説明

ガスメータ

【課題】超音波式ガスメータに水入りが発生したときに適切なタイミングでガス遮断を可能とする技術を提供する。
【解決手段】
超音波式ガスメータ10において、ガス流入口5aから浸入した水は、円柱状部31の下部に落ちると、導水孔55を通って、貯水部40に流れ落ちる。また、水を貯水部40にスムーズに流し込むために、ガス抜き孔57が形成されている。貯水部40が満水状態になり、更に水が浸入すると、遮断弁20の弁座32を乗り越えて、連通孔から下に垂れ始める。連通孔から垂れた水滴は水滴集中突起60により、導水溝66に集められて、導水構造体2の上に落ちる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスメータに係り、特に、超音波式流速センサによりガスの流速の計測が行われるガスメータに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの流量を計測するために、超音波式流速センサを使用した超音波式ガスメータがある。このような超音波式ガスメータの超音波式流速センサでは、例えば、ガス流路内に一定距離だけ離れて配置された超音波周波数で作動する圧電式振動子等からなる2つの音響トランスジューサによって構成されている。
【0003】
この超音波式ガスメータでは、一方の音響トランスジューサの発生する超音波信号を、他方の音響トランスジューサに受信させる動作を行って、超音波信号が音響トランスジューサ間で伝播される伝播時間を計測する。つづいて、計測した伝播時間に基づいてガス流速を間欠的に求め、この流速にガス流路の断面積と間欠時間とを乗じて通過流量を求めている。さらに、この通過流量を積算して求めた積算流量を表示する。
【0004】
また、ガスの流速を適正に計測するために整流手段である多層ユニットを備えた超音波式ガスメータがある。この種の超音波式ガスメータは、ガス供給源に接続されるガス流入口と燃焼器等に接続されるガス流出口の間に形成された中間流路部内に、ガスの流れを整流する多層ユニットを備える。そして、この多層ユニットの側部に配置された超音波式流速センサにより、多層ユニット内を流れるガスの流速を計測している。
【0005】
ところで、特に都市ガスの場合、非常に稀ではあるが、地震、台風、地盤沈下等により、ガス配管に亀裂が入り、そこから雨水が浸入し、水が超音波式ガスメータの流路内まで浸入してしまうことがある。流路内でも特に多層流路に水が溜まると、超音波の伝播が不安定となり、流量の誤計測が発生することになる。
【0006】
その対策として、いくつかの技術が提案されている。例えば、超音波式流速センサの、他方のトランスジューサで受信された超音波信号の増幅度が小さくなり、且つ、伝播時間が小さくなる場合に、ガス流路内がほぼ満水状態となったと判断する超音波式ガスメータがある。
【0007】
また、より早い段階で、少量の水の浸入を検知して、警告を出すことを可能とした技術もある(例えば、特許文献1参照)。図9は、そのような技術を採用した超音波式ガスメータ100の概略構成を示す図である。この超音波式ガスメータ100では、多層ユニット101に形成された導水構造102により、少量の水を的確にセンサ接合部分Sまで導くことで、少量の水の浸入を、できるだけ早い段階で検知して遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−243421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に開示の技術は、多層ユニット101に形成された導水構造102により、少量の水を的確にセンサ接合部分まで導くことができ、早期の水浸入の検知及びその対応処理であるガス遮断を可能とした。しかし、次のような課題が残っていた。
(1)所定量(例えば50cc)未満の水が浸入しても、器差が所定値(例えば4%[使用公差])以内で正常に計測を行いたい。
(2)所定量(例えば50cc)以上の水が浸入したら、即遮断したい。
