説明

ガス状ハロゲン化物の除去・回収方法及びガス状ハロゲン化物の除去・回収剤

【課題】ガス状の有機ハロゲン化物を室温付近で簡便に効率よく除去できる手法を提供する。
【解決手段】被処理気体中に含まれる、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、(2)分子内に少なくとも水素−炭素部分を有しかつその水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合している炭化水素のフッ化物、(3)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する不飽和炭化水素、及び(4)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する炭素が2つ以上の飽和炭化水素から選ばれるいずれかのガス状の有機ハロゲン化物を、アミン誘導体、もしくは下記の一般式Iで表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物と反応させることにより除去、回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化物の除去・回収方法及びそれを用いるガス状ハロゲン化物の除去・回収剤に関し、特に、(1)オクタフルオロシクロペンテン、ヘキサフルオロブタジエンなどの分子内に炭素の不飽和結合を有するフッ化炭化水素化合物類、(2)一部HFC(ハイドロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)などで知られている、分子内に少なくとも水素−炭素部分を有するフッ化炭化水素化合物、(3)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する不飽和炭化水素、及び(4)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する炭素が2つ以上の飽和炭化水素から選ばれるいずれかのガス状のハロゲン化の除去・回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素化合物は、地球温暖化物質として京都議定書における協議以来、その削減が求められており、地球環境の保全、多くの生物種や人類の存続のため、その微量検出や除去、分解、使用量の削減、回収技術が求められている。
特に、ドライエッチングガスとして用いられてきた四フッ化炭素、オクタフルオロシクロブタンなどの飽和フルオロカーボン類は地球温暖化への悪影響から使用が制限されており、これらの代替物として、オクタフルオロシクロペンテン(C58)、ヘキサフルオロブタジエン(C46)、ヘキサフクオロシクロブテン(C46)などの分子内に炭素の不飽和結合を有するフッ化炭化水素化合物が開発されてきている。これらの炭素の不飽和結合を有するフッ化炭化水素化合物(以下、「不飽和炭化水素のフッ化物」という)は、選択比が高く微細加工のための高性能なマテリアルとして知られ、各半導体プロセスにおいて現在広く使用されている。これらは、地球温暖化係数は改善されているものの、それが1未満の小さなものでもなく、また元来その蒸気圧の高さや毒性の課題から管理基準濃度の規制が布かれている。
【0003】
不飽和炭化水素のフッ化物の除去手法としては、現在までに、シリカ、活性炭素、金属酸化物などの無機化合物による吸着除去、過マンガン酸塩を用いた除去、及び触媒やケミカルなどを用いた熱分解除去等の手法が開発されている。
例えば、特許文献1には、無機化合物を用い、C58やC46と過マンガン酸塩との反応により、過マンガン酸塩の消色を利用した方法が記載されている。しかしながら、反応が鈍く、除去の効率がよくない。
また、特許文献2,3等に記載されたモレキュラーシーブや活性炭を用いた手法は、比較的簡便に除去及び回収ができ実用的であるが、除去効率の向上が課題である。
【0004】
さらに、特許文献4,5に記載された手法は、C58やC46の高熱を用いた方法であって、気体中に存在するC58やC46を熱分解炉において触媒やケミカルを使って分解し、その際発生する分解ガスを水などで除去する方法である。しかしながら、熱分解を行うため大きなエネルギーを消費する、高温における熱分解を行うため非常に危険な酸性ガスHFを発生させてしまうなどの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−324492号公報
【特許文献2】特開2001−302551号公報
【特許文献3】特開2000−015056号公報
【特許文献4】特開2000−342931号公報
【特許文献5】特開2004−000857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、これまでの不飽和炭化水素のフッ化物の除去方法は、種々の手法が開発されてきているが、いくつかの課題がある。
本発明は、上記の従来の技術における実状に鑑みてなされたものであって、C58やC46等のガス状の不飽和炭化水素のフッ化物やガス状の塩化物、臭化物、ヨウ化物の、より低温で行える効率のよい除去方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、C58やC46等の不飽和炭化水素のフッ化物の反応を利用することにより、上記の目的を達成しうるという知見を得た。すなわち、C58やC46等のガス状の不飽和炭化水素のフッ化物と特定の窒素化合物群との反応を用いた除去方法を見出した。また、一部HFC(ハイドロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)で知られている、少なくとも水素を有する含フッ素化合物も本発明により除去できることを見出した。さらに、本発明の方法を用いることにより、対象となるガスの除去後、固体状のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物としてマテリアルを回収できることを見出した。
【0008】
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]被処理気体中に含まれる、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、(2)分子内に少なくとも水素−炭素部分を有しかつその水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合している炭化水素のフッ化物、(3)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する不飽和炭化水素、及び(4)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する炭素が2つ以上の飽和炭化水素から選ばれるいずれかのガス状のハロゲン化物を、アミン誘導体と反応させることにより除去することを特徴とするガス状ハロゲン化物の除去方法。
[2]前記アミン誘導体が、1級、2級又は3級のアミン化合物、ピロール又はピリジン骨格を有する化合物、及びフォスファゼン誘導体から選ばれる1種もしくは2種以上のアミン誘導体であることを特徴とする上記[1]のガス状ハロゲン化物の除去方法。
[3]被処理気体中に含まれる、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、(2)分子内に少なくとも水素−炭素部分を有しかつその水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合している炭化水素のフッ化物、(3)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する不飽和炭化水素、及び(4)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する炭素が2つ以上の飽和炭化水素から選ばれるいずれかのガス状のハロゲン化物を、下記の一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物と反応させることにより除去することを特徴とするガス状ハロゲン化物の除去方法。
【化1】

[式中、R1、R2、R3、及びRのそれぞれは、他のヘテロ原子で置換されてもよいメチレン基(CH)を表し、或いは、置換基を有していてもよい窒素原子(NH)、酸素原子(O)又は硫黄原子(S)のヘテロ原子を表す。R1とR2との間、及びR3とR4の間には、炭化水素基やそれらを有するポリマーやオリゴマーから形成される置換基が存在するか、或いは、挿入され、さらに、それらの置換基がさらなる環状部分を形成し、化合物として3環以上の場合を含む。]
[4]前記の一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物が、1,5-diazabicyclo[4,3,0]non-5-ene(DBN)及び/又はその置換誘導体であることを特徴とする上記[3]のガス状ハロゲン化物の除去方法。
[5]前記の一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物が、1,8-diazabicyclo[5,4,0]undec-7-ene(DBU)及び/又はその置換誘導体であることを特徴とする上記[3]のガス状ハロゲン化物の除去方法。
[6]前記の一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物が、1,3,4,6,7,8-hexahydro-2H-primido[1,2-a]pyrimidine(HPP)(別名1,5,7-triazabicyclo[4,4,0]dec-5-en)及び/又はその置換誘導体であることを特徴とする上記[3]に記載のガス状ハロゲン化物の除去方法。
[7]前記の一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物が、tetramisole(別名Levamisole)であることを特徴とする上記[3]のガス状ハロゲン化物の除去方法。
[8]前記の一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する少なくとも2環性の窒素化合物以外の物質が共存する態様を用いて除去することを特徴とする上記[3]〜[7]のいずれかのガス状ハロゲン化物の除去方法。
[9]被処理気体中に含まれる、前記(1)の、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物が、少なくともC58又はC46或いはこれらの混合物である上記[1]〜[8]のいずれかのガス状ハロゲン化物の除去方法。
[10]前記C58が、少なくともオクタフルオロシクロペンテンである上記[9]ののガス状ハロゲン化物の除去方法。
[11]前記C46が、ヘキサフルオロブタジエン又はヘキサフクオロシクロブテン或いはこれらの混合物である上記[9]のガス状ハロゲン化物の除去方法。
[12]被処理気体中に含まれる、前記(2)の、前記被処理気体中に含まれる、分子内に少なくとも水素−炭素部分を有し、かつ、その水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合しているガス状の炭化水素のフッ化物が、CF3CHF2、CHF2CHF2、CF3CHFCF3、CF3CF2CHF2、CHF2CF2CHF2、CF3OCHFCF3、C582から選ばれる1種もしくは2種以上の混合ガスであることを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれかのガス状ハロゲン化物の除去方法。
[13]前記C582が、少なくとも1H,2H-オクタフルオロシクロペンタン、1H,1H-オクタフルオロシクロペンタン又は1H,3H-オクタフルオロシクロペンタン或いはこれらの混合物である上記[12]のガス状ハロゲン化物の除去方法。
