説明

ガス発生剤として用いる金属錯体

【課題】ガス発生組成物とそれらの使用法を提供する。
【解決手段】ガス発生組成物として金属錯体が使用される。これらの錯体は、テンプレートとしての金属カチオン、水素と窒素を含む中性リガンド、及びその錯体の電荷をバランスさせるのに足る十分な酸化性アニオンから成る。この錯体は、それが燃焼すると窒素ガスと水蒸気が生成せしめられるように調合される。このような錯体の具体的な例に金属亜梢酸塩アンミン、金属硝酸塩アンミン及び金属過塩素酸塩アンミンの各錯体、並びに同ヒドラジン錯体がある。バインダー及び共酸化剤を金属錯体と組み合わせることにより、ガス発生組成物の粉砕強さを改良し、かつそのバインダーを効率的に燃焼させることが可能になる。このようなガス発生組成物は、自動車のエアバッグのようなガス発生装置での使用に適合する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、燃焼してガスを発生する能力のある遷移金属もしくはアルカリ土類金属の錯体に関する。さらに詳しくは、本発明は急速に酸化されて有意量の気体、特に水蒸気および窒素を生成する、かかる錯体を提供することに関する。
【0002】
発明の背景
ガス発生化学組成物は多くの異なる方面で有用である。かかる組成物の重要な用途の一つは、“エアバッグ”の作動である。エアバッグは、殆どではないにしても、多くの新しい自動車がこのような装置を装備している事から認識されて来ている。事実、多くの新しい自動車はその運転者と乗員を保護するために複数のエアバッグを装備している。
【0003】
自動車エアバッグの関係では、何分の一秒の間にその装置を膨脹させるのに十分なガスが発生されなければならない。車が事故で衝突した時刻と、運転者が、さもなければ、ハンドルに突っ込むであろう時刻との間にエアバッグが完全に膨脹しなければならない。従って、殆ど瞬間的なガスの発生が要求される。
【0004】
この他に、満足されなければならない多くの重要な設計規準がある。自動車製造業者および他の業者は、詳細な仕様に適合されなければならない必須規準を提示している。これらの重要な設計規準に適合するガス発生組成物を製造することは、極めて困難な課題である。これらの仕様は、ガス発生組成物が所要の速度でガスを発生することを要求している。その仕様は、また、有毒もしくは有害なガスまたは固体の発生に厳格な限度を設定している。制限されるガスの例は一酸化炭素、二酸化炭素、NO、SOおよび硫化水素である。
【0005】
そのガスは、車の乗員が、膨脹したエアバッグに押し付けられた時に火傷をしないように、十分且つ合理的に低い温度で発生しなければならない。生成したガスが熱過ぎると、その自動車の乗員が展開したばかりのエアバッグに押し付けられた時に火傷をする可能性がある。従って、ガス発生剤とエアバッグの構造を組み合わせて、自動車の乗員を過剰の熱から隔てる必要がある。このガス発生剤は十分な燃焼速度を維持する一方で、この全てが要求される。
【0006】
もう一つの関連の重要な設計規準は、ガス発生剤組成物が限られた量の微粒子物質しか生成しないことである。微粒子物質は、補助束縛システムの操作を阻害し、吸入の危険があり、皮膚や眼を刺激し、またその安全装置の操作後に処理しなければならない危険な固体廃棄物になる可能性がある。受容できる代替物がないので、刺激性微粒子の生成は、望ましくはないが、現在用いられているアジ化ナトリウム系材料の我慢されている面である。
【0007】
たとえ生成するとしても、限られた量の微粒子しか生成しないことに加えて、そのような微粒子の塊は少くとも容易に濾取できることが望ましい。例えば、その組成物は濾取できる固体のスラグを生成することが望ましい。若しその反応生成物が濾取できる物質を生成するなら、その固体は濾取されて、周囲の環境に逃げるのを防ぐことができる。
【0008】
有機および無機の材料の両方が可能性のあるガス発生剤として提案されている。このようなガス発生剤組成物は、十分大きい速度で反応して何分の一秒かで大量のガスを生成する酸化剤と燃料を含んでいる。
【0009】
現在、アジ化ナトリウムが最も広く用いられ、そして一般に認められているガス発生材料である。アジ化ナトリウムは名目上は工業的仕様と指針に合致している。それにも拘らず、アジ化ナトリウムは多くの取り除くことのできない問題点を抱えている。アジ化ナトリウムは、その毒性レベルがラットの経口投与で測定したLD50で、45mg/kg程度であるから、出発原料として非常に毒性がある。アジ化ナトリウムを定期的に取り扱っている作業者は激しい頭痛、息ぎれ、痙攣、その他の症状など、様々の健康上の問題を経験している。
【0010】
さらに、補助の酸化剤に何が用いられたとしても、アジ化ナトリウム・ガス発生剤からの燃焼生成物は、酸化ナトリウムもしくは水酸化ナトリウムのようなアルカリ性の反応生成物を含んでいる。アジ化ナトリウム用の酸化剤として二硫化モリブデンまたは硫黄が用いられている。しかし、このような酸化剤を用いると、硫化水素ガスのような毒性のある生成物と酸化ナトリウムおよび硫化ソーダのような腐食性の物質が生成する。救急作業者と自動車の乗員は、アジ化ナトリウム系ガス発生剤の作動によって生成する硫化水素ガスと腐食性粉末の両方について苦痛を訴えている。
【0011】
使用しなかったガス膨脹型の補助束縛システム、例えば解体車両中の自動車用エアバッグの廃棄との関連で、問題が大きくなることも予想される。そのような補助束縛システム中に残っているアジ化ナトリウムは、解体車両から滲み出て、水の汚染源もしくは毒性廃棄物になる可能性がある。実際、アジ化ナトリウムは、捨てた後で蓄電池の酸と接触すると、爆発性の重金属アジ化物もしくはヒドラゾ酸を生成することに関心を示した人もいる。
【0012】
アジ化ナトリウム系ガス発生剤がエアバッグ膨脹用に最も普通に用いられているが、そのような組成物はかなり欠点を有しているので、多くの代替のガス発生剤組成物がアジ化ナトリウムを置き換えるために提案された。しかし、提案されたアジ化ナトリウム代替物の大半は、上に提示した選択規準の全てに十分に対応することができなかった。
【0013】
かくして、自動車の補助束縛システムに用いるためのガス発生組成物を選別する多くの重要な規準が存在することが理解されるであろう。例えば、毒性のない出発材料を選ぶことが重要である。同時に、その燃焼生成物は毒性または有害であってはならない。これを考慮して、工業的規準は、補助束縛システムの作動で生成する各種ガスおよび微粒子の許容量を限定している。
【0014】
それ故に、現存する技術で確認されている問題点を克服して、大量のガスを発生する能力のある組成物を提供することは、この技術分野で意味のある進歩であろう。実質的に無毒の出発材料を基剤し、そして実質的に無毒の反応生成物を生成するガス発生組成物を提供することは更なる進歩であろう。極く限られた量の毒性若しくは刺激性の微粒状破片と、限られた望ましくないガス状生成物しか生成させないガス発生組成物を提供することは、この技術分野でのもう一つの進歩であろう。また、反応時に容易に濾取できる固体スラグを生成するガス発生組成物を提供することも進歩であろう。
【0015】
かかる組成物とそれらの利用法が本明細書に開示され、かつ特許請求されている。
発明の要旨
本発明は、ガス発生組成物としての遷移金属もしくはアルカリ土類金属の錯体の利用に関する。これらの錯体は、金属カチオン、および水素と窒素を含む中性配位子(ligand)を含んでなる。一種またはそれ以上の酸化性のアニオンが、その錯体の電荷とバランスをとるために用意される。用いられる典型的な酸化性アニオンの例は、硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、ペルオキシドイオン、スーパーオキシド(superoxide)イオンである。幾つかの場合では、酸化性アニオンは金属カチオン配位錯体の一部である。これらの錯体は、それが燃焼した時窒素ガスと水蒸気の混合物が生成するように調合されている。このガス発生組成物の粉砕強さ(crush strength)および他の機械的性質を向上させるためにバインダーが用意される。共−酸化剤も、主としてこのバインダーの効率的な燃焼を可能にするために用意される。重要なのは、望ましくないガスや微粒子の生成を実質的に減少させ、もしくは排除することである。
【0016】
本発明で用いられる錯体の具体的な例は、金属亜硝酸塩アンミン、金属硝酸塩アンミン、金属過塩素酸塩アンミン、金属亜硝酸塩ヒドラジン、金属硝酸塩ヒドラジン、金属過塩素酸塩ヒドラジンおよびそれらの混合物である。本発明の範囲に含まれる錯体は迅速に燃焼もしくは分解して有意量のガスを生成する。
【0017】
この錯体の中に組込まれる金属は、アンミンもしくはヒドラジン錯体を形成する能力のある遷移金属、アルカリ土類金属、半金属(metalloid)もしくはランタニド金属である。現在推奨される金属はコバルトである。また、本発明での望ましい性質を有する錯体を生成する他の金属は、例えばマグネシウム、マンガン、ニッケル、チタン、銅、クロム、亜鉛およびスズである。その他の使用できる金属の例は、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、パラジウムおよび白金である。これらの金属は、主としてコストに対する考慮から、上述の金属のようには推奨されない。
【0018】
遷移金属カチオンもしくはアルカリ土類金属カチオンは、配位錯体の中心でテンプレートとして作用する。上述のように、この錯体は水素と窒素を含む中性配位子を含んでいる。通常、推奨される中性配位子はNHおよびNである。一つまたはそれ以上の酸化性アニオンも金属カチオンと配位結合される。本発明の範囲に含まれる金属錯体の例は、Cu(NH(NO(テトラアンミン銅(II)硝酸塩)、Co(NH(NO(トリニトロトリアンミン・コバルト(III))、Co(NH(ClO(ヘキサアンミン・コバルト(III)過塩素酸塩)、Co(NH(NO(ヘキサアンミン・コバルト(III)硝酸塩)、Zn(N(NO(トリス−ヒドラジン亜鉛硝酸塩)、Mg(N(ClO(ビス−ヒドラジンマグネシウム過塩素酸塩)およびPt(NO(NHNH(ビス−ヒドラジン白金(II)亜硝酸塩)である。
