説明

ガス化ガスからの高純度CO2回収方法およびシステム

【課題】 ガス化ガスからCO2を回収する際に、CO2回収率を変化させても、冷却と加熱の操作を繰り返したり、水蒸気の消費量を増やすことなく、回収したCO2にCOSが混入するのを防ぐことができるガス化ガスからのCO2回収方法およびシステムを提供する。
【解決手段】 ガス化炉10で生成するCO、CO2、COS、H2Sを含有するガス化ガスをスクラバ20で除塵した後、ガスの一部分について、COシフト反応器30でCOをCO2に転換するCOシフト反応を行うとともに、ガス化ガスの他の一部分を、バイパス路34によりCOシフト反応を経ずに、COシフト反応後のガスと混合して、混合ガスの温度を180〜300℃にするとともに、COS転換器40で混合ガス中のCOSをH2Sに転換し、H2S吸収装置50で、H2Sを吸収、除去した後、CO2吸収装置で、CO2を吸収、除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭や石油などの化石資源をガス化した原ガス、すなわち、ガス化ガスから二酸化炭素を回収する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス化ガスを燃焼させてガスタービンを駆動するとともに、その燃焼排ガスから蒸気を発生させて蒸気タービンを駆動する複合発電が行われている。燃焼排ガスは、大気へ放出されているが、二酸化炭素が含まれていることから、地球環境保全の観点から、二酸化炭素成分の回収・貯蔵(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)を行うことが強く望まれている。
【0003】
そこで、図5に示すように、ガス化炉110で生成した原ガスを、スクラバ120により除塵した後、COシフト反応器130で、原ガス中に含まれるCOをスチーム3と反応させて、CO2とH2を生成するシフト反応(CO+H2O→CO2+H2)を行い、このCOシフトガスに含まれるH2SやCO2を、物理吸収法であるSelexolプロセス、すなわち、H2S吸収装置140とCO2回収装置150で、順次、除去してからガスタービンに供給することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2006−522004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
COシフト反応器130には、上記のシフト反応の式の通り、COに対してスチーム(H2O)3が等モル以上必要であるが、水が不足すると、COから炭素(C)が析出するコーキングが発生することから、これを抑制し、COシフト触媒の長寿命化を図るため、スチーム3を理論量より多く供給する必要がある。しかしながら、スチーム3の消費量が多くなると、熱効率が低下するという問題がある。
【0006】
また、COシフト反応器130での反応率は、一般的に、90%以上あり、システム全体としてのCO2回収率が例えば90%といった高い値である場合には、原ガス全量をCOシフト反応器130に導入すれば良い。しかし、CO2回収率を例えば60%に下げたい場合、COシフト反応率を下げ、H2よりも低位燃焼熱が大きいCOを残存させる方が、熱効率的に有利であるが、COシフト反応器130での反応率を操作することは困難である。
【0007】
そこで、図6に示すように、ガス化炉110からの原ガス1の一部を、メイン供給路121によりCOシフト反応器130に送る一方、原ガス1の残部を、バイパス路134によりCOシフト反応器130を迂回させることが考えられる。これにより、バイパス路134を通るガス中のCOは、後流のCO2回収装置で回収されないことから、所望のCO2回収率を達成し、ガス中のCO濃度を上げることができる。また、COシフト反応器130でのスチーム3の消費量は、メイン供給路121中のCOの量に依存することから、バイパス路134に流れた分、スチーム3の消費量も低減することができる。
【0008】
