説明

ガスバリアフィルム

【課題】耐熱性や水蒸気バリア性、さらには加熱時の変形が少ないガスバリアフィルムの提供。
【解決手段】ガラス転移温度が200℃以上であるプラスチックフィルムの少なくとも1つの面に、酸化珪素からなるバリア層がウェットコーティング法により設けられたガスバリアフィルムであって、バリア層の膜密度が2.0以上、バリア層表面の水の接触角が80°以上であることを特徴とするガスバリアフィルムにより達成できる。特に酸化珪素からなるバリア層が、ペルヒドロポリシラザン由来のものからなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスバリアフィルムに関し、特に、耐熱性や水蒸気バリア性、さらには加熱時の変形が少ないガスバリアフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイを構成していたガラス基板に代わって、軽量化、薄型化、フレキシブル化などの目的で、プラスチックフィルムを用いることが検討されている。また太陽電池の基材としてもプラスチックフィルムの利用が提案されている。プラスチックフィルムは、ロールtoロール方式に適用可能であることから、コスト面でも有利と期待されている。このようにディスプレイや太陽電池などに使用されるガラス基板の代替としてフィルムを使用する場合、高いガスバリア性が必須の特性である。プラスチックフィルムはガラスよりもガスバリア性が悪く、長期間ディスプレイ素子の性能を維持させることは困難である。例えば、有機EL素子の発光層は、水分や酸素によって劣化することが知られており、有機ELディスプレイにプラスチックフィルムを用いる場合、フィルム上にガスバリア層を設ける必要がある。また太陽電池に適用する場合においても、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性が重要である。
【0003】
このバリア層は低温で形成することが可能であるが、低温で形成した場合、ディスプレイ用途に十分なガスバリア性は得られない。そのため優れたガスバリア性を有するバリア層を形成するためには高温での加工が必要となる。またバリア層の上に透明導電層などを形成する場合でも、低温で形成することが可能なものの、低抵抗性の層とするためには高温の加工が必要となる。これらのことからプラスチックフィルムには加工時の高温工程に耐えうる耐熱性が必要となる。
【0004】
しかし、一般的なプラスチックフィルムは、ガラス基板にくらべて耐熱性が格段に劣るので、製造工程や使用時の加熱による変形が避けられず、ガスバリアフィルムもしくはガスバリアフィルムを使用したディスプレイなどの平面性が損なわれたり、積層した無機系薄膜とのズレに基づく剥離が生じたり、もしくは予め設定した寸法とのズレが生じる等の支障が起こる。加工時の高温工程において、フィルムの顕著な変形がない場合であっても、無機化合物の熱線膨張係数は、一般的なプラスチックフィルムよりも小さく、この熱線膨張係数の違いによって、ガスバリアフィルムの変形が起こったり、位置ずれが生じたりするといった問題がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、耐熱性の高いプラスチックフィルム上にポリシラザンのウェットコーティング法によってバリア層を設けることが例示されているが、バリアフィルムの変形やバリア性については満足するレベルにはなっていなかった。
【0006】
プラスチックフィルムにバリア層を形成する方法としては、ドライコーティング法とウェットコーティング法がある。前者の場合、通常、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の方法が用いられているが、これらの方法は大型化が困難である上、設備投資額が大きくなり、商業規模での実施が難しいという問題がある。一方、後者の場合、積層工程が簡便で、大規模な設備装置を必要としないという利点があるため、例えばゾルゲル法でアルコキシシランを塗布した有機/無機複合膜、ポリシラザンを塗布、焼成した無機膜等が検討されている。
【0007】
しかしながら、前記のゾルゲル法では、アルコキシシランによる緻密な膜を形成するためには高温が必要である。また、ポリシラザンによる無機膜の作成では、例えば、特許文献2に開示されている方法によって、比較的低温での焼成で酸化珪素膜が形成できるものの、充分なバリア性を発現させることは難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−169078号公報
【特許文献2】特開平7−223867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、耐熱性や水蒸気バリア性、さらには加熱時の変形が少ないガスバリアフィルムを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定のプラスチックフィルムおよびバリア層によれば、耐熱性や水蒸気バリア性、さらには加熱時の変形が少ないガスバリアフィルムを提供できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち本発明は、ガラス転移温度が200℃以上であるプラスチックフィルムの少なくとも1つの面に、酸化珪素からなるバリア層がウェットコーティング法により設けられたガスバリアフィルムであって、バリア層の膜密度が2.0以上、バリア層表面の水の接触角が80°以上であることを特徴とするガスバリアフィルムに関する。
