説明

ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム及びその製造方法

ヒドロシリル化反応硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムとその上に形成された酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層および酸化ケイ素層から選択される透明無機物層からなるガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、有機官能基、シラノール基、ヒドロシリル基または重合性有機官能基が重合して生成した有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が該繊維強化フィルムと無機物層間に介在している、ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、およびこのガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されているガスバリアー性が優れた硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムに関する。本発明は、さらに、このガスバリアー性が優れた硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等に、種々の高分子フィルムを基板とするフィルム型光学素子が用いられはじめている。さらに、これらディスプレイは薄型化、軽量化されつつあるで、フィルム型光学素子の重要性は増している。ペーパー型ディスプレイが近年話題になっているが、高分子フィルムなくしては達成されない技術である。
【0003】
高分子フィルムは高分子材料の最も成功している技術のひとつであり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の結晶性高分子フィルムを2軸延伸して透明化したフィルム、および、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等の非晶性高分子のフィルムが主体である。これら高分子はいずれも熱可塑性高分子であり、分子量および分子量分布を調節することによって容易に自立性のフィルムを製造することができる。
【0004】
一方、架橋型高分子のフィルムは、ポリイミドフィルム以外に自立性のフィルムを市場で入手することは困難であり、多くの場合、然るべき基板上に形成されて実用に供されている。架橋型高分子は、低分子化合物或いは低分子量オリゴマーを架橋させて形成させるものであるから、架橋の際に生じる収縮、架橋によって発生する内部応力等のため、フィルムを形成することは問題になることが多い。しかし、架橋構造ゆえに、高温時に熱可塑性樹脂に見られるメルトフローが起きないため、ガラス転移温度以上でも極端な変形が起こらないという利点がある。
【0005】
架橋反応により硬化したオルガノポリシロキサン樹脂が耐熱性、光学的透明性に優れていることは周知であり、硬化したオルガノポリシロキサン樹脂の示す光学特性の一つに複屈折が小さいという特徴が挙げられる。小さい複屈折は、画像に関わる光学材料では重要な性質であり、光記録の読み取りエラーを低減する上でも重要な性質である。また、硬化したオルガノポリシロキサン樹脂フィルムは平坦性に優れるという特徴がある。
【0006】
近年、特に有機ELディスプレイ用、液晶ディスプレイ用には、フィルム型光学素子が注目されているが、有機ELディスプレイ用、液晶ディスプレイ用のフィルム型光学素子は、水蒸気や酸素などに触れて性能が劣化しないように、フィルム基板に高度のガスバリアー性が求められている。
【0007】
例えば、日本特許出願公開(以下特開という)特開平8−224825(JP8-224825A)(特許文献1)、US2003/0228475A1(特許文献2)には、プラスチックフィルム上に酸化珪素を主成分とする薄膜を形成したガスバリアー性フィルムが開示されている。日本特許第3859518号(JP3859518B)および特開2003−206361(JP2003-206361A)(特許文献3)には、樹脂基材上に2種の窒化酸化珪素層を形成した透明水蒸気バリアフィルムが開示されている。特開2004−276564(JP2004-276564A)(特許文献4)、US2003/0228475A1(特許文献2)には、プラスチックフィルムなどの樹脂基材上に窒化酸化珪素層を形成したガスバリアー性積層材が開示されている。特開2006−123306(JP2006-123306A)(特許文献5)には、プラスチックフィルム面に、ポリオルガノシルセスキオキサンを主成分とする樹脂層を積層し、樹脂層上に、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、二酸化ケイ素のいずれかの無機化合物層を真空成膜法で形成してなるガスバリアー性積層体が開示されている。
【0008】
しかし、いずれも基材が熱可塑性樹脂フィルムであるため、耐熱性が劣り、複屈折が大きいという問題がある。そこで、本発明者らは、WO2005/111149A1(特許文献6)に開示されているようなヒドロシリル化反応により硬化したオルガノポリシロキサン樹脂フィルム上およびUS2008/0051548A1(特許文献7)に開示されているようなヒドロシリル化反応により硬化し繊維補強されたオルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成してみたが、酸化窒化ケイ素(酸化窒化珪素膜)が均一に付着せず、水蒸気バリアー性などのガスバリアー性に劣ることを見出した。
【0009】
本発明者らは、可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルム上に、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)及び酸化ケイ素層(酸化珪素膜)からなる群から選択される透明無機物層(透明無機物膜)が均一に形成され、前記透明無機物層(透明無機物膜)が該フィルムによく接着しているという、ガスバリアー性が著しく優れた硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムを開発すべく鋭意研究した。
【0010】
これら研究の結果、本発明者らは、かかるガスバリアー性が著しく優れたガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムと、かかるガスバリアー性が著しく優れたガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムの製造方法を発明するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)及び酸化ケイ素層(酸化珪素膜)からなる群から選択される透明無機物層(透明無機物膜)が可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムによく接着することにより著しく高いガスバリアー性を示す硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルム、および、かかるガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、
「[1] (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
前記繊維強化フィルムと前記透明無機物層間に、
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層から選択される硬化オルガノポリシロキサン層が介在していることを特徴とする、ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【0013】
[1-1] (a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が、(a-1)有機官能基を有し,シラノール基とヒドロシリル基を有しない硬化オルガノポリシロキサン層、(a-2)有機官能基とシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層および(a-3)有機官能基とヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層からなる群から選択されることを特徴とする、[1]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。

[1-2] (a-1)有機官能基を有し,シラノール基とヒドロシリル基を有しない硬化オルガノポリシロキサン層が、(a-1-1)有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物がヒドロシリル化反応することにより架橋して生成した,有機官能基を有し,シラノール基と残留ヒドロシリル基を有しない硬化オルガノポリシロキサン層であり、
(a-2)有機官能基とシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が、(a-2-1)有機官能基とケイ素原子結合加水分解性基を有する硬化性オルガノシランもしくはその組成物が縮合反応により架橋して生成した,有機官能基とシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層、または、(a-2-2)有機官能基とケイ素原子結合加水分解性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンもしくはその組成物が,縮合反応により架橋して生成した,有機官能基とシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層であり、
(a-3)有機官能基とヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が、(a-3-1)有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物がヒドロシリル化反応することにより架橋して生成した,有機官能基と残留ヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層であり、
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が、(b-1)有機官能基を有せずケイ素原子結合加水分解性基を有する硬化性オルガノシラン若しくはその組成物が縮合反応により架橋して生成した,有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層、または、(b-2)有機官能基を有せずケイ素原子結合加水分解性基を有する硬化性オルガノポリシロキサン若しくはその組成物が縮合反応により架橋して生成した,有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層であり、
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が、(c-1)有機官能基を有しないヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物がヒドロシリル化反応することにより架橋して生成した,有機官能基を有せず残留ヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層であることを特徴とする、[1-1]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【0014】
[2] 有機官能基が含酸素有機官能基であり、重合性有機官能基が含酸素重合性有機官能基であり、有機基が含酸素有機基であることを特徴とする、[1]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。

[3] 含酸素有機官能基が、アクリロキシ官能基、エポキシ官能基またはオキセタニル官能基であり、重合性有機官能基がアクリロキシ官能基、エポキシ官能基、オキセタニル官能基またはアルケニルエーテル官能基であり、含酸素有機基がカルボニル基またはC-O-C結合を有することを特徴とする、[2]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。

[4] アクリロキシ官能基がアクリロキシアルキル基またはメタクリロキシアルキル基であり、エポキシ官能基がグリシドキシアルキル基またはエポキシシクロヘキシルアルキル基であることを特徴とする、[3]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。

[5] 繊維強化フィルム中の繊維強化材の繊維が無機繊維または合成繊維であることを特徴とする、[1]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。

[6] 繊維強化材が、単繊維、糸、織布または不織布の形態であることを特徴とする、[1]または[5]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム」により達成される。
【0015】
また、この目的は
「[7] (I) (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、コーティング法により下記(a)〜(e)から選択される硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層;
(II) 前記硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成することを特徴とする、[1]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。

[8] 硬化オルガノポリシロキサン層(a)、硬化オルガノポリシロキサン層(b)および硬化オルガノポリシロキサン層(c)を、縮合反応またはヒドロシリル化反応により形成し、硬化オルガノポリシロキサン層(d)を、高エネルギー線ないし活性エネルギー線照射または加熱により重合性有機官能基同士を重合させることにより形成し、硬化オルガノポリシロキサン(e)を縮合反応またはヒドロシリル化反応および高エネルギー線ないし活性エネルギー線照射または加熱により重合性有機官能基同士を重合させることにより形成することを特徴とする、[7]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。」により達成される。
【0016】
また、この目的は、
「[9] (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50であり、前記硬化オルガノポリシロキサン樹脂がヒドロシリル基を有することを特徴とする、ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。

[10] (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物
(ただし、成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50)を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、
イオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成することを特徴とする、[9]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。」により達成される
【0017】
また、この目的は、
「[11] (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
前記繊維強化フィルムと前記透明無機物層間に、
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層から選択される硬化オルガノポリシロキサン層が介在しており、
前記透明無機物層上に硬化ポリマー層が形成され、前記硬化ポリマー層上に酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されていることを特徴とする、ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。

[12] 硬化ポリマーが、紫外線硬化ポリマー、電子線硬化ポリマーまたは熱硬化ポリマーであり、繊維強化フィルム中の繊維強化材の繊維が無機繊維または合成繊維であり、繊維強化フィルム中の繊維強化材が、単繊維、糸、織布または不織布の形態であることを特徴とする、[11]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。」により達成される。
【0018】
また、この目的は
「[13] (I) (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、
コーティング法により下記(a)〜(e)から選択される硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層;
(II) 前記硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成し、
(III) 前記透明無機物層上にコーティング法により硬化ポリマー層を形成し、
(IV) 前記硬化ポリマー層上に酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を蒸着法により形成することを特徴とする、[11]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。

[14] 硬化オルガノポリシロキサン層(a)、硬化オルガノポリシロキサン層(b)および硬化オルガノポリシロキサン層(c)を、縮合反応またはヒドロシリル化反応により形成し、硬化オルガノポリシロキサン層(d)を、高エネルギー線ないし活性エネルギー線照射または加熱により重合性有機官能基同士を重合させることにより形成し、硬化オルガノポリシロキサン層(e)を縮合反応またはヒドロシリル化反応および高エネルギー線ないし活性エネルギー線照射または加熱により重合性有機官能基同士を重合させることにより形成し、硬化ポリマー層を、紫外線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーへの光重合開始剤存在下で紫外線照射、電子線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーへの電子線照射または熱硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーの加熱により形成することを特徴とする、請求項13に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。」により達成される。
【0019】
また、この目的は、
「[15] (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50であり、硬化オルガノポリシロキサン樹脂がヒドロシリル基を有し、酸化窒化ケイ素層がヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に形成され、前記酸化窒化ケイ素層上に硬化ポリマー層が形成され、前記硬化ポリマー層上に酸化窒化ケイ素層が形成されていることを特徴とする、ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。

[16] 硬化ポリマーが、紫外線硬化ポリマー、電子線硬化ポリマーまたは熱硬化ポリマーであり、繊維強化フィルム中の繊維強化材の繊維が無機繊維または合成繊維であり、繊維強化フィルム中の繊維強化材が、単繊維、糸、織布または不織布の形態であることを特徴とする、[15]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【0020】
また、この目的は、
「[17] (I) (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物
(ただし、成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50)を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなるヒドロシリル基を有し,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、イオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成し、
(II) 前記酸化窒化ケイ素層上にコーティング法により硬化ポリマー層を形成し、
(III) 硬化ポリマー層上にイオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成することを特徴とする、[15]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。

[18] 硬化ポリマー層を、紫外線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーへの光重合開始剤存在下で紫外線照射、電子線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーへの電子線照射または熱硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーの加熱により形成することを特徴とする、[17]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。」により達成される。
【発明の効果】
【0021】
本願の請求項1およびその従属請求項に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムは、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)及び酸化ケイ素層(酸化珪素膜)からなる群から選択される透明無機物膜層が、硬化オルガノポリシロキサン層(a),硬化オルガノポリシロキサン層(b),硬化オルガノポリシロキサン層(c),硬化オルガノポリシロキサン層(d)または硬化オルガノポリシロキサン層(e)を介して、可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に均一に形成され、該樹脂フィルムによく接着、密着しているので、ガスバリアー性が著しく優れており、特には、空気、水蒸気、窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、アルゴンガスなど種々のガスの遮断性に著しく優れており、さらには低い線熱膨張率、高い引張強さおよび高い弾性率を有する。
【0022】
本願の請求項9に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムは、透明な酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)が、ヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に均一に形成され、該樹脂フィルムによく接着、密着しているので、ガスバリアー性が著しく優れており、特には、空気、水蒸気、窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、アルゴンガスなど種々のガスの遮断性に著しく優れており、さらには低い線熱膨張率、高い引張強さおよび高い弾性率を有する。
【0023】
本願の11および請求項11の従属請求項に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムは、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)及び酸化ケイ素層(酸化珪素膜)からなる群から選択される透明無機物層が、硬化オルガノポリシロキサン層(a),硬化オルガノポリシロキサン層(b),硬化オルガノポリシロキサン層(c),硬化オルガノポリシロキサン層(d)または硬化オルガノポリシロキサン層(e)を介して、可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に均一に形成されて該樹脂フィルムによく接着、密着しており、硬化ポリマー層が該透明無機物層上に形成され、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)及び酸化ケイ素層(酸化珪素膜)からなる群から選択される透明無機物層が該硬化ポリマー層上に形成されているので、ガスバリアー性がさらに著しく優れており、特には、空気、水蒸気、窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、アルゴンガスなど種々のガスの遮断性にさらに著しく優れており、さらには低い線熱膨張率、高い引張強さおよび高い弾性率を有する。
【0024】
本願の請求項15およびその従属請求項に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムは、透明な酸化窒化ケイ素層が、ヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に均一に形成されて該樹脂フィルムによく接着、密着しており、硬化ポリマー層が該透明酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)上に形成され、酸化窒化ケイ素層が該硬化ポリマー層上に形成されているので、ガスバリアー性がさらに著しく優れており、特には、空気、水蒸気、窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、アルゴンガスなど種々のガスの遮断性にさらに著しく優れており、さらには低い線熱膨張率、高い引張強さおよび高い弾性率を有する。
【0025】
本願の請求項7、請求項10、請求項13、請求項17およびそれらの従属請求項に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムの製造方法によると、上記ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムを簡易に確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム上に有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が形成され、その上に酸化窒化ケイ素層が形成されたガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本願第1発明の請求項1に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
前記繊維強化フィルムと前記透明無機物層間に、
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層から選択される硬化オルガノポリシロキサン層が介在していることを特徴とする。

