説明

ガスバリア性フィルム

【課題】高分子フィルムへの無機膜積層過程において、無機成分の微結晶の生成、その粒界によるガスバリア性の低下を抑えたガスバリア性フィルムを提供する。
【解決手段】高分子フィルム基材の片面または両面に、ZnSおよびSiOを含有してなる混合物を主成分とした混合薄膜層が少なくとも1層形成してなり、前記ZnSをM、前記酸化物をLとして表記する場合、前記混合薄膜層の組成比が(式1)の範囲であり、かつ高分子フィルム基材の混合薄膜層を形成する基材表面粗さRaが15nm以下で形成されたことを特徴とするガスバリア性フィルム。
(1−X)
0.7≦X≦0.9 (式1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いガスバリア性および透明性に優れた透明ガスバリア性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、高分子フィルム基材の表面に、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム等の無機物(無機酸化物を含む)を使用し、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)等を利用して、その無機物の蒸着膜を形成してなる透明ガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素などの各種ガスの遮断を必要とする食品や医薬品などの包装材および薄型テレビ、太陽電池などの電子デバイス部材として用いられている。ガスバリア性向上技術としては、例えば、有機珪素化合物の蒸気と酸素を含有するガスを用いてプラズマCVD法により基材上に、珪素酸化物を主体とし、炭素、水素、珪素及び酸素を少なくとも1種類含有した化合物とすることによって、透明かつガスバリア性を向上させる方法が用いられている(特許文献1)。また、プラズマCVD法以外のガスバリア性向上技術としては、シランガス、アンモニアガス、水素ガスを高温加熱したタングステンワイヤで接触分解させ、フィルム表面に窒化シリコン膜を形成する触媒CVD法が用いられている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−142252号公報
【特許文献2】特開2006−57121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の無機材料によって形成された膜は、柔軟性が低いことからフレキシブル性に欠け、高分子フィルム基材と共に屈曲を繰り返すことでガスバリア性を維持することが困難であるという問題がある。また、高分子フィルム上への無機材料積層過程においては無機成分の微結晶が生成し、その粒界によるガスバリア性の低下、あるいは結晶化による応力発生により膜の強度が低下するといった問題を有している。また、高分子フィルムの表面粗さが大きい場合にはその凹凸により無機材料の均一な積層が出来ず、高いガスバリア性を得られない場合がある。本発明は、無機膜形成によるこれらの課題を解決し、高度なガスバリア性フィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
高分子フィルム基材の片面または両面に、ZnSおよびSiOを含有してなる混合物を主成分とした混合薄膜層を少なくとも1層形成してなり、前記ZnSをM、前記酸化物をLとして表記する場合、前記混合薄膜層の組成比は(式1)の範囲であり、かつ高分子フィルム基材の混合薄膜層を形成する側の基材表面粗さRaが15nm以下で形成されたことを特徴とするガスバリア性フィルムを用いることで達成される。
(1−X)
0.7≦X≦0.9 (式1)
【発明の効果】
【0006】
本発明は、酸素ガス、水蒸気等に対する高いガスバリア性、透明性、耐熱性を有するガスバリア性フィルムであるから、例えば、食品、医薬品などの包装材および薄型テレビ、太陽電池などの電子デバイス部材として有用なガスバリア性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のガスバリア性フィルムの構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明のガスバリア性フィルムの構造を示す断面図である。本発明のガスバリア性フィルムは、図1に示すように、高分子フィルム(基材)1の表面に、混合薄膜層2を、積層したものである。
【0009】
本発明に使用する高分子フィルム基材としては、有機高分子化合物からなるフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール等の各種ポリマーからなるフィルムを使用することができる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムである。高分子フィルムを構成するポリマーは、ホモポリマー、コポリマーのいずれでもよいし、また、単独またはブレンドして用いることができる。
【0010】
また、高分子フィルム基材として、単層フィルム、あるいは、2層以上の、例えば、共押し出し法で製膜したフィルムや、一軸方向あるいは二軸方向に延伸されたフィルム等を使用することができる。さらに、混合薄膜層を形成する側の表面には、密着性を良くするために、コロナ処理、イオンボンバード処理、溶剤処理、粗面化処理や有機物、無機物あるいはこれらの混合物のアンカーコート層が施されていても構わない。