しかしながら、原ガス1中には硫化カルボニル(COS)が含まれており、原ガス1全量をCOシフト反応器130に導入させた場合は、COシフト反応器130でCOSはスチーム3と反応して、CO2とH2Sを生成するため、後流のH2S吸収装置140で除去することができるものの、図6のように、バイパス路134を設けた場合、バイパス路134を流れる原ガスに含まれるCOSは後流の設備に流入し、最終的にはCO2回収装置で回収したCO2に混入する。このようにCOSが混入したCO2について貯蔵を行うことは安全性の面で問題がある。また、COSが混入したCO2を食品や化成品の用途に用いることはできない。
【0009】
よって、COSを除去するために、SelexolプロセスのH2S吸収装置140を改良して、図7に示すように、2段のH2S吸収塔140a、140bを配置して、その間にCOS転換器143を追加することが考えられる。COSを含有するCOシフトガス9は、配管132を介して第1のH2S吸収塔140aに導入され、H2Sが除去された後、配管141を介してCOS転換器143に導入される。COSがH2Sに転換されたガスは、配管144を介して、第2のH2S吸収塔140bに導入され、COSから転換したH2Sが除去された後、精製ガスとしてCO2回収装置に送られる。
【0010】
2Sを吸収した吸収液は、H2S吸収塔140bから配管147を介してH2S吸収塔140aに導入され、H2S吸収塔140aでさらにH2Sを吸収し、配管146を介して濃縮塔145に導入され、フラッシュにより吸収液中に溶解しているH2、CO、CO2等を含むガスが放出される。このガスは、配管148および圧縮機149を介して第1のH2S吸収塔140aに戻される。フラッシュにより濃縮された吸収液は、配管161を介して、放散塔162に導入される。放散塔162では、リボイラ169の加熱により、吸収液からH2Sの酸性ガスが放出され、塔頂の配管163及び凝縮器164を介して排出される。凝縮器164で得られる凝縮液は、配管165、タンク166及びポンプ167を介して放散塔56へ戻される。一方、酸性ガスの放散により再生した吸収液は、配管168から排出され、熱交換器171で配管146の吸収液を加熱した後、さらに冷却器173で冷却されてから、吸収塔140aへ供給され再利用される。
【0011】
2S吸収塔140a、140bでのH2S吸収は、例えば8〜20℃の低温領域で行われる一方、その間のCOS転換器143でのCOS転換反応は、通常、150〜350℃で行われるため、第1のH2S吸収塔140aでガスを冷却した後、COS転換器143の前流でガスを加熱し、また、第2のH2S吸収塔142bの前流でガスを冷却する必要があり、このような温度の上下操作を行うことは、熱効率が悪くなるという問題がある。また、シフトガス中の水分は、第1のH2S吸収塔140aで吸収されるため、COS転換反応に必要な水分として、水蒸気4を新たに供給する必要がある。水蒸気の消費量が増加すると、上述したように、熱効率が低下するという問題が発生する。
【0012】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、ガス化ガスからCO2を回収する際に、CO2回収率を変化させても、冷却と加熱の操作を繰り返したり、水蒸気の消費量を増やすことなく、回収したCO2にCOSが混入するのを防ぐことができるガス化ガスからの高純度CO2回収方法およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、その一態様として、CO、CO2、COS、H2Sを含有するガス化ガスからCO2を回収する方法であって、前記ガス化ガスの一部分について、ガス化ガス中のCOをCO2に転換するCOシフト反応工程と、前記ガス化ガスの他の一部分を、前記COシフト反応工程を経ずに、前記COシフト反応後のガス化ガスと混合することによって、この混合ガスの温度を150〜350℃にし、この混合ガス中のCOSをH2Sに転換するCOS転換工程と、前記COS転換後の混合ガス中からH2Sを吸収、除去するH2S吸収工程と、前記H2S吸収工程によりH2Sを除去した混合ガス中からCO2を吸収、除去するCO2吸収工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るCO、CO2、COS、H2Sを含有するガス化ガスからCO2を回収する方法は、別の態様として、前記ガス化ガスの一部分について、ガス化ガス中のCOをCO2に転換するCOシフト反応工程と、前記ガス化ガスの他の一部分を、前記COシフト反応工程を経ずに、前記