説明

ガス化炉

【課題】 スラグ付着の判定精度を向上させ、バーナの閉塞を未然に防止することにある。
【解決手段】 炉壁に設けられ炉内に炭素含有固体原料と酸化剤を噴出するバーナ15と、バーナ15における噴出流体の圧力損失を検出する検出器29と、検出器29により検出された検出値に基づいてバーナ15の流体噴出口にスラグが付着したことを判定する判定手段8と、判定手段8の判定に基づいて付着したスラグを除去する除去手段を備え、炭素含有固体原料を前記酸化剤で部分燃焼させてガス化するガス化炉1において、判定手段8は、検出器29の検出値を補正し、補正した検出値と予め設定される判定値とを比較し、バーナ15の流体噴出口にスラグが付着したことを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化炉に係り、特に、バーナの流体噴出口(以下、バーナ先端という。)にスラグが付着したことを精度良く判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のガス化炉としては、炉壁に設けたバーナから炭素含有固体原料と酸化剤、例えば、微粉炭と空気を炉内に噴出し、炉内で微粉炭を部分酸化してHやCOを主成分とする燃料ガスなどを生成するものが知られている(例えば、特許文献1)。特に、同文献によれば、微粉炭中に含まれる灰分が炉内の熱で溶融したスラグがバーナ先端に付着してバーナが閉塞するのを防止するため、バーナの中心側に位置する燃料ノズルを炉内に突出駆動させ、燃料ノズルの先端を付着したスラグに衝突させてスラグを除去するようにしている。このとき、バーナ先端近傍の炉内圧力とバーナへの酸化剤の供給圧力との差圧からバーナにおける酸化剤の圧力損失を検出し、圧力損失が大きくなった場合にバーナ先端にスラグが付着したと判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002―161284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、ガス化炉内の圧力が変動することを考慮していないから、バーナ先端へのスラグ付着の判定を誤ることがある。つまり、ガス化炉の負荷変化による炉内圧力の変動や、酸化剤の供給圧力の変化に対する炉内圧力の変化遅れなどにより、バーナにおける酸化剤の圧力損失が変動してバーナ先端のスラグ付着の判定精度が悪くなるおそれがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、スラグ付着の判定精度を向上させ、バーナの閉塞を未然に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題を解決するため、本発明は、炉壁に設けられ炉内に炭素含有固体原料と酸化剤を噴出するバーナと、バーナにおける噴出流体の圧力損失を検出する検出器と、検出器により検出された検出値に基づいてバーナ先端にスラグが付着したことを判定する判定手段と、判定手段の判定に基づいて付着したスラグを除去する除去手段を備え、炭素含有固体原料を酸化剤で部分燃焼させてガス化するガス化炉において、判定手段は、補正した検出値と予め設定される判定値とを比較して判定することを特徴とする。
【0007】
これによれば、補正した検出値に基づいて、炉内の圧力変動の影響を低減してバーナ先端へのスラグ付着を判定することから、スラグ付着の判定精度を向上でき、スラグの付着量が増加してバーナが閉塞する前にスラグを除去できることから、バーナの閉塞を未然に防止することができる。
【0008】
また、炉壁に複数のバーナを設けたガス化炉の場合は、それぞれのバーナにおける酸化剤の圧力損失の検出値から圧力損失の平均値を求め、その平均値と各バーナにおける酸化剤の圧力損失の値の比を判定値と比較することができる。つまり、炉内圧力の変動などによるバーナにおける酸化剤の圧力損失の変動は、全てのバーナで共通して発生するから、圧力損失の平均値で各バーナの圧力損失の値を補正することで、炉内圧力の変動などの影響を低減できる。なお、炭素含有固体原料を窒素や空気などの搬送用気体でガス化炉に気流搬送する場合は、それぞれのバーナにおける搬送用気体の圧力損失を検出して平均値を求め、その平均値と各バーナにおける搬送用気体の圧力損失の値の比を判定値と比較することができる。
【0009】
