説明

ガスバリア性及び耐熱性に優れたポリエステル樹脂製容器

【課題】ガスバリア性及び耐熱性に優れたポリエステル樹脂製容器を提供する。
【解決手段】本発明のカップ1は、スピログリコールとポリエチレンテレフタレート樹脂とを共重合させた耐熱非晶性ポリエステル樹脂からなる基材層2を有し、この基材層2の内側及び外側にガスバリア層3を備える。ガスバリア層3は、アモルファスカーボン被膜やSiOx被膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ホットベンダーで保管される飲料用容器として用いられるガスバリア性及び耐熱性に優れたポリエステル樹脂製容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を使用して、熱成形(シート成形)により形成されるカップ状容器を食品容器として使用しているものがある。このカップ状容器は、PET樹脂で形成されている為、酸素透過性が低く高いガスバリア性能を発揮するが、耐熱性に改善の余地があった。
【0003】
上記耐熱性の問題については、成形条件などによって改善しようとする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−35191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対し、本願発明者は、耐熱性を改善するにあたり、耐熱非晶性ポリエステル樹脂の使用が適しているものの、前記耐熱非晶性ポリエステルはPET樹脂に比べてガスバリア性能が低下するということに認識するに至った。
【0005】
本発明の解決すべき課題は、耐熱非晶性ポリエステル樹脂がPET樹脂に比べてガスバリア性に劣るため、ガスバリア性能と耐熱性能との両立が図れないことにあり、
本発明の目的とするところは、ガスバリア性及び耐熱性に優れたポリエステル樹脂製容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器の外観形状を形作りスピログリコールとポリエチレンテレフタレート樹脂とを共重合させた耐熱非晶性ポリエステル樹脂からなる基材層を有し、この基材層の内側及び外側の少なくとも一方にガスバリア層を備えることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係るガスバリア層としては、アモルファスカーボンを含む蒸着被膜や、珪素酸化物を含む蒸着被膜が挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、PET樹脂に比べて耐熱性が良好で、しかも、耐ガスバリア性に優れたポリエステル樹脂製容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明であるポリエステル樹脂製容器を詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明に従うポリエステル樹脂製カップ(以下、「カップ」という)1を一部断面で示す側面図である。
【0011】
カップ1は、容器の外観形状を形作る基材層2を有し、この基材層2の内側及び外側にガスバリア層3が設けられている。
【0012】
基材層2は、スピログリコールとポリエチレンテレフタレート樹脂とを共重合させた耐熱非晶性ポリエステル樹脂で構成されている。
【0013】
こうした耐熱非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、環状アセタール骨格を有するスピログリコールが5〜60モル%に対してエチレングリコールが30〜95モル%のグリコール成分と、テレフタル酸とエステルの少なくとも一方を80〜100モル%の範囲で含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られたポリエステル(商品名ALTESTER(三菱瓦斯化学株式会社製))が挙げられる。
【0014】
ガスバリア層3としては、プラズマCVD法を用いてアモルファスカーボン(別名、「ダイアモンドライクカーボン」)を蒸着させたアモルファスカーボン被膜(以下、「DLC被膜」という)や、酸化珪素化合物(SiOx)を蒸着させた酸化珪素化合物被膜(以下、「SiOx被膜」という)等が挙げられる。
【0015】
シート厚2.0mmのPET樹脂単体でカップ容器を成形した場合、酸素透過量が1.31cc/(day*m2)であるが、70°Cの環境下に5分間保持すれば熱変形を生じる。
【0016】
これに対し、シート厚2.2mmの耐熱非晶性ポリエステル樹脂(ALTESTER45(スピログリコール含有量が45モル%))単体でカップ容器を成形した場合、酸素透過量が5.37cc/(day*m2)である。この場合、85°Cの環境下に5分間保持しても熱変形は生じないが、酸素の透過量は、同様のシート厚のPET樹脂単体に比べて4.1倍となり、酸素バリア性に劣っている。
【0017】
一方、同様のシート厚の耐熱非晶性ポリエステル樹脂(ALTESTER45)でカップ容器を成形し、その内面にDLC被膜又はSiOx被膜を成膜したものは、酸素透過量が0.82cc/(day*m2)以下である。しかも、酸素の透過量は、耐熱非晶性ポリエステル樹脂(ALTESTER45)単体に比べ15.3%以下、また、同様のシート厚のPET樹脂単体カップ容器を成形した場合に比べて63%程度と、酸素バリア性に優れている。
【0018】
従って、本発明によれば、PET樹脂に比べて耐熱性が良好で、しかも、耐ガスバリア性に優れたポリエステル樹脂製容器を提供することができる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例と、その比較例とを、酸素バリア改善率、水蒸気バリア改善率及び耐熱性能をもって評価する。
【0020】
なお、評価に用いたサンプルは、スピログリコール量45モル%の商品名ALTESTER45(三菱瓦斯化学株式会社製)を使用してカップ状にサーモフォーミング成形したものを基材層とするものである。
【0021】
酸素バリア性能の測定方法としては、OX−TRAN2/20(MOCON社製)を使用し、カップ内側を23°C−55%RHとすると共に、カップ外側を23°C−90%RHとし、酸素分圧を21%にした。
【0022】
水蒸気バリア性能の測定方法としては、塩化カルシウム法を採用し、カップ内に15gの塩化カルシウムを充填し、これをアルミシートで封止して保管した。保管条件は、40°C−90%RHとし、水蒸気透過性は、カップ全体の重量変化により求める。
【0023】
耐熱性は所定条件に保持された後の容器外観について、変形の有無を目視で確認した。
【0024】
【表1】

