説明

ガスバリア性積層フィルム及びその製造方法

【課題】
ガスバリア性、突き刺し強度に優れた厚さ7μm以上13μm以下の包装用積層フィルムを提供する。
【解決手段】
長手方向の破断強度が300MPa以上、幅方向の破断強度が260MPa以上であり、長手方向の150℃、30分後の熱収縮率が2.5%以下、幅方向の150℃、30分後の熱収縮率が1.7%以下であることを特徴とするポリエステルフィルムの片面に、付着量が15ng/cm〜700ng/cmである金属薄膜層を設けた後に、厚さ10nm〜100nmの無機化合物からなる層を積層させることによって、酸素透過率が1.5cc/m2 ・day以下、水蒸気透過率が1.5g/m2・day以下であり、フィルムの単位厚さ当りの突刺強度が0.7N/μm 以上であることを特徴とするガスバリア性積層フィルムが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突刺し強度に優れ、ガスバリア性に優れた包装用二軸配向ポリエステルフィルムとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルを原料とするフィルムは、機械特性や熱特性が良好なことから、包装分野では広く使用されている。これについて、昨今の省資源化や廃棄時の二酸化炭素削減の流れから、フィルムの厚さを16μmから12μmへ、また12μmから9μmへ薄くする要望が強くなる一方で、ポテトチップスやクッキー、豆などの硬い材質の包装用にもポリエステルフィルムの使用が拡大していることから、耐突き刺し性は従来の厚さのフィルムと同等であるような製品が求められている。このような相反する要件を満たす製品としては、面配向係数を増大されたポリエステルフィルムが登場してきている(特許文献1、特許文献2)。しかし、これらのポリエステルフィルムではガスバリア性が不良であり、ガスバリア性を付与させるためにアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等を積層しても積層フィルムの突き刺し性は良好なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-118476号公報
【特許文献2】特開2009-202390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ガスバリア性、突き刺し強度に優れた包装用積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、長手方向の破断強度が300MPa以上、幅方向の破断強度が260MPa以上であり、長手方向の150℃、30分後の熱収縮率が2.5%以下、幅方向の150℃、30分後の熱収縮率が1.7%以下であることを特徴とするポリエステルフィルムの片面に、付着量が15ng/cm〜700ng/cmである金属薄膜層を設けた後に、厚さ10nm〜100nmの無機化合物からなる層を積層させることによって、酸素透過率、水蒸気透過率に優れ、フィルムの単位厚さ当りの突刺強度が良好なガスバリア性積層フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、酸素透過率が1.5cc/m2 ・day以下、水蒸気透過率が1.5g/m2・day以下であり、フィルムの単位厚さ当りの突刺強度が0.7N/μm以上であることを特徴とする、厚さが7μm 以上13μ m 以下である積層フィルムを作成でき、これにより突刺し強度を保ったまま包装材料を薄くすることができるため、省資源化や廃棄時の二酸化炭素の削減を実現することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0008】
本発明において、ポリエステルフィルムとは、テレフタル酸とエチレングリコールを主成分としエステル結合によって重合されたポリエチレンテレフタレート(PET)製で、好ましくは二軸延伸により分子配向された高強度フィルムである。特に内容物がポテトチップスやクッキー、豆などの硬い材質では、突刺し強度が低いフィルムでは充填時や搬送時にピンホールが発生しやすくなるため、突刺し強度が良好なフィルムとして作成されたものが好ましい。ここで、通常の二軸配向PETフィルムは、単位厚さ当りの突刺し強度が0.7N/μm未満であり、フィルムの突刺し強度がこれより低いと、突刺し強度を保ったまま包装材料を薄くすることはできない。突刺し強度を向上させる方法としては、ヒートシール性を持たせるためのシーラント層を製膜時に持たせる方法や、ポリエステルフィルムの面配向係数や屈折率を規定する方法があるが、特に長手方向の破断強度が300MPa以上、幅方向の破断強度が260MPa以上で、長手方向の150℃、30分後の熱収縮率が2.5%以下、幅方向の150℃、30分後の熱収縮率が1.7%以下と規定して製膜したポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムの長手方向の破断強度を300MPa以上、幅方向の破断強度を260MPa以上とすることにより、本発明の積層フィルムの単位厚さ当りの突刺し強度を0.7N/μm以上にすることが可能である。ポリエステルフィルムの厚さは7μm以上13μm以下が好ましい。厚さが7μmより薄いと本発明の積層フィルムの突刺し強度を0.7N/μm以上に保つことが難しく、13μmより厚いと従来の包装用フィルムと厚さが変わらず、包装材料の省資源化や廃棄時の二酸化炭素の削減に効果がない。
