説明

ガス浄化部材及びガス浄化装置

【課題】製造が容易であると共に、浄化効率を向上させたガス浄化部材及びガス浄化装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るガス浄化部材10−1は、排ガス11中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、平板状の低充填率繊維シート12と、該低充填率繊維シート12を保持して積層する構造体である構造体シート14とからなるものであり、ガス浄化部材10−1の下方側から排ガス11を導入すると共に、上方から水17を例えばシャワー状に散水するノズル19が設けられており、ガス浄化部材10−1を湿潤状態としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中の有害物質を浄化するガス浄化部材及びガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガス中の硫黄酸化物の除去方法として、活性炭素繊維を用いたガス浄化装置が提案されている。このガス浄化装置の一例を図9に示す。図9に示すように、ガス浄化装置は、硫黄酸化物を含有する排ガス又は生成ガス101が流通する浄化塔104内に設けられ、活性炭素繊維層で形成される触媒層107と、上記浄化塔104内に設けられ、上記触媒層107に硫酸生成用の水を供給する水供給手段111とからなるものである。前記活性炭素繊維からなる触媒層107で生成ガス101を浄化し、浄化ガス109としている(特許文献1)。図9中、符号121は排ガスを押し込む押込みファン、111は洗浄水105を供給する水供給装置、115は排ガスを冷却する増湿冷却水、116は増湿冷却装置、108、152はポンプ、153は弁、122は散水ノズルを各々図示する。
【0003】
【特許文献1】特開2005−028216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のガス浄化装置に用いられる触媒層としては、図10に示すように、前記触媒層107を構成する活性炭素繊維層125が、平板活性炭素繊維シート126と波板状の活性炭素繊維シート127とを接合してその断面が三角形状の通路128に構成されており、両者を接合しているのでその成形に手間がかかる、という問題がある。また、両者の接合部分では排ガスの浄化を行うことができない、という問題がある。
【0005】
さらに、従来の繊維層の充填率は9〜14%の範囲であり、シート厚さは0.65〜1.1mm程度、シートの坪量は90〜130g/m2である。よって、図11に示すように、前記触媒槽107で捕捉されたガス中の水ミスと、散水された水とが繊維層内に滞留し、触媒槽107の排ガス101の導入側において、水浸漬部分130が発生し、繊維シート126、127の繊維層内を排ガス101が通過できなくなり、この結果、脱硫効率が大幅に低下する、という問題がある。
【0006】
本発明は、前記問題に鑑み、製造が容易であると共に、浄化効率を向上させたガス浄化部材及びガス浄化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、排ガス中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、平板状の低充填率繊維シートと、該低充填率繊維シートを保持して積層する構造体とからなることを特徴とするガス浄化部材にある。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記構造体が網状保持体又は網状構造体シートであることを特徴とするガス浄化部材にある。
【0009】
第3の発明は、第1の発明において、前記低充填率繊維シートが構造体と構造体との間に所定間隔を有して積層状態に配設されてなることを特徴とするガス浄化部材にある。
【0010】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記低充填率繊維シートが活性炭素繊維シートであることを特徴とするガス浄化部材にある。
【0011】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記低充填率繊維シートの充填率が9%以下であることを特徴とするガス浄化部材にある。
【0012】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、前記低充填率繊維シートの嵩密度が100Kg/m3以下であることを特徴とするガス浄化部材にある。
【0013】
第7の発明は、硫黄酸化物を含有する排ガス又は生成ガスが流通する浄化塔内に、第1乃至6のいずれか一つのガス浄化部材を設けてなることを特徴とするガス浄化装置にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低充填率の繊維シートを用い、該繊維シートを構造体と共に交互に積層するという簡易な構造のガス浄化部材であるので、排ガス処理が良好なものとなる。
低充填率であるので繊維層ないでの滞留する水が無くなり、水浸漬部分が減少して、ガス浄化部分である繊維層の有効面積が増大する。この結果、排ガスの脱硫性能が増大する。また、低充填率の繊維シートを用いるので、フィルタの圧力損失が大幅に減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0016】
本発明による実施例に係るガス浄化装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例に係るガス浄化部材を示す概略図である。
図1に示すように、本実施例に係るガス浄化部材10−1は、排ガス11中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、平板状の低充填率繊維シート12と、該低充填率繊維シート12を保持して積層する構造体である構造体シート14とからなるものである。
