低下が少ない。さらに、光硬化樹脂は、熱可塑性ではないので、耐熱性があり、例えば、準レトルト食品用の包装袋に使用した場合に、熱湯に入れてもホログラムが消えることがなく、熱湯に入れるとホログラムが消えたり薄くなってしまう熱可塑性樹脂上のホログラムの場合とは大きく異なる点である。
【0013】
また、アルミニウムの蒸着によりガスバリア層を形成するので、アルミニウム箔とフィルム基材とをラミネート加工して製造される従来のガスバリアシート材よりも、アルミニウムの使用量を減少させることができる。したがって、ガスバリアシート材を廃棄する際には燃えるゴミとして一層処理し易い。さらに、アルミニウムの使用量が減少したとしても、基材とガスバリア層との間に光硬化樹脂層を介在させているので、この光硬化樹脂層が有するガスバリア性により、アルミニウムの使用量減少によるガスバリア性の損失を補うことができる。この結果、本発明におけるガスバリアシート材(ゴミ処理が容易であり且つ装飾性に優れたガスバリアシート材)のガスバリア性が従来のガスバリアシート材と比較して極端に低下してしまう不都合を避けることができる。
【0014】
そして、ホログラムの微細凹凸を光硬化樹脂層の表面に転写する際に、版フィルムを硬化前の光硬化樹脂層へ圧接すれば、圧接時に作用する圧力により光硬化樹脂層内の気泡を押し出したり押し潰したりして、基材上に光硬化樹脂を隙間なく均一に積層(塗布)することができる。したがって、光硬化樹脂層の気密性が向上し、これにより、ガスバリアシート材全体のガスバリア性の向上を図ることができる。また、光硬化樹脂の種類や光硬化樹脂層の厚みを適宜選択することにより、光硬化樹脂層が有するガスバリア性を異ならせることができ、ガスバリアシート材のガスバリア性を容易に調整することができる。
【0015】
さらに、ガスバリア層として蒸着されるアルミニウムは、ニッケル、金、銀、銅等よりも低い温度で蒸気となる。このため、ガスバリア層形成工程(蒸着処理)において光硬化樹脂層がアルミニウムの蒸気に晒されたとしても、光硬化樹脂層上の微細凹凸が熱の影響により変形してしまうことを抑制し易い。これにより、微細凹凸のシャープさが損なわれてダレてしまう不都合を避け易くなり、混濁のない鮮明なホログラムを形成し易い。
【0016】
そして、ガスバリア層を形成するアルミニウムは、空気との境界面における垂直方向の反射率が前記光硬化樹脂よりも高いので、ホログラム微細凹凸に手の脂や水などが付着した場合に、入射光が手の脂などを透過してもホログラム微細凹凸の表面に蒸着されたアルミニウムに依存した反射となり、光硬化樹脂での反射に依存しないので、反射した光の方向の乱れを顕著に抑制することができ、これによりホログラムが消えてしまう不都合を回避することができる。
【0017】
また、基材上に第1光硬化樹脂層をべたに形成し、該第1光硬化樹脂層上には、第2光硬化樹脂層を形成するとともに、該第2光硬化樹脂層の基材とは反対側の面にホログラム用の微細凹凸を形成し、この微細凹凸を被覆する状態でアルミニウムを蒸着して構成したガスバリア層を形成してガスバリアシート材を構成すれば、ガスバリア性が不十分な材質(例えば、紙)で基材を構成したとしても、第1硬化樹脂層が有するガスバリア性により、ガスバリアシート材のガスバリア性を十分に確保することができる。したがって、基材の材質をそのガスバリア性の優劣に拘らず適宜選択することができ、ガスバリアシート材の設計の自由度を拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】基材に光硬化樹脂を塗布して光硬化樹脂層を形成する光硬化樹脂層形成工程の概略説明図である。
【図2】光硬化樹脂層上に、表面にホログラムの微細凹凸が形成された透光性の版フィルムを密着させる直前の状態を示すホログラム微細凹凸転写工程の概略説明図である。
【図3】光硬化樹脂層上に、表面に版フィルムを密着する状態で被せ、この状態で版フィルム側から光照射してホログラム微細凹凸を光硬化樹脂層に転写するとともに当該光硬化樹脂層を硬化させるホログラム微細凹凸転写工程の概略説明図である。
【図4】版フィルムを剥離する剥離工程の剥離後の概略説明図である。
【図5】基材の光硬化樹脂層側の面にアルミニウムを蒸着させてガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程の概略説明図である。
【図6】ホログラム微細凹凸の拡大断面図である。
