説明

ガス化発電プラントの安定運転方法及びガス化発電プラント

【課題】ガス化炉で生成されるガスが燃焼器での燃焼が難しい性状であっても、簡単に燃焼器の保炎が図れるようにする。
【解決手段】バイオマスをガス化するためのガス化炉6と、ガス化炉6からの生成ガスを主燃焼領域に導入するガス入口部41a、及び、主燃焼領域を含む内部空間に分散して空気を導入する空気入口部41bを有する燃焼器14と、を備えたガス化発電プラント1の安定運転方法であって、ガス化炉6からの生成ガスの性状が所定の燃焼条件を満たすときに生成ガスを燃焼器14のガス入口部41aに導き、ガス化炉6からの生成ガスの性状が所定の不燃焼条件を満たすときに生成ガスの全部もしくは一部を燃焼器14の空気入口部41bに導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化炉で発生した生成ガスを燃焼器で燃焼させて発電を行うガス化発電プラントの安定運転方法及びガス化発電プラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオマス等の燃料を用いたガス化発電プラントでは、ガス化炉で燃料をガス化して生成されたガスをガスタービン燃焼器で燃焼させ、タービンを回すことにより発電を行っている。このプラントの起動時には、ガスタービン燃焼器を灯油等の補助燃料で起動し、タービンに連動する圧縮機で圧縮された空気の一部をガス化炉へ送り、ガス化炉の内部温度を燃料がガス化可能となるまで昇温する。
【0003】
このガス化炉の昇温過程においてガス化炉から出される不活性なガスは、ガスタービン燃焼器での燃焼が難しい性状を有しており、このガスをガスタービン燃焼器のガス入口部に導入すると、ガスタービン燃焼器の保炎が難しくなる。また、ガス化炉の昇温過程においてガス化炉から出されるガスを、系外へ煙突から排出するとすれば、圧縮機で圧縮された空気を外部へ捨てることになってエネルギーロスが生じると共に、ガス化炉から出されるガスにバイオマスの燃焼によるCO等が混じっている場合には、インシネレータやガス冷却器等の排ガス処理設備が必要となり、プラントが大型化してコストが増大する。
【0004】
そこで特許文献1には、排ガス処理設備を不要としながらも、ガスタービン燃焼器の保炎を可能とするガス化発電プラントが開示されている。このガス化発電プラントでは、ガスタービン燃焼器において補助燃料用バーナとガス化燃料用バーナとの間に空気ポートを設け、補助燃料用バーナの保炎用空気を確保することで、ガス化燃料用バーナに不活性なガスが導入された場合でも、補助燃料用バーナの失火を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−240128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のガス化発電プラントの場合、ガス化炉からガス化燃料用バーナに導入されるガス量が増加すると、その分だけガスタービン燃焼器の主燃焼領域(一次燃焼領域)の流速が増大する。そうすると、ガスタービン燃焼器の火炎が速い気流に晒されることになるため、燃焼が不安定となって失火につながってしまう。よって、ガス化炉の起動を早めるために、ガス化炉の昇温用空気量を増加させることが難しくなる。また、補助燃料用バーナとガス化燃料用バーナとの間に空気ポートを追加するため、ガスタービン燃焼器を新規に製作する必要が生じると共にガスタービン燃焼器が大型化してしまうことにもなる。
【0007】
そこで本発明は、ガス化炉で生成されるガスが燃焼器での燃焼が難しい性状であっても、簡単に燃焼器の保炎が図れるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係るガス化発電プラントの安定運転方法は、燃料をガス化するためのガス化炉と、前記ガス化炉からの生成ガスを主燃焼領域に導入するガス入口部及び前記主燃焼領域を含む内部空間に分散して空気を導入する空気入口部を有する燃焼器と、を備えたガス化発電プラントの安定運転方法であって、前記ガス化炉からの生成ガスの性状が所定の燃焼条件を満たすときに前記生成ガスを前記燃焼器の前記ガス入口部に導き、前記ガス化炉からの生成ガスの性状が所定の不燃焼条件を満たすときに前記生成ガスの全部もしくは一部を前記燃焼器の前記空気入口部に導くことを特徴とする。
