説明

ガス化複合発電システムにおける空気圧力制御装置

【課題】ガス化炉の要求負荷が変動した非定常状態においても、安定した空気供給をする。
【解決手段】ガスタービン5の空気圧縮機5-2から抽気した空気aを、入口案内ベーン6-1を介して昇圧機6に取り込む。昇圧機6にて圧縮した空気を、空気供給弁2を介してガス化炉1に供給している。空気圧力制御器100は、フィードバック制御による入口案内ベーン6-1の開度制御の外に、ガス化炉負荷指令GIDが変化すると、この変化に応じて直ちに入口案内ベーン6-1の開度を先行的に制御している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化複合発電システムにおける空気圧力制御装置に関し、ガス化炉の負荷が変動した非定常状態においても、昇圧機からガス化炉に供給している空気の圧力を安定化させるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
既存の微粉炭焚きの石炭火力発電に比べて、発電効率や環境性に優れた発電技術として、石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)システムがある。
【0003】
ここで石炭ガス化複合発電システムの概要を、図4を参照して説明する。図4に示すように、ガス化炉1には、空気供給弁2を介して空気aが供給されると共に、フィーダ3により石炭(微粉炭)bが供給される。このガス化炉1は、石炭bを酸化剤である空気aにより燃焼させることにより、石炭ガスcを生成する。
【0004】
生成された石炭ガスcはガス精製設備4にて、冷却・脱塵・脱硫等の精製処理が行われて燃料ガスdとなる。この燃料ガスdは、ガスタービン5の燃焼器5−1に供給される。燃焼器5−1では、空気圧縮機5−2にて圧縮された空気と燃料ガスdとを燃焼させて、高温・高圧の燃焼ガスを発生させる。この燃焼ガスがタービン5−3に供給されてタービン5−3が回転駆動する。
【0005】
空気圧縮機5−2から抽気した空気aは昇圧機6にて昇圧されてから、ガス化炉1に供給される。昇圧機6には入口案内ベーン6−1が備えられている。また、昇圧機6には、昇圧機出口から昇圧機入口に空気をフィードバックする再循環配管6−2が備えられており、この再循環配管6−2には再循環弁6−3が介装されている。
【0006】
圧縮機6は、空気圧縮機5−2から抽気した空気を、入口案内ベーン6−1を介して取り込む。そして、取り込んだ空気を圧縮して吐出する。圧縮機6から吐出された圧縮した空気は、空気供給弁2が介装された空気経路を介してガス化炉1に供給される。なお、空気供給弁2の開度は、後述するように、ガス化炉1の負荷に応じて制御されている。
【0007】
一方、ガスタービン5のタービン5−3から排出された排ガスeは、排熱回収ボイラ7により熱回収され、この排熱回収ボイラ7では蒸気fを発生する。この蒸気fは蒸気タービン8に供給されてこの蒸気タービン8を回転する。
【0008】
ガスタービン5のタービン5−3及び蒸気タービン8の回転により、発電機(図示省略)を回転させることにより発電を行う。
【0009】
次に、このような構成となっているガス化複合発電システムにおける、従来の空気圧力制御装置を説明する。
【0010】
従来では、昇圧機6の出口から吐出されてガス化炉1に供給する空気aの圧力を検出する。そして、検出した圧力が、予め決めた一定値になるように、入口案内ベーン6−1の開度を調整していた。
または、検出した空気aの圧力が、ガス化炉負荷に応じた設定圧力(設定値)になるように、入口案内ベーン6−1の開度を調整していた。なお「ガス化炉負荷」とは、ガス化炉1に投入される燃料要求量に応じた負荷を意味する。
【0011】
つまり、昇圧機6の出口から吐出した空気aの圧力が、一定値または設定値になるように、入口案内ベーン6−1の開度をフィードバック制御していた。
換言すると、昇圧機6の出口側での空気aの空気圧力が、一定値(または設定値)から変動したら、この変動を検出し、出口側での空気圧力が一定値(または設定値)に戻るように、入口案内ベーン6−1の開度を調整して入口側から昇圧機6に取り込まれる空気量を調整するように、フィードバック制御をしていた。
【0012】
なお、空気aの流量が小流量のときには、昇圧機6のサージ防止を図るため、再循環弁6−3の弁開度を制御して、昇圧機6の出口から入口に戻る再循環空気量の調整をしていた。
