ガス感知体
【課題】衛生的であり、生鮮品に含まれる水分による機能の劣化がなく、簡易に生鮮品から発生するガスを感知して、生鮮品の品質を判定し、表示することができるガス感知体を提供する。
【解決手段】本発明のガス感知体10は、不可逆性のガス反応剤からなるガス反応部12と、ガス反応部12が設けられた基材11と、剥離層13を介して基材11に重ね合わせられた第一剥離基材15とを備え、基材11および/または剥離層13は、ガス反応部12に隣接し、かつ、第一剥離基材15を剥離することにより、ガス反応部12を外部と連通させる第一ガス透過部18と第二ガス透過部19を有することを特徴とする。
【解決手段】本発明のガス感知体10は、不可逆性のガス反応剤からなるガス反応部12と、ガス反応部12が設けられた基材11と、剥離層13を介して基材11に重ね合わせられた第一剥離基材15とを備え、基材11および/または剥離層13は、ガス反応部12に隣接し、かつ、第一剥離基材15を剥離することにより、ガス反応部12を外部と連通させる第一ガス透過部18と第二ガス透過部19を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物、肉、魚などの生鮮品の品質を、これらの生鮮品が発生するガスを感知することにより判定し、表示するガス感知体に関し、さらに詳しくは、果物や野菜などの青果物が発生するエチレンガス、肉が発生するアンモニアガス、および、魚が発生するアミンガスを感知し、これらの生鮮品の品質を表示するガス感知体に関する。
【背景技術】
【0002】
果物などの青果物は、熟成しないうちに出荷され、消費者の手に渡ることが多く、必ずしも購入した時点が青果物の食べ頃とは限らない。そこで、消費者の元で青果物の熟度を簡易に判定し、その食べ頃を知ることができる手段が望まれていた。
ところで、青果物は後熟が起きるとエチレンガスを発生する。そこで、この性質を利用し、エチレンガスと呈色反応する試薬を用いて、青果物から発生するエチレンガスを経時的に検知することにより、青果物の熟度を判定する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、このエチレンガスの検知方法を応用して、繊維質基材層の内部もしくは表面に保持されたエチレンガス検知物質を備えたエチレンガス検知インジケーター付粘着ラベルが開示されている(例えば、特許文献2参照)。このエチレンガス検知物質は、エチレンガスの存在下で変色する性質を有している。
【0003】
また、肉は後熟が起きるとアンモニアガスを発生することが知られている。従って、この性質を利用し、肉から発生するアンモニアガスを経時的に検知することにより、肉の熟度を判定することができる。アンモニアガスを検知する手段として、アンモニアガス試験紙を用いたアンモニアガス測定方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
同様に、魚は後熟が起きるとアミンガスを発生することが知られている。従って、この性質を利用し、魚から発生するアミンガスを経時的に検知することにより、魚の熟度を判定することができる。アミンガスの中でも、トリメチルアミン(TMA)を検知する手段として、ルテニウム(Ru)を酸化チタン(TiO2)に添加したTMAセンサを用いたアミンガス測定装置が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平1−22581号公報
【特許文献2】実開平2−123976号公報
【特許文献3】特開2003−121365公報
【特許文献4】特開平6−34613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に開示されている方法では、青果物に、直接、ガスを検知する手段(試薬、試験紙など)を接触させて用いるため、衛生的でないという問題があった。また、青果物に含まれる水分によって、ガスを検知する手段の機能が損なわれ、目的とするガスの検知ができないという問題もあった。
また、特許文献3、4に開示されている方法では、肉や魚から発生するガスを、ガスを検知する手段に接触させるためには、大がかりな装置が必要となり、コストが嵩むという問題があった。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、衛生的であり、生鮮品に含まれる水分による機能の劣化がなく、簡易に生鮮品から発生するガスを感知して、生鮮品の品質を判定し、表示することができるガス感知体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス感知体は、不可逆性のガス反応剤からなるガス反応部と、該ガス反応部が設けられた基材と、剥離層を介して前記基材に重ね合わせられた剥離基材とを備えたガス感知体であって、前記基材および/または前記剥離層は、前記ガス反応部に隣接し、かつ、前記剥離基材を剥離することにより、前記ガス反応部を外部と連通させるガス透過部を有することを特徴とする。
【0007】
前記ガス反応部および前記剥離層は、印刷法により形成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガス感知体は、不可逆性のガス反応剤からなるガス反応部と、該ガス反応部が設けられた基材と、剥離層を介して前記基材に重ね合わせられた剥離基材とを備えたガス感知体であって、前記基材および/または前記剥離層は、前記ガス反応部に隣接し、かつ、前記剥離基材を剥離することにより、前記ガス反応部を外部と連通させるガス透過部を有するので、剥離基材を剥離して、剥離層を露出させ、ガス透過部を外部と連通させることにより、ガス反応部がガス感知機能を発揮するので、生鮮品から発生したガス以外のガスによってガス感知機能が損なわれることを防止できる。
また、本発明のガス感知体は、生鮮品に直接貼付することなく、簡易かつ効率的に生鮮品から発生するガスを感知し、生鮮品の品質を判定し、表示することができるので、衛生的かつ安全に、生鮮品の品質を判定することができる。
また、本発明のガス感知体は、基材の剥離基材側の面に、剥離層が設けられているので、この剥離層が撥水層としても機能し、ガス透過部内に水分が浸入することを防止できる。したがって、本発明のガス感知体によれば、生鮮品や空気中に含まれる水分によって、ガス反応部のガス感知機能が損なわれることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のガス感知体の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0010】
(1)第一の実施形態
図1は、本発明のガス感知体の第一の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
図1中、符号10はガス感知体、11は基材、12はガス反応部、13は剥離層、14は第一粘着層、15は第一剥離基材、16は第二粘着層、17は第二剥離基材、18は第一ガス透過部、19は第二ガス透過部、をそれぞれ示している。
この実施形態のガス感知体10は、基材11と、この基材11の一方の面11aに設けられた不可逆性のガス反応剤からなるガス反応部12と、基材11の他方の面11b側に順に配された剥離層13、第一粘着層14および第一剥離基材15と、基材11の一方の面11a側に順に配された第二粘着層16および第二剥離基材17とから概略構成されている。
【0011】
また、基材11には、その厚み方向に貫通する、すなわち、その他方の面11bから一方の面11aに設けられたガス反応部12に至る多数の貫通孔からなる第一ガス透過部18が設けられている。そして、この第一ガス透過部18内には、ガス反応部12の基材11の一方の面11a側の面が露出している。
さらに、剥離層13には、その厚み方向に貫通する、すなわち、その第一粘着層14と接する面から基材11と接する面に至り、第一ガス透過部18と連接する多数の貫通孔からなる第二ガス透過部19が設けられている。
【0012】
また、第一剥離基材15は、第一粘着層14を介して、第二ガス透過部19を覆うように、基材11の他方の面11b側に重ね合わせられている。
そして、第二粘着層16は、基材11の一方の面11aに設けられたガス反応部12を覆うように配されている。
【0013】
基材11としては、ガラス繊維、アルミナ繊維などの無機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたもの、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたものや、あるいはこれらに樹脂ワニスを含浸させて成形した複合基材や、ポリアミド系樹脂基材、ポリエステル系樹脂基材、ポリオレフィン系樹脂基材、ポリイミド系樹脂基材、エチレン−ビニルアルコール共重合体基材、ポリビニルアルコール系樹脂基材、ポリ塩化ビニル系樹脂基材、ポリ塩化ビニリデン系樹脂基材、ポリスチレン系樹脂基材、ポリカーボネート系樹脂基材、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合系樹脂基材、ポリエーテルスルホン系樹脂基材などのプラスチック基材や、あるいはこれらにマット処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、フレームプラズマ処理、オゾン処理、または各種易接着処理などの表面処理を施したものなどの公知のものから選択して用いられる。