請求項1に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、次のように表現できる。
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層からなる群から選択される硬化オルガノポリシロキサン層が(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に形成されており、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が前記硬化オルガノポリシロキサン層上に形成されていることを特徴とするガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【0028】
なお、成分(A)と成分(B)を成分(C)存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明である硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムは、詳しくは独立フィルムである。ガラス板、金属板、セラミック板のような基板上にコーティングされたフィルムではなく、独立状態で存在するフィルムである。ガラス、金属、セラミックのようなガス遮断性材料上に硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム層が形成されている場合は、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成することは無意味である。
【0029】
成分(A)は、成分(C)の作用により、その不飽和脂肪族炭化水素基が成分(B)中のケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基)と付加反応して架橋し硬化する。
【0030】
平均シロキサン単位式(1)中のRは、炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、オルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合している。炭素原子数1〜10の一価の炭化水素基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;ビニル基、1−プロぺニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル、2−ブテニル基、1−ヘキセニル基等の炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基、特にはアルケニル基が例示される。
【0031】
成分(A)において、炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基は、1分子中に平均1.2個以上存在する。硬化性の点で、炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基は、1分子中に平均1.5個以上存在することが好ましく、平均2.0個以上存在することがより好ましい。
成分(B)が1分子中に2個のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物である場合は、成分(A)が成分(B)と付加反応して硬化するためには、炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に3個以上有する分子を含まなければならない。
成分(A)が炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に2個有する場合は、成分(A)が成分(B)と付加反応して硬化するためには、成分(B)は1分子中に3個以上のケイ素原子結合水素原子を有する分子を含む必要がある。
成分(A)は、炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に3個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂や、炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂が主体である必要があるが、炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に1個有するオルガノポリシロキサン樹脂を含有してもよい。
【0032】
平均シロキサン単位式(1)において、aは平均0.5<a<2の範囲の数である。aはオルガノポリシロキサン樹脂中のケイ素原子1個当たりのRの平均数を意味している。
平均シロキサン単位式(1)において、平均a=2であると、オルガノポリシロキサンはジオルガノポリシロキサンであり、直鎖状または環状であるので、aは平均2より小さい。aが平均2より小さくなるにしたがって、オルガノポリシロキサン樹脂分子の分岐度が大きくなるが、オルガノポリシロキサン樹脂と言えるためには、aは、平均1.7以下が好ましい。aは平均0.5以上であるが、平均1を下回ると無機性が大きくなるので、平均1.0以上が好ましい。
【0033】
平均シロキサン単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂は、硬化物の特性の点で、
少なくとも一つの式[X(3-b)R1bSiO1/2(式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0,1または2である)で示されるシロキサン単位、および、少なくとも一つの式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位から構成されていることが好ましい。また、少なくとも一つの式[X(3-b)R1bSiO1/2](式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0,1または2である)で示されるシロキサン単位、少なくとも一つの式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位および少なくとも一つの式[SiO4/2]で示されるシロキサン単位から構成されていることが好ましい。
【0034】
平均シロキサン単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂は、硬化物の特性、特には耐熱性の点で、平均シロキサン単位式(2):[X(3-b)R1bSiO1/2]v[R2SiO3/2]w(式中、X、R1、R2、bは上記どおりであり、0.80≦w<1.0、v+w=1である)、または、平均シロキサン単位式(3):
[X(3-b)R1bSiO1/2]x[R2SiO3/2]y[SiO4/2]z(式中、X、R1、R2、bは上記どおりであり、0<x<0.4、0.5<y<1、0<z<0.4、x+y+z=1である)で表されるものが好ましい。これらのオルガノポリシロキサン樹脂は2種以上を併用してもよい。
【0035】
Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、ビニル基、1−プロぺニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル、2−ブテニル基、1−ヘキセニル基等のアルケニル基が例示されるが、ヒドロシリル化反応性、製造容易性の観点からビニル基が好ましい。
【0036】
R1とR2は、X以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、前述したRからXを除外したものである。
R1とR2として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基が例示されるが、オルガノポリシロキサン樹脂の耐熱性、製造容易性の観点からメチル基とフェニル基が好ましい。硬化オルガノポリシロキサン樹脂の熱特性の観点から、分子中の全一価炭化水素基の少なくとも50モル%はフェニル基であることが好ましい。
【0037】
平均シロキサン単位(2)および平均シロキサン単位式(3)中の[X(3-b)R1bSiO1/2]単位としてMe2ViSiO1/2,MePhViSiO1/2,MeVi2SiO1/2が例示され、R2SiO3/2単位としてMeSiO3/2,PhSiO3/2が例示される(ここで、Meはメチル基であり、Phはフェニル基であり、Viはビニル基であり、以下において同様である)。
平均シロキサン単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂は、さらにR2SiO2/2単位を含有することができ、R2SiO2/2単位としてMe2SiO2/2,MeViSiO2/2,MePhSiO2/2が例示される。
【0038】
成分(B)である1分子中に2個以上のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物は、成分(C)の作用により、成分(A)中のケイ素原子結合不飽和脂肪族炭化水素基、特にはアルケニル基と付加反応して架橋し硬化させる。
成分(B)は、シリル化炭化水素、オルガノシラン、オルガノシロキサンオリゴマー、オルガノポリシロキサン等のいずれであってもよい。これらはいずれも1分子中に2個以上のケイ素結合水素原子を有するが、オルガノシロキサンオリゴマーやオルガノポリシロキサンは、1分子中に平均2個以上のケイ素結合水素原子を有することが好ましい。
その分子構造について特に限定されないが、高強度の硬化物を生成するためには、全ケイ素原子結合基の5モル%以上が芳香族炭化水素基であることが好ましく、10モル%以上が芳香族炭化水素基であることがより好ましい。5モル%未満であると、硬化物の物性、熱特性が十分でない。
【0039】
1価芳香族炭化水素基としてフェニル基、トリル基、キシリル基が例示されるが、フェニル基が好ましい。芳香族炭化水素基は2価芳香族炭化水素基、例えばフェニレン基であってもよい。1価芳香族炭化水素基以外の有機基としては、前記したアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0040】
成分(B)の具体例として、ジフェニルジハイドロジェンシラン、1,3-ビス(ジメチルハイドロジェンシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジメチルハイドロジェンシリル)ベンゼン等のケイ素原子結合水素原子を2個有するオルガノシランやシリル化炭化水素;式(HMePhSi)2O、(HMe2SiO)2SiPh2、(HMePhSiO)2SiPh2、(HMe2SiO)2SiMePh、(HMe2SiO)(SiPh2)(OSiMe2H)、(HMe2SiO)3SiPhまたは(HMePhSiO)3SiPhで示されるオルガノシロキサンオリゴマー;(PhSiO3/2)および(Me2HSiO1/2)の各単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂、(PhSiO3/2),(Me2SiO2/2)および(Me2HSiO1/2)の各単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂、(PhSiO3/2),(MeSiO3/2)および(MeHSiO1/2)の各単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂、(PhSiO3/2)および(MeHSiO2/2)の各単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂、(Me2HSiO1/2),(MePh2SiO1/2)および(SiO4/2)の各単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂が挙げられる。
【0041】
さらには、(MePhSiO2/2)および(Me2HSiO1/2)の各単位からなる直鎖状オルガノポリシロキサン、(Me2SiO2/2),(MePhSiO2/2)および(Me2HSiO1/2)の各単位からなる直鎖状オルガノポリシロキサン、(MePhSiO2/2),(MeHSiO2/2)および(Me3SiO1/2)の各単位からなる直鎖状オルガノポリシロキサン、(MePhSiO2/2),(MeHSiO2/2)および(Me2HSiO1/2)の各単位からなる直鎖状オルガノポリシロキサン、(PhHSiO2/2)および(Me3SiO1/2)の各単位からなる直鎖状オルガノポリシロキサン、(MeHSiO2/2)および(MePh2SiO1/2)の各単位からなる直鎖状オルガノポリシロキサン、(PhHSiO2/2)単位のみからなる環状オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0042】
これらの有機ケイ素化合物は2種以上を併用してもよい。これらの有機ケイ素化合物の製法は、公知あるいは周知であり、例えば、ケイ素原子結合水素原子を有するオルガノクロロシランのみの加水分解縮合反応、あるいは、ケイ素原子結合水素原子を有するオルガノクロロシランとケイ素原子結合水素原子を有しないオルガノクロロシランの共加水分解縮合反応により製造することができる。
【0043】
成分(C)であるヒドロシリル化反応触媒は、周期律表第8属の金属、その化合物、中でも白金および白金化合物が好ましい。これには微粒子状白金、塩化白金酸、白金ジオレフィン錯体、白金ジケトン錯体、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金フォスフィン錯体が例示される。その配合量は、成分(A)と成分(B)の合計重量に対し、金属重量で好ましくは0.05ppm〜300ppmの範囲であり、より好ましくは0.1ppm〜50ppmの範囲である。この範囲未満では、架橋反応が十分進行しないことがあり、この範囲を越えるとむだであり、残存金属により光学特性が低下することがあるからである。
【0044】
上記成分(A)、成分(B)、成分(C)に加え、常温でのヒドロシリル化反応、架橋反応を抑制して可使時間を長くするために、ヒドロシリル化反応遅延剤を配合することが好ましい。具体例として、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、フェニルブチノール等のアルキニルアルコール(アルキンアルコールとも称される);3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;メチル(トリス(1,1−ジメチル−2−プロピニロキシ))シラン、ジメチル(ビス(1,1−ジメチル−2−プロピニロキシ))シラン等のアルキニルシラン;ジメチルマレエート、ジエチルフマレート、ビス(2−メトキシ−1−メチルエチル)マレエート等の不飽和ジカルボン酸エステル;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、エチレンジアミン等の有機アミン;ジフェニルホスフィン、ジフェニルホスファイト、トリオクチルホスフィン、ジエチルフェニルホスホナイト、メチルジフェニルホスフィナイト等の有機ホスフィン、有機ホスファイトが挙げられる。ヒドロシリル化反応遅延剤の配合量は、成分(C)存在下での成分(A)と成分(B)の常温でのヒドロシリル化反応を抑制し、加熱下でのドロシリル化反応を抑制しないような量が好ましい。具体的には上記ヒドロシリル化反応触媒に対して重量比で1〜10000となる量が好ましい。
【0045】
上記の必須成分以外に、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムに所望の特性を付与するために、成分(A)、成分(B)および成分(C)からなるヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない限り、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物に一般に配合されている各種の添加剤を含んでもよい。例えば、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムに高い光学的透明性が要求されないときには、一般的なフィラーである補強性シリカフィラー(例えば、フュームドシリカ、コロイダルシリカ)、アルミナ等の無機微粒子を含有せしめて、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムの強度を向上させることができる。無機粒子の含有量は、目的、用途に応じて異なり、簡単な配合試験により決めることができる。
【0046】
なお、無機粒子を含有する場合であっても、当該粒子の粒径を調節することによって硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムの透明性を保持することができる。粒子添加による不透明化は添加粒子による光散乱に起因するため、粒子を構成する材料の屈折率によっても異なるが、概ね入射光波長の1/5〜1/6以下の直径(可視光領域では80から60nmに相当する)の粒子であれば散乱を抑制して硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムの透明性を維持することができる。光散乱の原因として粒子の二次凝集も大きな要因であり、二次凝集を抑制するために、表面処理を施した粒子を含有させてもよい。
【0047】
本願第1発明の硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルム製造用のヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物は、フタロシアニン系色素、蛍光染料、蛍光顔料等の染料・顔料等も含有することができる。特に、本発明における硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムは、可視光領域に特定の吸収帯を有しないので、可視光を吸収して光励起によって所定の機能を発現する添加剤を含有せしめて機能化することが可能である。
【0048】
成分(A)、成分(B)、成分(C)を混合すると、常温でもヒドロシリル化反応が進行してゲル化し、さらには架橋して硬化することがあるので、上述したヒドロシリル化反応遅延剤を適宜含有せしめることが好ましい。成分(A)や成分(B)が常温で液状でない場合や、液状であっても高粘度である場合は、適切な有機溶媒に溶解させておくことが好ましい。そのような有機溶媒としては、架橋時の温度が約200℃に達することもありうることから、沸点が200℃以下であり、成分(A)や成分(B)を溶解し、ヒドロシリル化反応を阻害しないものであれば特に限定されない。
【0049】
好適な有機溶媒として、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;THF、ジオキサン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンが例示される。有機溶媒の配合量は、成分(A)、成分(B)などを溶解するのに十分な量であり、成分(A)、成分(B)、成分(C)の合計量100重量部当たり、例えば1重量部〜300重量部の範囲であるが、この範囲に限定されるものではない。
【0050】
可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムは、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物とステープル状の繊維強化材を均一に混合してフィルム状に硬化させることにより製造することができる。あるいは、シート状の繊維強化材にヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を含浸して硬化させることにより製造することができる。
【0051】
可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムを製造するには、まず、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物である、成分(A)、成分(B)、成分(C)の混合物;成分(A)、成分(B)、成分(C)、ヒドロシリル化反応遅延剤の混合物、あるいは、これら混合物の有機溶媒溶液を調製する。この場合、コーティング性の面から、当該混合物あるいは溶液の粘度は1×103Pa・s以下が好ましく、1×102Pa・s以下がより好ましい。
【0052】
ついで、上記混合物、あるいは、上記混合物の有機溶媒溶液中に、繊維強化材を含浸させ、前記含浸された繊維強化材を、前記ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を硬化させるのに十分な温度にて加熱する。
【0053】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムは、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム中に繊維強化材を内蔵している。
繊維強化材は、成分(A)と成分(B)のヒドロシリル化反応生成物である硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム中に内在したときに、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムの線膨張係数を低下し、弾性率と機械的強度を向上する作用がある。繊維強化フィルムは、繊維補強フィルムとも称される。
【0054】
この繊維強化材は、高い弾性率と高い引張強さを有しておれば、繊維からなるいかなる強化材であってもよい。繊維強化材は、典型的には、25℃で少なくとも3GPaのヤング率を有し、典型的には3〜1,000GPa、あるいは3〜200GPa、あるいは10〜100GPaのヤング率を有する。さらに、繊維強化材は、典型的には、25℃で少なくとも50MPaの引張強さを有し、典型的には、50〜10,000MPa、あるいは50〜1,000MPa、あるいは50〜500MPaの引張強さを有する。
【0055】
繊維強化材である単繊維自体および織物などの繊維強化材を構成する単繊維は、典型的には断面形状が円形であり、1〜100μm、あるいは1〜20μm、あるいは1〜10μmの直径を有する。単繊維は、フィラメント、ステープルのいずれでもよい。
フィラメントは、途切れのないものであり、通常の切れ目のない状態あるいは切断された状態で、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム中全体に広がる。ステープルは多数のフィラメントが短く切断されたものである。
【0056】
繊維強化材は、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を含浸するに先だって、典型的には、熱処理、水洗、有機溶剤洗浄などにより表面に付着した不純物を除去する。繊維強化材を熱処理する場合は、典型的には、空気中で、繊維を溶融させずに不純物を除去するのに十分な高温、例えば575℃で、好適な時間、例えば2時間加熱する。
【0057】
繊維強化材を構成する繊維の例として、これらに限定されないが、ガラス繊維、石英繊維、炭化ケイ素繊維、炭素繊維などの無機繊維;ナイロンRTM繊維、ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維)、芳香族ポリアミド繊維、例えば、KEVLARRTM(イー アイ デュポン ドウ・ヌムール アンド カンパニー製)およびNOMEXRTM(イー アイ デュポン ドウ・ヌムール アンド カンパニー製)〕、ポリイミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維などの合成繊維を挙げることができる。耐熱性の観点から無機繊維および耐熱性合成繊維(例えば、芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維)が好ましく、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムの透明性の観点から、ガラス繊維、シリカ繊維および石英繊維が好ましい。
【0058】
ガラス繊維として、アルカリガラス、無アルカリガラス、低誘電ガラス、高誘電ガラス、Eガラスが例示される。
ガラス繊維からなる繊維強化材は、シート状物が好ましく、織布、編布、不織布が例示される。これらは、例えば、前記した繊維径を有し、集束本数が50〜800の長繊維からなり、重量が20〜100g/m2である。
ガラス繊維は、シランカップリング剤で前処理されていてもよい。
【0059】
繊維強化材には、さまざまな方法を用いてヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を含浸させることができる。
例えば、第一の方法では、繊維強化材には、
(i)ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を剥離ライナーにコーティングしてオルガノポリシロキサン樹脂組成物薄膜を形成する;
(ii)薄膜中に繊維強化材を埋込む;
(iii)埋込まれた繊維強化材を脱気する;そして
(iv)ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を、脱気した繊維強化材上にコーティングする
ことによってヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を含浸させることができる。
【0060】
工程(i)では、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を剥離ライナーにコーティングしてオルガノポリシロキサン樹脂組成物薄膜を形成する。剥離ライナーは、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物が硬化した後に、そこから硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムを、層間剥離によって損傷することなく取り除くことができるような表面を有する。剥離ライナーの例として、これらに限られないが、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオロエチレン樹脂フィルムおよびポリイミドフィルムを挙げることができる。
【0061】
ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物は、従来のコーティング技術、例えば、スピンコーティング、ディッピング、スプレー、ブラッシングまたはスクリーン印刷等を用いて剥離ライナー上にコーティングされる。ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物は、以下の工程(ii)において繊維強化材を埋め込むために十分な量が使用される。
【0062】
工程(ii)において、繊維強化材をヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物に埋込む。繊維強化材は、単にヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物上に繊維強化材を置き、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を繊維強化材に浸みこませることによってヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物に埋込むことができる。
【0063】
工程(iii)において、埋込まれた繊維強化材を脱気する。埋込まれた繊維強化材は、これを、室温(約23±2℃)〜60℃の温度にて、埋込まれた繊維強化材に取り込まれた空気を除去するために十分な時間、真空下に置くことによって脱気することができる。例えば、埋込まれた繊維強化材は、典型的には、これを、1,000〜20,000Paの圧力下、室温にて5〜60分間置くことによって脱気することができる。
【0064】
工程(iv)においては、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を、脱気した繊維強化材にコーティングして、該組成物を含浸した繊維強化材を形成させるが、そのコーティング条件は上記工程(i)と同様である。
【0065】
第一の方法には、さらに、
(v)含浸した繊維強化材を脱気する工程;
(vi)第二の剥離ライナーを、脱気した繊維強化材上に被せて組立体を作る工程;および
(vii)第一の剥離ライナーとヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を含浸した繊維強化材と第二の剥離ライナーからなる組立体を圧縮する工程
を付加することができる。
【0066】
この圧縮により、過剰のヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物および/または取り込まれた空気を除去することができ、あるいは、含浸された繊維強化材の厚みを薄くすることができる。この圧縮は、従来の装置(例えば、ステンレススチール製のローラ、液圧プレス、ゴムローラ、またはラミネートロール装置等)を使用して行うことができる。典型的には、1,000Pa〜10MPaの圧力で、室温(約23±2℃)〜50℃の温度にて圧縮することができる。
【0067】
別法である第二の方法では、繊維強化材は、
(i)繊維強化材を第一の剥離ライナー上に載置する;
(ii)ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を繊維強化材上にコーティングして、前記繊維強化材をヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物中に埋込む;
(iii)埋込まれた繊維強化材を脱気する;および
(iv)ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を脱気した繊維強化材上にコーティングして、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を含浸した繊維強化材を形成させる:
によって、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を含浸させることができる。
【0068】
この第二の方法は、さらに、
(v)含浸した繊維強化材を脱気する工程;
(vi)第二の剥離ライナーを、脱気した繊維強化材上に被せて組立体を作る工程;および
(vii)第一の剥離ライナーとヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を含浸した繊維強化材と第二の剥離ライナーからなる組立体を圧縮する工程を含むことができる。
第二の方法において、工程(iii)〜工程(vii)は、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を繊維強化材に含浸させる第一の方法において上述したものと同様である。
【0069】
工程(ii)において、繊維強化材をヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物中に埋込む。繊維強化材は、単に繊維強化材をヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物で覆い、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を繊維強化材に浸みこませることによって、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物中に埋込むことができる。
【0070】
さらに、繊維強化材が織布または不織布である場合、繊維強化材をヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物中にくぐらせることによって、該組成物を含浸することができる。織布または不織布は、典型的には、室温(約23±2℃)にて、1〜1,000cm/秒の速度でヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を通過させることができる。
【0071】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、すなわち、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムの製造方法の第二の工程では、繊維強化材に含浸したヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を硬化させるために十分な温度で加熱する。加熱は、大気圧下、減圧下あるいは加圧下で行う。含浸した繊維強化材は、典型的には室温(約23±2℃)〜250℃の温度、あるいは室温〜200℃の温度あるいは室温〜150℃の温度にて加熱する。含浸した繊維強化材を、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を硬化(架橋)させるために十分な長さの時間加熱する。例えば、含浸した繊維強化材を、典型的には150℃〜200℃の温度で0.1〜3時間加熱する。
【0072】
別法では、含浸した繊維強化材を、真空中、100℃〜200℃の温度で、1,000〜20,000Paの圧力で、0.5〜3時間加熱することができる。含浸した繊維強化材は、従来の真空バッグ法を用いて真空中で加熱することができる。典型的な方法では、ブリーダ(例えば、ポリエステル製)を、含浸した繊維強化材の上面に適用し、ブリーザ(例えば、ナイロンRTM製、ポリエステル製)をブリーダの上面に適用し、真空バッグフィルム(例えば、ナイロンRTM製)をブリーザの上面に適用し、組立体をテープでシールし、シールした組立体に真空(例えば、1,000Pa)を適用し、真空バッグを上述したように加熱する。
【0073】
剥離ライナーの代わりに平坦な硬質基板上にヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を塗布して硬化させ、繊維強化フィルムを引きはがすことにより、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムを製造することができる。
【0074】
繊維強化材を内蔵する硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、すなわち、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムは、典型的には10〜99重量%、あるいは30〜95重量%、あるいは60〜95重量%、あるいは80〜95重量%の硬化オルガノポリシロキサン樹脂を含む。同様に、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムは、典型的に15〜500μm、あるいは15〜300μm、あるいは20〜150μm、あるいは30〜125μmの厚さを有する。
【0075】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムは、典型的には、フィルムが、直径3.2mm以下の円筒状のスチールマンドレル上でひびが入ることなく曲がるような柔軟性を有する。ここで、柔軟性は、ASTM標準D522-93aの方法Bの記載に準拠して測定する。
【0076】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムは、低い線熱膨張率(CTE)、高い引張強さ、および高い弾性率を有する。例えば、この繊維強化フィルムは、典型的には、室温(約23±2℃)〜200℃の温度で、0〜80μm/m℃、あるいは0〜20μm/m℃、あるいは2〜10μm/m℃の線熱膨張率(CTE)を有する。同様に、この繊維強化フィルムは、典型的には、25℃で50〜200MPa、あるいは80〜200MPa、あるいは100〜200MPaの引張強さを有する。さらに、この繊維強化フィルムは、典型的には、25℃で2〜10GPa、あるいは2〜6GPa、あるいは3〜5GPaのヤング率を有する。
【0077】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムは、可視領域において透明である。
硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムの透明性は、多くの要因、例えば、硬化オルガノポリシロキサン樹脂の屈折率、フィルムの厚さ、および繊維強化材の屈折率等に左右される。硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムは、典型的には、電磁スペクトルの可視領域において少なくとも50%、あるいは少なくとも60%、あるいは少なくとも75%、あるいは少なくとも85%の透過性(透過率(%))を有する。
【0078】
このようにして製造された硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムは、独立フィルムである。すなわち、ガラス板、金属板、セラミック板のような基板上にコーティングされたフィルムではなく、独立した状態で存在する。なお、独立フィルムは、セルフサポーテイングフィルム(self-supporting film)、あるいはアンサポーテッドフィルム(unsupported film)とも称される。
【0079】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルム中の硬化オルガノポリシロキサン樹脂は、可視光領域に特定の光吸収帯を有さず、400nmにおいて85%以上の光透過率であり、また、500〜700nmの波長範囲で88%以上の光透過率を具備する。
この硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムは、溶融物に応力を印加して製造されるものではないので、高分子鎖の配向の問題が存在しない。したがって、複屈折は無視できる程度に小さい。
【0080】
この繊維強化材を内蔵する硬化オルガノポリシロキサン樹脂は、成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基と成分(B)中のケイ素原子結合水素原子間のヒドロシリル化反応による架橋反応により得られるものである。このようなヒドロシリル化架橋反応では、架橋に伴い低分子量の副生物が発生しないので、通常の熱硬化性樹脂にみられる縮合型架橋反応に比べて、架橋に伴うフィルムの体積収縮は小さく抑えられる。このため、ヒドロシリル化架橋反応により得られる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しく独立フィルムでは、フィルム中の内部応力も小さい。したがって、内部応力に起因する歪の発生が抑止される。このことは、フィルムの光学的均一性の向上および強度の向上にも好ましく寄与する。
【0081】
また、この無機繊維強化材により補強された硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しく独立フィルムは、300℃まで加熱してもフィルム形状を維持し、且つ、重量変化もみられない。また、加熱後の機械的特性にも優れており、機械的特性は加熱前後でほとんど変化しない。したがって、上記の繊維強化材のうちの無機繊維強化材により補強された硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しく独立フィルムは、ポリカーボネート等の汎用エンジニアリングプラスチック並みの高耐熱性を有しているので、透明無機物層の形成時に高温に曝されることのあるガスバリアー性フィルムの基材として好適である。
【0082】
成分(A)の代表例であるメチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂は常温では屈折率1.41〜1.54である。フェニル基含有量が多いほど屈折率が大きくなる。ガラス繊維は常温では屈折率1.53なので、ガラス繊維強化硬化メチルフェニルポリシロキサン樹脂フィルムは常温では透明である。ただし、昇温するに従って透明性が低下し、65℃では不透明になるので、常温での使用に有用である。
【0083】
本願第1発明の請求項1に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、前記したように、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
前記繊維強化フィルムと前記透明無機物層間に、
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層から選択される硬化オルガノポリシロキサン層が介在していることを特徴とする。
【0084】
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は、(a-1)有機官能基を有し,シラノール基とヒドロシリル基を有しない硬化オルガノポリシロキサン層、(a-2)有機官能基とシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層および(a-3)有機官能基とヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層からなる群から選択される。もっとも、(a-4)有機官能基とシラノール基とヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層もあり得る。
【0085】
(a-1)有機官能基を有し,シラノール基とヒドロシリル基を有しない硬化オルガノポリシロキサン層は、(a-1-1)有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物がヒドロシリル化反応により架橋して生成した,有機官能基を有し,シラノール基と残留ヒドロシリル基を有しない硬化オルガノポリシロキサン層である。
【0086】
(a-2)有機官能基とシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は、(a-2-1)有機官能基とケイ素原子結合加水分解性基を有する硬化性オルガノシランもしくはその組成物が縮合反応により架橋して生成した,有機官能基とシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層、または、(a-2-2)有機官能基とケイ素原子結合加水分解性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンもしくはその組成物が,縮合反応により架橋して生成した,有機官能基とシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層である。
【0087】
(a-3)有機官能基とヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は、(a-3-1)有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物がヒドロシリル化反応により架橋して生成した,有機官能基と残留ヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層である。
【0088】
本願第1発明の実施態様1のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
前記繊維強化フィルムと前記透明無機物層間に、
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が介在していることを特徴とする。
【0089】
有機官能基は硬化オルガノポリシロキサン層を構成しているオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合している。
有機官能基は、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層の接着性、密着性の点で、酸素含有有機官能基が好ましく、炭素,水素および酸素の各原子からなる有機官能基、炭素,水素,酸素および窒素の各原子からなる有機官能基がより好ましい。これら酸素含有有機官能基はカルボニル基、またはカルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合、エーテル結合(C-O-C)などの極性結合を有するものがさらに好ましい。硬化オルガノポリシロキサン層がヒドロシリル化反応により形成される場合は、ヒドロシリル化反応を阻害しないものが好ましい。有機官能基、特に酸素含有有機官能基の好ましい例として、アクリル官能基とエポキシ官能基とオキセタニル官能基が挙げられる。アクリル官能基の一種ということができるクロトニル官能基、シンナモイル官能基も挙げられる。なお、アクリル官能基はアクリロイル官能基とも称され、代表例は式CH2=CHCO−および式CH2=CH(CH3)CO−で示される。
【0090】
好ましいアクリル官能基として、アクリロキシ官能基およびアクリルアミド官能基が挙げられる。
アクリロキシ官能基の好ましい例として、3−アクリロキシプロピル基のようなアクリロキシアルキル基(CH2=CHCOOR3−、式中R3はプロピレン基のようなアルキレン基)、3−メタクリロキシプロピル基のようなメタクリロキシアルキル基(CH2=C(CH3)COOR3−、式中R3はプロピレン基のようなアルキレン基)が挙げられる。
アクリルアミド官能基の好ましい例として、3−N−メチル−N−アクリルアミドプロピル基のようなN−アルキル−N−アクリルアミドアルキル基(CH2=CHCON(R4)R3−、式中R3はプロピレン基のようなアルキレン基、R4はメチル基のようなアルキル基)及び3−N−メチル−N−メタクリルアミドプロピル基のようなN−アルキル−N−メタクリルアミドアルキル基(CH2=CH(CH3)CON(R4)R3−、式中R3はプロピレン基のようなアルキレン基、R4はメチル基のようなアルキル基)が挙げられる。それらのアルキレン基は炭素原子数2〜6が好ましい。
【0091】
エポキシ官能基の好ましい具体例として、エポキシメチル基、2−エポキシエチル基、β−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基のようなグリシドキシアルキル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基のようなエポキシシクロヘキシルアルキル基が挙げられる。それらのアルキレン基は炭素原子数2〜6が好ましい。オキセタニル官能基の好ましい具体例として、2−オキセタニルブチル基、3−(2−オキセタニルブチルオキシ)プロピル基が挙げられる。
【0092】
上記のアクリル官能基は、紫外線、電子線、ガンマー線などの高エネルギー線ないし活性エネルギー線照射により重合させることができ。それ故にこのアクリル官能基は重合可能な有機官能基でもある。また、上記のアクリル官能基は、加熱により重合させることができるので、重合可能な有機官能基の領域にはいる。重合性を有する有機官能基として、その他にアルケニルエーテル官能基(例えば、ビニロキシアルキル基、アリロキシアルキル基、アリロキシフェニル基)がある。このアルケニル基は炭素原子数2〜6が好ましい。
【0093】
上記のエポキシ官能基は、光重合開始剤存在下で紫外線照射により開環重合させることができる。上記のエポキシ官能基は、重合可能な有機官能基でもある。
エポキシ官能基およびオキセタニル官能基は、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン、イミダゾール、有機ジカルボン酸、有機ジカルボン酸無水物などの触媒により開環重合させることができるので、重合可能な有機官能基でもある。
【0094】
その他の有機官能基として、水酸基を含む有機官能基、オキシアルキレン結合を有する有機官能基が挙げられる。
水酸基を含む有機官能基として、3−ヒドロキシプロピル基のようなヒドロキシアルキル基が例示される。オキシアルキレン結合を有する有機官能基として、アルコキシアルキル基、ヒドロキシ(エチレンオキシ)プロピル基、ヒドロキシポリ(エチレンオキシ)プロピル基のようなヒドロキシポリ(アルキレンオキシ)アルキル基が例示される。
【0095】
酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層の接着性、密着性の点で、アミノ基を含む有機官能基も使用可能であり、3−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)3−アミノプロピル基、N−フェニルアミノプロピル基、N−シクロヘキシルアミノプロピル基、N−ベンジルアミノプロピル基が例示される。
【0096】
有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルム上に、有機官能基を有する硬化性オルガノシラン自体もしくはその組成物をコーティングし、硬化させることにより形成することができる。
有機官能基を有する硬化性オルガノシラン自体もしくはその組成物は、有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシラン自体もしくはその組成物が好ましく、ケイ素原子結合縮合反応性基間の縮合反応(例えば、脱アルコール縮合反応)により硬化させることができる。
【0097】
また、有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体もしくはその組成物をコーティングし、硬化させることにより形成することができる。
有機官能基を有する硬化性オルガノシロキサン自体もしくはその組成物は、有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシロキサン自体もしくはその組成物が好ましく、ケイ素原子結合縮合反応基(例えば、アルコキシ基とシラノール基)間の縮合反応(例えば、脱アルコール縮合反応)により硬化させることができる。
有機官能基を有する硬化性オルガノシロキサン組成物は、有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノシロキサン組成物も好ましく、ケイ素原子結合アルケニル基とヒドロシリル基間の付加反応により硬化させることができる。
【0098】
有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサンは、有機官能基を1分子中に1個以上有すればよいが、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層から選択される透明無機物層の接着性、密着性の点で、複数個有することが好ましい。有機官能基は、有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサンにC-Si結合で結合した全有機基の100モル%であってもよい。例えば、後述する合成例2では43.4モル%である。