【0019】
この中性配位子に加えて、普通の配位子(common ligand)を含んでいる金属錯体を含むことは本発明の範囲に含まれる。二三の典型的な普通の配位子は、アクオ(HO)、ヒドロキソ(OH)、カルボナート(CO)、オキサラト(C)、シアノ(CN)、イソシアナト(NC)、クロロ(Cl)、フルオロ(F)およびこれらに類する配位子である。本発明の範囲内の金属錯体は、その(錯体の電荷をバランスさせるのを助けるために、酸化性アニオンに加えて普通の対イオンを含むことも予定されている。二三の代表的な普通の対イオン(common counter ion)に含まれるのは、ヒドロキシド(OH)、クロリド(Cl)、フルオリド(F)、シアニド(CN)、カーボネート(CO−2)、ボスフェート(PO−3)、オキサレート(C−2)、ボレート(BO−5)、アンモニウム(NH)およびこれらに類するイオンである。
【0020】
上述の中性配位子と酸化性アニオンを含む金属錯体は迅速に燃焼して有意量のガスを生成することが観測される。燃焼は、熱を加えるか、または常用の点火装置を使用して開始される。
【0021】
本発明の詳細な説明
上に考察したように、本発明は遷移金属もしくはアルカリ土類金属の錯体を含むガス発生剤組成物に関する。これらの錯体は、金属カチオンテンプレートおよび水素と窒素を含む中性配位子を含んでなる。その錯体の電荷をバランスさせるために、一つまたはそれ以上の酸化性のアニオンが用意される。幾つかの場合では、酸化性アニオンは金属カチオンを有する配位錯体の一部である。用いられる典型的な酸化性アニオンの例は、硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、ペルオキシドイオン、スーパーオキシドイオンである。ガス発生剤組成物の粉砕強さおよび他の機械的性質を向上させるためにバインダーもしくはバインダー混合物が併用される。共−酸化剤も、主としてこのバインダーの効率的な燃焼を可能にするために用意される。
【0022】
中性の配位子に加えて少くとも一種の普通の配位子を含んでいる金属錯体も本発明の範囲に含まれる。本明細書で用いられる、普通の配位子という用語は、金属カチオンを有する配位錯体を調製ために無機化学者により用いられる良く知られた配位子のことである。この普通の配位子は多原子イオンもしくは分子であるのが望ましいが、ハロゲンイオンのような幾つかの単原子イオンも用いられる。本発明の範囲に含まれる普通の配位子の例は、アクオ(HO)、ペルヒドロキソ(OH)、ペルオキソ(O)、カーボナト(CO)、オキサラト(C204)、カルボニル(CO)、ニトロシル(NO)、シアノ(CN)、イソシアナト(NC)、イソチオシアナト(NCS)、チオシアナト(SCN)、クロロ(Cl)、フルオロ(F)、アミド(NH)、イミド(NH)、スルファト(SO)、ボスファト(PO)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびこれらに類する配位子である。本明細書に引用参照されている、エフ.アルバート コットン(F. Albert Cotton)およびジェオフレイ ウィルキンソン(Geoffrey Wilkinson)著、先端無機化学(Advanced Inorganic Chemistry)、第2版、ジョン ワイリー アンド サンズ出版(John Wiley & Sons)、139−142頁、1966年、およびジェイムス イー.フューイー(James E. Huheey)著、無機化学(Inorganic Chemistry)、第3版、ハーパー アンド ロー出版(Harper & Row)、A−97〜A−107頁、1983年を参照されたい。この技術分野の習熟者は、本発明の範囲内で、中性配位子と上に列記されていない他の配位子を含めて適切な金属錯体が合成できることを認めるであろう。
【0023】
幾つかの場合には、この錯体は、その電荷をバランスさせるのを助けるために酸化性アニオンの他に普通の対イオンを含んでいてもよい。本明細書で用いられる、普通の対イオンという用語は、無機化学者により対イオンとして用いられる良く知られたアニオンおよびカチオンのことである。本発明の範囲に含まれる普通の対イオンの例は、ヒドロキシド(OH)、クロリド(Cl)、フルオリド(F)、シアニド(CN)、チオシアネート(SCN)、カーボネート(CO−2)、スルフェート(SO−2)、ホスフェート(PO−3)、オキサレート(C−2)、ボレート(BO−5)、アンモニウム(NH)およびこれらに類するイオンである。本明細書に引用参照されている、ウィッテン,ケー.ダブリュー.(Whitten, K.W.)およびゲイリー,ケー.デー.(Gailey, K.D.)著、一般化学(General Chemistry)、サウンダース カレッジ出版(Saunders College Publishing)、167頁、1981年、およびジェイムス イー.フューイー、無機化学、第3版、ハーパー アンド ロー出版、A−97〜A−103頁、1983年を参照されたい。
【0024】
このガス発生剤成分は、その組成物が燃焼した時、窒素ガスと水蒸気が生成するように調合されている。場合により、バインダー、共−酸化剤、普通の配位子または酸化性アニオンが炭素を含んでいると、少量の二酸化炭素もしくは一酸化炭素が生成する。このガス発生剤組成物中の総炭素はCOガスの過剰な生成を防ぐために注意深く制御される。このガス発生剤の燃焼は、そのような材料を自動車エヤバッグおよび他の類似の装置中でガス発生組成物として利用する資格を得るのに十分な速度で進む。重要なのは、望ましくないガスや微粒子の生成を実質的に減少させ、もしくは排除することである。
【0025】
本発明の範囲に入る錯体は、金属硝酸塩アンミン、金属亜硝酸塩アンミン、金属過塩素酸塩アンミン、金属亜硝酸塩ヒドラジン、金属硝酸塩ヒドラジン、金属過塩素酸塩ヒドラジンおよびそれらの混合物である。金属アンミン錯体は、配位性リガンドとしてのアンモニアを含む配位錯体と定義される。このアンミン錯体は、その錯体中に一つまたはそれ以上の亜硝酸イオン(NO)、硝酸イオン(NO)、塩素酸イオン(ClO)、過塩素酸イオン(ClO)、ペルオキシドイオン(O2−)およびスーパーオキシドイオン(O2−)またはそれらの混合物のような酸化性アニオンも含んでいる。本発明はまた、対応する酸化性アニオンを含む類似の金属ヒドラジン錯体にも関する。
【0026】
亜硝酸塩基およびアンモニア基を含む錯体の燃焼中に、亜硝酸基とアンモニア基はジアゾ化反応を起こすことが予想される。この反応は、例えば次に示される亜硝酸ナトリウムと硫酸アンモニウムの反応に似ている:
2NaNO+(NHSO → NaSO+4HO+2N
亜硝酸ナトリウムと硫酸アンモニウムの組み合せのような組成物はガス発生物質としての有用性は殆どない。これらの材料は、複分解反応を起して不安定な亜硝酸アンモニウムを生成することが観測されている。さらに、大半の簡単な亜硝酸塩は安定性が限られている。
【0027】
対照的に、本発明で用いられる金属錯体は安定で、特定の例では上に示したタイプの反応を行う能力を有している。本発明の錯体も希望量の水蒸気および窒素のような無毒性の気体を含む反応生成物を生成する。加えて、安定な金属もしくは金属酸化物スラグを生成する。かくして、本発明の組成物物は既存のアジ化ナトリウム系ガス発生組成物の限界の幾つかを回避している。
【0028】
本明細書に説明した錯体を形成し得る遷移金属、アルカリ土類金属、半金属もしくはランタニド金属はいずれも、これらガス発生組成物に利用できる潜在的候補である。しかし、コスト、反応性、熱安定性および毒性を考慮すれば、最も推奨される金属のグループは制約される。
【0029】
通常推奨される金属はコバルトである。コバルトは安定な錯体であり、比較的安価である。さらに、コバルト錯体の燃焼時の反応生成物は比較的毒性が低い。その他の推奨される金属に含まれるのはマグネシウム、マンガン、銅、亜鉛およびスズである。余り推奨されないが、使用可能な金属はニッケル、チタン、クロム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムおよび白金である。
【0030】
本発明の範囲に入るアンミン錯体、およびその関連する気体発生分解反応の代表的な例は以下の通りである:
Cu(NH(NO→CuO+3HO+2N
2Co(NH(NO→2CoO+9H0+6N+1/2O
2Cr(NH(NO→Cr+9HO+6N
[Cu(NH](NO→Cu+3N+6H
2B+3Co(NHCo(NO
6CoO+B+27H0+18N
Mg+Co(NH(NOCo(NH(NO
2CoO+MgO+9HO+6N
10[Co(NH(NO](NO)+2Sr(NO
10CoO+2SrO+37N+60H
18[Co(NH](NO]+4Cu(OH)NO
18CoO+8Cu+83N+168H
2[Co(NH](NO+2NHNO
2CoO+11N+22H
TiC1(NH+3BaO
TiO+2BaCl+BaO+3HO+N
4[Cr(NHOH](ClO+[SnCl(NH]→
4CrC1+SnO+35H0+11N
10[Ru(NH](NO+3Sr(NO
3SrO+10Ru+48N+75H
[Ni(HO)(NH(NO]→Ni+3N+8H
2[Cr(O(NH]+4NHNO
7N+17H0+Cr
8[Ni(CN)(NH)]C+43KClO
8NiO+43KC1+64CO+12N+36H
2[Sm(O(NH)]+4[Gd(NH](ClO
Sm+4GdCl+19N+57H
2Er(NO(NH+2[Co(NH(NO
