説明

ガスバリア性積層フィルム

【課題】ガスバリア性が高く、静電気障害を抑え、且つ使用後の焼却処理による残滓が少なく、さらにフィルムの伸びや折り曲げに対する耐衝撃性および柔軟性を兼ね備えたガスバリア性積層フィルムを提供する。
【解決手段】ポリアミドからなる基材フィルム1の少なくとも一方の面に、透明ガスバリア層2、ガスバリア性塗布膜3、強密着処理層4を形成し、さらにその上に半透明金属薄膜層5を設けてガスバリア性積層フィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性積層フィルムに関し、詳しくは水蒸気や酸素に対するバリア性が高く、静電気障害を防止することができ、且つ、使用後においては焼却処理が可能で残滓が少ない電子部品の包装に使用する積層包装材料として適したガスバリア性積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気ディスク等の電子部品は、空気中の水蒸気や酸素による損傷だけでなく、静電気によって損傷を起こすことが知られている。
アルミニウム(AL)などのハーフ蒸着を、静電気シールド性包装材に利用する技術は、非常に古くから実施されている技術である。また、一般に電子部品等の包装のための積層フィルムとして、ポリオレフィン系基材フィルムの片面又は両面に静電気障害を防止するためにカーボン、金属等を含有させて導電性を付与したものが使用されている。しかし、このような従来の積層フィルムではバリア性が乏しく、電子部品が湿気や酸素によって酸化損傷するという問題があった。
【0003】
また、支持体表面にカーボンもしくは金属粉の塗工膜または金属蒸着膜からなる導電層と、この導電層の反対側に厚さ7〜20μmのAL箔を貼り合わせ、帯電防止剤を練り込んだシーラントを積層した包装材料を使用することによって、電子部品を静電気障害および酸素と湿気による酸化障害から守る従来技術がある。しかし、この包装材料はAL箔を使用しているため、内容物の視認性が得られないという問題があった。また、現在の焼却炉では温度約800℃前後で焼却している炉もあり、この温度ではAL箔が焼却できず、残滓が多く発生することが問題となっていた。
また、フィルムの柔軟性が十分でないと、フィルムの伸びや折り曲げによりフィルムにクラックが入り、フィルムのバリア性が低下する問題があった。したがって、フィルムに耐衝撃性および柔軟性を持たせることも重要とされていた。
さらに、内容物を識別できる透明性をもつ透明バリアフィルム(IBフィルム)に、静電気シールド性を付与した積層体に関しては、プラスチック基材フィルムに無機酸化物を蒸着し、更にバリアコート層およびハーフ蒸着層を設け、さらにバリアコートを積層することを特徴とする積層体が提案されている(特許文献1)。
しかし、バリアコート層の上にハーフ蒸着層を積層しても、ガスバリア性は向上しないため、この積層体においては、ガスバリア性が十分でないという問題があった。
【特許文献1】特開2004−330669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、水蒸気や酸素に対するバリア性が高く、またフィルムの伸びや折り曲げによるバリア性低下を防ぐための柔軟性を有し、静電気障害を防止することができ、且つ、使用後においては焼却処理が可能で残滓が少ない電子部品の包装に使用する積層包装材料としてのガスバリア性積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、既存の透明バリアフィルム(IBフィルム)において、ガスバリア性塗布膜の表面に易接着処理を施すことにより強密着処理層を設け、この強密着処理層の上に半透明金属薄膜層を蒸着させることにより、ガスバリア性塗布膜と半透明金属薄膜層とを直接積層するだけでは得られなかったガスバリア性の向上を生じさせることに成功した。
また、本発明者は、フィルムの伸びや折り曲げによるフィルムのクラックの防止のために、既存の透明バリアフィルム(IBフィルム)において、基材に蒸着する透明ガスバリア層として、化学気相成長法(CVD法)を用いて蒸着した有機酸化ケイ素膜を設け、本発明ガスバリア性積層フィルムにフィルムの伸び等によるクラックを防止するための柔軟性を持たせることに成功した。
【0006】
すなわち、本発明は、ポリアミドからなる基材フィルムの少なくとも一方の面に、透明ガスバリア層を設け、その上に更にガスバリア性塗布膜を積層した積層フィルムにおいて、前記ガスバリア性塗布膜表面に易接着処理をすることにより強密着処理層を形成し、さらにその上に半透明金属薄膜層を設けたことを特徴とするガスバリア性積層フィルムであって、該透明ガスバリア層が、ケイ素酸化物と、グラファイト状、ダイヤモンド状およびフラーレン状のいずれかである炭素単体および/または酸化ケイ素分子鎖に結合した炭素化合物とを含有する連続層であり、かつ、該透明ガスバリア層の表面から深さ方向に向かって炭素含有量が減少していることを特徴とするガスバリア性積層フィルムに関するものである。そして本発明は、以下の特徴を有する。
【0007】
1.ポリアミドからなる基材フィルムの少なくとも一方の面に、透明ガスバリア層を設け、その上に更にガスバリア性塗布膜を積層した積層フィルムにおいて、前記ガスバリア性塗布膜表面に易接着処理をすることにより強密着処理層を形成し、さらにその上に半透明金属薄膜層を設けたガスバリア性積層フィルムであって、該透明ガスバリア層が、ケイ素酸化物と、グラファイト状、ダイヤモンド状およびフラーレン状のいずれかである炭素単体および/または酸化ケイ素分子鎖に結合した炭素化合物とを含有する連続層であり、かつ、該透明ガスバリア層の表面から深さ方向に向かって炭素含有量が減少しているガスバリア性積層フィルム。
【0008】
2.前記易接着処理を、酸素、窒素若しくはアルゴンの単独ガス、またはこれらの混合ガスによるプラズマ処理により行うガスバリア性積層フィルム。
【0009】
3.前記半透明金属薄膜層が、物理蒸着法により蒸着された層であるガスバリア性積層フィルム。
【0010】
4.前記半透明金属薄膜層が、アルミニウム、ニッケル若しくはチタニウムの単独の蒸着膜、またはこれらの混合物の蒸着膜であるガスバリア性積層フィルム。
【0011】
5.前記ガスバリア性塗布膜が、一般式R1nM(OR2m(式中、R1およびR2は炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す)で表される1種又はそれ以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物からなるガスバリア性塗布膜であるガスバリア性積層フィルム。
【0012】
6.一般式R1nM(OR2m中のMが、珪素、ジルコニウム、チタン、またはアルミニウムであるガスバリア性積層フィルム。
【0013】
7.前記アルコキシドが、アルコキシシラン、アルコキシドの部分加水分解物、またはアルコキシドの加水分解縮合物からなるガスバリア性積層フィルム。
【0014】
8.前記ガスバリア性組成物が、一般式R1nM(OR2m(式中、R1およびR2は炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す)で表される1種又はそれ以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物であるガスバリア性積層フィルム。
【0015】
