説明

ガス器具

【課題】着火音を低減でき、且つ、点火不良の発生も防止できるようにしたガス器具を提供する。
【解決手段】バーナへのガス供給路に介設する開閉弁として、ステッピングモータ44と、ステッピングモータ44の正逆転により送りねじ機構45を介して弁体42の開閉方向たるX軸方向に進退される、電磁石432を取付けた可動体43とを備え、ステッピングモータ44の正転で可動体43を弁体42に向けてX軸方向に前進させることにより、弁体42に固定されるアーマチュア424に電磁石432を当接させて吸着し、ステッピングモータ44の逆転で可動体43をX軸方向に後退させることにより、弁体42を開き方向に移動させるようにしたモータ弁4を用いる。そして、バーナに付設した点火電極でのスパークを開始する点火時に、ステッピングモータ44を間歇的に逆転させて、弁体42を閉じ位置から開き方向に所定ストロークずつ段階的に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナへのガス供給路に開閉弁を介設したガス湯沸し器等のガス器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス湯沸し器として、バーナで加熱される熱交換器の上流側の給水路に、止水弁と水圧応動機構とを介設し、バーナへのガス供給路に、電磁弁から成る開閉弁と水圧応動機構に連動する水圧応動弁とを介設し、出湯ボタンの押し操作で先ず止水弁を開弁させて熱交換器に通水し、この通水により水圧応動機構を介して水圧応動弁を開弁させ、水圧応動弁の開弁が検知されたところで、バーナに付設した点火電極でのスパークを開始すると共に開閉弁を開弁させて、バーナに点火するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、上記従来例のものでは、点火時に、開閉弁の開弁でいきなり大流量のガスがバーナに供給され、バーナに着火する際に発生する着火音が大きくなってしまう。
【0004】
また、従来、ばねで閉じ方向に付勢される弁体と、ステッピングモータと、ステッピングモータの正逆転により送りねじ機構を介して弁体の開閉方向たるX軸方向に進退される、電磁石を取付けた可動体とを備え、ステッピングモータの正転で可動体を弁体に向けてX軸方向に前進させることにより、弁体に固定されるアーマチュアに電磁石を当接させ、電磁石にアーマチュアを吸着させた後、ステッピングモータの逆転で可動体をX軸方向に後退させることにより、弁体を開き方向に移動させるようにしたモータ弁が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
バーナへのガス供給路に介設する開閉弁をこのようなモータ弁で構成すれば、点火時にモータ弁の弁体を所定の小開度で開くことにより、バーナへの供給ガス量を少なくして、着火音を低減することができる。然し、モータ弁の構成部品の寸法バラツキや送りねじ機構のバックラッシュ等によりステッピングモータの回転角と弁体の位置との相関に誤差を生ずるため、点火時の開度を小開度に設定したのでは、点火時の実際の開度が小さくなり過ぎて、点火不良を生じてしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−250469号公報
【特許文献2】特開2005−30440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、着火音を低減でき、且つ、点火不良の発生も防止できるようにしたガス器具を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナへのガス供給路に開閉弁を介設したガス器具であって、開閉弁は、ばねで閉じ方向に付勢される弁体と、ステッピングモータと、ステッピングモータの正逆転により送りねじ機構を介して弁体の開閉方向たるX軸方向に進退される、電磁石を取付けた可動体とを備え、ステッピングモータの正転で可動体を弁体に向けてX軸方向に前進させることにより、弁体に固定されるアーマチュアに電磁石を当接させ、電磁石にアーマチュアを吸着させた後、ステッピングモータの逆転で可動体をX軸方向に後退させることにより、弁体を開き方向に移動させるようにしたモータ弁で構成され、バーナに付設した点火電極でのスパークを開始する点火時に、ステッピングモータを間歇的に逆転させて、弁体を閉じ位置から開き方向に所定ストロークずつ段階的に移動させることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、点火時に、開閉弁たるモータ弁の弁体を閉じ位置から開き方向に所定ストロークずつ段階的に移動させるため、いきなり大流量のガスがバーナに供給されることがなく、着火音を低減できる。