【0009】
前記方法によれば、ガス化炉からの生成ガスの性状が所定の燃焼条件を満たす場合には、生成ガスはガス入口部を介して燃焼器の主燃焼領域に供給され、燃焼器の定常運転が行われる。一方、ガス化炉からの生成ガスの性状が所定の不燃焼条件を満たす場合には、生成ガスの全部もしくは一部は、空気入口部を介して燃焼器の主燃焼領域を含む内部空間に分散して供給される。即ち、所定の不燃焼条件のときには、ガス化炉からの生成ガスは燃焼器の内部空間に分散して導入され、主燃焼領域の一部に集中して生成ガスが供給されることが抑制されることとなる。したがって、ガス化炉からの生成ガスが燃焼器での燃焼が難しい性状であっても、簡単に燃焼器の保炎を図ることができる。
【0010】
また、前記所定の燃焼条件及び前記所定の不燃焼条件は、前記生成ガスの発熱量、ガス成分、温度及び流量のうち少なくとも1つに関する条件であってもよい。
【0011】
また、前記ガス化発電プラントの起動時において、前記ガス化炉からの生成ガスの性状が前記所定の燃焼条件に達するまでは前記生成ガスの全部もしくは一部を前記燃焼器の前記空気入口部に導き、前記ガス化炉からの生成ガスの性状が前記所定の燃焼条件に達すると前記生成ガスを前記燃焼器の前記ガス入口部に導いてもよい。
【0012】
本発明のガス化発電プラントは、燃料をガス化するためのガス化炉と、前記ガス化炉からの生成ガスを主燃焼領域に導入するガス入口部及び前記主燃焼領域を含む内部空間に分散して空気を導入する空気入口部を有する燃焼器と、前記ガス化炉からの生成ガスを前記燃焼器の前記ガス入口部に導く第1生成ガス管と、前記ガス化炉からの生成ガスを前記燃焼器の前記空気入口部に導く第2生成ガス管と、前記第1生成ガス管の流路を開閉可能な第1生成ガス弁と、前記第2生成ガス管の流路を開閉可能な第2生成ガス弁と、前記ガス化炉からの生成ガスの性状を検出可能なセンサと、前記センサの出力に基づいて前記第1生成ガス弁及び第2生成ガス弁を開閉可能な制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記センサの出力により前記ガス化炉からの生成ガスの性状が所定の燃焼条件を満たすと判断したときに前記第1生成ガス弁を開いて前記第2生成ガス弁を閉じ、前記センサの出力により前記ガス化炉からの生成ガスの性状が所定の不燃焼条件を満たすと判断したときに前記第2生成ガス弁を開くことを特徴とする。
【0013】
前記構成によれば、前記同様に、ガス化炉からの生成ガスの性状が所定の燃焼条件を満たす場合には、生成ガスはガス入口部を介して燃焼器の主燃焼領域に供給され、燃焼器の定常運転が行われる。一方、ガス化炉からの生成ガスの性状が所定の不燃焼条件を満たす場合には、生成ガスは空気入口部を介して主燃焼領域を含む内部空間に分散して供給される。即ち、所定の不燃焼条件のときには、ガス化炉からの生成ガスは燃焼器の内部空間に分散して導入され、主燃焼領域の一部に集中して生成ガスが供給されることが抑制されることとなる。したがって、ガス化炉からの生成ガスが燃焼器での燃焼が難しい性状であっても、簡単に燃焼器の保炎を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ガス化炉からの生成ガスが燃焼器での燃焼が難しい性状であっても、簡単に燃焼器の保炎を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るガス化発電プラントを示す系統図である。
【図2】図1に示すガス化発電プラントのガスタービン燃焼器及びその近傍を表した一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係るガス化発電プラント1を示す系統図である。図1に示すように、ガス化発電プラント1は、バイオマス等の燃料(例えば、木質バイオマス)をガス化炉6へ供給する供給機構2をもち、ガス化炉6へ供給された燃料は、適切な温度・圧力下にて反応してガス化する。
【0018】
