ガス濃度測定装置
【課題】被測定ガスに対し顕著な吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする光学フィルタ(干渉フィルタ型のノッチフィルタ)を使用することにより、水の影響を受け難く、防曇膜の使用を許容して、小型化を可能にし、信頼性の向上と製造コストの低減を容易に実現することができるガス濃度測定装置を提供する。
【解決手段】赤外線を発光させる光源18と、エアウエイアダプタ10を透過した赤外線を反射および透過させるビームスプリッタ12と、ビームスプリッタにより反射された赤外線を検出する第1の光検出器14と、ビームスプリッタを透過した赤外線を検出する第2の光検出器16とを備え、前記ビームスプリッタと前記第1または第2の光検出器との間に、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタ30を設ける。
【解決手段】赤外線を発光させる光源18と、エアウエイアダプタ10を透過した赤外線を反射および透過させるビームスプリッタ12と、ビームスプリッタにより反射された赤外線を検出する第1の光検出器14と、ビームスプリッタを透過した赤外線を検出する第2の光検出器16とを備え、前記ビームスプリッタと前記第1または第2の光検出器との間に、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタ30を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生体の呼吸ガス中に含まれる炭酸ガスなどのガス濃度を、赤外線の透過により測定するように構成したガス濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、呼吸ガス中に含まれる炭酸ガス濃度を測定する装置として、非分散型赤外線分析装置が知られている。この種の分析装置は、呼吸ガスに対し光源から放射された赤外線を透過させ、炭酸ガスが吸収する波長の光の吸収量を測定することにより、炭酸ガス濃度を測定するように構成されている。
【0003】
従来の炭酸ガス濃度測定装置として、例えば、呼吸ガスを導入する着脱可能なエアウエイアダプタを備え、このエアウエイアダプタを介して光源からの赤外線を透過させ、ビームスプリッタにより分離された赤外線をそれぞれ検出して炭酸ガス濃度を測定するように構成した装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載された炭酸ガス濃度測定装置は、その基本構成の概略を示せば、図7に示す通りである。すなわち、図7に示す装置は、エアウエイアダプタ10と、入射される赤外線を反射および透過させるビームスプリッタ12と、このビームスプリッタ12により反射した赤外線を波長3.7μmのバンドパスフィルタ13を介して検出する第2の光検出器16と、前記ビームスプリッタ12を透過した赤外線を波長4.3μmのバンドパスフィルタ15を介して検出する第1の光検出器14とを備えた構成からなる。
【0005】
このような構成からなる炭酸ガス濃度測定装置は、図8に示す炭酸ガス(CO2 )の光波長に対する透過スペクトルから判るように、炭酸ガスについては波長4.3μm付近が最も透過率が低く、また波長3.7μmでは透過率がほぼ100%で減衰しないことから、前記第1および第2の光検出器14、16における光の入射光量に応じて出力される電気信号の比を演算することにより、炭酸ガス濃度を算出することができる。
【0006】
しかるに、この種の炭酸ガス濃度測定装置において、前記エアウエイアダプタ10には、光源からの光の透過方向に位置する両側に、赤外線の透過性の良いサファイヤ11a、11bで構成された窓が設けられている。また、吸気・呼気ガスがエアウエイアダプタ10の内部を通過すると、前記窓の内面に微細な水滴が付着する。この水滴により光が散乱されるため、曇りが生じ、前記窓を通過する光量が変動する。これによる測定誤差が発生するのを防止するため、ヒータ等を設けて加熱するように構成した防曇手段を設けている。しかしながら、ヒータはウオームアップ時間が必要で、消費電力が大きいという欠点がある。
【0007】
別の防曇手段として、エアウエイアダプタ10の窓の内面に親水性を持たせた防曇処理を施すことが考えられる。これにより、窓の内面に付着する水は微細な水滴とはならず、薄い均一な層を形成するため、光が散乱されずに曇りが生じない。しかし、水による光の透過率は、図8から明らかなように、3.7μmと4.3μmの波長で異なる。このため、水の層が窓の内面に形成された場合、光検出器14、16に入射する光量比が変動し、測定誤差が発生する。このような理由から、前記の従来技術では、防曇処理を施した窓を使用することができなかった。
【0008】
また、従来技術においては、光源18として熱源やランプ等が使用されているが、それらの劣化やドリフトにより発熱温度が変化すると、プランクの黒体放射式から波長4.3μmおよび3.7μmの発光光量が同じ割合で変化せず、その発光量の比が変化することになる。さらに、被験者の痰等の分泌物で、エアウエイアダプタの光を透過する窓の内面が汚れた場合、4.3μmと3.7μmの波長で赤外線の吸収量が異なると、測定される炭酸ガス濃度の算定に影響を与えることになる。
【0009】
このような観点から、本出願人は、エアウエイアダプタについて、防曇手段としての加熱用ヒータを用いることなく、また高価なサファイヤを不要とし、しかも水の層や窓の汚れおよび光源の劣化やドリフトの影響を受けることない、低消費電力の炭酸ガス濃度測定装置を開発し、特許出願を行った(特許文献2参照)。
【0010】
すなわち、特許文献2に記載された炭酸ガス濃度測定装置の概略構成は、図9に示す通りである。なお、説明の便宜上、前述した図7に示す従来の炭酸ガス濃度測定装置の概略構成と同一の構成要素には、同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。そこで、図9に示す装置においては、エアウエイアダプタ10の光を透過する窓として、赤外線の透過率を高めるために、膜厚の薄いポリエチレンフィルム等からなる防曇処理を施した膜11c、11dを、光源の光軸方向の両側面にそれぞれ配置し、高い湿度を有する呼気・吸気による微細な水滴(曇り)の付着を防止する構成としたことを特徴とするものである。
【0011】
また、特許文献2に記載の炭酸ガス濃度測定装置においては、例えば波長4.3μmのバンドパスフィルタ15を介して、ビームスプリッタ12を透過した赤外線が入射し、その入射光量に応じた電気信号を出力する第2の光検出器16に対し、前記ビームスプリッタ12との間に高濃度の炭酸ガスを封入したガスセル20を配置して、4.3μmの波長の赤外線を吸収させ、残りの赤外線を透過させるフィルタ機能を持たせるように構成したことを特徴とするものである。
【0012】
このような構成からなる特許文献2に記載の炭酸ガス濃度測定装置によれば、ビームスプリッタ12を反射して第1の光検出器14に入射される赤外線のスペクトルは、エアウエイアダプタ10内の炭酸ガスの有無により、図10の(a)〔炭酸ガスが無い場合〕、(b)〔炭酸ガスが有る場合〕にそれぞれ示すように変化する。すなわち、炭酸ガスの有無により赤外線の光量が変化する。
【0013】
一方、ガスセル20を介して第2の光検出器16に入射される赤外線の光量は、ガスセル20内の高濃度の炭酸ガスにより強い吸収が生じるため、図11に示すように、炭酸ガスが無い場合も有る場合も同じとなる。従って、エアウエイアダプタ10内の炭酸ガス量(濃度)が変化しても、赤外線光量の変化量は僅かであることから、光検出器14と16に入射する赤外線の光量比を計算することにより、炭酸ガス濃度を算定することができる。この場合、第1および第2の光検出器は、同じ4.3μmの赤外線を検出しているため、呼吸ガスにより防曇膜11c、11dの内面に水の薄い層が形成されたとしても、第1および第2の光検出器に入射する赤外線光量は同じ割合で減少する.このため、光検出器14、16に入射する赤外線光量の比には変化がなく、水の層による測定誤差は回避できる。同様な理由で、光源18の劣化やドリフトあるいは被験者の痰等の分泌物による測定誤差の回避もできる。
【0014】
また、従来において、波長3.7μmのバンドパスフィルタと波長4.3μmのバンドパスフィルタをチョッパに設けて、このチョッパをエアウウエイアダプタを透過した赤外線の光路中に配置した構成からなる炭酸ガス濃度測定装置が知られている(特許文献3参照)。この特許文献3に記載の装置は、チョッパをモータにより回転させることによって、2つのバンドパスフィルタが光路の中に交互に入り、検出器が波長3.7μmの赤外線と波長4.3μmの赤外線を交互に検出するように構成したものであり、この2つの検出信号の比を演算することにより、炭酸ガス濃度を算出することができる。また、複数のバンドパスフィルタをチョッパに設けることにより、複数のガスを同時に分析することが容易にできる。例えば、笑気ガス(N2O)は波長3.9μmの赤外線を強く吸収するため、中心波長3.9μmのバンドパスフィルタをチョッパに追加することで、炭酸ガスと笑気ガスを同時に分析することができる。しかし、この種の装置においても、ヒータで曇り止めが必要であり、消費電力が大きいという問題があった。また、ウオームアップ時間が必要であった。