【図7】光硬化樹脂層のホログラム微細凹凸の上に印刷を施した他の実施形態の概略説明図である。
【図8】光硬化樹脂層を形成する前に基材に印刷を施した他の実施形態の概略説明図である。
【図9】(a)はローラーで版フィルムを光硬化樹脂層へ圧接する作業の概略説明図であり、(b)はローラーによる圧接作業で光硬化樹脂層が隙間なく均一に積層された状態を示す概略説明図である。
【図10】基材上に第1光硬化樹脂層をべたに形成し、該第1光硬化樹脂上にホログラム微細凹凸が転写された第2光硬化樹脂層を形成した他の実施形態の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1は、樹脂製のシート状基材1に光硬化樹脂を塗布して光硬化樹脂層2を形成した状態を示す光硬化樹脂層形成工程の概略説明図である。
基材1は、ガスバリアシート材3の用途に適したフィルム材であり、ポリプロピレンやポリエチレン等の適宜選択された樹脂で形成されている。なお、基材1の態様は、ガスバリアシート材3の用途に対応して適宜選択可能であり、例えば、枚葉状のシートでもよいし、ロールフィルム等の長尺なシートでもよい。
【0020】
この基材1に塗布する光硬化樹脂は、光照射により硬化する樹脂であれば適宜選択して用いることができるが、本実施形態では紫外線硬化樹脂を用いている。この紫外線硬化樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、アクリル/スチレン、アクリルウレタン、アクリルポリエステル等といったラジカル重合系やカチオン系等を挙げることができる。
そして、この紫外線硬化樹脂を基材1の表面に塗布するには、図示しないが、フレキソコーター、ロールコーター、グラビアコーター、スクリーンコーターなど適宜な塗布装置を用いて常温で塗布することができ、加熱する必要はない。また、基材1の全面に塗布するばかりでなく、部分的に塗布することもできる。例えば、塗布する部分のみ凸に形成した版ロールをバックアップロールの周囲にセットしたロールコーターを使用し、基材1の一部にのみ紫外線硬化樹脂を塗布することもできる(図1)。また、紫外線硬化樹脂を塗布する量については、厚さ1〜10ミクロン程度塗布すれば良い。この紫外線硬化樹脂の塗布量は、熱可塑性樹脂の場合には数十ミクロンの厚さが必要であることと比較すると、少量であってもホログラムを形成する上での支障はない。具体的には、フラットな光輝タイプであれば1〜2ミクロン程度塗布すれば良く、ホログラム凹凸の場合にはこれよりも少し厚く数ミクロンでよい。そして、塗布する樹脂の量が少ないと、廃棄する際に燃えるゴミとして処理し易い。
【0021】
光硬化樹脂層形成工程が終了したならば、次にはホログラム微細凹凸転写工程に移行する。このホログラム微細凹凸転写工程は、図2に示すように、光硬化樹脂層2上に、表面(図2中では下面)にホログラムの微細凹凸4が形成された透光性の版フィルム5を該微細凹凸4が光硬化樹脂層2に向けた状態とし、この版フィルム5をローラーにより加圧するなどして光硬化樹脂層2に密着させる。そして、図3に示すように、前記した密着状態で版フィルム5を挟んで基材1とは反対側に設置された光照射装置(本実施形態では紫外線照射ランプ)6から版フィルム5を通して光照射(紫外線照射)することにより前記ホログラムの微細凹凸4を前記光硬化樹脂層2の表面に転写するとともに当該光硬化樹脂層2を硬化させる。前記した版フィルム5は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンなど紫外線透過性のあるフィルムをベースフィルムとし、このベースフィルムの一方の表面にホログラムの微細凹凸4を一様に形成したものである。したがって、この版フィルム5を未硬化状態の光硬化樹脂層2に密着させると、紫外線硬化樹脂の表面部分がホログラムの微細凹凸4の形状に応じた反転形状に変形し、この状態で版フィルム5を透過させて紫外線を照射すると、紫外線硬化樹脂が版フィルム5のホログラム微細凹凸4に対応した形状に硬化する。
【0022】
そして、版フィルム5を剥離すると(剥離工程)、光硬化樹脂層2の表面に熱収縮性のないホログラム微細凹凸4´が高い精度で転写される。言い換えると、光硬化樹脂層2の基材1とは反対側の面(図4における上面)に、ホログラム微細凹凸4´が形成される。この様にして、光硬化樹脂層2の表面にホログラム微細凹凸4´が高精度で転写されたならば、次に、ホログラム微細凹凸4´を被覆する状態でアルミニウムをべたに蒸着させてガスバリア層7を形成するガスバリア層形成工程に移行する。