例えば10cc程度の少量の水入りにより、ガスメータが遮断してしまうと、ガス事業者の管轄内で遮断が多発してしまうことが予想される。ガス事業者としては、安全範囲であり且つ許容される誤差内となるような少量の水入りにもかかわらず、遮断への対応が集中し兼ねないという課題がある。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ガスメータに水入りが発生したときに適切なタイミングでガス遮断を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様は、ガス流路内に設けられ、筒状ケース内に整流板を多層に配置した多層ユニットと、当該多層ユニット内を流れるガスの流速を超音波で検出する超音波式流速センサと、前記超音波式流速センサの出力に基づいて、ガス流路内に水が浸入したか否かを判断する判断手段とを備えたガスメータであって、前記多層ユニットの上部に設けられて、前記超音波式流速センサが接合されるセンサ接合部分まで水を導く導水構造と、前記超音波式流速センサ及び前記導水構造より上流側に、浸入した水を一時的に蓄える貯水部と、を備える。
また、前記貯水部と前記ガス流路との間に、水を導く導水孔と、ガス抜き孔とを備えてもよい。
また、前記貯水部から溢れた水を前記導水構造に集中させて導く水集中手段を備えてもよい。
また、前記ガス流路の壁面において、前記水集中手段において水が集中する位置と、前記導水構造との間に、前記水が集中する位置から前記導水構造まで水を導く導水手段を備えてもよい。
また、前記導水構造は、前記多層ユニットとは別体で設けられてもよい。
本発明の別の態様は、ガス流路内に設けられ、筒状ケース内に整流板を多層に配置した多層ユニットと、当該多層ユニット内を流れるガスの流速を超音波で検出する超音波式流速センサと、前記超音波式流速センサの出力に基づいて、ガス流路内に水が浸入したか否かを判断する判断手段とを備えたガスメータであって、前記多層ユニットの上部に設けられて、前記超音波式流速センサが接合されるセンサ接合部分まで水を導く導水構造と、浸入した水を前記導水構造に集中させて導く水集中手段と、を備える。
また、前記ガス流路の壁面において、前記水集中手段において水が集中する位置と、前記導水構造との間に、前記水が集中する位置から前記導水構造まで水を導く導水手段を備えてもよい。
また、前記導水構造は、前記多層ユニットとは別体で設けられてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガスメータに水入りが発生したときに適切なタイミングでガス遮断を可能とする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】発明の実施形態に係る、超音波式ガスメータの要部の断面図である。
【図2】発明の実施形態に係る、多層ユニットの斜視図である。
【図3】発明の実施形態に係る、超音波式センサの機能ブロック図である。
【図4】発明の実施形態に係る、超音波式ガスメータの内部構造の正面図である。
【図5】発明の実施形態に係る、超音波式ガスメータの内部構造の正面図である。
【図6】発明の実施形態に係る、超音波式ガスメータの内部構造の斜視図である。
【図7】発明の実施形態に係る、超音波式ガスメータの内部構造の斜視図である。
【図8】発明の実施形態に係る、超音波式ガスメータのメータボディの底面図である。
【図9】従来技術に係る、超音波式ガスメータの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、特許文献1に開示の技術を改良し、以下の処理を可能とするものである。
(1)所定量(例えば50cc)未満の水が浸入しても、器差が所定値(例えば4%[使用公差])以内で正常に計測を行う。
(2)所定量(例えば50cc)以上の水が浸入したら、即遮断する。
その結果、例えば10cc程度の少量の水入りにより、ガスメータの遮断が多発することを防止することができる。以下、具体的に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る超音波式ガスメータ10の要部を模式的に示す断面図である。図2は、多層ユニット1を示す斜視図である。図3は超音波式ガスメータ10の要部の機能ブロック図である。なお、図1において前述の図9と同様な部材には同符号を付記してある。図1(本実施形態)と図9(従来技術)の構成において異なる部分は、主に、貯水部40、導水孔55、ガス抜き孔57、水滴集中突起60および導水溝66が追加されている点にある。また、図4〜図8に、追加構成に着目したより詳細な超音波式ガスメータ10の要部構造の外形を示す。図4及び図5は、超音波式ガスメータ10の内部構造を示す正面図であって、特に、図4は、貯水部40を貯水部用蓋42で密閉した状態を示し、図5は、貯水部用蓋42を取り外した状態を示し、さらに両図では水が貯水部40に一定量貯まっている状態を示している。また、図6は、超音波式ガスメータ10の正面上方向からの斜視図であり、図7は、横方向からの斜視図であり、貯水部用蓋42を取り除いた状態を示している。さらに、図8は超音波式ガスメータ10のメータボディ50の底面図である。なお、正面図及び底面図では、奥行きが分かるように表現している。