【0015】
【特許文献1】特表平5−508473号公報
【特許文献2】米国特許第6191421号明細書
【特許文献3】特開昭58−223040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述したように、従来の炭酸ガス濃度測定装置においては、2波長の赤外線を使用して炭酸ガス濃度を測定する場合、エアウエイアダプタの赤外線を透過させる窓に、安価な防曇膜を使用することができず、曇り止めのためにヒータ等の加熱防曇手段を設ける必要があり、装置構成が複雑かつ高価となる難点があった。そこで、ガスセルを使用することにより、エアウエイアダプタ内に安価な防曇膜を採用することが可能となり、曇り止めを防止して適正な炭酸ガス濃度の測定を実現することが可能となった。
【0017】
しかしながら、ガスセルを使用する炭酸ガス濃度測定装置においては、ガスセルにガスを封入してこれをリークしないようにする必要があることから、製造コストが増大するばかりでなく、装置全体の小型化も難しくなる等の問題を有している。
【0018】
そこで、本発明の目的は、前述した従来装置の問題点を全て解消するため、前述した従来のガスセルに代えて、被測定ガスに対し顕著な吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする光学フィルタ(干渉フィルタ型のノッチフィルタ)を使用することにより、エアウエイアダプタにおける水の影響を受け難くして、防曇膜の使用を許容すると共に、小型化を可能にし、しかも信頼性の向上と製造コストの低減を容易に実現することができるガス濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の炭酸ガス濃度測定装置は、被測定ガス中の所要ガスの濃度を測定するガス濃度測定装置において、赤外線を発光させる光源と、被測定ガスを導入するエアウエイアダプタと、前記エアウエイアダプタを透過した赤外線を反射および透過させるビームスプリッタと、前記ビームスプリッタにより反射された赤外線を検出する第1の光検出器と、前記ビームスプリッタを透過した赤外線を検出する第2の光検出器とを備え、
前記ビームスプリッタと前記第1または第2の光検出器との間に、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタを設けることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項2に記載のガス濃度測定装置は、前記光源と前記ビームスプリッタとの間に、中心波長を4.3μmに設定した第1のバンドパスフィルタを配置することを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項3に記載のガス濃度測定装置は、前記ビームスプリッタと前記第1の光検出器との間に設置された第2のバンドパスフィルタと、前記ビームスプリッタと前記第2の光検出器との間に設置された前記ノッチフィルタと、前記第2の光検出器と前記ノッチフィルタとの間または前記ノッチフィルタと前記ビームスプリッタとの間に第1のバンドパスフィルタを配置したことを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項4に記載のガス濃度測定装置は、前記ビームスプリッタと前記第2の光検出器との間に設置された第2のバンドパスフィルタと、前記ビームスプリッタと前記第1の光検出器との間に設置された前記ノッチフィルタと、前記第1の光検出器と前記ノッチフィルタとの間または前記ノッチフィルタと前記ビームスプリッタとの間に第1のバンドパスフィルタを配置したことを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項5に記載のガス濃度測定装置は、前記第1のバンドパスフィルタの半値幅は120〜300nmの範囲に設定し、中心波長を4.3μmに設定しその半値幅を前記第1のバンドパスフィルタの半値幅より小さく設定した第2のバンドパスフィルタを有することを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項6に記載のガス濃度測定装置は、前記第2のバンドパスフィルタの半値幅を10〜110nmの範囲に設定することを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項7に記載のガス濃度測定装置は、被測定ガス中の所要ガスの濃度を測定するガス濃度測定装置において、赤外線を発光させる光源と、被測定ガスを導入するエアウエイアダプタと、少なくともノッチフィルタを有するチョッパと、赤外線を検出する第1の光検出器とを備え、前記ノッチフィルタは、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタであることを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項8に記載のガス濃度測定装置は、前記光源と前記第1の光検出器との間に、第1のバンドパスフィルタを設けることを特徴とする。
【0027】
本発明の請求項9に記載のガス濃度測定装置は、前記ノッチフィルタを有するチョッパに、第2のバンドパスフィルタを設けることを特徴とする。
【0028】
本発明の請求項10に記載のガス濃度測定装置は、前記ノッチフィルタを有するチョッパに、第1のバンドパスフィルタと第2のバンドパスフィルタを設け、前記第1のバンドパスフィルタは、前記ノッチフィルタと同一光路に配置されていることを特徴とする。
【0029】
本発明の請求項11に記載のガス濃度測定装置は、エアウエイアダプタの窓は防曇処理を施したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る請求項1に記載のガス濃度測定装置によれば、ガスセルを使用することなく、被測定ガスに対し顕著な吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする光学フィルタ(干渉フィルタ型のノッチフィルタ)を使用することにより、エアウエイアダプタにおける水の影響を受け難くして、防曇膜の使用を許容すると共に、小型化を可能にし、しかも信頼性の向上と製造コストの低減を容易に実現することができる。
【0031】
本発明に係る請求項2ないし4に記載のガス濃度測定装置によれば、中心波長4.3μmのバンドパスフィルタを使用すると共に、前記光学フィルタとして波長4.3μmの赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタを使用することにより、被測定ガス中の炭酸ガス濃度を簡便かつ適正に測定することが可能となる。
【0032】
本発明に係る請求項5および6に記載のガス濃度測定装置によれば、バンドパスフィルタの半値幅を適正に設定することにより、炭酸ガス濃度の適正な測定を容易に達成することができる。
【0033】
本発明に係る請求項7ないし10に記載のガス濃度測定装置によれば、ガスセルを使用することなく、被測定ガスに対し顕著な吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする光学フィルタ(干渉フィルタ型のノッチフィルタ)を、モータにより回転駆動するチョッパに組み合わせて使用することにより、前記と同様にしてより簡便なガス濃度の測定を実現することができる。
【0034】
本発明に係る請求項11に記載のガス濃度測定装置によっても、請求項1に記載の炭酸ガス濃度測定装置と同様に、エアウエイアダプタにおける水の影響を受け難くして、防曇膜の使用を許容すると共に、小型化を可能にし、しかも信頼性の向上と製造コストの低減を容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、本発明に係るガス濃度測定装置を実施する最良の形態につき、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0036】
図1は、本発明に係るガス濃度測定装置の第1の実施例としての炭酸ガス濃度測定装置の一構成例を示すものである。なお、説明の便宜上、前述した図7および図9に示す従来の炭酸ガス濃度測定装置と同一の構成要素については、同一の参照符号を付して説明する。
【0037】
すなわち、図1に示す炭酸ガス濃度測定装置の実施例においては、呼吸ガス中の炭酸ガス(CO2 )の濃度を測定する炭酸ガス濃度測定装置であって、炭酸ガスを導入するエアウエイアダプタ10と、前記エアウエイアダプタ10を透過させる赤外線を発光させる光源18と、前記エアウエイアダプタ10を透過した赤外線を反射および透過させるビームスプリッタ12と、前記ビームスプリッタ12により反射された赤外線を検出する第1の光検出器14と、前記ビームスプリッタ12を透過した赤外線を検出する第2の光検出器16とを備えた構成からなる。
