説明

ガス発生剤組成物

【課題】 排ガスの清浄化度が高められたガス発生剤組成物の提供。
【解決手段】
燃料及び酸化剤に対して、更に塩基性炭酸マグネシウムを含有しており、前記塩基性炭酸マグネシウムの含有量が20質量%未満であるガス発生剤組成物。排ガス中の窒素酸化物、アンモニア、一酸化炭素濃度を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置用のガス発生器に使用できるガス発生剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス発生器から発生するガスの清浄化(窒素酸化物、アンモニア、一酸化炭素濃度を低減すること)を目的として、グアニジン硝酸塩と塩基性硝酸銅を含むガス発生剤を用いることが知られている。その他、燃料として5−アミノテトラゾール、酸化剤として塩基性硝酸銅を用いることも知られている。
【0003】
特許文献1では、テトラゾール類、グアニジン類、硝酸塩、過塩素酸塩、塩基性炭酸塩を含み、塩基性炭酸塩の含有量が20質量%を超え、40質量%以下であるガス発生剤組成物が開示されている。
【特許文献1】特開2006−76849号公報
【特許文献2】特開2002−12493号公報
【特許文献3】特開2004−67424号公報
【特許文献4】WO03/16244
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、排ガスの清浄化の程度を高めることができ、エアバッグ装置のガス発生器用として好適なガス発生剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、課題の解決手段として、燃料及び酸化剤に対して、更に塩基性炭酸マグネシウムを含有しており、前記塩基性炭酸マグネシウムの含有量が20質量%未満であるガス発生剤組成物を提供する。
【0006】
請求項2の発明は、課題の他の解決手段として、前記塩基性炭酸マグネシウムの含有量が18質量%以下である、請求項1記載のガス発生剤組成物を提供する。
【0007】
請求項3の発明は、課題の他の解決手段として、前記酸化剤が塩基性硝酸銅を含有している、請求項1又は2記載のガス発生剤組成物を提供する。
【0008】
請求項4の発明は、課題の他の解決手段として、前記燃料が、メラミン、メラミンシアヌレート、グアニジン硝酸塩及びニトログアニジンから選ばれるものである、請求項1〜3のいずれかに記載のガス発生剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガス発生剤組成物を用いることにより、排ガスの清浄化度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いる燃料は、公知のガス発生剤で使用している含窒素化合物等を用いることができるが(例えば、特許文献2〜4に記載のもの)、これらの中でもメラミン、メラミンシアヌレート、グアニジン硝酸塩及びニトログアニジンから選ばれる1種又は2種以上のものが好ましい。
【0011】
組成物中の燃料の含有量は、10〜55質量%が好ましく、12〜50質量%がより好ましく、14〜45質量%が更に好ましい。
【0012】
本発明で用いる酸化剤は、公知のガス発生剤で使用しているものを用いることができるが(例えば、特許文献2〜4に記載のもの)、それらの中でも、塩基性硝酸銅、塩基性炭酸銅、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸ストロンチウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸アンモニウムから選ばれる1種又は2種以上のものが好ましい。
【0013】
組成物中の酸化剤の含有量は、30〜85質量%が好ましく、35〜80質量%がより好ましく、40〜75質量%が更に好ましい。
【0014】
本発明では、燃料及び酸化剤に加えて、更に塩基性炭酸マグネシウムを含有している。塩基性炭酸マグネシウムは、燃焼時に酸化マグネシウムに変化するが、酸化マグネシウムは安定な化合物であり、塩基性硝酸銅や塩基性炭酸銅のように酸化剤として機能するものではなく、排ガスを清浄化するように作用する成分であると考えられる。
【0015】
組成物中の塩基性炭酸マグネシウムの含有量は、20質量%未満であり、好ましくは18質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。下限値は2質量%以上が好ましい。
【0016】
本発明のガス発生剤組成物には、必要に応じて、公知のバインダを配合することができる。公知のバインダとしては、カラギナン、ペクチン、アルギニン・カルボマー、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、キサンタンガム、グアガム、アラビアガム、シクロデキストリン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカリウム塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースアンモニウム塩、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミドのアミノ化物、ポリアクリルヒドラジド、アクリルアミド・アクリル酸金属塩共重合体、ポリアクリルアミド・ポリアクリル酸エステル化合物の共重合体、ポリビニルアルコール、アクリルゴム、デンプン、シリコーン等を挙げることができる。