【0012】
好ましい実施態様としては、酸化珪素からなるバリア層がペルヒドロポリシラザン由来のものであることを特徴とするガスバリアフィルムに関する。
【0013】
好ましい実施態様としては、プラスチックフィルムの100℃から200℃における面内線膨張係数が40ppm以下であることを特徴とするガスバリアフィルムに関する。
【0014】
好ましい実施態様としては、プラスチックフィルムの全光線透過率が80%以上であり、波長440nmでの光線透過率が60%以上であるガスバリアフィルムに関する。
【0015】
好ましい実施態様としては、プラスチックフィルムが、下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリイミドフィルムであることを特徴とするガスバリアフィルムに関する。
【0016】
【化1】

【0017】
式中R1は下記一般式(2)から選択される4価の有機基を、また、R2は下記一般式(3)から選択される2価の有機基を示し、
【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

【0020】
式中R3は、水素、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、C1〜C16のアルキル基を示す。
【発明の効果】
【0021】
上記本発明に係るガスバリアフィルムは、耐熱性や水蒸気バリア性、さらには加熱時の変形が少ないといった特徴を有する。従って、耐熱性、水蒸気バリア性が必要とされるプラスチックフィルム基板および保護フィルムとして好適であり、例えば、有機EL、LCD、電子ペーパーなどのディスプレイおよび太陽電池用の基板または保護フィルム、光学フィルムなどとしての利用が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態について以下、説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
本発明のガスバリアフィルムは、ガラス転移温度が200℃以上であるプラスチックフィルムの少なくとも1つの面に、酸化珪素からなるバリア層がウェットコーティング法により設けられたガスバリアフィルムであって、バリア層の膜密度が2.0以上、バリア層表面の水の接触角が60°以上であることを特徴とする。
【0024】
本発明で用いられるプラスチックフィルムのガラス転移温度は、耐熱性の観点からは高ければ高いほど良いが、示差走査熱量測定装置(DSC装置)において、昇温速度10℃/minの条件で測定したときのガラス転移温度(中点法)が、200℃以上が好ましく、更に好ましくは250℃以上であるとよい。ガラス転移温度が200℃未満であるとプラスチックフィルム上にバリア層、さらに透明導電層などを形成させる際にもたらされる熱により軟化しやすく、プラスチックフィルムに加わる外力により、プラスチックフィルムが変形しやすい。尚、ガラス転移温度が200℃以上とは、DSC法によるガラス転移温度が200℃未満に観測されないことを意味し、いずれの温度範囲にもガラス転移温度を示さないことも含む。
【0025】
本発明のプラスチックフィルムは、100℃ から200℃の面内線膨張係数が40ppm/℃以下、更に好ましくは、10ppm/℃以下であることが好ましい。プラスチックフィルムと酸化珪素からなるバリア層を積層した場合、もし両層の面内線膨張係数が異なると、得られたガスバリアフィルムを室温もしくは高温下に保持した際にガスバリアフィルム全体が反るもしくは曲がるという現象が観測され、その結果、バリア層に極端に大きな応力がかかり、破壊される恐れがある。
【0026】
また、ディスプレイ用途などで、得られたガスバリアフィルムとフォトマスク、または、他のフィルムを組み合わせる場合、もしくは、ガスバリアフィルム自体を2枚以上組み合わせる場合、ガスバリアフィルム自身が変形すると互いの位置合わせが出来ない場合がある。従って、ガスバリアフィルムの面内線膨張係数はバリア層のそれと同じ、もしくはそれに近い値であることが望ましい。バリア層は多くの場合40ppm以下の面内線膨張係数を有するため、プラスチックフィルムもその値以下であることが望ましい。
【0027】
面内線膨張係数は、熱機械分析装置を用いてプラスチックフィルムを25℃から昇温・降温して残留歪を除去した後に再び降温する過程に於いて得られた数値で計算することができる。一度昇温し降温した後の25℃における初期試料長をL0、100℃の時の試料長をL1、200℃の時の試料長をL2とすると100℃から200℃の面内線膨張係数は以下の式で求められる。
【0028】