ガス化炉6で発生した生成ガスは、共通生成ガス管9に導かれる。共通生成ガス管9には、ガス化炉6からの生成ガスの性状を検出可能なセンサとして、温度センサ30及び流量センサ31が接続されている。温度センサ30は、共通生成ガス管9の内部の流路を流れる生成ガスの温度を検出可能となっている。流量センサ31は、共通生成ガス管9の内部の流路を流れる生成ガスの流量を検出可能となっている。それらセンサ30,31には制御装置29が接続されており、各センサ30,31の出力が制御装置29に入力されるように構成されている。
【0019】
共通生成ガス管9は、その下流側において第1生成ガス管10と第2生成ガス管12とに分岐している。第1生成ガス管10の下流側は、ガスタービン燃焼器14の後述するガス入口部41a(図2参照)に接続されており、ガス化炉6で発生した生成ガスが、第1生成ガス管10によりガスタービン燃焼器14のガス入口部41a(図2参照)に導入可能となっている。第1生成ガス管10には、その流路を開閉可能な第1生成ガス弁11が設けられている。
【0020】
第2生成ガス管12の下流側は、ガスタービン燃焼器14の後述する空気入口部41bに接続された第1空気管19に合流接続されており、ガス化炉6で発生した生成ガスが、第2生成ガス管12によりガスタービン燃焼器14の空気入口部41b(図2参照)に導入可能となっている。第2生成ガス管12には、その流路を開閉可能な第2生成ガス弁13が設けられている。そして、制御装置29は、温度センサ30及び/又は流量センサ31の出力に基づいて第1生成ガス弁11及び第2生成ガス弁13を開閉制御できるようになっている。
【0021】
ガスタービン燃焼器14は、タービン15に接続されており、ガスタービン燃焼器14からの高温高圧の排ガスがタービン15に導入される構成となっている。タービン15には、圧縮機16が接続されており、タービン15の回転に連動して圧縮機16が動作する構成となっている。また、タービン15には、発電機17も接続されており、タービン15の回転に連動して発電機17が動作して発電が行われる構成となっている。
【0022】
圧縮機16で圧縮された高温高圧の空気は、共通空気管18に導かれる。共通空気管18は、その下流側において第1空気管19と第2空気管21とに分岐している。第1空気管19の下流側は、ガスタービン燃焼器14の後述する空気入口部41b(図2参照)に接続されており、圧縮機16で圧縮された空気が、第1空気管19によりガスタービン燃焼器14の空気入口部41b(図2参照)に導入可能となっている。第1空気管19には、その流路を開閉可能な第1空気弁20が設けられている。
【0023】
第2空気管21の下流側は、ガス化炉6の下部に接続されており、圧縮機16で圧縮された空気が、ガス化炉6に供給されるように構成されている。第2空気管21には、その流路を開閉可能な第2空気弁22が設けられている。タービン15から排出された排ガスは、煙突28から外部に排出される。
【0024】
図2は図1に示すガス化発電プラント1のガスタービン燃焼器14及びその近傍を表した一部断面図である。図2に示すように、ガスタービン燃焼器14は、生成ガス及び空気の流路を形成する外殻41と、外殻41の内部に配置されて燃焼空間を含む内部空間50を形成する内殻42とを備えている。外殻41には、その長手方向の一端部に補助燃料吐出装置43が設けられている。補助燃料吐出装置43は、その長手方向の一端が外殻41の外部に配置されている一方、その他端が外殻41を貫通して内殻42の一端部の中央に配置されている。その補助燃料吐出装置43の他端には、ノズル43aが設けられており、補助燃料吐出装置43に外部から供給された灯油等の補助燃料は、ノズル43aにより内殻42内の内部空間50の主燃焼領域に吐出可能となっている。
【0025】
内殻42は、その一端開口においてノズル43a、生成ガス供給口46及び空気供給口49が設けられ、側面部において周方向に間隔をあけて且つ長手方向(流れ方向)に間隔をあけて、複数の空気流入孔42aが並ぶように形成されている。また、内殻42の下流側は、タービン15(図1参照)に接続されている。
【0026】
