説明

ガス測定装置の校正方法

【課題】被測定ガスの濃度が周期的に変化しない場合にでもゼロ点補正及び感度補正を行うこと。
【解決手段】 被測定ガスの濃度に比例した信号を出力するガスセンサを用いたガス濃度測定装置の校正方法において、被測定ガスの未知の濃度(X)に対し、被測定ガスの濃度指示値(Y1)を採取する工程と、前記被測定ガスを既知の比率(k)で希釈して前記ガスセンサに注入し、そのときの濃度指示値(Y2)を採取する工程と、前記それぞれの濃度指示値(Y1、Y2)と前記希釈率(k)とから一次関数Y=a・X+bを算出し、前記係数aを感度補正係数に、またbをゼロガス時のドリフト値にして濃度指示値(Y1)をY=(Y1-b)/aなる関係により補正する工程と、を備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基準ガスを使用して濃度校正を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導型ガス測定装置、半導体ガス測定装置、電気化学式ガス測定装置は、構造が比較的簡単で費用対効果が高い反面、環境の温度や雰囲気の影響を受けてドリフトが生じやすいという不都合がある。
このため、既知濃度の標準ガスをセンサに注入してゼロ点補正や感度補正などのいわゆる校正作業が行われている。
【0003】
しかしながら、正確に濃度が調整された標準ガスは高価であるという問題がある。
このため、特許文献1に見られるようにガス噴出に伴うガス濃度の経時的変化を積極的に利用して、噴出ガスの警報濃度を正確に測定する校正方法が提案されている。
【特許文献1】特開平9-15178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被測定ガスが停滞して濃度が周期的に変動しない場合には被測定ガスが存在しないと誤認するため、その用途や対象が限定されるという不都合がある。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは被測定ガスの濃度が周期的に変化しない場合にでもゼロ点補正及び感度補正を行うことができる新規な校正方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を達成するために本発明においては、被測定ガスの濃度に比例した信号を出力するガスセンサを用いたガス濃度測定装置の校正方法において、被測定ガスの未知の濃度(X)に対し、被測定ガスの濃度指示値(Y1)を採取する工程と、前記被測定ガスを既知の比率(k)で希釈して前記ガスセンサに注入し、そのときの濃度指示値(Y2)を採取する工程と、前記それぞれの濃度指示値(Y1、Y2)と前記希釈率(k)とから一次関数Y=a・X+bを算出し、前記係数aを感度補正係数に、またbをゼロガス時のドリフト値にして濃度指示値(Y1)をY=(Y1-b)/aなる関係により補正する工程と、を備えるようにした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、標準ガスを必要とすることなく、被測定ガスの濃度が一定でありさえすればドリフト、及び感度を校正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施例を示すものであって、ガス測定装置10は、ガスの濃度に対して可及的線形な信号を出力するガスセンサ11と、これからの信号をガス濃度に対応した信号に変換する校正値記憶手段12と、後述する校正手段20からの希釈率の信号を受けて補正係数を演算する補正係数演算手段13と、ゼロ点補正手段14、感度補正手段15、濃度演算手段16、及び濃度表示手段17とから構成されている。
【0008】
一方、校正手段20は、被測定ガスが存在する環境からサンプリングする被測定ガス導入手段21と、導入されるガスの濃度を規定値に希釈するとともにその希釈率を補正補正係数演算手段13に出力する希釈手段22とから構成されている。
【0009】
この実施例において通常は、ガスセンサ11に被測定ガスが流れ込むと、濃度に対応した信号が出力する。この信号は予め設定されている校正値により校正され、後段に出力され通常の方法により濃度表示手段17にガス濃度を示す濃度指示値(Y)として表示される。
【0010】
一方、校正を行う場合には、被測定ガスの未知の濃度(X)に対し、現時点での濃度指示値(Y1)を採取し、ついで希釈手段22により規定の比率、例えば2倍の希釈をしてガスセンサ11に再び被測定ガスを導入し、そのときの濃度指示値(Y2)を採取する。
【0011】
一方、図3に示したようにガスゼロ時のドリフト値b、感度補正率aとすると、被測定ガスの真の濃度(X)と指示値(Y)とは直線関係つまり一次比例関係を維持しているから、
Y=a・X+b
なる関係が成立している。
【0012】
したがって現在の被測定ガスの校正後の濃度指示値Yは、採取した濃度指示値(Y1)を
Y=(Y1−b)/a
なる関係で補正することによりドリフトや感度変動を修正できる。
【0013】
なお、上述の実施例においては無希釈状態と既知の希釈率との2種類のデータで算出を行っているが、被測定ガスの濃度が変化しないような状況では希釈率を複数種類にしたり、また特定の希釈率でのガス濃度を複数採取してその平均値を用いて演算するとさらに精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】同上装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】同上装置の動作を説明するための線図である。
【符号の説明】
【0015】
10 ガス測定装置 20 校正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガスの濃度に比例した信号を出力するガスセンサを用いたガス濃度測定装置の校正方法において、被測定ガスの未知の濃度(X)に対し、被測定ガスの濃度指示値(Y1)を採取する工程と、前記被測定ガスを既知の比率(k)で希釈して前記ガスセンサに注入し、そのときの濃度指示値(Y2)を採取する工程と、前記それぞれの濃度指示値(Y1、Y2)と前記希釈率(k)とから一次関数Y=a・X+bを算出し、前記係数aを感度補正係数に、またbをゼロガス時のドリフト値にして濃度指示値(Y1)をY=(Y1-b)/aなる関係により補正する工程と、からなるガス測定装置の校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−25646(P2010−25646A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185446(P2008−185446)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】