なお、ホログラム微細凹凸4´とガスバリア層7との密着性を高めるために、ガスバリア層形成工程の前に、コロナ処理を行ったり、アンカーコーティング剤を塗布したりすることが望ましい。
【0023】
ガスバリア層形成工程は、前記基材1の光硬化樹脂層2側の面にアルミニウムを少なくともホログラム微細凹凸4´の部分に蒸着させて、酸素等の気体が透過し難いガスバリア層7を微細凹凸4´の凹凸に沿って形成するものであり、真空室中にてアルミニウムを蒸発させて行う。
ここで、アルミニウムの分子の大きさは、ホログラム微細凹凸4´の大きさに比較すれば遥かに小さなものである。したがって、図6に示すように、光硬化樹脂層2の表面に蒸着により形成されたガスバリア層7は、ホログラムの微細凹凸4´の凹凸に沿って形成される。このため、光の反射率が高く、明るいホログラムができる。また、前記したように、微細凹凸4´の転写精度が高いので、設計した通りの方向に光が反射することとなり、混濁が少なく鮮明なホログラムとなる。さらに、反射率が高いので、ガスバリアシート材3で包装された内容物を外部から見えなくする遮蔽シートとしても使用することができ、また、紫外線等の光による内容物の劣化を防止することもできる。
【0024】
また、アルミニウムは、空気との境界面における垂直方向の反射率が光硬化樹脂(紫外線硬化樹脂)よりも高いので、ホログラム微細凹凸4´に手の脂や水などが付着した場合に、入射光が手の脂などを透過してもホログラム微細凹凸4´の表面に形成されたガスバリア層7(アルミニウム)に依存した反射となって、光硬化樹脂での反射に依存しないので、反射した光の方向の乱れを顕著に抑制することができる。したがって、ホログラム微細凹凸4´に手の脂や水などが付着したとしても、ホログラムが消えてしまう不都合を回避することができる。
【0025】
さらに、アルミニウムの蒸着によりガスバリア層7を形成しているので、アルミニウム箔とフィルム基材とをラミネート加工して製造される従来のガスバリアシート材よりも、アルミニウムの使用量を減少させることができる。したがって、ガスバリアシート材3を廃棄する際には燃えるゴミとして一層処理し易い。そして、アルミニウムの使用量が減少したとしても、基材1とガスバリア層7との間に光硬化樹脂層2を介在させているので、この光硬化樹脂層2が有するガスバリア性により、アルミニウムの使用量減少によるガスバリア性の損失を補うことができる。この結果、本発明におけるガスバリアシート材3(ゴミ処理が容易であり且つ装飾性に優れたガスバリアシート材3)のガスバリア性が従来のガスバリアシート材と比較して極端に低下してしまう不都合を避けることができる。また、光硬化樹脂の種類や光硬化樹脂層2の厚みを適宜選択すれば、光硬化樹脂層2が有するガスバリア性を異ならせることができ、ガスバリアシート材3のガスバリア性を容易に調整することができる。
【0026】
また、ガスバリア層7として蒸着されるアルミニウムは、ニッケル、金、銀、銅等よりも低い温度で蒸気となる。このため、ガスバリア層形成工程(蒸着処理)において光硬化樹脂層2がアルミニウムの蒸気に晒されたとしても、光硬化樹脂層2上の微細凹凸が熱の影響により変形してしまうことを抑制し易い。これにより、微細凹凸のシャープさが損なわれてダレてしまう不都合を避け易くなり、混濁のない鮮明なホログラムを形成し易い。
【0027】
本発明におけるガスバリアシート材3は、その用途は様々であり、ホログラムのみならず印刷もできる。例えば、図7に示す他の実施形態は、ホログラム微細凹凸4´を形成した光硬化樹脂層2の表面にインク8による印刷を施してもよい。また、図8に示す他の実施形態は、基材1の表面に予めインク8´による印刷を施し、その印刷の上に光硬化樹脂層2を形成するとともにその表面にホログラム微細凹凸4を転写したものである。
この様に、印刷を施すと、ホログラムと印刷がいっしょになった特異な美観を生じさせることができ、これにより装飾性が向上する。例えば、ガスバリアシート材3を用いた包装袋で酸化し易い食品を包装すれば、商品棚等に陳列した場合に見栄えが良好になり、商品販売の促進を十分に期待することができる。
【0028】
