説明

ガス混合器

【課題】 高い混合精度を維持するとともに、広いレンジアビリティを有し、なおかつ圧力損失を低く抑えた電源不要の混合器を提供する。
【解決手段】 大気温で液化するガスと、大気温で気体であるガスとを混合するガス混合器であって、濃度制御部(2)と自動切換機構(3)からなる。濃度制御部(2)は、液化ガス導入路(4)と、圧縮ガス導入路(5)にそれぞれ層流素子(6)(7)を配置し、圧縮ガス導入路(5)での層流素子(7)よりも上流側に均圧弁(8)を装着して両層流素子(6)(7)への流入圧力を同圧にし、層流素子(6)(7)よりも下流側の液化ガス導出路(10)と圧縮ガス導出路(11)とを逆止弁(9)を介して合流させてなる流量制御部(12)を複数並列に配置してある。自動切換機構(3)は、各流量制御部(12)での合流管(13)部分に自動切換弁(14)をそれぞれ装着し、各自動切換弁(14)を該自動切換弁(14)よりも下流側での圧力を検知して切換作動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス混合器に関し、特に大気温で液化するガスの気相成分と大気温で液化しないガスとの混合器に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のガスを一定の割合で混合する混合装置として、従来、ベースガスを供給するベースガス配管と、添加ガスを供給する添加ガス配管にそれぞれ層流素子を配置し、各層流素子への流入側圧力を同圧にするために添加ガス用層流素子への流入側に均圧弁を配置したものが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−38179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
入口−出口の差圧に応じて一定流量を発生する層流素子を利用した混合器を用いて、大気温で液化するガスの気相成分ガス(以下、液化ガスという)と、大気温で気体であるガス(以下、圧縮ガスという)とを流量制御して混合させようとすると、液化ガスはその層流領域が狭いため、層流素子が発生する流量はその差圧に比例せず、濃度を一定に制御することが困難であるという問題を有している。
【0004】
また、層流素子による濃度制御の精度を高くしようとすると、圧力損失を大きく取らなければならず、入口圧力が0.1MPa以下などの低い圧力の場合には、混合精度または出口圧力のいずれかを犠牲にしなければならなかった。
【0005】
本発明は、高い混合精度を維持するとともに、広いレンジアビリティを有し、なおかつ圧力損失を低く抑えた電源不要の混合器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の本発明は、大気温で液化するガスと、大気温で気体であるガスとを混合するガス混合器であって、
濃度制御部と自動切換機構とを有し、
濃度制御部は、大気温で液化するガスの気相部ガスを導入する液化ガス導入路と、大気温で気体であるガスを導入する圧縮ガス導入路にそれぞれ層流素子を配置し、圧縮ガス導入路での層流素子よりも上流側に装着した均圧弁を液化ガス導入路での層流素子よりも上流側部分での内圧で制御するとともに、圧縮ガス導入路を流れる圧縮ガスが液化ガス導入路側に流入することを阻止する逆止弁を介して層流素子よりも下流側の液化ガス導出路と圧縮ガス導出路とを合流させてなる流量制御部を複数並列に配置して構成してあり、
自動切換機構は、各流量制御部での合流管部分に自動切換弁をそれぞれ装着し、各自動切換弁を自動切換弁よりも下流側での圧力を検知して切換え作動されるように構成してあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、一対の層流素子を配置して構成した流量制御部を複数並列に配置し、各流量制御部での各合流管部分に自動切換弁をそれぞれ装着し、各自動切換弁を自動切換弁よりも下流側での圧力を検知して切換え作動するように構成してあることから、一方のガスが層流領域が狭い液化ガスの場合でも、混合濃度を高い精度に維持することができる。
【0008】
また、使用流量に応じた複数系列の流量制御部を有していることから、広い使用領域に対応することができる。
【0009】
さらに、駆動に電源を要しないことから、混合する液化ガスあるいは圧縮ガスの少なくとも一方が可燃性ガスであっても、安全に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図は本発明の実施形態を示し、図1は、ガス混合器の概略配管フロー図である。
このガス混合器(1)は、濃度制御部(2)と自動切換機構(3)とで構成してある。
【0011】
濃度制御部(2)は、大気温で液化するガスの気相部ガス(液化ガス)を導入する液化ガス導入路(4)と、大気温で気体であるガス(圧縮ガス)を導入する圧縮ガス導入路(5)とを並列に配置し、この液化ガス導入路(4)と圧縮ガス導入路(5)とにそれぞれ層流素子(6)(7)を配置し、各層流素子(6)(7)に流入する液化ガス及び圧縮ガスが同圧となるように圧縮ガス導入路(5)での層流素子(7)よりも上流側に装着した均圧弁(8)を液化ガス導入路(4)での層流素子(6)よりも上流側部分での内圧で制御するよう構成し、圧縮ガス導入路(5)を流れる圧縮ガスが液化ガス導入路(4)側に流入することを阻止する逆止弁(9)を介して各層流素子(6)(7)よりも下流側の液化ガス導出路(10)と圧縮ガス導出路(11)とを合流させてなる流量制御部(12)を複数並列(本例では3系列)に配置して構成してある。