【0013】
【特許文献1】特開平9−96227
【特許文献2】特開平6−288262
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところでガス化炉1の負荷(ガス化炉負荷)が変動したときには、この変動に併せて空気供給弁2の開度と、フィーダ3による石炭bの供給量が調整されている。
例えばガス化炉負荷が増加したときには、フィーダ3からガス化炉1に供給される石炭bの量が増加するようにフィーダ3が制御されると共に、ガス化炉1に供給される空気量が増加するように空気供給弁2の開度が制御される。
逆に、ガス化炉負荷が減少したときには、フィーダ3からガス化炉1に供給される石炭bの量が減少するようにフィーダ3が制御されると共に、ガス化炉1に供給される空気量が減少するように空気供給弁2の開度が制御される。
【0015】
ガス化炉負荷が増加して空気供給弁2の開度が大きくなり、ガス化炉1に供給される空気aの量が増加すると、昇圧機6の出口側での空気圧が低下する。従来の制御手法では、この空気圧低下を検出してから、入口案内ベーン6−1を開くようにフィードバック制御して、昇圧機6の出口側での空気圧を、一定値(または設定値)に戻していた。
また、ガス化炉負荷が減少して空気供給弁2の開度が小さくなり、ガス化炉1に供給される空気aの量が減少すると、昇圧機6の出口側での空気圧が上昇する。従来の制御手法では、この空気圧上昇を検出してから、入口案内ベーン6−1を絞るようにフィードバック制御して、昇圧機6の出口側での空気圧を、一定値(または設定値)に戻していた。
【0016】
このように従来では、ガス化炉負荷が変動したときには、このガス化炉負荷の変動により昇圧機6の出口側での空気圧が実際に変動してから、入口案内ベーン6−1のフィードバック制御をしていたため、ガス化炉負荷の変動に対して、昇圧機6の出口側での空気圧の制御の追従が遅れていた。
【0017】
この結果、ガス化炉負荷が変動した非定常時には、この変動に応じてガス化炉1が必要とする空気量(要求空気量)に対して、実際にガス化炉1に供給される空気量(供給空気量)が、過少になったり(ガス化炉負荷が増加したとき)、過大になったり(ガス化炉負荷が減少したとき)することがあり、一時的にガス化炉1への供給空気量が不足(または過剰)になり、空気供給が不安定になる可能性があった。
【0018】
本発明は、上記従来技術に鑑み、ガス化炉の負荷が変動した非定常状態においても、安定した圧力でガス化炉に空気を供給することができる、ガス化複合発電システムにおける空気圧力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決する本発明の構成は、
石炭と空気が供給されると石炭ガスを生成するガス化炉と、
前記ガス化炉にて生成された石炭ガスを精製した燃料ガスを燃焼して駆動するガスタービンと、
前記ガスタービンの空気圧縮機から抽気した空気を、入口案内ベーンを介して取り込み、取り込んだ空気を圧縮して吐出する昇圧機と、
前記ガス化炉の要求負荷に応じた流量となるよう開度が調整される弁であって、前記昇圧機から吐出された空気を前記ガス化炉に供給する空気供給経路に介装された空気供給弁とを有するガス化複合発電設備において、
前記昇圧機の入口側での空気の温度を検出する入口温度計と、
前記昇圧機の入口側での空気の圧力を検出する入口圧力計と、
前記入口案内ベーンの開度を調整する空気圧力制御器とを有し、
前記空気圧力制御器は、
前記ガス化炉の要求負荷を示すガス化炉負荷指令と、前記入口温度計にて検出した入口温度と、前記入口圧力計で検出した入口圧力とから、前記要求負荷を満たすために必要な空気体積流量を求める空気体積流量演算手段と、
前記ガス化炉負荷指令から前記要求負荷を満たすために必要な空気の設定圧力を求めると共に、この設定圧力と前記入口圧力から昇圧機圧力比を求める圧力比演算手段と、
前記空気体積流量と前記昇圧機圧力比をパラメータとして、空気体積流量と昇圧機圧力比を満足する前記入口案内ベーンの開度を設定する関数が予め設定されており、前記空気体積流量と前記昇圧機圧力比が入力されると前記関数を参照して入口案内ベーンの開度を示す先行開度指令を出力する先行開度指令演算部とを有し、
前記先行開度指令で示す開度となるように、前記入口案内ベーンの開度を制御することを特徴とする。
【0020】