9.前記ガスバリア性塗布膜が、ガスバリア性組成物を塗工して塗工膜を設けた基材フィルムを、20℃〜200℃で、かつ、上記の基材フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理した硬化膜からなるガスバリア性積層フィルム。
【0016】
10.ゾル−ゲル法触媒が、水に実質的に不溶であり、かつ、有機溶媒に可溶な第三級アミンからなるガスバリア性積層フィルム。
11.前記第三級アミンが、N,N−ジメチルベンジルアミンからなるガスバリア性積層フィルム。
【0017】
12.前記ガスバリア性組成物中の水が、アルコキシド1モルに対して0.1〜100モルの割合で用いられるガスバリア性積層フィルム。
【0018】
13.前記ガスバリア性組成物が、シランカップリング剤を含むガスバリア性積層フィルム。
【0019】
14.前記ポリアミドからなる基材フィルムの透明ガスバリア層を積層した面の反対側に、静電防止コート剤を塗布し、表面抵抗率が1012Ω/□以下であるガスバリア性積層フィルム。
【0020】
15.前記ガスバリア性積層フィルムを使用した積層包装体。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るガスバリア性積層フィルムを構成するガスバリア性塗布膜は、その表面に易接着処理がされることにより、その表面が強密着処理層となる。この強密着処理層を間にして、ガスバリア性塗布膜と半透明金属薄膜層とを積層することにより、ガスバリア性塗布膜と半透明金属薄膜層とを直接積層した場合には得られなかったガスバリア性を発揮させることができる。そして、ガスバリア性塗布膜と半透明金属薄膜層との間に強密着処理層を設けた場合、強密着処理層を設けない場合に対し、ガスバリア性を少なくとも1.2倍向上させることができる。
【0022】
また、本発明に係るガスバリア性積層フィルムを構成する透明ガスバリア層に、ケイ素酸化物と、グラファイト状、ダイヤモンド状およびフラーレン状のいずれかである炭素単体および/または酸化ケイ素分子鎖に結合した炭素化合物とを含有する連続層を用い、かつ、透明ガスバリア層の表面から深さ方向に向かって炭素含有量を減少させた。これにより、透明ガスバリア層を構成するケイ素酸化物の連続層は緻密であり極めて高いバリア性を有し、さらに少なくとも1種類、あるいは2種類以上含有される、炭素、水素、珪素および酸素の元素からなる化合物によって、ケイ素酸化物の連続層は耐衝撃性に優れたものとなる。さらに、透明ガスバリア層中の上記の化合物の含有量が、透明ガスバリア層の表面から深さ方向に向かって減少していること、つまり透明ガスバリア層の最表面で含有量が最も多く、基材フィルムとの界面で含有量が最も少ない構造となるため、最もクラックが発生し易い透明ガスバリア層最表面の耐衝撃性が向上し、基材フィルムとケイ素酸化物膜との密着が強固になる。
【0023】
本発明により耐衝撃性が向上すると共にフィルムの柔軟性も向上する。その結果、フィルムの伸びや折り曲げによるクラック発生を防止し、フィルムのバリア性低下を防ぐことができる。
【0024】
これにより、ポリアミドからなる基材フィルム、透明ガスバリア層、ガスバリア性塗布膜、強密着処理層および半透明金属薄膜層から構成される本発明のガスバリア性積層フィルムは、水蒸気や酸素に対するバリア性と耐衝撃性だけでなく、フィルムの伸びや折り曲げによるバリア性低下を防ぐための柔軟性を有し、透明性および静電気障害を防止する導電性をも兼ね備えることができる。
【0025】
また、使用後においては焼却処理が可能で残滓が少ないため、電子部品の包装に使用する材料としても適している。
そして、このような強密着処理層の形成により、ガスバリア性が向上するのは、ガスバリア性塗布膜、強密着処理層および半透明金属薄膜層の密着性が向上するためと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明のガスバリア性積層フィルムについて具体的に説明する。
1.本発明のガスバリア性積層フィルムの構造
本発明に係るガスバリア性積層フィルムは、ポリアミドからなる基材フィルムの少なくとも一方の面に、透明ガスバリア層を設け、その上に更にガスバリア性塗布膜を積層した積層フィルムにおいて、前記ガスバリア性塗布膜表面に易接着処理をすることにより強密着処理層を形成し、さらにその上に半透明金属薄膜層を積層した5層構成を基本構造とするものである(図1)。
また、透明ガスバリア層とガスバリア性塗布膜を、この順に2回以上繰り返し積層することもできる。
【0027】
本発明ガスバリア性積層フィルムを用いて積層包装体を製造する場合は、本発明ガスバリア性積層フィルムに接着剤層を介してシーラントを積層し、少なくとも本発明ガスバリア性積層フィルム/接着剤層/シーラントの3層構造の状態で用いる。
積層包装体を包装袋の形態で製造する場合は、ガスバリア性積層フィルムを中間層として、これに接着剤層を介してさらに別基材フィルムを積層し、最外層に帯電防止コート層および帯電防止フィルムを積層することが好ましい。
【0028】
本発明のガスバリア性積層フィルムを利用した積層包装袋の層構造は、例えば、帯電防止コート層/帯電防止コートPETフィルム/接着剤層/本発明ガスバリア性積層フィルム/接着剤層/ナイロン(Ny)フィルム/押し出しPE/帯電防止PEフィルムなどである。
【0029】
2.基材フィルム
本発明の基材フィルムとして、化学的または物理的強度に優れ、無機酸化物または無機窒化物の蒸着薄膜層を形成する条件等に耐え、蒸着薄膜層の特性を損なうことなく良好に保持し得ることができるポリアミド系樹脂からなるフィルムないしシートを使用することができる。また、半透明金属薄膜層の透明性を生かすために透明な基材フィルムであることが好ましい。
【0030】
本発明においては、上記のプラスチック材料からなるフィルムの中でも、特に、耐ピンホール性を有する、二軸延伸ポリアミド系樹脂のプラスチック材料からなるフィルムないしシートを使用することが好ましい。
【0031】
本発明においては、ポリアミド系樹脂と併せて、さらに、ポリエチレン系樹脂あるいはポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等を使用することができる。
【0032】
本発明において、上記の各種フィルムは、上記の各種の樹脂1種又はそれ以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜化法を用いて、上記の各種の樹脂を単独で製膜化する方法、あるいは、2種以上の各種の樹脂を使用して多層共押し出し製膜化する方法、さらには、2種以上の樹脂を使用し、製膜化する前に混合して製膜化する方法等により、各種のフィルムを製造し、さらに、所望により、テンター方式、あるいは、チューブラマ方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸した各種のフィルムとすることができる。
本発明において、基材フィルムの膜厚は、6〜188μmであり、より好ましくは、9〜25μmである。
【0033】
なお、ポリアミド系樹脂に加えて、上記の各種の樹脂1種又はそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0034】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料等を使用することができ、さらには、改質用樹脂等も使用することができる。
【0035】