COシフト反応後のガス化ガスと熱交換することによって、前記ガス化ガスの他の一部分のガス温度を150〜350℃にし、このガス化ガスの他の一部分中のCOSをH2Sに転換するCOS転換工程と、前記COS転換後のガス化ガスと、前記COシフト反応後のガス化ガスとを混合して、この混合ガス中からH2Sを吸収、除去するH2S吸収工程と、前記H2S吸収工程によりH2Sを除去した混合ガス中からCO2を吸収、除去するCO2吸収工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、別の態様として、CO、CO2、COS、H2Sを含有するガス化ガスからCO2を回収するシステムであって、前記ガス化ガスの一部分について、ガス化ガス中のCOをCO2に転換するCOシフト反応器と、前記ガス化ガスの他の一部分を、前記COシフト反応器に導入せずに迂回するバイパス路と、前記COシフト反応器を経たガス化ガスと、前記バイパス路を通過したガスとの混合ガス中のCOSをH2Sに転換するCOS転換器と、前記COS転換器を経た混合ガスからH2Sを吸収、除去するH2S吸収装置と、前記H2S吸収装置によりH2Sを除去した混合ガスからCO2を吸収、除去するCO2吸収装置とを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るCO、CO2、COS、H2Sを含有するガス化ガスからCO2を回収するシステムは、別の態様として、前記ガス化ガスの一部分について、ガス化ガス中のCOをCO2に転換するCOシフト反応器と、前記ガス化ガスの他の一部分を、前記COシフト反応器に導入せずに迂回するバイパス路と、前記バイパス路を通過したガス中のCOSをH2Sに転換するCOS転換器と、前記COシフト反応器を経たガス化ガスと、前記COS転換器を得たガスとの混合ガスからH2Sを吸収、除去するH2S吸収装置と、前記H2S吸収装置によりH2Sを除去した混合ガスからCO2を吸収、除去するCO2吸収装置とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明によれば、ガス化ガスをCOシフト反応させないバイパス路を設け、バイパス路を通過したガスとCOシフトガスとの混合ガスをCOS転換反応させるか、又はバイパス路を通過したガスのみをCOS転換反応させ、このCOSから転換したH2Sを後流のH2S吸収装置で除去することで、ガス化ガスからCO2を回収する際に、CO2回収率を変化させても、冷却と加熱の操作を繰り返したり、水蒸気の消費量を増やすことなく、回収したCO2にCOSが混入するのを防ぐことができる
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るCO2回収システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1のCOシフト反応器及びCOS転換器の構成を示す模式図である。
【図3】図1のH2S吸収装置の構成を示す模式図である。
【図4】本発明に係るCO2回収システムの別の実施形態であって、COシフト反応器及びCOS転換器の別の構成を示す模式図である。
【図5】従来のCO2回収システムの一例を示すブロック図である。
【図6】従来のCOシフト反応器の構成を示す模式図である。
【図7】従来のH2S吸収装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るガス化ガスからのCO2回収システムおよび方法の一実施の形態について説明する。図1に示すように、本実施の形態のCO2回収システムは、ガス化炉10で石炭をガス化したガス(「原ガス」と略す)1に対して、除塵を行うスクラバ20と、原ガス1の一部について、原ガス1中のCOをCO2に転換するCOシフト反応器30と、COシフト反応器30を経たCOシフトガスとバイパス路34を介した原ガス1の残部とを混合した混合ガス中のCOSをH2Sに転換するCOS転換器40と、COS転換器40を経たCOS転換ガス中からH2Sを吸収するH2S吸収装置50と、H2S吸収装置によりH2Sを除去した精製ガス中からCO2を吸収するCO2回収装置60とで主に構成されている。
【0020】