また、ガス化炉の負荷変化などによる炉内圧力の変動や、酸化剤の供給圧力の変化に対する炉内圧力の変化遅れなどにより、検出した酸化剤の圧力損失が変動する。そこで、酸化剤の圧力損失(ΔP)は、酸化剤の流量(Q)と密度(ρ)と圧力損失係数(β)に相関することから、数1式により、圧力損失係数βを求める。この圧力損失係数βは、バーナ先端にスラグが付着すると変化することから、求めた圧力損失係数βと判定値とを比較することで、スラグ付着の判定精度を向上できる。つまり、ガス化炉の負荷変動などによる酸化剤の供給圧力の変化に相関する酸化剤の流量Qと密度ρにより、酸化剤の圧力損失ΔPを補正したことから、スラグ付着の判定精度を向上できる。
【0010】
【数1】

【0011】
一方、バーナ先端にスラグが付着した場合は、例えば、ガス化炉へ供給する酸化剤の供給量を増加させて、炉内の酸化反応を促進させることで、バーナ先端に付着したスラグを除去できる。つまり、炉内の酸化反応を促進させて、バーナ先端近傍の温度を上昇させ、スラグの粘度を低下させて付着したスラグをバーナ先端から流下できる。これによれば、スラグを除去する装置を別途設ける必要がないことから、付着したスラグの除去にかかるコストを低減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スラグ付着の判定精度を向上でき、バーナの閉塞を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1のガス化炉の概略構成図である。
【図2】図1のガス化炉のバーナ位置における横断面図である。
【図3】図1のバーナの概略構成図である。
【図4】図1の判定手段の動作を示す概略フローである。
【図5】図1の判定手段の動作を例示した図である。
【図6】実施形態1の変形例を示す図である。
【図7】実施形態2のガス化炉の概略構成図である。
【図8】図7の判定手段の動作を示す概略フローである。
【図9】図7の判定手段の動作を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1は実施形態1のガス化炉の概略構成図であり、図2は図1のバーナが設けられた位置のガス化炉の横断面図であり、図3はバーナの概略構成図である。図示のように実施形態1のガス化炉1は、竪型円筒状に形成されている。ガス化炉1は、ガス化部3、熱回収部5、スラグ冷却部7で構成され、判定手段8を備えている。ガス化炉1の頂部には生成ガスを排出する排出口11が設けられている。ガス化炉1の底部には、水砕スラグ12を排出する図示していない排出口が備えられている。
【0015】
ガス化部3は、高温高圧雰囲気で炭素含有固体原料、例えば、微粉炭を、酸化剤、例えば、空気で部分燃焼させてガス化しHやCOを主成分とする生成ガスを発生させるようになっている。ガス化部3の炉壁13には、微粉炭と空気を炉内に噴出する複数(本実施形態では4つ)のバーナ15が設けられている。バーナ15は、炉壁の同じ高さの位置にバーナ15先端を炉壁の接線方向に向けて設けられている。これにより、バーナ15から噴出した微粉炭と空気がガス化炉1の内壁に沿って旋回するようになっている。バーナ15の中心には、微粉炭を炉内に噴出する原料ノズル17が配置されている。原料ノズル17の後端側には、微粉炭を気流搬送する原料供給管18が接続されている。バーナ15の原料ノズル17の外周側には、原料ノズル17を包囲して空気を炉内に噴出する酸化剤ノズル19が設けられている。酸化剤ノズルの後端側には、空気が通流する酸化剤供給管20が接続されている。さらに、バーナ15の外周側には、酸化剤ノズル19を包囲して内部を冷却水が通流する冷却管21が設けられている。冷却管21内には、冷却水が通流する流路23が形成されている。冷却管21内を通流する冷却水でバーナ15を冷却し、バーナ15の過熱を抑制するようになっている。なお、炭素含有固体原料としては、生成ガスに含まれる未燃炭素分(チャー)を用いることができる。また、酸化剤は空気に限定されず、炭素をガス化できる酸素などの酸化剤を用いることができる。
【0016】
熱回収部5は、ガス化部3で発生した生成ガスの熱を熱媒体で回収するようになっている。熱回収部5の炉壁には、図示していない配管が埋設され、水などの熱媒体が配管内を通流するようになっている。
【0017】
スラグ冷却部7は、ガス化炉1の底部側に設けられ、微粉炭中の灰分を溶融させた溶融スラグを水中に落下させて水砕スラグ12としてガス化炉1の底部から排出するようになっている。スラグ冷却部7には、溶融スラグを冷却する冷却水27が貯留されている。
【0018】
判定手段8は、バーナ15における空気の圧力損失を検出器29により検出して、バーナ15先端のスラグ付着の有無を判定するようになっている。検出器29は、バーナ15への空気の供給圧力とガス化炉1内のバーナ15先端近傍の圧力との差圧から、バーナ15における空気の圧力損失を検出するようになっている。さらに、酸化剤供給管20には、供給する空気の供給量を調節する図示していない弁が接続されている。なお、図1は、図示をわかりやすくするため1本のバーナ15にのみ検出器29を記載しているが、同様に他のバーナ15にも検出器29が設けられている。