また、本発明において、上記の各種の樹脂のフィルムないしシートの表面には、後述する透明ガスバリア層の蒸着膜との密接着性等を向上させるために、予め、所望の表面処理層を設けておくことができる。
【0036】
本発明において、上記の表面処理層としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理を任意に施し、例えば、コロナ処理層、オゾン処理層、プラズマ処理層、酸化処理層、その他を形成することができる。
【0037】
上記の表面前処理は、各種の樹脂のフィルムないしシートと後述する透明ガスバリア層の蒸着膜との密接着性等を改善するためのものであるが、上記の密接着性を改善する方法として、その他、例えば、各種の樹脂のフィルムないしシートの表面に、予め、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層、あるいは、蒸着アンカーコート剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。
【0038】
上記の前処理のコート剤層としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0039】
3.透明ガスバリア層
本発明において、基材フィルムに積層する透明ガスバリア層は、ケイ素酸化物と、グラファイト状、ダイヤモンド状およびフラーレン状のいずれかである炭素単体および/または酸化ケイ素分子鎖に結合した炭素化合物とを含有する連続層であり、かつ、透明ガスバリア層の表面から深さ方向に向かって炭素含有量が減少している。
透明ガスバリア層は、ケイ素酸化物を主体とする連続層である。透明ガスバリア層を構成するケイ素酸化物は、SiOx(x=1〜2)の薄膜、好ましくは連続層であり、厚みは10〜3000Å、好ましくは60〜400Å程度である。特に、透明性の点から、ケイ素酸化物の連続層は、SiOx(x=1.7〜2)である薄膜が好ましい。
【0040】
また、透明ガスバリア層中にはケイ素酸化物に加えて、炭素、水素、珪素および酸素のなかの1種類、あるいは2種類以上の元素からなる化合物が少なくとも1種類含有される。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または炭素単体がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状になっている場合、さらに原料の有機ケイ素化合物やそれらの誘導体を含有する場合がある。具体例を挙げると、CH3部位をもつハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノールなどの水酸基誘導体などを挙げることができる。上記以外でも、蒸着過程の条件を変化させることにより透明ガスバリア層に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。これらの化合物の透明ガスバリア層中の含有率は、0.1〜50%、好ましくは5〜20%程度である。この含有率が0.1%未満であると、透明ガスバリア層の耐衝撃性、延展性が不十分となり、曲げなどによってクラックの発生がみられ、高いバリア性を安定して維持することができなくなる。また、含有率が40%を超えると、バリア性が低下し好ましくない。さらに、本発明では、透明ガスバリア層中の上記の化合物の含有量を透明ガスバリア層の表面から深さ方向へ向かって減少させることが好ましい。これにより、透明ガスバリア層の最表面においてケイ素酸化物の連続層は上記化合物によって耐衝撃性を高められ、一方、基材フィルムとの界面では上記化合物の含有量が少ないため、基材とケイ素酸化物連続層との密着は強固なものとなる。
透明ガスバリア層の蒸着は、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)により行うことができ、膜質の異なる蒸着薄膜層を多層で積層することができる。本発明で利用する化学気相成長法には、例えば、プラズマCVD法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等が含まれる。
【0041】
本発明で利用することができる化学気相成長法の一つである、プラズマCVD法(Plasma Chemical Vapor Deposition法)の一例を説明する。図2は本発明の透明ガスバリア層の蒸着に使用するプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置の一例を示す図である。図2において、プラズマCVD装置11は、チャンバー12、このチャンバー12内に配設された供給ローラ13、巻取ローラ14、冷却・電極ドラム15、補助ローラ16を備え、冷却・電極ドラム15は電源17に接続されているとともに、チャンバー12内は真空ポンプ18により所望の真空度に設定できるようになっている。さらに、チャンバー12内の冷却・電極ドラム15の近傍には、原料供給ノズル19の開口部が位置しており、この原料供給ノズル19の他端は、チャンバー12外部に配設されている原料揮発供給装置21およびガス供給装置22に接続されている。また、冷却・電極ドラム15の近傍にはマグネット23を設置し、プラズマの発生を促進している。
上述のようなプラズマCVD装置11の供給ローラ13に、基材フィルム1の原反を装着し、補助ローラ16、冷却・電極ドラム15、補助ローラ16を経由して巻取ローラ14に至る図示のような原反搬送パスを形成する。
【0042】
次に、チャンバー12内を真空ポンプ18により減圧して、真空度10-1〜10-8torr、好ましくは、真空度10-3〜10-7torrとする。そして、原料揮発供給装置21において原料である有機ケイ素化合物を揮発させ、ガス供給装置22から供給される酸素ガスおよび不活性ガスと混合させ、この混合ガスを原料供給ノズル19を介してチャンバー12中に導入する。この場合、混合ガス中の有機ケイ素化合物の含有量は1〜40%、酸素ガスの含有量は10〜70%、不活性ガスの含有量は10〜60%の範囲とするこ
とができ、例えば、有機ケイ素化合物と酸素ガスと不活性ガスの混合比を1:6:5〜1:17:14程度とすることができる。
【0043】
一方、冷却・電極ドラム15には電源17から所定の電圧が印加されているため、チャンバー12内の原料供給ノズル19の開口部と冷却・電極ドラム15との近傍でグロー放電プラズマPが確立される。このグロー放電プラズマPは、混合ガス中の1つ以上のガス成分から導出されるものである。この状態で、基材フィルム1を一定速度で搬送させ、グロー放電プラズマPによって冷却・電極ドラム15の周面上の基材フィルム1上にケイ素酸化物の連続層からなる透明ガスバリア層2を形成する。このときのチャンバー12内の真空度は、10-1〜10-4torr、好ましくは、10-1〜10-2torrとする。また、基材フィルム1の搬送速度は10〜300m/分、好ましくは50〜150m/分とする。
このように透明ガスバリア層が形成された基材フィルム1は巻取ローラ14に巻き上げられる。
【0044】