【0099】
(1)有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシランとして、1個の有機官能基と3個のケイ素原子結合加水分解性基を有する湿気硬化型のオルガノシランが例示される。
(2)有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシラン組成物として、1個の有機官能基と3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランと縮合反応触媒とからなる縮合反応硬化性オルガノシラン組成物;1個の有機官能基と2個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランと、3個または4個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランと、縮合反応触媒とからなる縮合反応硬化性オルガノシラン組成物が例示される。
【0100】
(3)有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサンとして、1分子中に1個以上の有機官能基と3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有する湿気硬化型のオルガノポリシロキサンが例示される。
(4)有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物として、1分子中に1個以上の有機官能基と3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンと、縮合反応触媒とからなる硬化性組成物;1分子中に1個以上の有機官能基と1個もしくは2個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンと、有機官能基を有せず3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンと、縮合反応触媒とからなる硬化性組成物が例示される。
【0101】
ここで、有機官能基を有する硬化性オルガノシラン、有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシラン組成物、有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン、有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン、有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物における有機官能基は、[0089]〜[0094]で説明したとおりである。
【0102】
有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシラン及び有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサンにおける縮合反応性基は、シラノール基およびケイ素原子結合加水分解性基であり、後者としてアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシロキシ基、ケトキシム基、アルキルアミノ基が例示されるが、アルコキシ基が好ましく、加水分解により生成したアルコールの揮散性の点でメトキシ基とエトキシ基がより好ましい。
【0103】
ケイ素原子結合加水分解性基が湿気により加水分解縮合しない場合や、加水分解縮合しにくい場合は、加熱または加水分解縮合反応触媒の補助的使用が必要である。加水分解縮合反応触媒として、テトラアルコキシチタン、アルコキシチタンキレート、テトラアルコキシジルコニウム、トリアルコキシアルミニウム、有機スズ化合物(例えば、ジアルキルスズジカルボン酸塩、テトラカルボン酸スズ塩)、有機アミンが例示される。
上記の有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシラン組成物、有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化物の光透過性を損なわない限り補強性シリカ微粉末を含有してもよい。
【0104】
1分子中に1個の有機官能基と3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランは、式:YR5Si(OR6)3(式中、YR5は有機官能基であり、R5は炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R6は炭素原子数1〜6のアルキル基である)で示される有機官能基を有するオルガノトリアルコキシシランが代表的である。ここで、有機官能基は、前述したとおりである。炭素原子数1〜6のアルキレン基として、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が例示される。R6として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示される。炭素原子数1〜6のアルキレン基は1〜6の炭素原子数を有するアルキレン基を意味し、炭素原子数1〜6のアルキル基は1〜6の炭素原子数を有するアルキル基を意味する。
【0105】
有機官能基を有するオルガノトリアルコキシシランの具体例として、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−ベンジルアミノプロピルトリメトキシシランがある。
【0106】
1分子中に1個の有機官能基と1もしくは2個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランは、式:YR5SiR7(OR6)2または式:YR5Si(R7)2(OR6)(式中、YR5は有機官能基であり、R5は炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R6は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R7は炭素原子数1〜6のアルキル基またはフェニル基である)で示される有機官能基を有するオルガノジアルコキシシランまたはオルガノモノアルコキシシランが代表的である。
【0107】
その具体例として、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシランがある。
【0108】
1分子中に有機官能基を有せず3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランは、式:R8Si(OR6)3(式中、R8は炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基またはフェニル基であり、R6は炭素原子数1〜6のアルキル基である)で示される疎水性のオルガノトリアルコキシシランが代表的である。炭素原子数2〜6のアルケル基は2〜6の炭素原子数を有するアルキル基を意味する。
具体例として、アルキルトリアルコキシシラン(例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン)、フェニルトリアルコキシシラン(例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン)、ビニルトリアルコキシシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン)がある。
【0109】
1分子中に有機官能基を有せず4個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランとして、テトラアルコキシシラン(例えば、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン)が例示される。
【0110】
1分子中に1個以上の有機官能基と3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンとして、式:YR5Si(OR6)3(式中、YR5は有機官能基であり、R5は炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R6は炭素原子数1〜6のアルキル基である)で示される有機官能基を有するオルガノトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物、式:YR5Si(OR6)3で示される有機官能基を有するオルガノトリアルコキシシランと両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン(重合度2〜50)の部分縮合反応物(ケイ素原子結合アルコキシ基を4個保有)が例示される。
【0111】
1分子中に1個以上の有機官能基と1もしくは2個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンとして、式:YR5SiR7(OR6)2(式中、YR5は有機官能基であり、R5は炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R6は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R7は炭素原子数1〜6のアルキル基またはフェニル基である)で示される有機官能基を有するオルガノジアルコキシシランと両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン(重合度2〜50)の部分縮合反応物(ケイ素原子結合アルコキシ基を2個保有)が例示される。
【0112】
1分子中に有機官能基を有せず3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンとして、式:R8Si(OR6)3(式中、R8は炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基またはフェニル基であり、R6は炭素原子数1〜6のアルキル基である)で示される疎水性のオルガノトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物、式:R8Si(OR6)3で示される疎水性のオルガノトリアルコキシシランと両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン(重合度2〜50)の部分縮合反応物(ケイ素原子結合アルコキシ基を4個保有)が例示される。
【0113】
上記の有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシラン自体、その組成物;上記の有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムにコーティングし、常温放置または加熱により硬化させることができる。湿気により加水分解縮合しない場合や、加水分解縮合しにくい場合は、前述したように加熱または加水分解縮合反応触媒の補助的使用が必要である。
【0114】
有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物として、
(1)1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシラン(ただし、2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシランの組合せを除く)と、ヒドロシリル化反応触媒からなる組成物、
(2)1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(ただし、2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンの組合せを除く)と、ヒドロシリル化反応触媒からなる組成物が例示される。
【0115】
さらに、
(3)1分子中に有機官能基を有せず、2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(ただし、2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンの組合せを除く)、ヒドロシリル化反応触媒からなる組成物、
【0116】
(4)1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(ただし、2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンの組合せを除く)、ヒドロシリル化反応触媒からなる組成物が例示される。
【0117】
上記の有機官能基を有するオルガノポリシロキサン、有機官能基を有するオルガノシランにおける有機官能基は、段落[0089]〜[0094]で説明したとおりである。
上記のオルガノポリシロキサン中のアルケニル基として、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示されるが、ビニル基が好ましい。
【0118】
1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの具体例として、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−メタクリルオキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−メタクリルオキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−グリシドキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、(3−グリシドキシプロピル)シロキサン・ジメチルシロキサンコポリマー、3−メタクリルオキシプロピルシロキサン・ジメチルシロキサンコポリマー、3−メタクリルオキシプロピルシルセスキオキサン−ビニルシルセスキオキサンコポリマー、3−グリシドキシプロピルシルセスキオキサン−ビニルシルセスキオキサンコポリマーがある。
【0119】
1分子中に有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの具体例として、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、メチルトリ(ジメチルビニルシロキシ)シラン;両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマーがある。その他に、成分(A)の具体例と同様なものがある。
【0120】
1分子中に有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシランの具体例は、成分(B)の具体例の他に、ケイ素原子結合水素原子を2個有するアルキルシランやシリル化脂肪族炭化水素がある。
【0121】
1分子中に有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンは、成分(B)の具体例の他に、式(HMe2Si)2O、(HMe2SiO)2SiMe2、(HMe2Si)(OSiMe2)2(OSiMe2H)、(HMe2SiO)3SiMeで示されるメチルハイドロジェンシロキサンオリゴマー、環状メチルハイドロジェンシロキサンオリゴマー(重合度4〜6);メチルトリ(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シラン、テトラ(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シラン;
両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度2〜30)、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー(重合度2〜30)、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(重合度3〜30)が例示される。
【0122】
これらはいずれも1分子中に2個以上のケイ素結合水素原子を有するが、オルガノシロキサンオリゴマーやオルガノポリシロキサンは、1分子中に平均2個以上のケイ素結合水素原子を有することが好ましい。
【0123】
1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンの具体例として、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−メタクリルオキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−メタクリルオキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−グリシドキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマーがある。
これらはいずれも1分子中に2個以上のケイ素結合水素原子を有するが、1分子中に平均2個以上のケイ素結合水素原子を有することが好ましい。
【0124】
前述のヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物におけるケイ素原子結合水素原子とケイ素原子結合アルケニル基のモル比は、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシランもしくはオルガノポリシロキサンとが十分に架橋して硬化層を形成するのに十分なモル比であればよい。1:1より大が好ましいが、0.5〜1であってもよい。
【0125】
前述のヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物におけるヒドロシリル化反応触媒は、成分(C)と同様なものが例示され、同様な量を使用することが好ましい。
【0126】
上記の有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、常温でもヒドロシリル化反応するので、ヒドロシリル化反応遅延剤を含有することが好ましい。
ヒドロシリル化反応遅延剤は、成分(A)、成分(B)、成分(C)からなるヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物用のヒドロシリル化反応遅延剤と同様なものが例示され、同様な量を使用することが好ましい。
上記の有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化物の光透過性を損なわない限り補強性シリカ微粉末を含有してもよい。
【0127】
有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムにコーティングし、常温放置または加熱して硬化させる。該組成物が、ヒドロシリル化反応遅延剤を含有しており、熱硬化性である場合は、加熱して硬化させることが必要である。
【0128】
本願第1発明の実施態様2のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
前記繊維強化フィルムと前記透明無機物層間に、
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が介在していることを特徴とする。
【0129】
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層として、(b-1)有機官能基を有せずケイ素原子結合加水分解性基を有する硬化性オルガノシラン若しくはその組成物が縮合反応により架橋して生成した,有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層、および、(b-2)有機官能基を有せずケイ素原子結合加水分解性基を有する硬化性オルガノポリシロキサン若しくはその組成物が縮合反応により架橋して生成した,有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層がある。
【0130】
有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、1分子中に有機官能基を有せず3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランをコーティングし、加水分解縮合反応触媒存在下または不在下で加水分解縮合することにより形成することができる。また、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、1分子中に有機官能基を有せず3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランと1分子中に有機官能基を有せず1個もしくは2個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランの混合物をコーティングし、加水分解縮合反応触媒存在下または不在下で加水分解縮合することにより形成することができる。また、前記オルガノシランの代わりに、1分子中に有機官能基を有せず3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン自体またはその組成物を使用することによっても、形成することができる。
上記のオルガノシランおよびオルガノポリシロキサン具体例と、加水分解縮合反応触媒は、段落[0099]〜[0112]で説明したとおりである。
【0131】
有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシラン及び有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサンにおける縮合反応性基は、シラノール基およびケイ素原子結合加水分解性基である。ケイ素原子結合加水分解性基として、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシロキシ基、ケトキシム基、アルキルアミノ基が例示されるが、アルコキシ基が好ましく、加水分解により生成したアルコールの揮散性の点でメトキシ基とエトキシ基がより好ましい。
【0132】
1分子中に有機官能基を有せず3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランは、式:R8Si(OR6)3(式中、R8は炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基またはフェニル基であり、R6は炭素原子数1〜6のアルキル基である)で示される疎水性のオルガノトリアルコキシシランが代表的である。
具体例として、アルキルトリアルコキシシラン(例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン)、フェニルトリアルコキシシラン(例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン)、ビニルトリアルコキシシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン)がある。
【0133】
1分子中に有機官能基を有せず4個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランとして、テトラアルコキシシラン(例えば、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン)が例示される。
【0134】
1分子中に有機官能基を有せず3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンとして、式:R8Si(OR6)3(式中、R8は炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基またはフェニル基であり、R6は炭素原子数1〜6のアルキル基である)で示される疎水性のオルガノトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物、式:R8Si(OR6)3で示される疎水性のオルガノトリアルコキシシランと両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン(重合度2〜50)の部分縮合反応物(ケイ素原子結合アルコキシ基を4個保有)が例示される。
【0135】
上記の有機官能基を有しない縮合反応硬化性オルガノシラン自体、その組成物;上記の有機官能基を有しない縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムにコーティングし、常温放置または加熱により硬化させることができる。湿気により加水分解縮合しない場合や、加水分解縮合しにくい場合は、前述したように加熱または加水分解縮合反応触媒の補助的使用が必要である。
【0136】