【0038】
なお、本発明において、エアウエイアダプタ10は、被測定ガスを通過させると共に赤外線を透過させることが可能な通路として構成される。また、前記エアウエイアダプタ10の内部において、赤外線を透過する窓として、赤外線の透過率を高めるために、膜厚の薄いポリエチレンフィルム等からなる防曇膜11e、11fが設けられている。以上の構成は、従来の炭酸ガス濃度測定装置の構成と同じである。
【0039】
そこで、本発明においては、前記構成からなる炭酸ガス濃度測定装置において、前記ビームスプリッタ12を透過した赤外線を検出する第2の光検出器16に対し、炭酸ガスに対し顕著な吸収特性を有する赤外線の所定の波長(4.3μm)において、赤外線の透過をカットする光学フィルタ30を設けることを特徴とする。
この場合、前記光学フィルタ30は、波長4.3μmの赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタとして構成されている。
【0040】
本実施例の炭酸ガス濃度測定装置においては、光源18と前記ビームスプリッタ12との間に、中心波長4.3μmに設定した第1のバンドパスフィルタ25を配置する。また、前記ビームスプリッタ12とこのビームスプリッタ12により反射された赤外線を検出する第1の光検出器14との間に、中心波長4.3μmに設定した第2のバンドパスフィルタ26を配置する。
【0041】
さらに、本実施例の炭酸ガス濃度測定装置において、前記第1のバンドパスフィルタ25については、中心波長を4.3μmに設定すると共に、その半値幅を例えば250nmに設定する。これに対し、前記第2のバンドパスフィルタ26については、中心波長を同じ4.3μmに設定すると共に、その半値幅を例えば80nmに設定する。光学フィルタ30については、中心波長を4.3μmに設定すると共に、その半値幅を例えば110nmに設定する。
【0042】
このように構成することにより、本実施例の炭酸ガス濃度測定装置においては、エアウエイアダプタ10に呼吸ガスを導入して、炭酸ガスの濃度を測定する場合、前記第1のバンドパスフィルタ25を透過する赤外線のスペクトルは、図2に示される通りである。すなわち、呼吸ガス中に炭酸ガスが無い場合は、図2の(a)に示されるスペクトルとなり、また炭酸ガスが有る場合は、図2の(b)に示されるスペクトルとなり、炭酸ガスの有無により光量が変化する。
【0043】
次いで、前記第1のバンドパスフィルタ25およびビームスプリッタ12を透過し、前記光学フィルタ30を透過して前記第2の光検出器16に入射される赤外線のスペクトルは、図4に示される通りである。すなわち、呼吸ガス中における炭酸ガスの有無に関係なく、図示のように設定された中心波長4.3μmにおいて著しく減衰したスペクトルとなる。
【0044】
そこで、前記第1のバンドパスフィルタ25を透過し、ビームスプリッタ12により反射され、前記第2のバンドパスフィルタ26を透過して前記第1の光検出器14に入射される赤外線のスペクトルは、図3に示される通りである。すなわち、この場合、呼吸ガス中に炭酸ガスが無い場合は、図3の(a)に示されるスペクトルとなり、また炭酸ガスが有る場合は、図3の(b)に示されるスペクトルとなり、炭酸ガスの有無により光量が変化する。そこで、光検出器14、16に入射する赤外線の光量比を計算することにより、炭酸ガス濃度を算定することができる。
【0045】
このように、本実施例においては、前記第2のバンドパスフィルタ26の半値幅を、呼吸ガス中の炭酸ガスの有無により、その変化が顕著となるように、前記第1のバンドパスフィルタ25に設定した半値幅より小さく、例えば半分以下に設定したことにより、前記第1の光検出器14により検出される赤外線の光量の変化量を大きくすることができ、炭酸ガスの濃度測定の感度および信頼性を高めることができる。また、本実施例において、光学フィルタ30とバンドパスフィルタ26を入れ替えた配置でも、炭酸ガス濃度の測定が可能である。
【0046】
なお、本実施例において、前記光学フィルタ30側に設けた第2の光検出器16については、呼吸ガスが導入されるエアウエイアダプタ10に炭酸ガスが存在する場合に、光量変化が少ない方が望ましいことから、前記第1のバンドパスフィルタ25の半値幅は広い方が好ましい。しかし、前記光学フィルタ30のない側に設けた第1の光検出器14については、逆に光量の変化が多い方が有利であるため、前記第2のバンドパスフィルタ26の半値幅は狭い方が好ましい。従って、バンドパスフィルタが1枚であると、これらの条件を同時に満たすことができないが、本発明のように、少なくとも2枚のバンドパスフィルタを使用することにより、これらの条件を満たすことが可能となる。
【実施例2】
【0047】
図5は、本発明に係るガス濃度測定装置の第2の実施例としての炭酸ガス濃度測定装置の別の構成例を示すものである。なお、図1に示す装置と同一の構成要素については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。すなわち、図5に示す炭酸ガス濃度測定装置の実施例においては、基本的に図1に示す炭酸ガス濃度測定装置と同一の構成要素からなるものであって、前記第1のバンドパスフィルタ25を、前記エアウエイアダプタ10を透過し、次いでビームスプリッタ12を透過した赤外線の前記光学フィルタ30の前後のいずれかにおける光路中に、配置することを特徴とするものである。
【0048】
このように構成された本実施例の炭酸ガス濃度測定装置においても、前述した実施例1と全く同様にして炭酸ガス濃度の測定を達成することができる(図2ないし図4参照)。また、実施例2において、光学フィルタ30およびバンドパスフィルタ25とバンドパスフィルタ26を入れ替えた配置でも、炭酸ガス濃度の測定が可能である。
【0049】
なお、前述した実施例1、2において、第1のバンドパスフィルタ25については、炭酸ガスが吸収される帯域が、光学フィルタ30においてカットされるので、第1のバンドパスフィルタ25の半値幅を光学フィルタ30によってカットされる帯域よりも広くする必要がある。また、波長4.45〜4.55μmにおいて、N2O(笑気)による赤外線の吸収があり、前記半値幅を広げ過ぎると、N2Oによる影響がでるため、その影響を受けない範囲に半値幅を設定する必要がある。そこで、第1のバンドパスフィルタ25の中心波長を短波長側にずらして、半値幅を広げると、水による吸収の影響がキャンセルできなくなる。すなわち、水による吸収の影響をキャンセルさせるためには、2枚のバンドパスフィルタの中心波長を一致させることが望ましい。従って、前記半値幅は、N2Oによる影響を受けず、2枚のバンドパスフィルタの中心波長を一致させる範囲の値が好ましい。さらに好ましくは、前記半値幅は、120nm〜300nm程度が望ましい。
【0050】
また、第2のバンドパスフィルタ26について、半値幅は、光学フィルタ30側に配置された第1のバンドパスフィルタ25に設定される半値幅に対し、その半分以下の値に設定することが望ましい。すなわち、前記半値幅を、炭酸ガス(CO2 )の吸収スペクトルと同程度か、それよりも小さくすると、赤外線の光量の変化量が大きくなり、CO2 に対する感度が高くなるためである。なお、前記半値幅は10〜110nmが更に好ましく、実施例では半値幅を80nmに設定している。しかし、この場合、CO2 の吸収スペクトルの半値幅は、CO2 の濃度およびエアウエイアダプタ10の光路長等により変化するため、前記半値幅は必ずしも110nm以下に限定する必要はない。
【実施例3】
【0051】
図6は、本発明に係るガス濃度測定装置の第3の実施例としての炭酸ガス濃度測定装置の他の構成例であって、(a)、(b)、(c)はそれぞれ変形例を示すものである。なお、図1に示す装置と同一の構成要素については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。すなわち、本実施例の炭酸ガス濃度測定装置においては、エアウエイアダプタを透過した赤外線の光路中に、前述した光学フィルタ30を設けたチョッパ35を配置して、このチョッパ35をモータ40により回転させるように構成したものである。
【0052】
図6の(a)に示す構成においては、エアウエイアダプタ10を透過した赤外線の光路に対し、第1のバンドパスフィルタ25を介して、チョッパ35を配置した構成からなる。この場合、チョッパ35の一部に、前述した光学フィルタ30を設ける。前記光学フィルタ30は、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタとして構成されている。また、前記第1のバンドパスフィルタ25は、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線を透過させ、その半値幅は前記光学フィルタ30の半値幅よりも広く設定する。
このような構成からなる炭酸ガス濃度測定装置は、チョッパ35をモータ40により回転させることによって、光路の中で第1のバンドパスフィルタとこれに間欠的に光学フィルタ30が重なり、赤外線検出器14(16)が前述した実施例のように異なる波長の赤外線を交互に検出し、この2つの検出信号の比を演算することにより、炭酸ガス濃度を算出することができる。