Er+12CoO+60N+117H
本発明の範囲に含まれるヒドラジン錯体、および関連する気体発生反応の代表的な例は、以下の通りである:
5Zn(N)(NO+Sr(NO
5ZnO+21N+30HO+SrO
Co(N(NO→Co+4N+6H
3Mg(N(ClO+2Si
6SiO+3MgC1+10N+12H
2Mg(N(NO+2[CO(NH(NO]NO
→2MgO+2CoO+13N+20H
Pt(NO(N→Pt+3N+4H
[Mn(N](NO+Cu(OH)
Cu+MnO+4N+7H
2[La(N(NO)](NO+NHNO
La+12N+18H
本発明の錯体は比較的安定である一方で、燃焼反応を開始するのも簡単である。例えば、この錯体を電熱線と接触させると、迅速な気体生成燃焼反応が観測される。同様に、常用の点火装置を用いて反応を開始することも可能である。点火装置の一つのタイプは、一定量のB/KNOのか粒もしくはペレットを含み、それが点火され、そして続いて本発明の組成物に点火する能力を有する。もう一つの点火装置はMg/Sr(NO/ナイロンか粒を含んでいる。
【0031】
上に定義した錯体の多くは、“化学量論的”に分解をすることに留意することも重要である。即ち、これら錯体は、任意の他の材料と反応することなく分解して、大量の窒素と水および金属または金属酸化物を生成する。しかし、ある種の錯体では、完全且つ有効な反応を保証するために、燃料または酸化剤をこの錯体に添加するのが望ましい。このような燃料は、例えば硼素、マグネシウム、アルミニウム、硼素またはアルミニウムの水素化物、炭素、ケイ素、チタン、ジルコニウムおよび常用の有機バインダーのような他の類似の常用の燃料である。酸化性の種は、硝酸塩、亜硝酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、過酸化物および他の類似の酸化性材料である。かくして、化学量論的分解はその組成物および反応の単純さのために魅力的であるが、化学量論的分解が可能でない錯体でも使用することができる。
【0032】
上述のように、硝酸塩および過塩素酸塩錯体も本発明の範囲内に入る。かかる硝酸塩錯体の代表的な例は:Co(NH(NO、Cu(NH(NO、[Co(NH(NO)](NO、[Co(NH(NO)](NO、[Co(NH(HO)](NOである。
【0033】
本発明の範囲内に入る過塩素酸塩錯体の代表的な例は、[Co(NH](ClO、[Co(NH(NO)]ClO、[Mg(N](ClOである。
【0034】
本発明の金属亜硝酸塩もしくは硝酸塩アンミン錯体の合成は文献に記載されている。特に、参照されるのはハーゲル(Hagel)達の“コバルト(III)のトリアミン類.I.トリニトロトリアンミンコバルト(III)の幾何異性体”9 Inorganic Chemistry(無機化学)、1496(1970年、6月);ジー・パス(G. Pass)およびエイチ.サットクリッフェ(H. Sutcliffe)の実用無機化学(Practical Inorganic Chemistry)、第2版、チャップマンアンドハル出版(Chapman & Hull)、ニューヨーク(New York)、1974年;シバタ(Shibata)達の“出発材料としてカリウム・トリカーボナトコバルテート(III)を用いる、ニトロアンミン−およびシアノアンミン−コバルト(III)錯体の合成”3 Inorganic Chemistry 1573(1964年、11月);ウィーグハルト(Wieghardt)の“μ−カルボキシラトジ−.μ−ヒドロキソ−ビス[トリアンミンコバルト(III)]錯体”23 Inorganic Synthesis(無機化学合成)23(1985);レイング(Laing)の“mer−およびfac−[Co(NHNO]:Do They exist?”62 J.Chem.Educ.,707(1985);シーベルト(Siebert)の“トリニトロトリアンミンコバルト(III)の異性体”、441 無機一般化学誌(Z. Anorg. Allg. Chem.)、47(1978)であり、これらは全て本明細書で引用参照されることによってここに含まれているものとする。遷移金属過塩素酸塩アンミン錯体は同様の方法で合成される。上述のように、本発明のアンミン錯体は一般に安定で、そしてガス発生配合物の調製に使用するのに十分安定で、安全である。
【0035】
金属過塩素酸塩、硝酸塩および亜硝酸塩ヒドラジン錯体の合成も文献に記載されている。特に引用されるのは、パティル(Patil)達の“金属ヒドラジン硝酸塩、アジドおよび過塩素酸塩錯体の合成と特性化”、12 無機化学および金属有機化学における合成と反応性、383(1982);クルイチニコフ(Klyichnikov)達の、“数種のパラジウムのヒドラジン化合物の合成”13 ロシア無機化学会誌(Russian Journal Inorganic Chemistry)、416(1968);クルイチニコフ達の“白金およびパラジウムの単核ヒドラジン錯体の複核錯体への変換”36 ウクライナ化学雑誌(Ukr. Khim. Zh.)、687(1970)である。
【0036】
説明したこれら錯体はガス発生装置に使用するのに有用なか粒もしくはペレットに加工できる。このような装置には自動車用エアバッグ補助束縛システムが含まれる。このようなガス発生組成物は、上に説明した量の錯体、および望ましくはバインダーおよび共−酸化剤を含んでなる。これら組成物は、その分解もしくは燃焼によって、ガス、基本的には窒素と水蒸気から成るガス混合物を生成する。このガス発生装置は、電熱線もしくは点火装置のようなその組成物の燃焼を開始する手段も含んでいるであろう。自動車用エアバッグシステムの場合、その系は、上に説明した組成物;しぼませてある、膨張するエアバッグ;およびそのエアバッグシステム内部で該ガス発生組成物に点火する装置を含んでいる。自動車用エアバッグシステムはこの技術分野で良く知られている。
【0037】
本発明のガス発生組成物中で用いられる代表的なバインダーは、ラクトース、ホウ酸、ケイ酸マグネシウムを含むケイ酸塩、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレングリコール、ガーガム(guar gum)、アラビアゴムのような天然起源のゴム[このようなゴムについての詳細な考察は、本明細書に引用参照されているシー.エル.マンテル(C. L. Mantell)著、水溶性ゴム(The Water-Soluble Gums)、ラインホールド出版(Reinhold Publishing Corp.)、1947年に説明されている]修飾セルロースおよび澱粉、ポリアクリル酸、ニトロセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロンを含めてポリアミド類、およびその他の常用の高分子バインダーを含む、推進薬、火工および爆薬組成物中で通常用いられているバインダーであるが、これらに限定はされない。このようなバインダーは機械的性質を改善し、または大きい粉砕強さを提供する。水と混ざらないバインダーも本発明で用いられるが、通常、水溶性バインダーを使用することが推奨される。このバインダー濃度はガス発生組成物の0.5から12重量%の範囲であるのが望ましく、そして2%から8重量%であるのがより望ましい。
【0038】
本出願者達は、ガス発生組成物にカーボンブラックもしくは活性化炭素のようなカーボンを添加すると、恐らく、それがバインダーを強化し、そして微小な複合体が生成することにより、バインダー作用が有意に改善されることを見いだした。本発明の範囲内の組成物にカーボンブラックを添加すると、粉砕強さが50%から150%向上することが観測された。粉砕強さが増加すると飛翔再現性が高まる。このカーボン濃度はガス発生組成物の0.1%から6重量%の範囲であるのが望ましく、そして0.3%から3重量%であるのがより望ましい。
【0039】
この共−酸化剤は、例えばSr(NO、NHClO、KNOおよび(NHCo(NOを含めて、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド金属、若しくは過塩素酸アンモニウム、塩素酸塩、過酸化物、亜硝酸塩および硝酸塩のような常用の酸化剤である。
【0040】
この共−酸化剤は、本明細書に引用参照されている米国特許第5,439,537号明細書(“ガス発生剤として用いるテルミット組成物”という名称で、1995年8月8日発行)に記載されている酸化剤を含む金属酸化物、金属水酸化物、金属過酸化物、金属酸化物・水和物、金属酸化物・水酸化物、金属含水酸化物およびそれらの混合物のような金属を含む酸化剤でもよい。金属酸化物の例は、とりわけCuO、Co、CO、CoFe、Fe、MoO、BiMoOおよびBiなどの、銅、コバルト、マンガン、タングステン、ビスマス、モリブデンおよび鉄の酸化物である。金属水酸化物の例は、とりわけFe(OH)、Co(OH)、Co(OH)、Ni(OH)、Cu(OH)およびZn(OH)である。金属酸化物・水和物および金属含水酸化物の例は、とりわけFe・xHO、SnO・xHOおよびMoO・HOである。金属酸化物・水酸化物の例は、とりわけCoO(OH)、FeO(OH)、MnO(OH)およびMnO(OH)である。
【0041】
この共−酸化剤は本明細書に引用参照されている米国特許第5,429,691号明細書(“ガス発生剤として用いるテルミット組成物”という名称)に記載されている酸化剤を含む、金属炭酸塩水酸化物、金属炭酸塩・酸化物、金属炭酸塩水酸化物・酸化物および水和物並びにそれらの混合物のような塩基性金属炭酸塩、および金属水酸化物硝酸塩、金属硝酸塩・酸化物および水和物およびそれらの混合物のような塩基性金属硝酸塩であってもよい。
【0042】
下の表1に、本発明の組成物中で、共−酸化剤として機能し得る代表的な塩基性金属炭酸塩の例を列記する。
【0043】
【表1】