【0017】
これらの中でも、排ガスの清浄化度を高める観点から、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩が好ましい。
【0018】
添加剤としては、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化ビスマス、シリカ、アルミナを含む金属酸化物、水酸化コバルト、水酸化鉄を含む金属水酸化物;炭酸コバルト、炭酸カルシウム;酸性白土、カオリン、タルク、ベントナイト、ケイソウ土、ヒドロタルサイトを含む金属酸化物又は水酸化物の複合化合物;ケイ酸ナトリウム、マイカモリブデン酸塩、モリブデン酸コバルト、モリブデン酸アンモニウム等の金属酸塩;シリコーン、二硫化モリブデン、ステアリン酸カルシウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等を挙げることができる。
【0019】
本発明のガス発生剤組成物は、所望の形状に成型することができ、単孔円柱状、多孔円柱状又はペレット状の成型体にすることができる。
【0020】
これらの成型体は、ガス発生剤組成物に水又は有機溶媒を添加混合し、押出成型する方法(単孔円柱状、多孔円柱状の成型体)又は打錠機等を用いて圧縮成型する方法(ペレット状の成型体)により製造することができる。単孔円柱状、多孔円柱状のものは、孔が長さ方向に貫通しているもの、孔が貫通せずに窪みを形成しているもののいずれでもよい。
【0021】
本発明のガス発生剤組成物又はそれから得られる成型体は、例えば、各種乗り物の運転席のエアバック用インフレータ、助手席のエアバック用インフレータ、サイドエアバック用インフレータ、インフレータブルカーテン用インフレータ、ニーボルスター用インフレータ、インフレータブルシートベルト用インフレータ、チューブラーシステム用インフレータ、プリテンショナー用ガス発生器に適用できる。
【0022】
また本発明のガス発生剤組成物又はそれから得られる成型体を使用するインフレータは、ガスの供給が、ガス発生剤からだけのパイロタイプと、アルゴン等の圧縮ガスとガス発生剤の両方であるハイブリッドタイプのいずれでもよい。
【0023】
更に本発明のガス発生剤組成物又はそれから得られる成型体は、雷管やスクイブのエネルギーをガス発生剤に伝えるためのエンハンサ剤(又はブースター)等と呼ばれる着火剤
として用いることもできる。
【実施例】
【0024】
実施例及び比較例
表1に示す各成分からなるガス発生剤組成物を製造した。各ガス発生剤組成物を用い、下記の方法により、ガス濃度を測定した。
【0025】
(ガス濃度の測定法)
実施例及び比較例の組成物(表1に示す各成分からなる成型前の粉状態のもの)を所定の金型の臼側に充填し、杵側端面より油圧ポンプで圧力14.7MPaにて5秒間圧縮保持させた後に取り出し、外径9.55mm、長さ12.70mmの円柱状ストランドに成型した。その後、110℃で16時間乾燥した。この円柱状成型体の側面にエポキシ樹脂系化学反応形接着剤コニシ株式会社製「ボンドクイック30」を塗布し、側面から着火せず、端面のみから着火燃焼する(単面移動燃焼する)ようにしたものをサンプルとした。
【0026】
次に、サンプルとなる円柱状ストランド(質量2.00g)を内容積1LのSUS製密閉ボンブ内に設置して、ボンブ内を完全に窒素置換しながら、7MPaにまで加圧安定させた。その後、ストランド端面に接触させたニクロム線に所定の電流を流し、その溶断エネルギーにより着火、燃焼させた。60秒間待機し、ボンブ内のガスが均一になってから、所定の栓付きテドラーバッグの開栓部をボンブガス排出部に連結し、ボンブ内の燃焼ガスを移入させることでサンプリングし、ガステック株式会社製探知器GV-100Sを用いてガステック気体検知管(NO及びNO検知用:No,10、NH検知用:No,3L、CO検知用:No,1L)により、NO、NH、CO濃度を測定した。
【0027】
【表1】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料及び酸化剤に対して、更に塩基性炭酸マグネシウムを含有しており、前記塩基性炭酸マグネシウムの含有量が20質量%未満であるガス発生剤組成物。
【請求項2】
前記塩基性炭酸マグネシウムの含有量が18質量%以下である、請求項1記載のガス発生剤組成物。
【請求項3】
前記酸化剤が塩基性硝酸銅を含有している、請求項1又は2記載のガス発生剤組成物。
【請求項4】
前記燃料が、メラミン、メラミンシアヌレート、グアニジン硝酸塩及びニトログアニジンから選ばれるものである、請求項1〜3のいずれかに記載のガス発生剤組成物。




【公開番号】特開2008−156132(P2008−156132A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343707(P2006−343707)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】