説明

ガス流量計測装置、ガス流量計測方法、ガス流量計測プログラムおよびこれらを用いたガス供給システム

【課題】複数のガス器具が使用される場合においても、ガス供給の不具合を検出することができる技術を提供する。
【解決手段】ガス器具用のガスの流量を計測するとともにガスの流量を制御するガス流量計測装置2であって、ガス器具用のガスの流量を計測する流量計測部23と、ガス器具ごとの流量変化パターンを登録する器具登録部27と、流量計測部23において計測されたガスの流量と、器具登録部27に登録された流量変化パターンを比較して、ガスを使用しているガス器具を判別する器具判別部24と、器具判別部24が、ガスを使用している複数のガス器具を判別した場合、当該複数のガス器具各々に対応した流量変化パターンの合計値と、流量計測部23において計測されたガスの流量を比較し、ガスの供給に不具合があることを検出する不具合検出部28と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの消費量を監視することにより、ガスの供給不足等のガス供給システムの不良を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガスの消費量(供給量)の変化に伴うガス供給システムの不良を検出する技術について、種々のものが提案されている。例えば特許文献1におけるガス異常監視装置は、ガス供給の圧力低下により異常を検出する。図5に示すように、当該ガス異常監視装置412においては、ガス供給源411から供給された圧力調整手段420で調圧されたガス圧が圧力検出手段421で測定される。流量検出手段422で測定したガス流量が0であることを確認したときにガスが漏洩している場合には配管内のガス圧が時間とともに低下する。そのガス圧の変化を圧力検出手段421でモニターし、判定手段423で判定し、圧力低下が所定の値より大きければ異常と判断する。判断結果を受けて遮断弁としての出力手段424がガスメータ413を制御する。
【0003】
また、ガス容器の外側に霜がついている(再液化)等の現象に基づき、目視によりガス供給不足の判断をすることも広く行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−329370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際のガス使用場面においては、複数のガス器具が同時に使用されることが多い。複数のガス器具が使用される場合においては、ガスの供給不足などが生じやすい。しかしながら、このような場合において、各ガス器具のガス使用量が大きく減少することは少ないため、ガス供給の不足を検知することが難しい場合が多い。すなわち、一般的に、複数のガス器具が使用される場合においては、ガス供給の不具合を検知することは困難である。
【0006】
本発明は、複数のガス器具が使用される場合において、ガス供給の不具合を検出することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガス流量計測装置は、ガス器具用のガスの流量を計測するとともにガスの流量を制御するガス流量計測装置であって、ガス器具用のガスの流量を計測する流量計測部と、ガス器具ごとの流量変化パターンを登録する器具登録部と、前記流量計測部において計測されたガスの流量と、前記器具登録部に登録された前記流量変化パターンを比較して、ガスを使用しているガス器具を判別する器具判別部と、前記器具判別部が、ガスを使用している複数のガス器具を判別した場合、当該複数のガス器具各々に対応した前記流量変化パターンの合計値と、前記流量計測部において計測されたガスの流量を比較し、ガスの供給に不具合があることを検出する不具合検出部と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、複数のガス器具が使用される場合において、ガス供給の不具合を検出することができる。
【0009】
上記構成において、当該複数のガス器具各々に対応した前記流量変化パターンの合計値が、ガスの流量が安定した時の合計安定値であることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、ガス供給の不具合を正確に検出することができる。
【0011】
前記不具合検出部は、前記流量計測部において計測されたガスの流量が所定の量だけ前記合計安定値より小さい場合、ガスの供給に不具合があることを検出する。
【0012】
上記構成によれば、ガス供給の不具合を正確に検出することができる。
【0013】