【0011】
本発明に使用する高分子フィルム基材の厚さは特に限定されないが、フレキシブル性を確保する観点から500μm以下が好ましく、引張りや衝撃に対する強度を確保する観点から5μm以上が好ましい。さらに、フィルムの加工やハンドリングの容易性から10μm以上、200μm以下がより好ましい。
【0012】
本発明に使用する高分子フィルム基材には、必要に応じて、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で添加したフィルム等も用いることができる。
【0013】
発明者らの鋭意検討の結果、本発明に使用する高分子フィルムの表面粗さRaを15nm以下にすることによって積層する混合薄膜層の膜質を緻密に形成でき高ガスバリア性が発現することがわかった。高分子フィルムの表面粗さRaが15nmより大きくなると、高分子フィルムの凹凸による傾斜部が多いため、フィルム表面に形成される混合薄膜層が多孔質な膜質になり易く、さらに形成する膜を厚くしても緻密な膜質が形成されないため、高ガスバリア性が発現しない原因となる。従って、本発明は、高分子フィルムの表面粗さRaを15nm以下にすることが好ましく、混合薄膜層の密着性を向上させる観点から高分子フィルムの表面粗さRaを6nm以下にすることさらに好ましい。表面粗さRaのより小さな高分子フィルムを用いることは、高分子フィルム上に積層する混合薄膜層の表面粗さRaの低下にもつながると考えられる。
【0014】
また、混合薄膜層としては、ZnSおよびSiOを含有する混合薄膜層を用いると、ガスバリア性が飛躍的に向上し、さらに高温高湿環境下においても膜のクラックに伴うガスバリア性低下の問題が回避可能であることが明らかとなった。ここで、主成分とは混合薄膜層全体の60質量%以上であることを意味する。ガスバリア性が向上する理由は明確ではないが、おそらくZnSに含まれる結晶質成分と酸化物のガラス質成分とを混合させることによって、微結晶を生成しやすいZnSの結晶成長が抑制され粒子径が小さくなるため膜質が緻密化し、酸素および水蒸気の透過が抑制されるためと考えられる。また、このように粒子径が小さくなることによって混合膜厚層の表面粗さRaは小さくなるものと考えられる。さらに、結晶成長が抑制されたZnSを含む混合薄膜層は、SiOだけで形成された薄膜よりも膜の柔軟性が優れるため、熱や外部からの応力に対してクラックが生じにくく、ガスバリア性低下を抑制できると考えられる。
【0015】
高分子フィルム基材上に混合薄膜層を形成する方法は特に限定されず、例えば、ZnSと酸化物の混合焼結材料を使用して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。ZnSと酸化物の単体材料を使用する場合は、前述した方法の2元同時成膜によって形成することが可能である。これらの方法の中でも、本発明に使用する混合薄膜層の形成方法は、ガスバリア性と形成膜の組成再現性の観点から、混合焼結材料を使用したスパッタリング法がより好ましい。
【0016】
また、混合薄膜層の組成は、成膜時に使用した混合焼結材料とほぼ同等の組成で形成されるため、目的に合わせた組成の混合焼結材料を使用することで容易に混合薄膜層の組成調整が可能である。混合薄膜層の組成分析は、ICP発光分光分析により行い、この値を元にラザフォード後方散乱法を使用して、各元素を定量分析しZnSとSiOの組成比を知ることができる。ICP発光分光分析は、試料をアルゴンガスとともにプラズマ光源部に導入した際に発生する発光スペクトルから、多元素の同時計測が可能であり調査試料の組成分析ができる。また、ラザフォード後方散乱法は高電圧で加速させた荷電粒子を試料に照射し、そこから跳ね返る荷電粒子の数、エネルギーから元素の特定、定量を行い、各元素の組成比を知ることができる。混合薄膜層上に無機層や樹脂層が積層されている場合、必要に応じてイオンエッチングや薬液処理により積層膜を除去した後、ICP発光分光分析及び、ラザフォード後方散乱法にて分析することができる。
【0017】
本発明の混合薄膜層の組成としては、ZnSのモル分率Xが0.9より大きくなると、ZnSの結晶成長を抑制する酸化物が不足するため、空隙部分や欠陥部分が増加し、所定のガスバリア性が得られないなどの問題が発生する。また、全体を占めるZnSのモル分率Xが0.7より小さくなると、膜内部のガラス質成分が増加して膜の柔軟度が低下するため、例えば温度85℃湿度85%RHなどの高温高湿下で長期保存すると膜にクラックが発生し、ガスバリア性が低下するなどの問題が発生する。
【0018】
また、本発明に使用する混合薄膜層の表面粗さRaは2nm以下であることが好ましい。表面粗さRaが2nm以上であると混合薄膜層の粒子径が大きいために緻密さに欠け、酸素および水蒸気の透過が大きくなる(ガスバリア性が低下する)場合がある。ガスバリア性の観点からは混合薄膜層の表面粗さRaは低ければ低いほど混合薄膜層の粒子径が小さく緻密な膜となるため酸素および水蒸気の透過の抑制効果がより向上するため好ましい。一方、表面粗さRaが0.1nm以下のように過度に小さくなった場合には、外部からの応力や屈曲に対してクラックが入り易くなることがあり安定した物性が得られなくなる場合がある。このような観点から、表面粗さRaが、0.3nm以上であればガスバリア性とクラック耐性のバランスが取りやすいため好ましい。
【0019】