また本発明の構成は、
石炭と空気が供給されると石炭ガスを生成するガス化炉と、
前記ガス化炉にて生成された石炭ガスを精製した燃料ガスを燃焼して駆動するガスタービンと、
前記ガスタービンの空気圧縮機から抽気した空気を、入口案内ベーンを介して取り込み、取り込んだ空気を圧縮して吐出する昇圧機と、
前記ガス化炉の要求負荷に応じた流量となるよう開度が調整される弁であって、前記昇圧機から吐出された空気を前記ガス化炉に供給する空気供給経路に介装された空気供給弁とを有するガス化複合発電設備において、
前記昇圧機の入口側での空気の温度を検出する入口温度計と、
前記昇圧機の入口側での空気の圧力を検出する入口圧力計と、
前記入口案内ベーンの開度を調整する空気圧力制御器とを有し、
前記空気圧力制御器は、
前記ガス化炉の要求負荷を示すガス化炉負荷指令から、前記要求負荷を満たすために必要な空気重量流量を求める空気重量流量演算部と、
前記入口温度計にて検出した入口温度と、前記入口圧力計で検出した入口圧力とから、入口空気密度を検出する入口空気密度演算部と、
前記空気重量流量を前記入口空気密度で除算することにより、空気体積流量を演算する第1の割算部と、
前記ガス化炉負荷指令から前記要求負荷を満たすために必要な空気の設定圧力を求める設定圧力演算部と、
前記設定圧力を前記入口圧力で除算することにより昇圧機圧力比を求める第2の割算部と、
前記空気体積流量と前記昇圧機圧力比をパラメータとして、空気体積流量と昇圧機圧力比を満足する前記入口案内ベーンの開度を設定する関数が予め設定されており、前記空気体積流量と前記昇圧機圧力比が入力されると前記関数を参照して入口案内ベーンの開度を示す先行開度指令を出力する先行開度指令演算部とを有し、
前記先行開度指令で示す開度となるように、前記入口案内ベーンの開度を制御することを特徴とする。
【0021】
また本発明の構成は、
前記昇圧機の出口側での空気の圧力を検出する出口圧力計を更に備え、
前記空気圧力制御器は、
前記出口圧力計で検出した出口圧力と、前記設定圧力との偏差をゼロとするフィードバック開度指令を演算するフィードバック開度指令演算手段を有し、
前記先行開度指令と前記フィードバック開度指令とを加算した指令で示す開度となるように、前記入口案内ベーンの開度を制御することを特徴とする。
【0022】
また本発明の構成は、
石炭と空気が供給されると石炭ガスを生成するガス化炉と、
前記ガス化炉にて生成された石炭ガスを精製した燃料ガスを燃焼して駆動するガスタービンと、
前記ガスタービンの空気圧縮機から抽気した空気を、入口案内ベーンを介して取り込み、取り込んだ空気を圧縮して吐出する昇圧機と、
前記ガス化炉の要求負荷に応じた流量となるよう開度が調整される弁であって、前記昇圧機から吐出された空気を前記ガス化炉に供給する空気供給経路に介装された空気供給弁とを有するガス化複合発電設備において、
前記入口案内ベーンの開度を調整する空気圧力制御器を有し、
前記空気圧力制御器は、
前記ガス化炉の要求負荷を示すガス化炉負荷指令と、前記要求負荷を満たすために必要な前記入口案内ベーンの開度を設定する関数が予め設定されており、前記ガス化炉負荷指令が入力されると前記関数を参照して入口案内ベーンの開度を示す先行開度指令を出力する先行開度指令演算部を有し、
前記先行開度指令で示す開度となるように、前記入口案内ベーンの開度を制御することを特徴とする。
【0023】
また本発明の構成は、
前記昇圧機の出口側での空気の圧力を検出する出口圧力計を更に備え、
前記空気圧力制御器は、
前記出口圧力計で検出した出口圧力と、前記設定圧力との偏差をゼロとするフィードバック開度指令を演算するフィードバック開度指令演算手段を有し、
前記先行開度指令と前記フィードバック開度指令とを加算した指令で示す開度となるように、前記入口案内ベーンの開度を制御することを特徴とする。