ガス化炉10としては、石炭をガス化するために通常使用されているガス化炉を用いることができる。石炭をガス化した原ガス1には、水素(H2)や、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)が主成分として含まれており、その他に、硫化カルボニル(COS)や硫化水素(H2S)等も含まれている。ガス化炉10の後流には、原ガス1中に含まれる比較的大径の粉塵を除去するためのフィルタ(図示省略)を設置してもよい。
【0021】
スクラバ20としては、原ガス1に吸収液を接触させて、原ガス1中の比較的微細な粉塵を吸収、除去する湿式のスクラバを用いることができる。このようなスクラバとしては、例えば、スプレー塔、充填塔、サイクロンスクラバー、ジェットスクラバー、回転洗浄機、ベンチュリースクラバー等がある。採用するスクラバ20によっては、除塵の他、水銀、アンモニア、重金属、ハロゲン等の有害物質を吸収、除去することもできる。
【0022】
スクラバ20の出口流路には、除塵した原ガス1の一部をCOシフト反応器30に供給するメイン供給路21と、除塵した原ガス1の残部をCOシフト反応器30に供給せずに、迂回してCOS転換器40に供給するバイパス路34とが設けられている。
【0023】
COシフト反応器30は、原ガス1中のCOとH2Oとを反応させて、H2とCO2を生成するシフト反応(CO+H2O→CO2+H2)を行う装置である。COシフト反応器30には、原ガス1中にH2Sを含むため、Co/Mo系などの耐硫黄性のシフト反応触媒を使用することが好ましい。
【0024】
また、COシフト反応器30は、図2に示すように、第1COシフト反応器30aと第2COシフト反応器30bといった複数のCOシフト反応器を直列に配置することができる。このように複数段のCOシフト反応器を設置することで、シフト反応器に供給するスチーム量を減らし、CO転化率を上げることができる。また、各段のCOシフト反応器30a、30bの間に設けられたCOシフトガスを供給する配管31や、最終段のCOシフト反応器30bからCOシフトガスをCOS転換器40へ供給する配管32には、熱交換器36を設けることができる。例えば、第1及び第2COシフト反応器30a、30b間に設けられた熱交換器36aによって、配管21の原ガス1を予熱する構成とすることができる。
【0025】
COS転換器40は、ガス中のCOSをH2Oと反応させて、H2SとCO2を生成するCOS転換反応(COS+H2O→H2S+CO2)を行う装置である。COS転換器40には、COSの転換を促進する触媒が充填されており、このようなCOS転換触媒としては、例えば、バリウム系や、クロム系、カリウム系の触媒などを用いることが好ましい。COS転換器40には、COS転換反応後のガス5をH2S吸収装置50へ供給する配管41が設けられている。また、この配管41には、熱交換器46が配置されている。
【0026】
2S吸収装置50は、物理吸収法によりH2Sを除去する装置であって、例えば、Selexolプロセスを採用することが好ましい。H2S吸収装置50の詳細については、図3を参照して説明する。図3に示すように、H2S吸収装置50は、主に、吸収液を用いてCOS転換反応後のガス5中のH2Sを吸収、除去する吸収塔50aと、H2Sを吸収した吸収液をフラッシュにより濃縮する濃縮塔53と、濃縮した吸収液からH2Sを放散する放散塔56とで主に構成されている。
【0027】
例えば、Selexolプロセスの場合、吸収塔50aで用いる吸収液としては、ポリエチレングリコールジメチルエーテル溶液を用いることが好ましい。吸収塔50aの塔頂部には、H2Sを除去した精製ガス6をCO2回収装置60へと供給する配管51が設けられている。また、吸収塔50aの底部には、H2Sを吸収した吸収液を濃縮塔53に供給する配管52が設けられている。
【0028】
濃縮塔53の塔頂部には、吸収液のフラッシュにより発生するH2、CO、CO2を含むガスを吸収塔50aへ送る配管54が設けられており、この配管54にはこのガスを送風するための圧縮機67が設けられている。また、濃縮塔53の底部には、濃縮した吸収液を放散塔56へ供給する配管55が設けられている。
【0029】
