ガスワイピング装置用バッフルプレート及びガスワイピング方法
【課題】本発明は、バッフルプレート又はバッフルプレート本体をSi3N4で形成することにより、スプラッシュの発生量を抑え、鋼帯の両面に対するめっき付着量を均一化することを目的とする。
【解決手段】本発明によるガスワイピング装置用バッフルプレート及びガスワイピング方法は、めっき槽(4)中を経て上方へ走行するめっき鋼帯(5)の両面に付着しためっき液の付着量を調整するためのガスワイピング装置(1)で用いるバッフルプレートにおいて、前記バッフルプレートのバッフルプレート本体(20)はSi3N4で形成されている構成と方法である。
【解決手段】本発明によるガスワイピング装置用バッフルプレート及びガスワイピング方法は、めっき槽(4)中を経て上方へ走行するめっき鋼帯(5)の両面に付着しためっき液の付着量を調整するためのガスワイピング装置(1)で用いるバッフルプレートにおいて、前記バッフルプレートのバッフルプレート本体(20)はSi3N4で形成されている構成と方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスワイピング装置用バッフルプレート及びガスワイピング方法に関し、特に、バッフルプレート本体をSi3N4で形成することにより、スプラッシュの発生量を抑え、鋼帯の両面に対するめっき付着量を均一化するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたガスワイピング装置としては、例えば、特許文献1に開示された装置構成を図8に概略図として開示することができる。
すなわち、図8において符号1で示されるものはガスワイピング装置であり、このガスワイピング装置1には互いに対向配置される第1、第2ワイピングノズル2,3が互いに離間して配設されている。
【0003】
前記ガスワイピング装置1の下方位置には、めっき槽4が配設され、このめっき槽4中を経て連続して上方へ走行するめっき鋼帯5は、その両面にめっき6が付着された状態で上方へ巻き取られる構成であり、各ワイピングノズル2,3からの噴出ガスの量によってめっき6の付着量を制御していた。
【0004】
前述の場合、各ワイピングノズルの幅は、一般的にめっき鋼帯幅W(図9)より広く、その全幅からガスを噴出するように構成されている。
前述の図8の構成を平面的に示すと、図9のようになり、めっき鋼帯5のめっき鋼帯幅方向Waにおける前記めっき鋼帯5の両端部5a,5bから外れた位置A,Bにおいて矢印Gで示されるように、ワイピングガスの噴流の衝突が発生する。
【0005】
前述の図9の前記位置A,Bにおける噴流は、若干外向きの衝突乱流となるため、前記両端部5a,5bのめっきの溶融金属がめっき鋼帯5の両端部5a,5bから引き剥がされて飛散(スプラッシュと云う)され、この飛散した溶融金属は雰囲気ガスによって表面が酸化されたり、冷却により部分的に凝固してしまうなど、その物性が変化するため、めっき鋼帯5の品質低下の要因となっていた。
その発生量は、めっき鋼帯5の通過速度が上がるほど増加し、ワイピングガスの圧力が高いほど増加する。
また、衝突噴流により大きい騒音が発生し、めっき処理工程の現場では、その周囲環境が大変悪い状態となっていた。
【0006】
前述の従来構成の課題を克服するために、例えば、特許文献2等に開示されている図11の概略図の構成を挙げることができる。
すなわち、前記めっき鋼帯5の両端部5a,5bの外側には、前記めっき鋼帯5と同一面となるように配設された第1、第2バッフルプレート10,11が設けられており、各バッフルプレート10,11によりワイピングガス噴流の衝突を防止し、めっき鋼帯5の外側のワイピングガスの噴流状態をめっき鋼帯5におけるワイピングガスの噴流状態に近づけることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−82652号公報
【特許文献2】特開平1−208441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のガスワイピング装置用バッフルプレートは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図12に示されるように、前記めっき鋼帯5とバッフルプレート11を近づけると、各ワイピングノズル2,3からのワイピングガスの噴流の衝突を防止する効果は大きくなるが、この状態では、図12に示されるように、前記めっき鋼帯5とバッフルプレート11間の衝突噴流によるスプラッシュがバッフルプレート11に固着金属12として付着し、そのまま固着する場合があった。
【0009】
前述のスプラッシュによる溶融金属の固着からなる固着金属12の状態が進行すると、ワイピングガスの噴流に大きい乱流成分C(図12)が発生することになり、各ワイピングノズル2,3にめっきの溶融亜鉛が飛散して付着し、ワイピングガス圧が部分的に低下することによって、めっき鋼帯5のめっき付着にバラツキが生じ、溶融めっきの部分的なオーバーコートが発生していた。