【0019】
このように構成される実施形態1の動作を説明する。ガス化炉1のガス化部3には、微粉炭と微粉炭の理論燃焼酸素量より少ない量の空気がバーナ15から噴出される。噴出された微粉炭は、ガス化炉1の内壁に沿って旋回しながら空気に含まれる酸素により部分燃焼され、HやCOを主成分とする生成ガスにガス化される。生成ガスは旋回しながらガス化炉1を上昇し、上方の熱回収部5に導入される。熱回収部5に導入された生成ガスは、熱回収部5の炉壁内を通流する熱媒体と熱交換し、生成ガスの熱が熱媒体に回収される。熱回収部5を通過して冷却された生成ガスは、ガス化炉1の頂部から排出され、適宜処理した後、例えば、図示していないガスタービンや燃料電池の燃料として使用される。
【0020】
一方、微粉炭中の灰分は、微粉炭の部分燃焼により発生した熱により溶融されて溶融スラグとなる。溶融スラグは生成ガスの旋回流による遠心力により炉壁に付着する。炉壁に付着した溶融スラグは、炉壁を伝わり自重により流下してスラグ冷却部7の冷却水27に落下して急冷される。急冷された溶融スラグは水砕スラグ12としてガス化炉1の底部から排出される。
【0021】
次に、実施形態1の特徴動作を図4を用いて説明する。図4は判定手段8の動作を説明するフロー図である。判定手段8には、検出器29で検出した各バーナ15の空気の圧力損失(ΔP0i)と各バーナ15への空気流量(Q0i)が入力される。判定手段8は、入力された圧力損失から数2式によりバーナ15における空気の圧力損失の平均値(ΔP0avg)を演算する。
【0022】
【数2】

【0023】
数2式で求めたΔP0avgとバーナ15ごとに検出したΔP0iから数3式により、各バーナ15におけるΔP0iとΔP0avgの比(α)を演算する。つまり、判定手段8は、各バーナ15で検出したΔP0iをΔP0avgで補正する。
【0024】
【数3】

【0025】
判定手段8は、数3式で求めたαが予め設定された判定値、例えば、1.2を超えると、スラグがバーナ15先端に付着したと判定する。スラグが付着したと判定した場合は、スラグが付着したバーナ15に供給する空気の流量を増加させて酸素比を高くする。そして、αが判定値を下回り一定になると、判定手段8はバーナ15からスラグが除去されたと判定し、空気の供給量を減少させバーナ15における酸素比を元に戻す。
【0026】
図5に4本のバーナ15の内、No.1のバーナ15にスラグが付着した場合の判定手段8の動作を説明する。図5の横軸は時間を示す。区間Aはバーナ15先端にスラグが付着していない通常運転時であり、区間Bは付着したスラグの成長時であり、区間Cはバーナ15における酸素比の上昇時であり、区間Dは付着したスラグの除去時であり、区間Eはスラグの除去完了時であり、区間Fはバーナにおける酸素比の減少時である。図5の縦軸(a)はバーナ15先端のスラグの付着量(成長度合)を示し、(b)はバーナ15における酸素比を示し、(c)はバーナ15における空気の差圧(圧力損失:ΔP0i)を示し、(d)は酸化剤差圧比(α)を示す。
【0027】
図示のように、バーナ15先端にスラグが付着していない区間Aでは、No.1のバーナ15における空気の圧力損失に変化はなく、αも約1と一定である。しかし、図3に示すようにバーナ15先端にスラグが付着・固化して付着量が増加し、付着したスラグが成長する区間Bでは、No.1のバーナ15のみ圧力損失及びαが上昇する。これに対し、スラグが付着していないNo.2〜4のバーナ15には圧力損失の変化がなく、また、α2〜4は圧力損失の平均値の上昇により減少している。そして、No.1のバーナ15のαが1.2を超えた場合、区間Cに示すようにNo.1のバーナ15のみ空気の供給量を上げて酸素比を高くする。これにより、区間Dに示すように、付着したスラグを減少できる。つまり、No.1のバーナ15における酸化反応を促進させ温度を上昇させることで、スラグの粘度を低下させて空気や微粉炭の噴流でスラグを容易に飛散あるいは落下させ、付着したスラグを除去できる。そして、αの値が低下して区間Eに示すように一定になると、区間Fに示すように空気の供給量を減らし、酸素比を減少させて区間Aの通常運転時の酸素比に戻す。なお、No.1のバーナ15の圧力損失が区間CでΔP01c分上昇しているのは、空気の供給量の増加により空気の供給圧が上昇したからである。また、スラグ除去後の区間EでNo.1のバーナ15の圧力損失が区間AよりもΔP01E分だけ上昇しているのも、空気の供給量の増加により酸化剤の供給圧が上昇したからである。
【0028】