加水分解縮合反応触媒として、テトラアルコキシチタン、アルコキシチタンキレート、テトラアルコキシジルコニウム、トリアルコキシアルミニウム、有機スズ化合物(例えば、ジアルキルスズジカルボン酸塩、テトラカルボン酸スズ塩)、有機アミンが例示される。
上記の有機官能基を有しない縮合反応硬化性オルガノシラン組成物、有機官能基を有しない縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化物の光透過性を損なわない限り補強性シリカ微粉末を含有してもよい。
【0137】
酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層の接着性、密着性の点で、シラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン中のシラノール基含有量は、全ケイ素原子結合基に対して0.5〜40モル%が好ましく、1〜30モル%がより好ましい。すなわち、シラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合水酸基とケイ素原子の平均モル比が、0.005〜0.40となる量が好ましく、0.01〜0.30となる量がより好ましい。
【0138】
本願第1発明の実施態様3のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
前記繊維強化フィルムと前記透明無機物層間に、
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が介在していることを特徴とする。
【0139】
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は、有機官能基を有しないヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物がヒドロシリル化反応することにより架橋して生成した,(c-1)有機官能基を有せず残留ヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層である。
【0140】
このヒドロシリル基は、硬化オルガノポリシロキサン層を形成しているオルガノポリシロキサン中の1部のケイ素原子に結合している。
【0141】
有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、(a)1分子中に平均1.2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと(b)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基)を有する有機ケイ素化合物と(c)ヒドロシリル化反応触媒からなり、成分(b)中のヒドロシリル基と成分(a)中のアルケニル基のモル比が1.0より大であるヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物をコーティングし、硬化させることにより形成することができる。
アルケニル基は、1分子中に平均1.2以上存在する。硬化性の点で、アルケニル基は、1分子中に平均1.5個以上存在することが好ましく、平均2.0個以上存在することがより好ましい。
【0142】
成分(b)が1分子中に2個のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物である場合は、成分(a)が成分(b)と付加反応して硬化するためには、アルケニル基を1分子中に3個以上有する分子を含まなければならない。
成分(a)がアルケニル基を1分子中に2個有する場合、成分(a)が成分(b)と付加反応して硬化するためには、成分(b)は1分子中に3個以上のケイ素原子結合水素原子を有する分子を含む必要がある。
成分(a)は、アルケニル基を1分子中に3個以上有するオルガノポリシロキサン、あるいはアルケニル基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンが主体である必要があるが、アルケニル基を1分子中に1個有するオルガノポリシロキサンを含有してもよい。
【0143】
成分(b)中のヒドロシリル基と成分(a)中のアルケニル基のモル比は、透明無機物層の接着性、密着性の点で、好ましくは1.05以上1.5以下であり、より好ましくは1.1以上1.5以下である。
もっとも、ケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基)はヒドロシリル化反応以外の原因により消失する恐れがあるので、硬化後にケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基)が残存していることを確認することが必要である。確認手段として赤外分光光度計によるヒドロシリル基の吸収ピークの検出がある。
【0144】
成分(a)は、成分(A)と同様なものが例示され、さらには前記した1分子中に有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(段落[0119]参照)と同様なものが例示される。
成分(b)は、成分(B)と同様なものが例示され、さらには前記した1分子中に有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(段落[0121]、[0123]参照)と同様なものが例示される。成分(c)は、成分(C)と同様なものが例示される。
【0145】
成分(a)と成分(b)と成分(c)とからなるヒドロシリル化反応硬化組成物は、常温でもヒドロシリル化反応するので、ヒドロシリル化反応遅延剤を含有することが好ましい。
ヒドロシリル化反応遅延剤は、成分(A)、成分(B)、成分(C)からなる組成物用のヒドロシリル化反応遅延剤と同様なものが例示され、同様な量を含有すればよい。
【0146】
成分(a)と成分(b)と成分(c)とからなるヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物、成分(a)と成分(b)と成分(c)とヒドロシリル化反応遅延剤とからなるヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化条件(段落[0127]参照)と同様の条件でコーティングし、硬化させればよい。
【0147】
本願第1発明の実施態様4のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
前記繊維強化フィルムと前記透明無機物層間に、
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の該重合性有機官能基同士が重合することにより生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が介在していることを特徴とする。
【0148】
重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサンの硬化性の点で、重合性有機官能基同士を連鎖重合に供する場合は、該オルガノポリシロキサンは1分子中に重合性有機官能基を2個以上有する分子を含まなければならず、逐次重合に供する場合は、該オルガノポリシロキサンは1分子中に重合性有機官能基を3個以上有する分子を含まなければならない。重合性有機官能基は、重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサンにC-Si結合で結合した全有機基の100モル%であってもよい。例えば、後述する合成例3では33.3モル%である。
【0149】
これら重合性有機官能基は、架橋点を形成し、オルガノポリシロキサンを硬化可能とする。かかる重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士の重合により形成された硬化皮膜には、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層から選択される透明無機物層が接着、密着しやすい。透明無機物層の接着性、密着性の点で、重合性有機官能基は、好ましくは含酸素重合性有機官能基であり、より好ましくは炭素原子、水素原子および酸素原子からなる、あるいは、炭素原子、水素原子、酸素原子および窒素原子からなる含酸素重合性有機官能基であり、カルボニル基、またはカルボン酸エステル結合、エーテル結合、カルボン酸アミド結合のような極性結合を有することが好ましい。
【0150】
重合性有機官能基同士が重合して生成した有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルム上に、重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサンをコーティングし、重合性有機官能基同士を重合させて硬化させることにより形成することができる。このようなオルガノポリシロキサン間で、これら重合性有機官能基同士が重合すると、重合して生成した有機基が架橋鎖となり、これらオルガノポリシロキサンは網目状(ネットワーク状)となり硬化する。
【0151】
重合性有機官能基同士が重合して生成した有機基は、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層から選択される透明無機物層の接着性、密着性の点で、酸素含有有機基が好ましく、炭素,水素および酸素の各原子からなる酸素含有有機基、炭素,水素,酸素および窒素の各原子からなる酸素含有有機基がより好ましい。これら酸素含有有機基はカルボニル基または、カルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合、エーテル結合(C-O-C)などの極性結合を有するものがより好ましい。
【0152】
重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基は、重合容易性の点で、前記したアクリル官能基、エポキシ官能基、オキセタニル官能基およびアルケニルエーテル官能基が好ましい。アクリル官能基の一種ということができるクロトニル官能基、シンナモイル官能基も挙げられる。なお、アクリル官能基はアクリロイル官能基とも称され、代表例は式CH2=CHCO−で示される。
【0153】
好ましいアクリル官能基として、アクリロキシ官能基およびアクリルアミド官能基が挙げられる。
アクリロキシ官能基の好ましい例として、3−アクリロキシプロピル基のようなアクリロキシアルキル基(CH2=CHCOOR3−、式中R3はプロピレン基のようなアルキレン基)、3−メタクリロキシプロピル基(CH2=C(CH3)COOR3−、式中R3はプロピレン基のようなアルキレン基)のようなメタクリロキシアルキル基が挙げられる。
アクリルアミド官能基の好ましい例として、3−N−メチル−N−アクリルアミドプロピル基のようなN−アルキル−N−アクリルアミドアルキル基(CH2=CHCON(R4)R3−、式中R3はプロピレン基のようなアルキレン基、R4はメチル基のようなアルキル基)及び3−N−メチル−N−メタクリルアミドプロピル基のようなN−アルキル−N−メタクリルアミドアルキル基(CH2=CHCON(R4)R3−、式中R3はプロピレン基のようなアルキレン基、R4はメチル基のようなアルキル基)が挙げられる。それらのアルキレン基は炭素原子数2〜6が好ましい。
【0154】
エポキシ官能基の好ましい具体例として、エポキシメチル基、2−エポキシエチル基、β−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基のようなグリシドキシアルキル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基のようなエポキシシクロヘキシルアルキル基が挙げられる。オキセタニル官能基の好ましい具体例として、2−オキセタニルブチル基、3−(2−オキセタニルブチルオキシ)プロピル基が挙げられる。アルケニルエーテル官能基の好ましい具体例として、ビニロキシアルキル基、アリロキシアルキル基、アリロキシフェニル基が挙げられる。このアルケニル基は炭素原子数2〜6が好ましい。
【0155】
重合性有機官能基同士がアクリル官能基やアルケニルエーテル官能基(例えばビニロキシアルキル基)であると、紫外線、電子線、ガンマー線などの高エネルギー線ないし活性エネルギー線照射により重合させることができる。また、重合性有機官能基同士がアクリル官能基であると加熱により重合させることができる。加熱重合の場合にはラジカル重合開始剤を併用してもよい。重合性有機官能基がエポキシ官能基およびオキセタニル官能基であると、光重合開始剤存在下で紫外線照射により開環重合させることができる。また、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン、イミダゾール、有機ジカルボン酸、有機ジカルボン酸無水物などの触媒の使用により開環重合させることができる。
【0156】
重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサンの具体例として、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−メタクリルオキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−メタクリルオキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチル(3−メタクリルオキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−メタクリルオキシプロピル)シロキサンコポリマー、3−メタクリルオキシプロピルポリシルセスキオキサン、3−メタクリルオキシプロピルシルセスキオキサン-フェニルシルセスキオキサンコポリマー、3−メタクリルオキシプロピルシルセスキオキサン-メチルシルセスキオキサンコポリマー;両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−グリシドキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチル(3−グリシドキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサンコポリマー、3−グリシドキシプロピルポリシルセスキオキサン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルポリシルセスキオキサン、3−グリシドキシプロピルシルセスキオキサン-フェニルシルセスキオキサンコポリマー、3−グリシドキシプロピルシルセスキオキサン-メチルシルセスキオキサンコポリマーがある。
【0157】
本願第1発明の実施態様5のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
前記繊維強化フィルムと前記透明無機物層間に、
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層から選択される硬化オルガノポリシロキサン層が介在していることを特徴とする。
【0158】
重合性有機官能基同士が重合して生成した有機基を有し、架橋性基同士が反応することにより架橋して生成した硬化オルガノポリシロキサン層は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しく独立フィルム上に、一分子中に1個以上の重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンをコーティングし、重合性有機官能基同士を重合させるとともに、架橋性基同士を反応させることにより形成することができる。
【0159】
重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物の硬化機構は、縮合反応およびヒドロシリル化反応が好ましい。
【0160】
架橋性基として、縮合反応用にシラノール基とケイ素原子結合加水分解性基が例示され、ヒドロシリル化反応用にアルケニル基とヒドロシリル基が例示される。ケイ素原子結合加水分解性基として、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシロキシ基、ケトキシム基、アルキルアミノ基が例示されるが、アルコキシ基が好ましく、加水分解により生成したアルコールの揮散性の点でメトキシ基とエトキシ基がより好ましい。
重合性有機官能基は前述したとおりのものである。
【0161】
1分子中に1個以上の重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンとして、1分子中に1個以上の重合性有機官能基と3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有する湿気硬化型のオルガノポリシロキサンが例示される。
【0162】
1分子中に1個以上の重合性有機官能基と架橋性基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物として、(1)1分子中に1個以上の重合性有機官能基と3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンと、縮合反応触媒とからなる縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物;
(2)1分子中に1個以上の重合性有機官能基と1個もしくは2個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンと、重合性有機官能基を有せず3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンと、縮合反応触媒とからなる縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物が例示される。
【0163】
1分子中に1個以上の重合性有機官能基と架橋性基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物として、
(1)1分子中に1個以上の重合性有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に重合性有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシランと、ヒドロシリル化反応触媒からなるオルガノポリシロキサン組成物、
(2)1分子中に1個以上の重合性有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に重合性有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応触媒とからなるオルガノポリシロキサン組成物が例示される。
【0164】
さらには、
(3)1分子中に重合性有機官能基を有せず、2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に1個以上の重合性有機官能基と2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応触媒とからなるオルガノポリシロキサン組成物、
(4)1分子中に1個以上の重合性有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に1個以上の重合性有機官能基と2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応触媒からなるオルガノポリシロキサン組成物が例示される。
【0165】
上記の(1)〜(4)のようなヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、常温でもヒドロシリル化反応するので、ヒドロシリル化反応遅延剤を含有することが好ましい。
ヒドロシリル化反応遅延剤は、成分(A)、成分(B)、成分(C)からなるヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物用のヒドロシリル化反応遅延剤と同様なものが例示され、同様な量を使用することが好ましい。
【0166】
前記ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物におけるケイ素原子結合水素原子とケイ素原子結合アルケニル基のモル比は、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシランもしくはオルガノポリシロキサンとが十分に架橋して硬化層を形成するのに十分なモル比であればよい。1:1より大が好ましいが、0.5〜1であってもよい。
【0167】
1分子中に1個以上の重合性有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの具体例として、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−メタクリルオキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−メタクリルオキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−グリシドキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマーがある。
【0168】
1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンの具体例として、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−メタクリルオキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−メタクリルオキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−グリシドキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマーがある。
【0169】
1分子中に重合性有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシラン、1分子中に重合性有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、1分子中に重合性有機官能基を有せず、2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの具体例は、既に説明したものと同様である。
【0170】
上記の重合性有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び、上記の重合性有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化物の光透過性を損なわない限り補強性シリカ微粉末を含有してもよい。
【0171】
上記の重合性有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサンは、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムに薄くコーティングし、重合性有機官能基同士を重合させるとともに、架橋性基同士を反応させることにより硬化させることができる。重合性有機官能基同士の重合は、前記したとおりである。硬化性オルガノポリシロキサン自体の架橋機構として縮合反応とヒドロシリル化反応が例示される。
【0172】
1分子中に1個以上の重合性有機官能基を有する複数の硬化性オルガノポリシロキサン間で、これら重合性有機官能基同士が重合し、硬化性オルガノポリシロキサンが架橋すると、これら複数のオルガノポリシロキサンは網目状(ネットワーク状)となり硬化する。
【0173】
上記の重合性有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムにコーティングし、重合性有機官能基同士を重合させるとともに、常温放置または加熱によりケイ素原子結合加水分解性基間の縮合反応により硬化させることができる。湿気により加水分解縮合しない場合や、加水分解縮合しにくい場合は、前述したように加熱または加水分解縮合反応触媒の補助的使用が必要である。
【0174】
上記の重合性有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムにコーティングし、重合性有機官能基同士を重合させるとともに、常温放置または加熱によりヒドロシリル化反応させて硬化させることができる。ヒドロシリル化反応遅延剤を含有しており、熱硬化性である場合は、加熱して硬化させることが必要である。重合性有機官能基同士を重合させる条件は、段落[0155]で記載したとおりである。
【0175】
請求項1記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、次の工程により製造することができる。
(I) (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、コーティング法により下記(a)〜(e)から選択される硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層;
(II) 前記硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成する。