また、このバッフルプレート10,11へのスプラッシュの固着を防止するには、バッフルプレート11をめっき鋼帯5から離間させればよいが、前述のように、スプラッシュの発生量の増大につながるため、相反する課題となっていた。また、前記バッフルプレート11を一般的なセラミックとする案も提供されているが、濡れ性が良いため、前述と同様の課題が発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるガスワイピング装置用バッフルプレートは、めっき槽中を経て連続して上方へ走行するめっき鋼帯の両面に付着しためっき液の付着量を調整するためのガスワイピング装置で用いるバッフルプレート本体からなるガスワイピング装置用バッフルプレートにおいて、前記バッフルプレート本体はSi3N4で形成されている構成であり、また、前記バッフルプレート本体は、金属板に取付けられている構成であり、また、前記金属板は、前記バッフルプレート本体を接続するための接続部と、前記金属板の一側に一体又は別体で設けられ前記バッフルプレート本体を保持するための保持溝部と、からなる構成であり、また、前記接続部は、複数の長手接続板又は一枚の接続板からなり、前記各長手接続板又は一枚の接続板及びボルトによって前記金属板とバッフルプレート本体は接続されている構成であり、また、前記保持溝部の先端部は、前記バッフルプレート本体の外側曲折部の形状に沿って曲折する曲折溝部を有し、前記バッフルプレート本体の一側の直線部及び前記直線部に続く外側曲折部が前記曲折溝部に挿入されている構成であり、また、前記金属板は、ステンレスからなる構成であり、また、請求項1ないし6の何れかに記載のガスワイピング装置用バッフルプレートを用いる方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるガスワイピング装置用バッフルプレート及びこれを用いたガスワイピング方法は、以上のように構成されていたため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、めっき槽中を経て連続して上方へ走行するめっき鋼帯の両面に付着しためっき液の付着量を調整するためのガスワイピング装置で用いるバッフルプレート本体からなるガスワイピング装置用バッフルプレートにおいて、前記バッフルプレート本体はSi3N4で形成されていることにより、濡れ性が低く、一般のセラミックよりもスプラッシュによる溶融金属の金属密着性が大幅に低減し、周囲環境であるワイピングガス圧及びバッフルプレート自身の振動によりスプラッシュによる溶融金属が落下するため、溶融めっき鋼帯の品質に影響を及ぼすことなく、スプラッシュの低減を図ることができる。
また、前記バッフルプレート本体は、金属板に取付けられていることにより、全体を高価なSi3N4で作らなくて済み、コストダウンとなり、強度も向上し、装置への取付けも容易となる。
また、前記金属板は、前記バッフルプレート本体を接続するための接続部と、前記金属板の一側に一体又は別体で設けられ前記バッフルプレート本体を保持するための保持溝部と、からなることにより、バッフルプレート本体を金属板の保持溝部に挿入係合させて保持できるため、金属板とバッフルプレート本体を簡単かつ確実に保持して接続させることができる。
また、前記接続部は、複数の長手接続板又は一枚の接続板からなり、前記各長手接続板又は一枚の接続板及びボルトによって前記金属板とバッフルプレート本体は接続されていることにより、万一の交換時においても、バッフルプレート本体の交換が容易である。
また、前記保持溝部の先端部は、前記バッフルプレート本体の外側曲折部の形状に沿って曲折する曲折溝部を有し、前記バッフルプレート本体の一側の直線部及び前記直線部に続く外側曲折部が前記曲折溝部に挿入されていることにより、破損しやすいSi3N4の衝撃による破損を防止し、耐久性のあるバッフルプレートとして用いることができる。
また、前記金属板は、ステンレスからなることにより、耐久性に優れたバッフルプレートを用いることができる。
請求項1ないし6の何れかに記載のガスワイピング装置用バッフルプレートを用いることにより、スプラッシュの少ない安定したガスワイピングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるガスワイピング装置用バッフルプレートの要部の平面図である。
【図2】図1の要部を示す側面図である。
【図3】図1のバッフルプレートの他の形態の平面図である。
【図4】図3の他の形態を示す平面図である。
【図5】図4のバッフルプレート本体を示す平面図である。
【図6】図4の要部を示す側面図である。
【図7】図4の金属板を示す平面図である。
【図8】従来のワイピングノズル装置を示す正面図である。
【図9】図8の平面図である。
【図10】図1の要部の斜視構成図である。