面内線膨張係数(ppm/℃)=((L2−L1)/L0)/(200−100)×106
本発明のプラスチックフィルムは、全光線透過率が80%以上であり、波長440nmでの光線透過率が60%以上であることが好ましい。プラスチックフィルムの全光線透過率としては80%以上であることが求められるが、85%以上であることが好ましい。プラスチックフィルムの全光線透過率が低いとガスバリアフィルムの透過率が下がり、ディスプレイやタッチパネル、太陽電池用のフィルムとしては好ましくない。
【0029】
また、波長440nmでの光線透過率が60%以上であることも必要であるが、70%以上、更には80%以上であることが好ましい。波長440nmでの光線透過率が低いと、ガスバリアフィルムが着色し色調が変化するため、ディスプレイやタッチパネル、太陽電池用のフィルムとしては好ましくない。
【0030】
本発明で用いられるプラスチックフィルムは、上述した特性を満たすものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホンなどを例示することができる。
【0031】
これらの中でも、上記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリイミドであることが好ましい。式(1)中のR1は4価の有機基であり、その具体例としては、後述する各酸二無水物成分に対応する4価の有機基、すなわち、酸二無水物成分からポリイミド鎖の形成に関与する両末端酸無水物基を取り除いた構造が挙げられる。
【0032】
式(2)にあげられている4価の有機基のうち、特にベンゼンもしくはビフェニルを有する構造がこのましい。ベンゼンもしくはビフェニル構造を有する具体的な化合物はピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とその誘導体をあげることができる。この場合、式(1)を製造するために用いる酸二無水物は、それぞれ、ピロメリット酸二無水物、および、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0033】
式(2)にあげられている4価の有機基を有する化合物を全酸成分として用いることが好ましいが、さらに、その他の酸二無水物は、ポリイミドの透明性を確保できる範囲内であれば2種以上を併用することができる。目的の物性に応じて、酸二無水物全体の70モル%、好ましくは50モル%を超えない範囲で式(2)にあげられている4価の有機基を有する酸二無水物以外の酸二無水物を用いても良い。また、2種以上のそれらは、規則的に配列されていてもよいし、ランダムにポリイミド中に存在していてもよい。
【0034】
式(2)にあげられている4価の有機基を有する酸二無水物及び/又はその誘導体と併用可能な他の酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス[(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、1,4−ビス[(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、4,4'−ビス[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、4,4'−ビス[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルプロパン二無水物、2,2−ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0035】
一方、式(1)中のR2は2価の有機基であり、その具体例としては、式(3)で記述しているように、後述する各ジアミン成分に対応する2価の有機基、すなわち、ジアミン成分からポリイミド鎖の形成に関与する両末端アミノ基を取り除いた構造が挙げられる。式(3)のうち、好ましくは、フェニレン基、もしくは、ビフェニレン基である。この場合、式(1)を製造するために用いるジアミンは、それぞれ、フェニレン基を有するジアミン、および、ビフェニレン基を有するジアミンである。
【0036】
また、式(3)中のR3は、水素、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、C1〜C16のアルキル基を示す一価の有機基である。得られるポリイミドの透明性、耐熱性、及び寸法変化率から、ハロゲンやハロゲン化アルキルなどの電子吸引基が好ましく、フッ素原子もしくはトリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0037】
式(3)中、特に好ましいものは下記式(5)で示すものである。この中でR3は上記したものであるが中でもトリフルオロメチル基が好ましい。
【0038】
具体的には2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン及び/又はその誘導体が挙げられる。
【0039】