【0053】
図6の(b)に示す構成においては、チョッパ35に対し、前述した光学フィルタ30と、第2のバンドパスフィルタ26とを、180度隔てて設けた構成からなる。この場合、第2のバンドパスフィルタ26は、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線を透過させ、その半値幅は前記第1のバンドパスフィルタ25の半値幅よりも狭く設定する。その他の構成は、図6の(a)と同じである。
このような構成からなる炭酸ガス濃度測定装置は、チョッパ35をモータ40により回転させることによって、光路の中で第1のバンドパスフィルタとこれに光学フィルタ30および第2のバンドパスフィルタ26が交互に重なり、赤外線検出器14(16)が前述した実施例のように異なる波長の赤外線を交互に検出し、この2つの検出信号の比を演算することにより、炭酸ガス濃度を算出することができる。
【0054】
図6の(c)に示す構成においては、チョッパ35に対し、前述した光学フィルタ30/第1のバンドパスフィルタ25と、第2のバンドパスフィルタ26とを、180度隔てて設けた構成からなる。
このような構成からなる炭酸ガス濃度測定装置においても、チョッパ35をモータ40により回転させることによって、第1のバンドパスフィルタおよび光学フィルタ30と、第2のバンドパスフィルタ26とが、光路の中に交互に入り、赤外線検出器14(16)が前述した実施例のように異なる波長の赤外線を交互に検出し、この2つの検出信号の比を演算することにより、炭酸ガス濃度を算出することができる。
【0055】
なお、前述した構成からなる本実施例の炭酸ガス濃度測定装置においては、図6の(a)、(b)に示す構成において、チョッパ35および第1のバンドパスフィルタ25は、光源18と赤外線検出器14(16)の間に配置されればよく、これらの配置を逆転させることも可能である。また、図6の(c)に示す構成において、チョッパ35は光源18と赤外線検出器14(16)の間に配置すればよく、チョッパ35とエアウエイアダプタ10の配置を逆転することも可能である。
【0056】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は前記実施例の呼吸ガス中の炭酸ガス濃度の測定に限定されることなく、その他の対象ガス中に含有される所要ガス成分の濃度測定についても広く応用することが可能である。例えば、N2Oは波長3.9μmの赤外線を強く吸収するため、中心波長を3.9μmに設定した光学フィルタ(ノッチフィルタ)、バンドパスフィルタを設けることにより測定可能である。また、ハロセン、エンフルラン、イソフルラン、セボフルラン等の揮発性麻酔薬は、波長7〜15μmに吸収帯域があるため、適切な中心波長、半値幅に設定した光学フィルタ(ノッチフィルタ)、バンドパスフィルタを設けることにより測定可能となる。その他、本発明の精神を逸脱しない範囲内において種々の設計変更を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るガス濃度測定装置の第1の実施形態としての炭酸ガス濃度測定装置の一構成例を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す炭酸ガス濃度測定装置において、第1のバンドパスフィルタを透過する赤外線と炭酸ガスとの関係を示すもので、(a)は炭酸ガス(CO2 )無しの場合のスペクトル図、(b)は炭酸ガス(CO2 )有りの場合のスペクトル図である。
【図3】図1に示す炭酸ガス濃度測定装置において、ビームスプリッタを反射して第2のバンドパスフィルタを透過する赤外線と炭酸ガスとの関係を示すもので、(a)は炭酸ガス(CO2 )無しの場合のスペクトル図、(b)は炭酸ガス(CO2 )有りの場合のスペクトル図である。
【図4】図1に示す炭酸ガス濃度測定装置において、第2の光検出器16に入射する赤外線と炭酸ガスとの関係を示すもので、炭酸ガス(CO2 )の有り/無しの場合のスペクトル図である。
【図5】本発明に係るガス濃度測定装置の第2の実施形態としての炭酸ガス濃度測定装置の別の構成例を示す概略構成図である。
【図6】本発明に係るガス濃度測定装置の第3の実施形態としての炭酸ガス濃度測定装置の他の構成例であって、(a)、(b)、(c)はそれぞれ変形例を示す概略構成図である。
【図7】従来の炭酸ガス濃度測定装置の概略構成を示す説明図である。
【図8】炭酸ガス(CO2 )および水(H2O)の赤外線の透過スペクトルを示すスペクトル図である。
【図9】従来の改良提案された炭酸ガス濃度測定装置の概略構成を示す説明図である。
【図10】図9に示す炭酸ガス濃度測定装置において、ビームスプリッタを反射して第1の光検出器に入射する赤外線と炭酸ガスの関係を示すもので、(a)は炭酸ガス(CO2 )無しの場合のスペクトル図、(b)は炭酸ガス(CO2 )有りの場合のスペクトル図である。
【図11】図9に示す炭酸ガス濃度測定装置において、ビームスプリッタを透過してガスセルを透過する赤外線光量と炭酸ガスの関係を示すもので、炭酸ガス(CO2 )の有り/無しの場合のスペクトル図である。
【符号の説明】
【0058】
10 エアウエイアダプタ
11a、11b サファイヤ
11c、11d 防曇膜
11e、11f 防曇膜
12 ビームスプリッタ
13 バンドパスフィルタ(波長 3.7μm)
14 第1の光検出器
15 バンドパスフィルタ(波長 4.3μm)
16 第2の光検出器
18 光源
20 ガスセル
25 第1のバンドパスフィルタ(中心波長 4.3μm/半値幅 250nm)
26 第2のバンドパスフィルタ(中心波長 4.3μm/半値幅80nm)
30 光学フィルタ(波長 4.3μmカットのノッチフィルタ)
35 チョッパ
40 モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生体の呼吸ガス中に含まれる炭酸ガスなどのガス濃度を、赤外線の透過により測定するように構成したガス濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、呼吸ガス中に含まれる炭酸ガス濃度を測定する装置として、非分散型赤外線分析装置が知られている。この種の分析装置は、呼吸ガスに対し光源から放射された赤外線を透過させ、炭酸ガスが吸収する波長の光の吸収量を測定することにより、炭酸ガス濃度を測定するように構成されている。
【0003】
従来の炭酸ガス濃度測定装置として、例えば、呼吸ガスを導入する着脱可能なエアウエイアダプタを備え、このエアウエイアダプタを介して光源からの赤外線を透過させ、ビームスプリッタにより分離された赤外線をそれぞれ検出して炭酸ガス濃度を測定するように構成した装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載された炭酸ガス濃度測定装置は、その基本構成の概略を示せば、図7に示す通りである。すなわち、図7に示す装置は、エアウエイアダプタ10と、入射される赤外線を反射および透過させるビームスプリッタ12と、このビームスプリッタ12により反射した赤外線を波長3.7μmのバンドパスフィルタ13を介して検出する第2の光検出器16と、前記ビームスプリッタ12を透過した赤外線を波長4.3μmのバンドパスフィルタ15を介して検出する第1の光検出器14とを備えた構成からなる。
【0005】
このような構成からなる炭酸ガス濃度測定装置は、図8に示す炭酸ガス(CO2 )の光波長に対する透過スペクトルから判るように、炭酸ガスについては波長4.3μm付近が最も透過率が低く、また波長3.7μmでは透過率がほぼ100%で減衰しないことから、前記第1および第2の光検出器14、16における光の入射光量に応じて出力される電気信号の比を演算することにより、炭酸ガス濃度を算出することができる。
【0006】
しかるに、この種の炭酸ガス濃度測定装置において、前記エアウエイアダプタ10には、光源からの光の透過方向に位置する両側に、赤外線の透過性の良いサファイヤ11a、11bで構成された窓が設けられている。また、吸気・呼気ガスがエアウエイアダプタ10の内部を通過すると、前記窓の内面に微細な水滴が付着する。この水滴により光が散乱されるため、曇りが生じ、前記窓を通過する光量が変動する。これによる測定誤差が発生するのを防止するため、ヒータ等を設けて加熱するように構成した防曇手段を設けている。しかしながら、ヒータはウオームアップ時間が必要で、消費電力が大きいという欠点がある。
【0007】
別の防曇手段として、エアウエイアダプタ10の窓の内面に親水性を持たせた防曇処理を施すことが考えられる。これにより、窓の内面に付着する水は微細な水滴とはならず、薄い均一な層を形成するため、光が散乱されずに曇りが生じない。しかし、水による光の透過率は、図8から明らかなように、3.7μmと4.3μmの波長で異なる。このため、水の層が窓の内面に形成された場合、光検出器14、16に入射する光量比が変動し、測定誤差が発生する。このような理由から、前記の従来技術では、防曇処理を施した窓を使用することができなかった。