本願第1発明の実施態様1〜実施態様5のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムを製造する場合に、上記の有機官能基を有する硬化性オルガノシラン自体、その組成物;上記の有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物;上記の有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化性オルガノシラン自体、その組成物;上記の有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物;上記の有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化性オルガノシラン自体、その組成物;上記の有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物;上記の重合性有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物;上記の重合性有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物上記の重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物が、常温で、高粘度の液状や、固形状であるときは、有機溶剤に溶解して薄層コーティング可能にすることが好ましい。ただし、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムにコーティング後、揮散させてから硬化させることが好ましく、低温加熱や温風吹付けにより有機溶剤を揮散させてから、硬化させることが好ましい。
【0176】
そのための有機溶剤は、ケイ素原子結合水素原子の加水分解を引き起こさず、200℃以下の加熱により揮発しやすいものが好ましい。好適な有機溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素;THF、ジオキサン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンが例示される。
【0177】
これら有機溶剤は、前記オルガノシラン、オルガノシラン組成物、オルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン組成物を溶解して薄層コーティング可能にする量を使用すればよい。
【0178】
上記の有機官能基を有する硬化性オルガノシラン自体、その組成物;上記の有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物;上記の重合性有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物;上記の重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物などを、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム表面へコーティングする方法として、刷毛塗り、ブレードコーティング、ローラコーティング、スピンコーティング、スプレー(噴霧)、ディップコーティングが例示される。
【0179】
硬化オルガノポリシロキサン層(a),(b),(c),(d)または(e)の厚みは、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム表面の微細な凹凸の凸部をも覆うのに十分な厚みであればよく、薄いほど好ましい。いわゆるプライマー層としての厚みが好ましい。
【0180】
硬化オルガノポリシロキサン層(a),(b),(c),(d)または(e)は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム表面の製造工程で付着した微小なごみ(異物)を覆い、窪みを埋めるので、その上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成すると、ボイドや、クラックの発生が抑制された良質な酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)及び酸化ケイ素層(酸化珪素膜)からなる群から選択される透明無機物層(透明無機物膜)を形成することができる。
【0181】
本願第2発明の請求項9に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50であり、前記硬化オルガノポリシロキサン樹脂がヒドロシリル基を有することを特徴とする。
【0182】
本願第2発明の請求項9に係る前記ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物
(ただし、成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50)を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる、可視光領域で透明でありヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、イオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成することによって製造されるものである。
【0183】
上記の成分(A)〜成分(C)、硬化オルガノポリシロキサン樹脂および硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムは、すでに説明したとおりである。
【0184】
ヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムは、成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比を1.05〜1.50として硬化させることにより形成することができる。もっとも、ケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基)はヒドロシリル化反応以外の原因により消失する恐れがあるので、硬化後にケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基)が残存していることを確認することが必要である。赤外分光光度計によるヒドロシリル基の吸収ピークの検出が確認に使用できる。
硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムがヒドロシリル基を有するので、該フィルム表面にイオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成すると、良好な酸化窒化ケイ素層を形成可能となる。
【0185】
本願第1発明と第2発明のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムにおける硬化オルガノポリシロキサン樹脂は、耐熱性を有し、吸水性に乏しい架橋物であるために、酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素または酸化ケイ素の蒸着時、特には真空蒸着(真空成膜)時に低分子量成分が蒸発して成膜に障害をきたすということがない。そのため種々の真空蒸着(真空成膜)方法を施してその表面にガスバリアー性無機物層を形成するのに好適である。
【0186】
すなわち、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムの温度が300℃以下である条件下で酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素または酸化ケイ素を蒸着、好ましくは真空蒸着(真空成膜)することによって、400nm〜800nmの波長領域において特定の吸収帯を有さない硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルム上に酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素または酸化ケイ素の蒸着層を備える、ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムを製造することができる。この300℃以下という温度条件は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムの変形や熱分解を抑制するために必要であり、より好適な温度は250℃以下である。
【0187】
本願第1発明のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムでは、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、硬化オルガノポリシロキサン層(a),(b),(c),(d)または(e)が形成され、その上に酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)または酸化ケイ層(酸化珪素膜)が形成されている。
【0188】
また、本願第2発明のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは繊維強化独立フィルムでは、ヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、イオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成されている。
そのため、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)は均一であり、各層間はよく接着、密着しており容易に剥離しない。なお、酸化窒化ケイ素は非晶質である。
【0189】
酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)および酸化ケイ層(酸化珪素膜)は、ともに光透過性が優れているので、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムの光透過性を損なわないが、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)が90%以上の光透過性を発揮するためには、酸素分率(O/(O+N))が、およそ40%〜80%であることが必要である。ここで、酸素量は、XPSで測定したSi2pの105eV近傍のSiOに由来するピーク強度と103〜104eV近傍のSiOに由来するピーク強度との比から求めることができる。
酸化窒化ケイ素(SiO)におけるx及びyの値の好ましい範囲は、酸素分率(O/(O+N))が、およそ40%〜80%となる数である。
【0190】
上記3層のうちでは高いバリアー性と透明性を併せ持つという点で酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)が最も優れている。
【0191】
酸化窒化ケイ素は、酸化珪素と窒化珪素の複合体であり、酸化珪素の含有量が多いと透明性が増し、窒化珪素の含有量が多いとガスバリアー性が増大する。なお、酸化窒化ケイ素は、窒化酸化ケイ素とも称され、単にSiONと称されることもある。
【0192】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成する方法は、蒸着法であり、そのうちでも反応性物理蒸着法が好ましい。そのうちでも、イオンプレーティング法、ついで、反応性スパッタリング法が好ましい。これらの方法によると300℃以下といった比較的低い温度で蒸着できるので、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムが熱の影響を殆ど受けない。
【0193】
イオンプレーティング法は、チャンバー内の蒸着物質を入れた坩堝と基板の間にプラズマを作って蒸着物質をイオン化し、適度に加速したイオン化蒸着物質を基板に到着させ、蒸着物質の活発なマイグレーションによって薄膜を形成するという方法である。イオンプレーティング法は、直流放電励起法と高周波励起法が代表的である。
【0194】
イオンプレーティングのうちでも、チャンバー内に反応性ガスを導入しておき、イオン化した蒸着物質と反応性ガスとの化合物の薄膜を形成するという方法が好ましい。酸化窒化珪素膜を形成するには、次の方法が使用できる。
(1)蒸着物質として酸化珪素または二酸化珪素を使用し、チャンバー内に窒素ガス、亜酸化窒素ガス、アンモニアなどの窒素源となるガスを導入する方法、(2)蒸着物質として窒化珪素を使用し、チャンバー内に酸素ガスを導入する方法、(3)蒸着物質として珪素を使用し、チャンバー内に窒素ガス、亜酸化窒素ガス、アンモニアなどの窒素源となるガスと酸素ガスを導入する方法。
イオンプレーティング法は基板への密着性がよく緻密な酸化窒化珪素膜を形成できるという長所がある。
【0195】
イオンプレーティング法の具体例として、特開2004−50821(JP2004−50821A)に記載されている方法がある。この方法では、成膜室下部にハースを具備し、成膜室側部にプラズマガンを具備し、成膜室上部に基板を配置したイオンプレーティング装置を使用する。ハースに挿入した酸化ケイ素ロッドをプラズマガンからのプラズマビームにより加熱して酸化ケイ素を蒸発させ、蒸発した酸化ケイ素をイオン化し、成膜室内に導入した窒素ガスと反応させて酸化窒化珪素とし、基板表面に付着させて酸化窒化珪素膜を形成している。実施例では、放電電流を120Aとし、キャリアーガスをArガスとし、反応ガスをNガスとし、成膜時圧力を3mTorr(0.40Pa)とし、基板温度は室温である。
【0196】
反応性スパッタリング法は、イオンガンやプラズマ放電で発生した不活性ガスイオンを電界で加速してターゲット(蒸着物質)に照射して表面の元素や化合物を弾き出し、反応性ガスと反応させつつ化合物を基板上に堆積させるという方法である。酸化窒化珪素膜を形成するには、(1)酸化珪素または二酸化珪素をターゲットとし、チャンバー内にアルゴンガスと窒素ガスを導入する方法、(2)窒化珪素(Si3N4)をターゲットとし、チャンバー内にアルゴンガスと酸素ガスを導入する方法、(3)珪素(Si)をターゲットとし、チャンバー内にアルゴンガスと窒素ガスと酸素ガスを導入する方法などがある。装置として2極スパッタリング装置やマグネトロンスパッタリング装置を用い、放電方式は、直流法と高周波が代表的である。
反応性スパッタリング法は、元素組成のコントロール性がよく、緻密な酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成できる。
【0197】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に酸化窒化ケイ素(酸化窒化珪素膜)を形成する別の方法として、化学気相蒸着法(CVD)があり、そのうちのプラズマCVD法、触媒CVD法および光CVD法が好ましい。反応させるガスは、モノシランガス(SiH)と、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、アンモニアガスなどの窒素源となるガスと、水素ガスが代表的である。
【0198】
プラズマCVD法で酸化窒化ケイ素層(窒化酸化珪素膜)を形成するには、例えば、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムが配備された真空容器内にモノシランガスとアンモニアガスと窒素ガスを導入し、内圧を13.3〜1330Pa(0.1〜10Torr)に保ち、高周波電界を加えるなどしてプラズマを発生させ、導入ガスがこのプラズマ内で励起されてできた成膜種を、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に堆積させる。
【0199】
触媒CVD法で酸化窒化ケイ素層(窒化酸化珪素膜)を形成するには、例えば、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムが配備された真空容器内にモノシランガスとアンモニアガスと水素ガスを導入し、タングステン線を約1700℃に加熱して導入したガスを分解・活性化し、約70℃に保持した硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に酸化窒化ケイ素層(窒化酸化珪素膜)を形成する。
【0200】
光CVD法で酸化窒化ケイ素層(窒化酸化珪素膜)を形成するには、例えば、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムが配備された真空容器内にモノシランガスとアンモニアガスと窒素ガスを導入し、内圧を133〜13300Pa(1〜100Torr)に保ち、ガスに紫外線またはレーザ光を照射して励起し、励起されてできた成膜種を、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に堆積させる。
【0201】
酸化窒化ケイ素(SiO)層(窒化酸化珪素膜)は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムの片面だけでなく両面に形成してもよい。また、複数回蒸着作業(成膜作業)をしてもよい。
【0202】
酸化窒化ケイ素(SiO)層(窒化酸化珪素膜)の厚さは、必要とするガスバリアー性や用途にもよるが、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10nm〜200nmの範囲がより好ましい。酸化窒化ケイ素層(窒化酸化珪素膜)が厚過ぎるとガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムの柔軟性が損なわれ、酸化窒化ケイ素層(窒化酸化珪素膜)自体にクラックが入りやすくなる。また、薄すぎると傷発生源との接触により酸化窒化ケイ素層(窒化酸化珪素膜)が破壊しやすくなり、ガスバリアー性が低下しやすくなる。
【0203】
窒化ケイ素層(窒化珪素膜)は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、反応性物理蒸着法などのPVD法により形成でき、プラズマCVD法、熱CVD法等のCVD法でも形成することができる。
【0204】
RFマグネトロンスパッタリング法により窒化珪素(Si)層を形成する具体例として、特開2004-142351(JP2004-142351A)に記載されている方法がある。
スパッタリング装置として、例えばバッチ式スパッタリング装置(アネルバ(株)製、SPF−530H)を使用する。チャンバー内に基材フィルムを載置し、60%の焼結密度を有する窒化珪素をターゲット材としてチャンバー内に搭載し、このターゲットと基材フィルムとの距離(TS距離)を50mmに設定する。
次に、チャンバー内を、到達真空度2.5×10−4Paまで減圧し、チャンバー内にアルゴンガスを流量20sccmで導入し、チャンバー内圧力を0.25Paに保ち、RFマグネトロンスパッタリング法により、投入電力1.2kWで基材フィルム上に窒化ケイ素層(窒化珪素膜)を形成する。
【0205】
プラズマCVD法により窒化珪素(Si)層を形成する具体例として、特開2000-212747(JP2000−212747A)に記載されている方法がある。基材フィルムを平行平板型プラズマCVD装置(アネルバ(株)製PE401)のチャンバー内の下部電極(アース電極)上に装着し、チャンバー内を真空度0.013Pa(0.1mTorr)まで減圧しておく。次に、原料ガスとして、ヘキサメチルジシラザンを加熱して気化し、チャンバー内に供給し、窒素ガスをチャンバー内に供給する。次に、200W、13.56MHzの電力を上部電極とアース電極の間に印加することによりプラズマを生成し、チャンバー内圧力を6.7Pa(50mTorr)に保って基材フィルム上に窒化ケイ素層(窒化珪素膜)を形成する。
【0206】
膜厚は5〜500nm、より好ましくは10〜300nmの範囲で適宜設定する。
窒化ケイ素層(窒化珪素膜)は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムの片面だけでなく両面に形成してもよい。また、複数回蒸着作業(成膜作業)をしてもよい。
【0207】
酸化ケイ素層(酸化珪素膜)は、真空蒸着法、スッパタリング法、イオンプレーティング法などのPVD法(物理蒸着法)、あるいはCVD法(化学蒸着法)により硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムの片面または両面上に形成することができる。
真空蒸着法においては、蒸着材料としてSiO単独、SiとSiOの混合物、SiとSiOの混合物、あるいはSiOとSiOの混合物を用い、また、加熱方式として、抵抗加熱、高周波誘導加熱、あるいは電子ビーム加熱を用いる。
【0208】
スパッタリング法においては、ターゲット材料として、SiO単体、SiとSiOの混合物、SiとSiOの混合物、あるいはSiOとSiOの混合物を用い、また、スパッタリング方式として、直流放電、交流放電、高周波放電、イオンビーム法などを用いる。反応性スパッタリング法では反応性ガスとして、酸素ガスまたは水蒸気を用いる。
【0209】
酸化珪素膜における酸化珪素(SiO)は、Si,SiO,SiO等から成っており、これらの比率は作製条件で異なる。
酸化ケイ素(SiO)におけるxの値の好ましい範囲はx=0.1〜2であり、x=2の場合は二酸化ケイ素(SiO)である。
【0210】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上の酸化ケイ層(酸化珪素膜)の厚さは、ガスバリアー性の点から5〜800nmが好ましく、70〜500nmがより好ましい。酸化ケイ素層(酸化珪素膜)は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルムの片面だけでなく両面に形成してもよい。また、複数回蒸着作業(成膜作業)をしてもよい。
【0211】
本願第3発明の請求項11に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
前記繊維強化フィルムと前記透明無機物層間に、
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層から選択される硬化オルガノポリシロキサン層が介在しており、
前記透明無機物層上に硬化ポリマー層が形成され、前記硬化ポリマー層上に酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されていることを特徴とする。

