説明

ガスホルダ、ガスホルダのシールゴム摩耗検知方法及び装置、及びガスホルダの改造方法及び装置

【課題】ホルダ側板を傷付けることのない摩耗量検知手段であって、かつ上下に複数段に配置されたシールゴムの摩耗量の平均値を精度良く検知できるとともに、シールゴムの摩耗量の遠隔監視を可能とする。
【解決手段】筒形をなすガスホルダ1の側板2とホルダ側板2に沿って上下に摺動するピストン8との間の機密を保持する上部シールゴム31及び下部シールゴム32の摩耗量を検知するガスホルダのシールゴム摩耗検知方法において、上下方向に間隔を置いて多段に設けられた前記シールゴム31及び32間の間隙に該シールゴムと同一の支持部材34に一体的に固定された非接触式の距離センサ58により、距離センサ58とホルダ側板2との距離を測ることによって、該シールゴムの摩耗量を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所のコークス炉、高炉、転炉等で副生する中、低圧ガス用のガスホルダ、又はメタン、その他一般の都市ガス用のガスホルダであって、ホルダ側板と該ホルダ側板の内面に沿って上下に摺動する蓋状のピストンとの間をシールゴムによって気密に保持するように構成された、ガスを一定圧力で貯蔵するガスホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液シール型ガスホルダを図6〜図8に基づいて説明する。図6はガスホルダの全体外観図、図7はガスホルダの全体縦断面図である。図6及び図7において、ガスホルダ01の本体は円筒・殻構造をなし、ホルダ側板02と屋根03とで構成され、基礎04上に立設されている。側板02は、回廊05と基柱06とにより補強されている。ガスホルダ01の下部にガス出入口管07が設けられ、ここからガスホルダ01内にガスが供給又は排出される。
【0003】
ガスホルダ01の内部にピストン08が設けられ、ガス出入口管07からのガスの流出入に応じてピストン08がホルダ側板02の内面に沿って上下に円滑に摺動し、ガスを貯蔵又は排出する機構になっている。ピストン08は、図7に示すように、ドーム型に形成され、円周方向と半径方向の梁で組み合わされた骨組み上に甲板(デッキ)が張られて構成されている。
【0004】
次にホルダ側板02の内面とピストン08とのシール機構010を説明する。ピストン08の側縁に、図8に基づいて後述するシールゴムを設け、該シールゴムがホルダ側板02の内面に密着し、ピストン08の上下方向の動きに従って摺動することにより、ピストン08の下方に貯留されたガスを密封する。また該シールゴムの上方に油溝を形成してそこにシール油を溜め、該シール油の静圧力によって該シールゴムをホルダ側板02に押し付けるようにしている。
【0005】
該油溝に貯留されたシール油は、ホルダ側板02の内面に沿って流下し、底部油溝011に溜まり、ガスホルダ本体側部に設置されたシール油循環装置012に送られる。ここで混入している水を分離した後、シール油上昇管013を通って図示しないシール油循環ポンプによりホルダ側板上部の予備油タンク014に押し上げられる。油は予備油タンク014から図示しないスリットを経てホルダ側板02の内面へ流し、再び該油溝に入ってシール油として使用される。
【0006】
ピストン08の水平回転は、図示しない回転防止装置により拘束される。ピストン08に固設された支持フレーム080には、ホルダ側板02内面の各基柱06の位置に当接する上部ガイドロール081及び下部ガイドロール082が設けられ、ピストン082の傾斜制御を行っている。ピストン08は、自重で降下しガス圧で上昇するように、フートリング083内に充填されるコンクリートと、ピストン08周辺の重錘用コンクリートブロックによりその自重が調整され、所定のガス圧が得られるようになっている。
【0007】
屋根03には、ピストン上部の換気のため中央に換気筒021が設けられ、また内部採光用の複数の天窓022が分散配置されている。屋根03の内側には回転足場023と、作業員を屋根からピストン甲板上まで運ぶ内部リフト024が設けられている。ホルダ側板02最上段には、外部に開口するガス放散管025を設けて、自然換気を行なっている。またホルダ側板02の外部には、昇降用の外部階段026及び外部エレベータ027が設けられ、貯留されたガスの容量を指示する容量指示計028が設けられている。このガスホルダ01は、例えば直径が50m、高さが80mに及ぶ。