[14]前記のアミン誘導体及び/又はアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物の液体が、多孔質材に含浸又は化学結合していることを特徴とする上記[1]〜[13]のいずれかのフッ化物の除去方法。
[15]前記多孔質材が、セルロース、綿、又はポリマー、又は炭、又はシリカゲル、又は多孔質アルミナ又はモレキュラーシーブ又はゼオライト、又はガラスである上記[14]のガス状ハロゲン化物の除去方法。
[16]あらかじめ被処理気体に前処理を施すことを特徴とする上記[1]〜[15]のいずれかのガス状ハロゲン化物の除去方法。
[17]前記前処理が、除湿、二酸化炭素の除去、揮発性の無機及び/又は有機酸の除去、並びに除塵から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする上記[16]のガス状ハロゲン化物の除去方法。
[18]上記[1]〜[17]のいずれかのフッ化物の除去方法において、前記のガス状のハロゲン化物と、前記のアミン誘導体及び/又はアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物との反応により得られる反応生成物から、固体状のハロゲン化物を回収することを特徴とするハロゲン化物の回収方法。
[19]被処理気体中の、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、(2)分子内に少なくとも水素−炭素部分を有しかつその水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合している炭化水素のフッ化物、(3)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する不飽和炭化水素、及び(4)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する炭素が2つ以上の飽和炭化水素から選ばれるいずれかのガス状のハロゲン化物を除去するためのハロゲン化物除去剤であって、請求項1又は2に記載のアミン誘導体及び/又は請求項3〜8のいずれか1項に記載のアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物を有効成分とすることを特徴とするハロゲン化物除去剤。
[20]被処理気体中の、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、(2)分子内に少なくとも水素−炭素部分を有しかつその水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合している炭化水素のフッ化物、(3)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する不飽和炭化水素、及び(4)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する炭素が2つ以上の飽和炭化水素から選ばれるいずれかのガス状のハロゲン化物を回収するためのハロゲン化物回収剤であって、請求項1又は2に記載のアミン誘導体及び/又は請求項3〜8のいずれか1項に記載のアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物を有効成分とすることを特徴とするハロゲン化物回収剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温条件を必要とせず、室温付近で簡便に効率よく、C58やC46等の分子内に炭素の不飽和結合を有するガス状のフッ化炭化水素化合物類、HCF(ハイドロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)等の分子内に少なくとも水素−炭素部分を有するフッ化炭化水素化合物、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する不飽和炭化水素、或いは、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する炭素が2つ以上の飽和炭化水素、等のガス状のハロゲン化物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の方法を実施するのに用いられる装置の一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、C58やC46等の不飽和炭化水素のフッ化物を、アミン誘導体や下記一般化学式(I)で表される化合物に接触させることで、選択的な反応を起こさせ、前記フッ化物の除去を行うことを特徴とするものである。本発明の除去とは、アミン誘導体や下記一般化学式(I)で表される化合物と対象となるガス状のフッ化物が、有機化学的な反応を起こし、ガス状ではない別の形態のフッ化物になることにより、効率的に除去されることを意味する。すなわち、除去対象はガス状の化合物で、下記記述のガス状のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物を含む炭化水素化合物である。物理的な吸着による除去とは違い、化学的にC58やC46等の不飽和炭化水素のフッ化物の化学結合変換が行われ、効率的な除去が行われる。さらに、化学結合変換を伴う除去がなされた後、化学結合変換後の固体状のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物を含む生成物をそのまま集めること、もしくは硝酸銀などの沈殿剤を用いて、固体状のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物を沈殿させ集めることを、回収と呼ぶ。固体状のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物をまとめて固体状のハロゲン化物と呼ぶ。すなわち、除去対象はガス状であり、回収されるものは、固体状のハロゲン化物である。
【0012】
本発明におけるアミン誘導体とは、3価の窒素を有する有機化合物を意味し、1級のアミンRNH2,2級のアミンRR’NH,3級のアミンRR’R”Nを含む。置換基であるR、R’、R”は、有機化学で言うすべての置換基であり、例えば、アルキル基、芳香族置換基や、有機ポリマー、オリゴマーを含む。2および3級のアミンにおいて、Rどうしの間で環状になる場合も含み、例えば、ピペリジン、ピペリジン、ピペラジン、芳香族化したピロールなどが挙げられる。3価の窒素を有するイミン構造−N=を有する化合物も含み、イミン化合物、ピリジンおよびその誘導体、プリン誘導体、イミダゾリン誘導体、トリアジン誘導体などすべての含窒素芳香族化合物、リンも含むフォスファゼン誘導体も含む。フォスファゼン誘導体とは、R−N=PR3からなる基本骨格を有する5価の有機リン窒素化合物である。Rはすべて同じである必要はなく、化合物によっては違う置換基が結合する場合がある。上記のアミン誘導体には、それらが有機ポリマーやオリゴマーに物理的に混同されている、化学的に結合している態様も含まれる。
【0013】
本発明における下記の一般式(I)で表される化合物は、アミジン骨格R3C(=N−R2)NR14を中心とし、R1−R2、及びR3−R4が、基本的にメチレン鎖を形成して、少なくとも2つの環を有する環状化合物を成す窒素化合物であって、このアミジン骨格を中心とする2環性の形が、対象である不飽和炭化水素のフッ化物の除去を行える。
【0014】
【化1】

【0015】
すなわち、上記の一般式(I)において、R1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、アミジン骨格における窒素や炭素と化学結合をする始点を表わしており、基本的にメチレン基(CH)であって、他のヘテロ原子で置換されてもよい。また、上記の一般式(I)において、R1〜R4のそれぞれは、置換基を有していてもよい窒素原子(NH)、酸素原子(O)又は硫黄原子(S)等のヘテロ原子であってもよい。
1とR2との間、及びR3とR4の間には、一般的な炭化水素基やそれらを有するポリマーから形成される置換基が存在するもしくは挿入される場合もあり、また、それらの置換基がさらなる環状部分を形成し、化合物として3環以上の場合も含まれる。
ここで、一般的な炭化水素基とは、有機化学における一般的な官能基;ヘテロ原子、典型元素、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびそれらのイオンから選ばれるコンポーネントも含み、複素環の場合も含む概念である。したがって、前記炭化水素の一例として、アルキル、アルケン、アルキン、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルデヒド、ケトン、エーテル、クラウンエーエル、ポリエチレングリコール、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アセタール、エポキシ、アミノ、アミド、イミノ、ニトロ、シアノ、イソシアノ、チオイソシアノ、アゾ、アゾキシ、ポルフィリン、チオール、スルフィド、ジスルフィド、スルフィン酸エステル、スルホン酸エステル、それら酸の塩、ピリジン、ピロール、ピロリジン、ピペリジン、モルフォリン、ピペラジン、キノリン、チオフェン、フラン、遷移金属錯体などの置換基が結合もしくは途中に入り込む形で結合し、またそれらを介して有機ポリマーが結合した化合物群等が挙げられる。
【0016】
以下に一般式(I)で表される、少なくとも2つの環を有する窒素化合物の例を幾つか例示するが、これらに限定されるものではない。なお、これらの化合物は、有機合成などで用いられる塩基性試薬として既に公知のもの、或いは、それらから誘導される化合物である。
(1)1,5-diazabicyclo[4,3,0]non-5-ene(DBN)
該化合物は、R1−R2及びR3−R4が、それぞれ3つのメチレン鎖を形成して、2環性の窒素化合物を成す。
(2)1,8-diazabicyclo[5,4,0]undec-7-ene(DBU)
該化合物は、R1−R2が3つのメチレン鎖を形成し、R3−R4が5つのメチレン鎖を形成して、2環性の窒素化合物を成す。
(3)4,4-dimethyl-DBN
該化合物は、前記DBNを基本骨格とした置換誘導体であり、置換基として4位に2つのメチル基が存在する、2環性の窒素化合物である。
(4)4,7-dimethyl-DBN
該化合物は、前記DBNを基本骨格とした置換誘導体であり、置換基として4位と7位に1つずつメチル基が存在する、2環性の窒素化合物である。
(5)4-phenyl-DBN
該化合物は、前記DBNを基本骨格とした置換誘導体であり、置換基として4位に1つのフェニル基が存在する、2環性の窒素化合物である。
(6)3,4,6,7,8,9-hexahydro-2H-pyrido[1,2-a]pyrimidine
該化合物は、R1−R2が3つのメチレン鎖を形成し、R3−R4が4つのメチレン鎖を形成して、2環性の窒素化合物を成す。
(7)1,3,4,6,7,8-hexahydro-2H-primido[1,2-a]pyrimidine(HPP)
該化合物は、Rが窒素アミンN−Hの形であり、R4まで3つのメチレン鎖が存在し、R−Rが3つのメチレン鎖を形成して、2環性の窒素化合物を成す。
(8)1,3,4,6,7,8-hexahydro-1-methyl-2H-primido[1,2-a]pyrimidine(MeHPP)
該化合物は、R3が窒素アミンN−Me(メチル基)の形であり、R4まで3つのメチレン鎖が存在し、R1−R2が3つのメチレン鎖を形成して、2環性の窒素化合物を成す。
(9)tetramisole(別名Levamisole)