【0014】
ガス反応部12をなす不可逆性のガス反応剤としては、エチレンガスと呈色反応する試薬、アンモニアガスおよびアミンガスと呈色反応する試薬などが用いられる。ガス反応部12を形成するには、溶媒または溶液にこれらの試薬を溶解して調製したインキを用いる。
なお、不可逆性のガス反応剤とは、一旦、ガスと反応して変色したら、変色前の状態(変色前の色)に戻らない試薬のことである。
エチレンガスと呈色反応する試薬としては、硫酸パラジウム触媒を含むモリブデン酸アンモニウム酸性水溶液などが用いられ、これを酸性溶液とするためには濃硫酸を混合する。この試薬のエチレンガスによる呈色反応は、下記の式(1)で表される。
3(NH4)2O・7MoO3→Mo2O3・3MoO3・6H2O (1)
モリブデン酸アンモニウム((NH4)2O・7MoO3)は白色であり、この物質がエチレンガスと呈色反応することによって生成するモリブデンブルー(Mo2O3・3MoO3・6H2O)は青色である。
なお、モリブデン酸アンモニウムは、吸湿すると失活する(呈色反応を示さなくなる)ため、エチレンガスには接触しても、水分と接触しないようにする必要がある。
また、アンモニアガスおよびアミンガスと呈色反応する試薬としては、アマニ油などが用いられる。
【0015】
剥離層13をなす剥離剤としては、トルエンなどの有機溶媒を溶媒とする溶剤系シリコーン、熱硬化型や紫外線硬化型などの無溶剤系シリコーンなどが用いられる。これらの剥離材の中でも、剥離層13をなす剥離剤としては、光透過性のものが用いられる。
【0016】
第一粘着層14をなす粘着剤としては、主に貼着後も剥離が可であり、剥離後は再貼付が不可な材料が用いられる。このような材料としては、110gf/25mm〜170gf/25mmの剥離力を有する材料が用いられる。このような材料としては、例えば、(1)非剥離性感圧接着剤基剤と、この非剥離性感圧接着剤基剤に対して非親和性の微粒状充填剤とからなる接着剤組成物、(2)粘着主剤と、粘着付与剤と、無機充填剤とを含む配合物に、無機充填剤と反応性を有しないカップリング剤、粘着主剤と相溶性を有しない樹脂などを添加した感圧性の粘着剤などが挙げられる。
なお、第一粘着層14をなす粘着剤としては、通常の粘着剤、剥離後も再貼付可能な粘着剤などを用いてもよい。
【0017】
上記の接着剤組成物に含まれる非剥離性感圧接着剤基剤としては、剥離基材15に塗布した後、単に剥離層13に接触した状態では接着しないが、加圧により接着する性質を有するものが挙げられる。非剥離性感圧接着剤基剤としては、従来の感圧接着剤として慣用されているものの基剤の中から任意に選択して用いることができるが、特に、天然ゴムにスチレンとメタクリル酸メチルとをグラフト共重合させて得られた天然ゴムラテックスが、耐ブロッキング性、耐熱性、耐摩耗性などの点で好適である。
【0018】
上記の接着剤組成物に含まれる微粒状充填剤としては、非剥離性感圧接着剤基剤を構成する各成分によって溶解または膨潤されないものが挙げられる。このような微粒状充填剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、活性白土、球状アルミナ、小麦デンプン、シリカ、ガラス粉末、シラスバルーンなどが挙げられる。本発明においては、これらの微粒状充填剤から選択される2種以上を組み合わせて用いる必要があり、特に、シリカと他の充填剤との組合せが好適である。また、この2種以上の微粒状充填剤としては、粒径の異なるものを選ぶことが好ましく、このように粒径の異なる2種以上を組み合わせて用いることにより接着剤層の表面を凹凸状に形成し、剥離性能を向上させることができる。また、上記の非剥離性感圧接着剤基剤にシリカを添加することにより、接着剤組成物の塗膜を強化することができる。さらに、シリカは多孔質であるため、非剥離性感圧接着剤基剤がシリカの表面に付着しやすく、接着力や剥離力を調整しやすい上、シリコーンオイルを用いているプリンタにより、ノンインパクトプリンタ方式で印字した場合でも、シリカがシリコーンオイルを吸収するので、接着剤組成物がシリコーンオイルにより接着しなくなることもない。これらの微粒状充填剤は、平均粒子径が10mμm〜30μmの範囲にあるものが好ましく、平均粒子径が1μm〜20μmの範囲にあるものがより好ましい。
【0019】
上記の感圧性の粘着剤に含まれる粘着主剤としては、ガラス転移点(Tg)が低く、ベタツキ感(タック感)の強い樹脂などが挙げられる。このような粘着主剤としては、例えば天然ゴム(NR)、エステル化天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが挙げられる。
【0020】
上記の感圧性の粘着剤に含まれる粘着付与剤としては、ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、変成ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、不均化ロジンエステル、重合ロジンエステルなどが挙げられる。
【0021】
上記の感圧性の粘着剤に含まれる無機充填剤としては、上記の粘着主剤とは親和性を有しない、マイクロシリカ、合成ゼオライト、活性アルミナゲル、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、タルク、クレー、カオリン、活性白土、シラスバルーンなどの微粒状物質が挙げられる。
【0022】
また、上記の感圧性の粘着剤には、上記の無機充填剤に加えて、アクリルなどの樹脂ビーズ、精製デンプン、コーンスターチ、セルロース粉末などの微粒状物質を併用してもよい。
【0023】
上記の感圧性の粘着剤に含まれるカップリング剤としては、上記の無機充填剤との結合性を有し、かつ上記の粘着主剤と親和性を有するものが挙げられる。このようなカップリング剤としては、例えば、ビニルクリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シランなどのシラン単独またはこれらの混合物、さらにはこれらの部分加水分解物、または部分共加水分解物;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネートなどのチタンオルトエステル、チタンアセチルアセトネート、トリエタノールアミンチタネートなどのチタンキレート、ポリヒドロキシチタンステアレート、ポリイソプロポキシチタンステアレートなどのチタンアシレート、以上のような有機チタン化合物単独またはこれらの混合物、アルミニウムイソプロピレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウムアルコレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウムキレート化合物、以上のような有機アルミニウム化合物単独またはこれらの混合物;その他の有機金属化合物;以上のシランおよび有機金属化合物の混合物などが挙げられる。
【0024】
上記の感圧性の粘着剤に含まれ、上記の粘着主剤と相溶性を有しない樹脂としては、水分散性高分子ポリエステル、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ケイ素含有水溶性ポリマー、熱可塑性エラストマー、また、低密度ポリエチレンなどの低分子ポリエチレン、アイオノマー、酢酸ビニル−オレフィン共重合体、セルロース誘導体などが挙げられる。これらの樹脂の中でも、ガラス転移温度(Tg)が30℃〜80℃、重量平均分子量が10,000〜25,000、粘度が20〜20,000cps(30℃)のものが好ましい。
【0025】
第一剥離基材15は、剥離層13を保護するとともに、剥離層13に設けられた第二ガス透過部19を覆い、第二ガス透過部19および第一ガス透過部18が外部と連通することを防止するために、剥離層13の基材11と接している面とは反対の面側に貼付されている。
第一剥離基材15としては、例えば、上質紙、グラシン紙、コート紙、アート紙、模造紙などから選択した紙が用いられる。
また、第一剥離基材15の第一粘着層14と接する面には、各種の情報が印刷されていてもよい。この情報としては、例えば、生鮮品の生産者に関する情報、生鮮品を用いた料理の作り方、生鮮品を識別、管理するための情報を表すバーコードなどが挙げられる。
【0026】
第二粘着層16は、上述の第一粘着層14と比べて、貼着後は剥離困難または剥離不可な接着剤で形成されている。このような接着剤としては、220gf/25mm〜340gf/25mmの剥離力を有する接着剤が用いられる。
【0027】
第二剥離基材17としては、例えば、上質紙、グラシン紙、コート紙、アート紙、模造紙などから選択した紙の第二粘着層16と接する面に剥離剤が塗布されたものが用いられる。
【0028】
第一ガス透過部18をなす貫通孔の断面形状は、特に限定されないが、円形、楕円形、正方形、矩形、三角形などいかなる形状であってもよい。
また、この貫通孔の開口径は、特に限定されないが、生鮮品から発生したガスを容易に透過し、水分を透過し難い大きさが好ましい。
【0029】