【0016】
まず、図9(従来技術)と同様の基本的な構成(以下、「基本構造」という)について説明し、つづいて、本実施形態で特徴的な構造(以下、「改良構造」という)である、貯水部40、導水孔55、ガス抜き孔57、水滴集中突起60および導水溝66について説明する。
【0017】
図1および図2に示すように、超音波式ガスメータ10は、従来技術で示した図9と同様の多層ユニット1を備えている。また、メータボディ50には、ガス供給源の配管が連通するガス流入口5aと、燃焼器等が接続されるガス流出口5bと、ガス流入口5aと連通する入口流路部51と、ガス流出口5bと連通する出口流路部52と、この入口流路部51と出口流路部52との間を連通し、メータボディ50と底蓋5eの間に形成された中間流路部5cとを備えている。そして、中間流路部5c内に多層ユニット1が設けられ、この多層ユニット1の側部に配置された図示しない超音波式流速センサ90(図3や、図8(b)及び(c)参照)により、多層ユニット1内を流れるガスの流速を計測する。
【0018】
入口流路部51、出口流路部52及び中間流路部5cは、互いの間が気密を保った状態で、互いに固定されている。入口流路部51、中間流路部5c及び出口流路部52は、順に内側に被測定流体としてのガスが流れる。このため、入口流路部51、中間流路部5c及び出口流路部52の内側の空間は、ガスの流路を構成している。そして、中間流路部5c内に配設された多層ユニット1の上側の面である上面部1aには、後述の導水構造2が形成されている。さらに、この多層ユニット1の一部は超音波式流速センサ90に接合されるセンサ接合部分Sとなっている。なお、中間流路部5cの上流側に弁閉によってガス流路を遮断するガス遮断弁20(例えば、図4参照)が設けられている。
【0019】
より具体的には、ガス流入口5aと底5dの間の経路に円筒形状の円柱状部31が形成されている。ここでは、円柱状部31は、図示前後方向に水平に伸びるように形成されている。そして、円柱状部分31の図示手前側の端面側には、ガス遮断弁20を配置するための弁座32が形成されている。さらに、奥側には、多層ユニット1が配置されている中間流路部5c側への空間へ連通する連通孔33が設けられている。ガス遮断弁20で弁開状態の場合には、ガスは、ガス流入口5aから連通孔33を通り、中間流路部5c(多層ユニット1)へ供給される。
【0020】
図3に示すように、超音波式ガスメータ10は、ガス流路内に距離Lだけ離され、かつ、ガス流方向Yに対して所定角度をなすように、互いに対向して配置された2つの音響トランスジューサTD1,TD2を有している。この音響トランスジューサTD1,TD2は超音波式流速センサ90を構成している。
【0021】
2つの音響トランスジューサTD1,TD2は、超音波周波数で作動する例えば圧電式振動子であり、各トランスジューサTD1,TD2はトランスジューサインタフェース(I/F)回路11a,11bをそれぞれ介して送信回路12及び受信回路13に接続されている。送信回路12は、マイクロコンピュータ等で構成された制御部14の制御の下で、トランスジューサTD1,TD2の一方を駆動して超音波信号を発生させる信号をパルスバーストの形で送信する。
【0022】
受信回路13は、ガス流路を通過した超音波信号を受信した他方のトランスジューサTD1,TD2からの信号を入力して超音波信号を所定の強さまで増幅する増幅器13aを内蔵している。この増幅器13aの増幅度は制御部14によって調整することができる。
【0023】
制御部14は、プログラムに従って各種の処理を行う。そして、2つのトランスジューサTD1,TD2を用いて、サンプリング時間毎にガス流速を計測し、計測したガス流速にガス流路の断面積を乗じて瞬時流量を計測する計測機能を備えている。また、本実施形態において制御部14は、受信された超音波信号の増幅度に基づいてガス流路内に水が浸入したか否かを判断する判断機能(判断手段)を備えており、特に、CPU14aは、ガス流路内における水の所定量未満の浸入であるか、所定量以上の浸入であるかを区別して判断できるようになっている。