ところで、上記実施形態では、基材1上に形成される光硬化樹脂層2が基材1の表面に沿って連続せずに途切れた状態(島状態)で形成されているが、本発明はこれに限定されず、光硬化樹脂層2が基材1上で途切れずに形成されていてもよい。例えば、図9(a)に示すように、ホログラム微細凹凸転写工程における版フィルム5の密着作業において、ローラー9による加圧(または、他の加圧手段による加圧)を十分に行って版フィルム5を硬化前の光硬化樹脂層2へ圧接すれば、圧接時に作用する圧力により光硬化樹脂層2内の気泡を押し出したり押し潰したりして、基材1上に光硬化樹脂を隙間なく均一に積層(塗布)することができる(図9(b))。したがって、基材1とガスバリア層7との間に光硬化樹脂層2が介在しない箇所が残る不都合、ひいては、光硬化樹脂層2が介在しない箇所と介在する箇所とでガスバリア性がバラつく不都合を回避することができる。これにより、ガスバリアシート材3全体のガスバリア性の向上を図ることができる。
【0029】
なお、図9(a)に示すように、版フィルム5の圧接作業で使用するローラー9を透光性部材(透明ガラスや透明プラスチック等)で構成し、該ローラー9内に光照射装置6を収納すれば、版フィルム5の圧接作業(光硬化樹脂層2の押し潰し作業)と光硬化樹脂の硬化作業とを同時に行うことができて好適である。このとき、光照射装置6は、ローラー9と版フィルム5との接触開始箇所(光硬化樹脂層2が押し潰され始める箇所)よりも上流側に位置する光硬化樹脂には光を照射しないように遮光部材を設定することが好ましい。
【0030】
ところで、上記各実施形態では、樹脂製の基材を採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図10に示す実施形態のガスバリアシート材3´では、紙製の基材1を採用し、該基材1上に第1光硬化樹脂11をべたに形成し、該第1光硬化樹脂層11上には、第2光硬化樹脂層12を形成するとともに、該第2光硬化樹脂層12の基材1とは反対側の面(図10中では上面)にホログラム用の微細凹凸4´を形成し、この微細凹凸4´を被覆する状態でアルミニウムを蒸着してガスバリア層7を形成している。
【0031】
このガスバリアシート材3´の製造工程は次の通りである。
まず、塗布装置を用いて紙製の基材1上に第1光硬化樹脂を塗布して第1光硬化樹脂層11をべたに形成し(第1光硬化樹脂層形成工程)、第1光硬化樹脂層11に光を照射して硬化させる(第1光硬化樹脂層硬化工程)。この第1光硬化樹脂硬化工程では、塗布した第1光硬化樹脂(第1光硬化樹脂層11)に透光性の平滑なフィルムを密着させ、この状態でフィルム(密着フィルム)を通して光照射することにより硬化させることが望ましく、更には、圧接して気密性を高めることが望ましい。なお、前記光照射して第1光硬化樹脂層11を硬化したならば、前記密着フィルムを剥離する。
【0032】
そして、この第1光硬化樹脂層硬化工程が終了したならば、さらに、塗布装置を用いて第1光硬化樹脂層11上に第2光硬化樹脂を塗布して第2光硬化樹脂層12を形成する。第2光硬化樹脂層形成工程が終了したならば、ホログラム微細凹凸転写工程に移行し、第2光硬化樹脂層12上に、表面にホログラムの微細凹凸4が形成された透光性の版フィルム5を該微細凹凸4が第2光硬化樹脂層12に向けた状態とし、この版フィルム5をローラーにより加圧するなどして第2光硬化樹脂層12に密着させる。そして、この密着状態で版フィルム5を挟んで基材1とは反対側に設置された光照射装置6から版フィルム5を通して光照射することによりホログラムの微細凹凸4を第2光硬化樹脂層12の表面に転写するとともに当該第2光硬化樹脂層12を硬化させる。
【0033】
ホログラム微細凹凸転写工程が終了した後、版フィルム5を剥離すると(剥離工程)、第2光硬化樹脂層12の表面に熱収縮性のないホログラム微細凹凸4´が高い精度で転写される。言い換えると、第2光硬化樹脂層12の基材1とは反対側の面(図10における上面)に、ホログラム微細凹凸4´が形成される。この様にして、第2光硬化樹脂層12の表面にホログラム微細凹凸4´が高精度で転写されたならば、ガスバリア層形成工程に移行し、第1光硬化樹脂層11の第2光硬化樹脂層12側の面にアルミニウムを少なくともホログラム微細凹凸4´の部分に蒸着させて、酸素等の気体が透過し難いガスバリア層7を微細凹凸4´の凹凸に沿って形成する。
【0034】