【0008】
特許文献1(特開昭59−187196号公報)には、ホルダ側板02とピストン08との間のシール機構010の一例が開示されている。このシール機構を図8に基づいて説明する。図8はホルダ側板02とピストン08とのシールを示す部分縦断面図である。図8において、ホルダ側板02とピストン08との間に上下2段に上部シールゴム031と下部シールゴム032が配設されている。上部シールゴム031及び下部シールゴム032は、該上下シールゴム間のスペーサとして配置された木片033に狭着され、木片033とともに保持金具034に固定されている。保持金具034は、ピストン08上に配設されたシール支持部035にレバー036を介して支軸035を中心に回動自在に支持されている。
【0009】
上部シールゴム031及び下部シールゴム032は、レバー036が貫挿された支持片037と、レバー036の先端に取り付けられた座板038との間に介装された弾機039の付勢力によって側板02に圧着される。さらに液溝に貯留されたシール油sの静圧力によって上下シールゴム031及び032が側板02に圧着されることと相俟って、ピストン08下部の貯蔵ガスgがシール機構010で密封される。
【0010】
保持金具034には垂直桿041が立設され、垂直桿041の上端に固着された円筒形状の水平支持部材042に水平スケール部材043がガスホルダ01の直径方向に摺動自在に嵌挿されている。水平スケール部材043の先端にはホルダ側板02上を転動するローラ044が装着されている。水平スケール部材043の軸桿部045は、水平支持部材042内に配置されたコイルバネ等の弾性力付与手段によってホルダ側板02に圧着される付勢力を付与される。また水平支持部材042を貫通した水平スケール部材043の他端にはスケール部046が設けられ、軸桿部045のガスホルダ直径方向の移動量を計測可能になっている。
【0011】
かかる構成のガスホルダにおいて、ピストン08の上下動に伴って、水平スケール部材043のローラ044がホルダ側板02に沿って転動する。これによって上部シールゴム031及び下部シールゴム032の摩耗に伴って水平スケール部材043が水平支持部材042に沿ってガスホルダ01の直径方向に移動するので、スケール部046を読み取ることによって、該上下シールゴムの摩耗量を検出することができる。
なお、今まで液シール型ガスホルダを例にとって説明したが、シール油を用いないガスホルダも存在する。
【0012】
また特許文献2(登録実用新案第3000435号公報)には、シール油を用いないガスホルダにおけるシールゴム摩耗検知手段が開示されている。このシールゴム摩耗検知手段は、特許文献1と同様にホルダ側板に接触する方式の摩耗量検知センサを用いている。
また該摩耗量検知センサは2段に設けられたシールゴムに対して上部シールゴムに埋設されている。
【0013】
【特許文献1】特開昭59−187196号公報
【特許文献2】登録実用新案第3000435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1及び2に開示されたガスホルダのシールゴム摩耗検知手段は、ホルダ側板02にセンサ先端部を接触させるため、該接触によりホルダ側板02の内面を傷付けるおそれがある。ホルダ側板02の内面はシール状態を保持するために高精度な平滑面としておく必要があり、ホルダ側板内面の傷付けはシール機構を損なうおそれがある。
【0015】
また特許文献1のシールゴム摩耗検知手段は、上部シールゴム031の上方に設けられ、そこで摩耗量を検知し、特許文献2のシールゴム摩耗検知手段は、上部シールゴムに埋設されて上部シールゴムの摩耗量を検知している。従って特許文献1のシールゴム摩耗検知手段は、シールゴムの摩耗量を正確に反映するものではない。また特許文献2のシールゴム摩耗検知手段は、上部シールゴム以外の下部シールゴムの摩耗量を含む全シールゴムの摩耗量の平均値との間で誤差を生じるおそれがある。