【0024】
ここで、受信された超音波信号の増幅度は浸入した水の量により変化する。例えば、ガス流路内に20〜70ccなどの少量の水が浸入した場合、水とガスとの境界面において超音波が散乱、屈折及び減衰等し、伝搬が不安定となる。このため、受信された超音波信号は小さくなり易く、増幅度は増加する傾向にある。一方、ガス流路内に80ccなどの多量の水が浸入し、ほぼ満水状態となった場合、音響トランスジューサTD1,TD2間は同じ媒質によって満たされることとなる。このため、水とガスの境界面がなく、散乱、屈折及び減衰等が発生し難くなり、増幅度は減少傾向にある。このような理由から、増幅度は少量の水の浸入に対しては増加傾向にあり、多量の水の浸入に対しては減少傾向にある。
【0025】
したがって、制御部14により、増幅度を監視することにより所定量未満の水が浸入したか、あるいは所定量以上の水が浸入したと判断することができる。本実施形態では、後述するように貯水部40に徐々にたまった水が満水となり溢れた水や大量に進入して直接導水構造2に達した水を検知することから、少量の水であっても、即座にガス遮断弁20の遮断動作がなされる。
【0026】
次に、図2を参照して、多層ユニット1について説明する。図示のように、多層ユニット1は直方体筒状の筒状ケース1A内に整流板3を収容して形成されており、前記入口流路部51側に開口する入口側開口部1−1と、前記出口流路部52側に開口する出口側開口部1−2とを有している。また、筒状ケース1Aの側面の入口側開口部1−1側に近い箇所に開口部1bが形成されており、この開口部1bの周囲がセンサ接合部分S(S′)となっている。そして、このセンサ接合部分Sを介して、内部のガスに対して前記音響トランスジューサTD2から超音波が発せられる。なお、整流板3は、平板状に形成されており、互いに間隔をあけて平行に多層に配置され、筒状ケース1Aの中央部内に収容されている。整流板3は、筒状ケース1Aの長手方向と平行に配置されており、この多層ユニット1内を流れるガスの流速を一様にする。これにより、ガスの流量を正確に測定することができる。
【0027】
さらに、この多層ユニット1は、筒状ケース1Aの上面1aに、導水構造を構成する導水構造体2(水受けトレー、水受け皿)を備えている。この導水構造体2は筒状ケース1Aと別部材であり、上面部1aに形成された位置出し形状に嵌め込まれて、多層ユニット1を中間流路部5cに組み付ける際に、所定位置に固定される。原則として、接着剤やねじ止め等の固定手段を用いる必要はないが、必要に応じてそれら固定手段が用いられてもよい。図左上に写真で示すように、導水構造体2は、入口側開口部1−1の上辺部分の位置から筒状ケース1Aの上面1aの両側に沿って開口部1bに延びる土手部29を有し、この土手部29によりその内側に凹凸状(窪み状)の水路29aが形成されている。そして、これら土手部29と水路29aは、筒状ケース1Aの上面1aにセンサ接合部分Sまで延び、水をセンサ接合部分Sまで導く導水構造2を構成している。なお、図示は省略するが、センサ接合部分Sの周囲にはパッキン(図示せず)を備えている。そして、入口側開口部1−1の上部に落下した水滴はこの土手部29に囲われたまま開口部1b、すなわちセンサ接合部分Sまで流れ、センサ接合部分Sへ流れ出した水は、パッキンの内側に溜まる。これにより、前記各実施例と同様に少量の水でも早い段階で検出することができる。
【0028】
また、このような導水構造体2が筒状ケース1Aと別部材で構成されているので、次のような効果がある。すなわち、多層ユニット1はインサート成型を行って製造しているが、仮に、多層ユニット1と導水構造体2とが一体化した複雑な構造であると、インサート成型が困難となる。より具体的には、多層ユニット1の筒状ケース1Aに土手部、窪み部、傾斜部を設けるためには、多層ユニット1の成型用金型に、金型の抜き方向とは直交した方向にスライダーを設ける必要があり、多層ユニット1の成型が複雑になり、成型工数が掛かり、品質も安定しないという課題がある。しかし、別体の導水構造体2を作製すれば、多層ユニット1自体の成型は工数も増加せず、品質も安定する。また、同一の多層ユニット1を用い、水入り遮断機能を備えた超音波ガスメータ10と水入り遮断機能を備えない超音波ガスメータ(図示せず)とを構成することができ、部品共通化を図ることができ、コスト低減の観点で効果的である。