【0009】
本発明において、ポリエステルフィルムの長手方向の150℃、30分後の熱収縮率は2.5%以下、幅方向の150℃、30分後の熱収縮率は1.7%以下であることが必要である。上記の範囲内にすることで、後述するポリエステルフィルムへの前処理を行う際に、熱収縮によるしわがポリエステルフィルムに入ることがなく、好ましい。長手方向の150℃、30分後の熱収縮率が2.5%を超えると、後述するポリエステルフィルムへの前処理で温度が上昇したポリエステルフィルムが長手方向に収縮する力とポリエステルフィルムを搬送する張力とのバランス差によりポリエステルフィルムに斜めのしわが入りやすくなり好ましくない。幅方向の150℃、30分後の熱収縮率が1.7%を超えると横方向にポリエステルフィルムが収縮し長手方向にしわが入りやすくなり好ましくない。
【0010】
本発明におけるポリエステルフィルムは、原料としてポリエステルを用い、溶融、成形、二軸延伸、熱固定からなる通常のプラスチックフィルム製造工程において、縦方向とそれと直角方向への延伸を、各、90〜145℃で3〜4.5倍で行い、更に100〜145℃で1.1〜3.0倍、縦方向とそれと直角方向に再度、延伸する。また延伸した後、190〜220℃の温度で熱固定を行い、次に100〜190℃の温度で0.2〜2.5%程度の弛緩処理(フィルム幅を縮める処理)を縦方向とそれと直角方向に行うことにおいて、延伸倍率、延伸温度、熱固定温度、弛緩処理率を調整することにより、長手方向の破断強度が300MPa以上、幅方向の破断強度が260MPa以上で、長手方向の150℃、30分後の熱収縮率が2.5%以下、幅方向の150℃、30分後の熱収縮率が1.7%以下のポリエステルフィルムが製造できる。
【0011】
本発明において、無機化合物からなる層とは、ガスバリア性を付与させるためにアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等を積層した層のことである。無機化合物からなる層の材料としては、マグネシウム、チタン、アルミニウム、インジウム、珪素、スズ、およびそれらの酸化物が原料として挙げられ、これらを単独もしくは2種類以上併用して用いることができる。特に入手性や加工のしやすさから、アルミニウムまたは酸化アルミニウムが好ましく用いられる。無機化合物の積層方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、ラミネート法などを用いることができ、さらにこれらに限定されるものではないが、成膜速度の点から真空蒸着法が好ましく用いられる。2種以上の無機化合物を真空蒸着するときは、2種以上の無機化合物を1つのるつぼに入れて真空蒸着する方法、あるいは別々のるつぼに入れて、誘導加熱による蒸着や電子ビーム加熱による真空蒸着を行う方法を用いることができる。無機化合物の厚さは、10nm〜100nmが好ましく、20nm〜80nmがより好ましい。これより薄いとガスバリア性が保持できず、これより厚く付けてもガスバリア性の向上は頭打ちになる一方でコストが上がり好ましくない。以上の前処理と無機化合物の積層により、酸素透過率が1.5cc/m・day以下、水蒸気透過率が1.5g/m・day以下のガスバリア性を実現することができる。
【0012】
本発明では、ポリエステルフィルムの無機化合物からなる層側の表面に前処理を行うことが好ましい。無機化合物からなる層とポリエステルフィルムとの密着力が不足すると双方の間でハガレを生じ、無機化合物からなる層の上に貼り合わせたフィルムが剥がれたり、ガスバリア性が低下することがあるため、無機化合物を蒸着する前にポリエステルフィルムへ前処理を行ない、無機化合物からなる層の密着性を向上させることがガスバリア性を維持させる点で好ましい。前処理の具体的な方法としては、コロナ処理、UV処理、超音波処理、大気圧プラズマ処理、真空プラズマ処理などを用いることができ、さらにこれらに限定されるものではないが、無機化合物からなる層の積層方法として用いられる真空蒸着法と同時処理をしやすいことから、真空プラズマ処理が好ましい。さらに処理強度・処理速度の点から高周波プラズマ処理がより好ましい。真空プラズマ処理で用いる電極としては、銅、銀、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、鉛、亜鉛、錫から選ばれた少なくとも一種類の金属が好ましく、これらの金属同士またはその他の金属からなる合金でもかまわないが、特に銅が好ましく用いられる。真空プラズマ処理により、電極に用いられた金属はプラズマによるスパッタリングでポリエステルフィルムの表面に付着して金属薄膜層を形成する。金属薄膜層の金属の付着量は15ng/cm〜700ng/cmが必要であり、17ng/cm〜300ng/cmがより好ましい。薄すぎれば蒸着層の密着性向上に効果が低く、厚すぎればプラズマによるフィルム表面の劣化や電極金属特有の着色などの不具合が生じて好ましくない。
【実施例】
【0013】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