放散塔56の塔頂部には、吸収液から放散されるH2Sの酸性ガス7を排出する配管57が設けられている。この配管57には、酸性ガス7を冷却する凝縮器58が設けられており、この凝縮器58には、酸性ガス7の凝縮液を一時的に貯留するタンク65が設けられている。また、タンク65には凝縮水を放散塔へ戻すためのポンプ66が設けられている。放散塔56の底部には、吸収液を加熱するリボイラ61と、放散により再生された吸収液を、吸収塔50aへ送る配管59とが設けられている。この配管59には、吸収塔50aから濃縮塔53へ吸収液を送る配管52と間で熱交換する熱交換器62と、再生吸収液を圧送するポンプ63と、再生吸収液を冷却する冷却器64が設けられている。
【0030】
CO2回収装置60は、物理吸収法により精製ガス6中のCO2を除去する装置であって、例えば、H2S吸収装置50と同様に、Selexolプロセスを採用することが好ましい。Selexolプロセスの場合、CO2回収装置60で用いる吸収液は、H2S吸収装置50と同様に、ポリエチレングリコールジメチルエーテル溶液を用いることができる。
【0031】
以上の構成によれば、図1に示すように、先ず、ガス化炉10で石炭をガス化した原ガス1は、スクラバ20に導入される。スクラバ20で吸収液により除塵された原ガス1は、その一部がメイン供給路21によりCOシフト反応器30、複数段の場合は、図2に示すように、第1COシフト反応器30aに供給され、残部がバイパス路34によりCOS転換器40に供給される。スクラバ20から排出される原ガス1の温度は、ガス化炉10及びスクラバ20によって異なるが、例えば、100〜150℃の範囲である。
【0032】
原ガス1のメイン供給路21への流量とバイパス路34への流量との割合は、原ガス1中の炭素含有量を100としてCO2回収装置でCO2として回収される炭素の回収率(「炭素回収率」という)およびCOS転換器40に供給される混合ガスの温度の設定により異なるが、原ガス1のうち、CO2回収率が50〜80%の場合、45〜15%をバイパス路34へ送ることが好ましい。より好ましいバイパス路34へ送る割合は、CO2回収率が65%の場合、30%である。
【0033】
COシフト反応器30では、原ガス1の一部に含まれるCOが、COシフト反応によってCO2に転換される。COシフト反応は、上記した式の通り、COに対して水(H2O)が等モル以上必要であるため、COシフト反応器30にはスチーム3が供給される。なお、COシフト反応の際、水が不足すると、COから炭素(C)が析出するコーキング(2CO→C+CO2)が発生することから、これを抑制するため、スチーム3を理論量より多く供給することが好ましい。例えば、スチーム3の供給量は、H2O/COのモル比が1.5〜5.0の範囲内となるような量が好ましく、1.7〜2.4の範囲がより好ましい。
【0034】
COシフト反応は、発熱反応であり、COシフト反応器30、複数段の場合は、最終段の第2COシフト反応器30bから排出されるCOシフトガスの温度は、原ガス1等の条件により異なるが、例えば、250〜450℃の範囲となる。また、COシフト反応器30では、上述のCOシフト反応とともに、原ガス1中のCOSもH2Oと反応してCO2とH2Sが生成する反応(COS+H2O→CO2+H2S)も起こる。すなわち、COシフト反応器30を経たCOシフトガスは、COSが除去されている。
【0035】
COシフトガスは、図2に示すように、バイパス路34によりCOシフト反応が行われていない原ガスの残部と混合され、配管32を経て、COS転換器40へと導入される。この時、COシフトガスは温度が250〜450℃の範囲であり、バイパス路34の原ガスの残部は温度が100〜150℃の範囲であるので、この混合ガスの温度は、COS変換反応に必要な温度である150〜350℃の範囲にすることができる。なお、この混合ガスの温度は、COシフト反応器30とバイパス路34との間の配管32に配置された熱交換器36cによって、COシフトガスの温度を調節することで、制御することができる。より好ましい混合ガスの温度は、180〜300℃であり、さらに好ましくは180〜250℃である。このように、COシフトガスを徐々に冷却していく過程で、COS転換反応に必要な温度領域にすることができるので、冷却と加熱を繰り返すような温度操作を行うことがないので、熱効率を向上させることができる。
【0036】