【0029】
つづいて、以上の基本構造に追加された改良構造に着目して説明する。
本実施形態に特徴的な構造として、超音波式ガスメータ10は、メータボディ50の略中央位置に貯水部40を備える。貯水部40は、図示のように、断面が略台形形状をしている。貯水部40は、主に図4に示すように、台形形状のゴムパッキン41と台形形状の貯水部用蓋42とによって密閉されている。具体的には、貯水部40の開口端(図示手前側)の周囲には、開口部分を囲むようにパッキン用台座43が形成されている。このパッキン用台座43に、ゴムパッキン41が配置され、その後、貯水部用蓋42が取り付けられることで、貯水部40が密閉される。
【0030】
貯水部40の容積が、例えば50ccに設計してあると、所定量(例えば50cc)の水が浸入するまでは、器差が所定値(例えば4%[使用公差])以内で正常に計測を行うことができ、かつ、所定量(例えば50cc)を超えた時点で即遮断させることができる。
【0031】
ガス遮断弁20が取り付けられる円柱状部31の下部から貯水部40へは、導水孔55が貫通させて形成されている。ガス流入口5aから浸入した水は、円柱状部31の下部に落ちると、導水孔55を通って、貯水部40に流れ落ちる。
【0032】
貯水部40は、ゴムパッキン41と貯水部用蓋42によって密閉されているため、水を貯水部40にスムーズに流し込むために、ガス抜き孔57が形成されている。ここでは、導水孔55の上部に導水孔55と平行に、ガス抜き孔57が円柱状部31から貯水部40へ貫通している。導水孔55を通って貯水部40に水が流れ込むのと同時に、貯水部40に溜まっているガスがガス抜き孔57を通って円柱状部31に排出される。
【0033】
水が所定量以上流れ込むと、貯水部40が満水状態になり、更に水が浸入すると、遮断弁20が取り付けられる円柱状部31の弁座32を乗り越えて、連通孔33から下に垂れ始める。その垂れた水滴を一点に集中して垂らすために、図1や図8(a)に示すように、ガス遮断弁20(円柱状部31)の下側の空間(ガス流路)には、ちょうど円柱状部31の下側部分に逆四角すい状の水滴集中突起60が形成されている。具体的には、水滴集中突起60では、四角錐の角錐面である斜面62が、連通孔33を構成する面から実質的に連続して下方向に延びるように形成されている。つまり、連通孔33の構成面を垂れてきた水滴が、円滑に水滴集中突起60の斜面62に伝わることができるように構成されている。そして、四角すい形状の頭頂部には、集中部64が形成されている。この水滴集中突起60があることによって、連通孔33から垂れた水滴はあちこちに分散して落ちることはなく、後述する導水溝66に集められて落ちることになる。
【0034】
集中部64が形成される位置の壁面65には、所定深さの導水溝66が下方向に延びて形成されている。水滴集中突起60を伝わって垂れた水滴は、導水溝66を伝わって垂れ、導水構造体2の上に落ちる。この導水溝66があるため、所望の位置、より具体的には、ちょうど土手部29の内側の水路29aに水滴を落とすことができる。
【0035】
このように、基本構造に、改良構造である貯水部40、導水孔55、ガス抜き孔57、水滴集中突起60および導水溝66を追加することで、超音波式ガスメータ10内部に水が所定量以上流れ込み、貯水部40が満水状態になった時点で、即、センサ接合部分Sへ水が導かれ、遮断動作が行われることになる。
【0036】
また、超音波式ガスメータ10内部に一気に大量の水が流れ込んだ場合は、水が導水孔55を通って貯水部40に溜まることなく、一気に弁座32を乗り越え、連通孔33を通って導水構造体2まで落ち、即、センサ接合部分Sへ水が導かれ、遮断動作が行われる。そのような事態においては、器差は補償されないため、即遮断することが望ましく、本超音波式ガスメータ10では、適正に遮断動作を行うことができる。
【0037】
さらにまた、以上のような構造の超音波式ガスメータ10において、実験の結果から、貯水部40に溜まった水は、流れているガスの中に、1日1cc程度ずつ蒸発して行くことが確認できた。よって、貯水部40に溜まった水が、検定満了まで超音波式ガスメータ10内に滞留することはなく使用上問題は生じない。
【0038】