なお、本発明は、起動過程においてガスタービンが灯油燃料にて運転されている場合にも適用できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ガス化炉負荷指令が変更されると、この変更値に応じて直ちに値が変化する先行開度指令を求め、この先行開度指令に基づき、昇圧機の入口案内ベーンの開度制御をする。この結果、昇圧機の出口側での空気の圧力と設定圧力との間に実際に差が生ずるのに先行して、入口案内ベーンの開度制御をすることができるため、ガス化炉の負荷が変動した非定常状態においても、昇圧機からガス化炉に供給している空気の圧力を安定化して、安定した空気の供給ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は本発明の実施例1に係る空気圧力制御装置を適用した、ガス化複合発電システムを示す。ガス化複合発電システム自体のシステム構成は、図4に示す従来技術と同じであるため、同一機能を果たす部分には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0027】
図1に示すように、空気圧縮機5−2から昇圧機6に空気aを供給する空気経路には、入口温度計51と、入口圧力計52が備えられている。入口温度計51は、昇圧機6の入口側での空気aの温度(入口温度)T1を検出し、入口圧力計52は、昇圧機6の入口側での空気aの圧力(入口圧力)P1を検出する。
【0028】
昇圧機6から空気供給弁2を介してガス化炉1に空気aを供給する空気経路には、出口圧力計53が備えられている。出口圧力計53は、昇圧機6の出口側での空気aの圧力(出口圧力)P2を検出する。
【0029】
ガス化炉負荷指令器60は、ガス化炉負荷指令GID(Gasifier Input Demand)を出力する。ガス化炉負荷指令GIDの値は、ガス化炉1とガスタービン5とが協調運転しているときには、ガスタービン5の負荷に対応した値となっており、協調運転していないときには、操作者により設定される。
【0030】
ガス化炉負荷指令GIDはガス化炉1の要求負荷を示すものである。このガス化炉負荷指令GIDが大きくなったときには、フィーダ3によりガス化炉1に供給される石炭bの量が増加すると共に、空気供給弁2の開度が大きくなりガス化炉1に供給される空気aの空気量が増加する。一方、ガス化炉負荷指令GIDが小さくなったときには、フィーダ3によりガス化炉1に供給される石炭bの量が減少すると共に、空気供給弁2の開度が小さくなりガス化炉1に供給される空気aの空気量が減少する。この制御自体は、図示しない制御部より、従来から行われていたものである。
【0031】
空気圧力制御器100は、ガス化炉負荷指令GID、入口温度計51で検出した入口温度T1、入口圧力計52で検出した入口圧力P1、出口圧力計53で検出した出口圧力P2が入力されると、これらデータを基に、入口案内ベーン6−1の開度を制御する。
【0032】
ここで、空気圧力制御器100の機能構成と制御動作を、図2を参照して説明する。この空気圧力制御器100の空気重量流量演算部101には、ガス化炉負荷指令GIDと空気要求量(ガス化炉1が要求する空気重量)との関係を示す関数が予め設定されている。この関数は、ガス化炉1の特性によって予め決まっている。そして、空気重量流量演算部101は、ガス化炉負荷指令GIDが入力されると、前記関数を参照して、ガス化炉負荷指令GIDの値に応じた値となっている空気重量流量F1を求めて出力する。この空気重量流量F1は、ガス化炉1の要求負荷を満たすに必要な空気重量流量である。
【0033】
入口空気密度演算部102は、入口温度計51で検出した入口温度T1と、入口圧力計52で検出した入口圧力P1を、下式(1)に代入することにより、昇圧機6の入口での空気密度を示す入口空気密度γを求めて出力する。
γ(P1,T1)=1.29×(P1/Patm)×(2/3(273+T1))
ただし、Patmは標準気圧である。
【0034】
割算部103は、空気重量流量F1を入口空気密度γで除算することにより、空気体積流量F2(=F1/γ)を求めて出力する。
【0035】
設定圧力演算部104には、ガス化炉負荷指令GIDと昇圧機6の出口側での設定圧力との関係を示す関数が予め設定されている。この関数は、ガス化炉1の特性によって予めきまっている。そして、設定圧力演算部104は、ガス化炉負荷指令GIDが入力されると、前記関数を参照し、ガス化炉負荷指令GIDの値に応じた値となっている設定圧力P3を求めて出力する。この設定圧力P3は、ガス化炉1の要求負荷を満たすために必要な空気の圧力(設定圧力)である。
【0036】
本例では、設定圧力P3は、前記関数を参照してガス化炉負荷指令GIDの値に応じて変動するが、ガス化炉1をガスタービン5と協調運転しないときなどでは、設定圧力P3の値を、予め決めた一定値とすることもある。
【0037】