本実施例では、平板状の低充填率繊維シート12と構造体シート14との積層方向と排ガス11の導入方向とが同一方向としている。
そして、図1においては、ガス浄化部材10−1の下方側から排ガス11を導入すると共に、例えばシャワー状に噴霧するノズル19により上方側から水17を散水しており、ガス浄化部材10−1を湿潤状態としている。
【0017】
次に、本実施例に係るガス浄化部材10−1の製造工程の概略を図2に示す。
図2に示すように、先ず平板状の構造体シート14と、平板状の低充填率繊維シート12とを交互に積層させようにし、これを枠体13内に挿入して図1に示すように固定・保持する。この枠体13内に保持されたガス浄化部材10−1は、導入される排ガス方向と直交方向に積層された連続した積層シート体であるので、排ガス11のリークを回避することができる。
【0018】
また、図10に示す従来の平板シートと波板シートとを接合して形成するものとは異なり、接合部分が無いので、接合部分での排ガス浄化面積のロスが無くなる。また、安価に製造することもできる。
【0019】
図3はガス浄化部材10−1を装置本体内に配設してなるガス浄化装置の断面図である。図3に示すように、ガス浄化装置30の装置本体31内には1段のフィルタであるガス浄化部材10−1が配設されているものである。なお、このガス浄化部材10−1は複数段としてもよい。
【0020】
ここで、前記繊維シート12はその幅が例えば50〜250cm程度で長尺の連続したものを所定の幅で切断してシート体として用いている。また、繊維シートは不織布又は織布のいずれでもよい。
【0021】
また、前記低充填率繊維シートの充填率としては、9%未満であることが好ましい。
これは、充填率が9%以上であると、ガス中のミスト水の含浸量が増大し、水浸漬部分の割合が増大して、ガス浄化性能が発揮できないからである。
【0022】
また、前記低充填率繊維シートの嵩密度としては、100Kg/m3以下であることが好ましい。
【0023】
また前記繊維状フィルタの坪量としては、例えば80〜200g/m2、好ましくは900〜130g/m2とするのがよい。
【0024】
また、前記低充填率の繊維シート12を活性炭素繊維シートとすることにより、その繊維層において、活性炭素繊維の触媒作用により排ガス11中に含まれるSO2を亜硫酸とし、散水された水により希硫酸18として装置本体31の下方側へ洗い流すようにしている。
【0025】
すなわち活性炭素繊維を用いる場合には、その表面では、例えば、以下の反応により脱硫反応が生じる。
即ち、(1)活性炭素繊維層への排ガス中の二酸化硫黄(SO2)の吸着がなされる。(2)次いで、吸着した二酸化硫黄(SO2)と排ガス中の酸素(O2)(別途供給することも可である)との反応による三酸化硫黄SO3への酸化がなされる。(3)その後、酸化した三酸化硫黄(SO3)が水(H2O)へ溶解され、硫酸(H2SO4)の生成がなされる。(4)生成された硫酸(H2SO4)が活性炭素繊維層から離脱される。
【0026】
この時の反応式は以下の通りである。
SO2+1/2O2+H2O→H2SO4
【0027】
この結果、排ガス11中の微粒子(SO3ミスト)以外に、さらに二酸化硫黄(SO2)を吸着して酸化し、水(H2O)と反応させて硫酸(H2SO4)を生成して離脱除去し、排ガス中の脱硫を行うことができる。
【0028】
前記積層シートを構成する構造体シート14は、例えばシート又はマット状又は網目構造のいずれかとすればよく、排ガスの流れには影響を与えることがなく、水の排出性が良好なものを用いることができる。このような水排出性が良好なものとしては、例えばポリ塩化ヴィニリデン系合成繊維を例えばスプリング状等にカール加工し、かさ高に配列して三次元的な網目構造としたものを例示することができる。
【0029】
前記装置本体31の側壁下端側には、排ガス11のガス入口部31aが設けられている。また、装置本体31の頂部側には、ガス浄化部材10−1により浄化された浄化ガス32を排出するガス出口部31bが設けられている。
【0030】
また、前記ガス浄化装置30には、前記装置本体の下方に溜まった希硫酸18を循環させるための水循環ライン23と循環ポンプ24とが設けられている。また、水循環ライン23には必要に応じて別途図示しない水供給装置により水17を添加するようにしている。
【0031】
前述したように、本発明では、排ガス11が通過するガス導入及び排出側を閉塞した連続のシートとすることにより、排ガス11中の例えば微粒子であるSO3ミストの除去効率が飛躍的に向上する。
【0032】
この結果、例えばボイラ排ガス中の微粒子(煤塵、SO3ミスト)の除去率が安定すると共にその除去率が向上し、煙突出口から排出される排煙からの紫煙の低減又は消滅を図ることができる。
【0033】
また、図4に示すように、ガス浄化部材10−2の形状を略M字形状とし、排ガス11との接触面積を増大させるようにしてもよい。
また、図5に示すように、網状構造体15の内部に低充填率繊維シート12を内包してなるガス浄化部材10−3としてもよい。この場合には、網状構造体15により周囲からの圧縮が軽減されるので低充填率繊維シートの低充填率性を保持することができる。
【0034】
また、図6に示すように、構造体シート14、14の間にスペーサ16を介して低充填率繊維シート12を配設するようにすることで、周囲からの圧縮が軽減されるので低充填率繊維シートの低充填率性を保持することができる。
【実施例2】
【0035】
ここで、本発明によるガス浄化装置を用いた排ガスを処理する排煙脱硫システムの一実施例について、図7及び8を参照して説明する。