第二ガス透過部19をなす貫通孔の断面形状は、特に限定されないが、円形、楕円形、正方形、矩形、三角形などいかなる形状であってもよい。
また、この貫通孔の開口径は、特に限定されないが、生鮮品から発生したガスを容易に透過し、水分を透過し難い大きさが好ましく、第一ガス透過部18をなす貫通孔の開口径よりもわずかに大きいことが好ましい。
【0030】
次に、図2を参照して、この実施形態のガス感知体10の使用方法について説明する。
第二剥離基材17を剥離した後、第二粘着層16の粘着面16aを、青果物などの生鮮品を容れる容器(被着体)20の一面20aに貼付する(図2(a)、(b)参照)。
次いで、容器20内に生鮮品を容れた状態で、剥離層13と第一粘着層14の界面から、第一剥離基材15と第一粘着層14を剥離して、剥離層13を露出させ、第二ガス透過部19と第一ガス透過部18を外部と連通させる(図2(c)参照)。
なお、より精度良く生鮮品の品質の判定を行うためには、生鮮品を容れる容器20は密閉可能なものが好ましい。なぜならば、容器20内に生鮮品を容れた後、容器20を密閉する直前に第一剥離基材15と第一粘着層14を剥離して直ぐに容器20を密閉すれば、外部の雰囲気の影響を受け難くなり、生鮮品から発生したガスのみにより、ガス反応部12が反応するので、精度良く生鮮品の品質の判定を行うことができるからである。
この状態で生鮮品からエチレンガス、アンモニアガス、アミンガスが発生すると、第二ガス透過部19と第一ガス透過部18を通ってきたガスが、ガス反応部12をなす試薬と反応して、ガス反応部12が変色する。これにより、生鮮品の品質を判定し、表示することができる。
【0031】
次に、図1を参照して、この実施形態のガス感知体10の製造方法について説明する。
まず、基材11の所定の位置に、レーザ法や打ち抜き法などにより、基材11の厚み方向に貫通する多数の貫通孔からなる第一ガス透過部18を形成する。
次いで、スクリーン印刷などの印刷法により、基材11の一方の面11aに、全ての貫通孔の開口部を覆うように、不可逆性のガス反応剤を含むインキを印刷することにより、所定の形状のガス反応部12を形成する。
次いで、スクリーン印刷などの印刷法により、基材11の一方の面11aに、ガス反応部12を覆うように、粘着剤を塗布することにより、第二粘着層16を形成する。
次いで、第二粘着層16の粘着面(基材11と接している面とは反対の面)に、第二剥離基材17を貼付する。
次いで、スクリーン印刷などの印刷法により、基材11の他方の面11bに、剥離剤を塗布することにより、剥離層13を形成する。
次いで、剥離層13の所定の位置に、レーザ法や打ち抜き法などにより、剥離層13の厚み方向に貫通し、かつ、上記の第一ガス透過部18をなす貫通孔と連接する多数の貫通孔からなる第二ガス透過部19を形成する。
次いで、スクリーン印刷などの印刷法により、剥離層13の基材11と接している面とは反対の面に、全ての貫通孔の開口部を覆うように、粘着剤を塗布することにより、第一粘着層14を形成する。
そして、第一粘着層14の剥離層13と接している面とは反対の面に、第一剥離基材15を貼付し、ガス感知体10を得る。
【0032】
この実施形態のガス感知体10は、第一剥離基材15と第一粘着層14を剥離して、剥離層13を露出させ、第二ガス透過部19と第一ガス透過部18を外部と連通させることにより、ガス反応部12がガス感知機能を発揮するので、生鮮品から発生したガス以外のガスによってガス感知機能が損なわれることを防止できる。
また、このガス感知体10は、第二粘着層16を介して、このガス感知体10を、生鮮品を容れた容器20内に貼付し、生鮮品の近傍に配することができるので、生鮮品にガス感知体を直接貼付することなく、簡易かつ効率的に生鮮品から発生するガスを感知し、生鮮品の品質を判定し、表示することができる。したがって、このガス感知体10によれば、衛生的かつ安全に、生鮮品の品質を判定することができる。
また、このガス感知体10は、基材11の他方の面11bに、シリコーンからなる剥離層13が設けられているので、この剥離層13が撥水層としても機能し、第一ガス透過部18および第二ガス透過部19内に水分が浸入することを防止できる。したがって、このガス感知体10によれば、生鮮品や空気中に含まれる水分によって、ガス反応部12のガス感知機能が損なわれることを防止できる。
さらに、この実施形態のガス感知体10は、基材11、第一剥離基材15および第二剥離基材17以外の構成要素を、スクリーン印刷法などの印刷法によって形成することができるので、低コストで製造することができる。
【0033】
なお、この実施形態では、基材11にその厚み方向に貫通する多数の貫通孔からなる第一ガス透過部18を形成したガス感知体10を例示したが、本発明のガス感知体はこれに限定されない。本発明のガス感知体にあっては、基材がガス透過性の素材からなる場合、基材にガス透過部を設ける必要はない。
【0034】
(2)第二の実施形態
図3は、本発明のガス感知体の第二の実施形態を示す概略断面図である。
図3において、図1に示したガス感知体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態のガス感知体30が、上述のガス感知体10と異なる点は、基材11の他方の面11bに、ガス反応部12が設けられ、剥離層13には、その厚み方向に貫通する、すなわち、その第一粘着層14と接する面から基材11の他方の面11bに設けられたガス反応部12に至る多数の貫通孔からなるガス透過部31が設けられ、かつ、基材11には、その厚み方向に貫通する多数の貫通孔からなるガス透過部が設けられていない点である。
このガス感知体30は、ガス感知体10と同様に機能し、ガス感知体10と同様の効果がある。
【0035】
(3)第三の実施形態
図4は、本発明のガス感知体の第三の実施形態を示す概略断面図である。
図4において、図1に示したガス感知体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態のガス感知体40が、上述のガス感知体10と異なる点は、第一粘着層14の剥離層13と重ねる側の面に、被膜41を設けた点である。
被膜41をなす材料としては、ウレタン系オリゴマーと、これに相溶するアクリレートモノマーを組み合わせてなる紫外線硬化型擬似接着ニスなどが用いられる。
このガス感知体40は、ガス感知体10と同様に機能し、ガス感知体10と同様の効果がある。
【0036】
(4)第四の実施形態
図5は、本発明のガス感知体の第四の実施形態を示す概略断面図である。
図5において、図2に示したガス感知体30と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態のガス感知体50が、上述のガス感知体30と異なる点は、第一粘着層14の剥離層13と重ねる側の面に、被膜51を設けた点である。
被膜51をなす材料としては、上述の被膜41をなす材料と同様のものが用いられる。
このガス感知体50は、ガス感知体10と同様に機能し、ガス感知体10と同様の効果がある。
【0037】
(5)第五の実施形態
図6は、本発明のガス感知体の第五の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
図6中、符号60はガス感知体、61は基材、62はガス反応部、63は剥離層、64は粘着層、65は剥離基材、66は貫通孔、67は鎖や紐などからなるストラップ、をそれぞれ示している。
この実施形態のガス感知体60は、折り線61Cを堺にして第一領域61Aと第二領域61Bが連接された基材61と、折り線61Cを境にして折り返された基材61の間(第一領域61Aと第二領域61Bの間)に設けられたガス反応部62および粘着層64と、剥離層63を介して、基材61の外表面61aを覆う剥離基材65とから概略構成されている。
また、ガス反応部62は、第一領域61Aと第二領域61Bの間のほぼ中央部に設けられている。
そして、粘着層64は、ガス反応部62の外縁に設けられている。
さらに、ガス感知体60の片隅には、ガス感知体60を厚み方向に貫通する貫通孔66が形成され、この貫通孔66にストラップ67が挿通されている。
【0038】
基材61としては、ガラス繊維、アルミナ繊維などの無機繊維からなる織布、不織布、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維からなる織布、不織布などのガス透過性の素材からなるものが用いられる。
【0039】
ガス反応部62は、上記のガス反応部12をなす不可逆性のガス反応剤と同様のものから構成されている。
剥離層63は、上記の剥離層13をなす剥離剤と同様のものから構成されている。
粘着層64は、上記の第二粘着層16をなす粘着剤と同様のものから構成されている。
剥離基材65としては、上記の第一剥離基材15と同様のものが用いられる。
【0040】
次に、図7を参照して、この実施形態のガス感知体60の使用方法について説明する。
青果物などの生鮮品を容れる容器内に設けられたフックなどに、ストラップ67を引っ掛け、ガス感知体60を容器内に配する。
次いで、容器内に生鮮品を容れた状態で、基材61と剥離層63の界面から、剥離層63と剥離基材65を剥離して、基材61を露出させる(図6(a)、(b)、(c)参照)。