該化合物は、R3が硫黄であり、R4まで2つのメチレン鎖が存在し、R1−R2が2つのメチレン鎖を形成し、R2に1つのフェニル基が置換した、2環性の窒素化合物を成す。
また、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物であるDBN、DBU、3,4,6,7,8,9-hexahydro-2H-pyrido[1,2-a]pyrimidine、HPP、tetramisoleの置換誘導体には、(3)、(4)、(5)、(8)などの環状部分に置換基を有する形態と、一般式(I)のR1−R2上、R3−R4上にメチレン鎖やその他のヘテロ原子が挿入された形態も、(1)〜(9)の化合物群の中でお互い重ならない範囲で、含まれる。
【0017】
前述のとおり、一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物は、R1−R2又はR3−R4にポリマーやオリゴマーが置換されたアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物でもよく、その一例として、ポリステレン誘導体がR1に共有結合している高分子JANDAJEL(登録商標)-1,3,4,6,7,8-hexahydro-2H-primido[1,2-a]pyrimidineがある。また文字通り、DBUがポリスチレン類縁体に化学結合した1,8-Diazabicyclo[5,4,0]undec-7-ene polymer-boundがある。オリゴマーやポリマーから形成される置換基が結合するもしくは挿入される形態があり、また、前述の置換基や挿入されたポリマーもしくはオリゴマーをとおして、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物がダイマー、トリマー、テトラマーなど2個以上結合した形態もある。
【0018】
また、前述のとおり、一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした2つの環を有する窒素化合物には、R1−R2又はR3−R4に、さらなる環状の置換基を有することで、3環性以上の窒素化合物を構成するものも包含されるが、その一例として、7-imino-3,4,6,7-tetrahydro-2H-pyrimido[2,1-a]isoquinolineがある。この化合物は、R1−R2が3つのメチレン鎖を形成し、R3−R4に4つの炭素が存在した状態で途中イミン置換基とR4にベンゼン環が挿入された、3環性の窒素化合物を成す。
【0019】
本発明における除去対象である、前記(1)の、不飽和炭化水素のフッ化物は、少なくとも炭素とフッ素から成り、分子内に炭素−炭素二重及び/又は炭素−炭素三重結合化合物を少なくとも有し、気化したガス状の化合物、すなわち、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物である。炭素−炭素二重及び/又は炭素−炭素三重結合の構造からわかるように、これらの化学種は少なくとも炭素原子2個で成り立つので、本発明における検出対象である不飽和炭化水素のフッ化物は、必然的に炭素を2個以上含む化合物である。これらの中には、塩素、臭素、ヨウ素、酸素、硫黄、窒素など他の原子や、カルボキシル基、アルコキシ基、フォルミル基など、前述の一般的な炭化水素基、官能基が置換されているすべての化合物も含んでおり、京都議定書において、評価した一連のガス状化合物であるフッ化炭化水素が一部属する。
例えば一例として、C24、C36、C46、c−C48、c−C58、CF3OCF=CF2、C25OCF=CF2(c−はcyclic:環状を表し、c-C58は、前述のC58と同じである、C46には前述の2種類がある;それぞれオクタフルオロシクロペンテン(C58)、ヘキサフルオロブタジエン(C46)、ヘキサフルオロシクロブテン(C46)と呼ばれる)等がある。またこれらの一部は、工業界において、冷媒、発泡剤、洗浄剤、エッチングガスとして使われることがある。これら一連の化合物は一部、環境問題にも取り上げられる不飽和結合を有するPFC(パーフルオロカーボン)と呼ばれる。これら一連の化合物の中には、酸素が結合したエーテル基を有する直鎖状のフッ素化合物もあり、環境負荷や人体への影響が懸念される。本発明はこれら除去対象であるフッ化物の除去、回収に応用される。
【0020】
また、本発明における除去対象であるハロゲン化物には、前述の不飽和炭化水素のフッ化物と同様の反応をする、前記(2)のフッ化物が含まれる。該フッ化物は、分子内に少なくとも水素−炭素部分を有し、かつ、その水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基(例えば、フッ素、塩素などのハロゲン、エーテル、スルフィド、カルボン酸、スルホン酸等の置換基)が結合しているガス状の化合物が含まれ、アニオン性脱離基以外の部分にも塩素、臭素、ヨウ素、酸素、硫黄、窒素など他の原子や、カルボキシル基、アルコキシ基、フォルミル基など、前述の一般的な官能基が置換されている化合物も含む。これらの中には、京都議定書において、評価した一連のガス状化合物であるフッ化炭化水素が一部属する。尚、液体状のものも検出対象として含まれる。水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素が存在するので、その構造からわかるように、これらの化学種は少なくとも炭素原子2個で成り立つので、本発明における検出対象である分子内に少なくとも水素−炭素部分を有し、かつ、その水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合している化合物は、必然的に炭素を2個以上含む化合物である。
この化合物の一例として、CF3CHF2、CHF2CHF2、CF3CHFCF3、CF3CF2CHF2、CHF2CF2CHF2、CF3OCHFCF3、c−C582などがある。本発明における検出対象である分子内に少なくとも水素−炭素部分を有し、かつ、その水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合している化合物や一例として挙げた前記化合物の一部は、家庭、業務用、車等のあらゆる空調機器や、冷蔵庫、冷凍庫の冷媒として、建築現場における断熱材形成のための発泡剤、電子機器洗浄剤として使われることがある。またこれらの一部は、半導体プロセスでエッチングガスや洗浄剤、冷却剤として使われることがある。これら一連の化合物の中は、環境問題にも取り上げられるHFC(ハイドロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)と呼ばれるものがある。
これら工業や環境分野で使用/問題となっているHFCやHCFCなどのガス状のフッ化物を、前記のアミン誘導体及び/又は一般式(I)で表されるアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物に接触させることで、簡便に、除去、回収を行うことができる。本発明を用いることで、これらのガス状のフッ化物を除去可能であり、これら検出対象を用いる現場での安全、環境保護、保全に応用される。
【0021】
本発明における検出対象である化合物は、前記(1)、(2)のガス状フッ化物以外に、前記(3)の、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有するガス状の不飽和炭化水素、及び前記(4)の、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する炭素が2つ以上のガス状の飽和炭化水素を含む。
すなわち前記(3)の、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有するガス状の不飽和炭化水素とは、炭素−炭素二重及び/又は炭素−炭素三重結合を有する不飽和炭化水素の内、塩素のみを置換基として分子内に有する化合物、臭素のみを置換基として分子内に有する化合物、ヨウ素のみを置換基として分子内に有する化合物、および、塩素と臭素とヨウ素から選ばれる2つ以上の置換基を分子内に有する化合物を意味する。
これらの化合物は、例えば、工業的に使われる有機溶剤、有機合成に使われる原料、洗浄剤などに用いられる。
また、前記(4)の、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する炭素が2つ以上のガス状の飽和炭化水素とは、ガス状の飽和炭化水素の内、少なくとも水素を有しかつ塩素のみを置換基として分子内に有する化合物、少なくとも水素を有しかつ臭素のみを置換基として分子内に有する化合物、なくとも水素を有しかつヨウ素のみを置換基として分子内に有する化合物、および、塩素と臭素とヨウ素から選ばれる2つ以上の置換基を分子内に有する化合物を意味する。
例えば、有機溶剤中毒予防規則に準ずる有機溶剤、クロロカーボン(モントリオール、製造・消費禁止)や、有機合成用の原料、工業プロセスで用いられる洗浄剤やエッチングガスが一部含まれる。
これらの化合物の一部は、有機溶媒や有機合成、溶かすための溶剤または、車等の空調機器や、冷蔵庫、冷凍庫の冷媒として使われることがある。これらの化合物の一部は、ハロン類縁体に似た化合物もあり、環境破壊や人体への影響が懸念されるため、除去、分解、回収や取扱いの際には、漏れや大気中への拡散において、その除去、回収が重要である。本発明は、これらのガス状の塩化物及び/又は臭化物及び/又はヨウ化物も、同様に除去可能であり、これら検出対象を用いる現場での安全、環境保護、保全に応用される。
【0022】
本発明において、アミン誘導体もしくは一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物(以下、「アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物」という。)は、それ以外の物質と共存させて、混合物として使用できる。
混合する有機物としては、一般的な有機溶媒(例えば、エタノールやエチレングリコールやグリセリンなどのアルコール類、ジメチルホルムアミド(DMF)やN−メチル−ピロリドン(NMP)やヘキサメチルフォスフォルアミド(HMPA)などのアミド類、テトラヒドロフラン(THF)やジオキサンなどのエーテル類)、ジイソプロピルアミン(LDA)やトリイソブチルアミンやジシクロヘキシルメチルアミンの別のアミン類、ペンタメチルピペリドンなどの有機液体、ウレア類などの有機固体、セルロースやポリエチレンやポリブタジエンやポリエチレンアクリレートやポリイミドポリ安息香酸などの有機ポリマー、などが挙げられる。また、炭素から成る炭類も混合物として使用できる。また、植物性の繊維状物質、例えば綿や、動物性の繊維状物質、例えば羊毛なども混合物として使用できる。
混合する無機物としては、シリカゲル、多孔質アルミナ、モレキュラーシーブ、ゼオライト、ガラス類が使用できる。
本発明において、アミン誘導体もしくはアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物の含有量は、0.1〜99.9質量%の範囲である。好ましくは、5〜90質量%の範囲である。反応性の制御の観点から、10〜75質量%の範囲が最も好ましい。
【0023】
除去のためには、アミン誘導体及び/又はアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物と、もしくは前記のように他の化合物と混合した、もしくはお互いを混合した態様で、除去対象とする前述のガス状のフッ化物が接触すればよく、該化合物の使用形態は、有機溶剤に溶解して液体として用いる、該液体を基材に塗布する、該液体を多孔質材に含浸させる、或いは、該化合物を含有するポリマーを基板に塗布する等、どんな態様でもあってもよい。
これらの種々の形態を用いた除去の形態としては、例えば、