式(3)の構造を有するジアミンを全ジアミン成分として用いるのが好ましいが、その他のジアミンを用いて、ポリイミドの透明性を確保できる範囲内であれば2種以上を併用することができる。目的の物性に応じて、ジアミン全体の70モル%、好ましくは50モル%を超えない範囲で式(3)の構造を有するジアミン以外のジアミンを用いても良い。また、2種以上のそれらは、規則的に配列されていてもよいし、ランダムにポリイミド中に存在していてもよい。
【0040】
式(3)の構造を有するジアミンと併用可能な他のジアミンとして、用いられるジアミン成分は限定されるわけではないが、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4'−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6'−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン、6,6'−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
【0041】
置換基R3は、原料の状態で導入し、ジアミンの状態で既に置換基が導入されたものを用いても良いし、ジアミンと反応させてポリイミドやポリアミド酸の状態で導入しても良い。また、置換基を導入することで吸収する光の波長を調整することが可能であり、置換基を導入することで所望の波長を吸収させるようにすることもできる。
【0042】
本発明におけるポリイミドフィルムは詳述しているように式(1)、(2)、(3)で示す構造を有することが特徴であるが、ポリイミドフィルムが実質的に上記式で示す構造であることが好ましい。
【0043】
アミン成分としては、ハロゲン化アルキル鎖特にはトリフルオロメチル基を有するものが好ましい。中でも特に好ましいものは式(5)で示すものである。この中でR3はトリフルオロメチル基である。また、テトラカルボン酸二無水物としてはビフェニル構造、非置換のベンゼン・ナフタレン構造を有するものが好ましい。また、アミン成分、テトラカルボン酸二無水物が共に上記構造を有することが特に好ましい。
【0044】
具体的に特に好ましく用いられるアミン成分としては、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンが好ましい。また、テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、が挙げられ、中でも3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。アミン成分、テトラカルボン酸二無水物が共に上記具体例で示す化合物を用いることが特に好ましい。
【0045】
本発明におけるポリイミドを製造する方法としては、例えば、酸二無水物とジアミンから前駆体であるポリアミド酸を合成し、これに脱水触媒やイミド化剤を添加して塗布し、ポリイミドフィルムを得る手法が代表的に挙げられる。ポリアミド酸の状態で成形し、その後、脱水触媒やイミド化剤を用いずに加熱によりイミド化を行う手法では、得られるフィルムの面内線膨張係数や寸法変化率が悪く、目的には適さない。また、ポリアミド酸の状態で成形し、その後、脱水触媒やイミド化剤中に浸漬する方法では、面内線膨張係数や寸法変化率をコントロールしてポリイミドフィルムを得ることが難しく、様々な無機材料と同じ面内線膨張係数や寸法変化率を有するフィルムを得るという目的を達成できない。
【0046】
用いるイミド化剤としては、3級アミンが好ましく、中でも複素環式3級アミンが好ましい。具体的にはピリジン、2,5−ジエチルピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリンをあげることができる。脱水触媒としては、酸無水物が好ましく、具体的には無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物をあげることができ、中でも無水酢酸が最も好ましい。
【0047】
本発明では、ポリアミド酸のカルボン酸に対してのイミド化剤の添加モル量を多くするほど、得られるフィルムの面内線膨張係数や寸法変化率が良好になる傾向がある。一方で、多量のイミド化剤によりイミド化があまりに早く進行すると、フィルム化を行う前に不溶化してしまい、キャストできない等の問題が出るので、実用的にはイミド化剤の添加量としては、ポリアミド酸のカルボン酸基に対して、0.05〜2.0倍モル当量、さらには0.6〜2.0倍モル当量が好ましい。
【0048】
また、脱水触媒は添加する量を多くしても得られるフィルムの物性は変わりにくい傾向があるが、キャストフィルムを基板から剥がしやすくなる傾向がある。これらの傾向から、脱水触媒の添加量としては、ポリアミド酸のカルボン酸基に対して、0.05〜10.0倍モル当量が、さらには3.6〜10.0倍モル当量であることが好ましい。なお、イミド化剤、脱水触媒の上記好ましい範囲は適宜組み合わせて用いることができる。
【0049】