この状態で生鮮品からエチレンガス、アンモニアガス、アミンガスが発生すると、ガス透過性の素材からなる基材61を透過した、これらのガスがガス反応部62をなす試薬と反応して、ガス反応部62が変色する。これにより、生鮮品の品質を判定し、表示することができる。
【0041】
次に、図8を参照して、この実施形態のガス感知体60の製造方法について説明する。
まず、スクリーン印刷などの印刷法により、基材61の第一領域61Aの一方の面61aのほぼ中央部に、不可逆性のガス反応剤を含むインキを印刷することにより、所定の形状のガス反応部62を形成する。
次いで、スクリーン印刷などの印刷法により、基材61の第一領域61Aの一方の面61aにおいて、ガス反応部62の外縁に粘着剤を塗布することにより、粘着層64を形成する。
次いで、スクリーン印刷などの印刷法により、基材61の他方の面61bに、剥離剤を塗布することにより、剥離層63を形成する。
次いで、剥離層63の基材61と接している面とは反対の面に、剥離基材65を貼付する。
そして、折り線61Cを境にして、基材61、剥離層63および剥離基材65から構成される積層体を折り返して(図8(a)参照)、基材61の第二領域61Bの一方の面61aを、第一領域61Aに設けられたガス反応部62および粘着層64に重ね合わせることにより、ガス感知体60を得る(図8(b)参照)。
【0042】
この実施形態のガス感知体60は、基材61と剥離層63の界面から、剥離層63と剥離基材65を剥離して、基材61を露出させることにより、ガス反応部62がガス感知機能を発揮するので、生鮮品から発生したガス以外のガスによってガス感知機能が損なわれることを防止できる。
また、この実施形態のガス感知体60は、基材61および剥離基材65以外の構成要素を、スクリーン印刷法などの印刷法によって形成することができるので、低コストで製造することができる。
【0043】
(6)第六の実施形態
図9は、本発明のガス感知体の第六の実施形態を示す概略断面図である。
図1に示したガス感知体10、図3に示したガス感知体30、図4に示したガス感知体40、図5に示したガス感知体50は、第二粘着層16を介して容器などに貼付して、それぞれのガス透過部を生鮮品側に向けて使用したが、これらのガス感知体は、第二粘着層16を介して、生鮮品に直接貼付して、ガス透過部を生鮮品とは反対側に向けて用いることもできる。
ここでは、図3に示したガス感知体30を例示し、生鮮品に、このガス感知体30を直接貼付して用いる方法を説明する。
【0044】
第二剥離基材17を剥離した後、第二粘着層16の粘着面16aを、青果物などの生鮮品70の表面70aに貼付する(図9(a)、(b)参照)。
次いで、この状態で、剥離層13と第一粘着層14の界面から、第一剥離基材15と第一粘着層14を剥離して、ガス透過部31を外部と連通させる(図9(c)参照)。
なお、より精度良く生鮮品の品質の判定を行うためには、ガス感知体30を貼付した生鮮品70を密閉可能な容器に容れておくことが好ましい。なぜならば、ガス感知体30を貼付した生鮮品70を密閉可能な容器に容れておけば、外部の雰囲気の影響を受け難くなり、生鮮品から発生したガスのみにより、ガス反応部12が反応するので、精度良く生鮮品の品質の判定を行うことができるからである。
この状態で生鮮品からエチレンガス、アンモニアガス、アミンガスが発生すると、ガス透過部31を通ってきたガスがガス反応部12をなす試薬と反応して、ガス反応部12が変色する。これにより、生鮮品の品質を判定し、表示することができる。
【0045】
この実施形態によれば、生鮮品にガス感知体30を直接貼付した後、第一剥離基材15と第一粘着層14を剥離して、剥離層13を露出させ、第二ガス透過部19と第一ガス透過部18を外部と連通させることにより、ガス反応部12がガス感知機能を発揮するので、生鮮品から発生したガス以外のガスによってガス感知機能が損なわれることを防止できる。
さらに、このガス感知体30は、基材11の他方の面11bに、シリコーンからなる剥離層13が設けられているので、この剥離層13が撥水層としても機能し、ガス透過部31内に水分が浸入することを防止できる。したがってこのガス感知体30によれば、生鮮品や空気中に含まれる水分によって、ガス反応部12のガス感知機能が損なわれることを防止できる。
【0046】
(7)第七の実施形態
図10は、本発明のガス感知体の第七の実施形態を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
図10および11中、符号81はラッピングフィルムなどの包装材、82は包装材81を収納する箱などの容器、をそれぞれ示している。
図1に示したガス感知体10、図3に示したガス感知体30、図4に示したガス感知体40、図5に示したガス感知体50は、第二粘着層16を介して容器などに貼付して、それぞれのガス透過部を生鮮品側に向けて使用したが、これらのガス感知体は、第二粘着層16を介して、ラッピングフィルムなどの包装材に貼付して用いることもできる。
ここでは、図3に示したガス感知体30を例示し、包装材81に、このガス感知体30を貼付して用いる場合を説明する。
【0047】
この実施形態では、ロール状の包装材81が収納された容器82の外側面82aに、ガス感知体30が配されている場合を例示する。
この実施形態では、接着剤などを介して、容器82の外側面82aに第二剥離基材17の第二粘着層16と接している面とは反対の面が貼着され、容器82の外側面82aにガス感知体30が配されている。
包装材81としては、特に限定されないが、包装材81によって生鮮品を包装した後、外部からガス反応部12の変色の度合を観察することができるようにするために、光透過性のものが用いられる。
【0048】
次に、図11を参照して、この実施形態のガス感知体の使用方法について説明する。
第二剥離基材17と第二粘着層16の界面から、第二粘着層16、基材11、剥離層13、第一粘着層14および第一粘着層15から構成される積層体を剥離した後、第二粘着層16の粘着面16aを、包装材81の表面81aに貼付する(図11(a)、(b)参照)。
次いで、この状態で、剥離層13と第一粘着層14の界面から、第一剥離基材15と第一粘着層14を剥離して、ガス透過部31を外部と連通させる(図11(c)参照)。
次いで、ガス透過部31が内側になるようにして、この包装材81により生鮮品を包装する。
この状態で生鮮品からエチレンガス、アンモニアガス、アミンガスが発生すると、ガス透過部31を通ってきたガスがガス反応部12をなす試薬と反応して、ガス反応部12が変色する。これにより、生鮮品の品質を判定し、表示することができる。
【0049】
この実施形態によれば、包装材81の表面81aにガス感知体30を貼付し、包装材81によって生鮮品を包装する直前に、第一剥離基材15と第一粘着層14を剥離して、剥離層13を露出させ、ガス透過部31を外部と連通させることにより、ガス反応部12がガス感知機能を発揮するので、生鮮品から発生したガス以外のガスによってガス感知機能が損なわれることを防止できる。また、特に生鮮品を容れる容器を用いなくても、生鮮品の品質の管理と、品質の判定を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のガス感知体は、飲酒や喫煙のチェック、臭気検知、酸素検知などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のガス感知体の第一の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図2】本発明のガス感知体の第一の実施形態の使用方法を示す概略断面図である。
【図3】本発明のガス感知体の第二の実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明のガス感知体の第三の実施形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明のガス感知体の第四の実施形態を示す概略断面図である。
【図6】本発明のガス感知体の第五の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図7】本発明のガス感知体の第五の実施形態の使用方法を示す概略断面図である。
【図8】本発明のガス感知体の第五の実施形態の製造方法を示す概略断面図である。
【図9】本発明のガス感知体の第六の実施形態を示す概略断面図である。
【図10】本発明のガス感知体の第七の実施形態を示す概略断面図である。
【図11】本発明のガス感知体の第七の実施形態の使用方法を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10,30,40,50,60・・・ガス感知体、11,61・・・基材、12,62・・・ガス反応部、13,63・・・剥離層、14・・・第一粘着層、15・・・第一剥離基材、16・・・第二粘着層、17・・・第二剥離基材、18・・・第一ガス透過部、19・・・第二ガス透過部、31・・・ガス透過部、41,51・・・被膜、64・・・粘着層、65・・・剥離基材、66・・・貫通孔、67・・・ストラップ、81・・・包装材、82・・・容器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物、肉、魚などの生鮮品の品質を、これらの生鮮品が発生するガスを感知することにより判定し、表示するガス感知体に関し、さらに詳しくは、果物や野菜などの青果物が発生するエチレンガス、肉が発生するアンモニアガス、および、魚が発生するアミンガスを感知し、これらの生鮮品の品質を表示するガス感知体に関する。