(1)対象とするガスを、アミン誘導体及び/又はアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物を含んだ液体へバブリングする態様、
(2)対象とするガスを、アミン誘導体及び/又はアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物を含んだポリマーに通過させる態様、
(3)対象とするガスを、アミン誘導体及び/又はアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物を含んだセルロースに通過させる態様、
(4)対象とするガスを、アミン誘導体及び/又はアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物を含んだ積層したテープ間もしくはシート間に通過させる態様、
(5)対象とするガスを、アミン誘導体及び/又はアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物を含んだ網目状のテープもしくはシートに通過させる態様、
(6)対象とするガスを、アミン誘導体及び/又はアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物を含んだビーズ及び/又は粒子を内包した筒の内部に通過させる態様、
(7)対象とするガスを、アミン誘導体及び/又はアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物を含んだビーズもしくは粒子を固定したテープの積層した層の間に通過させる態様、
などがあり、あらゆる態様を含む。
除去対象とするガスを吹き付ける態様もしくは通過させる態様もしくはバブリングする態様の際に、対象とするガスを流す速度、すなわち流量が設定されるが、その流量の設定に特に制限されることはない。反応を促進させる観点からは、流量は10〜2000mL/分が好ましい。省エネルギーの観点からは、20〜800mL/分が好ましい。実用性の観点からは、20mL〜2000L/分が好ましい。
【0024】
本発明は、アミン誘導体及び/又はアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物を利用した、スムーズに進行する反応により取り除きたいガスを除去する。反応はスムーズであり、基本的に100℃以下、好ましくは50℃以下、最も好ましくは室温付近で行うことができる。反応温度は、実用化の視点では80℃以下が好ましい。主に25℃前後の室温付近でスムーズに反応が進行し、除去、回収には室温を使うことができるが、場合によっては、80℃以下の範囲で加熱もされる。反応性の低い塩化物では50℃付近が好ましく、反応性の低い臭化物では70℃付近が好ましい。
【0025】
本発明では、アミン誘導体及び/又はアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物を利用した室温付近でスムーズに進行する反応により、取り除きたいガスを除去するが、有機分子特有の反応群を利用するため、特徴的な選択性が発揮される。すなわち、洗浄剤、絶縁体等で多用されるフッ素系液体、例えば、フロリナート(登録商標)(フッ素系不活性液体 成分;パーフルオロカーボン)、ガルデン(登録商標)(フッ素系不活性液体 成分;パーフルオロカーボン)、ノベック(登録商標)(成分:HFE ハイドロフルオロエーテル)等の、ガス状の飽和炭化水素のフッ化物が過剰に存在している場合にはそれらとは反応を示さず、すなわち、選択的に対象とするガス状のフッ化物を除去できる。完全な飽和構造を有するパーフルオロカーボン中の不飽和炭化水素のフッ化物、及び/又は、分子内に少なくとも水素−炭素部分を有し、かつその水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合している炭化水素のフッ化物を除去し改質や純度をあげることができる。本発明の除去方法を用いて、物質合成の高純度化工程に応用することもできる。
【0026】
本発明を用いることで、除去対象であるガス状のフッ化物及び/又は塩化物及び/又は臭化物及び/又はヨウ化物を、化学反応をともなった除去を行った後、すなわち、化学結合変換をともなったガス状の除去対象の物質変換が行われたことで、固体状のフッ化物及び/又は塩化物及び/又は臭化物及び/又はヨウ化物を含む固体状のハロゲン化物を回収できる。回収の方法には、化学的工程が用いられ、例えば、ガス状の除去対象の物質変換が行われた後の生成物を水、アルコールなどの溶媒で溶解、洗い流し、もしくはろ別し、その溶液でそのまま回収する方法や、その溶媒を蒸発させて、反応後の固体状の生成物をそのまま回収する方法がある。効率の視点からは、硝酸銀やその他の金属イオンなどの沈殿剤を用いて、難溶性のハロゲン化物を沈殿させ、固体状のハロゲン化物をデカンテーション、ろ別で回収する方法が好ましい。
【0027】
図1は、本発明の方法を実施するのに用いられる装置の一例を模式的に示すものであり、図中、1は、被処理気体を供給するガスライン、2は、ポンプ、3は、前処理部分、4は、除去処理を行う部分、5は、ガス導入バルブ、6、7は、ライン途中のバルブ、8は、ガス排出バルブを示している。
該前処理部分3では、被処理気体に、除湿、二酸化炭素の除去、揮発性の無機及び/又は有機酸の除去、並びに除塵等の前処理が行われる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。本発明の技術思想の範囲内での変更及び他の態様又は実施例は、全て本発明に含まれる。
(実施例1)
DBN約42gを、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。これを図1の4に示すように、ガスラインに設置した(以下、実施例中、同様である。また、本実施例の場合、前処理部分3は空である)。この次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のオクタフルオロシクロペンテン(以下、「C58と記載)の混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記の管中に室温で流量約1L/分で通過させ(以下実施例中、特別な記述がない限りすべての操作は室温で行った。)、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、C58は検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体の流量が200Lを超えると排出ガスからCが検出されたため、気体の供給を止めた。本実施例での除去能力は純粋なC58に換算して約20L/L(DBN-シリカゲル)となり、本発明を用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58を効率よく除去できた。
なお、本実施例に限らず、加工性に富む有機ポリマーやセルロース、さらにはアルミナ、ガラス粒などの態様も可能で、あらゆる形態に本発明は応用される。
【0029】
(実施例2)
DBN約42gを、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側にメッシュ平均径4μmのろ紙を詰め、これを前記のシリカゲルを詰めた管の前に接続した(図1の3)。C58を含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中に流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT-IRにより調べたところ、C58は検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。室内空気をベースとした高濃度約1%のC5混合気体の流量が260Lを超えると排出ガスからC58が検出されたため、気体の供給を止めた。本実施例での除去能力は純粋なC58に換算して約26L/L(DBN-シリカゲル)となる。空気中の除塵、酸浄化剤や除湿を行う前処理部分を設けることで除去能力の向上がみられた。
以上、本発明を用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58を効率よく除去できた。
【0030】
(実施例3)
DBN約52gを、アルミナ90(中性、粒系60〜200μm、Merck)約45gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記の管中に流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、C58は検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体の流量が180Lを超えると排出ガスからC58が検出されたため、気体の供給を止めた。本実施例での除去能力は純粋なC58に換算して約18L/L(DBN-アルミナ)となった。
以上、本発明を用いることで、その態様にかかわらず、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58を効率よく除去できた。
【0031】
(実施例4)
DBN約39gを、モレキュラシーブス4A(1/16、和光純薬)約70gに浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体を準備した。この気体を,FT-IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記の管中に流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、C58は検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体の流量が230Lを超えると排出ガスからC58が検出されたため、気体の供給を止めた。本実施例での除去能力は純粋なC58に換算して約23L/L(DBN-モレキュラシーブ)となった。
以上、本発明を用いることで、その態様にかかわらず、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58を効率よく除去できた。
【0032】
(実施例5)
DBN約14gを、ろ紙(メッシュ平均径4μm)の破片(約1cm×1cm)合計約16gに浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記の管中に流量約500mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、約80%のC58が除去されることが分かった。除去効率をあげるためには、より細かいろ紙の破片、例えば1mm以下の破片を密に詰めることで達成できる。
以上、本発明を用いることで、その態様にかかわらず、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58をある程度除去できた。
【0033】
(実施例6)
DBN約10gを、綿約12gに浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記の管中に流量約500mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、約90%のC58が除去されることが分かった。
以上、本発明を用いることで、その態様にかかわらず、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58をある程度除去できた。なお、本実施例に限らず、加工性に富む有機ポリマーやセルロース、さらにはアルミナ、ガラスなどの態様も可能で、あらゆる形態に本発明は応用される。
【0034】
(実施例7)
