説明

ガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料および積層包装袋

【課題】本発明は、酸素、水蒸気により品質が容易に劣化するような、厚みと重みを有する易酸化性内容物を包装・梱包して輸送する目的に使用される、耐ブロッキング性に優れ、および透明性を有し内容物視認性に優れる、ガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料および積層包装袋を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、印刷基材層、ガスバリア層、熱融着(シーラント)層とがこの順序で積層されたガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料であって、前記熱融着層が、オレフィン系熱可塑性エラストマーを中間層とし、その中間層に隣接する層が熱融着可能な接着性熱可塑性樹脂から構成されるフィルムからなることを特徴とするガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料および積層包装袋である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、医薬品や、食品などの分野において、酸素、水蒸気により品質が容易に劣化するような、厚みと重みを有する易酸化性内容物を包装・梱包して輸送する目的に使用されるガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料および積層包装袋に関する。特に、500ml〜1500mlと大容量の注射剤を柔軟なプラスチック容器に充填してなる、輸液バックの2次外装材料などとして好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
比較的大容量(500ml〜1500ml)の注射剤が充填される輸液バックは、近年、ハンドリング(取り扱い)性の良さや、輸液バックの軽量化、ゴミの減容化などの観点から、ガラス瓶、プラスチック成形容器から柔軟なプラスチック包装袋に充填されたものが増えている。
【0003】
輸液バックに充填されるアミノ酸液や糖・電解質液などの薬液は、酸素によって著しく変質しやすく、更には直接体内に薬液を注入する事からも、薬液が直接接触する輸液バックは無添加のポリオレフィン材料を用いる事が多く、ガスバリア性はほとんど無いに等しい。そのため、輸液バックを大気中に放置しておくと、大気中の酸素が輸液バックを透過し経時的に薬液を変質させてしまい、沈殿物の生成や、薬液の黄変、臭いの発生などの現象が起こり、実際に使用する事ができなくなる。そこで、近年は薬液の充填された輸液バックをガスバリア性の高い透明包装材料で2次包装することが行われている。
【0004】
この輸液バック外装材には上記しているようにガスバリア性が高く要求されるため、Pポリ塩化ビニリデン(VDC)コートを施したプラスチックフィルムや、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、酸化アルミニウムや酸化珪素などを蒸着したポリエステルテレフタレート(PET)フィルムなどがバリア層に用いられた積層包装材料が使用されている。
【0005】
通常はアミノ酸などの高カロリー輸液が充填された輸液バックが上記した輸液外装袋に入れられ、更にダンボールに積載梱包され輸送される。しかし、輸送工程中の振動・衝撃により、輸液外装袋にピンホールが生じる問題があり(100万袋に1袋のppmオーダー)、そのため内容物の品質を保持するガスバリア性が得られなくなる。
【0006】
一般的にピンホールは3つの要素が加味して発生する事が多く、(1)屈曲疲労による屈曲ピンホール、(2)包装材料同士が摩耗する、及び内容物容器と2次包装材が摩耗する、あるいは2次包装材とダンボールが摩耗する事による摩耗ピンホール、(3)包装材料の突起部が突き刺すことによる突き刺しピンホールに大別される。上記、輸送工程におけるピンホールはこれらの3つの要素が複合して発生すると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来、包装袋の輸送工程上での問題点を解決するためになされたものであり、医療、医薬品や、食品などの分野において、酸素、水蒸気により品質が容易に劣化するような、例えば、500ml〜1500mlと大容量の注射剤などのような厚みと重みを有する易酸化性内容物を包装・梱包して輸送する目的に使用される、耐ブロッキング性に優れ、および透明性を有し内容物視認性に優れる、ガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料および積層包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、すなわち、
請求項1に係るの発明は、
少なくとも、印刷基材層、ガスバリア層、熱融着(シーラント)層とがこの順序で積層されたガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料であって、
前記熱融着層が、オレフィン系熱可塑性エラストマーを中間層とし、その中間層に隣接する層が熱融着可能な接着性熱可塑性樹脂から構成されるフィルムからなることを特徴とするガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料である。
【0009】
請求項2に係るの発明は、
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、エチレン−プロピレン系ランダムコポリマーにエチレン−プロピレンゴムを配合したオレフィン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1記載のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料である。
【0010】
請求項3に係るの発明は、
前記熱融着層を構成する、オレフィン系熱可塑性エラストマーを中間層とし、その中間層に隣接する層が熱融着可能な接着性熱可塑性樹脂からなるフィルムが、3層共押し出しフィルムであることを特徴とする請求項1または2記載のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料である。