【背景技術】
【0002】
果物などの青果物は、熟成しないうちに出荷され、消費者の手に渡ることが多く、必ずしも購入した時点が青果物の食べ頃とは限らない。そこで、消費者の元で青果物の熟度を簡易に判定し、その食べ頃を知ることができる手段が望まれていた。
ところで、青果物は後熟が起きるとエチレンガスを発生する。そこで、この性質を利用し、エチレンガスと呈色反応する試薬を用いて、青果物から発生するエチレンガスを経時的に検知することにより、青果物の熟度を判定する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、このエチレンガスの検知方法を応用して、繊維質基材層の内部もしくは表面に保持されたエチレンガス検知物質を備えたエチレンガス検知インジケーター付粘着ラベルが開示されている(例えば、特許文献2参照)。このエチレンガス検知物質は、エチレンガスの存在下で変色する性質を有している。
【0003】
また、肉は後熟が起きるとアンモニアガスを発生することが知られている。従って、この性質を利用し、肉から発生するアンモニアガスを経時的に検知することにより、肉の熟度を判定することができる。アンモニアガスを検知する手段として、アンモニアガス試験紙を用いたアンモニアガス測定方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
同様に、魚は後熟が起きるとアミンガスを発生することが知られている。従って、この性質を利用し、魚から発生するアミンガスを経時的に検知することにより、魚の熟度を判定することができる。アミンガスの中でも、トリメチルアミン(TMA)を検知する手段として、ルテニウム(Ru)を酸化チタン(TiO2)に添加したTMAセンサを用いたアミンガス測定装置が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平1−22581号公報
【特許文献2】実開平2−123976号公報
【特許文献3】特開2003−121365公報
【特許文献4】特開平6−34613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に開示されている方法では、青果物に、直接、ガスを検知する手段(試薬、試験紙など)を接触させて用いるため、衛生的でないという問題があった。また、青果物に含まれる水分によって、ガスを検知する手段の機能が損なわれ、目的とするガスの検知ができないという問題もあった。
また、特許文献3、4に開示されている方法では、肉や魚から発生するガスを、ガスを検知する手段に接触させるためには、大がかりな装置が必要となり、コストが嵩むという問題があった。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、衛生的であり、生鮮品に含まれる水分による機能の劣化がなく、簡易に生鮮品から発生するガスを感知して、生鮮品の品質を判定し、表示することができるガス感知体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス感知体は、不可逆性のガス反応剤からなるガス反応部と、該ガス反応部が設けられた基材と、剥離層を介して前記基材に重ね合わせられた剥離基材とを備えたガス感知体であって、前記基材および/または前記剥離層は、前記ガス反応部に隣接し、かつ、前記剥離基材を剥離することにより、前記ガス反応部を外部と連通させるガス透過部を有することを特徴とする。
【0007】
前記ガス反応部および前記剥離層は、印刷法により形成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガス感知体は、不可逆性のガス反応剤からなるガス反応部と、該ガス反応部が設けられた基材と、剥離層を介して前記基材に重ね合わせられた剥離基材とを備えたガス感知体であって、前記基材および/または前記剥離層は、前記ガス反応部に隣接し、かつ、前記剥離基材を剥離することにより、前記ガス反応部を外部と連通させるガス透過部を有するので、剥離基材を剥離して、剥離層を露出させ、ガス透過部を外部と連通させることにより、ガス反応部がガス感知機能を発揮するので、生鮮品から発生したガス以外のガスによってガス感知機能が損なわれることを防止できる。
また、本発明のガス感知体は、生鮮品に直接貼付することなく、簡易かつ効率的に生鮮品から発生するガスを感知し、生鮮品の品質を判定し、表示することができるので、衛生的かつ安全に、生鮮品の品質を判定することができる。
また、本発明のガス感知体は、基材の剥離基材側の面に、剥離層が設けられているので、この剥離層が撥水層としても機能し、ガス透過部内に水分が浸入することを防止できる。したがって、本発明のガス感知体によれば、生鮮品や空気中に含まれる水分によって、ガス反応部のガス感知機能が損なわれることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のガス感知体の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0010】
(1)第一の実施形態
図1は、本発明のガス感知体の第一の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
図1中、符号10はガス感知体、11は基材、12はガス反応部、13は剥離層、14は第一粘着層、15は第一剥離基材、16は第二粘着層、17は第二剥離基材、18は第一ガス透過部、19は第二ガス透過部、をそれぞれ示している。
この実施形態のガス感知体10は、基材11と、この基材11の一方の面11aに設けられた不可逆性のガス反応剤からなるガス反応部12と、基材11の他方の面11b側に順に配された剥離層13、第一粘着層14および第一剥離基材15と、基材11の一方の面11a側に順に配された第二粘着層16および第二剥離基材17とから概略構成されている。
【0011】
また、基材11には、その厚み方向に貫通する、すなわち、その他方の面11bから一方の面11aに設けられたガス反応部12に至る多数の貫通孔からなる第一ガス透過部18が設けられている。そして、この第一ガス透過部18内には、ガス反応部12の基材11の一方の面11a側の面が露出している。
さらに、剥離層13には、その厚み方向に貫通する、すなわち、その第一粘着層14と接する面から基材11と接する面に至り、第一ガス透過部18と連接する多数の貫通孔からなる第二ガス透過部19が設けられている。
【0012】
また、第一剥離基材15は、第一粘着層14を介して、第二ガス透過部19を覆うように、基材11の他方の面11b側に重ね合わせられている。
そして、第二粘着層16は、基材11の一方の面11aに設けられたガス反応部12を覆うように配されている。
【0013】
基材11としては、ガラス繊維、アルミナ繊維などの無機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたもの、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたものや、あるいはこれらに樹脂ワニスを含浸させて成形した複合基材や、ポリアミド系樹脂基材、ポリエステル系樹脂基材、ポリオレフィン系樹脂基材、ポリイミド系樹脂基材、エチレン−ビニルアルコール共重合体基材、ポリビニルアルコール系樹脂基材、ポリ塩化ビニル系樹脂基材、ポリ塩化ビニリデン系樹脂基材、ポリスチレン系樹脂基材、ポリカーボネート系樹脂基材、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合系樹脂基材、ポリエーテルスルホン系樹脂基材などのプラスチック基材や、あるいはこれらにマット処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、フレームプラズマ処理、オゾン処理、または各種易接着処理などの表面処理を施したものなどの公知のものから選択して用いられる。
【0014】
ガス反応部12をなす不可逆性のガス反応剤としては、エチレンガスと呈色反応する試薬、アンモニアガスおよびアミンガスと呈色反応する試薬などが用いられる。ガス反応部12を形成するには、溶媒または溶液にこれらの試薬を溶解して調製したインキを用いる。
なお、不可逆性のガス反応剤とは、一旦、ガスと反応して変色したら、変色前の状態(変色前の色)に戻らない試薬のことである。
エチレンガスと呈色反応する試薬としては、硫酸パラジウム触媒を含むモリブデン酸アンモニウム酸性水溶液などが用いられ、これを酸性溶液とするためには濃硫酸を混合する。この試薬のエチレンガスによる呈色反応は、下記の式(1)で表される。
3(NH4)2O・7MoO3→Mo2O3・3MoO3・6H2O (1)
モリブデン酸アンモニウム((NH4)2O・7MoO3)は白色であり、この物質がエチレンガスと呈色反応することによって生成するモリブデンブルー(Mo2O3・3MoO3・6H2O)は青色である。
なお、モリブデン酸アンモニウムは、吸湿すると失活する(呈色反応を示さなくなる)ため、エチレンガスには接触しても、水分と接触しないようにする必要がある。