【0044】
下の表2に、本発明の組成物中で共−酸化剤として機能し得る代表的な塩基性金属硝酸塩の例を列記する。
【0045】
【表2】

【0046】
場合により、その組成物の燃焼で生成するスラグの飛翔性を高め、濾取性を最大にするために、かかる酸化剤の混合物を使用するのが望ましいこともある。
本発明の組成物は、燃焼速度改良剤のような推進薬および爆薬、スラグ生成剤(slag formers)、離型剤およびNOを有効に除去する添加剤も含まれる。代表的な燃焼速度調節剤は、Fe、K1212、BiMoOおよび黒鉛炭素粉末もしくは繊維である。多数のスラグ生成剤が知られており、例えばクレー、タルク、酸化ケイ素、アルカリ土類金属酸化物、水酸化物、シュウ酸塩などが含まれ、その内炭酸マグネシウムおよび水酸化マグネシウムが代表的である。テトラゾール、アミノテトラゾール、トリアゾールおよび関連の含窒素複素環化合物のアルカリ金属塩および錯体を含む、ガス発生組成物の燃焼生成物から窒素酸化物を減らすか、除去するための多くの添加物および/または添加剤が知られており、その内カリウム・アミノテトラゾール、炭酸ソーダおよび炭酸カリウムが代表的である。また、この組成物は黒鉛、硫化モリブデン若しくは窒化ホウ素のような金型から該組成物の剥離を容易にする材料を含んでいてもよい。
【0047】
本発明で用いられる代表的点火助剤/燃焼速度調節剤に含まれるのは、例えばFe、K1212・HO、BiO(NO)、Co、CoFe、CuMoO、BiMoO、MnO、Mg(NO・xHO、Fe(NO・xHO、Co(NO・xHOおよびNHNOのような金属の酸化物、硝酸塩およびその他の化合物である。冷却剤に含まれるのは水酸化マグネシウム、シュウ酸第二銅、ホウ酸、水酸化アルミニウムおよびケイ素タングステン酸である。水酸化アルミニウムおよびケイ素タングステン酸のような冷却剤は、スラグ強化剤としても機能する。
【0048】
上述の添加剤の多くは、ガス発生剤組成物中で、その化合物により、共−酸化剤または燃料としてのように、多重の機能を発揮することが認められるであろう。幾つかの化合物は、共−酸化剤、燃焼速度調節剤、冷却剤および/またはスラグ生成剤として機能する。
【0049】
本発明の範囲内にある代表的ヘキサアンミン−コバルト(III)硝酸塩ガス発生組成物の各種の性質を、市販のアジ化ナトリウム・ガス発生組成物の性質と比較した。これらの性質は、市販のアジ化ナトリウム・ガス発生組成物と本発明の範囲内にあるガス発生組成物の間で有意の差を示す。これらの差を下にまとめて示した。
【0050】
【表3】