上記のようなプラズマCVD装置11における透明ガスバリア層2の形成では、プラズマ化した原料ガスを酸素で酸化しながらSiOxの形で基材フィルム1上に薄膜が形成されるので、形成されたケイ素酸化物の薄膜は、緻密で隙間の少ない連続層となる。したがって、透明ガスバリア層2のバリア性は、従来の真空蒸着により形成されたケイ素酸化物膜のバリア性よりもはるかに高いものとなり、薄い層厚で十分なバリア性を得ることができる。また、SiOxプラズマにより基材フィルム1の表面が清浄化され、基材フィルム1表面に極性基やフリーラジカルが発生するので、形成されたケイ素酸化物の薄膜と基材フィルム1との接着性が高いものとなる。さらに、上述のようにケイ素酸化物薄膜の形成時の真空度は10-1〜10-4torr、好ましくは、10-1〜10-2torrであり、従来の真空蒸着によるケイ素酸化物膜形成時の真空度(10-4〜10-5torr)に比べて低真空度であるため、基材フィルムの原反交換の際の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度も安定しやすく、成膜プロセスが安定する。
【0045】
本発明において使用する有機ケイ素化合物としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等を挙げることができる。このなかでは、特に1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンが好ましく用いられる。これらの有機ケイ素化合物は、常温・常圧では液体である。
【0046】
本発明により製造されるガスバリア性積層フィルムの透明ガスバリア層の性質は、透明ガスバリア層を構成するケイ素酸化物連続層の組成SiOxのxの値、および、層厚により決定され、基材フィルムの搬送速度、プラズマ発生時の電気的パワー、混合ガスの混合比を適正化することにより良好なケイ素酸化物連続層を形成することができる。
【0047】
4.ガスバリア性塗布膜
本発明のガスバリア性塗布膜は、アルコキシドと水溶性高分子とをゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物を塗布してなるものである。これにより、フィルムのガスバリア性をさらに向上させることができる。
(1)アルコキシド
該ガスバリア性組成物において用いることができるアルコキシドとしては、一般式R1nM(OR2m(式中、R1およびR2は炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し
、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す)で表される1種又はそれ以上のアルコキシドを好ましく用いることができる。
【0048】
本発明において、一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、金属原子Mとして、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムその他を使用することができ、Mが珪素であるアルコキシシランを使用することが好ましい。
また、本発明において、単独又は二種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うことができる。
また、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、R1で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基その他のアルキル基を挙げることができる。
また、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、R2で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基その他を挙げることができる。
尚、本発明において、同一分子中において、これらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
【0049】
一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができ、また、上記のアルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよく更に、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2〜6量体のものを使用される。
【0050】
(2)水溶性高分子
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール系樹脂若しくはエチレン・ビニルアルコール共重合体のいずれか又はその両方を好ましく用いることができる。
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体の含有量は、上記のアルコキシドの合計量100重量部に対して5〜500重量部の範囲であることが好ましい。上記において、500重量部を越えると、バリア性被膜の脆性が大きくなり、その耐侯性等も低下することから好ましくない。
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂として、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、株式会社クラレ製PVA110(ケン化度=98〜99%、重合度=1100)、PVA117(ケン化度=98〜99%、重合度=1700)、PVA124(ケン化度=98〜99%、重合度=2400)、PVA135H(ケン化度=99.7%以上、重合度=3500)、同社製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)及びゴーセノールNH−18(ケン化度=98〜99%、重合度=1700)等を使用することができる。
【0051】
また、本発明において、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。このようなケン化物には、酢酸基が数十モル%残存する部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないか又は酢酸基が全く残存していない完全ケン化物までが包含される。特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から、ケン化度が80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であるものを使用することが望ましい。また、上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは20〜45モル%であるものを使用することが好ましい。上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体の具体例としては、株式会社クラレ製、エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)等を使用することができる。
【0052】
(3)シランカップリング剤
本発明において、本発明に係るバリアコートを形成するガスバリア性組成物を調製するには、シランカップリング剤等も添加することができる。
本発明において、シランカップリング剤は、無機物と反応する加水分解基、及び有機物と反応する有機官能基の両方を一分子中にもつ有機ケイ素化合物からなる。無機物と反応する加水分解基としては、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、アセトキシ基及びクロロ基などが挙げられる。また、有機物と反応する有機官能基としては、水酸基含有アクリル樹脂中の水酸基又はイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基が好ましく、例えばイソシアネート基、アミノ基、エポキシ基及びメルカプト基が挙げられる。また、ビニル基及びメタクリルオキシ基などであってもよい。