これによれば、判定値と比較する酸化剤の圧力損失の検出値として炉内の圧力変動の影響を低減するよう補正した検出値を用いることから、スラグ付着の判定精度を向上でき、スラグの付着量が増加してバーナ15が閉塞する前にスラグを除去できることから、バーナ15の閉塞を未然に防止することができる。つまり、炉内圧力の変動などによるバーナ15における空気の圧力損失の変動は、全てのバーナ15で共通して発生するから、圧力損失の平均値で各バーナ15の圧力損失の値を補正することで、炉内圧力の変動などの影響を低減でき、スラグ付着の判定精度を向上できる。
【0029】
また、バーナ15にスラグが付着すると、バーナ15における流体の噴出向きが変化し、ガス化炉1の側壁近傍の温度が上昇して、例えば、熱回収部5の炉壁内の配管を損傷するおそれがある。しかし、実施形態1は、スラグ付着の判定精度を向上できることから、付着したスラグを早期に除去できガス化炉1を安定運転できる。
【0030】
なお、図6に示すように微粉炭を気流搬送する窒素の圧力損失に基づいて、バーナ15先端のスラグの付着を判定できる。つまり、それぞれのバーナ15における窒素の圧力損失を検出器35で検出して平均値を求め、その平均値と各バーナにおける窒素の圧力損失との値の比を判定値と比較することができる。しかし、搬送用気体には微粉炭が含まれ、原料供給管18内の圧力の変動が大きいことから、バーナ15における空気の圧力損失に基づいて、スラグ付着の判定を行うことが好ましい。
【0031】
また、スラグ除去は実施形態1の除去手段に限定されるものではない。例えば、スラグ除去用のバーナをバーナ15の先端に向けて設け、付着したスラグを加熱して除去するなど周知の除去手段を用いることができる。しかし、実施形態1のように酸化剤の供給量を増加させてスラグを除去すると、別途スラグ除去の装置を設ける必要がないことから、スラグ除去にかかるコストを低減できる。
【0032】
なお、実施形態1では、スラグが付着したと判定する判定値を1.2としたが、これに限定されるものではなく適宜選択できる。また、付着したスラグを除去する場合、スラグが付着したバーナ15に加え、スラグが付着していないバーナ15の空気供給量も増加させて、炉内温度を上昇させることができる。
【0033】
(実施形態2)
図7に実施形態2のガス化炉の概略構成図を示す。実施形態2が実施形態1と相違する点は、予め求めた酸化剤の密度、例えば、酸素の密度を入力し、酸素の流量と密度から求めた酸素の圧力損失に相関する物理量と検出器29の検出値との比(β)を予め設定された判定値と比較している点である。その他の構成は実施形態1と同一であるから同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
実施形態2の判定手段8の動作を図8を用いて説明する。判定手段8には、スラグが付着していない状態のバーナ15における酸素の圧力損失係数(βsi)が判定値として予め設定されている。また、判定手段8には、予め求めておいた酸素の密度ρが入力されている。そして、検出器29で検出した各バーナ15の酸素の圧力損失(ΔP0i)、流量計31で計測した酸素の流量(Q0i)が判定手段8に入力される。判定手段8は、上述した数1式により、酸素の圧力損失係数(β)を求める。つまり、判定手段8は、各バーナ15におけるΔP0iを酸素の流量と密度で補正してβを求める。そして、求めたβと予め入力されているβsiを比較し、例えば、βがβsiより10%上昇したと判断した場合は、バーナ15先端にスラグが付着したと判定する。この場合、酸素の流量(Q0i)を増加させて、バーナ15における酸素比を大きくしてスラグを除去する。そして、βの上昇分が10%を下回り一定になったと判断すると、バーナ15からスラグが除去されたと判定し、酸素の供給量を減少させ、バーナにおける酸素比を元に戻す。なお、スラグが付着したと判定する閾値は10%に限定されるものではなく適宜選択できる。
【0035】
図9を用いて、4本のバーナ15の内、No.1のバーナにスラグが付着した場合の判定手段8の動作を説明する。図9の横軸は時間を示し、区間Aはバーナ15先端にスラグが付着していない通常運転時であり、区間Bは付着したスラグの成長時であり、区間Cはバーナ15における酸素比の上昇時であり、区間Dは付着したスラグの除去時であり、区間Eはスラグの除去完了時であり、区間Fはバーナにおける酸素比の減少時である。図9の縦軸は、(a)はバーナ15先端のスラグの付着量(成長度合)であり、(b)はバーナ15における酸素比であり、(c)はバーナ15における空気の差圧(ΔP0i)であり、(d)は圧力損失係数(β)である。
【0036】