さらに本発明は、コンピュータが実行するガス流量計測方法であって、ガス器具用のガスの流量を計測する流量計測ステップと、計測されたガスの流量と、予め登録されたガス器具ごとの流量変化パターンを比較して、ガスを使用しているガス器具を判別するステップと、ガスを使用している複数のガス器具を判別した場合、当該複数のガス器具各々に対応した前記流量変化パターンの合計値と、計測されたガスの流量を比較し、ガスの供給に不具合があることを検出するステップと、を備える。
【0014】
さらに本発明は、ガスの供給を制御するコンピュータに、以下のステップを実行させるガス流量計測プログラムであって、ガス器具用のガスの流量を計測する流量計測ステップと、計測されたガスの流量と、予め登録されたガス器具ごとの流量変化パターンを比較して、ガスを使用しているガス器具を判別するステップと、ガスを使用している複数のガス器具を判別した場合、当該複数のガス器具各々に対応した前記流量変化パターンの合計値と、計測されたガスの流量を比較し、ガスの供給に不具合があることを検出するステップと、を備える。
【0015】
さらに本発明は、上記ガス流量計測装置、ガス流量計測方法またはガス流量計測プログラムを用いたガス供給システムをも提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のガス器具が使用される場合においても、ガス供給の不具合を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態におけるガス供給システムの図
【図2】ガス流量計測装置、ガス供給制御装置のブロック図
【図3】ガス器具ごとに異なるガス流量の変化を示すグラフ
【図4】ガス器具と換気装置の対応を示すテーブル
【図5】従来のガス異常監視装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は本発明のガス流量計測装置を含むガス供給システムの実施形態を示す図である。ガス供給システムは各家庭やオフィス等にガスを供給し、少なくともガス流量計測装置を含む。
【0020】
図1に示すように、各家庭やオフィス等へガスを供給するガス供給管1の入口部分に、ガス器具用のガスの流量を計測するとともにガスの流量を制御するガス流量計測装置2が設置されている。ガス流量計測装置2を経由した後に設置されたガス配管3が分岐して、各家庭で使用する種々のガス器具が設置された場所まで配管され、ガスが供給される。例えば、屋外には給湯器4が設置され、この給湯器4で生成される湯が水配管を介して浴槽やシャワー装置が設置された風呂6等に供給される。
【0021】
また、屋内にあっては、台所に設置されたガステーブル5、リビングに設置された第1のガスファンヒータ7、寝室に設置された第2のガスファンヒータ8にガスが供給され、必要に応じて適宜使用される。勿論ガス器具の種類はガステーブル5、第1のガスファンヒータ7、第2のガスファンヒータ8には限定されない。
【0022】
また、ガス供給システムには警報器50が設けられている。警報器50はCOの濃度レベルが所定の値より大きくなった場合等に、警告音などで住人に警報を通知するものである。また、警報器50は、図示せぬガス流量計測装置2の通信部から所定の場合に警報発動命令を受信する。
【0023】
図2は、ガス流量計測装置のブロック図である。ガス流量計測装置2は、流路21と、流路遮断部22と、流量計測部23と、器具判別部24と、計測流量情報記憶部25と、器具別流量算出部26と、器具登録部27と、不具合検出部28とを備えたものである。器具判別部24と、計測流量情報記憶部25と、器具別流量算出部26と、器具登録部27と、不具合検出部28とによって、ガス流量計測装置2の動作の制御を司る制御部200が構成される。制御部200は、流量計測部23から入力された情報を処理するとともに、流路遮断部22を制御してガスの供給を遮断することが可能である
【0024】
流量計測部(超音波流量計)23は、ガス供給管1を経て流路21に流れる流体としてのガスに対し、超音波を発射してその流量を計測するものであり、一般的なものを使用することができる。計測流量情報記憶部25は、流量計測部23で計測された計測流量値と、当該計測流量値を計測した計測時間が対応付けられて記述された対象データ(図3のような計測流量変化パターン)を記憶する。
【0025】
器具登録部27は、流路21の下流に接続されたガステーブル5、第1のガスファンヒータ7、第2のガスファンヒータ8のようなガス器具別の種々の器具情報を登録している。器具情報の例としては、ガス器具の起動時の流量を表す初期流量値や、運転状態が変化するときの変化流量を表す変化流量値などがある。例えば図3に示すように、ガス器具ごとに異なる流量の絶対値Aと絶対値Bや(図3(a))、ガス器具ごとに異なる運転開始時の流量変化Cと流量変化D(図3(b))といった器具情報によってもガス器具を特定し、登録することができる。
【0026】