以上、本発明を実施形態を基に説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。実施形態の超音波式ガスメータ10は超音波式センサ90の出力を利用して水の浸入を検出するものであるが、この超音波式流速センサ90の出力を利用するものであれば、水の浸入を検出する方法は実施形態のものに限らず、その他の方法でもよい。また、導水構造2については、成型の困難性が問題にならないような形状であれば一体で構成されてもよく、例えば、特許文献1に示されていたような各種の構造を採用することができる。また、貯水部40を設けず水滴集中突起60と導水溝66とを設けた構成であっても、導水構造2に適正に水を導くという観点で一定の効果が得られる。また、逆に、水滴集中突起60や導水溝66を設けず貯水部40のみを設けた構成であっても、一定量の水堆積を許容する観点で一定の効果が得られる。
【符号の説明】
【0039】
1 多層ユニット
1−1 入口側開口部
1−2 出口側開口部
1A 筒状ケース
1a 上面部
1b 開口部
2 導水構造
5a ガス流入口
5b ガス流出口
5c 中間流路部
5e 底蓋
10 超音波式ガスメータ
14 制御部
20 ガス遮断弁
29 土手部
29a 水路
31 円柱状部
32 弁座
33 連通孔
40 貯水部
50 メータボディ
55 導水孔
57 ガス抜き孔
60 水滴集中突起(水集中手段)
62 斜面
64 集中部
65 壁面
66 導水溝(導水手段)
90 超音波式センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流路内に設けられ、筒状ケース内に整流板を多層に配置した多層ユニットと、当該多層ユニット内を流れるガスの流速を超音波で検出する超音波式流速センサと、前記超音波式流速センサの出力に基づいて、ガス流路内に水が浸入したか否かを判断する判断手段とを備えたガスメータであって、
前記多層ユニットの上部に設けられて、前記超音波式流速センサが接合されるセンサ接合部分まで水を導く導水構造と、
前記超音波式流速センサ及び前記導水構造より上流側に、浸入した水を一時的に蓄える貯水部と、
を備えることを特徴とするガスメータ。
【請求項2】
前記貯水部と前記ガス流路との間に、水を導く導水孔と、ガス抜き孔とを備えることを特徴とする請求項1に記載のガスメータ。
【請求項3】
前記貯水部から溢れた水を前記導水構造に集中させて導く水集中手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のガスメータ。
【請求項4】
前記ガス流路の壁面において、前記水集中手段において水が集中する位置と、前記導水構造との間に、前記水が集中する位置から前記導水構造まで水を導く導水手段を備えることを特徴とする請求項3に記載のガスメータ。
【請求項5】
前記導水構造は、前記多層ユニットとは別体で設けられていることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載のガスメータ。
【請求項6】
ガス流路内に設けられ、筒状ケース内に整流板を多層に配置した多層ユニットと、当該多層ユニット内を流れるガスの流速を超音波で検出する超音波式流速センサと、前記超音波式流速センサの出力に基づいて、ガス流路内に水が浸入したか否かを判断する判断手段とを備えたガスメータであって、
前記多層ユニットの上部に設けられて、前記超音波式流速センサが接合されるセンサ接合部分まで水を導く導水構造と、
浸入した水を前記導水構造に集中させて導く水集中手段と、
を備えることを特徴とするガスメータ。
【請求項7】
前記ガス流路の壁面において、前記水集中手段において水が集中する位置と、前記導水構造との間に、前記水が集中する位置から前記導水構造まで水を導く導水手段を備えることを特徴とする請求項6に記載のガスメータ。
【請求項8】
前記導水構造は、前記多層ユニットとは別体で設けられていることを特徴とする請求項6または7に記載のガスメータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−145364(P2012−145364A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2062(P2011−2062)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】