また、アンモニアガスおよびアミンガスと呈色反応する試薬としては、アマニ油などが用いられる。
【0015】
剥離層13をなす剥離剤としては、トルエンなどの有機溶媒を溶媒とする溶剤系シリコーン、熱硬化型や紫外線硬化型などの無溶剤系シリコーンなどが用いられる。これらの剥離材の中でも、剥離層13をなす剥離剤としては、光透過性のものが用いられる。
【0016】
第一粘着層14をなす粘着剤としては、主に貼着後も剥離が可であり、剥離後は再貼付が不可な材料が用いられる。このような材料としては、110gf/25mm〜170gf/25mmの剥離力を有する材料が用いられる。このような材料としては、例えば、(1)非剥離性感圧接着剤基剤と、この非剥離性感圧接着剤基剤に対して非親和性の微粒状充填剤とからなる接着剤組成物、(2)粘着主剤と、粘着付与剤と、無機充填剤とを含む配合物に、無機充填剤と反応性を有しないカップリング剤、粘着主剤と相溶性を有しない樹脂などを添加した感圧性の粘着剤などが挙げられる。
なお、第一粘着層14をなす粘着剤としては、通常の粘着剤、剥離後も再貼付可能な粘着剤などを用いてもよい。
【0017】
上記の接着剤組成物に含まれる非剥離性感圧接着剤基剤としては、剥離基材15に塗布した後、単に剥離層13に接触した状態では接着しないが、加圧により接着する性質を有するものが挙げられる。非剥離性感圧接着剤基剤としては、従来の感圧接着剤として慣用されているものの基剤の中から任意に選択して用いることができるが、特に、天然ゴムにスチレンとメタクリル酸メチルとをグラフト共重合させて得られた天然ゴムラテックスが、耐ブロッキング性、耐熱性、耐摩耗性などの点で好適である。
【0018】
上記の接着剤組成物に含まれる微粒状充填剤としては、非剥離性感圧接着剤基剤を構成する各成分によって溶解または膨潤されないものが挙げられる。このような微粒状充填剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、活性白土、球状アルミナ、小麦デンプン、シリカ、ガラス粉末、シラスバルーンなどが挙げられる。本発明においては、これらの微粒状充填剤から選択される2種以上を組み合わせて用いる必要があり、特に、シリカと他の充填剤との組合せが好適である。また、この2種以上の微粒状充填剤としては、粒径の異なるものを選ぶことが好ましく、このように粒径の異なる2種以上を組み合わせて用いることにより接着剤層の表面を凹凸状に形成し、剥離性能を向上させることができる。また、上記の非剥離性感圧接着剤基剤にシリカを添加することにより、接着剤組成物の塗膜を強化することができる。さらに、シリカは多孔質であるため、非剥離性感圧接着剤基剤がシリカの表面に付着しやすく、接着力や剥離力を調整しやすい上、シリコーンオイルを用いているプリンタにより、ノンインパクトプリンタ方式で印字した場合でも、シリカがシリコーンオイルを吸収するので、接着剤組成物がシリコーンオイルにより接着しなくなることもない。これらの微粒状充填剤は、平均粒子径が10mμm〜30μmの範囲にあるものが好ましく、平均粒子径が1μm〜20μmの範囲にあるものがより好ましい。
【0019】
上記の感圧性の粘着剤に含まれる粘着主剤としては、ガラス転移点(Tg)が低く、ベタツキ感(タック感)の強い樹脂などが挙げられる。このような粘着主剤としては、例えば天然ゴム(NR)、エステル化天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが挙げられる。
【0020】
上記の感圧性の粘着剤に含まれる粘着付与剤としては、ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、変成ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、不均化ロジンエステル、重合ロジンエステルなどが挙げられる。
【0021】
上記の感圧性の粘着剤に含まれる無機充填剤としては、上記の粘着主剤とは親和性を有しない、マイクロシリカ、合成ゼオライト、活性アルミナゲル、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、タルク、クレー、カオリン、活性白土、シラスバルーンなどの微粒状物質が挙げられる。
【0022】
また、上記の感圧性の粘着剤には、上記の無機充填剤に加えて、アクリルなどの樹脂ビーズ、精製デンプン、コーンスターチ、セルロース粉末などの微粒状物質を併用してもよい。
【0023】
上記の感圧性の粘着剤に含まれるカップリング剤としては、上記の無機充填剤との結合性を有し、かつ上記の粘着主剤と親和性を有するものが挙げられる。このようなカップリング剤としては、例えば、ビニルクリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シランなどのシラン単独またはこれらの混合物、さらにはこれらの部分加水分解物、または部分共加水分解物;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネートなどのチタンオルトエステル、チタンアセチルアセトネート、トリエタノールアミンチタネートなどのチタンキレート、ポリヒドロキシチタンステアレート、ポリイソプロポキシチタンステアレートなどのチタンアシレート、以上のような有機チタン化合物単独またはこれらの混合物、アルミニウムイソプロピレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウムアルコレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウムキレート化合物、以上のような有機アルミニウム化合物単独またはこれらの混合物;その他の有機金属化合物;以上のシランおよび有機金属化合物の混合物などが挙げられる。
【0024】
上記の感圧性の粘着剤に含まれ、上記の粘着主剤と相溶性を有しない樹脂としては、水分散性高分子ポリエステル、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ケイ素含有水溶性ポリマー、熱可塑性エラストマー、また、低密度ポリエチレンなどの低分子ポリエチレン、アイオノマー、酢酸ビニル−オレフィン共重合体、セルロース誘導体などが挙げられる。これらの樹脂の中でも、ガラス転移温度(Tg)が30℃〜80℃、重量平均分子量が10,000〜25,000、粘度が20〜20,000cps(30℃)のものが好ましい。
【0025】
第一剥離基材15は、剥離層13を保護するとともに、剥離層13に設けられた第二ガス透過部19を覆い、第二ガス透過部19および第一ガス透過部18が外部と連通することを防止するために、剥離層13の基材11と接している面とは反対の面側に貼付されている。
第一剥離基材15としては、例えば、上質紙、グラシン紙、コート紙、アート紙、模造紙などから選択した紙が用いられる。
また、第一剥離基材15の第一粘着層14と接する面には、各種の情報が印刷されていてもよい。この情報としては、例えば、生鮮品の生産者に関する情報、生鮮品を用いた料理の作り方、生鮮品を識別、管理するための情報を表すバーコードなどが挙げられる。
【0026】
第二粘着層16は、上述の第一粘着層14と比べて、貼着後は剥離困難または剥離不可な接着剤で形成されている。このような接着剤としては、220gf/25mm〜340gf/25mmの剥離力を有する接着剤が用いられる。
【0027】
第二剥離基材17としては、例えば、上質紙、グラシン紙、コート紙、アート紙、模造紙などから選択した紙の第二粘着層16と接する面に剥離剤が塗布されたものが用いられる。
【0028】
第一ガス透過部18をなす貫通孔の断面形状は、特に限定されないが、円形、楕円形、正方形、矩形、三角形などいかなる形状であってもよい。
また、この貫通孔の開口径は、特に限定されないが、生鮮品から発生したガスを容易に透過し、水分を透過し難い大きさが好ましい。
【0029】
第二ガス透過部19をなす貫通孔の断面形状は、特に限定されないが、円形、楕円形、正方形、矩形、三角形などいかなる形状であってもよい。
また、この貫通孔の開口径は、特に限定されないが、生鮮品から発生したガスを容易に透過し、水分を透過し難い大きさが好ましく、第一ガス透過部18をなす貫通孔の開口径よりもわずかに大きいことが好ましい。
【0030】
次に、図2を参照して、この実施形態のガス感知体10の使用方法について説明する。
第二剥離基材17を剥離した後、第二粘着層16の粘着面16aを、青果物などの生鮮品を容れる容器(被着体)20の一面20aに貼付する(図2(a)、(b)参照)。
次いで、容器20内に生鮮品を容れた状態で、剥離層13と第一粘着層14の界面から、第一剥離基材15と第一粘着層14を剥離して、剥離層13を露出させ、第二ガス透過部19と第一ガス透過部18を外部と連通させる(図2(c)参照)。
なお、より精度良く生鮮品の品質の判定を行うためには、生鮮品を容れる容器20は密閉可能なものが好ましい。なぜならば、容器20内に生鮮品を容れた後、容器20を密閉する直前に第一剥離基材15と第一粘着層14を剥離して直ぐに容器20を密閉すれば、外部の雰囲気の影響を受け難くなり、生鮮品から発生したガスのみにより、ガス反応部12が反応するので、精度良く生鮮品の品質の判定を行うことができるからである。