【図11】図10の構成にバッフルプレートを設けた従来構成である。
【図12】図11の従来構成でバッフルプレートに固着金属が付着した状態を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、バッフルプレートをSi3N4で形成することにより、スプラッシュの発生量を抑え、めっき付着量を均一的にするようにしたガスワイピング装置用バッフルプレート及びガスワイピング方法を提供することを目的とする。
【実施例】
【0014】
以下、図面と共に本発明によるガスワイピング装置用バッフルプレート及びガスワイピング方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明すると共に、図10及び図11の従来構成についても本発明の構成に援用するものとする。
図1において符号1で示されるものはガスワイピング装置であり、このガスワイピング装置1に設けられ互いに対向しかつ離間した一対のワイピングノズル2,3間には、図8のめっき槽4中を経て連続して上方へ走行するめっき鋼帯5が通過するように構成され、前記各ワイピングノズル2,3からのワイピングガス2a,3aが前記めっき鋼帯5に吹付けられることにより、このめっき鋼帯5に付着するめっき付着量すなわち厚さを一定とするように調整する構成である。
【0015】
前記ガスワイピング装置1のめっき鋼帯5の両端部5a,5b(図11で示す)には一対のバッフルプレート10,11が設けられているが、図1で図示を省略して一方のバッフルプレート11のみを示している。
前記バッフルプレート11は、バッフルプレート本体20のみで構成される場合もあるが、このバッフルプレート本体20はSi3N4で形成されているため、金属板と比較すると衝撃で破損する場合があるため、図2及び図3で示されるように、バッフルプレート本体20受けとしてのステンレス等からなる金属板21に接続部22Aをなす接続板22を介してめっき鋼帯5側に位置しSi3N4からなるバッフルプレート本体20をボルト23によって接続して構成されている。すなわち、金属板21をバッフルプレート本体20の補強材として使用し、耐衝撃性が大きくなるように構成している。
【0016】
前記金属板21は、前記バッフルプレート本体20を接続するための前記接続板22と、前記金属板21の一側に一体又は別体で設けられ前記バッフルプレート本体20を保持するための保持溝部24とからなり、前記保持溝部24は、前記金属板21のL字型に形成された先端部25に直線状に形成されている。
尚、前記保持溝部24は直線状に形成され、前記バッフルプレート本体20は直線部分で組み合わされたほぼ長方形状で形成されている。
【0017】
図4から図7で示される図3のバッフルプレート11の他の形態においては、前記バッフルプレート本体20の一側に直線部30及びこの直線部30に連続する外側曲折部31が形成されている。
前記金属板21の一側の先端部25側には、直線状の前記保持溝部24に連続して曲折溝部32が形成されている。
【0018】
前記バッフルプレート本体20は、前記直線部30が前記保持溝部24内に挿入されて嵌合し、前記外側曲折部31が前記曲折溝部32内に挿入されて嵌合することにより、前記バッフルプレート本体20は前記金属板21と接続されてバッフルプレート11が形成される。
さらに、前記バッフルプレート本体20と金属板21とは、前記金属板21に設けられた接続部22Aとしての複数の長手接続板35がバッフルプレート本体20の取付孔36に設けられるボルト37を介してバッフルプレート本体20に取付けられることにより、互いに強固に一体接続されている。
尚、図4においてノズル高さHとして表示されている位置は、前述の図1における各ワイピングノズル2,3からのワイピングガスを噴射するノズル位置を示している。
また、図7は、金属板21からバッフルプレート本体20を除去し、バッフルプレート本体20を新品と交換する又は取付前のような場合を示している。
【0019】
前記バッフルプレート本体20は、前述のように、窒化珪素(Si3N4)で構成されたファインセラミックよりなるセラミック板であり、一般のセラミックスと比較して耐熱衝撃性、耐化学薬品性に優れ、熱膨張率が低く、高温まで高強度であるという特性を有しており、めっき槽4のめっき液に対して十分な濡れ性を有している。
従って、金属が付着する際の400〜700度程度の急激な温度変化に耐えることができ、金属との熱膨張率の差が大きいため、金属(溶融めっき液)とSi3N4との界面が容易に乖離し、Si3N4の焼結組織が密な部分が表面となるように、Ai3N4のバッフルプレート本体20は表面研磨を行った後に用いた方が金属密着性が小さくなる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によるガスワイピング装置用バッフルプレート及びそのガスワイピング方法は、めっき鋼帯に対するめっき付着制御に限ることなく、食品や薬品等の製造ラインにも適用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 ガスワイピング装置