次に、本発明におけるポリイミドを合成する手法をこれより具体的に例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
酸成分として上記3、3'、4、4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及び、アミン成分として2、2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを用いてポリイミドを合成する例を述べる。先ず、2、2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを溶解させたジメチルアセトアミドに、等モルの3,3'、4、4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を徐々に加え、室温で撹拌する。
【0051】
1〜20時間程度撹拌した後、ポリアミド酸溶液を得る。そのポリアミド酸を0℃以下の低温にした後、イミド化剤としてピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリンなどのイミド化剤、脱水剤として無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物などの酸無水物を加える。その後、溶液を激しく攪拌し真空下もしくは遠心沈殿機等を用いて脱泡した後、ガラスやフィルム、金属ベルトなどの基板上に塗布乾燥し、塗膜を成形させる。それを例えば300℃以上に加熱し溶剤を除去することでポリイミドの塗膜が得られる。
【0052】
このようにして合成されるポリイミドは、ポリイミド本来の耐熱性及び寸法変化率を優れたものとするために、芳香族酸成分及び/又は芳香族アミン成分の共重合割合ができるだけ大きいことが好ましい。具体的には、イミド構造の繰り返し単位を構成する酸成分に占める芳香族酸成分の割合が50モル%以上、特に70モル%以上であることが好ましく、全てが芳香族酸成分であることが最も好ましい。
【0053】
イミド構造の繰り返し単位を構成するアミン成分に占める芳香族アミン成分の割合が40モル%以上、特に60モル%以上であることが好ましく、全てが芳香族アミン成分であることが最も好ましい。酸成分、アミン成分共に全て芳香族成分を用いたポリイミドが特に好ましい。
【0054】
酸成分、アミン成分に芳香族環が複数有し、その複数の芳香族環が得られるポリイミドの主鎖を形成する場合には、複数の芳香族環の間には屈曲性を有する成分が含まれないことが好ましい。屈曲性を有する成分とは、例えば、炭素原子、酸素原子、硫黄原子などを介したものをあげることができる。複数の芳香族環は直接結合していることが好ましい。直接結合には、ナフタレン構造で結合している場合と、ビフェニル構造で結合している場合を含むが、この中でもビフェニル構造により結合している芳香族環を有するものが好ましい。
【0055】
このようにして合成されるポリイミドは、透明性と共にフィルム面内の低い面内線膨張を有することを特徴としており、例えば引っ張り加重法により、15mm×5mmのフィルム試料に加重を3.0gとし、10℃/minの昇温速度で測定したときに、面内線膨張係数が40ppm以下のポリイミドフィルムを得ることができる。
【0056】
また用いるイミド化剤量をポリアミド酸のカルボン酸基に対して、それぞれ、0.5倍モル量、1.0倍モル量、1.5倍モル量とすることにより、得られるフィルムの面内線膨張係数を20ppm以下、さらには10ppm以下、特には5ppm以下のポリイミドフィルムを得ることも可能である。また、用いるイミド化剤量をポリアミド酸のカルボン酸基に対して、それぞれ、0.5倍モル量、1.0倍モル量、1.5倍モル量とすることにより、40℃から230℃まで加熱し再び40℃に戻した場合の加熱前後の寸法変化率が0.1%以下、さらには0.05%以下、特には0.03%以下のポリイミドフィルムを得ることも可能である。
【0057】
ポリイミドフィルムに用いるポリイミドの重量平均分子量は、その用途にもよるが、3,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、5,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましく、10,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましい。重量平均分子量が3,000以下であると、塗膜又はフィルムとした場合に十分な強度が得られにくい。また、10,000未満であると着色の原因になるポリマー末端の数が相対的に多くなることから着色する場合がある。一方、1,000,000を超えると粘度が上昇し、溶解性も落ちてくるため、表面が平滑で膜厚が均一な塗膜又はフィルムが得られにくい。
【0058】
ここで用いている分子量とは、ゲルパーミレーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値のことをいい、ポリイミド前駆体そのものの分子量でも良いし、無水酢酸等で化学的イミド化処理を行った後のものでも良い。