この状態で生鮮品からエチレンガス、アンモニアガス、アミンガスが発生すると、第二ガス透過部19と第一ガス透過部18を通ってきたガスが、ガス反応部12をなす試薬と反応して、ガス反応部12が変色する。これにより、生鮮品の品質を判定し、表示することができる。
【0031】
次に、図1を参照して、この実施形態のガス感知体10の製造方法について説明する。
まず、基材11の所定の位置に、レーザ法や打ち抜き法などにより、基材11の厚み方向に貫通する多数の貫通孔からなる第一ガス透過部18を形成する。
次いで、スクリーン印刷などの印刷法により、基材11の一方の面11aに、全ての貫通孔の開口部を覆うように、不可逆性のガス反応剤を含むインキを印刷することにより、所定の形状のガス反応部12を形成する。
次いで、スクリーン印刷などの印刷法により、基材11の一方の面11aに、ガス反応部12を覆うように、粘着剤を塗布することにより、第二粘着層16を形成する。
次いで、第二粘着層16の粘着面(基材11と接している面とは反対の面)に、第二剥離基材17を貼付する。
次いで、スクリーン印刷などの印刷法により、基材11の他方の面11bに、剥離剤を塗布することにより、剥離層13を形成する。
次いで、剥離層13の所定の位置に、レーザ法や打ち抜き法などにより、剥離層13の厚み方向に貫通し、かつ、上記の第一ガス透過部18をなす貫通孔と連接する多数の貫通孔からなる第二ガス透過部19を形成する。
次いで、スクリーン印刷などの印刷法により、剥離層13の基材11と接している面とは反対の面に、全ての貫通孔の開口部を覆うように、粘着剤を塗布することにより、第一粘着層14を形成する。
そして、第一粘着層14の剥離層13と接している面とは反対の面に、第一剥離基材15を貼付し、ガス感知体10を得る。
【0032】
この実施形態のガス感知体10は、第一剥離基材15と第一粘着層14を剥離して、剥離層13を露出させ、第二ガス透過部19と第一ガス透過部18を外部と連通させることにより、ガス反応部12がガス感知機能を発揮するので、生鮮品から発生したガス以外のガスによってガス感知機能が損なわれることを防止できる。
また、このガス感知体10は、第二粘着層16を介して、このガス感知体10を、生鮮品を容れた容器20内に貼付し、生鮮品の近傍に配することができるので、生鮮品にガス感知体を直接貼付することなく、簡易かつ効率的に生鮮品から発生するガスを感知し、生鮮品の品質を判定し、表示することができる。したがって、このガス感知体10によれば、衛生的かつ安全に、生鮮品の品質を判定することができる。
また、このガス感知体10は、基材11の他方の面11bに、シリコーンからなる剥離層13が設けられているので、この剥離層13が撥水層としても機能し、第一ガス透過部18および第二ガス透過部19内に水分が浸入することを防止できる。したがって、このガス感知体10によれば、生鮮品や空気中に含まれる水分によって、ガス反応部12のガス感知機能が損なわれることを防止できる。
さらに、この実施形態のガス感知体10は、基材11、第一剥離基材15および第二剥離基材17以外の構成要素を、スクリーン印刷法などの印刷法によって形成することができるので、低コストで製造することができる。
【0033】
なお、この実施形態では、基材11にその厚み方向に貫通する多数の貫通孔からなる第一ガス透過部18を形成したガス感知体10を例示したが、本発明のガス感知体はこれに限定されない。本発明のガス感知体にあっては、基材がガス透過性の素材からなる場合、基材にガス透過部を設ける必要はない。
【0034】
(2)第二の実施形態
図3は、本発明のガス感知体の第二の実施形態を示す概略断面図である。
図3において、図1に示したガス感知体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態のガス感知体30が、上述のガス感知体10と異なる点は、基材11の他方の面11bに、ガス反応部12が設けられ、剥離層13には、その厚み方向に貫通する、すなわち、その第一粘着層14と接する面から基材11の他方の面11bに設けられたガス反応部12に至る多数の貫通孔からなるガス透過部31が設けられ、かつ、基材11には、その厚み方向に貫通する多数の貫通孔からなるガス透過部が設けられていない点である。
このガス感知体30は、ガス感知体10と同様に機能し、ガス感知体10と同様の効果がある。
【0035】
(3)第三の実施形態
図4は、本発明のガス感知体の第三の実施形態を示す概略断面図である。
図4において、図1に示したガス感知体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態のガス感知体40が、上述のガス感知体10と異なる点は、第一粘着層14の剥離層13と重ねる側の面に、被膜41を設けた点である。
被膜41をなす材料としては、ウレタン系オリゴマーと、これに相溶するアクリレートモノマーを組み合わせてなる紫外線硬化型擬似接着ニスなどが用いられる。
このガス感知体40は、ガス感知体10と同様に機能し、ガス感知体10と同様の効果がある。
【0036】
(4)第四の実施形態
図5は、本発明のガス感知体の第四の実施形態を示す概略断面図である。
図5において、図2に示したガス感知体30と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態のガス感知体50が、上述のガス感知体30と異なる点は、第一粘着層14の剥離層13と重ねる側の面に、被膜51を設けた点である。
被膜51をなす材料としては、上述の被膜41をなす材料と同様のものが用いられる。
このガス感知体50は、ガス感知体10と同様に機能し、ガス感知体10と同様の効果がある。
【0037】
(5)第五の実施形態
図6は、本発明のガス感知体の第五の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
図6中、符号60はガス感知体、61は基材、62はガス反応部、63は剥離層、64は粘着層、65は剥離基材、66は貫通孔、67は鎖や紐などからなるストラップ、をそれぞれ示している。
この実施形態のガス感知体60は、折り線61Cを堺にして第一領域61Aと第二領域61Bが連接された基材61と、折り線61Cを境にして折り返された基材61の間(第一領域61Aと第二領域61Bの間)に設けられたガス反応部62および粘着層64と、剥離層63を介して、基材61の外表面61aを覆う剥離基材65とから概略構成されている。
また、ガス反応部62は、第一領域61Aと第二領域61Bの間のほぼ中央部に設けられている。
そして、粘着層64は、ガス反応部62の外縁に設けられている。
さらに、ガス感知体60の片隅には、ガス感知体60を厚み方向に貫通する貫通孔66が形成され、この貫通孔66にストラップ67が挿通されている。
【0038】
基材61としては、ガラス繊維、アルミナ繊維などの無機繊維からなる織布、不織布、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維からなる織布、不織布などのガス透過性の素材からなるものが用いられる。
【0039】
ガス反応部62は、上記のガス反応部12をなす不可逆性のガス反応剤と同様のものから構成されている。
剥離層63は、上記の剥離層13をなす剥離剤と同様のものから構成されている。
粘着層64は、上記の第二粘着層16をなす粘着剤と同様のものから構成されている。
剥離基材65としては、上記の第一剥離基材15と同様のものが用いられる。
【0040】
次に、図7を参照して、この実施形態のガス感知体60の使用方法について説明する。
青果物などの生鮮品を容れる容器内に設けられたフックなどに、ストラップ67を引っ掛け、ガス感知体60を容器内に配する。
次いで、容器内に生鮮品を容れた状態で、基材61と剥離層63の界面から、剥離層63と剥離基材65を剥離して、基材61を露出させる(図6(a)、(b)、(c)参照)。
この状態で生鮮品からエチレンガス、アンモニアガス、アミンガスが発生すると、ガス透過性の素材からなる基材61を透過した、これらのガスがガス反応部62をなす試薬と反応して、ガス反応部62が変色する。これにより、生鮮品の品質を判定し、表示することができる。
【0041】
次に、図8を参照して、この実施形態のガス感知体60の製造方法について説明する。
まず、スクリーン印刷などの印刷法により、基材61の第一領域61Aの一方の面61aのほぼ中央部に、不可逆性のガス反応剤を含むインキを印刷することにより、所定の形状のガス反応部62を形成する。
次いで、スクリーン印刷などの印刷法により、基材61の第一領域61Aの一方の面61aにおいて、ガス反応部62の外縁に粘着剤を塗布することにより、粘着層64を形成する。
次いで、スクリーン印刷などの印刷法により、基材61の他方の面61bに、剥離剤を塗布することにより、剥離層63を形成する。
次いで、剥離層63の基材61と接している面とは反対の面に、剥離基材65を貼付する。
そして、折り線61Cを境にして、基材61、剥離層63および剥離基材65から構成される積層体を折り返して(図8(a)参照)、基材61の第二領域61Bの一方の面61aを、第一領域61Aに設けられたガス反応部62および粘着層64に重ね合わせることにより、ガス感知体60を得る(図8(b)参照)。
【0042】