DBN約3gを尿素系溶媒であるDMPU(DiMethylPropyleneUrea)10gに溶かし、バブリング管(外径約3cm、バブリング部分内径約5mm,ガラスメッシュG1)に導入した。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記のバブリング管に流量約100mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、約60%のC58が除去されることが分かった。除去効率をあげるためには、より細かいバブリング部分、例えば、G3以上のガラスメッシュのバブリング部分を用いることで達成できる。
以上、本発明を用いることで、その態様にかかわらず、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58をある程度除去できた。
【0035】
(実施例8)
7-imino-3,4,6,7-tetrahydro-2H-pyrimido[2,1-a]isoquinoline0.5gをアミド系溶媒であるNMP(N-Methyl-2-Pyrrolidone)3gに溶かし、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約4gに慎重に浸み込ませ、ガラス細管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のオクタフルオロシクロペンテン(以下、「C58」と記載)の混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記の管中に流量約20mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、約10%のC58が除去されることが分かった。
以上、DBNの誘導体であり、アミジン骨格を中心とした3環性の窒素化合物を用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58をある程度除去できた。
【0036】
(実施例9)
アミンの誘導体である、イミン骨格を有するピリジン約150mLをバブリング用のガラス容器(容量約300mL、バブリング部分内径約5mm,ガラスメッシュG1)に導入した。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のオクタフルオロシクロペンテン(以下、「C58」と記載)の混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。該バブリング用のガラス容器に、前記の混合気体を流量約500mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、約50%のC58が除去されることが分かった。
以上、アミン誘導体を用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるCをある程度除去できた。
【0037】
(実施例10)
ピリジン骨格を有する誘導体、4−メルカプトピリジン約1gを尿素系溶媒であるDMPU(DiMethylPropyleneUrea)1.5gに溶かし、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約2gに慎重に浸み込ませ、ガラス細管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のオクタフルオロシクロペンテン(以下実施例、C58と記載)の混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記の管中に流量約10mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、約30%のC58が除去されることが分かった。
以上、ピリジン骨格を有する誘導体を用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58をある程度除去できた。
【0038】
(実施例11)
ピリジン骨格を有する誘導体、4,4’-ビピリジル約1gを尿素系溶媒であるDMPU(DiMethylPropyleneUrea)2gに溶かし、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約2gに慎重に浸み込ませ、ガラス細管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のオクタフルオロシクロペンテン(以下、「C58」と記載)の混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記の管中に流量約10mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、約60%のC58が除去されることが分かった。
以上、ピリジン骨格を有する誘導体を用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58をある程度除去できた。
【0039】
(実施例12)
ピロリジン約10gとピロール約5gとトリイソブチルアミン約28gの混合物を、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約35gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のオクタフルオロシクロペンテン(以下、「C58」と記載)の混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。該管を約40度に温めながら、先述の混合気体を流量約500mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、約40%のC58が除去されることが分かった。
以上、すくなくともアミン誘導体を含む態様を使うことで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58をある程度除去できた。
【0040】
(実施例13)
アミンの誘導体であり、形式的にアミンおよびイミン骨格を有するフォスファゼン(2-tert-Butylimino-2-diethylamino-1.3-dimethylperhydro-1,3,2-diaza-phosphorine)約1gをシリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約1gに慎重に浸み込ませ、ガラス細管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のオクタフルオロシクロペンテン(以下実施例、C58と記載)の混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記の管中に流量約10mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、約20%のC58が除去されることが分かった。
以上、アミン誘導体の一種であるフォスファゼンを用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58をある程度除去できた。
【0041】
(実施例14)
DBN約44gを、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約36gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のヘキサフルオロブタジエン(以下、「C46」と記載)の混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC46の存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側に綿を詰め、これを先述のシリカゲルを詰めた管の前に接続した。C46を含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中に流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、C46は検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。室内空気をベースとした高濃度約1%のC46混合気体の流量が210Lを超えると排出ガスからC46が検出されたため、気体の供給を止めた。本実施例での除去能力は純粋なC46に換算して約21L/L(DBN-シリカゲル)となる。
以上、本発明を用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC46を効率よく除去できた。
【0042】
(実施例15)
DBN約35gを、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約38gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のオクタフルオロシクロペンタン(以下、「C582」と記載)の混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC582の存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側に綿を詰め、これを先述のシリカゲルを詰めた管の前に接続した。C582を含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中に流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、C582は検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。室内空気をベースとした高濃度約1%のC582混合気体の流量が140Lを超えると排出ガスからC58が検出されたため、気体の供給を止めた。本実施例での除去能力は純粋なC582に換算して約140L/L(DBN-シリカゲル)となる。
以上、本発明を用いることで、分子内に少なくとも水素−炭素部分を有し、かつその水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合しているガス状の炭化水素のフッ化物の一種であるC582を効率よく除去できた。
【0043】
(実施例16)
DBU約39gを、アルミナ90(中性、粒系60〜200μm、Merck)約45gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記の管中に流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、C58は検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体の流量が150Lを超えると排出ガスからC58が検出されたため、気体の供給を止めた。本実施例での除去能力は純粋なC58に換算して約15L/L(DBN-アルミナ)となった。
以上、本発明を用いることで、その態様にかかわらず、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58を効率よく除去できた。
【0044】
(実施例17)
DBU約6gをアミド系溶媒であるNMP(N-Methyl-2-Pyrrolidone)14gに溶かし、バブリング管(外径約3cm、バブリング部分内径約5mm、ガラスメッシュG1)に導入した。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記のバブリング管に流量約100mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、約50%のC58が除去されることが分かった。除去効率をあげるためには、より細かいバブリング部分、例えば、G3以上のガラスメッシュのバブリング部分を用いることで達成できる。