更に、部品の寸法バラツキや送りねじ機構のバックラッシュ等でステッピングモータの回転角と弁体の位置との相関に誤差を生じても、時間経過に伴いバーナへの供給ガス量が段階的に増加するため、点火不良を生ずることはない。
【0010】
尚、点火時にステッピングモータを低速で連続的に逆転させて、弁体を開き方向に低速で移動させることも考えられる。然し、ステッピングモータは、低速で連続的に回転させると電力消費量が増す特性があり、電源として乾電池を用いる場合、乾電池の寿命が短くなる。これに対し、本発明の如くステッピングモータを間歇的に回転させれば、電力消費量を低減でき、電源として乾電池を用いる場合に有利である。
【0011】
また、本発明においては、バーナに付設した火炎センサでバーナの着火が検出された後は、ステッピングモータを、弁体が所定の全開位置に移動するまで連続的に逆転させることが望ましい。これによれば、モータ弁が全開してバーナに所要量のガスが供給されるまでにかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態のガス器具の全体構成を示す説明図。
【図2】(a)図1のガス器具に設けられたモータ弁の断面図、(b)点火時のモータ弁の弁体の位置変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、Aは本発明の実施形態のガス器具であるガス湯沸し器を示している。ガス湯沸し器Aは、胴部1と、胴部1の下端開口に臨ませて配置したバーナ2と、胴部1の上部に配置した、バーナ2で加熱される熱交換器3とを備えている。
【0014】
また、ガス湯沸し器Aは、操作部材として、出湯ボタンS1と、温調ダイヤルS2と、能力切換えレバーS3とを備えており、更に、出湯ボタンS1に電気的に接続されるコントローラCを備えている。また、バーナ2には、コントローラCで制御されるイグナイタ21aに接続される点火電極21と、バーナ2の火炎を検知するフレームロッド等から成る火炎センサ22とが付設されており、火炎センサ22の検知信号がコントローラCに入力される。
【0015】
熱交換器3には、上流側の給水路3aと、出湯ヘッド3bに連なる下流側の出湯路3cとが接続されている。
【0016】
給水路3aには、上流側から順に、止水弁31と、水圧応動機構32と、温調ダイヤルS2に機械的に連動する水量調節弁33とが介設されている。また、バーナ2に対するガス供給路2aには、上流側から順に、開閉弁たるモータ弁4と、水圧応動弁5と、能力切換えレバーS3に機械的に連動するガス量調節弁6とが介設されている。水圧応動機構32は、通水時に変位するダイヤフラム(図示せず)を内蔵しており、このダイヤフラムの変位に機械的に連動して水圧応動弁5が開弁されるようにしている。また、水圧応動機構32は、水圧応動弁5が開弁されたか否かを検知する開弁センサ(図示せず)を備えており、開弁センサの検知信号がコントローラCに入力される。
【0017】
イグナイタ21a、止水弁31及びモータ弁4はコントローラCにより以下の如く制御される。即ち、出湯ボタンS1を押すと、コンロトローラCにより止水弁31が開弁されて、給水路3aに通水され、この通水で水圧応動機構32を介して水圧応動弁5が開弁される。そして、水圧応動弁5の開弁が開弁センサで検知されると、コントローラCによりイグナイタ21aが作動されて、点火電極21でのスパークが開始されると共に、コントローラCによりモータ弁4が開弁され、バーナ2にガスが供給されて点火される。
【0018】