シールゴムの摺動抵抗がガスホルダの円周方向でばらつくと、偏摩耗が生じ、特許文献1又は2のシールゴム摩耗検知手段では、シールゴムの実際の摩耗量と検知手段により検知した摩耗量との間の誤差がさらに大きくなるという問題がある。
【0016】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、ホルダ側板を傷付けることのない摩耗量検知手段であって、かつ上下に複数段に配置されたシールゴムの摩耗量の平均値を精度良く検知できるとともに、シールゴムの摩耗量の遠隔監視を可能とした摩耗量検知手段及び該摩耗量検知手段を備えたガスホルダを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため、本発明のガスホルダのシールゴム摩耗検知方法は、
筒形をなすガスホルダの側板と該ホルダ側板に沿って上下に摺動するピストンとの間の機密を保持するシールゴムの摩耗量を検知するガスホルダのシールゴム摩耗検知方法において、
上下方向に間隔を置いて複数段に設けられた前記シールゴム間の間隙に該シールゴムと同一の支持部材に一体的に固定された非接触式の距離センサにより、該距離センサと該側板との距離を測ることによって、該シールゴムの摩耗量を検知するものである。
【0018】
また本発明のガスホルダのシールゴム摩耗検知装置は、
筒形をなすガスホルダの側板に沿って上下に摺動するピストンの外周に該ピストンと該ホルダ側板との間の気密を保持するシールゴムを設け、該シールゴムの摩耗量を検知するセンサを備えたガスホルダのシールゴム摩耗検知装置において、
前記シールゴムを上下方向に間隔を置いて複数段に設け、
該シールゴム間の間隙に該シールゴムと同一の支持部材に一体的に前記ホルダ側板との距離を測る非接触式の距離センサを固定してなるものである。
【0019】
本発明のシールゴム摩耗検知手段は、非接触式の距離センサを用いる。該距離センサを複数段に設けられたシールゴム間の間隙に該シールゴムと同一の支持部材に一体的に固定し、ピストンの上下動と伴ってピストンに追従して該距離センサとホルダ側板内面との距離を検知し、この検知値から該シールゴムの摩耗量を検知する。
本発明では、非接触式の距離センサを用いるため、側板内面を傷付けるおそれがない。またシールゴム間の設けられた間隙に該距離センサを設置するため、上下に複数段に設けられたシールゴムの摩耗量の平均値を検知することができる。なお該距離センサは、該シールゴム間に設けられたスペーサに埋設するようにしてもよい。
さらに該距離センサを設けることにより、ガスホルダの稼動を停止して解体することなく、シールゴムの摩耗状態を監視できるため、保守点検が容易になる。
【0020】
また本発明のガスホルダの改造方法は、
筒形をなすガスホルダの側板と該ホルダ側板に沿って上下に摺動するピストンとの間の機密を保持するシールゴムを備えたガスホルダの改造方法において、
上下方向に間隔を置いて複数段に設けられた既存のシールゴム間の間隙に該シールゴムと同一の支持部材に一体的に非接触式の距離センサを固定し、該距離センサにより該距離センサと前記ホルダ側板との距離を測ることによって、該シールゴムの摩耗量を検知するように改造するものである。
【0021】
また本発明により改造されたガスホルダは、
筒形のガスホルダの側板と該ホルダ側板を上下に摺動するピストンとの間の機密を保持するシールゴムを備えたガスホルダにおいて、
上下方向に間隔を置いて複数段に設けられた既存のシールゴム間の間隙に該シールゴムと同一の支持部材に一体的に前記ホルダ側板との距離を測る非接触式の距離センサを固定して改造したものである。
【0022】
本発明の改造方法及び改造されたガスホルダは、既存のガスホルダにおいて既存のシールゴム間の間隙に非接触式の距離センサを設けるものである。このようにシールゴム間の間隙に距離センサを取り付けるため、既存のシールゴムをそのまま利用することができる。例えば該距離センサをシールゴム間に介設されたスペーサに埋設するようにしてもよい。従ってシールゴム間にシールゴムとは別個に取り付けることができるため、シールゴムの交換が必要になったときでも該シールゴムのみを交換すればよい。従って改造工程が短縮され、改造作業が容易になる。