【0053】
該有機ケイ素化合物は、無機物及び有機物のいずれとも反応しないアルキル基やフェニル基を有していてもよい。また、有機官能基を有しないケイ素化合物、例えば加水分解基のみを有するアルコキシシランのような化合物と混合することもできる。本発明において、シランカップリング剤は、1種類または2種類以上の混合物であっても良い。
【0054】
本発明において用いられるシランカップリング剤としては、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0055】
(4)ガスバリア性組成物の調製
アルコキシドと水溶性高分子とを、ゾル−ゲル法触媒、酸、水及び有機溶剤、および必要に応じて、シランカップリング剤等を混合してガスバリア性組成物を調製する。
ガスバリア性組成物の調製には、上記のアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モルの割合の水を用いることが好ましい。
ガスバリア性組成物の調製において用いられる、ゾル−ゲル法触媒としては、実質的に水に不溶であり、且つ有機溶媒に可溶な第三級アミン、例えばN,N−ジメチルベンジルアミンを用いることができ、また、酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸、並びに酢酸、酒石酸等の有機酸その他を使用することができる。更に、有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等を用いることができる。
【0056】
更に、ガスバリア性組成物に関して、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記のアルコキシドやシランカップリング剤等を含む塗工液中で溶解した状態にあることが好ましく、そのため上記の有機溶媒の種類が適宜選択される。本発明において、溶剤中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体は、例えば、ソアノール(日本合成化学社製)として市販されているものを使用することができる。
【0057】
(5)ガスバリア性塗布膜の形成方法
上記のガスバリア性組成物を、無機酸化物蒸着層の上に塗布し、加熱して溶媒及び重縮合反応により生成したアルコールを除去すると、重縮合反応が完結し、透明なガスバリア性塗布膜が形成される。
更に、加水分解によって生じた水酸基や、シランカップリング剤由来のシラノール基が無機酸化物蒸着層の表面の水酸基と結合する為、該無機酸化物蒸着層とガスバリア性塗布膜との密着性、接着性等が良好なものとなる。
【0058】
上述のように形成されることにより、本発明のガスバリア性塗布膜は、結晶性を有する直鎖状ポリマーを含み、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造を取る。このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高いため、良好なガスバリア性を示す。
【0059】
本発明においては、無機酸化物蒸着層とガスバリア性塗布膜とが、例えば、加水分解・共縮合による化学結合、水素結合、或いは、配位結合等を形成し、これら2層間の密着性が向上し、相乗効果により、より良好なバリア性の効果を発揮し得るものである。
【0060】
本発明において、上記のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーター等のロールコート、スプレーコート、ディッピング、刷毛、バーコート、アプリケータ等の塗布手段により、1回或いは複数回の塗布で、乾燥膜厚が0.01〜30μm、好ましくは0.1〜10μmのバリアコートを形成することができる。更に、通常の環境下で、20〜300℃、好ましくは20〜200℃の温度下で、3秒〜60分間、好ましくは10秒〜10分間加熱・乾燥することにより、縮合が行われ、本発明のガスバリア性塗布膜を形成することができる。
【0061】
5.強密着処理層
本発明の強密着処理層は、上述のガスバリア性塗布膜の表面を易接着処理することにより、ガスバリア性塗布膜の表面に形成される。
強密着処理層を形成することにより、ガスバリア性塗布膜と半透明金属薄膜層とを直接積層する場合には得られなかったガスバリア性の向上を図ることができる。
易接着処理は、酸素、窒素若しくはアルゴンの単独、又はこれらの混合ガスによるプラズマ処理により行われる。
易接着処理は、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー0.5〜20kw、酸素ガス若しくはアルゴンガス単独を又はそれらの混合ガスを使用し、混合ガス圧2〜100×10-3mbar、処理速度100〜600m/minで、酸素ガス若しくはアルゴンガス単独プラズマ処理、又は酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理により行い、強密着処理層を形成した。
【0062】
6.半透明金属薄膜層
半透明金属薄膜層の蒸着は、化学気相成長法又は物理気相成長法により、又はこれらを併用して行うことができる。化学気相成長法については、透明ガスバリア層の蒸着方法について記載されたとおりである
本発明で利用する物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等が含まれる。本発明で利用することができる物理気相成長法の一つである、真空蒸着法について説明する。図3は、本発明における半透明金属薄膜層の蒸着方法の一例を示す巻き取り式真空蒸着装置の概略的構成図である。
【0063】
図3に示すように、巻き取り式真空蒸着装置41の真空チャンバー42の中で、巻き出しロール43から、基材フィルム1を繰り出し、該基材フィルム1を、ガイドロール44、45を介して、冷却したコーティングドラム46に案内する。次いで、冷却したコーティングドラム46上に案内された基材フィルム1の上に、るつぼ47で熱せられた蒸着源48を、必要ならば、酸素ガス吹出口49から酸素ガス等を供給しながら蒸着させ、マスク50を介して無機酸化物蒸着薄膜層を成膜化する。電子ビーム真空蒸着法では、蒸着源48への過熱が電子ビーム照射により行われる。次いで、無機酸化物蒸着薄膜層を積層した基材フィルム1を、ガイドロール51、52を介して、巻き取りロール53に巻き取る。
【0064】
本発明の半透明金属薄膜層は、Al、NiおよびTi等の金属を上記の方法で蒸着させることで形成されるが、光線透過率を調整することで、内容物の視認性が得られ、かつある程度の遮光性の得られる層(半透明金属薄膜層)とすることができる。
具体的には、光線透過率は20%〜60%とすることが好ましく、このためには、半透明蒸着膜の膜厚を20Å〜150Åの範囲で、さらに真空度1〜100×10-4mBarの真空条件で蒸着することが好ましい。
半透明金属薄膜層の製造法としては、例えば、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法が好ましい。
【0065】
7.接着剤層、別の基材フィルム、帯電防止コート層および帯電防止フィルム
(1)接着剤層