このようにして、基材1と第2光硬化樹脂層12との間に第1光硬化樹脂層11を介在させ、該第2光硬化樹脂層12上の微細凹凸4´を被覆する状態でガスバリア層7を形成してガスバリアシート材3´を構成すれば、ガスバリア性が不十分な材質(例えば、紙)で基材1を構成したとしても、第1硬化樹脂層11が有するガスバリア性により、ガスバリアシート材3´のガスバリア性を十分に確保することができる。したがって、基材1の材質をそのガスバリア性の優劣に拘らず適宜選択することができ、ガスバリアシート材3´の設計の自由度を拡張することができる。なお、第1光硬化樹脂と第2光硬化樹脂とは、何れも光照射により硬化する樹脂であれば、別個の材質であるか否かは問わない。
【0035】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲において適宜設計変更することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 基材
2 光硬化樹脂層
3,3´ ガスバリアシート材
4 版フィルムに形成されたホログラムの微細凹凸
4´ 光硬化樹脂層の表面に転写されたホログラムの微細凹凸
5 版フィルム
6 光照射装置
7 ガスバリア層
8,8´ 印刷のインク
9 ローラー
11 第1光硬化樹脂層
12 第2光硬化樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材上に、光硬化樹脂層を形成するとともに、該光硬化樹脂層の基材とは反対側の面にホログラム用の微細凹凸を形成し、この微細凹凸を被覆する状態でアルミニウムを蒸着して構成したガスバリア層が形成されていることを特徴とするガスバリアシート材。
【請求項2】
シート状基材上に、光硬化樹脂を塗布して光硬化樹脂層を形成する光硬化樹脂層形成工程と、
前記した光硬化樹脂層上に、表面にホログラムの微細凹凸が形成された透光性の版フィルムを該微細凹凸が光硬化樹脂層に密着する状態で被せ、この状態で版フィルムを通して光照射することにより前記ホログラムの微細凹凸を前記光硬化樹脂層の表面に転写するとともに当該光硬化樹脂層を硬化させるホログラム微細凹凸転写工程と、
該ホログラム微細凹凸転写工程の後、版フィルムを剥離する剥離工程と、
前記基材の光硬化樹脂層側の面にアルミニウムを蒸着させてガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、
を経て処理することを特徴とするガスバリアシート材の製造方法。
【請求項3】
シート状基材上に第1光硬化樹脂層をべたに形成し、該第1光硬化樹脂層上には、第2光硬化樹脂層を形成するとともに、該第2光硬化樹脂層の基材とは反対側の面にホログラム用の微細凹凸を形成し、この微細凹凸を被覆する状態でアルミニウムを蒸着して構成したガスバリア層が形成されていることを特徴とするガスバリアシート材。
【請求項4】
シート状基材上に、第1光硬化樹脂を塗布して第1光硬化樹脂層をべたに形成する第1光硬化樹脂層形成工程と、
前記第1光硬化樹脂層に光照射して第1光硬化樹脂層を硬化させる第1光硬化樹脂層硬化工程と、
前記第1光硬化樹脂層の基材とは反対側の面に第2光硬化樹脂を塗布して第2光硬化樹脂層を形成する第2光硬化樹脂層形成工程と、
前記した第2光硬化樹脂層上に、表面にホログラムの微細凹凸が形成された透光性の版フィルムを該微細凹凸が第2光硬化樹脂層に密着する状態で被せ、この状態で版フィルムを通して光照射することにより前記ホログラムの微細凹凸を前記第2光硬化樹脂層の表面に転写するとともに当該第2光硬化樹脂層を硬化させるホログラム微細凹凸転写工程と、
該ホログラム微細凹凸転写工程の後、版フィルムを剥離する剥離工程と、
前記第1光硬化樹脂層の第2光硬化樹脂層側の面にアルミニウムを蒸着させてガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と、
を経て処理することを特徴とするガスバリアシート材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−103432(P2013−103432A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249594(P2011−249594)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(398043757)有限会社協和ラミコート (10)
【Fターム(参考)】