2 ワイピングノズル
2a ワイピングガス
3 ワイピングノズル
3a ワイピングガス
4 めっき槽
5 めっき鋼帯
6 めっき
11 バッフルプレート
20 バッフルプレート本体
21 金属板
22 接続板
22A 接続部
24 保持溝部
25 先端部
30 直線部
31 外側曲折部
32 曲折溝部
35 長手接続板
36 取付孔
37 ボルト
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスワイピング装置用バッフルプレート及びガスワイピング方法に関し、特に、バッフルプレート本体をSi3N4で形成することにより、スプラッシュの発生量を抑え、鋼帯の両面に対するめっき付着量を均一化するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたガスワイピング装置としては、例えば、特許文献1に開示された装置構成を図8に概略図として開示することができる。
すなわち、図8において符号1で示されるものはガスワイピング装置であり、このガスワイピング装置1には互いに対向配置される第1、第2ワイピングノズル2,3が互いに離間して配設されている。
【0003】
前記ガスワイピング装置1の下方位置には、めっき槽4が配設され、このめっき槽4中を経て連続して上方へ走行するめっき鋼帯5は、その両面にめっき6が付着された状態で上方へ巻き取られる構成であり、各ワイピングノズル2,3からの噴出ガスの量によってめっき6の付着量を制御していた。
【0004】
前述の場合、各ワイピングノズルの幅は、一般的にめっき鋼帯幅W(図9)より広く、その全幅からガスを噴出するように構成されている。
前述の図8の構成を平面的に示すと、図9のようになり、めっき鋼帯5のめっき鋼帯幅方向Waにおける前記めっき鋼帯5の両端部5a,5bから外れた位置A,Bにおいて矢印Gで示されるように、ワイピングガスの噴流の衝突が発生する。
【0005】
前述の図9の前記位置A,Bにおける噴流は、若干外向きの衝突乱流となるため、前記両端部5a,5bのめっきの溶融金属がめっき鋼帯5の両端部5a,5bから引き剥がされて飛散(スプラッシュと云う)され、この飛散した溶融金属は雰囲気ガスによって表面が酸化されたり、冷却により部分的に凝固してしまうなど、その物性が変化するため、めっき鋼帯5の品質低下の要因となっていた。
その発生量は、めっき鋼帯5の通過速度が上がるほど増加し、ワイピングガスの圧力が高いほど増加する。
また、衝突噴流により大きい騒音が発生し、めっき処理工程の現場では、その周囲環境が大変悪い状態となっていた。
【0006】
前述の従来構成の課題を克服するために、例えば、特許文献2等に開示されている図11の概略図の構成を挙げることができる。
すなわち、前記めっき鋼帯5の両端部5a,5bの外側には、前記めっき鋼帯5と同一面となるように配設された第1、第2バッフルプレート10,11が設けられており、各バッフルプレート10,11によりワイピングガス噴流の衝突を防止し、めっき鋼帯5の外側のワイピングガスの噴流状態をめっき鋼帯5におけるワイピングガスの噴流状態に近づけることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−82652号公報
【特許文献2】特開平1−208441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のガスワイピング装置用バッフルプレートは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図12に示されるように、前記めっき鋼帯5とバッフルプレート11を近づけると、各ワイピングノズル2,3からのワイピングガスの噴流の衝突を防止する効果は大きくなるが、この状態では、図12に示されるように、前記めっき鋼帯5とバッフルプレート11間の衝突噴流によるスプラッシュがバッフルプレート11に固着金属12として付着し、そのまま固着する場合があった。
【0009】
前述のスプラッシュによる溶融金属の固着からなる固着金属12の状態が進行すると、ワイピングガスの噴流に大きい乱流成分C(図12)が発生することになり、各ワイピングノズル2,3にめっきの溶融亜鉛が飛散して付着し、ワイピングガス圧が部分的に低下することによって、めっき鋼帯5のめっき付着にバラツキが生じ、溶融めっきの部分的なオーバーコートが発生していた。