図示のように、バーナ先端にスラグが付着していない区間Aでは、No.1のバーナにおける空気の圧力損失及びβに変化はない。しかし、バーナにスラグが付着・固化して付着量が増加しスラグがバーナ15先端で徐々に成長する区間Bでは、No.1のバーナ15のみ圧力損失及びβが上昇している。これに対し、スラグが付着していないNo.2〜4のバーナ15には圧力損失及びβ2〜4に変化はない。そして、No.1のバーナ15のβが予め入力されたβS1よりも10%上昇すると、区間Cに示すようにNo.1のバーナ15のみ酸素の供給量を増加させて酸素比を高くする。これにより、区間Dに示すように、付着したスラグを減少できる。そして、βの値が低下して区間Eで示すように一定になると、区間Fに示すように酸素の供給量を減らし、酸素比を減少させて区間Aの通常運転時の酸素比に戻す。
【0037】
これによれば、酸素の流量(Q)と密度(ρ)により求めた酸素の圧力損失に相関する物理量で酸素の圧力損失を補正して求めたβとβsiを比較することから、ガス化炉の負荷変化などによる炉内圧力の変動や、酸化剤の供給圧力の変化に対する炉内圧力の変化遅れの影響を低減して、スラグ付着を判定できる。その結果、スラグ付着の判定精度を向上できることから、バーナの閉塞を未然に防止でき、ガス化炉1を安定運転できる。
【0038】
なお、本実施形態では、予め求めておいた酸化剤の密度を判定手段8に入力しているが、これに代えて、酸化剤供給管20に密度計を設けて酸化剤の密度を測定することにより、より正確にβを算出することができる。
【0039】
また、バーナ15の本数は適宜選択でき、例えば、一本とすることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 ガス化炉
8 判定手段
15 バーナ
29 検出器
31 流量計
35 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉壁に設けられ炉内に炭素含有固体原料と酸化剤を噴出するバーナと、該バーナにおける噴出流体の圧力損失を検出する検出器と、該検出器により検出された検出値に基づいて前記バーナの流体噴出口にスラグが付着したことを判定する判定手段と、該判定手段の判定に基づいて付着した前記スラグを除去する除去手段を備え、前記炭素含有固体原料を前記酸化剤で部分燃焼させてガス化するガス化炉において、
前記判定手段は、前記検出器の検出値を補正した検出値と予め設定される判定値とを比較して判定することを特徴とするガス化炉。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化炉において、
前記バーナは前記炉壁に複数設けられ、前記検出器はそれぞれの前記バーナの前記酸化剤の圧力損失を検出し、前記判定手段は、前記検出値が検出した検出値から前記検出値の平均値を求め、前記平均値と各検出値との比を前記予め設定される判定値と比較して判定することを特徴とするガス化炉。
【請求項3】
請求項1に記載のガス化炉において、
前記バーナに供給される前記酸化剤の流量及び密度により求めた圧力損失に相関する物理量と前記検出値との比を前記予め設定される判定値と比較して判定することを特徴とするガス化炉。
【請求項4】
請求項1に記載のガス化炉において、
前記バーナは前記炉壁に複数設けられ、前記炭素含有固体原料は搬送用気体に同伴されて前記炉内に噴出され、前記検出器はそれぞれの前記バーナの前記搬送用気体の圧力損失を検出し、前記判定手段は、前記検出値が検出した検出値から前記検出値の平均値を求め、前記平均値と各検出値との比を前記予め設定される判定値と比較して判定することを特徴とするガス化炉。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のガス化炉において、
前記除去手段は、前記酸化剤の供給量を増加させて前記バーナ近傍の温度を上昇させることを特徴とするガス化炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−21090(P2012−21090A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160830(P2010−160830)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度〜20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、多目的石炭ガス製造技術開発(EAGLE)/パイロット試験設備およびゼロエミッション化技術に関する研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】