接着剤層を構成する接着剤としては、汎用のドライラミネート接着剤等が利用できる。例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマー、あるいは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤、その他の接着剤を使用することができる。
【0066】
上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。
上記の接着剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法等によって施すことができ、そのコーティング量としては、0.1〜10g/m2 (乾燥状態)位が望ましい。
【0067】
(2)別の基材フィルム
基材は、高分子フィルムからなるものである。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート等からなるポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等からなるポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリニトリロアクリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸フィルム等の生分解性プラスチックフィルム等が挙げられる。これらは、延伸されていても、未延伸であってもよいが、機械的強度に優れるものや寸法安定性を有するものが好ましく用いられる。これらの中では、耐熱性などの面から二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートがより好ましい。また、この基材の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤等からなる薄膜層が設けられていてもよく、さらには、この上に形成される薄膜層との密着性をよくするために、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、薬品処理、溶剤処理等を適宜施しておいても構わない。
【0068】
また、包装袋としたときに腰を持たせ、突き刺しや摩擦への耐性を付与するために、ヒートシール層とガスバリア性被膜層との間に、ポリアミド層を設けておいてもよい。具体的には、ε−カプロラクタム開環重合反応で得られる6−ナイロン、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸塩との重縮合反応で得られる6,6−ナイロン等の周知のポリアミド樹脂により形成すればよい。より具体的には、これらのポリアミド樹脂をフィルム状に加工したものを積層して設ければよい。
【0069】
特に二軸方向に任意に延伸されたものが、機械強度や寸法安定性に優れているので好ましく用いられる。このポリアミド層の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤等により薄膜層をさらに設けるようにしてもよく、さらには薄膜との密着性を良くするために、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理等を施しておいてもよく、さらにまた薬品処理、溶剤処理等を施しておいてもよい。
【0070】
(3)帯電防止コート層
静電気帯電防止層を構成する静防コート剤の成分は、表面固有抵抗を低減するものであれば特に限定されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルジエタノールアミン、ヒドロキシアルキルモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルジエタノールアマイド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタイン等が挙げられる。
【0071】
静防コート剤の塗布方法は、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法等の従来公知の手段を用いることができる。塗布膜の厚さは、静防コート剤の組成や塗布加工機や加工所条件によって異なってくるが、包装袋とした時に上記した所期の機能を発現できるように塗布できる方法であれば、特に限定されるものではない。
【0072】
(4)帯電防止フィルム
帯電防止フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、フィルムの形成に使用される従来公知のものがいずれも使用できるが、好ましいものとしては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等との共重合体、アイオノマー等のポリオレフィン系熱可塑性樹脂が挙げられる。
上記の熱可塑性樹脂中に包含させる帯電防止剤としては、従来公知のいずれの帯電防止剤も使用できるが、好ましいものとしては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、高級アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル等の1種又は混合物の如き界面活性剤タイプの帯電防止剤が挙げられる。
【0073】
帯電防止剤の熱可塑性樹脂中への添加方法及び製膜方法は従来公知の方法でよく、例えば、所定量の帯電防止剤を前記の樹脂ペレットと十分に混合し、押出機にて溶融混練し、インフレーションダイを通してフィルム化する方法や、帯電防止剤を高濃度に含むマスターバッチを用いて同様にフィルム化する方法等が挙げられ、帯電防止剤の添加方法やフィルム化の方法は特に限定されない。
また、最内装となるシーラント層としては、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂が袋状の包装体などを形成する際に接着層として設けられるものであり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。
【0074】
その厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲であり、さらに、電気特性(帯電防止)などを付与してもよい。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
I.積層フィルムの作成
[実施例1]
(1)厚さ25μmの2軸延伸ポリアミドフィルムを使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、以下に示す条件で、上記の2軸延伸ポリアミドフィルムのコロナ放電処理面に、厚さ200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
反応ガス混合比:へキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.2:5.0:2.5(単位:slm)
到達圧力:5.0×10-5mbar
製膜圧力:7.0×10-2mbar
ライン速度:150m/min
パワー:35kW
【0076】
その後、酸化珪素の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kW、酸素ガス:アルゴンガス=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-2mbar、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理面を形成した。