【0023】
本発明のシールゴム摩耗検知装置において、シールゴムの上方にシール油を貯留し、該シール油の静圧力によって該シールゴムをホルダ側板に押し付ける押し付け力を付与する構成とし、距離センサとして渦電流式センサを用いてもよい。かかる構成とすれば、シールゴムの上方にシール油を貯留するため、該シール油の静圧力によりシールゴムをホルダ側板に押し付ける押し付け力を該シールゴムの支持部材に付与できるので、さらにガスシール効果を高めることができる。
【0024】
またガスホルダではガス爆発のおそれがないことが必要条件である。渦電流式センサはこのおそれがなく、防爆条件に十分合致する。また渦電流式センサは一旦取り付けた後でメンテナンスの必要がなく、また更正の必要がないので、メンテナンスが容易である。
一方、他方式のセンサ、例えば光センサ方式では、シール油に汚れが発生すると、検知精度が劣化するおそれがある。シールゴムの上下方向長さ及びシールゴム間の間隙は50mm程度であるので、超音波方式のセンサは、かかる狭い間隙に設置するには不適である。
【0025】
また本発明のシールゴム摩耗検知装置において、筒形ガスホルダの横断面が多角形又は円筒形をなし、該筒形ガスホルダの周方向に3個以上の非接触式距離センサを分散配置するようにしてもよい。ガスホルダの周方向に3個以上の非接触式距離センサを分散配置することにより、ガスホルダ周方向でシールゴムの摩耗量を漏れなく検知することができ、検知精度が向上する。
【0026】
また、該距離センサの検知信号伝達ケーブルをピストン上面に設けられた電/光変換部を介して光信号ケーブルに接続し、該光信号ケーブルを介して該検知信号を該ガスホルダの外部に送信するように構成してもよい。非接触式距離センサのケーブルを光電変換部を介して光信号ケーブルに接続することにより、シールゴム摩耗量の遠隔監視が可能になる。ピストン上面は軽度の防爆条件を満たす必要があるので、光信号ケーブル方式は、無線方式等と比べて防爆条件に適合している。
【0027】
また本発明のシールゴム摩耗検知装置において、シールゴム及び距離センサの支持部材を前記ガスホルダの側板に押し付ける付勢力を付与する付勢手段を設け、該距離センサを該付勢手段が該支持部材に付勢力を付与する作用点に近接した位置に配置してもよい。かかる構成とすれば、ホルダ側板に対するシールゴムの押し付け力をさらに増大させることができる。また該付勢手段がシールゴム及び距離センサの支持部材に付勢力を付与する作用点の付近がシールゴムの摩耗量が最も多い部分である。ここに距離センサを配置することにより、シールゴムの摩耗量が多い部分の摩耗量を常に検知することができる。これによって常に安全サイドの監視を行なうことができる。
【0028】
前記構成の一例をして、複数のカウンタウェイトをガスホルダの周方向に沿ってピストンに分散配置し、各カウンタウェイトをリンク機構を介してシールゴム及び距離センサの支持部材に連結することによって、該支持部材を側板に押し付ける付勢力を付与するように構成し、距離センサを該リンク機構と支持部材との連結部間で該連結部に近接した位置に配置することができる。
【0029】
この場合、該カウンタウェイトの自重によって、ホルダ側板に対するシールゴムの押し付け力をさらに増大させることができる。またカウンタウェイトによる付勢力によりホルダ側板の変形に対する追従性が良好になるとともに、一時的な局所的変形に対してもシール性能を十分保持することができる。
またカウンタウェイトのリンク機構と支持部材との連結部がシールゴムの摩耗量が最大となる箇所である。距離センサを該連結部に近接した位置に配置することにより、シールゴムの摩耗量が多い部分の摩耗量を常に検知することができる。これによってシールゴムの摩耗量を常に安全サイドから監視できる。
【0030】
また本発明のシールゴム摩耗検知装置において、ガスホルダの周方向に配設された複数の距離センサによる検出位置を一覧表示するガスホルダ画面と該検出位置で検出したシールゴム摩耗量とを表示する表示部を設けるようにするとよい。これによって該シールゴムの摩耗量を遠隔監視しながら該表示部によってシールゴムの摩耗量を監視することができる。
【0031】