また、COS転換反応は、前述の化学反応式の通り、COSに対してH2Oを等モル以上必要とするが、混合ガスのうち、原ガス1はスクラバ20で加湿されているため、反応に必要なH2Oが十分に存在するとともに、COシフトガスも、COシフト反応のためにスチーム3が多量に供給されている。よって、COS転換器40では、特にスチームを供給せずとも、H2Oが非常にリッチに存在しているため、反応平衡上有利であり、高いCOS転換率を得ることができる。
【0037】
COS転換器40から排出されるCOS転換反応後のガス5は、熱交換器46により、ガス温度が例えば40〜60℃の範囲に冷却されてから、配管41を介してH2S吸収装置50へ送られる。図2のフローでは、熱交換器36cによってCOシフト後のガス温度が高いため、高圧の蒸気を発生でき、熱交換器46でも低圧の蒸気を発生させることができる。
【0038】
2S吸収装置50では、図3に示すように、COS転換ガス5が吸収塔50aに導入され、吸収液との気液接触によりガス中のH2Sが吸収、除去される。H2Sが除去された精製ガス6は、塔頂の配管51を介してCO2回収装置60へと送られる。一方、H2Sを吸収した吸収液は、吸収塔50aの底部の配管52から排出され、熱交換器62で、放散塔56からの再生吸収液により加熱された後、濃縮塔53へ導入される。
【0039】
濃縮塔53では、吸収液がフラッシュされ、吸収液中に溶解しているH2、CO、CO2等を含むガスが放出される。このガスは、配管54を介して吸収塔54に戻される。フラッシュにより濃縮された吸収液は、配管55を介して、放散塔56に導入される。
【0040】
放散塔56では、リボイラ61での加熱により、吸収液からH2Sの酸性ガス7が放出される。酸性ガス7は、塔頂の配管57から排出され、凝縮器58で凝縮されてから所定の処理設備(図示省略)へ送られる。凝縮器58では、酸性ガス7に同伴する水蒸気等を凝縮させて除去する。凝縮液は、タンク65に溜まり、ポンプ66によって放散塔56へ戻される。一方、酸性ガスの放散により再生した吸収液は、放散塔56の底部において、一部はリボイラ61により加熱され、一部は配管59から排出され、熱交換器62で配管52のH2Sを吸収した吸収液を加熱した後、さらに冷却器64で冷却されてから、吸収塔50aへ供給され再利用される。
【0041】
2S吸収装置50でH2Sが除去された精製ガス6は、CO2回収装置60に導入され、吸収液との気液接触により精製ガスからCO2が除去、回収される。CO2が除去、回収されたガスは、複合発電用燃料としてガスタービンへ供給される。また、化学合成原料等にも使用することができる。CO2回収装置60で回収されたCO2の炭素は、原ガス1に当初から含まれるCO2はもちろん、COシフト反応器30によりCO2に転換したCO、COS転換器40によりCO2に転換したCOSの炭素が含まれる一方、バイパス路34によりCOシフト反応器30を迂回してきた原ガスの残部に含まれるCOの炭素は含まれない。
【0042】
よって、原ガス1全体の流量に対するバイパス路34の流量の割合により、CO2回収率を制御することができる。CO2回収率は、例えば、バイパス路34の流量を0%にすると、約90%が達成できる場合、バイパス路34の流量の割合を45〜15%とすることで、CO2回収率を50〜80%とすることができる。このようにCO2回収率を下げることで、ガスタービンの燃焼器に用いるガス中のCO濃度が上昇し、燃焼熱を上げて、発電効率を向上させることができる。
【0043】
なお、図1および図2の実施の形態では、バイパス路34を、COシフト反応器30からCOシフトガスをCOS転換器40に供給する配管32に接続したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図4に示すように、バイパス路38を直接、COS転換器44に接続し、COS転換器44からCOS転換ガスをH2S吸収装置50に供給する配管45を、COシフト反応器30からCOシフトガスをH2S吸収装置50に供給する配管33に接続することもできる。この場合、COシフトガスの配管33とバイパス路38との間で熱交換する熱交換器36dを設ける。
【0044】
このような構成にしても、原ガス1はスクラバ20により加湿されているため、COS転換器44において、新たなスチームの供給は不要である。また、図4の実施の形態では、バイパス路38のみにCOS転換器44を設置していることから、図1、図2の実施の形態に比べて、COS転換器44を小型にでき、図2に示す熱交換器46よりも熱交換器46aでは圧力の高いスチームを発生させることができるが、反面、図2の熱交換器36cで高圧蒸気を発生させるのに対し、図4の熱交換器36dでは、蒸気の発生がない。