【0008】
また、従来技術においては、光源18として熱源やランプ等が使用されているが、それらの劣化やドリフトにより発熱温度が変化すると、プランクの黒体放射式から波長4.3μmおよび3.7μmの発光光量が同じ割合で変化せず、その発光量の比が変化することになる。さらに、被験者の痰等の分泌物で、エアウエイアダプタの光を透過する窓の内面が汚れた場合、4.3μmと3.7μmの波長で赤外線の吸収量が異なると、測定される炭酸ガス濃度の算定に影響を与えることになる。
【0009】
このような観点から、本出願人は、エアウエイアダプタについて、防曇手段としての加熱用ヒータを用いることなく、また高価なサファイヤを不要とし、しかも水の層や窓の汚れおよび光源の劣化やドリフトの影響を受けることない、低消費電力の炭酸ガス濃度測定装置を開発し、特許出願を行った(特許文献2参照)。
【0010】
すなわち、特許文献2に記載された炭酸ガス濃度測定装置の概略構成は、図9に示す通りである。なお、説明の便宜上、前述した図7に示す従来の炭酸ガス濃度測定装置の概略構成と同一の構成要素には、同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。そこで、図9に示す装置においては、エアウエイアダプタ10の光を透過する窓として、赤外線の透過率を高めるために、膜厚の薄いポリエチレンフィルム等からなる防曇処理を施した膜11c、11dを、光源の光軸方向の両側面にそれぞれ配置し、高い湿度を有する呼気・吸気による微細な水滴(曇り)の付着を防止する構成としたことを特徴とするものである。
【0011】
また、特許文献2に記載の炭酸ガス濃度測定装置においては、例えば波長4.3μmのバンドパスフィルタ15を介して、ビームスプリッタ12を透過した赤外線が入射し、その入射光量に応じた電気信号を出力する第2の光検出器16に対し、前記ビームスプリッタ12との間に高濃度の炭酸ガスを封入したガスセル20を配置して、4.3μmの波長の赤外線を吸収させ、残りの赤外線を透過させるフィルタ機能を持たせるように構成したことを特徴とするものである。
【0012】
このような構成からなる特許文献2に記載の炭酸ガス濃度測定装置によれば、ビームスプリッタ12を反射して第1の光検出器14に入射される赤外線のスペクトルは、エアウエイアダプタ10内の炭酸ガスの有無により、図10の(a)〔炭酸ガスが無い場合〕、(b)〔炭酸ガスが有る場合〕にそれぞれ示すように変化する。すなわち、炭酸ガスの有無により赤外線の光量が変化する。
【0013】
一方、ガスセル20を介して第2の光検出器16に入射される赤外線の光量は、ガスセル20内の高濃度の炭酸ガスにより強い吸収が生じるため、図11に示すように、炭酸ガスが無い場合も有る場合も同じとなる。従って、エアウエイアダプタ10内の炭酸ガス量(濃度)が変化しても、赤外線光量の変化量は僅かであることから、光検出器14と16に入射する赤外線の光量比を計算することにより、炭酸ガス濃度を算定することができる。この場合、第1および第2の光検出器は、同じ4.3μmの赤外線を検出しているため、呼吸ガスにより防曇膜11c、11dの内面に水の薄い層が形成されたとしても、第1および第2の光検出器に入射する赤外線光量は同じ割合で減少する.このため、光検出器14、16に入射する赤外線光量の比には変化がなく、水の層による測定誤差は回避できる。同様な理由で、光源18の劣化やドリフトあるいは被験者の痰等の分泌物による測定誤差の回避もできる。
【0014】
また、従来において、波長3.7μmのバンドパスフィルタと波長4.3μmのバンドパスフィルタをチョッパに設けて、このチョッパをエアウウエイアダプタを透過した赤外線の光路中に配置した構成からなる炭酸ガス濃度測定装置が知られている(特許文献3参照)。この特許文献3に記載の装置は、チョッパをモータにより回転させることによって、2つのバンドパスフィルタが光路の中に交互に入り、検出器が波長3.7μmの赤外線と波長4.3μmの赤外線を交互に検出するように構成したものであり、この2つの検出信号の比を演算することにより、炭酸ガス濃度を算出することができる。また、複数のバンドパスフィルタをチョッパに設けることにより、複数のガスを同時に分析することが容易にできる。例えば、笑気ガス(N2O)は波長3.9μmの赤外線を強く吸収するため、中心波長3.9μmのバンドパスフィルタをチョッパに追加することで、炭酸ガスと笑気ガスを同時に分析することができる。しかし、この種の装置においても、ヒータで曇り止めが必要であり、消費電力が大きいという問題があった。また、ウオームアップ時間が必要であった。
【0015】
【特許文献1】特表平5−508473号公報
【特許文献2】米国特許第6191421号明細書
【特許文献3】特開昭58−223040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述したように、従来の炭酸ガス濃度測定装置においては、2波長の赤外線を使用して炭酸ガス濃度を測定する場合、エアウエイアダプタの赤外線を透過させる窓に、安価な防曇膜を使用することができず、曇り止めのためにヒータ等の加熱防曇手段を設ける必要があり、装置構成が複雑かつ高価となる難点があった。そこで、ガスセルを使用することにより、エアウエイアダプタ内に安価な防曇膜を採用することが可能となり、曇り止めを防止して適正な炭酸ガス濃度の測定を実現することが可能となった。
【0017】
しかしながら、ガスセルを使用する炭酸ガス濃度測定装置においては、ガスセルにガスを封入してこれをリークしないようにする必要があることから、製造コストが増大するばかりでなく、装置全体の小型化も難しくなる等の問題を有している。
【0018】
そこで、本発明の目的は、前述した従来装置の問題点を全て解消するため、前述した従来のガスセルに代えて、被測定ガスに対し顕著な吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする光学フィルタ(干渉フィルタ型のノッチフィルタ)を使用することにより、エアウエイアダプタにおける水の影響を受け難くして、防曇膜の使用を許容すると共に、小型化を可能にし、しかも信頼性の向上と製造コストの低減を容易に実現することができるガス濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の炭酸ガス濃度測定装置は、被測定ガス中の所要ガスの濃度を測定するガス濃度測定装置において、赤外線を発光させる光源と、被測定ガスを導入するエアウエイアダプタと、前記エアウエイアダプタを透過した赤外線を反射および透過させるビームスプリッタと、前記ビームスプリッタにより反射された赤外線を検出する第1の光検出器と、前記ビームスプリッタを透過した赤外線を検出する第2の光検出器とを備え、
前記ビームスプリッタと前記第1または第2の光検出器との間に、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタを設けることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項2に記載のガス濃度測定装置は、前記光源と前記ビームスプリッタとの間に、中心波長を4.3μmに設定した第1のバンドパスフィルタを配置することを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項3に記載のガス濃度測定装置は、前記ビームスプリッタと前記第1の光検出器との間に設置された第2のバンドパスフィルタと、前記ビームスプリッタと前記第2の光検出器との間に設置された前記ノッチフィルタと、前記第2の光検出器と前記ノッチフィルタとの間または前記ノッチフィルタと前記ビームスプリッタとの間に第1のバンドパスフィルタを配置したことを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項4に記載のガス濃度測定装置は、前記ビームスプリッタと前記第2の光検出器との間に設置された第2のバンドパスフィルタと、前記ビームスプリッタと前記第1の光検出器との間に設置された前記ノッチフィルタと、前記第1の光検出器と前記ノッチフィルタとの間または前記ノッチフィルタと前記ビームスプリッタとの間に第1のバンドパスフィルタを配置したことを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項5に記載のガス濃度測定装置は、前記第1のバンドパスフィルタの半値幅は120〜300nmの範囲に設定し、中心波長を4.3μmに設定しその半値幅を前記第1のバンドパスフィルタの半値幅より小さく設定した第2のバンドパスフィルタを有することを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項6に記載のガス濃度測定装置は、前記第2のバンドパスフィルタの半値幅を10〜110nmの範囲に設定することを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項7に記載のガス濃度測定装置は、被測定ガス中の所要ガスの濃度を測定するガス濃度測定装置において、赤外線を発光させる光源と、被測定ガスを導入するエアウエイアダプタと、少なくともノッチフィルタを有するチョッパと、赤外線を検出する第1の光検出器とを備え、前記ノッチフィルタは、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタであることを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項8に記載のガス濃度測定装置は、前記光源と前記第1の光検出器との間に、第1のバンドパスフィルタを設けることを特徴とする。