器具判別部24は、計測流量情報記憶部25に記憶された計測流量変化パターン(計測時間と計測流量値を対応付けたもの)と、器具登録部27に登録された器具情報から得られる流量変化パターンとを比較して、ガス器具を判別する。器具別流量算出部26は、器具判別部24により判別されたガス器具毎の流量を算出する。
【0027】
流路遮断部(流路遮断弁)22は、緊急時の場合などに流路21を閉じ、流れるガスの流れを遮断する。所定の場合に、制御部200は流路遮断部22にガスの供給を遮断するガス遮断命令を発し、ガス遮断命令を受けた流路遮断部22は、流路21を閉じてガスの流れを遮断する。
【0028】
また、ガス流量計測装置2の制御部200は、ガス器具が作動していないなど所定の場合に、図示せぬ通信部を介して警報器50に無線通信にて警報発動命令を送信することもできる。さらに、ガスの供給を管理しているセンター(図示せず)へ通報することも可能である。
【0029】
また、ガス流量計測装置2の制御部200は、所定の場合に、図示せぬ通信部を介して警報器50に、COの検知レベルを下げる(警報発動のCO濃度閾値を下げる)命令を、無線通信にて送信することもできる。
【0030】
次に、制御部200の不具合検出部28の処理について以下に説明する。器具判別部24がガスを使用している複数のガス器具を判別した場合、不具合検出部28は、当該複数のガス器具各々に対応した流量変化パターンの合計値と、流量計測部23において計測されたガスの流量を比較し、ガスの供給に不具合があることを検出する。
【0031】
実際のガス使用場面においては、複数のガス器具が同時に使用されることが多い。すなわち、ガステーブル5、第1のガスファンヒータ7、第2のガスファンヒータ8のうち少なくとも二つ以上の(複数の)ガス器具が同時に使用されることは多い。このように、複数のガス器具が使用される場合においては、ガスの供給不足などが生じやすい。しかしながら、このような場合において、各ガス器具のガス使用量が個別に大きく減少することは少ないので、以下のような問題が生じ得る。
【0032】
すなわち、器具判別部24は、計測流量情報記憶部25に記憶された計測流量変化パターンと、器具登録部27に登録された流量変化パターンとを比較して、流体であるガスを使用するガス器具を判別する。この場合、使用されたガス器具と登録されたガス器具が一致する場合、たとえ両器具の流量パターンに多少の差異(単なる誤差)がある場合であっても両パターンは一致するものと判別するため、一致の度合いには多少の余裕が設けられることが多い。すなわち、多少の差があっても、両パターンは一致するものと判定して器具判別部24はガス器具を判別する。
【0033】
一旦器具判別部24によってガス器具が判別された後は、特に問題がないものとしてガス流量計測装置2は処理を続行する。したがって、使用されたガス器具と登録されたガス器具が一致する場合において、両器具の流量パターンに多少の差異がある場合(特に使用されたガス器具のガスの流量が登録されたガス器具のガスの流量より小さい場合)、その本当の理由がガスの供給不足であったとしても、ガスの供給不足はそのまま放置されることとなる。
【0034】
例えば、三つのガス器具が使用される場合において正しくガスが供給されている場合、図4(a)に示したように各ガス器具のガスの流量は各々A、B、C(計測流量情報記憶部25に記憶された計測流量変化パターン)とならなくてはいけない。しかしながら、ガスの供給不足が生じ、図4(b)に示したように各ガス器具のガスの流量が各々A’、B’、C’なり(A>A’、B>B’、C>C’)、各々の流量が少しずつ低くなってしまうことがある。この場合、ガスの供給不足という不良原因があるにもかかわらず、各ガス器具の個別のガスの流量の低下した量(それぞれA−A’、B−B’、C−C’)はそれほど大きくないため、ガス器具判別部24は、図4(b)の各流量パターンA’、B’、C’の各々が、図4(a)の各流量パターンと一致すると判別してしまい、ガスの供給不足が見過ごされることとなる。
【0035】
本実施形態のガス流量計測装置2では、器具登録部27に登録された複数のガス器具各々に対応した流量変化パターンの合計値と、流量計測部23において計測されたガスの流量を比較し、ガスの供給に不具合があることを検出する不具合検出部28が設けられている。すなわち、器具判別部24によって複数の使用中ガス器具が判別されると、不具合検出部28は、器具登録部27に登録された判別されたガス器具各々に対応した流量変化パターンに基づき、図4(a)に示すガスの流量の合計値Sを算出する。ここで、合計値Sは、使用開始時の不安的な期間(流量の増加時)が経過した後の、ガスの流量が安定した時である安定期における全使用ガス器具の流量値の合計安定値である。
【0036】
そして不具合検出部28は、図4(b)に示す、流量計測部23において計測されたガスの流量の合計値S’が、所定の量Δ以上の分、合計安定値Sより小さい場合、ガスの供給に不具合があると判定して検出する。