【0014】
(1)破断強度、破断伸度
引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機)を用いて、フィルムの長手方向、幅方向について、25℃、65%RHの環境下にてJIS−K7127(1999年)に準拠して、破断強度、破断伸度を測定した。測定条件は、クロスヘッドスピード300mm/分、試料幅10mm、試料長50mmとした。評価は長手方向、幅方向それぞれの破断強度、破断伸度を各5回ずつ測定し、長手方向と幅方向の平均値を用いた。
【0015】
(2)フィルム厚さ
電子マイクロメータ(アンリツ株式会社製 商品名「K−312A型」)を用いて針圧30gにてフィルムの厚さを測定した。
【0016】
(3)突刺し強度
JIS Z1707(1997年)に準拠した方法で、積層フィルムを直径40mmのリングにタルミのないように張り、直径が1mm、先端Rが0.5mmのステンレス製針を使用し、リングの中央を50mm/分の速度で突き刺し、針が貫通するときの荷重(N)を突刺し強度とした。また、突刺し強度(N)の値を、積層フィルムの厚さ(μm)で割った数値を「積層フィルムの単位厚さ当りの突刺し強度(N/μm)」とする。
【0017】
(4)熱収縮率
フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。サンプルに100mmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊して150℃に加熱した熱風オーブン内に30分間設置し加熱処理を行った。熱処理後の標線間距離を測定し、加熱処理前後の標線間距離の変化から熱収縮率を算出し、寸法安定性の指標とした。測定は各フィルムとも長手方向および幅方向に5サンプル実施して平均値で評価を行った。
【0018】
(5)ガスバリア性
(a)酸素透過率
ASTM D−3985に準じて、酸素透過率測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN100)を用いて、20℃・0%RHの条件で、積層フィルムの酸素透過率を測定した。
【0019】
(b)水蒸気透過率
水蒸気透過率装置(モダンコントロール社製PERMATRAN W−TWIN)を用いて、40℃・90%RHの条件で、積層フィルムの水蒸気透過率を測定した。
【0020】
(6)金属付着量
(a)金属薄膜層の金属付着量
単位面積当たりの金属蒸着膜の重量は、原子吸光分析により求めることができる。すなわち、積層フィルムサンプルを4cm角の大きさでサンプリングし、希硝酸に溶解した後、蒸留水25mlで定容した。この定容液について加熱−原子吸光法(島津製作所製原子吸光分光光度計AA−6300にて、測定波長:286.3nm、ランプ電流:10mA、スリット幅:0.7nm、点灯モード:BGC−2 1%、吸光光度:5.0ppm)により金属元素を定量した。重量を比重で割って体積を求め、更にサンプル面積で割り平均金属付着量を算出した。
【0021】
(b)無機化合物層の厚さ
蒸着加工による無機化合物層を設けたフィルムを試料とし、日立イオンビーム加工観察装置FB2000Aを用い、試料断面を作成後、無機化合物層の断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−7100FA型、加速電圧30kV、観測倍率40万倍)にてフィルム単体の断面写真を撮り、写真上で厚さを実測し、写真倍率で割り返して実際の厚さを求めた。
【0022】
(7)積層フィルムのシーラントフィルムとの密着強度
積層フィルム(以後Aという)の金属蒸着層側に、接着剤として東洋モートン製“AD503”/“CAT10”を用いて、厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(B)(東レフィルム加工株式会社製「トレファン」(登録商標)NO ZK100)をドライラミネート法によって貼付けたのち、40℃のオーブンに最短18時間以上いれてエージングを行なうことにより、積層材を作成した。ここで、接着剤塗布量は固形分としてA側に3.5g/mとした。作成した積層体を、15mm幅×200mmに切り取り、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機)を用いて、引張り速度300mm/分でTピール剥離法により測定した。
【0023】
[実施例1]
厚さ9μm、長手方向の破断強度が313MPa、幅方向の破断強度が274MPaであり、長手方向の150℃、30分後の熱収縮率が2.0%、幅方向の150℃、30分後の熱収縮率が1.3%である二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(Toray Advanced Materials Korea製“Excell”XP55)に、誘導加熱式金属蒸着装置を用いて、アルミニウムの蒸着加工を行なうことにより、金属層の厚さが52nmの積層フィルム(A)を得た。このとき、フィルムにアルミニウムを蒸着する直前の位置に銅製の電極を設けて高周波プラズマを発生させ、このプラズマが表面に達するような位置にフィルムを通すことによって、フィルム表面にプラズマによる前処理を行ない、付着量29ng/cmの金属薄膜層を設けた。Aの特性は表1に示す。