【0025】
実施例1は、シート厚み2.2mmの基材層に厚さ28.2nmのDLC被膜を成膜したものであり、実施例2は、その厚さを28.4nmとしたものである。実施例3は、基材層に厚さ35.8nmのSiOx被膜を成膜したものである。
【0026】
これに対し、比較例1は、シート厚み2.0mmのPET樹脂単体の基材層からなる。また、比較例2,3はそれぞれ、シート厚み2.2mm及び2.0mmの耐熱非晶性ポリエステル樹脂(ALTESTER45)の基材層単体からなる。
【0027】
表1を参照すれば、本発明に従う実施例1〜3はいずれも、酸素透過率が1.0(cc/day*m2)よりも小さく、85°Cで5分間加熱しても熱変形を生じることなく、比較例1〜3と比較して、耐熱性が良好で、しかも、耐ガスバリア性に優れることが明らかである。
【0028】
なお、表2には、参考資料として、耐熱非晶性ポリエステル樹脂(ALTESTER45)単体のものと、PET樹脂単体のものとの耐熱性試験の結果を示す。
【0029】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に従うポリエステル樹脂製カップを一部断面で示す側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ポリエステル樹脂製カップ
2 基材層
3 ガスバリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の外観形状を形作りスピログリコールとポリエチレンテレフタレート樹脂とを共重合させた耐熱非晶性ポリエステル樹脂からなる基材層を有し、この基材層の内側及び外側の少なくとも一方にガスバリア層を備えることを特徴とする、ガスバリア性及び耐熱性に優れたポリエステル樹脂製容器。
【請求項2】
請求項1において、前記ガスバリア層は、アモルファスカーボンを含む蒸着被膜であることを特徴とする、ガスバリア性及び耐熱性に優れたポリエステル樹脂製容器。
【請求項3】
請求項1において、前記ガスバリア層は、珪素酸化物を含む蒸着被膜であることを特徴とする、ガスバリア性及び耐熱性に優れたポリエステル樹脂製容器。

【図1】
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【公開番号】特開2009−241985(P2009−241985A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93761(P2008−93761)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】