【0011】
請求項4に係るの発明は、
前記印刷基材層と酸素バリア層とが、押し出しラミネーション法によって押し出しラミネーション接着性樹脂層を介して積層されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料である。
【0012】
請求項5に係るの発明は、
前記押し出しラミネーション接着性樹脂が、メタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)からなることを特徴とする請求項4記載のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料である。
【0013】
請求項6に係るの発明は、
前記直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)が、溶液重合法によりメタロセン触媒によって炭素数8個(C8)のエチレンとα−オレフィンから重合されてなることを特徴とする請求項6記載のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料である。
【0014】
請求項7に係るの発明は、
前記ガスバリア層と熱融着層とが、ドライラミネーション法によってドライラミネーション接着剤層を介して積層されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料である。
【0015】
請求項8に係るの発明は、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料を用いてなることを特徴とするガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装袋である。
【0016】
<作用>
本発明のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料および積層包
装袋は、シーラント層となる熱融着層として、オレフィン系熱可塑性エラストマーを中間層とし、その中間層に隣接する層が熱融着可能な接着性熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることで、オレフィン系熱可塑性エラストマーを構成するゴム成分特有の柔軟性、耐衝撃性が付与されて優れた耐ピンホール性を発現するものである。また、本発明のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料を用いた積層包装袋のシーラント層となる熱融着層の中間層に使用されるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、一般に、密度が0.90g/cm3以下であって、滑り性が悪く、また易ブロッキング性を有することが知られている。本発明の積層包装材料を包装袋などに成形して、特に重量のある内容物を充填包装した場合、オレフィン系熱可塑性エラストマーをシーラント層として最内層に形成すると内容物とのブロッキングが発生するという危惧がある。本発明において、シーラント層となる熱融着層として、オレフィン系熱可塑性エラストマーを中間層とし、その中間層に隣接する層に熱融着可能な接着性熱可塑性樹脂を用いることで、包装袋への内容物のブロッキングを防止できる。さらに、上記のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、ヘイズ度が高いことが一般に知られている。ヘイズ度が高いために、包装袋の内容物を視認し難いという問題がある。本発明において、オレフィン系熱可塑性エラストマーを中間層とし、その中間層に隣接する層に熱融着可能な接着性熱可塑性樹脂を用いて共押し出し成膜することで、熱融着層を構成するフィルムの透明性が向上し、高い内容物視認性を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、医療、医薬品や、食品などの分野において、酸素により品質が容易に劣化するような、厚みと重みを有する易酸化性内容物を包装・梱包して輸送する目的に使用されるガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料および積層包装袋を提供することができる。
【0018】
本発明のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料および積層包装袋は、例えば、500ml〜1500mlと大容量の注射剤を柔軟なプラスチック容器に充填してなる輸液バックの2次外装材料などとして好適に用いられる。
【0019】
また、本発明のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料および積層包装袋は、耐ブロッキング性、透明性に優れることから、500ml〜1500mlと大容量の注射剤を柔軟なプラスチック容器に充填してなる輸液バックなどの比較的重い内容物などとのブロッキングを防止し、さらに内容物の視認性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施例としての実施の形態について具体的に説明する。図1は、本発明のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料の一例を示す断面図である。図に示すように、本発明のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料の構成は、印刷基材層(a)、接着樹脂層(b)、ガスバリア層(c)、接着剤層(d)、熱融着(シーラント)層(e)からなり、熱融着層(e)が、オレフィン系熱可塑性エラストマーを中間層(e1)とし、その中間層に隣接する層(e2)が熱融着可能な接着性熱可塑性樹脂から構成される3層共押し出しフィルムからなることを特徴とする。接着樹脂層(b)は、押し出しラミネーション法による押し出しラミネーション接着性樹脂層からなり、接着剤層(d)は、ドライラミネーション法によるドライラミネーション接着剤層からなる。
【0021】
本発明における印刷基材層(a)の基材としては、シート状またはフィルム状のものであって、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミドなど、ある