【0012】
ここで、各層流素子(6)(7)よりも下流側の液化ガス導出路(10)と圧縮ガス導出路(11)とを逆止弁(9)を介して合流させているが、これは、運転停止時に発生する均圧弁(8)の出流れによる組成変動を防止するためである。
【0013】
自動切換機構(3)は、それぞれの合流管(13)に配置した自動切換弁(14)で構成してある。各自動切換弁(14)は、それぞれ弁体よりも下流側での内圧を検知して開閉作動するように構成してあり、各自動切換弁(14)での開閉作動設定圧はそれぞれ少しづつ変えて構成してある。例えば、第3系列の合流管(13c)に装着されている第3自動切換弁(14c)での開弁設定圧(P)は、第2系列の合流管(13b)に装着されている第3自動切換弁(14b)での開弁設定圧(P)よりも低く設定してあり、第1系列の合流管(13a)に装着されている第1自動切換弁(14a)での開弁設定圧(P)は、第2系列の合流管(13b)に装着されている第3自動切換弁(14b)での開弁設定圧(P)よりも高く設定してある。つまり、この3つの自動切換弁(14a)(14b)(14c)での開弁設定圧は、P>P>Pとなっている。
【0014】
自動切換機構(3)での各合流管(13a)(13b)(13c)はさらに合流されて、混合ガス供給管(15)として、混合ガスのユースポイントに配管される。
【0015】
図2は、上述のガス混合器をユースポイントのガス切断トーチへ供給するLPGと水素とのガス混合に使用する場合を示している。
この場合、液化ガスとしてのLPGと、圧縮ガスとしての水素ガスの混合比が3:7となるように各流量制御部(12)での液化ガス側層流素子(6)と圧縮ガス側層流素子(7)との流量比が設定してある。
【0016】
次に、前記水素切断装置へのガス供給系に前述のガス混合器を使用した場合の作動について図3を参照しながら説明する。
混合ガスユースポイントでのガス使用量が一定量以下である場合には、混合ガス供給管(15)内を流れる混合ガス圧は第1自動切換弁(14a)の開弁設定圧力であるPと、第2自動切換弁(14b)の開弁設定圧であるPの間にあり、第1自動切換弁(14a)のみが開弁し、第1系列の合流管(13a)から層流素子(7)に供給される液化ガス及び圧縮ガスの供給圧力に応じた流量で混合ガスがユースポイントに供給される。
【0017】
混合ガスユースポイントでのガス使用量が増大して、混合ガス供給管(15)内を流れる混合ガス圧が第2自動切換弁(14b)の開弁設定圧であるPを下回り、第3自動切換弁(14c)の開弁設定圧であるPとの間の圧力になると、第1自動切換弁(14a)に加えて、第2自動切換弁(14b)も開弁し、第1系列の合流管(13a)と第2系列の合流管(13b)の両合流管から混合ガスがユースポイントに供給される。
【0018】
混合ガスユースポイントでのガス使用量がさらに増大して、混合ガス供給管(15)内を流れる混合ガス圧が第3自動切換弁(14c)の開弁設定圧であるP3を下回ると、第1自動切換弁(14a)、第2自動切換弁(14b)に加えて、第3自動切換弁(14c)も開弁し、第1系列の合流管(13a)、第2系列の合流管(13b)、第3系列の合流管(13c)の各合流管から混合ガスがユースポイントに供給される。
【0019】
上記の実施形態では、流量制御部(12)を3系統並列に配置したものを例に説明したが、流量制御部(12)は2系統並列に配置したものであっても、また、4系統以上を並列に配置したものであってもよい。この場合、自動切換機構(3)での自動切換弁(14)も流量制御部の数に対応して配置し、その開弁設定圧(P)も自動切換弁(14)の数に対応して設定されることになる。
【0020】
本発明に係るガス混合器は、大気温で液化するガスの気相成分ガス(液化ガス)と、大気温で気体であるガス(圧縮ガス)を所定の混合比率で混合するものであり、可燃性液化ガスと可燃性圧縮ガスとの混合ガス、可燃性液化ガスと不燃性圧縮ガスとの混合ガス、不燃性液化ガスと可燃性圧縮ガスとの混合ガスの組み合わせが考えられる。
【0021】
そして、可燃性液化ガスとしては、プロパン、プロピレン、ブタン(イソ、ノルマル)等の液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、可燃性のフルオロカーボン、可燃性の含フッ素エーテル、アンモニアなどがあげられる。また、不燃性液化ガスとしては、炭酸ガス、不燃性のフルオロカーボン、不燃性の含フッ素エーテルが挙げらる。
【0022】
一方、可燃性の圧縮ガスとしては、水素、メタン(天然ガス、バイオガス)、エタン、アセチレン、一酸化炭素などが挙げられ、不燃性の圧縮ガスとしては、窒素、希ガスが挙げられる。
【0023】
可燃性液化ガスと可燃性圧縮ガスとの組み合わせとしては、例えば、水素切断用燃料ガスに使用するLPGと水素ガスとの混合ガスが考えられる。
【0024】