【0024】
[実施例2]
実施例1において二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムとして、厚さ12μm、長手方向の破断強度が330MPa、幅方向の破断強度が290MPaであり、長手方向の150℃、30分後の熱収縮率が2.1%、幅方向の150℃、30分後の熱収縮率が1.2%である二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(Toray Advanced Materials Korea製“Excell”XP55)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、積層フィルム(A)を作成した。Aの特性は表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、アルミニウムの蒸着加工を行なう際に、酸素ガスを導入し、その他は実施例1と同様にして、アルミナ層の厚さが98nmの積層フィルム(A)を得た。Aの特性は表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、アルミニウムの蒸着加工の変わりに酸化ケイ素の蒸着加工を行うことにより、その他は実施例1と同様にして、酸化ケイ素の厚さが80nmの積層フィルム(A)を得た。Aの特性は表1に示す。
[実施例5]
実施例1において、アルミニウムの蒸着加工の変わりにアルミナと酸化ケイ素の重量比1:1の同時蒸着加工を行うことにより、その他は実施例1と同様にして、アルミナと酸化ケイ素の厚さが98nmの積層フィルム(A)を得た。Aの特性は表1に示す。
【0025】
[比較例1]
実施例1において、フィルム表面にアルミニウムを蒸着する前に、プラズマによる前処理を行なわなかった。その他は実施例1と同様に積層フィルム(A)を作成した。特性は表1に示すとおりで、実施例1及び2よりも、積層フィルム(A)と無延伸ポリプロピレンフィルム(B)の間の密着強度が劣る結果となった。
【0026】
[比較例2]
実施例1において、Toray Advanced Materials Korea製“Excell”XP55を用いず、かわりに、厚さ12μmの東レ株式会社製二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラーP60”を用いたこと以外は同様にして、積層フィルム(A)を作成した。特性は表1に示すとおりで、突刺し強度が同レベルの実施例1よりフィルムは厚く、フィルムの厚さが同レベルの実施例2より突刺し強度が劣る結果となった。フィルムの単位厚さ当りの突刺し強度は0.7より低く、従来製品と同じレベルであることが判る。
【0027】
[比較例3]
実施例1において、Toray Advanced Materials Korea製“Excell”XP55を用いず、かわりに、厚さ9μmのNan Ya Plastics製二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム“BP21”を用いたこと以外は同様にして、積層フィルム(A)を作成した。特性は表1に示すとおりで、フィルムの厚さが同レベルの実施例1より突刺し強度が劣る結果となった。
【0028】
[比較例4]
実施例1において、Toray Advanced Materials Korea製“Excell”XP55を用いず、かわりに、厚さ9μmの東レ株式会社製二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラー」(登録商標)B618を用い、さらに、フィルム表面にアルミニウムを蒸着する前に、プラズマによる前処理を行なわなかった以外は同様にして、積層フィルム(A)を作成した。特性は表1に示すとおりで、フィルムの厚さが同レベルの実施例1よりガスバリア性が劣る結果となった。
【0029】
[比較例5]
比較例5、6において以下に記載の方法で製造したポリエステル樹脂を使用した。
(ポリエステルA)
テレフタル酸ジメチル100質量部、およびエチレングリコール70質量部の混合物に、
0.09質量部の酢酸マグネシウムと0.03質量部の三酸化アンチモンとを添加して、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行う。ついで、該エステル交換反応生成物に、0.020質量部のリン酸85%水溶液を添加した後、重縮合反応釜に移行する。さらに、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂を作製した。これを、以下、ポリエステルAとする。
(ポリエステルB)
ポリエステルAの重合においてテレフタル酸ジメチル100質量部の代わりに、テレフタル酸ジメチル96質量部、およびイソフタル酸ジメチル4質量部を用いてポリエステルAと同様の方法で重合を行い、固有粘度0.66のイソフタル酸4モル%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(融点247℃)を作製した。これを、以下、ポリエステルBとする。
(粒子マスター)
