説明

ガス絶縁計器用変圧器

【課題】圧力容器の径を変えることなく切離装置を追加装備可能な汎用性を持ちながら、確度階級の優れた鉄心断面積の大きい電圧変成要素を収納できるようにした。
【解決手段】圧力容器1内に絶縁ガスとともに三相分収納され、鉄心3に巻回される低圧巻線4および高圧巻線5、高電圧側に配置した電界緩和用のシールド6を有する電圧変成要素2と、切離装置または断路装置7とを有するガス絶縁計器用変圧器において、三相分の各電圧変成要素2を、圧力容器1内の同一平面上で中心部から等距離でかつほぼ正三角形に配置した状態で各電圧変成要素の中心軸を同一回転方向にほぼ同一角度θ2だけ傾斜させて変形三角形配置にし、かつ、各電圧変成要素2で囲まれた圧力容器1中心部の軸線上に切離装置または断路装置7の駆動用操作ロッド11を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁開閉装置の高電圧回路の電圧測定に用いられるガス絶縁計器用変圧器に係り、特に電圧変成要素の三相配列を工夫したガス絶縁計器用変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガス絶縁計器用変圧器はガス絶縁開閉装置(GIS)に接続して、高電圧回路の電圧変成を行う手段として設置され、ガス絶縁開閉装置を直流および交流絶縁試験する際には切離装置によって高圧回路から切り離されるようになっている。すなわち、ガス絶縁計器用変圧器は、切離装置を介して高圧回路に対して切り離しまたは接続するように構成されている。
【0003】
従来型のガス絶縁計器用変圧器の構成例を図4に示す。一般に三相用のガス絶縁計器用変圧器は、圧力容器1に閉磁路を構成する鉄心3と、その鉄心3の一脚に巻回された低圧巻線4と、この低圧巻線4の外周に同軸状に巻回された高圧巻線5と、高電圧側および接地電位側の電界緩和用のシールド6とから構成される電圧変成要素2を、三相分すなわち3個、SFガス等の絶縁性気体と共に納める構成を採用している。
【0004】
そして、圧力容器1は一般的に円筒状に形成されており、各相の電圧変成要素2を同一平面上で当該圧力容器1の中心部1cから等距離でしかも相互間の間隔を等しく配置する方式が一般的である。この等距離・等間隔に配置する方式として、図4に示すように各相の鉄心3の長手方向軸が圧力容器1の中心点1Cで交差する「鉄心Y配置」方式(例えば、特許文献1参照)と、図5に示すような各相の鉄心3の長手方向軸が圧力容器1の中心点1Cを囲むように三角形を形成する「鉄心Δ配置」の2種類が存在する(例えば、特許文献2、3参照)。
【0005】
「鉄心Y配置」は小型化に優れるが高精度な誤差特性を得ようとすると極端に圧力容器径が大きくなる。一方、「鉄心Δ配置」は「鉄心Y配置」に比べて誤差特性を犠牲にした小型化への特化は難しいが、高精度な誤差特性が要求された場合には「鉄心Y配置」よりも、配置的な工夫の余地が残されており、圧力容器1内空間の高効率利用が期待できる。
【0006】
また圧力容器1を小型化する手法として、図6に示すように電圧変成要素2の三相配列を工夫した手法が発明されている(例えば、特許文献4参照)。これは現在の主流となっている「鉄心Y配置」において、鉄心3の長手方向中心軸3Lを一律同方向に角度θ1だけ反時計方向にずれるように3個の電圧変成要素2を傾斜させると共に、各電圧変成要素2を圧力容器1の中心方向に寄せることで、さらに機器の小型化およびコストダウンを図ったものであり、高精度な誤差特性が要求されないガス絶縁計器用変圧器としては、極めて高い空間利用効率を達成している。以後、本方式を「鉄心変形Y配置」と称す。
【特許文献1】特開2003−7553号公報(図1)
【特許文献2】特開2002−84610号公報(図5〜図10)
【特許文献3】特開2002−313653号公報(図2、図10)
【特許文献4】特許第3387756号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献4に記載の「鉄心変形Y配置」は、鉄心サイズが圧力容器寸法を決定する主要因となる構造であるため、高精度な誤差特性を得ようと安易に鉄心断面積を大きくすることが難しい。つまり小型かつ誤差特性に優れたガス絶縁計器用変圧器が要求された場合、本配置方式は最適解と成り得ない。