【0051】
“発生剤のガス分率”という用語は、ガス発生剤の重量当たりに発生するガスの重量分率を意味する。代表的ヘキサアンミン−コバルト(III)硝酸塩ガス発生組成物は、より望ましいところの、1850°Kから1900°Kの火炎温度、0.70から0.75の範囲の発生剤のガス分率、1.5%から3.0%の発生剤中の総炭素含有量、0.2ips(インチ/秒)から0.35ipsの範囲の発生剤の燃焼速度[圧力1000psi(ポンド/inch)での値]、および2.5cm/gから3.5cm/gの範囲の発生剤の表面積を有する。
【0052】
本発明のガス発生組成物は、常用の混成エアバッグ・インフレーター技術で利用するために、適合させるのが容易である。混成インフレーター技術は、少量の推進薬を燃焼することにより、貯蔵されている不活性ガス(アルゴンまたはヘリウム)を希望の温度に加熱することに基づいている。混成インフレーターは低い温度のガスを提供することができるので、火工インフレーターで燃焼ガスを冷却するために用いられる冷却フィルターを必要としない。ガス放出温度は、推進薬の重量に対する不活性ガスの重量の比を調節することにより、選択的に変えることができる。推進薬の重量に対するガスの重量の比が大きい程、ガス放出温度が低くなる。
【0053】
混成ガス発生システムは、破裂性開口を有する圧力タンク、この圧力タンク内に入れた所定量の不活性ガス;熱い燃焼ガスを生成する手段および破裂性開口を破裂させる手段を有するガス発生装置;およびガス発生組成物に点火する装置を含んでなる。このタンクは、ガス発生装置が点火されるとピストンで破られる破裂性開口を有している。このガス発生装置は、高温の燃焼ガスが不活性ガスと混ざって、それを加熱するように、構造が作られ、且つ圧力タンクに対する相対位置が決められている。適した不活性ガスは、とりわけアルゴンとヘリウムおよびその混合物を含んでいる。混合され、加熱されたガスは、開口を通って圧力タンクを出て、最後に混成インフレーターを出て、自動車のエアバッグなどの膨脹性バッグもしくはバルーンを展開させる。
【0054】
本発明の望ましい態様では、燃焼生成物として約1800°K以上の範囲の温度を有する燃焼生成物が生じ、その熱はより低温の不活性ガスに伝達されるので、この混成ガス発生システムの効率をさらに向上させる。
【0055】
補助安全束縛用途用の混成ガス発生装置は、フラントムの混成エアバッグ・インフレーター技術、洗練された、車両乗員の安全システムに関するエアバッグ国際シンポジウム、(ワインブレンナー−ザール、ドイツ、1992年11月2−3日)[(Frantom),Hybrid Airbag Inflator Technology, Airbag Int’l Symposium on Sophisticated Car,Occupant Safety Systems,(Weinbrenner-Saal, Germany, Nov. 2−3、1992)]に説明されている。
【0056】
実施例
本発明をさらに下記の制限的でない実施例で記載する。特記しない限り、組成は重量%で表す。
【0057】
実施例 1
一定量(132.4g)のCo(NH(NO(Hagel等、“The Triamines of Cobalt(III). I. Geometrical Isomers of Trinitrotriamminecobalt(III)”,9 Inorganic Chemistry 1496(June 1970)の教示にしたがって製造)を、酢酸メチル中に溶解した火工品等級(pyrotechnic grade)の酢酸ビニル/ビニルアルコールポリマー樹脂(VAARとして一般的に知られている)の38重量%溶液79と共に35m1のメタノール中でスラリー化させた。溶媒を一部蒸発させた。ペースト様混合物を強制的に20メッシュの節に通過させ、剛性コンシステンシーになるまで乾燥させ、さらに、強制的に再度節に通過させた。得られた穎粒状物を、次いで、減圧下、周囲温度で12時間乾燥させた。この乾燥材料を圧縮することにより1/2インチ直径のペレットを製造した。このペレットを600〜3,300psigの種々の異なる圧力で燃焼させた。発生剤の燃焼速度は1000psigにおいて0.237インチ/秒であり、試験した圧力範囲にわたって圧力指数が0.85であることが見いだされた。
【0058】
実施例 2
100gのCo(NH(NO、およびナイロンの12重量%メタノール溶液34gを用いて実施例1の手順を繰り返した。10−メッシュの篩、そして16メッシュの篩を経、次いで風乾させることにより穎粒化を行った。この組成物の燃焼速度は1000psigにおいて0.290インチ/秒であり、圧力指数が0.74であることが見いだされた。
【0059】
実施例 3
実施例1に記載したと同様にして、400gのCo(NH(NOを、ニトロセルロースの12重量%アセトン溶液219gでスラリー化させた。ニトロセルロースは12.6%の窒素を含有した。溶媒を部分的に蒸発させた。得られたペーストを強制的に8−メッシュの篩に通過させ、次いで、24−メッシュの篩に通過させた。得られた穎粒を一夜風乾し、充分量のステアリン酸カルシウム離型剤とブレンドし、0.3重量%の最終品を得た。得られた物質の一部を1/2インチ直径のペレットに圧縮し、1,000psigにおいて0.275インチ/秒の燃焼速度で、圧力係数が0.79を示すことが見いだされた。物質の残りを、回転式錠剤圧縮装置上で1/8インチ直径×0.07インチ厚さのペレットに圧縮した。ペレットの密度は1.88g/ccであると決定された。この組成物の理論火炎温度は2,358°Kであり、計算すると0.72のガスマスフラクションを与えた。
【0060】
実施例 4
本実施例は、運転席のガス発生装置をシミュレートするのに使用される再使用可能なステンレス鋼製試験用取り付け具の製造を開示する。この試験用取り付け具、すなわちシミュレーターは、点火室および燃焼室から構成された。点火室は中心に配置され、燃焼室へ、24個の0.10インチ直径の入り口が存在した。点火室は点火スキブが取り付けられていた。点火室壁は0.001インチ厚さのアルミニウム箔を内張し、それから−24/60メッシュ点火穎粒を加えた。外側の燃焼室壁は9個の出口を備えたリングから構成された。出口の直径はリングを変更することにより変動した。外側燃焼室リングの内径から、燃焼室は0.004インチアルミニウムシム、30メッシュステンレス鋼製スクリーンの一巻き、14メッシュステンレス鋼製スクリーンの四巻き、デフレクターリングおよびガス発生剤を設置した。このガス発生剤は18メッシュスデンレス鋼スクリーンの「ドーナツ」を使用する燃焼室内で無傷性を保持した。追加のデフレクターリングを、外側燃焼室壁の外径の周りに配置された。燃焼室に圧力口を備えた。シミュレーターを60リットルタンクまたは自動車のエアバッグのいずれかに取り付けた。タンクには圧力口、温度口、ガス抜き口および排水口が取り付けられていた。自動車エアバッグは最大55リットルの容量であり、二つの1/2インチ直径のガス抜き口で構成された。エアバッグを含むシミュレート試験はバッグの圧力を測定するような形状であった。バッグの外部皮層表面温度を、膨張が起こっている間、赤外線放射測定(infrared radiometry)、サーモグラフィー(thermal imaging)およびサーモカップルにより監視した。
【0061】
実施例 5
実施例3に記載したとおりに製造した、37.5gの1/8インチ直径のペレットを、実施例4に記載されている60リットル採取用タンク(30メッシュスクリーンの二巻きおよび18メッシュスクリーンの二巻きを含むスクリーンを備えた第二の室が追加的に組み合わせられている)中にガス抜きされるインフレーター試験装置中で燃焼させた。この燃焼により、2,000psigの燃焼室圧力および60リットル採取用タンク中で39psigの圧力を生じた。採取用タンク内のガスの温度は、20ミリ秒において最大670°Kに達した。60リットルタンク中に採取されたガスの分析は、窒素酸化物(NOx)が500ppm濃度および一酸化炭素が1.825ppm濃度であることを示した。メタノールでタンクを濯ぎ、この濯ぎ液を蒸発させることにより決定された総駆逐微粒子は1,000mgであることが分かった。
【0062】
実施例 6
60リットルのタンクを運転席の自動車用インフレーター抑制装置(inflator restraint device)に典型的に使用される55リットルのガス抜きバッグに置き換えた以外は、実施例4の試験を繰り返した。バッグが完全に膨張して、1,900psiaの燃焼室圧力を得た。点火後おおよそ60ミリ秒で、ピーク時に内部圧力が2psigであることが観察された。バッグの表面温度は83℃未満を維持したことが観察され、この温度は従来のアジド系インフレーターよりも改良されており、しかも、バッグの膨張性能は従来のシステムの代表的名ものと全く同等である。
【0063】
実施例 7
230ミリリットルの濃−水酸化アルミニウムおよび50ミリリットルの水中に116.3gの銅(II)ニトレートヘミペンタハイドレートを溶解させることにより銅テトラアンミンのニトレート塩を調製した。一旦、得られた温混合物を40℃に冷却したら、1リットルのエタノールを撹拌しながら加え、テトラアンミンニトレート生成物を沈殿させた。濾過、エタノールで洗浄および風乾することにより暗紫青色の固体を採取した。元素分析によりこの生成物がCu(NH(NOであることが確認された。圧縮した1/2インチ直径のペレットから決定されたこの物質の燃焼速度は1,000psigにおいて0.18インチ/秒であった。
【0064】
実施例 8
実施例7で調製したテトラアンミン銅ニトレートを種々の補助的酸化剤と配合し、燃焼速度について試験した。すべての場合に、10gの物質を約10ミリリットルのメタノールでスラリー化させ、乾燥させ、そして、1/2インチ直径のペレットに圧縮した。燃焼速度は1,000psigで測定し、結果を次表に示す。
【0065】
【表4】

【0066】
実施例 9
一定量のヘキサアンミンコバルト(III)ニトレートを、ヘキサアンミンコバルト(III)クロライドの調製手順(G. PassおよびH. Sutcliffe, Practical Inorganic Chemistry, 2nd Ed., Chapman & Hull, New York, 1974に教示)の塩化アンモニウムを硝酸アンモニウムに置き換えることにより調製した。調製した物質は元素分析により[Co(NH](NOであることが決定された。この物質の試料を1/2インチ直径のペレットに圧縮し、2,000psigにおいて0.26インチ/秒の燃焼速度が測定された。
【0067】
実施例 10
実施例9で調製した物質を使用して、燃料としてヘキサアンミンコバルト(III)ニトレートおよび酸化剤としてセリックアンモニウムニトレートを含有する、三ロットのガス発生剤を調製した。これらのロットは、プロセスの態様および添加剤の有無において異なる。燃焼速度は、1/2インチ直径燃焼速度ペレットから決定された。以下に結果の概要を示す。
【0068】
【表5】

【0069】
実施例 11
実施例9で調製された物質を使用して、種々の補助酸化剤を利用して発生剤組成物の数種の10g混合物を調製した。すべての場合に、適当量のヘキサアンミンコバルト(III)ニトレートおよび共−酸化剤(単独または複数種)をおおよそ10ミリリットルのメタノール中にブレンドし、乾燥させ、1/2インチ直径のペレットに圧縮した。各ペレットの燃焼速度を1,000psigにおいて試験し、その結果を次の表に示す。
【0070】
【表6】

【0071】
実施例 12
ヘキサアンミンコバルト(III)ニトレート(“NACN”)および種々の補助酸化剤の二成分組成物を20gバッチにブレンドした。これらの組成物を200°Fで72時間乾燥させ、1/2インチ直径ペレットに圧縮した。1000〜4000psiの異なる圧力で1/2インチペレットを燃焼させることたより燃焼速度を決定した。結果を次の表に示す。
【0072】
【表7】