【0059】
ポリイミドに加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子、増感剤等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
【0060】
本発明に係るポリイミドフィルムは、式(1)で表されるポリイミド成分を、フィルム全体に対し、通常、50〜99.9重量%の範囲内で含有させることが好ましい。また、その他の任意成分の配合割合は、ポリイミドフィルムの固形分全体に対し、0.1重量%〜50重量%の範囲が好ましい。0.1重量%未満だと、添加物を添加した効果が発揮されにくく、50重量%を越えると、添加物の特性が最終生成物であるフィルムに反映されにくい。
【0061】
本発明のプラスチックフィルムは、厚みが10〜300μmであることが好ましい。厚みが10μm未満の場合、腰の強さがなく、剛性に劣るため、加工時の取扱性が劣る傾向にある。また300μmを超える場合、フィルムの巻き取りが困難になることがあり、また溶融製膜法によってフィルムを製膜する場合には、溶媒除去に長時間が必要となり、生産性が低下しやすい。また、フィルムの透明性が低下することもある。フィルムの厚みは15〜150μmであることがより好ましい。
【0062】
本発明のバリア層は、無機物であれば特に限定されるものではない。例えば、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素などを例示することができ、中でも酸化珪素が好ましい。
【0063】
本発明のバリア層の製膜法は、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のドライコーティング法とゾルゲル法等のウェットコーティング法があるが、生産性の点でウェットコーティング法によるものが好ましい。
【0064】
本発明のバリア層の膜密度は、2.0以上であれば特に限定されるものではない。膜密度は2.0〜2.2であることがより好ましい。
【0065】
本発明のバリア層表面の水の接触角は、80°以上であれば特に限定されるものではない。接触角が80°未満の場合、バリア層表面の親水性が高くなり、透湿度が低下することがある。接触角は90°以上であることがより好ましい。
【0066】
本発明のガスバリアフィルムの透湿度は1g/m2・day未満であることが好ましい。透湿度は1g/m2・day未満とすることで、水蒸気バリア性の必要な分野への使用が可能となる。
【0067】
本発明に用いられるポリシラザンは、一般式(SiR45NR6)(ただし、R4〜R6は水素原子や炭化水素基、置換炭化水素基)で表される構造であるが、中でも一般式(SiH2NH)で表されるペルヒドロポリシラザンが好ましい。塗布方法は、ディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法などの一般的なウェットコーティング法を用いることができる。
【0068】
本発明のガスバリアフィルムは、プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面にバリア層が積層されたものであり、プラスチックフィルムとバリア層の間に、必要に応じて、プライマー層が積層されていてもよい。また、バリア層の表面に透明導電膜が積層されていてもよい。
【0069】
本発明のガスバリアフィルムを製造する際には、表面をクロロシラン類により処理することが好ましい。クロロシラン類としては、トリメチルクロロシランが好ましい。
【0070】
本発明のガスバリアフィルムは、有機EL照明・ディスプレイ、LCD、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池など基板または保護フィルム、光学フィルムなどとして用いることができる。
【実施例】
【0071】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0072】
(前駆体溶液の合成)
前駆体溶液1の合成
2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン 1.20g(6mmol)を50mlの3つ口フラスコに投入し、3.88gの脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させ窒素気流下、氷浴で冷却しながら撹拌した。そこへ、上記3、3'、4、4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物1.77g(6mmol)を添加し、添加終了後、氷浴中で5時間撹拌し、粘ちょうな液体(前駆体溶液1)を得た。
【0073】
(合成例)