以上、本発明を用いることで、その態様にかかわらず、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58をある程度除去できた。
【0045】
(実施例18)
DBU約36gを、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側にメッシュ平均径4μmのろ紙を詰め、これを前記のシリカゲルを詰めた管の前に接続した。C58を含む混合気体を管中に流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、C58は検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体の流量が210Lを超えると排出ガスからC58が検出されたため、気体の供給を止めた。本実施例での除去能力は純粋なC58に換算して約21L/L(DBN-シリカゲル)となる。空気中の除塵、酸浄化剤や除湿を行う前処理部分を設けることで除去能力の向上がみられた。
以上、本発明を用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58を効率よく除去できた。
【0046】
(実施例19)
DBN約21gとジシクロヘキシルメチルアミン約30gの混合物を、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約32gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のオクタフルオロシクロペンテン(以下実施例、C58と記載)の混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を先述の該管中に流量約500mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、C58は検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体の流量が160Lを超えると排出ガスからC58が検出されたため、気体の供給を止めた。本実施例での除去能力は純粋なC58に換算して約16L/L(DBN-ジシクロヘキシルメチルアミン-シリカゲル)となった。
以上、すくなくともDBNを含み、かつそれ以外の物質(この場合、有機物)が共存する態様を使うことで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58を効率よく除去できた。
【0047】
(実施例20)
1,3,4,6,7,8-hexahydro-2H-primido[1,2-a]pyrimidine(HPP)約2gを、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約5gに慎重に浸み込ませ、ガラス細管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のオクタフルオロシクロペンテン(以下、「C58」と記載)の混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を先述の該管中に流量約50mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、約10%のC58が除去されることが分かった。
以上、本発明を用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58をある程度除去できた。
【0048】
(実施例21)
1,3,4,6,7,8-hexahydro-1-methyl-2H-primido[1,2-a]pyrimidine(MeHPP)約1gを、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約2gに慎重に浸み込ませ、ガラス細管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のオクタフルオロシクロペンテン(以下、「C58」と記載)の混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記の管中に流量約50mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、約20%のC58が除去されることが分かった。以上、本発明を用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58をある程度除去できた。
【0049】
(実施例22)
1,3,4,6,7,8-hexahydro-2H-primido[1,2-a]pyrimidine(HPP)がポリマーの側鎖として共有結合している高分子JANDAJEL-1,3,4,6,7,8-hexahydro-2H-primido[1,2-a]pyrimidine約4gをガラス細管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のオクタフルオロシクロペンテン(以下、「C58」と記載)の混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記の管中に流量約50mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、約25%のC58が除去されることが分かった。
以上、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物であるHPPの誘導体であり、それが多孔質材である有機ポリマーに化学結合したものを用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58をある程度除去できた。
【0050】
(実施例23)
1,8-Diazabicyclo[5,4,0]undec-7-ene polymer-bound (50-100mesh)約4gをガラス細管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のオクタフルオロシクロペンテン(以下、「C58」と記載)の混合気体を準備した。この気体を,FT-IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記の管中に流量約50mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT−IRにより調べたところ、約40%のC58が除去されることが分かった。以上、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物のDBUの誘導体であり、それが多孔質材である有機ポリマーに化学結合したものを用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58をある程度除去できた。
【0051】
(実施例24)
Tetramisole約0.5gを、アミド系溶媒であるNMP(N-Methyl-2-Pyrrolidone)4gに溶かし、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約4gに慎重に浸み込ませ、ガラス細管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のオクタフルオロシクロペンテン(以下、「C58」と記載)の混合気体を準備した。この気体を、FT−IRにより調べたところC58の存在が確認された。この混合気体を前記の管中に流量約50mL/分で通過させ、排出した気体を同様にFT-IRにより調べたところ、約10%のC58が除去されることが分かった。
以上、本発明を用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるCをある程度除去できることがわかった。なお、本実施例に限らず、加工性に富む有機ポリマーやセルロース、さらにはアルミナ、ガラスなどの態様も可能で、あらゆる形態に本発明は応用される。
【0052】
(実施例25)
DBN約2gを尿素系溶媒であるDMPU(DiMethylPropyleneUrea)2gに溶かし、バブリング管に導入した。次に、室内空気をベースとした高濃度約10%のC58混合気体を準備した。この混合気体を先述のバブリング管に流量約100mL/分で十分に通過させると褐色の液体が得られる。この液体に水を5mL加え、そこへ約0.1Mの硝酸銀水溶液を加えると、フッ素および銀が含まれた褐色の沈殿が約2.2g得られた。
以上、本発明を用いることで、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58からフッ素を有する化合物を回収することができた。
【0053】
(実施例26)
DBN約42gを、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約1%のC58混合気体を準備した。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側にメッシュ平均径4μmのろ紙を詰め、これを先述のシリカゲルを詰めた管の前に接続した(図1の3)。C58を含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中に流量約1L/分で通過させC58の除去を行った。除去後、黄色から褐色に変色したDBNを含浸したシリカゲルを取り出し、水約100mLを加え、ろ過することで、液体状の生成したフッ化物を回収できた。さらに、この液体に約0.1Mの硝酸銀水溶液を加えてゆくと、フッ素および銀が含まれた沈殿約0.8gを回収できた。
以上、本発明を用いることでその態様に関係なく、ガス状の不飽和炭化水素のフッ化物の一種であるC58からフッ素を有する化合物を回収することができた。
【0054】
(実施例27)
DBN約42gを、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした高濃度約10%の1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(C25H)の混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところC25Hの存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側にメッシュ平均径4μmのろ紙を詰め、これを前記のシリカゲルを詰めた管の前に接続した(図1の3)。C25Hを含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中に流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT-IRにより調べたところ、C25Hは検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。
以上、本発明を用いることで、ガス状の分子内に少なくとも水素−炭素部分を有し、かつその水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合している炭化水素のフッ化物であり、HFC(ハイドロフルオロカーボン)の一種でもあるC25Hを除去できた。
【0055】
(実施例28)