いはこれら高分子の共重合体など通常包装材料として用いられるものが使用できる。基材は用途に応じて上記材料から適宜選択される。
【0022】
本発明においては、上記の基材の中でも、特に2軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いるのが好ましい。2軸延伸ポリプロピレンフィルムとしては、例えば、プロピレン単独重合体によるポリプロピレンホモポリマ−、プロピレンを主成分とするα−オレフィンをランダム、あるいは、ブロック共重合させたプロピレン−α−オレフィン共重合体等によるポリプロピレン系樹脂のフィルムないしシ−トを使用することができる。上記において、α−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、5−エチリデン−2−ノルボネン、5−メチル−2−ノルボネン、1.4−ヘキサジエン等のオレフィン系モノマ−を使用することができる。各社ポリプロピレンフィルムメーカーから上市されてい2軸延伸ポリプロピレンフィルムなら特に制限はなく、厚みは30μm以下が望ましい。厚みが、30μmを超えると積層包装材料の剛性が増大することで耐屈曲性が減少し、耐ピンホール性が低下する。
【0023】
上記基材には、必要に応じて、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いて低温プラズマ処理、グロ−放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理を任意に施すことができる。
【0024】
上記基材面に印刷層を積層することも可能である。印刷層は、包装材料、包装袋などとして実用的に用いるために形成されるものである。印刷層としては、例えば、上記の第1基材の上に、通常のグラビアインキ組成物、オフセットインキ組成物、凸版インキ組成物、スクリ−ンインキ組成物、その他等のインキ組成物を使用し、例えば、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、凸版印刷方式、シルクスクリ−ン印刷方式、その他等の印刷方式を使用し、例えば、文字、図形、絵柄、記号、その他等からなる所望の印刷絵柄を形成することにより構成することができる。上記において、各種のインキ組成物は、例えば、インキ組成物を構成するビヒクルとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコ−ル系樹脂、ポリビニルアセタ−ル系樹脂、ポリビニルブチラ−ル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化型ポリ(メタ)アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノ−ル系樹脂、キシレン系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロ−ス、エチルセルロ−ス、アセチルブチルセルロ−ス、エチルオキシエチルセルロ−ス等の繊維素系樹脂、塩化ゴム、環化ゴム等のゴム系樹脂、石油系樹脂、ロジン、カゼイン等の天然樹脂、アマニ油、大豆油等の油脂類、その他等の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。そして、上記のようなビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、染料・顔料等の着色剤の1種ないし2種以上を加え、さらに、必要ならば、例えば、充填剤、安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の光安定剤、分散剤、増粘剤、乾燥剤、滑剤、帯電防止剤、架橋剤、その他等の添加剤を任意に添加し、溶剤、希釈剤等で充分に混練してなる各種の形態からなるインキ組成物を使用することがてきる。
【0025】
本発明における接着樹脂層(b)は、溶融押し出し接着性樹脂を用いる。本発明において、溶融押し出し接着性樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレ、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマ−、ポリエチレン若しくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹
脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸、その他等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂その他等の樹脂を使用することができる。上記の溶融押し出し接着性樹脂による溶融押し出し樹脂層の膜厚としては、5〜100μm位、より好ましくは、10〜50μm位が望ましい。
【0026】
また、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体を使用することができる。特に、溶液重合法によりメタロセン触媒によって炭素数8個(C8)のエチレンとα−オレフィンから重合されてなる直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。C4、あるいはC6気相重合法に比べて柔らかい膜物性が得られることから、包装材の腰を柔らかく、屈曲ピンホール耐性を持ち、突き刺し、摩耗によるピンホール耐性を維持することができる。メタロセン触媒は、活性点が不均一でマルチサイト触媒と呼ばれているのに対し、活性点が均一であることからシングルサイト触媒とも呼ばれているものである。密度は0.920g/cm3以下であり、溶融フロー速度は加工適性を考慮して、4〜15g/10min.が望ましい。押し出し樹脂の厚みは30μm以下でありことが望ましい。厚みが、30μmを超えると積層包装材料の剛性が増大することで耐屈曲性が減少し、耐ピンホール性が低下する。
【0027】
本発明におけるガスバリア層(c)は、無機化合物からなる蒸着層を設けたガスバリア性フィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合(EVOH)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムなどが使用でき、厚みは15μm前後が望ましい。