【0073】
実施例 13
実験室規模においてガス発生剤の小さな平行六面体(parallelepipeds:“pps.”)を調製するための処理方法を考案した。このppsを形成し、切断するために必要な装置には切断用テーブル、ローラーおよび切断具等がある。切断用テーブルは、長さ方向の辺に沿ってテープ状に貼った0.5インチ幅の紙製スペーサーを有する9インチ×18インチ金属シートから構成された。このスペーサーの累積高さは0.043インチであった。ローラーは、長さ1フィート、直径2インチのテフロン(登録商標)製筒から構成された。切断具は、シャフト、切断用刃およびスペーサーから構成された。シャフトは、1/4インチボルトに一連の17個の、3/4インチの直径、0.005インチ厚さのステンレス鋼製のワッシャーを切断用刃として配置したものであった。各切断用刃の間に、4個の2/3インチ直径、0.020インチ厚さの黄銅製スペーサーワッシャーを配置し、一連のワッシャーをナットにより固定した。円形の切断用刃間の繰り返し距離は0.085インチであった。
【0074】
水溶性バインダーを含有するガス発生剤組成物を乾式混合し、次いで、50〜70gのバッチを、混合されたとき、物質がドウのようなコンシステンシーを有するのに足る充分な水と5分間Spexミキサー/ミルで混合した。
【0075】
ベロスタットプラスチック(velostat plastic)のシートを切断用テーブルにテープ状に貼り、水と混合した発生剤のドウ球状物をプラスチック上に手で平らにした。ポリエチレンプラスチックのシートを発生剤ミックス上に置いた。ローラーを切断用テーブル上のスペーサーに対して平行に配置し、ドウを約5インチの幅に平らにした。次いで、ローラーを90度回転させ、スペーサーの上に配置し、ドウを切断用テーブルスペーサーが許容できる最大の薄さまで平らにした。ポリエチレンプラスチックを発生剤から注意して剥がし、切断器具を使用して縦、横両方向にドウを切断した。
【0076】
発生剤のロール掛けおよび切断に用いたベロメスタットプラスチックシートを切断用テーブルからはずし、135°Fの対流式オーブン中に4インチ直径の円筒上に長手方向に配置した。約10分後、シートをオーブンから取り出し、1/2インチ直径の棒上に、プラスチックシートの両端が棒に対して鋭角を形成するように配置した。プラスチックを棒上を、平行六面体(pps)間の切目を拡げるように前後に動かした。シートを135°F対流式オーブン中で前記の4インチ直径筒上に横幅方向に配置し、さらに5分間乾燥させた。前と同様前記の1/2インチ直径の棒上でpps間の切面を拡げた。この時点では、プラスチックからppsを離すのは極めて容易であった。ppsを1パイント計量カップ中または12メッシュの篩のスクリーン上で穏やかに擦ることによりさらに互いに分離した。この方法により、ppsは大半がシングレットに、そして残りがダブレットに分離した。レーザー刃を使用してダブレットをシングレットに分割した。次いで、ppsを165〜225°Fの対流式オーブン中に置き、それらを完全に乾燥させた。このようにして形成したppsの破壊強度(各辺における)は、典型的には、回転式圧縮装置で形成した曲率半径1/4インチの凸面を有し、最大高さ0.070インチの1/8インチ直径のペレットと同じぐらいの強度かまたはそれよりも大きい。これは、後者の方のかさが3倍大きいことを考えると注目すべきことである。
【0077】
実施例 14
ヘキサアンミンコバルト(III)ニトレート([(NHCo](NO)粉末(78.07%、39.04g)、硝酸アンモニウム穎粒(19.93%、9.96g)および粉砕ポリアクリルアミド(MW1500万)(2.00%、1.・(00g)を利用してガス発生剤組成物を調製した。これらの成分を1分間Spexミキサー/ミル中で乾燥ブレンドした。脱イオン水(配合物の乾燥重量6gの12%)を、Spexミキサー/ミル上でさらに5分間ブレンドした混合物に加えた。これにより、実施例13と同様にして平行六面体に処理したドウ様コンシステンシーを有する物質を得た。発生剤の追加の3バッチを同様に混合して処理をした。4バッチからのppsをブレンドした。ppsの寸法は、0.052インチ×0.072インチ×0.084インチであった。各寸法の標準偏差は0.010インチ程度であった。ppsの平均重量は6.62mgであった。嵩密度、寸法測定により決定した密度および溶媒置換により測定した密度は、各々、0.86g/cc、1.289/ccおよび1.599/ccであると決定された。圧潰強度が1.7kgであると測定され(最短端部)、標準偏差は0.7kgであった。いくつかのppsは1/2インチ直径のペレットに圧縮され、約3gであった。これらのペレットから、燃焼速度が1000psiにおいて0.13ipsであることが決定され、圧力指数が0.78であった。
【0078】
実施例 15
実施例4に従って、シミュレーターを構成した。Mg/Sr(NO/ナイロン点火剤の化学量論的ブレンド2gを点火室に入れた。外側燃焼室の壁を出る口の直径は3/16インチであった。平行六面体の形態の実施例14に記載した30gの発生剤を燃焼室中に固定した。実施例4に記載した60リットルタンクにシミュレーターを取り付けた。点火後、燃焼室は17ミリ秒内に2300psiaの最大圧力に達し、60リットルタンクは34psiaの最大圧力に達し、そしてタンクの最大温度は640°Kであった。NOx、COおよびNHレベルは、各々20、380および170ppmであり、1600mgの微粒子がタンクから採取された。
【0079】
実施例 16
実施例15におけると正確に同じ点火剤ならびに発生剤の種類および添加量を用いてシミュレードを構成した。さらに、外側燃焼室出口の直径は同一であった。冷実施例4に記載した種類の自動車用安全バッグにシミュレーターを取り付けた。点火後、燃焼室は15ミリ秒内に2000psiaの最大圧力に達した。膨張したエアバッグの最大圧力は0.9psiaであった。この圧力は点火後18ミリ秒内に達した。バッグ表面の最大温度は67℃であった。
【0080】
実施例 17
ヘキサアンミンコバルト(III)ニトレート粉末(76.29%、76.29g)、硝酸アンモニウム穎粒(15.71%、15.71g、Dynamit Nobel、穎粒寸法:<350ミクロン)、熱的冶金処理により(pyrometallurgically)形成された酸化銅(II)粉末(5.00%、5.00g)およびグアーゴム(3.00%、3.00g)を利用してガス発生剤組成物を調製した。これらの成分を1分間Spexミキサー/ミル中で乾燥ブレンドした。脱イオン水(配合物の乾燥重量9gの18%)を、Spexミキサー/ミルでさらに5分間ブレンドした。これにより、実施例13と同様に平行六面体(pps.)に処理したドウ様コンシステンシーを有する物質を得た。509の乾燥ブレンドした他の発生剤について同じ処理を繰り返し、ppsの2バッチを一緒にブレンドした。ブレンドしたppsの平均寸法は、0.070インチ×0.081インチ×0.088インチであった。各寸法の標準偏差は0.010インチ程度であった。ppsの平均重量は9.60mgであった。嵩密度、寸法測定により決定した密度および溶媒置換により測定した密度は、各々、0.96g/cc、1.17g/ccおよび1.73g/ccであると決定された。圧潰強度が5.Okgであると測定され(最短端部)、標準偏差は2.5kgであった。いくつかのppsを1/2インチ直径のペレットに圧縮し、それは約3gであった。これらのペレットから、燃焼速度が1000psiにおいて0.20ipsであることが決定され、圧力指数が0.67であった。
【0081】
実施例 18
実施例4に従ってシミュレーターを作成した。化学量論比のMg/Sr(NO/ナイロンブレンド1グラムと僅かに過剰酸化された(over-oxidized)B/KNO点火剤のか粒2グラムとをブレンドし、点火剤チャンバーに入れた。外側燃焼チャンバー壁を出る出口の直径は0.166インチであった。実施例17に記載した、平行六面体形状の発生剤30グラムを燃焼チャンバー内に固定した。上記シミュレーターを実施例4に記載した60Lのタンクに取り付けた。点火後に、燃焼チャンバーは8ミリセカンドで2540psiaと言う最大圧力に達し、また60Lタンクは36psiaと言う最大圧力に達し、そして最高タンク温度は600°Kであった。NOx、CO及びNHのレベルはそれぞれ50、480及び800ppmであり、そのタンクから採集された微粒子は240mgであった。
【0082】
実施例 19
実施例18のものと正確に同じタイプの点火剤及び発生剤と装填重量を用いてシミュレーターを作成した。更に、外側燃焼チャンバー出口の直径も同一であった。このシミュレーターを実施例4に記載したタイプの自動車用安全バッグに取り付けた。点火後に、燃焼チャンバーは9ミリセカンドで2700psiaと言う最大圧力に達した。膨張したエアバッグの最大圧力は2.3psigであった。この圧力は点火30ミリセカンド後に達せられた。最高バッグ表面温度は73℃であった。
【0083】
実施例 20
ヘキサアンミンコバルト(III)・ニトレート粉末(69.50%、347.5g)、銅(II)トリヒドロキシ・ニトレート[Cu(OH)NO]粉末(21.5%、107.5g)、10ミクロンのRDX(5.00%、25g)、26ミクロンの硝酸カリウム(1.00%、5g)及びガーガム(3.00%、3.009)を用いてガス発生組成物を調製した。それらの成分は60メッシュの節の助けを借りてドライブレンドされた。この混合物65gに脱イオン水(調合物の乾燥重量に対して23%、15g)を加え、この混合物をスペックス(Spex)ミキサー/ミルで更に5分間ブレンドした。この結果、ドウに似た稠度を有する材料が得られ、これを実施例13におけるようにして平行六面体(pps)に加工した。この同じ方法をドライブレンドされた発生剤の更に2バッチ(1バッチ65g)について繰り返し、得られたppsの3バッチを一緒にブレンドした。そのppsの平均寸法は0.057×0.078×0.084インチであった。各寸法の標準偏差は0.010インチのオーダーであった。このppsの平均重量は7.22gであった。嵩密度、寸法測定により求めた密度及び溶媒置換法で求めた密度は、それぞれ0.96g/cc、1,23g/cc及び1.74g/ccであることが確認された。粉砕強さは(最も狭い縁で)3.6kgと測定され、その標準偏差は0.9kgであった。このppsの一部を直径1/2インチで、重さが約3グラムのペレットに加圧成形した。これらのペレットから燃焼速度を求めると、1000psiにおいて0.27ipsで、その圧力べき指数は0.51であった。
【0084】
実施例 21
実施例4に従ってシミュレーターを作成した。化学量論比のMg/Sr(NO/ナイロンブレンド1.5グラムと僅かに過剰酸化されたB/KNO点火剤のか粒1.5グラムとをブレンドし、点火剤チャンバーに入れた。外側燃焼チャンバー壁を出る出口の直径は0.177インチであった。実施例20に記載した、平行六面体形状の発生剤30グラムを燃焼チャンバー内に固定した。上記シミュレーターを実施例4に記載した60Lのタンクに取り付けた。点火後に、燃焼チャンバーは14ミリセカンドで3050psiaと言う最大圧力に達した。NOx、CO及びNHのレベルはそれぞれ25、800及び90ppmであり、そのタンクから採集された微粒子は890mgであった。
【0085】
実施例 22
ヘキサアンミンコバルト(III)・ニトレート粉末(78.00%、457.9g)、銅(II)トリヒドロキシ・ニトレート粉末(19.00%、111.5g)及びガーガム(3.00%、17.619)を用いてガス発生組成物を調製した。それらの成分をドライブレンドし、次いで水(調合物の乾燥重量に対して32.5%、191g)とべーカー−パーキンス・パイントミキサー(Baker−Perkins pint mixer)中で30分間混合した。得られた濡れたケークの一部(220g)に追加の銅(II)トリヒドロキシ・ニトレート9.2g及び追加のガーガム0.30g、並びにカーボンブラック[モナーチ(Monarch)1100]0.80gを加えた。この新しい調合物をべ一カー−パーキンス・ミキサーで30分間ブレンドした。この濡れたケークをバレル直径2インチ、ダイ・オリフィスの直径3/32インチ(0.09038インチ)のラム押出機に入れた。押し出された材料を約1フィートの長さに切断し、周囲条件下で一晩乾燥させ、水が入っている密閉容器に入れてその材料を湿らせ、かくして軟化させ、約0.1インチの長さに切断し、そして165°Fで乾燥した。得られた押出円柱物の寸法は平均長さ0.113インチ、平均直径0.091インチであった。嵩密度、寸法測定により求めた密度及び溶媒置換法で求めた密度は、それぞれ0.86g/cc、1.30g/cc及び1.61g/ccであった。粉砕強さは円周方向及び軸方向でそれぞれ2.1kg及び4.1kgと測定された。押し出された円柱物の一部を直径1/2インチで、重さが約3グラムのペレットに加圧成形した。これらのペレットから燃焼速度を求めると、1000psiにおいて0.22ipsで、その圧力べき指数は0.29であった。
【0086】
実施例 23
実施例4に従って3つのシミュレーターを作成した。化学量論比のMg/Sr(NO/ナイロンブレンド1.5グラムと僅かに過剰酸化されたB/KNO点火剤のか粒1.5グラムとをブレンドし、点火剤チャンバーに入れた。外側 へ/燃焼チャンバー壁を出る出口の直径は、それぞれ0.177インチ、0.166インチ及び0.152インチであった。実施例22に記載した、押出円柱物の形の発生剤30グラムを燃焼チャンバーの各々の中に固定した。上記シミュレーターを連続して実施例4に記載した60Lのタンクに取り付けた。点火後に、燃焼チャンバーはそれぞれ1585、1665及び1900psiaと言う最大圧力に達した。タンクの最大圧力はそれぞれ32、34及び35psiaであった。NOxレベルはそれぞれ85、180及び185ppmであったが、これに対してCOレベルはそれぞれ540、600及び600ppmであった。NHレベルは2ppm未満であった。微粒子のレベルはそれぞれ420、350及び360mgであった。
【0087】
実施例 24
ガス発生剤調合物に少量の炭素を添加すると、実施例13又は実施例22におけるようにして形成された平行六面体ペレット及び押出ペレットの粉砕強さが改良されることが見いだされた。次の表は、本発明の範囲内の代表的なガス発生剤組成物に対する炭素の添加による粉砕強さの向上をまとめて示すものである。百分率は全て重量パーセントとして表される。
【0088】
【表8】