請求項11に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、次のように表現することができる。
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層から選択される硬化オルガノポリシロキサン層が
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に形成されており、
酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が前記硬化ポリマー層上に形成されており、
硬化ポリマー層が前記、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層上に形成されており、
酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が前記硬化ポリマー層上に形成されている
ことを特徴とするガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【0212】
請求項11に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムでは、
硬化ポリマーが、紫外線硬化ポリマー、電子線硬化ポリマーまたは熱硬化ポリマーであり、繊維強化フィルム中の繊維強化材が無機繊維または合成繊維からなり、単繊維、糸、織布または不織布の形態であることが好ましい。
【0213】
請求項11に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、
(I) (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、
コーティング法により下記(a)〜(e)から選択される硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの,重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層;
(II) 前記硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成し、
(III) 透明無機物層上にコーティング法により硬化ポリマー層を形成し、
(IV) 前記硬化ポリマー層上に酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を蒸着法により形成することにより製造することができる。
【0214】
上記製造方法では、
硬化オルガノポリシロキサン層(a)、硬化オルガノポリシロキサン層(b)および硬化オルガノポリシロキサン層(c)は、縮合反応またはヒドロシリル化反応により形成し、硬化オルガノポリシロキサン層(d)は、高エネルギー線ないし活性エネルギー線照射または加熱により重合性有機官能基同士を重合させることにより形成し、硬化オルガノポリシロキサン層(e)は、縮合反応またはヒドロシリル化反応および高エネルギー線ないし活性エネルギー線照射または加熱により重合性有機官能基同士を重合させることにより形成することが好ましい。硬化ポリマー層は、硬化ポリマーの前駆体を可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上にコーティングし、硬化させることにより形成することが好ましい。紫外線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーへの光重合開始剤存在下での紫外線照射、電子線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーへの電子線照射、または熱硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーの加熱により硬化させることが好ましい。
【0215】
本願第4発明の請求項15に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50であり、硬化オルガノポリシロキサン樹脂がヒドロシリル基を有し、酸化窒化ケイ素層がヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に形成され、前記酸化窒化ケイ素層上に硬化ポリマー層が形成され、前記硬化ポリマー層上に酸化窒化ケイ素層が形成されていることを特徴とする。
【0216】
請求項15に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムでは、硬化ポリマーが、紫外線硬化ポリマー、電子線硬化ポリマーまたは熱硬化ポリマーであり、繊維強化フィルム中の繊維強化材の繊維が無機繊維または合成繊維であり、繊維強化フィルム中の繊維強化材が、単繊維、糸、織布または不織布の形態であることが好ましい。
【0217】
請求項15に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、請求項9に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムに比べて、酸化窒化ケイ素層上に、さらに硬化ポリマー層が形成され、硬化ポリマー層上に酸化窒化ケイ素層が形成されていることを特徴とする。
【0218】
本願第4発明の請求項15に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、
(I)(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物
(ただし、成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50)を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなるヒドロシリル基を有し,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、イオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成し、
(II) 前記酸化窒化ケイ素層上にコーティング法により硬化ポリマー層を形成し、
(III) 前記硬化ポリマー層上にイオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成することにより製造することができる(請求項17参照)。
【0219】
請求項17に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法は、請求項10に係るガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法に比べて、酸化窒化ケイ素層上に、さらに硬化ポリマー層を形成し、該硬化ポリマー層上に酸化窒化ケイ素層を形成することを特徴とする。
【0220】
請求項13および請求項17の製法で使用される、硬化ポリマーの前駆体である硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーは、薄膜コーティング可能であり、重合反応や架橋反応により硬化しやすく、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層に接着しやすいものであれば特には限定されない。かかる硬化ポリマーの前駆体である硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーとして、紫外線硬化ポリマーの前駆体である紫外線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマー、電子線硬化ポリマーの前駆体である電子線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーおよび熱硬化ポリマーの前駆体である熱硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーが例示される。
【0221】
硬化ポリマーは、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)または酸化ケイ層(酸化珪素膜)への接着性・密着性と、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)または酸化ケイ層(酸化珪素膜)の硬化ポリマーへの接着性・密着性の点で、酸素含有有機ポリマー硬化物が好ましく、炭素,水素および酸素の各原子からなる有機ポリマー硬化物、炭素,水素,酸素および窒素の各原子からなる有機ポリマー硬化物がより好ましい。これら酸素含有有機ポリマー硬化物はカルボニル基、あるいは、カルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合、エーテル結合(C-O-C)などの極性結合を有するものがさらに好ましい。
【0222】
紫外線硬化ポリマーの前駆体である紫外線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーとして、エチレン性不飽和二重結合を分子内に1個以上有するモノマー、オリゴマーもしくはポリマー、カチオン重合性基を分子内に1個以上有するモノマー、オリゴマーもしくはポリマーが例示される。
【0223】
エチレン性不飽和二重結合を分子内に1個以上有するモノマー、オリゴマーもしくはポリマーはラジカル重合性である。
エチレン性不飽和二重結合を分子内に1個以上有する好ましいモノマー、オリゴマーもしくはポリマーはラジカル重合性のアクリレート化合物もしくはメタクリレート化合物である。
ラジカル重合性のアクリレート化合物もしくはメタクリレート化合物として、アルコール類のエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシド付加物にアクリル酸,メタクリル酸もしくはそれらの多量体を反応させて得られるアルキレンオキシド変性アクリレートもしくはメタクリレート、アルコール類にカルボキシアルキルアクリレートもしくはメタクリレートを反応させて得られるカルボキシアルキルエステル変性アクリレートもしくはメタクリレート、アルコール類のグリシジルエーテルのエポキシ基にアクリル酸,メタクリル酸もしくはそれらの多量体を反応させて得られるエポキシ変性アクリレートもしくはメタクリレート、水酸基含有アクリレートもしくはメタクリレートと末端イソシアネート基含有化合物とを反応して得られるウレタン結合含有アクリレートもしくはメタクリレートまたはこれらの混合物;
【0224】
エポキシ樹脂にアクリル酸,メタクリル酸もしくはそれらの多量体を反応させて得られるアクリレートもしくはメタクリレート変性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂をアルキレンオキシドもしくはカルボキシアルキルで変性したエポキシ樹脂にアクリル酸,メタクリル酸もしくはそれらの多量体を反応させて得られるアクリレートもしくはメタクリレート変性エポキシ樹脂、水酸基含有アクリレートもしくはメタクリレートと末端イソシアネート基含有化合物とを反応して得られるウレタン結合含有アクリレートもしくはメタクリレートのプレポリマーまたはポリマー、ポリエステルにアクリル酸,メタクリル酸もしくはそれらの多量体を反応させて得られるアクリレートもしくはメタクリレート変性ポリエステル、またはこれらの混合物が例示される。
【0225】
さらには、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルもしくはメタクリル変性シリコーン樹脂もしくはポリシロキサンが例示される。アクリルもしくはメタクリル変性シリコーン樹脂もしくはポリシロキサンとして、前記したアクリロキシ官能基を有するオルガノポリシロキサンやアクリルアミド官能基を有するオルガノポリシロキサン(段落[0156]参照)が例示される。
カチオン重合性基を分子内に1個以上有する樹脂もしくはポリマー(オリゴマーを含む)として、エポキシ樹脂,オキセタニル樹脂,エポキシ変性ポリアクリレート樹脂,エポキシ変性ポリメタクリレート樹脂,エポキシ変性シリコーン樹脂もしくはポリシロキサン(段落[0156]参照)が例示される。
【0226】
これらの紫外線硬化ポリマーの前駆体である紫外線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーには、通常、少量の光重合開始剤を配合して紫外線硬化性にする。
光重合開始剤として、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイルベンゾエート、ミヘラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエートが例示される。
【0227】
さらに、光増感剤を配合することが好ましく、n−ブチルアミン、トリエチリルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィンが例示される。光重合開始剤や光増感剤の添加量は一般に、紫外線硬化ポリマーの前駆体である紫外線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。
【0228】
電子線硬化ポリマーの前駆体である電子線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーは、エチレン性不飽和二重結合を分子内に1個以上有しラジカル重合性である。
前記したラジカル重合性のアクリレート化合物またはメタクリレート化合物が好ましく、そのほかに、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルもしくはメタクリル変性シリコーン樹脂もしくはポリシロキサンが例示される。アクリルもしくはメタクリル変性シリコーン樹脂もしくはポリシロキサンとして、前記したアクリロキシ官能基を有するオルガノポリシロキサンやアクリルアミド官能基を有するオルガノポリシロキサン(段落[0156]参照)が例示される。
【0229】
なお、紫外線硬化性樹脂と電子線硬化性樹脂は、電離放射線硬化性樹脂の一種であり、そのほかの電離放射線硬化性樹脂も使用可能である。
【0230】
熱硬化ポリマーの前駆体である熱硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーとして、熱硬化性アクリル系樹脂(例えば、グリシジル基含有アクリル共重合体、水酸基含有アクリル共重合体、カルボキシル基含有アクリル共重合体)、エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂)、エポキシ変性ポリアミド樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂(例えば、マレイン酸系不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート系不飽和ポリエステル樹脂)、アミノ樹脂(例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂)、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、熱硬化性シリコーン樹脂(例えば、縮合反応硬化性オルガノポリシロキサンレジン、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサンレジン、ヒドロシリル化反応硬化性ジオルガノポリシロキサン)が例示される。好ましくは、熱硬化性アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性シリコーン樹脂である。
【0231】
上記熱硬化性樹脂には、通常、架橋剤および/または硬化触媒を配合して硬化させる。必要に応じて硬化促進剤、硬化抑制剤、接着性促進剤(例えば、シランカップリング剤)などを配合することが好ましい。
【0232】
前記した硬化ポリマーの前駆体である硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーが、常温で、高粘度の液状や、固形状であるときは、有機溶剤に溶解して薄層コーティング可能にすることが好ましい。
そのための有機溶剤は、200℃以下の加熱により揮発しやすいものが好ましい。好適な有機溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素;THF、ジオキサン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンが例示される。
【0233】
これら有機溶剤は、前記した硬化ポリマーの前駆体である硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーを溶解して薄層コーティング可能にする量を使用すればよい。
【0234】
ただし、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)または酸化ケイ層(酸化珪素膜)にコーティング後、低温加熱や温風吹付けにより有機溶剤を揮散させてから、硬化させることが好ましい。
【0235】
前記した硬化ポリマーの前駆体である硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーを、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)または酸化ケイ層(酸化珪素膜)に塗布する方法は、目的に応じて種々の手法がある。たとえば、スプレー塗装、ローラ塗装、ハケ塗装、キャスティング、スピンコーティング、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷が挙げられる。
【0236】
紫外線硬化ポリマーの前駆体である紫外線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーの硬化に用いる紫外線源として、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノン灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯が例示される。照射する紫外線の波長は、190〜380nmの波長域が例示される。紫外線照射量は、前記紫外線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーを硬化させるのに十分な量であればよく、例えば100〜10000mJであり、好ましくは800〜2000mJである。
紫外線照射後に加熱してもよい。
【0237】
電子線硬化ポリマーの前駆体である電子線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーの硬化に用いる電子線源として、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が例示される。前記電子線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーへの電子線照射量は、前記電子線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーを硬化させるのに十分な量であればよい。不活性ガス雰囲気中で好ましくは8から30メガラドの電子線が照射される。
電子線照射後に加熱してもよい。
【0238】
熱硬化ポリマーの前駆体である熱硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーの硬化方法として、熱風吹付け、赤外線照射または遠赤外線照射が例示される。
硬化ポリマー層上に酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成する方法は、前記硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成する方法に準じる。
【実施例】
【0239】
本発明の実施例と比較例を掲げる。
合成例中、メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂の重量平均分子量と分子量分布は、ゲルパーミエーション(GPC)により測定した。この目的に使用するGPC装置は、東ソー株式会社製のHLC-8020ゲルパーミエーション(GPC)に屈折率検出器と東ソー株式会社製のTSKgel GMHXL-Lカラム2個を取り付けたものである。試料は2重量%クロロホルム溶液にして溶出曲線の測定に供した。検量線は重量平均分子量既知の標準ポリスチレンを用いて作成した。重量平均分子量は標準ポリスチレン換算して求めた。
【0240】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム自体及び酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルムの水蒸気透過率は、Mocon Permatran−W3−31水蒸気透過測定装置を使用して、Mocon法により測定した。
【0241】
[合成例1]
フェニルトリメトキシシラン200g、テトラメチルジビニルジシロキサン38.7g、脱イオン水65.5g、トルエン256g、およびトリフルオロメタンスルホン酸1.7gを、ディーンスタークトラップおよび温度計を備えた3つ口丸底フラスコ内で混合した。この混合物を60〜65℃にて2時間加熱した。次いで、この混合物を加熱してトルエン等を還流させ、ディーンスタークトラップを用いて水およびメタノールを除去した。混合物の温度が80℃に達して水およびメタノールの除去が完了した後、混合物を50℃未満に冷却した。この冷却した混合物に、炭酸カルシウム粉末3.3gおよび水約1gを添加し、室温で2時間撹拌した後、水酸化カリウム0.17gを添加した。その後、水酸化カリウムを添加した混合物を加熱還流し、ディーンスタークトラップを用いて水を除去した。反応温度が120℃に達して水の除去が完了した後、混合物を40℃未満に冷却した。
【0242】
この冷却した混合物にクロロジメチルビニルシラン(0.37g)を添加し、室温で撹拌を1時間継続した。この攪拌した混合物を濾過して、メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂のトルエン溶液を得た。この樹脂は、平均シロキサン単位式:(PhSiO3/2)0.75(ViMe2SiO1/2)0.25
約1700の重量平均分子量、約1440の数平均分子量を有し、かつ、約1モル%のケイ素に結合したヒドロキシ基を含有していた。
【0243】
上記トルエン溶液のトルエン濃度を調製して、79.5重量%のメチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂を含有するトルエン溶液を調製した。トルエン溶液のメチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂濃度は、トルエン溶液のサンプル(2g)をオーブン内で150℃にて1.5時間乾燥した後の重量損失を測定することによって求めた。
【0244】
[参考例]
[硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルムの作製]
ディーンスタークトラップおよび温度計を備えた3つ口丸底フラスコに、合成例1で得たメチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂溶液および1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを投入して混合した。その際、これらの2つの成分の相対量は、ケイ素に結合した水素原子とケイ素に結合したビニル基とのモル比(SiH/SiVi)が、29Si NMRおよび13C NMRで測定して1.1:1となるのに十分となる量とした。
この混合物を、667Pa(5mmHg)の圧力下で80℃に加熱してトルエンを除去した。
【0245】
次いで、このトルエンを除去した混合物に少量の1,4-ビス(ハイドロジェンジメチルシリル)ベンゼンを添加してモル比SiH/SiViを1.1:1に戻した。このメチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂と1,4-ビス(ハイドロジェンジメチルシリル)ベンゼンの混合物に、メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂の重量を基準として0.5重量%の白金触媒(白金1000ppmを含有する)を添加してヒドロシリル化反応硬化性メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂組成物を調製した。この白金触媒は、白金(0)の1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン)錯体の1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン溶液である。
【0246】
薄いガラス板(幅25.4cm、長さ38.1cm)を、第一のナイロンRTMフィルム(カリフォルニア州カールソンのインターナショナル・プラスチック・プロダクト社製IPPLONRTMWN1500真空包装フィルム)で覆って剥離ライナーを形成させた。上記ヒドロシリル化反応硬化性メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂組成物を、No.16MylarRTM計量ロッドを用いて、このナイロンRTMフィルム上に均一に塗布した。ナイロンフィルムと同じ寸法のガラスクロス(JPS Glass (Slater, SC)社製106型電気ガラスクロス、厚さ37.5μm、平織、未処理タイプ)を、注意深くこの塗布したメチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂組成物上に置き、該組成物がガラスクロスをぬらすのに十分な時間放置した。該組成物を含浸したガラスクロスを、減圧(5.3kPa)下で室温にて0.5時間脱気した。
【0247】
次いで、同じメチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂組成物を、この脱気した該組成物含浸ガラスクロスに塗布し、脱気工程を繰り返した。このよく脱気した該組成物含浸ガラスクロスを第二のナイロンRTMフィルム(カリフォルニア州カールソンのインターナショナル・プラスチック・プロダクト社製IPPLONRTMWN1500真空包装フィルム)で覆い、得られた複合材料をステンレススチール製ローラーで圧縮して、気泡および過剰のヒドロシリル化反応硬化性メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂組成物を追い出した。
【0248】
この圧縮した複合材料を、熱風オーブン中で、22.2Nの加圧(外部加重)下、以下の温度サイクルで加熱した。
室温から100℃まで1℃/分、100℃にて2時間維持;
100℃から160℃まで1℃/分、160℃にて2時間維持;および
160℃から200℃まで1℃/分、200℃にて2時間維持。
ついて、オーブンのスイッチを切り、この加熱した複合材料を室温まで冷ました。
なお、1,4-ビス(ハイドロジェンジメチルシリル)ベンゼンは加熱下で揮発しやすいので、硬化時はSiH/SiVi=1/1であった。
【0249】
硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム(A)をナイロンフィルムから外した。硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム(A)は、均一な厚さ(0.07mm)を有し、実質的に透明であり、泡がなかった。
硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム(A)の機械的性質を表1に示した。
【0250】
第一のナイロンRTMフィルムをガラス板に代えたこと以外は、参考例の方法に従って硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム(B)を製造した。使用前に、ガラス板をRelisseRTM2520離型ゲルで処理して表面に疎水性を付与した後、この処理されたガラス板を、温和な水性洗剤で洗浄し、過剰のゲルを除去するために水ですすいだ。硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム(B)は、RelisseRTM2520で処理されたガラス板表面から非常に容易に剥離することができた。硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム(B)の対応する表面はガラス板の上面と同様に滑らかであった。硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム(B)の機械的性質を表1に示した。
【0251】
【表1】