内殻42の内部空間は、ノズル43aに隣接した主燃焼領域(一次燃焼領域)と、その主燃焼領域の下流側に隣接した二次燃焼領域と、その二次燃焼領域の下流側に隣接した希釈領域とを有している。主燃焼領域は、内殻42の内部空間50の最も上流側にあり、ノズル43aから吐出された補助燃料や生成ガス供給口46から流入した生成ガスが先ず初めに着火して火炎を形成する領域である。二次燃焼領域は、主燃焼領域を通過した未燃の補助燃料や生成ガスが遅れて着火する領域である。希釈領域は、主燃焼領域及び二次燃焼領域で発生した排ガスに空気が混合される領域である。
【0027】
外殻41の一端部には、ガス入口部41aが設けられている。このガス入口部41aには、前述した第1生成ガス管10が接続されている。ガス入口部41aは、補助燃料吐出装置43に沿って形成された生成ガス流路45を介して生成ガス供給口46に連通している。生成ガス供給口46は、内殻42の一端部においてノズル43aの周囲に配置されている。即ち、ガス入口部41aに流入した生成ガスは、生成ガス流路45及び生成ガス供給口46を介して内部空間50の主燃焼領域に導かれることとなる。
【0028】
外殻41の他端部には、空気入口部41bが設けられている。この空気入口部41bには、前述した第1空気管19が接続されている。内殻42と外殻41との間には、空気流路48が形成されている。そして、空気入口部41bは、空気流路48に連通し、その空気流路48は内殻42の側面部の複数の空気流入孔42a及び空気供給口49に連通している。空気供給口49は、内殻42の一端部において生成ガス供給口46の周囲に配置されている。なお、生成ガス供給口46と空気供給口49との位置関係は、この形態に限られず、たとえば周方向に交互に配置される構成としてもよい。
【0029】
圧縮機16からの空気は、空気入口部41bから空気流路48に導入される。空気流路48の空気の一部は、まず、内殻42の側面部の複数の空気流入孔42aを介して内部空間50の全体に分散して流入する。残りの空気は、空気供給口49を介して主燃焼領域に流入する。つまり、空気入口部41bからの空気は、内部空間50に対して流れ方向に分散して導入される。
【0030】
以上のような構成のガスタービン燃焼器14は、生成ガス供給口46から流入する生成ガスの発熱量、温度及び流量が所定の設計値(例えば、生成ガスの発熱量:1000kcal/Nm3、温度:500℃、流量:700Nm3/h)のときに適切な燃焼が行われるように設計されている。
【0031】
次に、ガス化発電プラント1の動作について説明する。ガス化発電プラント1の起動時には、補助燃料吐出装置43を用いてガスタービン燃焼器14を始動させ、圧縮機16からの高温の圧縮空気をガス化炉6に導き、ガス化炉6の内部温度が燃料の発火温度に達するまでガス化炉6を昇温する。
【0032】
このときの共通生成ガス管9における生成ガスの性状(例えば、熱量:0kcal/Nm3、温度:100〜320℃、流量:1000Nm3/h)は、ガスタービン燃焼器14での燃焼が適切に行われる設計値とは異なる。具体的には、このときに温度センサ30で検出される温度は、ガスタービン燃焼器14が保炎される所定の燃焼条件(所定の目標温度以上)に達しておらず、燃焼に不適であると推測される。言い換えると、このときに温度センサ30で検出される温度は、ガスタービン燃焼器14が消炎しうる所定の不燃焼条件(所定の目標温度未満)を満たすこととなる。このようなときには、制御装置29は、第1生成ガス弁11が閉じて第2生成ガス弁13が開いた状態となるように制御を行う。なお、第1生成ガス弁11及び第2生成ガス弁13を開度調整可能な弁とし、生成ガスの性状が所定の不燃焼状態のときには、第2生成ガス弁13を開くとともに第1生成ガス弁11を完全に閉じずに開度を調節し、生成ガスを第1生成ガス弁11及び第2生成ガス弁13の両方を通過させる(即ち、生成ガスの一部を第2生成ガス弁13側に導く)ようにしてもよい。
【0033】