【0027】
本発明の請求項9に記載のガス濃度測定装置は、前記ノッチフィルタを有するチョッパに、第2のバンドパスフィルタを設けることを特徴とする。
【0028】
本発明の請求項10に記載のガス濃度測定装置は、前記ノッチフィルタを有するチョッパに、第1のバンドパスフィルタと第2のバンドパスフィルタを設け、前記第1のバンドパスフィルタは、前記ノッチフィルタと同一光路に配置されていることを特徴とする。
【0029】
本発明の請求項11に記載のガス濃度測定装置は、エアウエイアダプタの窓は防曇処理を施したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る請求項1に記載のガス濃度測定装置によれば、ガスセルを使用することなく、被測定ガスに対し顕著な吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする光学フィルタ(干渉フィルタ型のノッチフィルタ)を使用することにより、エアウエイアダプタにおける水の影響を受け難くして、防曇膜の使用を許容すると共に、小型化を可能にし、しかも信頼性の向上と製造コストの低減を容易に実現することができる。
【0031】
本発明に係る請求項2ないし4に記載のガス濃度測定装置によれば、中心波長4.3μmのバンドパスフィルタを使用すると共に、前記光学フィルタとして波長4.3μmの赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタを使用することにより、被測定ガス中の炭酸ガス濃度を簡便かつ適正に測定することが可能となる。
【0032】
本発明に係る請求項5および6に記載のガス濃度測定装置によれば、バンドパスフィルタの半値幅を適正に設定することにより、炭酸ガス濃度の適正な測定を容易に達成することができる。
【0033】
本発明に係る請求項7ないし10に記載のガス濃度測定装置によれば、ガスセルを使用することなく、被測定ガスに対し顕著な吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする光学フィルタ(干渉フィルタ型のノッチフィルタ)を、モータにより回転駆動するチョッパに組み合わせて使用することにより、前記と同様にしてより簡便なガス濃度の測定を実現することができる。
【0034】
本発明に係る請求項11に記載のガス濃度測定装置によっても、請求項1に記載の炭酸ガス濃度測定装置と同様に、エアウエイアダプタにおける水の影響を受け難くして、防曇膜の使用を許容すると共に、小型化を可能にし、しかも信頼性の向上と製造コストの低減を容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、本発明に係るガス濃度測定装置を実施する最良の形態につき、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0036】
図1は、本発明に係るガス濃度測定装置の第1の実施例としての炭酸ガス濃度測定装置の一構成例を示すものである。なお、説明の便宜上、前述した図7および図9に示す従来の炭酸ガス濃度測定装置と同一の構成要素については、同一の参照符号を付して説明する。
【0037】
すなわち、図1に示す炭酸ガス濃度測定装置の実施例においては、呼吸ガス中の炭酸ガス(CO2 )の濃度を測定する炭酸ガス濃度測定装置であって、炭酸ガスを導入するエアウエイアダプタ10と、前記エアウエイアダプタ10を透過させる赤外線を発光させる光源18と、前記エアウエイアダプタ10を透過した赤外線を反射および透過させるビームスプリッタ12と、前記ビームスプリッタ12により反射された赤外線を検出する第1の光検出器14と、前記ビームスプリッタ12を透過した赤外線を検出する第2の光検出器16とを備えた構成からなる。
【0038】
なお、本発明において、エアウエイアダプタ10は、被測定ガスを通過させると共に赤外線を透過させることが可能な通路として構成される。また、前記エアウエイアダプタ10の内部において、赤外線を透過する窓として、赤外線の透過率を高めるために、膜厚の薄いポリエチレンフィルム等からなる防曇膜11e、11fが設けられている。以上の構成は、従来の炭酸ガス濃度測定装置の構成と同じである。
【0039】
そこで、本発明においては、前記構成からなる炭酸ガス濃度測定装置において、前記ビームスプリッタ12を透過した赤外線を検出する第2の光検出器16に対し、炭酸ガスに対し顕著な吸収特性を有する赤外線の所定の波長(4.3μm)において、赤外線の透過をカットする光学フィルタ30を設けることを特徴とする。
この場合、前記光学フィルタ30は、波長4.3μmの赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタとして構成されている。
【0040】
本実施例の炭酸ガス濃度測定装置においては、光源18と前記ビームスプリッタ12との間に、中心波長4.3μmに設定した第1のバンドパスフィルタ25を配置する。また、前記ビームスプリッタ12とこのビームスプリッタ12により反射された赤外線を検出する第1の光検出器14との間に、中心波長4.3μmに設定した第2のバンドパスフィルタ26を配置する。
【0041】
さらに、本実施例の炭酸ガス濃度測定装置において、前記第1のバンドパスフィルタ25については、中心波長を4.3μmに設定すると共に、その半値幅を例えば250nmに設定する。これに対し、前記第2のバンドパスフィルタ26については、中心波長を同じ4.3μmに設定すると共に、その半値幅を例えば80nmに設定する。光学フィルタ30については、中心波長を4.3μmに設定すると共に、その半値幅を例えば110nmに設定する。
【0042】
このように構成することにより、本実施例の炭酸ガス濃度測定装置においては、エアウエイアダプタ10に呼吸ガスを導入して、炭酸ガスの濃度を測定する場合、前記第1のバンドパスフィルタ25を透過する赤外線のスペクトルは、図2に示される通りである。すなわち、呼吸ガス中に炭酸ガスが無い場合は、図2の(a)に示されるスペクトルとなり、また炭酸ガスが有る場合は、図2の(b)に示されるスペクトルとなり、炭酸ガスの有無により光量が変化する。
【0043】
次いで、前記第1のバンドパスフィルタ25およびビームスプリッタ12を透過し、前記光学フィルタ30を透過して前記第2の光検出器16に入射される赤外線のスペクトルは、図4に示される通りである。すなわち、呼吸ガス中における炭酸ガスの有無に関係なく、図示のように設定された中心波長4.3μmにおいて著しく減衰したスペクトルとなる。
【0044】
そこで、前記第1のバンドパスフィルタ25を透過し、ビームスプリッタ12により反射され、前記第2のバンドパスフィルタ26を透過して前記第1の光検出器14に入射される赤外線のスペクトルは、図3に示される通りである。すなわち、この場合、呼吸ガス中に炭酸ガスが無い場合は、図3の(a)に示されるスペクトルとなり、また炭酸ガスが有る場合は、図3の(b)に示されるスペクトルとなり、炭酸ガスの有無により光量が変化する。そこで、光検出器14、16に入射する赤外線の光量比を計算することにより、炭酸ガス濃度を算定することができる。
【0045】
このように、本実施例においては、前記第2のバンドパスフィルタ26の半値幅を、呼吸ガス中の炭酸ガスの有無により、その変化が顕著となるように、前記第1のバンドパスフィルタ25に設定した半値幅より小さく、例えば半分以下に設定したことにより、前記第1の光検出器14により検出される赤外線の光量の変化量を大きくすることができ、炭酸ガスの濃度測定の感度および信頼性を高めることができる。また、本実施例において、光学フィルタ30とバンドパスフィルタ26を入れ替えた配置でも、炭酸ガス濃度の測定が可能である。
【0046】
なお、本実施例において、前記光学フィルタ30側に設けた第2の光検出器16については、呼吸ガスが導入されるエアウエイアダプタ10に炭酸ガスが存在する場合に、光量変化が少ない方が望ましいことから、前記第1のバンドパスフィルタ25の半値幅は広い方が好ましい。しかし、前記光学フィルタ30のない側に設けた第1の光検出器14については、逆に光量の変化が多い方が有利であるため、前記第2のバンドパスフィルタ26の半値幅は狭い方が好ましい。従って、バンドパスフィルタが1枚であると、これらの条件を同時に満たすことができないが、本発明のように、少なくとも2枚のバンドパスフィルタを使用することにより、これらの条件を満たすことが可能となる。
【実施例2】
【0047】