【0037】
すなわち、各ガス器具の個別のガスの流量の低下した量(それぞれA−A’、B−B’、C−C’)がそれほど大きくない場合であっても、合計値で見た場合の流量値の差はΔの如く大きいものとなる。不具合検出部28は、流量の合計値の観点からガスの供給を検証するため、ガスの供給不足などの不具合を判別することが可能となる。
【0038】
また、上述したガス流量計測装置2によって実行されるガス流量計測方法を実施するため、ガス流量計測装置2の図示せぬコンピュータ(演算装置)には、ガス流量制御方法の各ステップを実行させるプログラムが記憶されている。
【0039】
なお、以上の説明は超音波流量計を用いた場合について説明したが、他の瞬間式の流量計測装置でも、同様の効果が得られることは明白である。
【0040】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明によれば、複数のガス器具が使用される場合において、ガス供給の不具合を検出することができるガス流量計測装置、ガス流量計測方法、ガス流量計測プログラムおよびこれらを用いたガス供給システムが提供可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 ガス供給管
2 ガス流量計測装置
3 ガス配管
4 給湯器
5 ガステーブル
6 風呂
7 第1のガスファンヒータ
8 第2のガスファンヒータ
21 流路
22 流路遮断部
23 流量計測部
24 器具判別部
25 計測流量情報記憶部
26 器具別流量算出部
27 器具登録部
28 不具合検出部
50 警報器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス器具用のガスの流量を計測するとともにガスの流量を制御するガス流量計測装置であって、
ガス器具用のガスの流量を計測する流量計測部と、
ガス器具ごとの流量変化パターンを登録する器具登録部と、
前記流量計測部において計測されたガスの流量と、前記器具登録部に登録された前記流量変化パターンを比較して、ガスを使用しているガス器具を判別する器具判別部と、
前記器具判別部が、ガスを使用している複数のガス器具を判別した場合、当該複数のガス器具各々に対応した前記流量変化パターンの合計値と、前記流量計測部において計測されたガスの流量を比較し、ガスの供給に不具合があることを検出する不具合検出部と、
を備えるガス流量計測装置。
【請求項2】
請求項1記載のガス流量計測装置であって、
当該複数のガス器具各々に対応した前記流量変化パターンの合計値が、ガスの流量が安定した時の合計安定値である、ガス流量計測装置。
【請求項3】
請求項2記載のガス流量計測装置であって、
前記不具合検出部は、前記流量計測部において計測されたガスの流量が所定の量だけ前記合計安定値より小さい場合、ガスの供給に不具合があることを検出する、ガス流量計測装置。
【請求項4】
コンピュータが実行するガス流量計測方法であって、
ガス器具用のガスの流量を計測する流量計測ステップと、
計測されたガスの流量と、予め登録されたガス器具ごとの流量変化パターンを比較して、ガスを使用しているガス器具を判別するステップと、
ガスを使用している複数のガス器具を判別した場合、当該複数のガス器具各々に対応した前記流量変化パターンの合計値と、計測されたガスの流量を比較し、ガスの供給に不具合があることを検出するステップと、
を備えるガス流量計測方法。
【請求項5】
ガスの供給を制御するコンピュータに、以下のステップを実行させるガス流量計測プログラムであって、
ガス器具用のガスの流量を計測する流量計測ステップと、
計測されたガスの流量と、予め登録されたガス器具ごとの流量変化パターンを比較して、ガスを使用しているガス器具を判別するステップと、
ガスを使用している複数のガス器具を判別した場合、当該複数のガス器具各々に対応した前記流量変化パターンの合計値と、計測されたガスの流量を比較し、ガスの供給に不具合があることを検出するステップと、
を備えるガス流量計測プログラム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載のガス流量計測装置、ガス流量計測方法またはガス流量計測プログラムを用いたガス供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−180031(P2011−180031A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45784(P2010−45784)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000168643)高圧ガス保安協会 (92)
【Fターム(参考)】