本発明に使用する混合薄膜層の膜厚は、混合薄膜層のガスバリア性が発現する膜厚として5nm以上、500nm以下である。膜厚が5nmより薄くなると、十分にガスバリア性が確保できない箇所が発生し、基材面内でガスバリア性がばらつくなどの問題が生じる。このようなばらつきが発生することによって混合薄膜層の表面粗さRaは大きくなる。一方で、混合薄膜層の膜厚みを厚くしていき膜厚が500nmより厚くなると、混合薄膜層の膜応力が大きくなるため、高温高湿環境下で混合薄膜層にクラックが発生し、ガスバリア性が低下する問題が生じる場合がある。従って、混合薄膜層の膜厚は5nm以上、500nm以下が好ましく、フレキシブル性を確保する観点から10nm以上、300nm以下がより好ましい。また、混合薄膜層の膜厚が10nm以下の場合には混合薄膜層の成長初期過程にあたるために一様な混合薄膜が得られず、表面粗さRaは大きくなる。従って、混合薄膜層の表面粗さRaを小さくする観点からも本発明に使用する混合薄膜層の膜厚は10nm以上とすることが好ましい。本発明のガスバリア性フィルムは、例えば、他の樹脂フィルム、紙基材、金属素材、合成紙、セロハンなどの素材から形成された機能性部材と任意に組み合わせ、ラミネートして種々の積層体を製造することができる。これらの積層体は、本発明品の特徴である高ガスバリア性、耐熱性、高透明性に加え、耐候性、導電性、装飾性などを付与して多機能化することができるため、例えば、食品、医薬品、電子部品等の包装や、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の薄型ディスプレイ、太陽電池などの電子デバイス部材として使用することができる。
【実施例】
【0020】
実施例を挙げて、具体的に本発明を説明する。なお、フィルムの特性は下記の条件下で測定した。
【0021】
A)水蒸気透過率の測定方法
温度40℃、湿度90%RH、測定面積50cmの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の水蒸気透過率透過率測定装置(機種名:PERMATRAN(登録商標) W3/31)を使用して測定した。測定回数は各10回とし、その平均値を水蒸気透過率とした。
【0022】
B)混合薄膜層の膜厚測定方法
混合薄膜層の断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム(日立製FB−2000A)を使用してFIB法により作製した。透過型電子顕微鏡(日立製H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、混合薄膜層の膜厚を測定した。
【0023】
C)表面粗さRa測定方法
原子間力顕微鏡を用いて、以下の条件で高分子フィルム基材表面および混合薄膜層であるZnS・SiO膜表面について測定した。
システム:NanoScopeIII/MMAFM(デジタルインスツルメンツ社製)
スキャナ:AS−130(J−Scanner)
プローブ:NCH−W型、単結晶シリコン(ナノワールド社製)
走査モ−ド:タッピングモ−ド
走査範囲:10μm×10μm
走査速度:0.5Hz
測定環境:温度23℃、相対湿度65%、大気中。
【0024】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、水蒸気透過率の判定として0.10g/(m・day)以下の場合は「○」、0.10g/(m・day)以上の場合は「×」とした。
【0025】
D)混合薄膜層の組成分析
混合薄膜層の組成分析はICP発光分光分析(セイコー電子工業(株)製、SPS4000)により行い、この値をもとにさらにラザフォード後方散乱法(日新ハイボルテージ(株)製AN−2500)を使用して、各元素を定量分析しZnSとSiOの組成比を求める。
【0026】
(実施例1)
巻き取り式のスパッタリング装置を使用し、厚さ188μmで表面粗さRaが14.4nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム東レ株式会社製ルミラー(登録商標)を基材とし、ZnS、SiOを用いて形成された混合焼結材であるスパッタターゲット(三菱マテリアル(株)製ターゲット、ST−IVシリーズ)を用いて、アルゴンガスプラズマによるスパッタリング(真空度2×10−1Pa、高周波電源により投入電力500W)を実施し、膜厚が50nm、ZnSのモル分率Xが0.85の組成となるように混合薄膜層であるZnS・SiO膜を1層設けることでガスバリア性フィルムを得た。
【0027】
(実施例2)
実施例1において、厚さ188μmで表面粗さRaが12.9nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として設ける以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0028】
(実施例3)
実施例1において、厚さ188μmで表面粗さRaが5.9nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として設ける以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0029】
(実施例4)
実施例1において、厚さ188μmで表面粗さRaが1.0nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として設ける以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0030】
