説明

ガス抜きシステムを備えるバッテリ、及び漏出物を排出する方法

本発明は、ガス抜きシステムを備えるバッテリ、及びバッテリの漏出物を排出する方法に関するものであり、これにより、化学的な反応によって発生するガスや電解質を簡単な手段で排出することができ、バッテリのセルが損傷から守られる。バッテリは、ガス抜きシステムと、底面プレート(22)と、少なくとも1つのバッテリセル(16)を備える、底面プレート(22)上に配置された少なくとも1つのセルモジュール(12)と、を有しており、バッテリセル(16)は、セル端子(14)を備える上面(34)、及び、少なくとも1つのガス抜き開口部(18)を備える下面(36)を有しており、底面プレート(22)は、少なくとも1つのガス抜き開口部(18)の箇所に、受容領域への少なくとも1つの通過部を有しており、下面(36)は、上面(34)と対向しており、下面(36)は、重力の方向において、上面(34)の下方に配置されることが意図される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス抜きシステムを備えるバッテリ、及びバッテリの漏出物を排出する方法に関するものであり、本発明により、化学的な反応によって発生するガスや電解質を簡単な手段で排出することができ、バッテリのセルが損傷から守られる。
【背景技術】
【0002】
例えばリチウムイオン電池のようなバッテリセルは、ガス抜き開口部を必要とする。特定の動作状態が、セル内の過圧につながる可能性があるからである。バッテリセル内での爆発を回避するためには、圧力下にあるガスを逃がすことができなければならない。しかし、ガスが電解質を含んでいる可能性があるため、ガスの漏出はバッテリパックの損傷につながる恐れがある。このような漏出物は、水と反応してフッ化水素酸になり得る。従って、バッテリセルから漏出するガスを的確に排出する必要がある。
【0003】
セルモジュールの上面に、すなわち極が配置されている側に、ガス抜き開口部を配置することが知られている。ガス排出のための相応の通路もバッテリセルの上部に伸びている。これらの通路は、差込接続によって相互に接続されるホースによって構成されている。
【0004】
独国特許出願公開第60003843T2号明細書により、化学的な反応によって発生するガスを排出することを意図した換気システムを備えるバッテリカバーが知られている。この目的のために、バッテリカバーは、カバー側壁にある凹部に接続されて中間室へとつながる側方通路と一体化されたガスコレクタを有している。凹部の中には焼結ペレットがあり、すべてのガスがこれを通って流れ、ガス抜き開口部を介して外部に到達するように配置されている。このとき中間室の底面は、電解質のコレクタとしての役割を果たすことが意図されている。
【0005】
ガス抜きが個々のバッテリセルの上面に配置されることで、セルモジュールに複数のバッテリセルがある場合、高いコストを要する配管敷設が必要である。配管は多くの異なるコンポーネントから成り立っており、このことは高い材料コストと組立コストにつながる。その上、接合箇所の数が多いために、非密閉性のリスクが高く、それに伴ってガスや電解質がバッテリセルを損傷するという危険が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第60003843T2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の課題は、上に挙げた問題点を回避する、最適化されたガス抜きシステムを備えるバッテリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載された構成要件を備えるバッテリ、請求項9に記載の車両、及び請求項10に記載の方法によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によるバッテリは、ガス抜きシステムと、底面プレートと、少なくとも1つのバッテリセルを備える、底面プレートの上に配置された少なくとも1つのセルモジュールとを含んでおり、バッテリセルは、セル端子を備える上面及び少なくとも1つのガス抜き開口部を備える下面を有しており、底面プレートは、少なくとも1つのガス抜き開口部の箇所に受容領域への少なくとも1つの通過部を有しており、下面は、上面と対向しており、下面は、重力の方向において上面の下方に配置されている。
【0010】
これにより、ガス抜き通路の適合化を簡素化することが可能になるという利点がある。バッテリセルの電気接続部とガス抜き通路とを同一の領域に配置しなくてすむようになる。本発明によると、ガス抜き通路は、セル又はモジュールの下方に伸びている。そのため、通路に非密閉性が生じた場合、電解質が、セル又はその他の電気的な接続を汚染することがない。ガス抜き通路を簡素に構成することができるので、分離箇所の数が減り、それに伴って非密閉性の危険も減る。本発明によるガス抜き開口部の下面への配置によって、漏出する物質を的確に排出するために、重力が利用される。漏出する物質は、バッテリセルと電気コンポーネントの下方に集まり、従って短絡を引き起こすことがない。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、セルモジュールは底面プレートとねじ止めされており、少なくとも1つのバッテリセルと底面プレートとの間を封止するためにOリングが配置されることが意図される。これにより、セルモジュールと底面プレートとの間の低コストな結合、及びバッテリセルと底面プレートとの間の封止が実現されるという利点がある。Oリングの形状は、底面プレートの輪郭に容易に組み込むことが可能である。
【0012】
本発明の別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのバッテリセルはリチウムイオン電池であることが意図される。リチウムイオン電池は、他のタイプの電池に比べて優れた出力を提供するという利点があり、優れた重量固有及び質量固有の容量と、長い耐用寿命とを有している。
【0013】