また、複数の距離センサによる検知位置及び該検知位置で検出した摩耗量を一覧表示しているので、ガスホルダの全周方向に配置されたシールゴムの摩耗量を一目で確認でき、シールゴムの補修要否及び補修時期を診断することができる。なお距離センサの取り付け位置の表示部をシールゴムの摩耗量によって色分け表示すれば、各検知箇所の補修時期の緊急度を一目で識別できる。
【0032】
また本発明のガスホルダは、以上のような構成を有するシールゴム摩耗検知装置を備えたものである。従って本発明のシールゴム摩耗検知装置による前記作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、シールゴムを上下方向に間隔を置いて複数段に設け、該シールゴム間の間隙に該シールゴムと同一の支持部材に一体的にガスホルダの側板との距離を測る非接触式の距離センサを固定し、該距離センサにより該側板との距離を測ることによって、該シールゴムの摩耗量を検知できるため、ガスホルダの稼動を停止して解体することなくシールゴムの摩耗量の検知が可能になり、保守点検が容易である。また該側板の表面を傷付けるおそれがない。また上下方向に複数段に設けたシールゴム間にセンサを配置するため、シールゴム摩耗量の平均値を検知することができる。
【0034】
また距離センサの検知信号伝達ケーブルをピストン上面に設けられた電/光変換部を介して光信号ケーブルに接続し、該光信号ケーブルを介して該検知信号を該ガスホルダの外部に送信するように構成すれば、防爆仕様に適した簡素な構成でシールゴム摩耗量の遠隔監視が可能となる。
また摩耗量検知するためのセンサをシールゴム間の間隙に該シールゴムとは別個に設けるので、既存のガスホルダを本発明を適用したものに改造する場合でも、既存のシールゴムをそのまま利用することができる。またシールゴムと距離センサとを別々に交換できる。従って改造工事が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0036】
(実施形態1)
本発明の第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。本実施形態は、本発明を図6及び図7に示す従来のガスホルダと同一の液シール方式のガスホルダに適用したものである。図1は、本実施形態のホルダ側板とシールゴム間のシール機構を示す縦断面図であり、従来のガスホルダの該シール機構を示す、図8に相当する図である。図2は該シール機構の一部拡大縦断面図(図3中のB−B線に沿う断面図)、図3は図2中のA−A線に沿う断面図である。本実施形態において、ホルダ側板2とピストン8間のシール機構及びシールゴム摩耗量の遠隔監視装置以外のガスホルダの構成は、図6及び図7に示す従来のガスホルダの構成と同一であり、従って該シール機構及び遠隔監視装置以外の構成の説明を省略する。
【0037】
図1〜図3により本実施形態のホルダ側板とピストン間のシール機構を説明する。まず図1において、ピストン8は、円周方向と半径方向の梁で組み合わされた骨組み上にデッキ84が張られてドーム型に形成されている。ピストン8の外縁に周方向に設けられたフートリング83の内部には、ピストン8の重量を調整するため、バランスコンクリート85が充填されている。ピストン8は、自重で降下し、ピストン8下部のガスホルダ1内に貯留されるガスgのガス圧で上昇するが、ピストン8の重量をバランスコンクリート85等で調整することにより、ガスgのガス圧を所定の圧力に調整している。
【0038】
ピストン8の上面には支持フレーム80が固設され、支持フレーム80にはホルダ側板2の内面に当接する上部ガイドロール(図示略)及び下部ガイドロール82が取り付けられ、これによってピストン8の傾斜制御を行っている。ホルダ側板2とピストン8との間には貯留ガスgの漏洩を防止するためのシール機構10が配設されている。
【0039】
上部シールゴム31及び下部シールゴム32、及び上下シールゴム間に配置されたアルミ製のスペーサ33が保持金具34に一体に固定されている。上部シールゴム31及び下部シールゴム32、スペーサ33の上下方向長さは、例えば50mmに設定される。該上下シールゴムは、NBRと繊維層とが積層されて構成されている。保持金具34は吊り材52を介してピストン8の上部側縁からピストン8の直径方向に突設された支持フレーム61に接続される。吊り材52はピストン8の円周方向に所定間隔で複数配置されている。