割算部105は、設定圧力演算部104から出力された設定圧力P3を、入口圧力計52で検出した入口圧力P1で除算することにより、昇圧機圧力比P3/P1を求めて出力する。
【0038】
先行開度指令演算部106は、空気体積流量F2と圧力比P3/P1をパラメータとして、両パラメータ値(F2の値と、P3/P1の値)を満足するように、昇圧機6の入口案内ベーン6−1の開度(IGV開度)を決定する関数が予め設定されている。この関数は、昇圧機6の特性によって予め決まっている。そして、先行開度指令演算部106は、空気体積流量F2と圧力比P3/P1が入力されると、両パラメータ値(F2の値と、P3/P1の値)を満足するIGV開度を決定し、この決定したIGV開度を示す先行開度指令αを出力する。
【0039】
なお、図2中に示すように、先行開度指令演算部106のブロック中には、入力案内ベーン(IGV)6の開度が100%と50%と0%の特性のみを図示しているが、実際には、例えば1%毎のIGV開度の特性が記憶・設定されている。
【0040】
偏差演算部107は設定圧力P3と、出口圧力計53で検出した出口圧力P2との偏差を求めて、偏差圧力PΔを出力する。
比例・積分演算部108は、偏差圧力PΔを比例・積分演算してフィードバック開度指令βを出力する。
【0041】
加算部109は、先行開度指令演算部106から出力された先行開度指令αと、フィードバッグ開度指令βを加算して、開度指令θを出力する。
入口案内ベーン6−1は、開度指令θで示す開度になるように、開度が調整される。
【0042】
このとき、先行開度指令αは、ガス化炉負荷指令GIDの値が変化すると、直ちに、このGIDの変化に対応する値だけ変化する。
一方、フィードバック開度指令βは、ガス化炉負荷指令GIDの値が変化することに伴い設定圧力P3が変化したときに、昇圧機6の出口側の空気圧力である出口圧力P2と、変化した設定圧力P3との間に実際に圧力差が発生してから、この圧力差に応じた値だけ変化する。
【0043】
したがって、ガス化炉負荷指令GIDが変化したときには、開度指令θのうち、先行開度指令αの制御要素により先行的に入口案内ベーン6−1の開度調整がされる。この結果、ガス化炉負荷指令GIDの値が変化した非定常状態においても、入口案内ベーン6−1の開度が迅速に最適開度に変更される結果、非定常状態においても、昇圧機6からガス化炉1への空気供給を安定して行うことができる。つまり、非定常状態においても、過不足なく昇圧機6からガス化炉1に最適量の空気を供給することができる。
【0044】
なお上記実施例では、先行開度指令αとフィードバック開度指令βを加算した開度指令θにより入口案内ベーン6−1の開度を制御していたが、先行開度指令αのみで入口案内ベーン6−1の開度制御をするようにしてもよい。
ちなみに従来では、フィードバック開度指令βのみで、入口案内ベーン6−1の開度制御をしていた。
【実施例2】
【0045】
次に本発明の実施例2に係る空気圧力制御装置を適用した、ガス化複合発電システムを、図3を参照して説明する。
【0046】
実施例2の空気圧力制御器100Aの先行開度指令演算部150には、ガス化炉負荷指令GIDと、このガス化炉負荷指令GIDが表すガス化炉負荷にてガス化炉1を運転するのに必要な空気を昇圧機6から供給することができる入口案内ベーン6−1の開度(IGV開度)を示す関数が予め設定されている。この先行開度指令演算部150は、ガス化炉負荷指令GIDが入力されると、前記関数を参照して、このガス化炉負荷指令GIDに対応するIGV開度を先行開度指令εとして出力する。
【0047】
偏差演算部107は設定圧力P3と、出口圧力計53で検出した出口圧力P2との偏差を求めて、偏差圧力PΔを出力する。
比例・積分演算部108は、偏差圧力PΔを比例・積分演算してフィードバック開度指令βを出力する。
【0048】
加算部109は、先行開度指令演算部150から出力された先行開度指令εと、フィードバッグ開度指令βを加算して、開度指令θを出力する。
入口案内ベーン6−1は、開度指令θで示す開度になるように、開度が調整される。
【0049】
このとき、先行開度指令εは、ガス化炉負荷指令GIDの値が変化すると、直ちに、このGIDの変化に対応する値だけ変化する。
一方、フィードバック開度指令βは、ガス化炉負荷指令GIDの値が変化することに伴い設定圧力P3が変化したときに、昇圧機6の出口側の実際の空気圧力である出口圧力P2と、変化した設定圧力P3との間に実際に圧力差が発生してから、この圧力差に応じた値だけ変化する。