(実施例5)
実施例1において、厚さ100μmで表面粗さRaが0.8nmの2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム帝人デュポンフィルム株式会社製テオネックス(登録商標)を基材として設ける以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0031】
(実施例6)
実施例5において、スパッタリングによって膜厚が500nmのZnS・SiO膜を設ける以外は、実施例5と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0032】
(比較例1)
実施例1において、厚さ188μmで表面粗さRaが16.2nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として設ける以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0033】
(比較例2)
実施例1において、厚さ12μmで表面粗さRaが20.0nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として設ける以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0034】
(比較例3)
実施例1において、厚さ188μmで表面粗さRaが28.1nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として設ける以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0035】
(比較例4)
実施例1において、ZnSのモル分率Xが0.95の組成となるように混合薄膜層であるZnS・SiO膜を1層設ける以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0036】
(比較例5)
実施例3において、ZnSのモル分率Xが0.95の組成となるように混合薄膜層であるZnS・SiO膜を1層設ける以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0037】
(比較例6)
実施例1において、ZnSのモル分率Xが0.65の組成となるように混合薄膜層であるZnS・SiO膜を1層設ける以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0038】
(比較例7)
実施例3において、ZnSのモル分率Xが0.65の組成となるように混合薄膜層であるZnS・SiO膜を1層設ける以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0039】
表面粗さRaが15nm以下の高分子フィルム基材を用いた実施例1〜6において水蒸気透過率は0.10g/(m・day)以下となり、高いガスバリア性を有することがわかった。また実施例1〜6において混合薄膜層であるZnS・SiO膜の表面粗さRaが2nm以下である表面が形成されていることがわかった。一方、表面粗さRaが15nmより大きな高分子フィルム基材を用いた比較例1〜3や、モル分率Xが0.7≦X≦0.9の範囲外である比較例4〜7において、水蒸気透過率が0.10g/(m・day)以上となり、高いガスバリア性の発現は確認できなかった。従って表面粗さRaは15nm以下、モル分率Xが0.7≦X≦0.9の範囲内であることが好ましいといえる。また比較例1〜7において混合薄膜層であるZnS・SiO膜の表面粗さRaは2nmより大きな値を示す結果となった。
【0040】
これらの結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、酸素や水蒸気等に対する高ガスバリア性、透明性、耐熱性を有するものであるから、高度な特性が必要とされる薄型テレビ、太陽電池等の電子デバイス産業に寄与することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:高分子フィルム
2:混合薄膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィルム基材の片面または両面に、ZnSおよびSiOを含有してなる混合物を主成分とした混合薄膜層を少なくとも1層形成してなり、前記ZnSをM、前記SiOをLとして表記する場合、前記混合薄膜層の組成比が(式1)の範囲であり、かつ高分子フィルム基材の混合薄膜層を形成する基材表面粗さRaが15nm以下で形成されたガスバリア性フィルム。
(1−X)
0.7≦X≦0.9 (式1)
【請求項2】
前記混合薄膜層の表面粗さRaが2nm以下で形成された請求項1に記載のガスバリア性フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−213102(P2011−213102A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43553(P2011−43553)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】