【0040】
ピストン8の上面にはカウンタウェイト62が設置され、以下カウンタウェイト62と保持金具34とを連結するリンク機構50の構成を説明する。保持金具34は水平方向に配置されたフレーム53に対して支軸53aを介して回動可能に接続され、フレーム53は三角形状をなすフレーム54に対して支軸54aを介して回動可能に接続される。また該三角フレーム54は、ピストン8のフートリング83に取り付けられたブラケット55に対して支軸55aを介して回動可能に接続される。カウンタウェイト62の先端62aと三角フレーム54の一端54bとはワイヤ63で接続される。
【0041】
カウンタウェイト62は支軸62bを中心に回動可能に取り付けられているため、カウンタウェイト62の自重によりワイヤ63が上方に引っ張られる引っ張り力を受ける。そしてワイヤ63が上方に引っ張られることにより、フレーム53及び保持金具34が三角フレーム54によってホルダ側板側に押し付けられる押し付け力を受ける。これによって上部シールゴム31及び下部シールゴム32がホルダ側板2に押し付けられ、ホルダ側板2に密着する。
【0042】
カウンタウェイト62は、ピストン8の周方向に所定間隔を持って複数配置され、これによってピストン8の周方向全域に亘って均一な押し付け力を付与できる。カウンタウェイト62による押し付け力によりホルダ側板2の変形に対する追従性も良好となり、また一時的なホルダ側板2の局所変形に対しても十分なシール性を保持できる。
【0043】
図2及び図3において、上部シールゴム31及び下部シールゴム32、スペーサ33は、ボルト51により座金56を介して上下両側から挟着され、座金56はスプリングプレート65を介して保持金具34に一体にボルト結合されている。ボルト51の上端は吊り材52に接続される。
【0044】
下部シールゴム32の下方にボルト51により取り付けられた座金56とフートリング83に取り付けられた遮蔽板64とをキャンバス57で接続している。これによって、遮蔽板64及びキャンバス57とでこれらの下方に形成されるガス貯留領域と遮蔽板64及びキャンバス57の上方とを遮断し、上部シールゴム31の上方及び遮蔽板64及びキャンバス57の上方にシール油sの貯留溝を形成している。
【0045】
スペーサ33には渦電流式の距離センサ58が埋設される。保持金具34に固定板60がボルト結合され、固定板60に固定ナット59がボルト結合される。そして距離センサ58の外表面が固定ナット59と螺合することにより、距離センサ58は保持金具34に固定される。距離センサ58の先端面とホルダ側板2の内面との初期間隔は、例えば20mm程度に設定される。距離センサ58は、距離センサ58とホルダ側板2内面との距離を検知し、その検知信号をケーブル58aを介して後述する中継制御盤に送信する。距離センサ58は上下シールゴム31及び32とともに保持金具34に一体に固定されているため、距離センサ58とホルダ側板2との距離を検知することにより、ホルダ側板2内面に摺接する上下シールゴム31及び32の磨耗量を検知することができる。
【0046】
図4は、本実施形態のシールゴム摩耗量の遠隔監視システムを示す概要図である。図4において、距離センサ58は、ガスホルダ1のホルダ側板2の周方向に沿って8個分散配置される。ピストンデッキ84の中央上面には電/光変換器71及び中継制御盤72が設けられる。距離センサ58の摩耗量検知信号は、電気信号でケーブル58aから電/光変換器71に送られて光信号に変換される。中継制御盤72は例えばPLCソフトウェア等を内臓し、複数の電/光変換器71から出た信号は中継制御盤72に集約され、その後光ファイバを内臓した光信号ケーブル73を経由し、ガスホルダ1の外部の非防爆エリアに設けられた計器盤74に送信される。
【0047】