【0089】
実施例 25
ヘキサアンミンコバルト(III)・ニトレートを直径が1/2インチで4グラムのペレットに加圧成形した。ペレットの半数を秤量し、95℃のオーブンに700時間入れて置いた。エージング後、それらペレットをもう一度秤量した。重量減は観察されなかった。周囲温度に保持されたこのペレットの燃焼速度は1000psiにおいて0.16ipsで、その圧力べき指数は0.60であった。
【0090】
実施例 26
ヘキサアンミンコバルト(III)・ニトレート粉末(76.00%、273.6g)、銅(II)トリヒドロキシ・ニトレート粉末(16.00%、57.6g)、26ミクロンの硝酸カリウム(5.00%、18.00g)及びガーガム(3.00%、10.8g)を用いてガス発生組成物を調製した。この混合物65gに脱イオン水(調合物の乾燥重量に対して24.9%、16.2g)を加え、この混合物をスペックスミキサー/ミルで更に5分間ブレンドした。この結果、ドウに似た稠度を有する材料が得られ、これを実施例13におけるようにして平行六面体(pps)に加工した。この同じ方法をドライブレンドされた発生剤の他の50〜65gのバッチについて繰り返し、そして得られたppsの全バッチを一緒にブレンドした。そのppsの平均寸法は0.065×0.074×0.082インチであった。各寸法の標準偏差は0.005インチのオーダーであった。ppsの平均重量は7.42gであった。嵩密度、寸法測定により求めた密度及び溶媒置換法で求めた密度は、それぞれ0.86g/cc、1.15g/cc及び1.68g/ccであることが確認された。粉砕強さは(最も狭い縁で)2.1kgと測定され、その標準偏差は0.3kgであった。このppsの一部を直径1/2インチで、重さが約3グラムのペレット10個に加圧成形した。約60gのppsと直径1/2インチである5個のペレットを107℃に保持されたオーブンに入れた。この温度で450時間後に、それらppsとペレットにそれぞれ0.25%と0.41%の重量減が観察された。それらppsとペレットの残りを周囲条件下で貯蔵した。燃焼速度データーをこれら2組のペレットから得、これを表4にまとめて示す。
【0091】
【表9】

【0092】
実施例 27
実施例4に従って2つのシミュレーターを作成した。各点火剤チャンバーに、化学量論比のMg/Sr(NO/ナイロンブレンド1.5グラムと僅かに過剰酸化されたB/KNO点火剤のか粒1.5グラムとのブレンド混合物を入れた。各シミュレーターの外側燃焼チャンバー壁を出る出口の直径はそれぞれ0。177インチであった。実施例26に記載した、周囲条件でエージングした平行六面体形の発生剤30グラムを一方のシミュレーターの燃焼チャンバーの中に固定し、これに対して107℃でエージングされた発生剤pps30グラムを他方の燃焼チャンバーに入れた。これらシミュレーターを実施例4に記載した60Lのタンクに取り付けた。燃焼試験結果を以下の表5にまとめて示す。
【0093】
【表10】

【0094】
実施例 28
2Co(NH(NOとCo(NH(NOCo(NH(NOとの混合物を調製し、約0.504インチの直径を有するペレットに加圧成形した。上記の錯体は前記ハーゲル等の文献の教示範囲内で製造されたものであった。このペレットを試験ボンベに入れ、これを窒素ガスにより1,000psiまで加圧した。
【0095】
上記ペレットを電熱線で点火させ、燃焼速度を測定すると、0.38インチ/秒であることが観察された。理論計算は火炎温度が1805℃であることを示した。理論計算から、主反応生成物は固体のCoOとガス状反応生成物であると予測された。主ガス状反応生成物は次のとおりであると予測された:
【0096】
【表11】

【0097】
実施例 29
実施例1の教示に従ってある一定量のCo(NH(NOを製造し、示差走査測熱法を用いて試験した。この錯体は200℃において激しく発熱することが観察された。
【0098】
実施例 30
Co(NH(NOについて理論計算を行った。それらの計算は火炎温度が約2,000°Kであり、ガス発生量は、発生組成物の等容量基準で、常用のアジ化ナトリウム系ガス発生組成物の約1.77倍である(“性能比”)ことを示した。一連のガス発生組成物についても理論計算を行った。その組成と理論的性能データーを以下の表6に示す。
【0099】
【表12】