この実施形態のガス感知体60は、基材61と剥離層63の界面から、剥離層63と剥離基材65を剥離して、基材61を露出させることにより、ガス反応部62がガス感知機能を発揮するので、生鮮品から発生したガス以外のガスによってガス感知機能が損なわれることを防止できる。
また、この実施形態のガス感知体60は、基材61および剥離基材65以外の構成要素を、スクリーン印刷法などの印刷法によって形成することができるので、低コストで製造することができる。
【0043】
(6)第六の実施形態
図9は、本発明のガス感知体の第六の実施形態を示す概略断面図である。
図1に示したガス感知体10、図3に示したガス感知体30、図4に示したガス感知体40、図5に示したガス感知体50は、第二粘着層16を介して容器などに貼付して、それぞれのガス透過部を生鮮品側に向けて使用したが、これらのガス感知体は、第二粘着層16を介して、生鮮品に直接貼付して、ガス透過部を生鮮品とは反対側に向けて用いることもできる。
ここでは、図3に示したガス感知体30を例示し、生鮮品に、このガス感知体30を直接貼付して用いる方法を説明する。
【0044】
第二剥離基材17を剥離した後、第二粘着層16の粘着面16aを、青果物などの生鮮品70の表面70aに貼付する(図9(a)、(b)参照)。
次いで、この状態で、剥離層13と第一粘着層14の界面から、第一剥離基材15と第一粘着層14を剥離して、ガス透過部31を外部と連通させる(図9(c)参照)。
なお、より精度良く生鮮品の品質の判定を行うためには、ガス感知体30を貼付した生鮮品70を密閉可能な容器に容れておくことが好ましい。なぜならば、ガス感知体30を貼付した生鮮品70を密閉可能な容器に容れておけば、外部の雰囲気の影響を受け難くなり、生鮮品から発生したガスのみにより、ガス反応部12が反応するので、精度良く生鮮品の品質の判定を行うことができるからである。
この状態で生鮮品からエチレンガス、アンモニアガス、アミンガスが発生すると、ガス透過部31を通ってきたガスがガス反応部12をなす試薬と反応して、ガス反応部12が変色する。これにより、生鮮品の品質を判定し、表示することができる。
【0045】
この実施形態によれば、生鮮品にガス感知体30を直接貼付した後、第一剥離基材15と第一粘着層14を剥離して、剥離層13を露出させ、第二ガス透過部19と第一ガス透過部18を外部と連通させることにより、ガス反応部12がガス感知機能を発揮するので、生鮮品から発生したガス以外のガスによってガス感知機能が損なわれることを防止できる。
さらに、このガス感知体30は、基材11の他方の面11bに、シリコーンからなる剥離層13が設けられているので、この剥離層13が撥水層としても機能し、ガス透過部31内に水分が浸入することを防止できる。したがってこのガス感知体30によれば、生鮮品や空気中に含まれる水分によって、ガス反応部12のガス感知機能が損なわれることを防止できる。
【0046】
(7)第七の実施形態
図10は、本発明のガス感知体の第七の実施形態を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
図10および11中、符号81はラッピングフィルムなどの包装材、82は包装材81を収納する箱などの容器、をそれぞれ示している。
図1に示したガス感知体10、図3に示したガス感知体30、図4に示したガス感知体40、図5に示したガス感知体50は、第二粘着層16を介して容器などに貼付して、それぞれのガス透過部を生鮮品側に向けて使用したが、これらのガス感知体は、第二粘着層16を介して、ラッピングフィルムなどの包装材に貼付して用いることもできる。
ここでは、図3に示したガス感知体30を例示し、包装材81に、このガス感知体30を貼付して用いる場合を説明する。
【0047】
この実施形態では、ロール状の包装材81が収納された容器82の外側面82aに、ガス感知体30が配されている場合を例示する。
この実施形態では、接着剤などを介して、容器82の外側面82aに第二剥離基材17の第二粘着層16と接している面とは反対の面が貼着され、容器82の外側面82aにガス感知体30が配されている。
包装材81としては、特に限定されないが、包装材81によって生鮮品を包装した後、外部からガス反応部12の変色の度合を観察することができるようにするために、光透過性のものが用いられる。
【0048】
次に、図11を参照して、この実施形態のガス感知体の使用方法について説明する。
第二剥離基材17と第二粘着層16の界面から、第二粘着層16、基材11、剥離層13、第一粘着層14および第一粘着層15から構成される積層体を剥離した後、第二粘着層16の粘着面16aを、包装材81の表面81aに貼付する(図11(a)、(b)参照)。
次いで、この状態で、剥離層13と第一粘着層14の界面から、第一剥離基材15と第一粘着層14を剥離して、ガス透過部31を外部と連通させる(図11(c)参照)。
次いで、ガス透過部31が内側になるようにして、この包装材81により生鮮品を包装する。
この状態で生鮮品からエチレンガス、アンモニアガス、アミンガスが発生すると、ガス透過部31を通ってきたガスがガス反応部12をなす試薬と反応して、ガス反応部12が変色する。これにより、生鮮品の品質を判定し、表示することができる。
【0049】
この実施形態によれば、包装材81の表面81aにガス感知体30を貼付し、包装材81によって生鮮品を包装する直前に、第一剥離基材15と第一粘着層14を剥離して、剥離層13を露出させ、ガス透過部31を外部と連通させることにより、ガス反応部12がガス感知機能を発揮するので、生鮮品から発生したガス以外のガスによってガス感知機能が損なわれることを防止できる。また、特に生鮮品を容れる容器を用いなくても、生鮮品の品質の管理と、品質の判定を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のガス感知体は、飲酒や喫煙のチェック、臭気検知、酸素検知などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のガス感知体の第一の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図2】本発明のガス感知体の第一の実施形態の使用方法を示す概略断面図である。
【図3】本発明のガス感知体の第二の実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明のガス感知体の第三の実施形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明のガス感知体の第四の実施形態を示す概略断面図である。
【図6】本発明のガス感知体の第五の実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図7】本発明のガス感知体の第五の実施形態の使用方法を示す概略断面図である。
【図8】本発明のガス感知体の第五の実施形態の製造方法を示す概略断面図である。
【図9】本発明のガス感知体の第六の実施形態を示す概略断面図である。
【図10】本発明のガス感知体の第七の実施形態を示す概略断面図である。
【図11】本発明のガス感知体の第七の実施形態の使用方法を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10,30,40,50,60・・・ガス感知体、11,61・・・基材、12,62・・・ガス反応部、13,63・・・剥離層、14・・・第一粘着層、15・・・第一剥離基材、16・・・第二粘着層、17・・・第二剥離基材、18・・・第一ガス透過部、19・・・第二ガス透過部、31・・・ガス透過部、41,51・・・被膜、64・・・粘着層、65・・・剥離基材、66・・・貫通孔、67・・・ストラップ、81・・・包装材、82・・・容器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可逆性のガス反応剤からなるガス反応部と、該ガス反応部が設けられた基材と、剥離層を介して前記基材に重ね合わせられた剥離基材とを備えたガス感知体であって、
前記基材および/または前記剥離層は、前記ガス反応部に隣接し、かつ、前記剥離基材を剥離することにより、前記ガス反応部を外部と連通させるガス透過部を有することを特徴とするガス感知体。
【請求項2】
前記ガス反応部および前記剥離層は、印刷法により形成されたことを特徴とする請求項1に記載のガス感知体。
【請求項1】
不可逆性のガス反応剤からなるガス反応部と、該ガス反応部が設けられた基材と、剥離層を介して前記基材に重ね合わせられた剥離基材とを備えたガス感知体であって、
前記基材および/または前記剥離層は、前記ガス反応部に隣接し、かつ、前記剥離基材を剥離することにより、前記ガス反応部を外部と連通させるガス透過部を有することを特徴とするガス感知体。
【請求項2】
前記ガス反応部および前記剥離層は、印刷法により形成されたことを特徴とする請求項1に記載のガス感知体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−82979(P2008−82979A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266017(P2006−266017)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]