上記した各ポリエステルの重合時において、エステル交換反応後に平均粒子径2μmの凝集シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを添加してから重縮合反応を行い、ポリマー中の粒子濃度2質量%の粒子マスターA、Bを作製した。
【0030】
ポリエステルAと粒子マスターAを質量比で97:3で混合して使用した。まず、回転式真空乾燥機にて180℃3時間の乾燥を行い、ついで単軸の溶融押出機に供給し280℃のシリンダー温度で押し出した。溶融ポリマーを20μmカットの焼結フィルターを使用して異物を除去し、ついでギアポンプを使用して流量を計量、均整化した後、Tダイより20℃に温度制御した冷却ロール上に吐出した。その際、静電印加により溶融ポリマーをロールに密着させ、冷却固化した。このようにして得た未延伸フィルムを加熱ロールにて95℃まで加熱し、100℃に加熱したロールと40℃に温度制御した冷却ロール間にてフィルム長手方向に3.8倍延伸した。延伸区間でロール温度を測定すると105℃となっていた。長手方向に一軸延伸したフィルムを一旦冷却後、テンター式横延伸機に導入した。予熱温度90℃、延伸ゾーン温度110℃で幅方向に3.8倍延伸後、そのまま215℃で2秒間熱処理し、ついで幅方向に3%のリラックスを掛けながら215℃で2秒間熱処理を行い、最終的に厚さ12μmの二軸配向フィルムを得た。長手方向の破断強度が290MPa、幅方向の破断強度が275MPaであり、長手方向の150℃、30分後の熱収縮率が2.8%、幅方向の150℃、30分後の熱収縮率が1.2%であった。本フィルムを用いて、実施例1と同様に積層フィルム(A)の作成を試みた。高周波プラズマを発生させる工程でフィルムの幅方向にしわが入り、アルミニウム蒸着工程でフィルムが熱負けしフィルムが破断し、積層フィルム(A)を得ることはできなかった。
【0031】
[比較例6]
ポリエステルAと粒子マスターBに東レ製ポリブチレンテレフタレート樹脂(“トレコン1200S”)を90:3:7の質量比で混合して使用した。まず、回転式真空乾燥機にて150℃5時間の乾燥を行い、ついで単軸の溶融押出機に供給し275℃のシリンダー温度で押し出した。溶融ポリマーを20μmカットの焼結フィルターを使用して異物を除去し、ついでギアポンプを使用して流量を計量、均整化した後、Tダイより20℃に温度制御した冷却ロール上に吐出した。その際、静電印加により溶融ポリマーをロールに密着させ、冷却固化した。このようにして得た未延伸フィルムを加熱ロールにて95℃に加熱したロールと40℃に温度制御した冷却ロール間にてフィルム長手方向に3.4倍延伸した。一軸延伸したフィルムを一旦冷却後、テンター式延伸機に導入し、予熱温度85℃、延伸温度105℃で幅方向に3.7倍延伸後、そのまま210℃で5秒間熱処理し、さらに3%リラックスで210℃3秒間の熱処理を行い、最終的に厚さ12μmの二軸配向フィルムを得た。長手方向の破断強度が235MPa、幅方向の破断強度が255MPaであり、長手方向の150℃、30分後の熱収縮率が3.6%、幅方向の150℃、30分後の熱収縮率が2.4%であった。本フィルムを用いて、実施例1と同様に積層フィルム(A)の作成を試みた。高周波プラズマを発生させる工程でフィルムの長手方向にしわが入り、アルミニウム蒸着工程でフィルムが熱負けしフィルムが破断し、積層フィルム(A)を得ることはできなかった。
【0032】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のフィルムは、蒸着金属層の密着性が良好でガスバリア性に優れ、さらに突刺し強度が良好であることから、本発明のフィルムを用いた包装用積層材は、ポテトチップスやクッキー、豆などの硬い材質用容器を従来の性能を保ったまま薄くすることができるため、省資源化や廃棄時の二酸化炭素の低減手段として効果があり、好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の破断強度が300MPa以上、幅方向の破断強度が260MPa以上であり、長手方向の150℃、30分後の熱収縮率が2.5%以下、幅方向の150℃、30分後の熱収縮率が1.7%以下であり、厚さが7μm 以上13μm 以下であるポリエステルフィルムの片面に、付着量が15ng/cm〜700ng/cmである金属薄膜層を設けた後に、厚さ10nm〜100nmの無機化合物からなる層を積層させることを特徴とするガスバリア性積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記金属薄膜層が銅からなり、前記無機化合物がアルミニウムまたは酸化アルミニウムである請求項1に記載のガスバリア性積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2の製造方法により製造されたガスバリア性積層フィルム。

【公開番号】特開2013−82075(P2013−82075A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221553(P2011−221553)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】