バーナ2に着火してこれが火炎センサ22で検知されると、点火電極21でのスパークが停止される。その後、出湯ボタンS1を再度押し操作すると、コントローラCにより止水弁31が閉弁されて通水が停止され、これに連動して水圧応動弁5が閉弁されると共に、コントローラCによりモータ弁4が閉弁される。また、不完全燃焼でバーナ2の火炎がリフトしたり失火したりすると、火炎センサ22が火炎を検知しなくなって、コントローラCによりモータ弁4が閉弁される。尚、ガス湯沸し器Aは電源として図示省略した乾電池を備えており、乾電池からコントローラCに給電されると共に、コントローラCを介してイグナイタ21a、止水弁31及びモータ弁4に給電される。
【0019】
図2(a)を参照して、モータ弁4は、流入口411と、流出口412と、流入口411に連通する弁室413と、弁室413の一端の弁座414とを有するバルブケーシング41を備えており、弁座414には、流出口412に連通する弁孔414aが形成されている。弁室413には、弁体42と、可動体43とが収納されている。
【0020】
弁体42は、可動体43との間に縮設したばね421により、弁座414に着座して弁孔414aを閉塞する閉じ方向に付勢されている。また、弁体42の開閉方向をX軸方向として、弁体42は、弁座414に着座するX軸方向前端の弁部422と、弁部422からX軸方向後方にのびる軸部423とを有しており、この軸部423の後端にアーマチュア424が固定されている。尚、軸部423は、弁部422にX軸方向に所定ストローク遊動自在に連結されている。そして、軸部423をX軸方向後方に付勢するばね425を設け、弁体42が弁座414に着座する閉じ位置に存する状態でアーマチュア424に後述する電磁石432が当接したときの衝撃をばね425で吸収できるようにしている。
【0021】
可動体43は、弁体42の軸部423が摺動自在に内挿されるガイド筒431を有する。また、可動体43には、アーマチュア424に対向する電磁石432が取付けられている。電磁石432は、U字状の鉄心432aと、鉄心432aの片側の腕部分にボビン432bを介して巻回したコイル432cとで構成されており、コイル432cへの通電で励磁される。
【0022】
弁室413の他端は、バルブケーシング41に締結した蓋部材415で閉塞されている。蓋部材415の外面には、ステッピングモータ44が取付けられている。また、ステッピングモータ44の出力側のねじ軸451と、ねじ軸451に螺合してX軸方向に進退するナット452とから成る送りねじ機構45を設けている。そして、ナット452にピン453を介して可動体43を連結し、ステッピングモータ44の正逆転により送りねじ機構45を介して可動体43をX軸方向に進退させるようにしている。尚、ステッピングモータ44によりナットを回転駆動し、ナットに螺合するねじ軸がX軸方向に進退するように送りねじ機構を構成することも可能である。
【0023】
モータ弁4を開弁させる際は、先ず、ステッピングモータ44を正転させて、可動体43を弁体42に向けてX軸方向に前進させ、電磁石432をアーマチュア424に当接させる。次に、コイル432cへの通電で電磁石432を励磁して、アーマチュア424を電磁石432に吸着させ、この状態でステッピングモータ44を逆転させて可動体43をX軸方向に後退させ、弁体42を弁座414から離れる開き方向に移動させる。また、モータ弁4を閉弁させる際は、コイル432cへの通電を停止し、弁体42をばね421の付勢力で弁座414に着座する閉じ位置に復帰させる。
【0024】
ところで、点火電極21でのスパークを開始する点火時に、モータ弁4の弁体42を急速に全開開度まで移動させると、大流量のガスがバーナ2に供給された状態でバーナ2に着火し、着火時に発生する着火音が大きくなってしまう。この場合、点火時にモータ弁4の弁体42を所定の小開度で開くことにより、バーナ2への供給ガス量を少なくして、着火音を低減することが考えられる。然し、モータ弁4の構成部品の寸法バラツキや送りねじ機構45のバックラッシュ等によりステッピングモータ44の回転角と弁体42の位置との相関に誤差を生ずるため、点火時の開度を小開度に設定したのでは、点火時の実際の開度が小さくなり過ぎて、点火不良を生じてしまうことがある。
【0025】
そこで、本実施形態では、点火時に、アーマチュア424を電磁石432に吸着させた後、ステッピングモータ44を間歇的に逆転させて、図2(b)に示す如く、弁体42を閉じ位置から開き方向に所定ストロークずつ段階的に移動させるようにしている。尚、ステッピングモータ44の間歇的な逆転は、ステッピングモータ44に逆転方向の駆動パルスを所定数(例えば、3パルス)連続して入力することと、駆動パルスの入力を所定時間(例えば、1msec)休止することとを繰り返すことで行われる。