【0028】
無機化合物からなる蒸着層を設けたガスバリア性フィルムは、高分子樹脂組成物からなる基材上に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化珪素などの無機化合物からなる蒸着層を第1層とし、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物又は(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア性被膜を第2層として積層してなるガスバリア性フィルムが好ましく使用される。上記水溶性高分子がポリビニルアルコールである。また、上記金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン又はトリイソプロポキシアルミニウム、あるいはそれらの混合物である。
【0029】
上記基材としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン)、ポリ塩化ビニル、ポリイミドなど、あるいはこれら高分子の共重合体など通常包装材料として用いられるものが使用できる。基材は用途に応じて上記材料から適宜選択される。
【0030】
本発明においては、上記の基材の中でも、特にポリアミドフィルム基材が好適に使用される。好ましいポリアミドの具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ−9−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4,6)、ポリヘキサメチレンジアジパミド(ナイロン6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10,6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10,10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12,12)、メタキシレンジアミン−6ナイロン(MXD6)等を挙げることができる。
【0031】
これらポリアミド系樹脂には、柔軟性を付与するため芳香族スルホンアミド類、p−ヒ
ドロキシ安息香酸、エステル類等の可塑剤を配合したり、低弾性率のエラストマー成分やラクタム類等を配合することも可能である。該エラストマー成分としては、アイオノマー樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド、ポリエステルブロックアミド、ポリエーテルエステルアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、変性スチレン系熱可塑性エラストマー、変性アクリルゴム、変性エチレンプロピレンゴム等が挙げられる。
【0032】
この基材に、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、など公知の添加剤を加えることができ、必要に応じて適宜添加される。
【0033】
さらに、基材の表面をコロナ処理、火炎処理、低温プラズマ処理、グロー放電処理、逆スパッタ処理、粗面化処理などを施し、蒸着層との密着性を高めることも有効である。また、アンカーコート処理等の表面改質を行い、蒸着層との密着性を向上させることも可能である。
【0034】
無機蒸着層は、珪素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫、マグネシウムなどの酸化物、窒化物、弗化物の単体、或いはそれらの複合物からなり、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法(CVD法)などの真空プロセスにより形成される。とくに酸化アルミニウムは、無色透明であり、広範囲の用途に用いることができる。
【0035】
無機蒸着層の膜厚は、数nmから500nmの範囲が望ましいが、5nm以下では薄膜の連続性に問題があり、また300nmを越えるとクラックが発生しやすく、可撓性が低下するため、好ましくは5〜300nmである。
【0036】
ガスバリア性被膜層は、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物又は(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤からなる。水溶性高分子と塩化錫を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、或いはこれに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合した溶液を基材2上の無機薄膜層3にコーティング、加熱乾燥し、形成したものである。コーティング剤に含まれる各成分について以下に詳述する。
【0037】
コーティング剤に用いられる水溶性高分子はポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる、とくにポリビニルアルコール(以下、PVAとする)を本発明のガスバリア性積層体のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れる。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全けん化PVAまでを含み、とくに限定されるものではない。
【0038】
また、塩化錫は塩化第1錫(SnCl2)、塩化第2錫(SnCl4)、あるいはそれらの混合物であってもよく、無水物でも水和物でも用いることができる。
【0039】
さらに、金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン〔Si(OC254〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C373〕などの一般式、
M(OR)n
(M:Si、Ti、Ai、Zr等の金属,R:CH3、C25等のアルキル基)で表せるものである。なかでもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0040】