また、このバッフルプレート10,11へのスプラッシュの固着を防止するには、バッフルプレート11をめっき鋼帯5から離間させればよいが、前述のように、スプラッシュの発生量の増大につながるため、相反する課題となっていた。また、前記バッフルプレート11を一般的なセラミックとする案も提供されているが、濡れ性が良いため、前述と同様の課題が発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるガスワイピング装置用バッフルプレートは、めっき槽中を経て連続して上方へ走行するめっき鋼帯の両面に付着しためっき液の付着量を調整するためのガスワイピング装置で用いるバッフルプレート本体からなるガスワイピング装置用バッフルプレートにおいて、前記バッフルプレート本体はSi3N4で形成されている構成であり、また、前記バッフルプレート本体は、金属板に取付けられている構成であり、また、前記金属板は、前記バッフルプレート本体を接続するための接続部と、前記金属板の一側に一体又は別体で設けられ前記バッフルプレート本体を保持するための保持溝部と、からなる構成であり、また、前記接続部は、複数の長手接続板又は一枚の接続板からなり、前記各長手接続板又は一枚の接続板及びボルトによって前記金属板とバッフルプレート本体は接続されている構成であり、また、前記保持溝部の先端部は、前記バッフルプレート本体の外側曲折部の形状に沿って曲折する曲折溝部を有し、前記バッフルプレート本体の一側の直線部及び前記直線部に続く外側曲折部が前記曲折溝部に挿入されている構成であり、また、前記金属板は、ステンレスからなる構成であり、また、請求項1ないし6の何れかに記載のガスワイピング装置用バッフルプレートを用いる方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるガスワイピング装置用バッフルプレート及びこれを用いたガスワイピング方法は、以上のように構成されていたため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、めっき槽中を経て連続して上方へ走行するめっき鋼帯の両面に付着しためっき液の付着量を調整するためのガスワイピング装置で用いるバッフルプレート本体からなるガスワイピング装置用バッフルプレートにおいて、前記バッフルプレート本体はSi3N4で形成されていることにより、濡れ性が低く、一般のセラミックよりもスプラッシュによる溶融金属の金属密着性が大幅に低減し、周囲環境であるワイピングガス圧及びバッフルプレート自身の振動によりスプラッシュによる溶融金属が落下するため、溶融めっき鋼帯の品質に影響を及ぼすことなく、スプラッシュの低減を図ることができる。
また、前記バッフルプレート本体は、金属板に取付けられていることにより、全体を高価なSi3N4で作らなくて済み、コストダウンとなり、強度も向上し、装置への取付けも容易となる。
また、前記金属板は、前記バッフルプレート本体を接続するための接続部と、前記金属板の一側に一体又は別体で設けられ前記バッフルプレート本体を保持するための保持溝部と、からなることにより、バッフルプレート本体を金属板の保持溝部に挿入係合させて保持できるため、金属板とバッフルプレート本体を簡単かつ確実に保持して接続させることができる。
また、前記接続部は、複数の長手接続板又は一枚の接続板からなり、前記各長手接続板又は一枚の接続板及びボルトによって前記金属板とバッフルプレート本体は接続されていることにより、万一の交換時においても、バッフルプレート本体の交換が容易である。
また、前記保持溝部の先端部は、前記バッフルプレート本体の外側曲折部の形状に沿って曲折する曲折溝部を有し、前記バッフルプレート本体の一側の直線部及び前記直線部に続く外側曲折部が前記曲折溝部に挿入されていることにより、破損しやすいSi3N4の衝撃による破損を防止し、耐久性のあるバッフルプレートとして用いることができる。
また、前記金属板は、ステンレスからなることにより、耐久性に優れたバッフルプレートを用いることができる。
請求項1ないし6の何れかに記載のガスワイピング装置用バッフルプレートを用いることにより、スプラッシュの少ない安定したガスワイピングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるガスワイピング装置用バッフルプレートの要部の平面図である。
【図2】図1の要部を示す側面図である。
【図3】図1のバッフルプレートの他の形態の平面図である。
【図4】図3の他の形態を示す平面図である。
【図5】図4のバッフルプレート本体を示す平面図である。
【図6】図4の要部を示す側面図である。
【図7】図4の金属板を示す平面図である。
【図8】従来のワイピングノズル装置を示す正面図である。
【図9】図8の平面図である。
【図10】図1の要部の斜視構成図である。
【図11】図10の構成にバッフルプレートを設けた従来構成である。
【図12】図11の従来構成でバッフルプレートに固着金属が付着した状態を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、バッフルプレートをSi3N4で形成することにより、スプラッシュの発生量を抑え、めっき付着量を均一的にするようにしたガスワイピング装置用バッフルプレート及びガスワイピング方法を提供することを目的とする。