次いで、ガス化炉6内に燃料を供給し、ガス化炉6内で燃焼させることにより、ガス化炉6をさらに昇温する。このときの共通生成ガス管9における生成ガスの性状(例えば、発熱量:0kcal/Nm3、温度:320〜650℃、流量:700Nm3/h)も、前記同様に、ガスタービン燃焼器14での燃焼が適切に行われる設計値とは異なるので、制御装置29は、第1生成ガス弁11が閉じて第2生成ガス弁13が開いた状態(又は、第1生成ガス弁11及び第2生成ガス弁13の両方が開いた状態)を維持するように制御を行う。
【0034】
第1生成ガス弁11及び第2生成ガス弁13が前記した状態では、ガス化炉6からの生成ガスの全部もしくは一部は、第1空気管19において圧縮機16からの空気と合流する。圧縮機16からの空気(例えば、流量:5000Nm3/h)は、ガス化炉6からの生成ガスに比べて流量が多く、互いが合流することで生成ガスは圧縮機16からの空気に希釈される。そして、その希釈された生成ガスは、ガスタービン燃焼器14の空気入口部41bに導入される(図2参照)。そして、その導入された生成ガスは、ガスタービン燃焼器14において空気流路48を通って燃焼器14の内殻42の内部空間50の全体に分配される。その結果、空気入口部41bに導入された生成ガスのうちの一部(例えば、二割程度)のみが主燃焼領域に流入することとなる。
【0035】
次いで、制御装置29は、温度センサ30で検出される温度が所定の目標温度に達したことを検出すると、生成ガスの性状が所定の燃焼条件を満たすと判断し、第2生成ガス弁13を閉じ且つ第1生成ガス弁11を開く。これにより、ガス化炉6で発生した生成ガスの全部が、ガスタービン燃焼器14においてガス入口部41a、生成ガス流路45及び生成ガス供給口46を通って、主燃焼領域に供給されることとなる。
【0036】
以上に説明したガス化発電プラント1によれば、ガス化炉6からの生成ガスの性状が所定の燃焼条件を満たす場合には、生成ガスはガス入口部41aを介してガスタービン燃焼器14の主燃焼領域に供給され、ガスタービン燃焼器14の定常運転が行われる。一方、ガス化炉6からの生成ガスの性状が所定の不燃焼条件を満たす場合には、生成ガスは空気入口部41bを介してガスタービン燃焼器14の内部空間50の全体に分散して供給される。即ち、主燃焼領域にはガス化炉6からの生成ガスの一部のみが供給され、主燃焼領域に供給される生成ガス量が抑制されることとなる。したがって、ガス化炉6からの生成ガスがガスタービン燃焼器14での燃焼が難しい性状であっても、簡単にガスタービン燃焼器14の保炎を図ることができる。
【0037】
また、空気入口部41bに導入された生成ガスは、周方向に均一に空気流路48へと流れるため、ガスタービン燃焼器14内で生成ガスが周方向に不均一に分布することもなく、排ガス温度の周方向分布が不均一となることが抑制される。よって、排ガス温度の不均一により発生する下流にあるタービン15の局所的な温度上昇による焼損を回避することができる。
【0038】
さらに、本発明のガス化発電プラント1では、ガス化炉6からの生成ガスをガスタービン燃焼器14の空気入口部41bに導く第2生成ガス管12と、第2生成ガス管12の流路を開閉可能な第2生成ガス弁13とを設けるだけで、既存のガスタービン燃焼器14を使用することができ、あらゆる構造の燃焼器に適用することも可能となる。
【0039】
なお、前述した実施形態では、第1生成ガス弁11及び第2生成ガス弁13の操作を制御装置29によって自動的に行っているが、オペレータにより手動で操作してもよい。また、前述した実施形態では、燃焼器としてガスタービン燃焼器14を用いているが、他の方式の燃焼器であってもよい。また、前述した実施形態では、第1生成ガス弁11及び第2生成ガス弁13の開閉はガス化発電プラント1の起動時に実施しているが、それ以外の状態(例えば、停止時や通常稼動時)に実施してもよい。
【0040】
また、前述した実施形態では、生成ガスの温度に基づいて第1生成ガス弁11及び第2生成ガス弁13の開閉を行っているが、生成ガスの発熱量やガス成分や流量に基づいて行ってもよい。例えば、生成ガスの発熱量が所定値以上である場合には、生成ガスを燃焼器のガス入口部を介して主燃焼領域に供給し、生成ガスの発熱量が所定値未満である場合には、生成ガスを燃焼器の空気入口部を介して内部空間50の全体に分散して供給するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明に係るガス化発電プラントの安定運転方法及びガス化発電プラントは、ガス化炉からの生成ガスが燃焼器での燃焼が難しい性状であっても簡単に燃焼器の保炎を図ることができる優れた効果を有し、この効果の意義を発揮できるバイオマス流動層ガス化発電プラント等に広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0042】