計器盤74は、例えばPLCソフトウェア等を内臓し、監視画面74aを備えており、該監視画面74aによって8個の距離センサ58から送信される上部シールゴム31及び下部シールゴム32の摩耗量を監視する。図5は、該監視画面74aの一例を示す。画面中央には、ガスホルダ1の横断面が表示され、No.1からNo.8は、それぞれ8個の距離センサ58が配置された箇所を示す。該横断面表示の両側には8個の距離センサ58のシールゴム摩耗量の検出値が表示される。そしてNo.1からNo.8の表示部は、シールゴム摩耗量に応じて色分け表示される。例えば該摩耗量が許容限界値に近い場合には黄色表示するなどして、注意喚起している。
【0048】
本実施形態によれば、上部シールゴム31及び下部シールゴム32の摩耗量を非接触式の距離センサ58で検知するため、ホルダ側板2の内面を傷付けるおそれがなく、従ってガスシール性能を損なうおそれがない。また、上部シールゴム31及び下部シールゴム32の間に距離センサ58を設置しているため、該上下シールゴムが偏摩耗を生じた場合でも、上下シールゴムの摩耗量の平均値を検知できる。従って上下シールゴムの摩耗量を反映した正確な摩耗量を検知できる。
【0049】
また距離センサ58は渦電流式センサを用いているため、防爆条件に十分合致する。また上部シールゴム31及び下部シールゴム32間の狭い空間であっても良好な検知精度を維持できる。またシール油sで囲まれた環境で、シール油sに汚れが生じた場合でも良好な検知精度を維持できるとともに、一旦取り付けた後でメンテナンスの必要がなく、また更正の必要がないので、メンテナンスが容易である。
ガスホルダ1のピストン2の上方空間は、軽度の防爆条件を有する区域であるが、ここで距離センサ58からケーブル58aを介して送信されてきた検知信号(電気信号)が電/光変換器71により光信号に変換され、光信号ケーブル73でガスホルダ1の外部に送信されるので、防爆条件に適うととともに、検知信号をガスホルダ1の外部に設けられた計器盤74に送信し、そこで遠隔監視が可能になる。
【0050】
またNo.1〜8の距離センサ58による検出位置及び該検出位置で検出した摩耗量を監視画面74aで一覧表示しているので、ガスホルダ1の全周方向に配置されたシールゴムの摩耗量を一目で確認でき、シールゴムの補修要否及び補修時期を容易に診断することができる。またNo.1〜8の距離センサ58による検出位置の表示部が摩耗量の程度によって色分け表示されるので、各検出位置のシールゴムの補修時期の緊急度を一目で識別できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、ホルダ側板を傷付けることなく、ホルダ側板とピストン間のシールゴムの摩耗量を精度良く検知できるとともに、シールゴムの摩耗量の遠隔監視を可能として保守点検の容易な摩耗量検知手段及び該摩耗量検知手段を備えたガスホルダを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態においてホルダ側板とシールゴム間のシール機構を示す縦断面図である。
【図2】図1の該シール機構の一部拡大縦断面図(図3中のB−B線に沿う断面図)である。
【図3】図2中のA−A線に沿う断面図である。
【図4】前記第1実施形態の遠隔監視装置を示す説明図である。
【図5】前記第1実施形態の遠隔監視装置の表示画面図である。
【図6】ガスホルダの全体外観図である。
【図7】ガスホルダの全体縦断面図である。
【図8】従来のホルダ側板とピストンとのシール機構を示す部分縦断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ガスホルダ
2 ホルダ側板
8 ピストン
31 上部シールゴム
32 下部シールゴム
33 スペーサ
34 保持金具(支持部材)
50 リンク機構
53 フレーム(連結部)
58 距離センサ
58a ケーブル
62 カウンタウェイト
71 電/光変換器
73 光信号ケーブル
74 計器盤
74a 表示画面(表示部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形をなすガスホルダの側板と該ホルダ側板に沿って上下に摺動するピストンとの間の機密を保持するシールゴムの摩耗量を検知するガスホルダのシールゴム摩耗検知方法において、