【0026】
本実施形態によれば、点火時に、モータ弁4の弁体42が閉じ位置から開き方向に所定ストロークずつ段階的に移動するため、いきなり大流量のガスがバーナ2に供給されることがなく、着火音を低減できる。更に、部品の寸法バラツキや送りねじ機構45のバックラッシュ等でステッピングモータ44の回転角と弁体42の位置との相関に誤差を生じても、時間経過に伴いバーナ2への供給ガス量が段階的に増加するため、点火不良を生ずることはない。
【0027】
尚、点火時にステッピングモータ44を低速で連続的に逆転させて、弁体42を開き方向に低速で移動させることも考えられる。然し、ステッピングモータ44は、低速で連続的に回転させると電力消費量が増す特性があり、電源として乾電池を用いる場合、乾電池の寿命が短くなる。これに対し、本実施形態の如くステッピングモータ44を間歇的に回転させれば、電力消費量を低減でき、乾電池の寿命が延びる。
【0028】
ところで、火炎センサ22によりバーナ2の着火が検出された後も、ステッピングモータ44を間歇的に逆転させて、図2(b)に仮想線で示す如く、弁体42を所定の全開位置まで所定ストロークずつ段階的に移動させることが考えられる。然し、これでは、バーナ2への供給ガス量が熱交換器3の加熱に必要な所要量に達するまでに時間がかかってしまい、その間は出湯される温水の温度が低くなって使用者に不便をかける。
【0029】
そこで、本実施形態では、火炎センサ22でバーナ2の着火が検出された後は、ステッピングモータ44を、弁体42が全開位置に移動するまで連続的に逆転させるようにしている。これによれば、図2(b)に実線で示す如く、着火後に弁体42が開き方向に速い速度で連続的に移動して、全開位置に短時間で到達する。従って、バーナ2に所要量のガスが供給されるまでにかかる時間を短縮することができ、使用者に不便をかけない。
【0030】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態はガス湯沸し器に本発明を適用したものであるが、ガス湯沸し器以外のガス器具にも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0031】
A…ガス湯沸し器(ガス器具)、2…バーナ、21…点火電極、22…火炎センサ、2a…ガス供給路、4…モータ弁、42…弁体、421…ばね、424…アーマチュア、43…可動体、432…電磁石、44…ステッピングモータ、45…送りねじ機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナへのガス供給路に開閉弁を介設したガス器具であって、
開閉弁は、ばねで閉じ方向に付勢される弁体と、ステッピングモータと、ステッピングモータの正逆転で送りねじ機構を介して弁体の開閉方向たるX軸方向に進退される、電磁石を取付けた可動体とを備え、ステッピングモータの正転で可動体を弁体に向けてX軸方向に前進させることにより、弁体に固定されるアーマチュアに電磁石を当接させ、電磁石にアーマチュアを吸着させた後、ステッピングモータの逆転で可動体をX軸方向に後退させることにより、弁体を開き方向に移動させるようにしたモータ弁で構成され、
バーナに付設した点火電極でのスパークを開始する点火時に、ステッピングモータを間歇的に逆転させて、弁体を閉じ位置から開き方向に所定ストロークずつ段階的に移動させることを特徴とするガス器具。
【請求項2】
前記バーナに付設した火炎センサでバーナの着火が検出された後は、前記ステッピングモータを、前記弁体が所定の全開位置に移動するまで連続的に逆転させることを特徴とする請求項1記載のガス器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−78074(P2012−78074A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226662(P2010−226662)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】