【0050】
したがって、ガス化炉負荷指令GIDが変化したときには、開度指令θのうち、先行開度指令εの制御要素により先行的に入口案内ベーン6−1の開度調整がされる。この結果、ガス化炉負荷指令GIDの値が変化した非定常状態においても、入口案内ベーン6−1の開度が迅速に最適開度に変更される結果、非定常状態においても、昇圧機6からガス化炉1への空気供給を安定して行うことができる。つまり、非定常状態においても、過不足なく昇圧機6からガス化炉1に最適量の空気を供給することができる。
【0051】
なお上記実施例では、先行開度指令εとフィードバック開度指令βを加算した開度指令θにより入口案内ベーン6−1の開度を制御していたが、先行開度指令εのみで入口案内ベーン6−1の開度制御をするようにしてもよい。
ちなみに従来では、フィードバック開度指令βのみで、入口案内ベーン6−1の開度制御をしていた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施例を使用した、ガス化複合発電システムを示す構成図。
【図2】本発明の実施例1に使用する空気圧力制御器を示す制御ブロック図。
【図3】本発明の実施例2に使用する空気圧力制御器を示す制御ブロック図。
【図4】ガス化複合発電システムを示す構成図。
【符号の説明】
【0053】
1 ガス化炉
2 空気供給弁
3 フィーダ
4 ガス精製設備
5 ガスタービン
5−1 燃焼器
5−2 空気圧縮機
5−3 タービン
6 昇圧機
6−1 入口案内ベーン(IGV)
6−2 再循環配管
6−3 再循環弁
7 排ガス回収ボイラ
8 蒸気タービン
51 入口温度計
52 入口圧力計
53 出口圧力計
60 ガス化炉負荷指令器
100,100A 空気圧力制御器
101 空気重量流量演算部
102 入口空気密度演算部
103 割算部
104 設定圧力演算部
105 割算部
106,150 先行開度演算司令部
107 偏差演算部
108 比例・積分演算部
109 加算部
GID ガス化炉負荷指令
T1 入口温度
P1 入口圧力
P2 出口圧力
P3 設定圧力
F1 空気重量流量
F2 空気体積流量
P3/P1 昇圧機圧力比
α,ε 先行開度指令
β フィードバック開度指令
γ 入口空気密度
θ 開度指令

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭と空気が供給されると石炭ガスを生成するガス化炉と、
前記ガス化炉にて生成された石炭ガスを精製した燃料ガスを燃焼して駆動するガスタービンと、
前記ガスタービンの空気圧縮機から抽気した空気を、入口案内ベーンを介して取り込み、取り込んだ空気を圧縮して吐出する昇圧機と、
前記ガス化炉の要求負荷に応じた流量となるよう開度が調整される弁であって、前記昇圧機から吐出された空気を前記ガス化炉に供給する空気供給経路に介装された空気供給弁とを有するガス化複合発電設備において、
前記昇圧機の入口側での空気の温度を検出する入口温度計と、
前記昇圧機の入口側での空気の圧力を検出する入口圧力計と、
前記入口案内ベーンの開度を調整する空気圧力制御器とを有し、
前記空気圧力制御器は、
前記ガス化炉の要求負荷を示すガス化炉負荷指令と、前記入口温度計にて検出した入口温度と、前記入口圧力計で検出した入口圧力とから、前記要求負荷を満たすために必要な空気体積流量を求める空気体積流量演算手段と、
前記ガス化炉負荷指令から前記要求負荷を満たすために必要な空気の設定圧力を求めると共に、この設定圧力と前記入口圧力から昇圧機圧力比を求める圧力比演算手段と、
前記空気体積流量と前記昇圧機圧力比をパラメータとして、空気体積流量と昇圧機圧力比を満足する前記入口案内ベーンの開度を設定する関数が予め設定されており、前記空気体積流量と前記昇圧機圧力比が入力されると前記関数を参照して入口案内ベーンの開度を示す先行開度指令を出力する先行開度指令演算部とを有し、
前記先行開度指令で示す開度となるように、前記入口案内ベーンの開度を制御することを特徴とする、ガス化複合発電システムにおける空気圧力制御装置。
【請求項2】
石炭と空気が供給されると石炭ガスを生成するガス化炉と、
前記ガス化炉にて生成された石炭ガスを精製した燃料ガスを燃焼して駆動するガスタービンと、