上下方向に間隔を置いて複数段に設けられた前記シールゴム間の間隙に該シールゴムと同一の支持部材に一体的に固定された非接触式の距離センサにより、該距離センサと該側板との距離を測ることによって、該シールゴムの摩耗量を検知することを特徴とするガスホルダのシールゴム摩耗検知方法。
【請求項2】
筒形をなすガスホルダの側板と該ホルダ側板に沿って上下に摺動するピストンとの間の機密を保持するシールゴムを備えたガスホルダの改造方法において、
上下方向に間隔を置いて複数段に設けられた既存のシールゴム間の間隙に該シールゴムと同一の支持部材に一体的に非接触式の距離センサを固定し、該距離センサにより該距離センサと前記ホルダ側板との距離を測ることによって、該シールゴムの摩耗量を検知するように改造することを特徴とするガスホルダの改造方法。
【請求項3】
筒形をなすガスホルダの側板に沿って上下に摺動するピストンの外周に該ピストンと該ホルダ側板との間の気密を保持するシールゴムを設け、該シールゴムの摩耗量を検知するセンサを備えたガスホルダのシールゴム摩耗検知装置において、
前記シールゴムを上下方向に間隔を置いて複数段に設け、
該シールゴム間の間隙に該シールゴムと同一の支持部材に一体的に前記ホルダ側板との距離を測る非接触式の距離センサを固定してなることを特徴とするガスホルダのシールゴム摩耗検知装置。
【請求項4】
前記シールゴムの上方にシール油を貯留し、該シール油の静圧力によって該シールゴムを前記ホルダ側板に押し付ける押し付け力を付与する構成とし、
前記距離センサとして渦電流式センサを用いたことを特徴とする請求項3に記載のガスホルダのシールゴム摩耗検知装置。
【請求項5】
前記ガスホルダの横断面が多角形又は円筒形をなし、該ガスホルダの周方向に3個以上の前記距離センサを分散配置することを特徴とする請求項3又は4に記載のガスホルダのシールゴム摩耗検知装置。
【請求項6】
前記距離センサの検知信号伝達ケーブルを前記ピストン上面に設けられた電/光変換部を介して光信号ケーブルに接続し、
該光信号ケーブルを介して該検知信号を該ガスホルダの外部に送信するように構成したことを特徴とする請求項3又は4に記載のガスホルダのシールゴム摩耗検知装置。
【請求項7】
前記シールゴム及び距離センサの支持部材を前記ガスホルダの側板に押し付ける付勢力を付与する付勢手段を設け、
前記距離センサを該付勢手段が該支持部材に付勢力を付与する作用点に近接した位置に配置したことを特徴とする請求項3〜6のいずれかの項に記載のガスホルダのシールゴム摩耗検知装置。
【請求項8】
前記付勢手段が、前記ガスホルダの周方向に沿って前記ピストンに分散配置されるとともに、リンク機構を介して前記支持部材に連結された複数のカウンタウェイトであり、
前記距離センサを該リンク機構と該支持部材との連結部間で該連結部に近接した位置に配置したことを特徴とする請求項7に記載のガスホルダのシールゴム摩耗検知装置。
【請求項9】
前記ガスホルダの周方向に配設された複数の前記距離センサの取付け位置を一覧表示するガスホルダ画面と該距離センサで検出した前記シールゴムの摩耗量とを表示する表示部を設けたことを特徴とする請求項3〜8のいずれかの項に記載のガスホルダのシールゴム摩耗検知装置。
【請求項10】
筒形のガスホルダの側板と該ホルダ側板を上下に摺動するピストンとの間の機密を保持するシールゴムを備えたガスホルダにおいて、
上下方向に間隔を置いて複数段に設けられた既存のシールゴム間の間隙に該シールゴムと同一の支持部材に一体的に前記ホルダ側板との距離を測る非接触式の距離センサを固定して改造したことを特徴とするガスホルダ。
【請求項11】
請求項3〜9のいずれか一項のシールゴム摩耗検知装置を備えたことを特徴とするガスホルダ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−208956(P2008−208956A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48144(P2007−48144)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(506122246)三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社 (111)
【Fターム(参考)】