図5は、本発明に係るガス濃度測定装置の第2の実施例としての炭酸ガス濃度測定装置の別の構成例を示すものである。なお、図1に示す装置と同一の構成要素については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。すなわち、図5に示す炭酸ガス濃度測定装置の実施例においては、基本的に図1に示す炭酸ガス濃度測定装置と同一の構成要素からなるものであって、前記第1のバンドパスフィルタ25を、前記エアウエイアダプタ10を透過し、次いでビームスプリッタ12を透過した赤外線の前記光学フィルタ30の前後のいずれかにおける光路中に、配置することを特徴とするものである。
【0048】
このように構成された本実施例の炭酸ガス濃度測定装置においても、前述した実施例1と全く同様にして炭酸ガス濃度の測定を達成することができる(図2ないし図4参照)。また、実施例2において、光学フィルタ30およびバンドパスフィルタ25とバンドパスフィルタ26を入れ替えた配置でも、炭酸ガス濃度の測定が可能である。
【0049】
なお、前述した実施例1、2において、第1のバンドパスフィルタ25については、炭酸ガスが吸収される帯域が、光学フィルタ30においてカットされるので、第1のバンドパスフィルタ25の半値幅を光学フィルタ30によってカットされる帯域よりも広くする必要がある。また、波長4.45〜4.55μmにおいて、N2O(笑気)による赤外線の吸収があり、前記半値幅を広げ過ぎると、N2Oによる影響がでるため、その影響を受けない範囲に半値幅を設定する必要がある。そこで、第1のバンドパスフィルタ25の中心波長を短波長側にずらして、半値幅を広げると、水による吸収の影響がキャンセルできなくなる。すなわち、水による吸収の影響をキャンセルさせるためには、2枚のバンドパスフィルタの中心波長を一致させることが望ましい。従って、前記半値幅は、N2Oによる影響を受けず、2枚のバンドパスフィルタの中心波長を一致させる範囲の値が好ましい。さらに好ましくは、前記半値幅は、120nm〜300nm程度が望ましい。
【0050】
また、第2のバンドパスフィルタ26について、半値幅は、光学フィルタ30側に配置された第1のバンドパスフィルタ25に設定される半値幅に対し、その半分以下の値に設定することが望ましい。すなわち、前記半値幅を、炭酸ガス(CO2 )の吸収スペクトルと同程度か、それよりも小さくすると、赤外線の光量の変化量が大きくなり、CO2 に対する感度が高くなるためである。なお、前記半値幅は10〜110nmが更に好ましく、実施例では半値幅を80nmに設定している。しかし、この場合、CO2 の吸収スペクトルの半値幅は、CO2 の濃度およびエアウエイアダプタ10の光路長等により変化するため、前記半値幅は必ずしも110nm以下に限定する必要はない。
【実施例3】
【0051】
図6は、本発明に係るガス濃度測定装置の第3の実施例としての炭酸ガス濃度測定装置の他の構成例であって、(a)、(b)、(c)はそれぞれ変形例を示すものである。なお、図1に示す装置と同一の構成要素については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。すなわち、本実施例の炭酸ガス濃度測定装置においては、エアウエイアダプタを透過した赤外線の光路中に、前述した光学フィルタ30を設けたチョッパ35を配置して、このチョッパ35をモータ40により回転させるように構成したものである。
【0052】
図6の(a)に示す構成においては、エアウエイアダプタ10を透過した赤外線の光路に対し、第1のバンドパスフィルタ25を介して、チョッパ35を配置した構成からなる。この場合、チョッパ35の一部に、前述した光学フィルタ30を設ける。前記光学フィルタ30は、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタとして構成されている。また、前記第1のバンドパスフィルタ25は、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線を透過させ、その半値幅は前記光学フィルタ30の半値幅よりも広く設定する。
このような構成からなる炭酸ガス濃度測定装置は、チョッパ35をモータ40により回転させることによって、光路の中で第1のバンドパスフィルタとこれに間欠的に光学フィルタ30が重なり、赤外線検出器14(16)が前述した実施例のように異なる波長の赤外線を交互に検出し、この2つの検出信号の比を演算することにより、炭酸ガス濃度を算出することができる。
【0053】
図6の(b)に示す構成においては、チョッパ35に対し、前述した光学フィルタ30と、第2のバンドパスフィルタ26とを、180度隔てて設けた構成からなる。この場合、第2のバンドパスフィルタ26は、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線を透過させ、その半値幅は前記第1のバンドパスフィルタ25の半値幅よりも狭く設定する。その他の構成は、図6の(a)と同じである。
このような構成からなる炭酸ガス濃度測定装置は、チョッパ35をモータ40により回転させることによって、光路の中で第1のバンドパスフィルタとこれに光学フィルタ30および第2のバンドパスフィルタ26が交互に重なり、赤外線検出器14(16)が前述した実施例のように異なる波長の赤外線を交互に検出し、この2つの検出信号の比を演算することにより、炭酸ガス濃度を算出することができる。
【0054】
図6の(c)に示す構成においては、チョッパ35に対し、前述した光学フィルタ30/第1のバンドパスフィルタ25と、第2のバンドパスフィルタ26とを、180度隔てて設けた構成からなる。
このような構成からなる炭酸ガス濃度測定装置においても、チョッパ35をモータ40により回転させることによって、第1のバンドパスフィルタおよび光学フィルタ30と、第2のバンドパスフィルタ26とが、光路の中に交互に入り、赤外線検出器14(16)が前述した実施例のように異なる波長の赤外線を交互に検出し、この2つの検出信号の比を演算することにより、炭酸ガス濃度を算出することができる。
【0055】
なお、前述した構成からなる本実施例の炭酸ガス濃度測定装置においては、図6の(a)、(b)に示す構成において、チョッパ35および第1のバンドパスフィルタ25は、光源18と赤外線検出器14(16)の間に配置されればよく、これらの配置を逆転させることも可能である。また、図6の(c)に示す構成において、チョッパ35は光源18と赤外線検出器14(16)の間に配置すればよく、チョッパ35とエアウエイアダプタ10の配置を逆転することも可能である。
【0056】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は前記実施例の呼吸ガス中の炭酸ガス濃度の測定に限定されることなく、その他の対象ガス中に含有される所要ガス成分の濃度測定についても広く応用することが可能である。例えば、N2Oは波長3.9μmの赤外線を強く吸収するため、中心波長を3.9μmに設定した光学フィルタ(ノッチフィルタ)、バンドパスフィルタを設けることにより測定可能である。また、ハロセン、エンフルラン、イソフルラン、セボフルラン等の揮発性麻酔薬は、波長7〜15μmに吸収帯域があるため、適切な中心波長、半値幅に設定した光学フィルタ(ノッチフィルタ)、バンドパスフィルタを設けることにより測定可能となる。その他、本発明の精神を逸脱しない範囲内において種々の設計変更を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るガス濃度測定装置の第1の実施形態としての炭酸ガス濃度測定装置の一構成例を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す炭酸ガス濃度測定装置において、第1のバンドパスフィルタを透過する赤外線と炭酸ガスとの関係を示すもので、(a)は炭酸ガス(CO2 )無しの場合のスペクトル図、(b)は炭酸ガス(CO2 )有りの場合のスペクトル図である。
【図3】図1に示す炭酸ガス濃度測定装置において、ビームスプリッタを反射して第2のバンドパスフィルタを透過する赤外線と炭酸ガスとの関係を示すもので、(a)は炭酸ガス(CO2 )無しの場合のスペクトル図、(b)は炭酸ガス(CO2 )有りの場合のスペクトル図である。
【図4】図1に示す炭酸ガス濃度測定装置において、第2の光検出器16に入射する赤外線と炭酸ガスとの関係を示すもので、炭酸ガス(CO2 )の有り/無しの場合のスペクトル図である。
【図5】本発明に係るガス濃度測定装置の第2の実施形態としての炭酸ガス濃度測定装置の別の構成例を示す概略構成図である。
【図6】本発明に係るガス濃度測定装置の第3の実施形態としての炭酸ガス濃度測定装置の他の構成例であって、(a)、(b)、(c)はそれぞれ変形例を示す概略構成図である。
【図7】従来の炭酸ガス濃度測定装置の概略構成を示す説明図である。
【図8】炭酸ガス(CO2 )および水(H2O)の赤外線の透過スペクトルを示すスペクトル図である。
【図9】従来の改良提案された炭酸ガス濃度測定装置の概略構成を示す説明図である。