【符号の説明】
【0045】
1 原ガス
3 スチーム
4 水蒸気
5 COS転換ガス
6 精製ガス
7 酸性ガス
9 COシフトガス
10 ガス化炉
20 スクラバ
30 COシフト反応器
34、38 バイパス路
36、46 熱交換器
40、44 COS転換器
50 H2S吸収装置
50a 吸収塔
53 濃縮塔
56 放散塔
58 凝縮器
60 CO2回収装置
61 リボイラ
64 冷却器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO、CO2、COS、H2Sを含有するガス化ガスからCO2を回収する方法であって、
前記ガス化ガスの一部分について、ガス化ガス中のCOをCO2に転換するCOシフト反応工程と、
前記ガス化ガスの他の一部分を、前記COシフト反応工程を経ずに、前記COシフト反応後のガス化ガスと混合することによって、この混合ガスの温度を150〜350℃にし、この混合ガス中のCOSをH2Sに転換するCOS転換工程と、
前記COS転換後の混合ガスからH2Sを吸収、除去するH2S吸収工程と、
前記H2S吸収工程によりH2Sを除去した混合ガスからCO2を吸収、除去するCO2吸収工程と
を含むCO2回収方法。
【請求項2】
CO、CO2、COS、H2Sを含有するガス化ガスからCO2を回収する方法であって、
前記ガス化ガスの一部分について、ガス化ガス中のCOをCO2に転換するCOシフト反応工程と、
前記ガス化ガスの他の一部分を、前記COシフト反応工程を経ずに、前記COシフト反応後のガス化ガスと熱交換することによって、前記ガス化ガスの他の一部分のガス温度を150〜350℃にし、このガス化ガスの他の一部分中のCOSをH2Sに転換するCOS転換工程と、
前記COS転換後のガス化ガスと、前記COシフト反応後のガス化ガスとを混合して、この混合ガスからH2Sを吸収、除去するH2S吸収工程と、
前記H2S吸収工程によりH2Sを除去した混合ガスからCO2を吸収、除去するCO2吸収工程と
を含むCO2回収方法。
【請求項3】
CO、CO2、COS、H2Sを含有するガス化ガスからCO2を回収するシステムであって、
前記ガス化ガスの一部分について、ガス化ガス中のCOをCO2に転換するCOシフト反応器と、
前記ガス化ガスの他の一部分を、前記COシフト反応器に導入せずに迂回するバイパス路と、
前記COシフト反応器を経たガス化ガスと、前記バイパス路を通過したガスとの混合ガス中のCOSをH2Sに転換するCOS転換器と、
前記COS転換器を経た混合ガスからH2Sを吸収、除去するH2S吸収装置と、
前記H2S吸収装置によりH2Sを除去した混合ガスからCO2を吸収、除去するCO2吸収装置と
を含むCO2回収システム。
【請求項4】
CO、CO2、COS、H2Sを含有するガス化ガスからCO2を回収するシステムであって、
前記ガス化ガスの一部分について、ガス化ガス中のCOをCO2に転換するCOシフト反応器と、
前記ガス化ガスの他の一部分を、前記COシフト反応器に導入せずに迂回するバイパス路と、
前記バイパス路を通過したガス中のCOSをH2Sに転換するCOS転換器と、
前記COシフト反応器を経たガス化ガスと、前記COS転換器を得たガスとの混合ガスからH2Sを吸収、除去するH2S吸収装置と、
前記H2S吸収装置によりH2Sを除去した混合ガスからCO2を吸収、除去するCO2吸収装置と
を含むCO2回収システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−260731(P2010−260731A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110597(P2009−110597)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【特許番号】特許第4395542号(P4395542)
【特許公報発行日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】