上述した各成分を単独またはいくつかを組み合わせてコーティング剤に加えることができ、さらにコーティング剤のバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤など公知の添加剤を加えることができる。
【0041】
例えば、コーティング剤に加えられるイソシアネート化合物は、その分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有するものであり、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート(TTI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)などのモノマー類と、これらの重合体、誘導体などがある。
【0042】
コーティング剤の塗布方法には、通常用いられる、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法など従来公知の手段が用いられる。被膜の厚さはコーティング剤の種類によって異なるが、乾燥後の厚さが約0.01〜100μmの範囲であればよいが、50μm以上では、膜にクラックが生じやすくなるため、0.01〜50μmとすることが望ましい。
【0043】
本発明における接着剤層(d)は、ドライラミネーションに用いられる2液硬化型ウレタン系接着剤ならどれも使用可能であり、ラミネ−ト用接着剤としては、例えば、1液、あるいは、2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエ−テル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他等の溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型等のラミネ−ト用接着剤を使用することができる。而して、上記のラミネ−ト用接着剤のコ−ティング法としては、例えば、ダイレクトグラビアロ−ルコ−ト法、グラビアロ−ルコ−ト法、キスコ−ト法、リバ−スロ−ルコ−ト法、フォンテン法、トランスファ−ロ−ルコ−ト法、その他等の方法で塗布することができ、そのコ−ティング量としては、0.1〜10g/m2(乾燥状態)位、より好ましくは、1〜5g/m2(乾燥状態)位が望ましい。なお、本発明においては、上記のラミネ−ト用接着剤には、例えば、シランカップリング剤等の接着促進剤を任意に添加することができる。乾燥時の塗布量は1.5〜3.5g/m2程度であれば接着強度の観点からも望ましい。
【0044】
本発明における熱融着層(e)の中間層を構成するオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、特に本発明においてポリプロピレン系樹脂としてポリプロピレン単独重合部またはエチレン含量10重量%以下の低エチレン含量エチレン−プロピレンランダム共重合部と、エチレン含量が20〜95重量%の高エチレン含量エチレン−プロピレンランダム共重合体に、エチレン共重合体ゴムを配合する。
【0045】
エチレン共重合体ゴムとしては、代表例としてエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、エチレン−ブテン−1共重合体ゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム等がある、本発明においては、上記の中でも、特にエチレン成分を50〜90重量%、プロピレン成分を10〜50重量%含有するエチレンプロピレンゴムであることが好ましい。このような構成比のエチレンプロピレン共重合体ゴムを使用する。
【0046】
本発明における熱融着層(e)の中間層に隣接する層を構成する熱融着可能な接着性熱可塑性樹脂としては、押し出し成形が可能であり、かつ、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレ、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチル
ペンテンポリマ−、ポリエチレンもしくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸、その他等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂その他等の樹脂を使用することができる。なお、本発明において、上記のような樹脂を使用して熱可塑性樹脂層の中間層に隣接する2層を形成する際に、同種の樹脂、あるいは、異種の樹脂を組み合わせて形成することができ、具体的には、例えば、同種のポリエチレン系樹脂を使用して形成してもよく、また、異種のポリエチレン系樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体、または、ポリエチレン系樹脂とエチレン−メタクリル酸共重合体とを使用して形成することもできる。
【0047】
本発明のピンホールの発生を抑制した積層包装材料を用いて、様々の包装形態の積層袋に成形して用いることができる。特に、500ml〜1500mlと大容量の注射剤を柔軟なプラスチック容器に充填してなる輸液バックの2次外装材料などとして好適に使用される。
【0048】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0049】
下記に示す材料を用いて、図1に示す構成の本発明のピンホールの発生を抑制した積層包装材料を作成した。
(a)印刷基材層:2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東セロ(株)製「U1」、厚さ30μm)
(b)接着樹脂層:高機能性押し出しラミネート樹脂「ジェイレクス」(LDPE、密度0.918g/cm3、溶融フロー速度7g/10min.、厚さ20μm)(日本ポリオレフィン(株)製「JH607D」)
(c)ガスバリア層:酸化アルミニウム蒸着2軸延伸ナイロンフィルム(凸版印刷(株)製「GL−AEY」、厚さ15μm)
(d)接着剤層:2液硬化型ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル(株)製「A515」、乾燥塗布量3g/m2
(e)熱融着層:低密度ポリエチレン(LLDPE、厚さ27μm)/熱可塑性エラストマー(サンアロマー(株)製「Adflex」、厚さ36μm)/ 低密度ポリエチレン(LLDPE、厚さ27μm)