【0252】
[合成例2]
ディーンスタークトラップおよび温度計を備えた3つ口丸底フラスコに、トルエン80g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン49.7g、フェニルトリメトキシシラン79.3g、水酸化セシウムの50重量%水溶液1g、メタノール200g、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール40mgを投入し、攪拌しながら1時間還流した。この間に250gのメタノールを蒸留により除くと同時に、同量のトルエンを加えた。メタノールと水がほぼ除かれた後、約1時間かけて105℃まで加熱した。室温に冷却後さらにトルエンを加えて約15重量%溶液にし、3gの酢酸を加えて30分間攪拌した。このトルエン溶液を水洗後、孔径1μmのメンブレンフィルターで酢酸セシウムを濾別し、濾液から、減圧下でトルエンを除去した。
【0253】
こうして得たポリ(フェニル−co−3−メタクリロキシプロピル)シルセスキオキサン40gをプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート60gに溶解した。この溶液に該シルセスキオキサンの3重量%のイルガキュアRTM819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、光硬化開始剤)を加えてコーティング溶液とした。
【0254】
[実施例1]
上記参考例で得た硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム(A)(幅10cm×長さ10cm×厚み100μm)の片面上に、合成例2で得たコーティング溶液を2500rpmで30秒間スピンコーティングした。
コーティング面に、200WのHg−Xeランプを用いて15分間紫外線照射(照射量30mW/cm)してポリ(フェニル−co−3−メタクリロキシプロピル)シルセスキオキサンの3−メタクリロキシ基同士を重合させた後、150℃で120分間保持してポリ(フェニル−co−3−メタクリロキシプロピル)シルセスキオキサンを硬化させた。
【0255】
硬化したポリ(フェニル−co−3−メタクリロキシプロピル)シルセスキオキサン層上に、イオンプレーティング法により厚さ30nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。
その際、成膜材料として酸化ケイ素ロッドを用い、反応性ガスとして窒素ガスを用い、キャリアーガスとしてアルゴンガスを用い、放電電流120A、成膜時圧力0.67Pa(5mTorr)、室温でサイクルタイム1回にて、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。肉眼観察したところ、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)は均一であり、剥がれがなかった。
この酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を有する硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルムは、可視光領域で透明であり、水蒸気透過率が0.44g/m・dayであった。
【0256】
[比較例1]
上記参考例で得た硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム(A)(幅10cm×長さ10cm×厚み100μm)の片面上に、実施例1と同様の条件でイオンプレーティング法により、厚さ50nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。この酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を有する硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルムは、可視光領域で透明であり、その水蒸気透過率は4.29g/m・dayであった。
【0257】
[実施例2]
実施例1と同様に、上記参考例で得た硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム(A)(幅10cm×長さ10cm×厚み100μm)の片面上に、合成例2で得たコーティング溶液を2500rpmで30秒間スピンコーティングし、出力1.5KWの紫外線ランプを用いて15秒間紫外線照射し、150℃で120分間保持してポリ(フェニル−co−3−メタクリロキシプロピル)シルセスキオキサンを硬化させた後、実施例1と同様の条件でイオンプレーティング法により、厚さ30nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。
【0258】
酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)上にラジカル系紫外線硬化型樹脂からなるコート剤(DIC株式会社製、商品名DaicureRTM clear SD347)を5μmの膜厚でスピンコーティングし、出力1.5KWの紫外線ランプを用いて15秒間紫外線照射して該コート剤を硬化させた後、さらに硬化したコート剤上に上記と同様に厚さ30nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。この二層酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を有する硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルムは、可視光領域で透明であり、水蒸気透過率は0.013〜0.020g/m・dayであった。
【0259】
[実施例3]
実施例2と同様に、上記参考例で得た硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム(A)(幅10cm×長さ10cm×厚み100μm)の片面上に、合成例2で得たコーティング溶液を2500rpmで30秒間スピンコーティングし、出力1.5KWの紫外線ランプを用いて15秒間紫外線照射し、次いで150℃で120分間保持してポリ(フェニル−co−3−メタクリロキシプロピル)シルセスキオキサンを硬化させた後、実施例1と同様の条件でイオンプレーティング法により、厚さ30nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。
【0260】
酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)上に合成例2のコーティング溶液を、800rpmで5秒間、続いて3500rpmで20秒間スピンコーティングし、出力1.5KWの紫外線ランプを用いて15秒間紫外線照射してポリ(フェニル−co−3−メタクリロキシプロピル)シルセスキオキサンを硬化させた。硬化したポリ(フェニル−co−3−メタクリロキシプロピル)シルセスキオキサン層(厚さ1.5μm)上に、実施例1と同様に厚さ30nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。この二層酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を有する硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルムは、可視光領域で透明であり、水蒸気透過率は0.038−0.109g/m・dayであった。
【0261】
[実施例4]
合成例1の平均シロキサン単位式:[PhSiO3/2]0.75[Me2SiO1/2]0.25で示されるメチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂と、平均シロキサン単位式:HMe2SiO1/2]0.60[PhSiO3/2]0.40で示されるメチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン樹脂を、後者のケイ素原子結合水素原子対前者のビニル基のモル比が1.2になるような重量比で混合し、充分に撹拌した。
【0262】
ついで、白金−1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン溶液(白金含有量5重量%)を、上記ポリシロキサン樹脂混合物の固形分重量に対して白金金属重量で2ppmを添加して液状ヒドロシリル化反応硬化性メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂組成物を調製した(固形分100%)。
【0263】
この液状ヒドロシリル化反応硬化性メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂組成物を、上記参考例で得た硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム(A)(幅10cm×長さ10cm×厚み100μm)の片面上に2500rpmで30秒間スピンコーティングし、150℃で約2時間加熱して硬化させた。
【0264】
硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂層上に、実施例1と同様の条件でイオンプレーティング法により、厚さ30nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。さらに酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)上にラジカル系紫外線硬化型樹脂からなるコート剤(DIC株式会社製、商品名DaicureRTM clear SD347)を5μmの膜厚でスピンコートし、出力1.5KWの紫外線ランプを用いて15秒間紫外線照射して該コート剤を硬化させた後、さらにその上に、実施例1と同様に厚さ30nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。この多層酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を有する硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルムは、可視光領域で透明であり、水蒸気透過率は0.0026−0.0225g/m・dayであった。
【0265】
[比較例2]
上記参考例で得た硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム(A)(幅10cm×長さ10cm×厚み100μm)の片面上に、実施例1と同様の条件でイオンプレーティング法により、厚さ50nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。さらにラジカル系紫外線硬化型樹脂からなるコート剤(DIC株式会社製、商品名DaicureRTM clear SD347)を5μmの膜厚でスピンコートし、出力1.5KWの紫外線ランプを用いて15秒間紫外線照射して該コート剤を硬化させた後、さらにその上に実施例1と同様に厚さ30nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。この多層酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を有する硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルムは、可視光領域で透明であり、水蒸気透過率は20g/m・dayであった。
【産業上の利用可能性】
【0266】
本発明のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイ等の透明電極用のフィルム基板、結晶シリコン太陽電池のバックシート、アモルファズシリコン太陽電池の基板などとして有用である。
本発明のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法は、簡易に精度よくガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムを製造するのに有用である。
【符号の説明】
【0267】
1:硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるガラス繊維強化フィルム
2:有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層
3:酸化窒化ケイ素層
4:ガラスクロス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
前記繊維強化フィルムと前記透明無機物層間に、
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層から選択される硬化オルガノポリシロキサン層が介在していることを特徴とする、ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項2】
有機官能基が含酸素有機官能基であり、重合性有機官能基が含酸素重合性有機官能基であり、有機基が含酸素有機基であることを特徴とする、請求項1に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項3】
含酸素有機官能基が、アクリロキシ官能基、エポキシ官能基またはオキセタニル官能基であり、重合性有機官能基がアクリロキシ官能基、エポキシ官能基、オキセタニル官能基またはアルケニルエーテル官能基であり、含酸素有機基がカルボニル基またはC-O-C結合を有することを特徴とする、請求項2に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項4】
アクリロキシ官能基がアクリロキシアルキル基またはメタクリロキシアルキル基であり、エポキシ官能基がグリシドキシアルキル基またはエポキシシクロヘキシルアルキル基であることを特徴とする、請求項3に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項5】
繊維強化フィルム中の繊維強化材の繊維が無機繊維または合成繊維であることを特徴とする、請求項1に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項6】
繊維強化材が、単繊維、糸、織布または不織布の形態であることを特徴とする、請求項1または請求項5に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項7】
(I) (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、コーティング法により下記(a)〜(e)から選択される硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層;
(II) 前記硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成することを特徴とする、請求項1記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項8】
硬化オルガノポリシロキサン層(a)、硬化オルガノポリシロキサン層(b)および硬化オルガノポリシロキサン層(c)を、縮合反応またはヒドロシリル化反応により形成し、硬化オルガノポリシロキサン層(d)を、高エネルギー線ないし活性エネルギー線照射または加熱により重合性有機官能基同士を重合させることにより形成し、硬化オルガノポリシロキサン(e)を縮合反応またはヒドロシリル化反応および高エネルギー線ないし活性エネルギー線照射または加熱により重合性有機官能基同士を重合させることにより形成することを特徴とする、
請求項7に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項9】
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50であり、前記硬化オルガノポリシロキサン樹脂がヒドロシリル基を有することを特徴とする、ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項10】
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物
(ただし、成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50)を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、
イオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成することを特徴とする、請求項9に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項11】
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
前記繊維強化フィルムと前記透明無機物層間に、
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層から選択される硬化オルガノポリシロキサン層が介在しており、
前記透明無機物層上に硬化ポリマー層が形成され、前記硬化ポリマー層上に酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されていることを特徴とする、ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項12】
硬化ポリマーが、紫外線硬化ポリマー、電子線硬化ポリマーまたは熱硬化ポリマーであり、繊維強化フィルム中の繊維強化材が無機繊維または合成繊維からなり、単繊維、糸、織布または不織布の形態であることを特徴とする、請求項11に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項13】
(I) (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、
コーティング法により下記(a)〜(e)から選択される硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
(a)有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(b)有機官能基を有せずシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(c)有機官能基を有せずヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(d)1分子中に2個以上の重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士が重合することにより架橋して生成した,有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層;
(e)重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンの重合性有機官能基同士が重合するとともに,架橋性基同士が反応することにより生成した硬化オルガノポリシロキサン層;
(II) 前記硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成し、
(III) 透明無機物層上にコーティング法により硬化ポリマー層を形成し、
(IV) 硬化ポリマー層上に酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を蒸着法により形成することを特徴とする、請求項11に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項14】
硬化オルガノポリシロキサン層(a)、硬化オルガノポリシロキサン層(b)および硬化オルガノポリシロキサン層(c)を、縮合反応またはヒドロシリル化反応により形成し、硬化オルガノポリシロキサン層(d)を、高エネルギー線ないし活性エネルギー線照射または加熱により重合性有機官能基同士を重合させることにより形成し、硬化オルガノポリシロキサン層(e)を縮合反応またはヒドロシリル化反応および高エネルギー線ないし活性エネルギー線照射または加熱により重合性有機官能基同士を重合させることにより形成し、硬化ポリマー層を、紫外線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーへの光重合開始剤存在下で紫外線照射、電子線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーへの電子線照射または熱硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーの加熱により形成することを特徴とする、請求項13に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項15】
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、酸化窒化ケイ素層が形成されているガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにおいて、
成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50であり、硬化オルガノポリシロキサン樹脂がヒドロシリル基を有し、酸化窒化ケイ素層がヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に形成され、前記酸化窒化ケイ素層上に硬化ポリマー層が形成され、前記硬化ポリマー層上に酸化窒化ケイ素層が形成されていることを特徴とする、ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項16】
硬化ポリマーが、紫外線硬化ポリマー、電子線硬化ポリマーまたは熱硬化ポリマーであり、繊維強化フィルム中の繊維強化材が無機繊維または合成繊維からなり、単繊維、糸、織布または不織布の形態であることを特徴とする、請求項15に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項17】
(I) (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物
(ただし、成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50)を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなるヒドロシリル基を有し,可視光領域で透明な硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる繊維強化フィルム上に、イオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成し、
(II) 前記酸化窒化ケイ素層上にコーティング法により硬化ポリマー層を形成し、
(III) 硬化ポリマー層上にイオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成することを特徴とする、請求項15に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項18】
硬化ポリマー層を、紫外線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーへの光重合開始剤存在下で紫外線照射、電子線硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーへの電子線照射または熱硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーの加熱により形成することを特徴とする、請求項17に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−516337(P2013−516337A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530825(P2012−530825)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【国際出願番号】PCT/JP2011/050608
【国際公開番号】WO2011/083879
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】