1 ガス化発電プラント
3 燃料
6 ガス化炉
10 第1生成ガス管
11 第1生成ガス弁
12 第2生成ガス管
13 第2生成ガス弁
14 ガスタービン燃焼器
29 制御装置
30 温度センサ
31 流量センサ
41a ガス入口部
41b 空気入口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料をガス化するためのガス化炉と、前記ガス化炉からの生成ガスを主燃焼領域に導入するガス入口部及び前記主燃焼領域を含む内部空間に分散して空気を導入する空気入口部を有する燃焼器と、を備えたガス化発電プラントの安定運転方法であって、
前記ガス化炉からの生成ガスの性状が所定の燃焼条件を満たすときに前記生成ガスを前記燃焼器の前記ガス入口部に導き、
前記ガス化炉からの生成ガスの性状が所定の不燃焼条件を満たすときに前記生成ガスの全部もしくは一部を前記燃焼器の前記空気入口部に導くことを特徴とするガス化発電プラントの安定運転方法。
【請求項2】
前記所定の燃焼条件及び不燃焼条件は、前記生成ガスの発熱量、ガス成分、温度及び流量のうち少なくとも1つに関する条件であることを特徴とする請求項1に記載のガス化発電プラントの安定運転方法。
【請求項3】
前記ガス化発電プラントの起動時において、前記ガス化炉からの生成ガスの性状が前記所定の燃焼条件に達するまでは前記生成ガスの全部もしくは一部を前記燃焼器の前記空気入口部に導き、前記ガス化炉からの生成ガスの性状が前記所定の燃焼条件に達すると前記生成ガスを前記燃焼器の前記ガス入口部に導くことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス化発電プラントの安定運転方法。
【請求項4】
燃料をガス化するためのガス化炉と、
前記ガス化炉からの生成ガスを主燃焼領域に導入するガス入口部及び主燃焼領域を含む内部空間に分散して空気を導入する空気入口部を有する燃焼器と、
前記ガス化炉からの生成ガスを前記燃焼器の前記ガス入口部に導く第1生成ガス管と、
前記ガス化炉からの生成ガスを前記燃焼器の前記空気入口部に導く第2生成ガス管と、
前記第1生成ガス管の流路を開閉可能な第1生成ガス弁と、
前記第2生成ガス管の流路を開閉可能な第2生成ガス弁と、
前記ガス化炉からの生成ガスの性状を検出可能なセンサと、
前記センサの出力に基づいて前記第1生成ガス弁及び第2生成ガス弁を開閉可能な制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記センサの出力により前記ガス化炉からの生成ガスの性状が所定の燃焼条件を満たすと判断したときに前記第1生成ガス弁を開いて前記第2生成ガス弁を閉じ、前記センサの出力により前記ガス化炉からの生成ガスの性状が所定の不燃焼条件を満たすと判断したときに前記第2生成ガス弁を開くことを特徴とするガス化発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−168951(P2010−168951A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10891(P2009−10891)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構、バイオマスエネルギー地域システム化実験事業 高知県仁淀川流域エネルギー自給システムの構築において考案された発明であり、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(308007505)カワサキプラントシステムズ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】