本発明の別の好ましい実施形態では、底面プレートはガス抜き通路を有していることが意図される。これにより、さまざまなコンポーネントの個数及びそれに伴う材料と組立コストを節減することが可能になるという利点がある。さらにコンポーネントの削減は、非密閉性が発生する確率を低減する。
【0014】
本発明の別の好ましい実施形態では、底面プレートには捕集容器が受容領域として組み込まれていることが意図される。これにより、ガス抜き通路の長さが最低限に抑えられるという利点があり、このことはコンポーネントの個数及びそれに伴う重量をいっそう削減し、スペースを更に省く。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態では、底面プレートには冷却をする少なくとも1つの適当な手段が組み込まれていることが意図される。これにより、底面プレートが追加の機能を有するという利点がある。冷却機能を有する別個の装置は必要ない。
【0016】
本発明の別の好ましい実施形態では、ハウジングプレートは少なくとも1つの成形部品を有していることが意図される。これにより、漏出物、すなわちガスや電解質を排出するための接続手段が作り出されるという利点がある。
【0017】
本発明の別の好ましい実施形態では、成形部品は逆止弁を含んでいることが意図される。これにより、バッテリセルへの漏出物の逆流が防止されるという利点がある。
【0018】
さらに、上記課題は、請求項9に記載の構成要件を備える車両によって解決される。
【0019】
本発明による車両は、ガス抜きシステムと、底面プレートと、少なくとも1つのバッテリセルを備える、底面プレートの上に配置された少なくとも1つのセルモジュールとを有するバッテリを含んでおり、バッテリセルは、セル端子を備える上面及び少なくとも1つのガス抜き開口部を備える下面を有しており、底面プレートは、少なくとも1つのガス抜き開口部の箇所に受容領域への少なくとも1つの通過部を有しており、下面は、上面と対向しており、下面は、重力の方向において上面の下方に配置されている。
【0020】
分離箇所の数が減り、それに伴って非密閉性の危険が減ることで、本発明のバッテリが搭載された車両全体の改善された動作安全性が実現されるという利点がある。
【0021】
さらに、上記課題は、請求項10に記載の構成要件を備える方法によって解決される。
【0022】
バッテリセルから漏出する漏出物を排出する本発明の方法では、漏出物は少なくとも1つのガス抜き開口部を介してバッテリセルの下面に排出される。
【0023】
これにより、ガス抜き通路の適合化を簡素化することが可能になるという利点がある。バッテリセルの電気接続部とガス抜き通路とを同一の領域に配置しなくてすむようになる。ガス抜き通路は、本発明によれば、セル又はモジュールの下方に伸びている。そのため、通路に非密閉性が生じた場合、電解質が、セル又はその他の電気接触を汚染することがない。ガス抜き通路を簡素に構成することができるので、分離箇所の数が減り、それに伴って非密閉性の危険も減る。本発明によるガス抜き開口部の下面への配置によって漏出する物質を的確に排出するために、重力が利用される。漏出する物質は、バッテリセルと電気コンポーネントの下方に集まり、従って短絡を引き起こすことがない。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、バッテリセルは底面プレート上に組み付けられ、漏出物は底面プレートの中の通路を通って誘導され、または底面プレートの捕集容器に受容されることが意図される。これによりガス抜き通路の全長が最低限に抑えられるという利点があり、このことはコンポーネントの個数及びそれに伴う重量をいっそう減らし、スペースを更に省く。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、複数のバッテリセルの漏出物がバッテリセルの下方の受容領域へと排出されることが意図される。これによっても、コンポーネントの個数が減るという利点がある。
【0026】
本発明の上記以外の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている他の構成要件から明らかとなる。
【0027】
次に、付属の図面に示す実施例において、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来式のバッテリセルである。
【図2】ガス抜きシステムを備える本発明のバッテリである。
【0029】
図1には、従来技術に基づく従来式のバッテリセル40が示されている。その上面には、セル端子42だけでなく、上側に位置するガス抜き開口部44もある。このような複数のセルでバッテリが構成されている場合、ガス抜き開口部から漏出するガスや電解質を排出するために、複雑な配管システムが必要である。
【0030】
図2は、ガス抜きシステムを備える本発明に係るバッテリ10を断面図として示している。ハウジングプレート28上に底面プレート22が組み付けられている。ハウジングプレート28と底面プレート22との間には、ハウジングプレートシール材30が配置されている。底面プレート22上には、本例では3つのバッテリセル16を有するセルモジュール12が取り付けられている。各々のバッテリセル16は上面34にセル端子14を有している。上面34に対向して配置される下面36には、各々のバッテリセル16が、下側に位置するガス抜き開口部18を備えている。バッテリセル16のガス抜き開口部18は、本例ではOリング20を介して底面プレート22に対して直接封止されている。このシール材の押圧は、底面プレート22へのセルモジュール12全体のねじ止めを通じて保証される。
【0031】