【実施例】
【0014】
以下、図面と共に本発明によるガスワイピング装置用バッフルプレート及びガスワイピング方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明すると共に、図10及び図11の従来構成についても本発明の構成に援用するものとする。
図1において符号1で示されるものはガスワイピング装置であり、このガスワイピング装置1に設けられ互いに対向しかつ離間した一対のワイピングノズル2,3間には、図8のめっき槽4中を経て連続して上方へ走行するめっき鋼帯5が通過するように構成され、前記各ワイピングノズル2,3からのワイピングガス2a,3aが前記めっき鋼帯5に吹付けられることにより、このめっき鋼帯5に付着するめっき付着量すなわち厚さを一定とするように調整する構成である。
【0015】
前記ガスワイピング装置1のめっき鋼帯5の両端部5a,5b(図11で示す)には一対のバッフルプレート10,11が設けられているが、図1で図示を省略して一方のバッフルプレート11のみを示している。
前記バッフルプレート11は、バッフルプレート本体20のみで構成される場合もあるが、このバッフルプレート本体20はSi3N4で形成されているため、金属板と比較すると衝撃で破損する場合があるため、図2及び図3で示されるように、バッフルプレート本体20受けとしてのステンレス等からなる金属板21に接続部22Aをなす接続板22を介してめっき鋼帯5側に位置しSi3N4からなるバッフルプレート本体20をボルト23によって接続して構成されている。すなわち、金属板21をバッフルプレート本体20の補強材として使用し、耐衝撃性が大きくなるように構成している。
【0016】
前記金属板21は、前記バッフルプレート本体20を接続するための前記接続板22と、前記金属板21の一側に一体又は別体で設けられ前記バッフルプレート本体20を保持するための保持溝部24とからなり、前記保持溝部24は、前記金属板21のL字型に形成された先端部25に直線状に形成されている。
尚、前記保持溝部24は直線状に形成され、前記バッフルプレート本体20は直線部分で組み合わされたほぼ長方形状で形成されている。
【0017】
図4から図7で示される図3のバッフルプレート11の他の形態においては、前記バッフルプレート本体20の一側に直線部30及びこの直線部30に連続する外側曲折部31が形成されている。
前記金属板21の一側の先端部25側には、直線状の前記保持溝部24に連続して曲折溝部32が形成されている。
【0018】
前記バッフルプレート本体20は、前記直線部30が前記保持溝部24内に挿入されて嵌合し、前記外側曲折部31が前記曲折溝部32内に挿入されて嵌合することにより、前記バッフルプレート本体20は前記金属板21と接続されてバッフルプレート11が形成される。
さらに、前記バッフルプレート本体20と金属板21とは、前記金属板21に設けられた接続部22Aとしての複数の長手接続板35がバッフルプレート本体20の取付孔36に設けられるボルト37を介してバッフルプレート本体20に取付けられることにより、互いに強固に一体接続されている。
尚、図4においてノズル高さHとして表示されている位置は、前述の図1における各ワイピングノズル2,3からのワイピングガスを噴射するノズル位置を示している。
また、図7は、金属板21からバッフルプレート本体20を除去し、バッフルプレート本体20を新品と交換する又は取付前のような場合を示している。
【0019】
前記バッフルプレート本体20は、前述のように、窒化珪素(Si3N4)で構成されたファインセラミックよりなるセラミック板であり、一般のセラミックスと比較して耐熱衝撃性、耐化学薬品性に優れ、熱膨張率が低く、高温まで高強度であるという特性を有しており、めっき槽4のめっき液に対して十分な濡れ性を有している。
従って、金属が付着する際の400〜700度程度の急激な温度変化に耐えることができ、金属との熱膨張率の差が大きいため、金属(溶融めっき液)とSi3N4との界面が容易に乖離し、Si3N4の焼結組織が密な部分が表面となるように、Ai3N4のバッフルプレート本体20は表面研磨を行った後に用いた方が金属密着性が小さくなる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によるガスワイピング装置用バッフルプレート及びそのガスワイピング方法は、めっき鋼帯に対するめっき付着制御に限ることなく、食品や薬品等の製造ラインにも適用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 ガスワイピング装置
2 ワイピングノズル
2a ワイピングガス
3 ワイピングノズル
3a ワイピングガス
4 めっき槽
5 めっき鋼帯
6 めっき
11 バッフルプレート
20 バッフルプレート本体
21 金属板
22 接続板
22A 接続部
