説明

ガス検知針およびガス検知方法

【課題】 保冷構造体を解体せずともガス検知用導管の取り付けを可能とする新規なガス検知用導管技術を提供することにある。
【解決手段】 ガス検知針10は、中空パイプ状の本体部11と、ガス検知器用の配管が接続される接続部12とからなっている。そして、本体部11の先端部は閉塞した形状としている。また、漏洩ガスを吸引するガス吸引孔15を、本体部11の先端部近くに設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷材が被覆された配管の接合部分における保冷構造体内のガス漏れを検知するガス漏洩検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来例として、LNG,LPG等の低温可燃性流体用配管におけるフランジ部等の接続部にあって、ガス漏れを検知する方法を図4に示す。
すなわち、フランジ接続部50を保冷施工する時に、予めガス漏れを検知するためのフッ素樹脂製の導管60(ガス検知用チューブ)を同時に取り付けておく。そして、検査の際には、この導管60にガス検知器(図示省略)を接続してガス漏れを検知していた。
【0003】
また、ガス検知用の導管60が設置されていないフランジ接続部50に新たにガス検知用の導管60を取り付ける場合、あるいは、ガス検知用の導管60の交換時においては、保冷構造体(無機繊維,発泡材,硬質ポリウレタンフォームなど)をいったん解体して、その後ガス検知用の導管60を取り付けていた。保冷構造体は、図4に示すようにフランジ接合部50の周りに無機繊維32を施工し、更に硬質ポリウレタンフォームからなる保冷材31を施工した後、発泡原液を無機繊維32と保冷材31との間に注入して発泡硬化させて発泡材30を形成させて一体化している。そのため解体後には従来の保冷構造体を廃棄し、新たな保冷構造体を施工しなければならなかった。解体された保冷構造体は、産業廃棄物として処理しなければならなかった。
【0004】
本発明に関する先行特許文献として、次の特許文献1と特許文献2がある。
これらの先行特許文献においても、ガス検知用の導管(特許文献1において符号9及び15、特許文献2において符号1)は接続部の保冷施工時に取り付けられるものであり、ガス検知用導管の新規設置や交換にあたっては、保冷構造体をいったん解体する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平3−22635号公報
【特許文献2】実公平4−30514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、上記した従来の検知方法では、次のような課題があった。
(1)既設配管の保冷施工部分に新たにガス検知用導管を取り付ける場合、保冷施工体を解体し新たに施工しなければならず、多大な労力・時間・コストがかかっていた。
(2)同様に、ガス検知用導管を交換する場合においても、保冷施工体を解体し新たに施工しなければならず、多大な労力・時間・コストがかかっていた。
(3)従来のガス検知用導管(ガス検知用チューブ)の径は、1/4インチまたは1/8インチサイズであり、該導管を伝わって外気温が配管に伝わり、保冷効果を減少させる可能性が高かった。
【0007】
そこで、本発明者らは、保冷構造体を解体せずともガス検知用導管の取り付けを可能とする新規なガス検知用導管技術を開発することを目的として、鋭意試験・研究を行い、以下の点を要旨とする本発明に至った。
(1)先端部分を鋭利な構造とし、中空のパイプ形状としたガス検知針を保冷構造体の外側部分よりフランジ接合部に差し込み、ガス漏れを検知する。
(2)ガス検知針の先端部分は、鋭利な構造であってさらに閉塞した構造とする。また、漏洩ガスの吸引孔は、ガス検知針の先端部分に近い側面部分に設けて、ガス検知針の差し込み時において、保冷材の破片等による目詰まりを防止した構造とする。
(3)ガス検知器に接続されるフッ素樹脂製配管等との接続部分には、溝加工を施して接続を容易にすると共に、抜け難い確実な構造とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明者らの完成させた第1の発明は、保冷材が被覆された配管の接合部分のガス漏れを検知するガス検知針であって、中空パイプ状の本体部と、ガス検知器用の配管が接続される接続部とからなり、該本体部の先端部は閉じた形状として、漏洩ガスを吸引するガス吸引孔を、該本体部の先端部近くの側面部分に設けて、ガス吸引孔の目詰まりを防止することを特徴とするものである。
第2の発明は、前記本体部の先端部分を先細形状とするとともに、前記ガス吸引孔を、略丸孔形状またはスリット形状としたことを特徴とするものである。
第3の発明は、保冷材が被覆された配管の接合部分のガス漏れを検知するガス検知方法であって、先端部分を鋭利且つ閉鎖した構造とするとともに、漏洩ガスの吸引孔はガス検知針の先端部分に近い側面部分に設けた中空パイプ形状のガス検知針を、保冷構造体の外側部分より接合部分に差し込み、ガス検知針の差し込み時において、保冷材の破片等による目詰まりを防止したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)ガス検知用導管が施工されていない既設配管の保冷施工部分において、保冷構造体を解体してガス検知用導管を取り付けることなく、本発明のガス検知針を差し込むことで、ガス漏れを検知でき、ガス検知用のガス吸引孔が側面部分に設けてあるため、ガス検知針を保冷材を通して差し込む時に、保冷材から発生するゴミ等による目詰まりを防止できる。
(2)既設のガス検知用導管を交換する場合において、保冷構造体を解体して新規なガス検知用導管を取り付けることなく、本発明のガス検知針を差し込むことで、ガス漏れを検知できるようになる。