底面プレート22は、バッテリセル16がガス抜き開口部18を有している箇所に、通過部24を有している。図示した実施形態では、この通過部は穿孔によって製作されている。通過部24により、漏出する電解質や漏出するガスが受容領域へと的確に排出される。図示した実施形態では、底面プレート22は、3つすべてのバッテリセル16の漏出物の受容領域の役割をする捕集容器26を備えている。本発明では、受容領域を底面プレート22の外部に配置することも同様に可能である。さらに底面プレート22は、漏出物が引き続き誘導されるガス抜き通路を有することができる。本発明によると、受容領域は、バッテリ又はバッテリパックの最も低い平面を形成するように、すなわち、漏出物により損傷する可能性がある他のすべてのコンポーネントが上方に配置されるように、設計されている。更に、受容領域は、漏出した電解質がシステムの他のコンポーネントを湿潤させ、損傷することがないことを保証するために、本発明によるバッテリが挿入されたシステムの他の部分に対して封止することができる。
【0032】
漏出物を排出するために、図2の実施例では、ハウジングプレート28は、捕集容器26に成形部品32を備えている。これは、例えばフランジ接合された逆止弁であってよい。成形部品はガス抜きシステムにおいて、周囲とのインターフェースをなしている。
【0033】
さらに別の実施形態では、本発明により、底面プレート22に、すでに挙げた機能に加えて別の機能を組み込むことも可能である。たとえば底面プレート22は冷却部を含むことができ、又は冷却システムの一部をなすことができる。
【0034】
本発明によるバッテリ10は、例えば車両に適用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス抜きシステムと、
底面プレート(22)と、
少なくとも1つのバッテリセル(16)を備える、前記底面プレート(22)上に配置された少なくとも1つのセルモジュール(12)と、
を有するバッテリ(10)において、
前記バッテリセル(16)は、セル端子(14)を備える上面(34)及び少なくとも1つのガス抜き開口部(18)を備える下面(36)を有し、
前記底面プレート(22)は、少なくとも1つの前記ガス抜き開口部(18)の箇所に、受容領域への少なくとも1つの通過部を有し、
前記下面(36)は、前記上面(34)と対向しており、
前記下面(36)は、重力の方向において前記上面(34)の下方に配置されている、
バッテリ。
【請求項2】
前記セルモジュール(12)は、前記底面プレート(22)とねじ止めされており、少なくとも1つの前記バッテリセル(16)と前記底面プレート(22)との間を封止するためにOリング(20)が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のバッテリ。
【請求項3】
少なくとも1つの前記バッテリセル(16)は、リチウムイオン電池であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリ。
【請求項4】
前記底面プレート(22)は、ガス抜き通路を有していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバッテリ。
【請求項5】
前記底面プレート(22)には、捕集容器(26)が前記受容領域として組み込まれていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバッテリ。
【請求項6】
前記底面プレート(22)には、冷却のための少なくとも1つの適当な手段が組み込まれていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバッテリ。
【請求項7】
前記ハウジングプレート(28)は、少なくとも1つの成形部品(32)を有していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のバッテリ。
【請求項8】
前記成形部品(32)は、逆止弁を含んでいることを特徴とする、請求項7に記載のバッテリ。
【請求項9】
ガス抜きシステムと、
底面プレート(22)と、
少なくとも1つのバッテリセル(16)を備える、前記底面プレート(22)の上に配置された少なくとも1つのセルモジュール(12)と、
を有するバッテリ(10)を含む車両において、
前記バッテリセル(16)は、セル端子(14)を備える上面(34)及び少なくとも1つのガス抜き開口部(18)を備える下面(36)を有しており、
前記底面プレート(22)は、少なくとも1つの前記ガス抜き開口部(18)の箇所に、受容領域への少なくとも1つの通過部を有しており、
前記下面(36)は、前記上面(34)と対向しており、
前記下面(36)は、重力の方向において前記上面(34)の下方に配置されている、
車両。
【請求項10】
過圧時にバッテリセルから漏出する漏出物を排出する方法であって、
前記漏出物は、少なくとも1つのガス抜き開口部を介して、前記バッテリセルの下面で排出されることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記バッテリセルは底面プレートの上に組み付けられ、
前記漏出物は、前記底面プレートの中の通路を通って誘導され、または、前記底面プレートの中の捕集容器に受容されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複数のバッテリセルの漏出物が、前記バッテリセルの下方の1つの受容領域へ排出されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−509688(P2013−509688A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537331(P2012−537331)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063853
【国際公開番号】WO2011/054584
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(311017728)エス・ビー リモーティブ カンパニー リミテッド (9)
【出願人】(311017740)エス・ビー リモーティブ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (9)
【Fターム(参考)】