【0077】
(2)他方、表1に示す組成に従って、組成a.正珪酸エチル(多摩科学社製)、イソプロピルアルコール、0.5規定塩酸水溶液、イオン交換水、シランカップリング剤からなる加水分解液に、予め調製した組成b.のポリビニルアルコール水溶液を加えて攪拌し 、無色透明のガスバリア性塗工液を得た。
【0078】
【表1】

【0079】
次に、上記(1)で形成したプラズマ処理面に、上記(2)で製造したガスバリア性塗工液をグラビアロールコート法によりコーティングし、次いで150℃で60秒間、加熱処理して、厚さ0.2μm(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成しガスバリア性積層フィルムを製造した。
【0080】
(3)次に、上記で作成したガスバリア性積層フィルムを巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着した。次いで、これを繰り出し、そのガスバリア性積層フィルムのガスバリア性塗布膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス:アルゴンガス=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-2mbar、処理速度240m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、強密着処理層を形成した。
【0081】
(4)その後、上記強密着処理面に、アルミニウムを蒸着源に用いて、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、以下の蒸着条件により、膜厚100Åの透過性のあるアルミニウムの蒸着膜を形成し、本発明のガスバリア性積層フィルムを作成した。
(蒸着条件)
蒸着チャンバー内の真空度:1×10-4mbar
巻き取りチャンバー内の真空度:2×10-2mbar
電子ビーム電力:20kW
フィルムの搬送速度:240m/分
蒸着面:強密着処理面
【0082】
[実施例2]
実施例1の(3)記載の強密着処理条件を、パワー9kw、窒素ガス:アルゴンガス=60:3.0(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-2mbar、処理速度240m/minで窒素/アルゴン混合ガスプラズマ処理に変えて、強密着処理層を形成し、それ以外は実施例1と同様の方法で、本発明のガスバリア性積層フィル
ムを製造した。
【0083】
[実施例3]
実施例1の(3)記載の強密着処理条件を、パワー9kw、アルゴンガス=70(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-2mbar、処理速度240m/minでアルゴンガスプラズマ処理を行って、強密着処理層を形成し、それ以外は実施例1と同様の方法で、本発明のガスバリア性積層フィルムを製造した。
【0084】
[実施例4]
実施例1の(3)記載の強密着処理条件を、パワー4kw、アルゴンガス=70(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-2mbar、処理速度240m/minでアルゴンガスプラズマ処理を行って、強密着処理層を形成し、それ以外は実施例1と同様の方法で、本発明のガスバリア性積層フィルムを製造した。
【0085】
[比較例1]
実施例1の(3)記載の強密着処理および、(4)記載の半透過金属蒸着を施さない以外は、実施例1と同様の方法で、ガスバリア性積層フィルムを製造した。
【0086】
[比較例2]
実施例1の(3)記載の強密着処理を施さない以外は、実施例1と同様の方法で、ガスバリア性積層フィルムを製造した。
【0087】
[比較例3]
実施例1の(1)記載の透明蒸着膜、(2)記載のガスバリア性塗布膜を施さない以外は、実施例1と同様の方法で、ガスバリア性積層フィルムを製造した。
【0088】
[比較例4]
実施例1記載の透明蒸着膜の製造方法を、基材フィルムとして、厚さ25μmの2軸延伸ポリアミドフィルムを使用し、まず、上記の2軸延伸ポリアミドフィルムを巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着した。次いで、これを繰り出し、その2軸延伸ポリアミドフィルムのコロナ放電処理面に、アルミニウムを蒸着源に用いて、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、以下の蒸着条件により、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
酸素ガス導入後の蒸着チャンバー内の真空度:2×10-4mbar
巻き取りチャンバー内の真空度:2×10-2mbar
電子ビーム電力:25kW
フィルムの搬送速度:240m/分
蒸着面:コロナ放電処理面
【0089】
その後、酸化アルミニウムの蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス:アルゴンガス=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-2mbar、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化アルミニウムの蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理面を形成した。
【0090】
その後、(2)記載のガスバリア性塗布膜を形成する工程以降は、実施例1と同様の方法で、ガスバリア性積層フィルムを製造した。
【0091】
[比較例5]
実施例1記載の透明バリア膜を形成した後、(2)記載のガスバリア性塗布膜を形成し、ガスバリア性積層フィルムを製造した。
【0092】
II.包装材料の作成
上記実施例1から4、および比較例1から5において作成された積層フィルムを用いて、以下のように包装材料を作成した。
(1)包装材料の構成:
帯電防止コート(静防)PETフィルム12/接着剤/実施例または比較例で作成した積層フィルム/接着剤/ナイロン(Ny)25/押出PE20/帯電防止フィルムPE40
【0093】
(2)包装材料の作成
本発明フィルムの基材フィルム面(被蒸着面に対向した面)に一般の静電防止コート剤をグラビアロール法で厚さ1.0g/平米(乾燥)の厚さで塗布し、所望の静電防止コート層を設けた。
さらに、本発明のAl蒸着面側に、一般的なアンカーコート剤をグラビアロール法で厚さ0.5g/平米(乾燥)の厚さで塗布し、このアンカーコート面と、アイセロ化学社製静電防止ポリエチレンフィルムL−140 60μmとを対向させ、その間に溶融押し出し法でポリエチレンを膜厚20μm厚で押出ラミネートを行い、実施例又は比較例記載のフィルムを用いた包装体とした。
【0094】
III.実施例1から4、および比較例1から5において作成された積層フィルムを用いて、以下の試験を行った。結果を表2に示す。
(a)水蒸気透過度測定:水蒸気透過度を、40℃、90%RHの雰囲気下で、水蒸気透過度測定装置(モダンコントロール社製、PARMATRAN−W3/31)を使用して測定した。
(b)防湿性の向上の度合い:防湿性の向上の度合いは、「比較例1で作成される積層フィルムにおける半透過性金属膜の処理前の防湿性」を、「各実施例で作成される積層フィルムにおける半透過性金属膜の処理後の防湿性」で割ることにより求めた。