【図10】図9に示す炭酸ガス濃度測定装置において、ビームスプリッタを反射して第1の光検出器に入射する赤外線と炭酸ガスの関係を示すもので、(a)は炭酸ガス(CO2 )無しの場合のスペクトル図、(b)は炭酸ガス(CO2 )有りの場合のスペクトル図である。
【図11】図9に示す炭酸ガス濃度測定装置において、ビームスプリッタを透過してガスセルを透過する赤外線光量と炭酸ガスの関係を示すもので、炭酸ガス(CO2 )の有り/無しの場合のスペクトル図である。
【符号の説明】
【0058】
10 エアウエイアダプタ
11a、11b サファイヤ
11c、11d 防曇膜
11e、11f 防曇膜
12 ビームスプリッタ
13 バンドパスフィルタ(波長 3.7μm)
14 第1の光検出器
15 バンドパスフィルタ(波長 4.3μm)
16 第2の光検出器
18 光源
20 ガスセル
25 第1のバンドパスフィルタ(中心波長 4.3μm/半値幅 250nm)
26 第2のバンドパスフィルタ(中心波長 4.3μm/半値幅80nm)
30 光学フィルタ(波長 4.3μmカットのノッチフィルタ)
35 チョッパ
40 モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガス中の所要ガスの濃度を測定するガス濃度測定装置において、赤外線を発光させる光源と、被測定ガスを導入するエアウエイアダプタと、前記エアウエイアダプタを透過した赤外線を反射および透過させるビームスプリッタと、前記ビームスプリッタにより反射された赤外線を検出する第1の光検出器と、前記ビームスプリッタを透過した赤外線を検出する第2の光検出器とを備え、
前記ビームスプリッタと前記第1または第2の光検出器との間に、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタを設けることを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項2】
前記光源と前記ビームスプリッタとの間に、中心波長を4.3μmに設定した第1のバンドパスフィルタを配置することを特徴とする請求項1記載のガス濃度測定装置。
【請求項3】
前記ビームスプリッタと前記第1の光検出器との間に設置された第2のバンドパスフィルタと、
前記ビームスプリッタと前記第2の光検出器との間に設置された前記ノッチフィルタと、
前記第2の光検出器と前記ノッチフィルタとの間または前記ノッチフィルタと前記ビームスプリッタとの間に第1のバンドパスフィルタを配置したことを特徴とする請求項1記載のガス濃度測定装置。
【請求項4】
前記ビームスプリッタと前記第2の光検出器との間に設置された第2のバンドパスフィルタと、
前記ビームスプリッタと前記第1の光検出器との間に設置された前記ノッチフィルタと、
前記第1の光検出器と前記ノッチフィルタとの間または前記ノッチフィルタと前記ビームスプリッタとの間に第1のバンドパスフィルタを配置したことを特徴とする請求項1記載のガス濃度測定装置。
【請求項5】
前記第1のバンドパスフィルタの半値幅は120〜300nmの範囲に設定し、中心波長を4.3μmに設定しその半値幅を前記第1のバンドパスフィルタの半値幅より小さく設定した第2のバンドパスフィルタを有することを特徴とする請求項3または4記載のガス濃度測定装置。
【請求項6】
前記第2のバンドパスフィルタの半値幅を10〜110nmの範囲に設定することを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のガス濃度測定装置。
【請求項7】
被測定ガス中の所要ガスの濃度を測定するガス濃度測定装置において、赤外線を発光させる光源と、被測定ガスを導入するエアウエイアダプタと、少なくともノッチフィルタを有するチョッパと、赤外線を検出する第1の光検出器とを備え、前記ノッチフィルタは、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタであることを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項8】
前記光源と前記第1の光検出器との間に、第1のバンドパスフィルタを設けることを特徴とする請求項7記載のガス濃度測定装置。
【請求項9】
前記ノッチフィルタを有するチョッパは、第2のバンドパスフィルタを設けることを特徴とする請求項7記載のガス濃度測定装置。
【請求項10】
前記ノッチフィルタを有するチョッパは、第1のバンドパスフィルタと第2のバンドパスフィルタを設け、前記第1のバンドパスフィルタは、前記ノッチフィルタと同一光路に配置されていることを特徴とする請求項7または8記載のガス濃度測定装置。
【請求項11】
エアウエイアダプタの窓は防曇処理を施したことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のガス濃度測定装置。
【請求項1】
被測定ガス中の所要ガスの濃度を測定するガス濃度測定装置において、赤外線を発光させる光源と、被測定ガスを導入するエアウエイアダプタと、前記エアウエイアダプタを透過した赤外線を反射および透過させるビームスプリッタと、前記ビームスプリッタにより反射された赤外線を検出する第1の光検出器と、前記ビームスプリッタを透過した赤外線を検出する第2の光検出器とを備え、
前記ビームスプリッタと前記第1または第2の光検出器との間に、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタを設けることを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項2】
前記光源と前記ビームスプリッタとの間に、中心波長を4.3μmに設定した第1のバンドパスフィルタを配置することを特徴とする請求項1記載のガス濃度測定装置。
【請求項3】
前記ビームスプリッタと前記第1の光検出器との間に設置された第2のバンドパスフィルタと、
前記ビームスプリッタと前記第2の光検出器との間に設置された前記ノッチフィルタと、
前記第2の光検出器と前記ノッチフィルタとの間または前記ノッチフィルタと前記ビームスプリッタとの間に第1のバンドパスフィルタを配置したことを特徴とする請求項1記載のガス濃度測定装置。
【請求項4】
前記ビームスプリッタと前記第2の光検出器との間に設置された第2のバンドパスフィルタと、
前記ビームスプリッタと前記第1の光検出器との間に設置された前記ノッチフィルタと、
前記第1の光検出器と前記ノッチフィルタとの間または前記ノッチフィルタと前記ビームスプリッタとの間に第1のバンドパスフィルタを配置したことを特徴とする請求項1記載のガス濃度測定装置。
【請求項5】
前記第1のバンドパスフィルタの半値幅は120〜300nmの範囲に設定し、中心波長を4.3μmに設定しその半値幅を前記第1のバンドパスフィルタの半値幅より小さく設定した第2のバンドパスフィルタを有することを特徴とする請求項3または4記載のガス濃度測定装置。
【請求項6】
前記第2のバンドパスフィルタの半値幅を10〜110nmの範囲に設定することを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のガス濃度測定装置。
【請求項7】
被測定ガス中の所要ガスの濃度を測定するガス濃度測定装置において、赤外線を発光させる光源と、被測定ガスを導入するエアウエイアダプタと、少なくともノッチフィルタを有するチョッパと、赤外線を検出する第1の光検出器とを備え、前記ノッチフィルタは、被測定ガスに対し吸収特性を有する赤外線の所要波長において、赤外線の透過をカットする干渉フィルタ型のノッチフィルタであることを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項8】
前記光源と前記第1の光検出器との間に、第1のバンドパスフィルタを設けることを特徴とする請求項7記載のガス濃度測定装置。
【請求項9】
前記ノッチフィルタを有するチョッパは、第2のバンドパスフィルタを設けることを特徴とする請求項7記載のガス濃度測定装置。
【請求項10】
前記ノッチフィルタを有するチョッパは、第1のバンドパスフィルタと第2のバンドパスフィルタを設け、前記第1のバンドパスフィルタは、前記ノッチフィルタと同一光路に配置されていることを特徴とする請求項7または8記載のガス濃度測定装置。
【請求項11】
エアウエイアダプタの窓は防曇処理を施したことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のガス濃度測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−285842(P2007−285842A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113028(P2006−113028)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
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