DBN約40gを、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした除去対象ガスである高濃度約5%の1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(C2Cl23H)の混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところ除去対象ガスの存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側にメッシュ平均径4μmのろ紙を詰め、これを前記のシリカゲルを詰めた管の前に接続した(図1の3)。除去対象ガスを含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中に流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT-IRにより調べたところ、除去対象ガスは検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。
以上、本発明を用いることで、ガス状の分子内に少なくとも水素−炭素部分を有し、かつその水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合している炭化水素のフッ化物であり、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)の一種でもあるC2Cl23Hを除去できた。
【0056】
(実施例29)
DBN約39gとトリブチルアミン10gの混合物を、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした除去対象ガスである高濃度約3%の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブチンの混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところ除去対象ガスの存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側にメッシュ平均径4μmのろ紙を詰め、これを前記のシリカゲルを詰めた管の前に接続した(図1の3)。除去対象ガスを含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中を約40℃に加熱しながら、流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT-IRにより調べたところ、除去対象ガスは検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。
以上、本発明を用いることで、ガス状の炭素‐炭素3重結合を有する不飽和炭化水素のフッ化物の一種である1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブチンを除去できた。
【0057】
(実施例30)
DBN約41gとトリブチルアミン10gの混合物を、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした除去対象ガスである高濃度約3%のテトラクロルエチレンの混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところ除去対象ガスの存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側にメッシュ平均径4μmのろ紙を詰め、これを前記のシリカゲルを詰めた管の前に接続した(図1の3)。除去対象ガスを含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中を約50℃に加熱しながら、流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT-IRにより調べたところ、除去対象ガスは検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。
以上、本発明を用いることで、塩素のみを置換基として有するガス状の不飽和炭化水素で第一種有機溶剤の一種であるテトラクロルエチレンを除去できた。
【0058】
(実施例31)
DBN約50gとトリブチルアミン10gの混合物を、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした除去対象ガスである高濃度約3%の1,1,2,2-テトラクロロエタン(C2Cl42)の混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところ除去対象ガスの存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側にメッシュ平均径4μmのろ紙を詰め、これを前記のシリカゲルを詰めた管の前に接続した(図1の3)。除去対象ガスを含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中を約50℃に加熱しながら、流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT-IRにより調べたところ、除去対象ガスは検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。
以上、本発明を用いることで、塩素のみを置換基として有するガス状の飽和炭化水素であるC2Cl42を除去できた。
【0059】
(実施例31)
DBN約49gとトリブチルアミン10gの混合物を、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした除去対象ガスである飽和のオクタクロロシクロペンテンの混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところ除去対象ガスの存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側にメッシュ平均径4μmのろ紙を詰め、これを前記のシリカゲルを詰めた管の前に接続した(図1の3)。除去対象ガスを含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中を約50℃に加熱しながら、流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT-IRにより調べたところ、除去対象ガスは約40%除去されることが分かった。
以上、本発明を用いることで、塩素のみを置換基として有するガス状の不飽和炭化水素であるオクタクロロシクロペンテンを除去できた。
除去後、シリカゲルを取り出し、水約100mLを加え、ろ過することで、液体状の生成した塩化物を回収できた。さらに、この液体に約0.1Mの硝酸銀水溶液を加えてゆくと、塩素および銀が含まれた沈殿約0.2gを回収できた。
【0060】
(実施例32)
DBN約45gとトリブチルアミン10gの混合物を、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした除去対象ガスである濃度約10%の1,2-ジブロモエタンの混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところ除去対象ガスの存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側にメッシュ平均径4μmのろ紙を詰め、これを前記のシリカゲルを詰めた管の前に接続した(図1の3)。除去対象ガスを含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中を約50℃に加熱しながら、流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT-IRにより調べたところ、除去対象ガスは約50%除去されることが分かった。
以上、本発明を用いることで、臭素のみを置換基として有するガス状の飽和炭化水素である1,2-ジブロモエタンを除去できた。
【0061】
(実施例33)
DBN約47gとトリブチルアミン10gの混合物を、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした除去対象ガスである濃度約10%の1,2-ジブロモエチレンの混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところ除去対象ガスの存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側にメッシュ平均径4μmのろ紙を詰め、これを前記のシリカゲルを詰めた管の前に接続した(図1の3)。除去対象ガスを含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中を約70℃に加熱しながら、流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT-IRにより調べたところ、除去対象ガスは検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。
以上、本発明を用いることで、臭素のみを置換基として有するガス状の不飽和炭化水素である1,2-ジブロモエチレンを除去できた。
除去後、シリカゲルを取り出し、水約100mLを加え、ろ過することで、液体状の生成した臭化物を回収できた。さらに、この液体に約0.1Mの硝酸銀水溶液を加えてゆくと、臭素および銀が含まれた沈殿約0.1gを回収できた。
【0062】
(実施例34)
DBN約51gとトリブチルアミン11gの混合物を、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした除去対象ガスである濃度約10%の1,2-ジブロモ-1,2-ジクロロエタン(C2Br2Cl22)の混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところ除去対象ガスの存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側にメッシュ平均径4μmのろ紙を詰め、これを前記のシリカゲルを詰めた管の前に接続した(図1の3)。除去対象ガスを含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中を約60℃に加熱しながら、流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT-IRにより調べたところ、除去対象ガスは検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。
以上、本発明を用いることで、塩素及び臭素のみを置換基として有するガス状の飽和炭化水素であるC2Br2Cl22を除去できた。
【0063】
(実施例35)
DBN約45gとトリブチルアミン10gの混合物を、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした除去対象ガスである濃度約10%のヨードメタンの混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところ除去対象ガスの存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側にメッシュ平均径4μmのろ紙を詰め、これを前記のシリカゲルを詰めた管の前に接続した(図1の3)。除去対象ガスを含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中を約40℃に加熱しながら、流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT-IRにより調べたところ、除去対象ガスは検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。
以上、本発明を用いることで、ヨウ素のみを置換基として有するガス状の飽和炭化水素であるヨードメタンを除去できた。