(c)静電気シールド性:EIA 541 Appendix Eに基いて外部電圧1000V印加時に測定した。
(d)ラミネート強度:ラミネート強度は、15mm幅の短冊状にカットしたサンプルを引っ張り試験機(株式会社オリエンテック製の引っ張り試験機)に固定し、T字剥離による方法で測定した。
(e)延展性:(株)オリエンテック社製の引張試験機テンシロンを用いてバリア性フィルムを3%引張り、その状態で30秒間保持する。その後、元に戻して表面状態の観察(クラック)を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡にて行った。同時に、水蒸気透過度の測定も行った。
【0095】
本発明の積層フィルムは、比較例の積層フィルムと比べ、バリア性および静電気シールド性に優れ、またそれと同時にラミネート強度および延展性も優れていた。そのため、従来のものに比べて、フィルムの伸びや折り曲げによる防湿性の悪化を抑制できるという効果を発揮する。
【0096】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係るガスバリア性積層フィルムについてその層構成の一例を示す概略的断面図である。
【図2】プラズマ化学気相成長装置についてその一例の概要を示す概略的構成図である。
【図3】巻き取り式真空蒸着装置についてその一例の概要を示す概略的構成図である。
【符号の説明】
【0098】
A:ガスバリア性積層フィルム
1:基材フィルム
2:透明ガスバリア層
3:ガスバリア性塗布膜
4:強密着処理層
5:半透明金属薄膜層
11:プラズマCVD装置
12:チャンバー
13:供給ローラ
14:巻取ローラ
15:冷却・電極ドラム
16:補助ローラ
17:電源
18:真空ポンプ
19:原料供給ノズル
21:原料揮発供給装置
22:ガス供給装置
23:マグネット
41:巻き取り式真空蒸着装置
42:真空チャンバー
43:巻き出しロール
44、45、51、52:ガイドロール
46:コーティングドラム
47:るつぼ
48:蒸着源
49:酸素ガス吹出口
50:マスク
53:巻き取りロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドからなる基材フィルムの少なくとも一方の面に、透明ガスバリア層を設け、その上に更にガスバリア性塗布膜を積層した積層フィルムにおいて、前記ガスバリア性塗布膜表面に易接着処理をすることにより強密着処理層を形成し、さらにその上に半透明金属薄膜層を設けたことを特徴とするガスバリア性積層フィルムであって、
該透明ガスバリア層が、ケイ素酸化物と、グラファイト状、ダイヤモンド状およびフラーレン状のいずれかである炭素単体および/または酸化ケイ素分子鎖に結合した炭素化合物とを含有する連続層であり、かつ、該透明ガスバリア層の表面から深さ方向に向かって炭素含有量が減少していることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
【請求項2】
前記易接着処理を、酸素、窒素若しくはアルゴンの単独ガス、またはこれらの混合ガスによるプラズマ処理により行うことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項3】
前記半透明金属薄膜層が、物理蒸着法により蒸着された層であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項4】
前記半透明金属薄膜層が、アルミニウム、ニッケル若しくはチタニウムの単独の蒸着膜、またはこれらの混合物の蒸着膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項5】
前記ガスバリア性塗布膜が、一般式R1nM(OR2m(式中、R1およびR2は炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す)で表される1種又はそれ以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物からなるガスバリア性塗布膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項6】
一般式R1nM(OR2m中のMが、珪素、ジルコニウム、チタン、またはアルミニウムであることを特徴とする請求項5に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項7】
前記アルコキシドが、アルコキシシラン、アルコキシドの部分加水分解物、またはアルコキシドの加水分解縮合物からなることを特徴とする請求項5または6に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項8】
前記ガスバリア性組成物が、一般式R1nM(OR2m(式中、R1およびR2は炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す)で表される1種又はそれ以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項9】
前記ガスバリア性塗布膜が、ガスバリア性組成物を塗工して塗工膜を設けた基材フィルムを、20℃〜200℃で、かつ、上記の基材フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理した硬化膜からなることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項10】
ゾル−ゲル法触媒が、水に実質的に不溶であり、かつ、有機溶媒に可溶な第三級アミンからなることを特徴とする、請求項5〜9のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項11】
前記第三級アミンが、N,N−ジメチルベンジルアミンからなることを特徴とする請求項10に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項12】
前記ガスバリア性組成物中の水が、アルコキシド1モルに対して0.1〜100モルの割合で用いられることを特徴とする請求項5〜11のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項13】
前記ガスバリア性組成物が、シランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項5〜12のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項14】
前記ポリアミドからなる基材フィルムの透明ガスバリア層を積層した面の反対側に、静電防止コート剤を塗布し、表面抵抗率が1012Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルムを使用した積層包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−89397(P2010−89397A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262306(P2008−262306)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】