合成した上記前駆体溶液1を0℃付近に冷却した後、βピコリン1.67g(18mmol)及び無水酢酸11.0g(108mmol)の混合液を添加し激しく攪拌した。その後、真空下に置き脱泡したのち、ポリエチレンナフタレートフィルム上に流し、スリット間隔を0.75mmに設定したバーコーターでフィルム上に塗布した。その後、50℃に温められたオーブン内で9分、100℃に温められたオーブン内で9分、200℃に温められたオーブン内で9分乾燥させた。その後、窒素雰囲気下、オーブンにより300℃で1時間加熱を行い、ポリイミドフィルム1を得た。得られたフィルムは溶剤に不溶であり、膜厚は50μm±2μmであった。
【0074】
<透湿度測定法>
本実施例に示す透湿度は以下に示す分析装置、条件で測定した。
【0075】
ガス透過試験機(GTRテック株式会社製GTR30−XAKK型)を用いて、JISK7126に準拠して、40℃、90%RH、1atmの差圧法にて測定した。
【0076】
<膜密度測定法>
本実施例に示す膜密度は以下に示す分析装置、条件で測定した。
【0077】
X線回折装置(リガク株式会社製SmartLab)用いて、X線反射率から膜密度を算出した。
【0078】
<接触角測定法>
本実施例に示す接触角は以下に示す分析装置、条件で測定した。
【0079】
接触角測定機(協和界面科学株式会社製CA−S150型)用いて、直径2mm大の純水を滴下した時の接触角を測定した。
【0080】
(実施例1)
合成例で得られたポリイミドフィルム1上に、ポリシラザンキシレン溶液(ポリシラザン10%溶液、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)をディップコートにて塗布し、ポリシラザン膜を形成した。室温で10分間乾燥した後、250℃に温められたオーブン内で1時間焼成させた。
【0081】
(実施例2)
合成例で得られたポリイミドフィルム1上に、ポリシラザンキシレン溶液(ポリシラザン10%溶液、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)をディップコートにて塗布し、ポリシラザン膜を形成した。室温で10分間乾燥した後、150℃に温められたオーブン内で1時間焼成させた。焼成後、純水に1時間浸漬させ、トリメチルクロロシラン(信越化学工業(株)製)に10分間浸漬させた。アセトン、純水で洗浄後、100℃に温められたオーブン内で10分乾燥させた。
【0082】
(比較例1)
合成例で得られたポリイミドフィルム1上に、ポリシラザンキシレン溶液(ポリシラザン10%溶液、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)をディップコートにて塗布し、ポリシラザン膜を形成した。室温で10分間乾燥した後、150℃に温められたオーブン内で1時間焼成させた。
【0083】
(比較例2)
合成例で得られたポリイミドフィルム1上に、ポリシラザンキシレン溶液(ポリシラザン10%溶液、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)をディップコートにて塗布し、ポリシラザン膜を形成した。室温で10分間乾燥した後、150℃に温められたオーブン内で1時間焼成させた。焼成後、純水に1時間浸漬させ、100℃に温められたオーブン内で10分乾燥させた。
【0084】

実施例および比較例で製造したフィルムの各種特性を測定した。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が200℃以上であるプラスチックフィルムの少なくとも1つの面に、酸化珪素からなるバリア層がウェットコーティング法により設けられたガスバリアフィルムであって、バリア層の膜密度が2.0以上、バリア層表面の水の接触角が80°以上であることを特徴とするガスバリアフィルム。
【請求項2】
酸化珪素からなるバリア層がペルヒドロポリシラザン由来のものであることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項3】
プラスチックフィルムの100℃から200℃における面内線膨張係数が40ppm以下であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
プラスチックフィルムの全光線透過率が80%以上であり、波長440nmでの光線透過率が60%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
プラスチックフィルムが、下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
【化1】

式中R1は下記一般式(2)から選択される4価の有機基を、また、R2は下記一般式(3)から選択される2価の有機基を示し、
【化2】

【化3】

式中R3は、水素、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、C1〜C16のアルキル基を示す。

【公開番号】特開2011−245625(P2011−245625A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117568(P2010−117568)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】