可燃性液化ガスと不燃性圧縮ガスとを組み合わせたものとしては、LPGやジメチルエーテルに窒素ガスを混合して、燃料ガスの熱量調整や火炎速度低下による逆火防止に使用したり、LPGやジメチルエーテルに希ガスを混合して、炭素系機能材料合成に使用したりすることができる。
【0025】
また、不燃性液化ガスと可燃性圧縮ガスとを組み合わせたものとしては、炭酸ガスに水素、メタン、エタン、アセチレンを混合して、燃料ガスの熱量調整や火炎速度低下による逆火防止に使用することができる。
【実施例1】
【0026】
出口流量の範囲が1.5〜15Nm/hrのものにおいて、流量制御部(12)での流量制御範囲を1.5〜5Nm/hrに設定した小流量ラインと、5〜15Nm/hrに設定した大流量ラインの2系統とした濃度制御部(2)としたもので、液化ガスとしてLPGを使用し、圧縮ガスとして水素ガスを使用したものについて、出口流量の変化、LPGガス濃度、LPGガスの入口圧力とユニット出口圧力及び圧力損失の変化を測定した。また、比較例として、1系統ラインで濃度制御部(2)を構成したもの用いた。
その結果を表1及び図4、図5に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1及び図4からわかるように、濃度制御部(2)を複数の流量制御部(12)で構成した場合には、LPG濃度を±2vol%以内に制御することができる。
また、表1及び図5から圧力損失も0.012〜0.028MPaの幅内に収まることになる。
これに対して、濃度制御部を1系列の流量制御部で構成した場合には、LPG濃度は±4vol%程度のばらつきとなった。また、圧力損失も0.007〜0.041MPaとなり、圧力損失が大きくなることがわかる。
【0029】
上述の構成からなる本発明の混合器では、ガスの混合やガス路の切換に電源を必要としていないことから、着火源となるものを有していないことになる。このため、混合するガスの少なくとも一方が可燃性のガスであったとしても、安全に使用できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、水素切断用の燃料ガスを混合生成したり、その他の熱源として使用する燃料ガスを混合生成したり、代替自動車用燃料ガスを混合生成したり、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン、フラーレンなどのプラズマによる炭素系機能材料の合成原料ガスを混合生成したりすることに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、ガス混合器の概略配管フロー図である。
【図2】ガス切断トーチへ供給するLPGと水素とのガス混合に使用する場合の配管フロー図である。
【図3】自動切換弁の切換タイミングを示すタイミングチャートである。
【図4】出口流量とLPG濃度との関係を示すグラフである。
【図5】出口流量と圧力損失との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
2…濃度制御部、3…自動切換機構、4…液化ガス導入路、5…圧縮ガス導入路、6・7…層流素子、8…均圧弁、9…逆止弁、10…液化ガス導出路、11…圧縮ガス導出路、12…流量制御部、13…合流管、14…自動切換弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気温で液化するガスと、大気温で気体であるガスとを混合するガス混合器であって、
濃度制御部(2)と自動切換機構(3)とを有し、
濃度制御部(2)は、大気温で液化するガスの気相部ガスを導入する液化ガス導入路(4)と、大気温で気体であるガスを導入する圧縮ガス導入路(5)にそれぞれ層流素子(6)(7)を配置し、圧縮ガス導入路(5)での層流素子(7)よりも上流側に装着した均圧弁(8)を液化ガス導入路(4)での層流素子(6)よりも上流側部分での内圧で制御するとともに、圧縮ガス導入路(5)を流れる圧縮ガスが液化ガス導入路側に流入することを阻止する逆止弁(9)を介して層流素子(6)(7)よりも下流側の液化ガス導出路(10)と圧縮ガス導出路(11)とを合流させてなる流量制御部(12)を複数並列に配置して構成してあり、
自動切換機構(3)は、各流量制御部(12)での合流管(13)部分に自動切換弁(14)をそれぞれ装着し、各自動切換弁(14)を該自動切換弁(14)よりも下流側での圧力を検知して切換作動されるように構成し、各自動切換弁(14)の作動設定圧力を異ならせてある
ことを特徴とするガス混合器。
【請求項2】
大気温で液化する気相部ガスと、大気温で気体であるガスの少なくとも一方が可燃性ガスである請求項1に記載のガス混合器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−46609(P2010−46609A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213456(P2008−213456)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000158301)岩谷瓦斯株式会社 (56)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【出願人】(502259492)株式会社エー・シー・イー (2)
【Fターム(参考)】