先ず、図7に示すように、本実施例にかかる排煙脱硫システムは、蒸気タービンを駆動する蒸気を発生させるボイラ100と、該ボイラ100からの排ガス11中の煤塵を除去する集塵機101と、除塵された排ガスをガス浄化装置30内に供給する押込みファン102と、ガス浄化装置30に供給する前に排ガス11を冷却すると共に増湿を行う増湿冷却装置103と、前記ガス浄化部材10−1、10−1を2段内部に配設し、塔下部側壁の導入口112aから排ガス11を供給すると共に、上方から水17を供給して、排ガス11中のSOxを希硫酸(H2SO4)へ脱硫反応させると共にSO3ミストを捕集するガス浄化装置30と、頂部の排出口112bから脱硫された浄化ガス32を外部へ排出する煙突104と、ガス浄化装置20からポンプ110を介して希硫酸(H2SO4)121を貯蔵すると共に石灰スラリー111を供給して石膏を析出させる石膏反応槽112と、石膏を沈降させる沈降槽(シックナー)113と、石膏スラリー114から水分を排水(濾液)117として除去して石膏115を得る脱水器116とを備えてなる。なお、ガス浄化装置30から排出される浄化された浄化ガス32を排出するラインには必要に応じてミストエリミネータ105を介装し、ガス中の水分を分離するようにしてもよい。
【0036】
ここで、上記ボイラ100では、例えば、火力発電設備の図示しない蒸気タービンを駆動するための蒸気を発生させるために、石炭や重油等の燃料fが炉で燃焼されるようになっている。ボイラ100の排ガスには硫黄酸化物(SOx)が含有され、排ガスは図示しない脱硝装置で脱硝されてガスガスヒータで冷却された後に集塵機101で除塵されている。
そして、ガス浄化装置30において所定量の水17を供給しつつ排ガス11中の脱硫を効率良く行うことができる。
【0037】
この排ガス浄化システムでは、ガス浄化装置30で得られた希硫酸121に石灰スラリー111を供給して石膏スラリー114を得た後、脱水して石膏115として利用するものであるが、脱硫して得られた希硫酸121をそのまま硫酸として使用するようにしてもよい。その場合には、希硫酸121を濃縮する濃縮槽を設けるようにしてもよい。
【0038】
また、本実施例ではボイラ100からの排ガス11を例示したが本発明の浄化対象となる排ガスはこれに限定されるものではなく、ガスタービン、エンジン、ガス化炉及び各種焼却炉から排出されるものとしてもよい。
【0039】
また、他の実施例の排ガス浄化装置として、図8に示すように、増湿冷却装置103の後流側にミストエリミネータ105を介装し、増湿した際の水分ミストを積極的に除去し、ガス浄化装置30内に余分な水ミスト(例えば1μm以上のミスト)の持込を防止するようにしてもよい。これにより、ガス浄化部材では紫煙の原因となるSO3ミストの除去効率を向上させることができる。
【0040】
本発明にかかるガス浄化装置は、例えば石炭等の硫黄分を含む排ガスのみならず、その他の有害煤塵や有害ミストを含む排ガスを浄化することができる。
また、フィルタとして活性炭素繊維を用いることにより、その化学的な触媒酸化作用により、SO2や重金属(水銀、砒素等)等の有害成分の吸着除去を効率良く行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明に係るガス浄化部材は、簡易な構造であると共に、ガス浄化面積が向上するので、微粒子の効率的な除去処理に用いて適している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1に係るガス浄化部材の概略図である。
【図2】実施例1に係るガス浄化部材の製造工程概略図である。
【図3】実施例1に係るガス浄化装置の断面図である。
【図4】他のガス浄化装置の断面図である。
【図5】他のガス浄化部材の概略図である。
【図6】他のガス浄化部材の概略図である。
【図7】実施例2の脱硫システムの概略図である。
【図8】実施例2の他の排煙脱硫システムの概略図である。
【図9】従来のガス浄化装置の概略図である。
【図10】従来のフィルタの概略図である。
【図11】フィルタの水浸漬状態を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
10−1、10−2、10−3、10−4 ガス浄化部材
11 排ガス
12 低充填率繊維シート
13 枠体
14 構造体シート
16 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の有害物質を浄化するガス浄化部材であって、
平板状の低充填率繊維シートと、該低充填率繊維シートを保持して積層する構造体とからなることを特徴とするガス浄化部材。
【請求項2】
請求項1において、
前記構造体が網状保持体又は網状構造体シートであることを特徴とするガス浄化部材。
【請求項3】
請求項1において、
前記低充填率繊維シートが構造体と構造体との間に所定間隔を有して積層状態に配設されてなることを特徴とするガス浄化部材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記低充填率繊維シートが活性炭素繊維シートであることを特徴とするガス浄化部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
前記低充填率繊維シートの充填率が9%以下であることを特徴とするガス浄化部材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記低充填率繊維シートの嵩密度が100Kg/m3以下であることを特徴とするガス浄化部材。
【請求項7】
硫黄酸化物を含有する排ガス又は生成ガスが流通する浄化塔内に、請求項1乃至6のいずれか一つのガス浄化部材を設けてなることを特徴とするガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−222826(P2007−222826A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49332(P2006−49332)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】