(3)本発明のガス検知針の外径は、従来のガス検知用導管(ガス検知用チューブ)の径よりも小径にでき(例えば、φ3mm程度)、差し込む保冷材の保冷効果にほとんど影響を与えない構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るガス検知針の第1実施形態を示す斜視図。
【図2】本発明に係るガス検知針の第2実施形態を示す斜視図。
【図3】本発明に係るガス検知針の使用状態を示す説明図。
【図4】従来技術を示す説明用断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るガス検知針の第1実施形態を示す斜視図である。
図1に示すガス検知針10は、外径約φ3mm程度の中空パイプ状の本体部11と、ガス検知器用の配管が接続される接続部12とからなっている。そして、本体部11の先端部は閉塞した形状とすると共にパイプ径よりも小さい先鋭形状としている。また、漏洩ガスを吸引するガス吸引孔15を、本体部11の先端部近くの側面部分にφ1mmの丸孔形状で設けている。
【0012】
図2は、本発明に係るガス検知針の第2実施形態を示す斜視図である。
図2に示すガス検知針20は、図1に示す第1実施形態のガス検知針10と同様に、中空パイプ状の本体部21と、ガス検知器用の配管が接続される接続部22とからなり、本体部21の先端部は閉塞した形状とすると共にパイプ径よりも小さい先鋭形状としている。そして、ガス検知針10と異なり、漏洩ガスを吸引するガス吸引孔25を、本体部21の先端部近くの側面部分に幅0.5mmのスリット形状で設けている。また、前記ガス吸引孔25は、本体部21の外側より先端部に向って斜めに開口されている。
【0013】
図3は、本発明に係るガス検知針10,20の使用状態を示す説明図である。
図3は、LNG,LPG等の低温可燃性流体用配管におけるフランジ部(接続部)の保冷施工を示しているが、フランジ接合部50の外周には無機繊維32が施工され、更に配管形状に合わせて加工された硬質ポリウレタンフォーム等からなる保冷材31と無機繊維32との間に発泡原液を注入して形成された発泡材30により構成された保冷構造体が取付施工されている。
【0014】
そして、このような保冷構造体にガス検知針10,20を差し込む。ガス検知針10,20の後端にある接続部12,22には、ガス検知器と繋がるガス検知器用配管(図示省略)が接続され、ガス検知針10,20のガス吸引孔15,25から吸引したガスを検知できる仕組みである。この場合、保冷構造体にガス検知針10,20を差し込むようになっているので、既存の保冷構造体へ簡単にガス検知用導管を設置できる。従って、保冷構造体の無駄な解体が必要なくなる。
【0015】
保冷構造体にガス検知針10,20を差し込む場合、ガス吸引孔15,25がガス検知針の本体部11,21の側面部分にあるので、保冷材の破片等による目詰まりを防止できる。特に、図2に示すガス検知針20は、スリット形状のガス吸引孔25を差込方向に向けて斜めに形成しているので、より確実に目詰まりを防止できる。目詰まりがあるとガスの吸引力が落ちるので、本発明のようにガス吸引孔の目詰まりを防止することで極めて信頼性の高い検査が行える。なお、ガス吸引孔の形状及び位置は、図1及び図2に示すものに限定されるものではなく、複数のガス吸引孔を設けた形状や長孔形状であっても良い。
【0016】
ガス検知針10,20は金属製(例えば、SUS)にすることが可能なので、従来のチューブ式のガス検知用導管よりも小径にできる。従って、差し込む保冷材を損傷させることなく、また保冷構造体の保冷効果にほとんど影響を与えないようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明に係るガス検知針は、保冷施工された配管の接合部分におけるガス漏れを検知するためのガス検知用部材に広く利用できるものである。例えば、保冷施工時にはガス検知用導管を設置していなかったフランジが、後の検査基準改定によって測定対象に含まれるようになった場合などに、保冷構造体を解体することなく、ガス漏洩検査可能になるので、極めて有効な手段である。
【符号の説明】
【0018】
10、20 ガス検知針
11、21 本体部
12、22 接続部
15 ガス吸引孔(丸孔)
25 ガス吸引孔(スリット)
30 発泡材
31 硬質ポリウレタンフォーム
32 無機繊維
50 フランジ接続部
60 導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保冷材が被覆された配管の接合部分のガス漏れを検知するガス検知針であって、
中空パイプ状の本体部と、ガス検知器用の配管が接続される接続部とからなり、
該本体部の先端部は閉じた形状として、漏洩ガスを吸引するガス吸引孔を、該本体部の先端部近くの側面部分に設けて、ガス吸引孔の目詰まりを防止することを特徴とするガス検知針。
【請求項2】
前記本体部の先端部分を先細形状とするとともに、前記ガス吸引孔を略丸孔形状またはスリット形状としたことを特徴とする請求項1記載のガス検知針。
【請求項3】
保冷材が被覆された配管の接合部分のガス漏れを検知するガス検知方法であって、
先端部分を鋭利且つ閉鎖した構造とするとともに、漏洩ガスの吸引孔はガス検知針の先端部分に近い側面部分に設けた中空パイプ形状のガス検知針を、保冷構造体の外側部分より接合部分に差し込み、ガス検知針の差し込み時において、保冷材の破片等による目詰まりを防止したことを特徴とするガス検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−43524(P2011−43524A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270710(P2010−270710)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【分割の表示】特願2006−45909(P2006−45909)の分割
【原出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】