【0100】
実施例 31
表6に示した[Co(NH](ClOとCaHとの反応について理論計算を行って、混成ガス発生装置(hybrid gas generator)でのその使用について評・価した。この調合物をその重量に対して6.80倍の存在下、アルゴンガス中で燃焼させると、火炎温度は、100%の効率的な熱伝達であると仮定して、2577℃から1085℃に低下する。産生ガスは、アルゴン86.8容量%、塩化水素1600容量ppm、水10.2容量%及び窒素2.9容量%より成る。スラグの総重量は6.1質量%(% by mass)であるだろう。
【0101】
実施例 32
NHに加えて1種の普通のリガンドを含むペンタアンミンコバルト(III)・ニトレート錯体を合成した。アクオペンタアンミンコバルト(III)・ニトレート(aquopentaamminecobalt(III) nitrate)とペンタアンミンカーボナトコバルト(III)・ニトレートをInorg.Syn,、第4巻、第171頁(1973年)に従って合成した。ペンタアンミンヒドロキソコバルト(III)・ニトレートをH.J.S.キングのJ.Chem.Soc.、第2105頁(1925年)及び0.シュミッツ(O. Schmitz)等のZeit.Anorg.Chem.、第300巻、第186頁(1959年)に従って合成した。上記のペンタアンミンコバルト(III)・ニトレート錯体を用いて3ロットのガス発生剤を調製した。全てのケースでバインダーとしてガーガムを加えた。必要とされた場合は、銅(II)トリヒドロキシ・ニトレート[Cu(OH)NO]を共酸化剤として加えた。燃焼速度を直径1/2インチの燃焼速度測定用ペレットから求めた。結果を以下の表7にまとめて示す。
【0102】
【表13】

【0103】
要約
要約すると、本発明は、常用のアジド系ガス発生組成物の制限の一部を克服するガス発生材料を提供するものである。本発明の錯体は水蒸気、酸素及び窒素を含めて毒性のないガス状生成物を生成させる。この錯体のある種ものは、また、金属又は金属酸化物と窒素及び水蒸気とに効率的に分解することができる。最後に、反応温度と燃焼速度は許容範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錯体の燃焼時に窒素ガスと水蒸気とを含むガスの混合物が生成せしめられる、アンモニアを含んでなる無機の中性リガンドと金属カチオンとの錯体;及び
該金属カチオンの電荷をバランスさせるのに足る十分な酸化性アニオン
を含んでなるガス発生組成物であって、該錯体が約48.5〜約100重量%未満である、前記ガス発生組成物。
【請求項2】
金属カチオンが遷移金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、半金属カチオン又はランタニド金属カチオンである、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項3】
遷移金属カチオンがロジウム、イリジウム、ルテニウム、パラジウム及び白金よりなる群から選ばれる、請求項2に記載のガス発生組成物。
【請求項4】
錯体が、金属亜硝酸塩アンミン、金属硝酸塩アンミン、金属過塩素酸塩アンミン、金属亜硝酸塩ヒドラジン、金属硝酸塩ヒドラジン、金属過塩素酸塩ヒドラジン及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項5】
金属カチオンがマグネシウム、マンガン、ニッケル、チタン、銅、クロム、亜鉛及び錫より成る群から選ばれる、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項6】
金属カチオンがコバルトである、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項7】
酸化性アニオンが金属カチオンと配位結合されている、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項8】
酸化性アニオンが硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、ペルオキシドイオン、スーパーオキシドイオン及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項9】
酸化性アニオン及び無機の中性リガンドが炭素を含んでいない、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項10】
錯体が中性リガンドに加えて少なくとも1種の普通のリガンドを含んでいる、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの普通のリガンドがアクオ(HO)、ヒドロキソ(OH)、ペルヒドロキソ(OH)、ペルオキソ(O)、カーボナト(CO)、カルボニル(CO)、オキサラト(C)、ニトロシル(NO)、シアノ(CN)、イソシアナト(NC)、イソチオシアナト(NCS)、チオシアナト(SCN)、アミド(NH)、イミド(NH)、スルファト(SO)、クロロ(Cl)、フルオロ(F)、ホスファト(PO)及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の各リガンドよりなる群から選ばれる、請求項10に記載のガス発生組成物。
【請求項12】
錯体が酸化性アニオンに加えて普通の対イオンを含んでいる、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項13】
普通の対イオンがヒドロキシド(OH)、クロリド(Cl)、フルオリド(F)、シアニド(CN)、チオシアネート(SCN)、カーボネート(CO−2)、スルフェート(SO−2)、ホスフェート(PO−3)、オキサレート(C−2)、ボレート(BO−5)及びアンモニウム(NH)の各対イオンよりなる群から選ばれる、請求項12に記載のガス発生組成物。
【請求項14】
結合した錯体と酸化性アニオンとのガス発生組成物中の濃度が50〜80重量%であり、該バインダーの該ガス発生組成物中の濃度が0.5〜10重量%であり、かつ該共酸化剤の該ガス発生組成物中の濃度が5〜50重量%である、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項15】
共酸化剤がアルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド金属、又は過塩素酸アンモニウム、塩素酸アンモニウム、アンモニウムペルオキシド、亜硝酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムから選ばれる、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項16】
共酸化剤が金属酸化物、金属水酸化物、金属ペルオキシド、金属酸化物の水和物、金属酸化物・水酸化物、金属含水酸化物、塩基性金属炭酸塩、塩基性金属硝酸塩及びそれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項17】
共酸化剤が、銅、コバルト、マンガン、タングステン、ビスマス、モリブデン及び鉄の酸化物よりなる群から選ばれる、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項18】
共酸化剤がCuO、Co、Co、CoFe、Fe、MoO、BiMoO及びBiよりなる群から選ばれる金属酸化物である、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項19】
共酸化剤がFe(OH)、Co(OH)、Co(OH)、Ni(OH)、Cu(OH)及びZn(OH)よりなる群から選ばれる金属水酸化物である、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項20】
共酸化剤がFe・xHO、SnO・xHO及びMoO・HOよりなる群から選ばれる金属酸化物の水和物又は金属含水酸化物である、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項21】
共酸化剤がCoO(OH)、FeO(OH)、MnO(OH)及びMnO(OH)よりなる群から選ばれる金属酸化物・水酸化物である、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項22】
共酸化剤がCuCO・Cu(OH)(孔雀石)、Co(CO)・Co(OH)・HO、Co0.69Fe0.34(CO0.2(OH)、Na[Co(CO]・O、Zn(CO)(OH)、BiMg(CO(OH)、Fe(CO0.12(OH)2.76、Cu1.54Zn0.46(CO)(OH)、Co0.49Cu0.51(CO0.43(OH)1.1、TiBi(CO(OH)(HO)及び(BiO)COよりなる群から選ばれる塩基性金属炭酸塩である、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項23】
共酸化剤がCu(OH)NO、Co(OH)NO、CuCo(OH)NO,Zn(OH)NO,Mn(OH)NO,Fe(OH)11NO・2HO、Mo(NO、BiONO・HO及びCe(OH)(NO・3HOよりなる群から選ばれる塩基性金属硝酸塩である請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項24】
バインダーが水溶性である、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項25】
バインダーが天然産のガム、ポリアクリル酸類及びポリアクリルアミド類よりなる群から選ばれる、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項26】
バインダーが水溶性でない、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項27】
バインダーがニトロセルロース、VAAR及びナイロンよりなる群から選ばれる、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項28】
錯体がヘキサアンミンコバルト(III)・ニトレート([(NHCo](NO)であり、共酸化剤が銅(II)トリヒドロキシ・ニトレート(Cu(OH)NO)である、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項29】
炭素粉末を更に含み、該炭素粉末はガス発生組成物に対して0.1〜6重量%存在し、該組成物が炭素粉末を含まない組成物に比較して改良された粉砕強さを示す、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項30】
炭素粉末を更に含み、該炭素粉末はガス発生組成物に対して0.3〜3重量%存在している、請求項1に記載のガス発生組成物。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれか1項に記載のガス発生組成物を燃焼させることを含んでなる、エアバッグの膨張法。
【請求項32】
請求項1〜30のいずれか1項に記載のガス発生組成物;及び
該組成物の燃焼を開始させる手段
を含んで成るガス発生装置。
【請求項33】
燃焼開始手段がMg/Sr(NO/ナイロンとB/KNOの混合物を含んで成る点火剤組成物を含有する、請求項32に記載のガス発生装置。
【請求項34】
折り畳まれた膨張性のエアバッグ;
該エアバッグに連結された、該エアバッグを膨張させるためのガス発生装置であって、請求項1〜30のいずれか1項に記載のガス発生組成物を含むガス発生装置;及び
該ガス発生組成物を点火させるための手段
を含んで成る自動車のエアバッグシステム。
【請求項35】
折り畳まれた膨張性のエアバッグ;
該エアバッグに連結された、該エアバッグを膨張させるためのガス発生装置であって、請求項1〜30のいずれか1項に記載のガス発生組成物を含むガス発生装置;及び
該ガス発生組成物を点火させるための手段
を含んで成るエアバッグシステムを備える補助束縛システムを含んでいる車両。

【公開番号】特開2009−120481(P2009−120481A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5725(P2009−5725)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【分割の表示】特願平9−507900の分割
【原出願日】平成8年7月23日(1996.7.23)
【出願人】(598174370)アライアント・テクシステムズ・インコーポレーテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】Alliant Techsystems Inc.
【Fターム(参考)】