除去後、シリカゲルを取り出し、水約100mLを加え、ろ過することで、液体状の生成したヨウ化物を回収できた。さらに、この液体に約0.1Mの硝酸銀水溶液を加えてゆくと、ヨウ素および銀が含まれた沈殿約0.3gを回収できた。
【0064】
(実施例36)
DBN約45gとトリブチルアミン10gの混合物を、シリカゲル(ワコーゲルC−300E、粒系45〜75μm、和光純薬)約34gに水浴中冷やしながら慎重に浸み込ませ、フィルター付きの内径3cm長さ15cmの管に詰めた。次に、室内空気をベースとした除去対象ガスである濃度約5%の3-ヨード-1-プロペンの混合気体を準備した。この気体を,FT−IRにより調べたところ除去対象ガスの存在が確認された。次に、内径2.5cm長さ20cm管に塩化カルシウム(粒系約3mm)と重曹の2:1混合物とその両側にメッシュ平均径4μmのろ紙を詰め、これを前記のシリカゲルを詰めた管の前に接続した(図1の3)。除去対象ガスを含む混合気体を順次、前処理部分の管、次にDBNを含浸したシリカゲルの管中を約70℃に加熱しながら、流量約1L/分で通過させ、排出した気体を同様にFT-IRにより調べたところ、除去対象ガスは検出されずほぼ完全に除去されることが分かった。
以上、本発明を用いることで、ヨウ素のみを置換基として有するガス状の不飽和炭化水素である3-ヨード-1-プロペンを除去できた。
【符号の説明】
【0065】
1 ガスライン
2 ポンプ
3 前処理部分
4 除去を行う部分
5 ガス導入バルブ
6、7 ライン途中のバルブ
8 ガス排出バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理気体中に含まれる、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、(2)分子内に少なくとも水素−炭素部分を有しかつその水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合している炭化水素のフッ化物、(3)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する不飽和炭化水素、及び(4)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する炭素が2つ以上の飽和炭化水素から選ばれるいずれかのガス状のハロゲン化物を、アミン誘導体と反応させることにより除去することを特徴とするガス状ハロゲン化物の除去方法。
【請求項2】
前記アミン誘導体が、1級、2級又は3級のアミン化合物、ピロール又はピリジン骨格を有する化合物、及びフォスファゼン誘導体から選ばれる1種もしくは2種以上のアミン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載のガス状ハロゲン化物の除去方法。
【請求項3】
被処理気体中に含まれる、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、(2)分子内に少なくとも水素−炭素部分を有しかつその水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合している炭化水素のフッ化物、(3)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する不飽和炭化水素、及び(4)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する炭素が2つ以上の飽和炭化水素から選ばれるいずれかのガス状のハロゲン化を、下記の一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物と反応させることにより除去することを特徴とするガス状ハロゲン化物の除去方法。
【化1】

[式中、R1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、他のヘテロ原子で置換されてもよいメチレン基(CH)を表し、或いは、置換基を有していてもよい窒素原子(NH)、酸素原子(O)又は硫黄原子(S)のヘテロ原子を表す。R1とR2との間、及びR3とR4の間には、炭化水素基やそれらを有するポリマーやオリゴマーから形成される置換基が存在するか、或いは、挿入され、さらに、それらの置換基がさらなる環状部分を形成し、化合物として3環以上の場合を含む。]
【請求項4】
前記の一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物が、1,5-diazabicyclo[4,3,0]non-5-ene(DBN)及び/又はその置換誘導体であることを特徴とする請求項3に記載のガス状ハロゲン化物の除去方法。
【請求項5】
前記の一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物が、1,8-diazabicyclo[5,4,0]undec-7-ene(DBU)及び/又はその置換誘導体であることを特徴とする請求項3に記載のガス状ハロゲン化物の除去方法。
【請求項6】
前記の一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物が、1,3,4,6,7,8-hexahydro-2H-primido[1,2-a]pyrimidine(HPP)(別名1,5,7-triazabicyclo[4,4,0]dec-5-en)及び/又はその置換誘導体であることを特徴とする請求項3に記載のガス状ハロゲン化物の除去方法。
【請求項7】
前記の一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物が、tetramisole(別名Levamisole)であることを特徴とする請求項2に記載のガス状ハロゲン化物の除去方法。
【請求項8】
前記の一般式(I)で表される、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する少なくとも2環性の窒素化合物以外の物質が共存する態様を用いて除去することを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化物の除去方法。
【請求項9】
被処理気体中に含まれる、前記(1)の、不飽和炭化水素のフッ化物が、少なくともC58又はC46或いはこれらの混合物である請求項1〜8のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化物の除去方法。
【請求項10】
前記C58が、少なくともオクタフルオロシクロペンテンである請求項9に記載のガス状ハロゲン化物の除去方法。
【請求項11】
前記C46が、ヘキサフルオロブタジエン又はヘキサフルオロシクロブテン或いはこれらの混合物である請求項9に記載のガス状ハロゲン化物の除去方法。
【請求項12】
被処理気体中に含まれる、前記(2)の、分子内に少なくとも水素−炭素部分を有し、かつ、その水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合しているガス状の炭化水素のフッ化物が、CF3CHF2、CHF2CHF2、CF3CHFCF3、CF3CF2CHF2、CHF2CF2CHF2、CF3OCHFCF3、C582、およびその他のハイドロフルオロカーボン(HFC)から選ばれる1種もしくは2種以上の混合ガスであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化物フッ化物の除去方法。
【請求項13】
前記C582が、少なくとも1H,2H-オクタフルオロシクロペンタン、1H,1H-オクタフルオロシクロペンタン又は1H,3H-オクタフルオロシクロペンタン或いはこれらの混合物である請求項12に記載のフッ化物の除去方法。
【請求項14】
前記のアミン誘導体及び/又はアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物の液体が、多孔質材に含浸又は化学結合していることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化物フッ化物の除去方法。
【請求項15】
前記多孔質材が、セルロース、綿、又はポリマー、又は炭、又はシリカゲル、又は多孔質アルミナ又はモレキュラーシーブ又はゼオライト、又はガラスである請求項14に記載のガス状ハロゲン化物フッ化物の除去方法。
【請求項16】
あらかじめ被処理気体に前処理を施すことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のガス状ハロゲン化物の除去方法。
【請求項17】
前記前処理が、除湿、二酸化炭素の除去、揮発性の無機及び/又は有機酸の除去、並びに除塵から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項16に記載のガス状ハロゲン化物の除去方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の除去方法において、前記のガス状のハロゲン化物と前記のアミン誘導体及び/又はアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物との反応により得られる反応生成物から、固体状のハロゲン化物を回収することを特徴とするハロゲン化物の回収方法。
【請求項19】
被処理気体中の、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、(2)分子内に少なくとも水素−炭素部分を有しかつその水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合している炭化水素のフッ化物、(3)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する不飽和炭化水素、及び(4)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する炭素が2つ以上の飽和炭化水素から選ばれるいずれかのガス状のハロゲン化物を除去するためのハロゲン化物除去剤であって、請求項1又は2に記載のアミン誘導体及び/又は請求項3〜8のいずれか1項に記載のアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物を有効成分とすることを特徴とするハロゲン化物除去剤。
【請求項20】
被処理気体中の、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、(2)分子内に少なくとも水素−炭素部分を有しかつその水素−炭素部分の炭素に結合している隣の炭素にアニオン性脱離基が結合している炭化水素のフッ化物、(3)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する不飽和炭化水素、及び(4)塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる少なくとも1以上のみを置換基として有する炭素が2つ以上の飽和炭化水素から選ばれるいずれかのガス状のハロゲン化物を回収するためのハロゲン化物回収剤であって、請求項1又は2に記載のアミン誘導体及び/又は請求項3〜8のいずれか1項に記載のアミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物を有効成分とすることを特徴とするハロゲン化物回収剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−121018(P2012−121018A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166319(P2011−166319)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】