24 保持溝部
25 先端部
30 直線部
31 外側曲折部
32 曲折溝部
35 長手接続板
36 取付孔
37 ボルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき槽(4)中を経て連続して上方へ走行するめっき鋼帯(5)の両面に付着しためっき液の付着量を調整するためのガスワイピング装置(1)で用いるバッフルプレート本体(20)からなるガスワイピング装置用バッフルプレートにおいて、
前記バッフルプレート本体(20)はSi3N4で形成されていることを特徴とするガスワイピング装置用バッフルプレート。
【請求項2】
前記バッフルプレート本体(20)は、金属板(21)に取付けられていることを特徴とする請求項1記載のガスワイピング装置用バッフルプレート。
【請求項3】
前記金属板(21)は、前記バッフルプレート本体(20)を接続するための接続部(22A)と、前記金属板(21)の一側に一体又は別体で設けられ前記バッフルプレート本体(20)を保持するための保持溝部(24)と、からなることを特徴とする請求項2記載のガスワイピング装置用バッフルプレート。
【請求項4】
前記接続部(22A)は、複数の長手接続板(35)又は一枚の接続板(22)からなり、前記各長手接続板(35)又は一枚の接続板(22)及びボルト(23)によって前記金属板(21)とバッフルプレート本体(20)は接続されていることを特徴とする請求項3記載のガスワイピング装置用バッフルプレート。
【請求項5】
前記保持溝部(24)の先端部(25)は、前記バッフルプレート本体(20)の外側曲折部(31)の形状に沿って曲折する曲折溝部(32)を有し、前記バッフルプレート本体(20)の一側の直線部(30)及び前記直線部(30)に続く外側曲折部(31)が前記曲折溝部(32)に挿入されていることを特徴とする請求項3又は4記載のガスワイピング装置用バッフルプレート。
【請求項6】
前記金属板(21)は、ステンレスからなることを特徴とする請求項2ないし5の何れかに記載のガスワイピング装置用バッフルプレート。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れかに記載のガスワイピング装置用バッフルプレートを用いることを特徴とするガスワイピング方法。
【請求項1】
めっき槽(4)中を経て連続して上方へ走行するめっき鋼帯(5)の両面に付着しためっき液の付着量を調整するためのガスワイピング装置(1)で用いるバッフルプレート本体(20)からなるガスワイピング装置用バッフルプレートにおいて、
前記バッフルプレート本体(20)はSi3N4で形成されていることを特徴とするガスワイピング装置用バッフルプレート。
【請求項2】
前記バッフルプレート本体(20)は、金属板(21)に取付けられていることを特徴とする請求項1記載のガスワイピング装置用バッフルプレート。
【請求項3】
前記金属板(21)は、前記バッフルプレート本体(20)を接続するための接続部(22A)と、前記金属板(21)の一側に一体又は別体で設けられ前記バッフルプレート本体(20)を保持するための保持溝部(24)と、からなることを特徴とする請求項2記載のガスワイピング装置用バッフルプレート。
【請求項4】
前記接続部(22A)は、複数の長手接続板(35)又は一枚の接続板(22)からなり、前記各長手接続板(35)又は一枚の接続板(22)及びボルト(23)によって前記金属板(21)とバッフルプレート本体(20)は接続されていることを特徴とする請求項3記載のガスワイピング装置用バッフルプレート。
【請求項5】
前記保持溝部(24)の先端部(25)は、前記バッフルプレート本体(20)の外側曲折部(31)の形状に沿って曲折する曲折溝部(32)を有し、前記バッフルプレート本体(20)の一側の直線部(30)及び前記直線部(30)に続く外側曲折部(31)が前記曲折溝部(32)に挿入されていることを特徴とする請求項3又は4記載のガスワイピング装置用バッフルプレート。
【請求項6】
前記金属板(21)は、ステンレスからなることを特徴とする請求項2ないし5の何れかに記載のガスワイピング装置用バッフルプレート。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れかに記載のガスワイピング装置用バッフルプレートを用いることを特徴とするガスワイピング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−140693(P2012−140693A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1084(P2011−1084)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】
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