【実施例2】
【0050】
下記に示す材料を用いて、本発明のピンホールの発生を抑制した積層包装材料と比較するための積層包装材料を作成した。
(a)印刷基材層:2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東セロ(株)製「U1」、厚さ20μm)
(b)接着樹脂層:高機能性押し出しラミネート樹脂「ジェイレクス」(LDPE、密度0.918g/cm3、溶融フロー速度7g/10min.、20μm)(日本ポリオレフィン(株)製「JH607D」)
(c)ガスバリア層:酸化アルミニウム蒸着2軸延伸ナイロンフィルム(凸版印刷(株)製「GL−AEY」、15μm)
(d)接着剤層:2液硬化型ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル(株)製「A515」、乾燥塗布量3g/m2
(e)熱融着層: 低密度ポリエチレン(LLDPE、厚さ90μm)
上記実施例1、2で得られた積層包装材料を用いて、下記の方法に基づいて耐ピンホール性を評価した。
【0051】
<ピンホール評価方法>
上記実施例1、2で得られた積層包装材料をヒートシールし、280mm×300mmの4方製袋した後、900mlの輸液バックを充填し残りの一方をヒートシールし輸液外装袋を作成した。作成した輸液外装袋10袋を1段でダンボールに梱包積載し、下記条件で振動試験を行い。輸液外装袋のピンホール数をカウントした。
【0052】
振動条件:振動加速度±2G×60分
【0053】
【表1】

表1に、各々の実施例についてのピンホール数(個/袋)を記す。
【0054】
表1から、実施例1で得られた本発明のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料を用いた積層包装袋は、本発明の積層包装材料と比較するための実施例2で得た積層包装材料を用いた積層包装袋と比較して、振動試験において耐ピンホール性に優れていることがわかる。このことは、本発明のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料および積層包装袋は、シーラント層となる熱融着層として、オレフィン系熱可塑性エラストマーを中間層とし、その中間層に隣接する層が熱融着可能な接着性熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることで、オレフィン系熱可塑性エラストマーを構成するゴム成分特有の柔軟性、耐衝撃性が付与されて優れた耐ピンホール性を発現するものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
a:印刷基材層
b:押し出しラミネーション用接着樹脂層
c:ガスバリア層
d:ドライラミネーション用接着剤層
e:熱融着(シーラント)層
e1:中間層
e2:隣接層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、印刷基材層、ガスバリア層、熱融着(シーラント)層とがこの順序で積層されたガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料であって、
前記熱融着層が、オレフィン系熱可塑性エラストマーを中間層とし、その中間層に隣接する層が熱融着可能な接着性熱可塑性樹脂から構成されるフィルムからなることを特徴とするガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料。
【請求項2】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、エチレン−プロピレン系ランダムコポリマーにエチレン−プロピレンゴムを配合したオレフィン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1記載のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料。
【請求項3】
前記熱融着層を構成する、オレフィン系熱可塑性エラストマーを中間層とし、その中間層に隣接する層が熱融着可能な接着性熱可塑性樹脂からなるフィルムが、3層共押し出しフィルムであることを特徴とする請求項1または2記載のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料。
【請求項4】
前記印刷基材層と酸素バリア層とが、押し出しラミネーション法によって押し出しラミネーション接着性樹脂層を介して積層されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料。
【請求項5】
前記押し出しラミネーション接着性樹脂が、メタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)からなることを特徴とする請求項4記載のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料。
【請求項6】
前記直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)が、溶液重合法によりメタロセン触媒によって炭素数8個(C8)のエチレンとα−オレフィンから重合されてなることを特徴とする請求項6記載のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料。
【請求項7】
前記ガスバリア層と熱融着層とが、ドライラミネーション法によってドライラミネーション接着剤層を介して積層されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料を用いてなることを特徴とするガスバリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装袋。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−7564(P2006−7564A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187546(P2004−187546)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】