前記ガスタービンの空気圧縮機から抽気した空気を、入口案内ベーンを介して取り込み、取り込んだ空気を圧縮して吐出する昇圧機と、
前記ガス化炉の要求負荷に応じた流量となるよう開度が調整される弁であって、前記昇圧機から吐出された空気を前記ガス化炉に供給する空気供給経路に介装された空気供給弁とを有するガス化複合発電設備において、
前記昇圧機の入口側での空気の温度を検出する入口温度計と、
前記昇圧機の入口側での空気の圧力を検出する入口圧力計と、
前記入口案内ベーンの開度を調整する空気圧力制御器とを有し、
前記空気圧力制御器は、
前記ガス化炉の要求負荷を示すガス化炉負荷指令から、前記要求負荷を満たすために必要な空気重量流量を求める空気重量流量演算部と、
前記入口温度計にて検出した入口温度と、前記入口圧力計で検出した入口圧力とから、入口空気密度を検出する入口空気密度演算部と、
前記空気重量流量を前記入口空気密度で除算することにより、空気体積流量を演算する第1の割算部と、
前記ガス化炉負荷指令から前記要求負荷を満たすために必要な空気の設定圧力を求める設定圧力演算部と、
前記設定圧力を前記入口圧力で除算することにより昇圧機圧力比を求める第2の割算部と、
前記空気体積流量と前記昇圧機圧力比をパラメータとして、空気体積流量と昇圧機圧力比を満足する前記入口案内ベーンの開度を設定する関数が予め設定されており、前記空気体積流量と前記昇圧機圧力比が入力されると前記関数を参照して入口案内ベーンの開度を示す先行開度指令を出力する先行開度指令演算部とを有し、
前記先行開度指令で示す開度となるように、前記入口案内ベーンの開度を制御することを特徴とする、ガス化複合発電システムにおける空気圧力制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の何れか一項において、
前記昇圧機の出口側での空気の圧力を検出する出口圧力計を更に備え、
前記空気圧力制御器は、
前記出口圧力計で検出した出口圧力と、前記設定圧力との偏差をゼロとするフィードバック開度指令を演算するフィードバック開度指令演算手段を有し、
前記先行開度指令と前記フィードバック開度指令とを加算した指令で示す開度となるように、前記入口案内ベーンの開度を制御することを特徴とする、ガス化複合発電システムにおける空気圧力制御装置。
【請求項4】
石炭と空気が供給されると石炭ガスを生成するガス化炉と、
前記ガス化炉にて生成された石炭ガスを精製した燃料ガスを燃焼して駆動するガスタービンと、
前記ガスタービンの空気圧縮機から抽気した空気を、入口案内ベーンを介して取り込み、取り込んだ空気を圧縮して吐出する昇圧機と、
前記ガス化炉の要求負荷に応じた流量となるよう開度が調整される弁であって、前記昇圧機から吐出された空気を前記ガス化炉に供給する空気供給経路に介装された空気供給弁とを有するガス化複合発電設備において、
前記入口案内ベーンの開度を調整する空気圧力制御器を有し、
前記空気圧力制御器は、
前記ガス化炉の要求負荷を示すガス化炉負荷指令と、前記要求負荷を満たすために必要な前記入口案内ベーンの開度を設定する関数が予め設定されており、前記ガス化炉負荷指令が入力されると前記関数を参照して入口案内ベーンの開度を示す先行開度指令を出力する先行開度指令演算部を有し、
前記先行開度指令で示す開度となるように、前記入口案内ベーンの開度を制御することを特徴とする、ガス化複合発電システムにおける空気圧力制御装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記昇圧機の出口側での空気の圧力を検出する出口圧力計を更に備え、
前記空気圧力制御器は、
前記出口圧力計で検出した出口圧力と、前記設定圧力との偏差をゼロとするフィードバック開度指令を演算するフィードバック開度指令演算手段を有し、
前記先行開度指令と前記フィードバック開度指令とを加算した指令で示す開度となるように、前記入口案内ベーンの開度を制御することを特徴とする、ガス化複合発電システムにおける空気圧力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−211705(P2007−211705A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33204(P2006−33204)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)