【0008】
また、上記特許文献1〜3に記載されているように、近年のガス絶縁計器用変圧器は、圧力容器1内に高圧巻線5をガス絶縁開閉装置の主回路から切り離すための「切離装置」を内蔵しているが、「鉄心変形Y配置」の場合、圧力容器1の中心部に形成された空間が狭く、操作機構を駆動する操作ロッドを圧力容器1の中心部に配置する事が設計上難しい。逆に、操作ロッドを圧力容器1の中心部1Cに実装するために各電圧変成要素2を圧力容器1の外周方向に逃がすと圧力容器1の径寸法が大きくなるため、「切離装置」を備えているガス絶縁計器用変圧器と、「切離装置」を備えていない通常のガス絶縁計器用変圧器とが混在するガス絶縁開閉装置GISにおいては、母線寸法を最小寸法で統一できず、ガス絶縁開閉装置全体の効率設計を妨げる結果になる。
【0009】
そこで、本発明は上述した課題を解決するために、圧力容器の径を変えることなく切離装置を追加装備可能な汎用性を持ちながら、確度階級の優れた鉄心断面積の大きい電圧変成要素を収納できるようにしたガス絶縁計器用変圧器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明に係るガス絶縁計器用変圧器は、圧力容器と、当該圧力容器内に絶縁ガスとともに三相分収納され、鉄心に巻回される低圧巻線および高圧巻線、高電圧側に配置した電界緩和用のシールドを有する電圧変成要素と、前記圧力容器内に収納され、前記高圧巻線を高圧回路と接続あるいは開離するための切離装置または断路装置とを有するガス絶縁計器用変圧器において、前記三相分の各電圧変成要素を、前記圧力容器内の同一平面上で中心部から等距離でかつほぼ正三角形に配置した状態で各電圧変成要素の中心軸を同一回転方向にほぼ同一角度だけ傾斜させて変形三角形配置にし、かつ、各電圧変成要素で囲まれた前記圧力容器中心部の軸線上に前記切離装置または断路装置の駆動力伝達用の絶縁性操作ロッドを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧力容器の中心点を囲むように電圧変成要素を変形Δ状に配置するので、切離装置の操作機構を圧力容器の中心部に余裕をもって配置することが可能なガス絶縁計器用変圧器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明によるガス絶縁計器用変圧器の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は切離装置を内蔵した本実施形態のガス絶縁計器用変圧器の平面図、図2は図1で示した電圧変成要素の配置関係を示す平面図、図3は図1の側面図である。
【0013】
図1乃至図3において、1は、図示しないガス絶縁開閉装置の母線容器等に取付けられた円筒状の圧力容器であり、内部に三相分すなわち、3個の電圧変成要素2〜2を収納するとともに、SFガス等の絶縁性気体を充填している。
【0014】
上記の各電圧変成要素2〜2は、図2で示すように、電磁鋼板を所要の厚みに積層して閉磁路を形成する額縁状の鉄心3と、この鉄心3の一脚に対して巻回される低圧巻線4と、この低圧巻線4と同軸上に巻回される高圧巻線5と、高電圧側に配置した電界緩和用のシールド6と、図示しない接地電位側の電界緩和用のシールドとから構成されている。
【0015】
本発明では、前記電界緩和用の高圧シールド6の形状を、他相の電圧変成要素の加電、または接地電位部と対向する面の形状に合わせて両端部を膨らませ、しかも中央部を窪ませて滑らかな円弧面(R寸法)を有する凹面形状、若しくは中央部に対して両端部を膨らませて滑らかな円弧面(R寸法)を有する凹面形状とすることによって、他相との絶縁距離を確保しながら3個の電圧変成要素2〜2を圧力容器1の中心点1Cに極力近づくように配置すること、すなわち、電圧変成要素2〜2を中心点1Cに密集配置することを一つ目の特徴としている。なお、図中、DおよびWは、それぞれ高圧シールド6の外形寸法および幅寸法であり、前述の円弧面のR寸法と相まって、電圧変成要素2〜2を圧力容器1の中心点1Cに密集配置する場合のパラメータとなる。
【0016】
さらに、本発明では、電圧変成要素2〜2を、圧力容器1の中心点1Cを囲むように、変形三角形状(以下、本発明では、「変形Δ状」と称する)に配置したことを二つ目の特徴としている。ここで述べる「変形Δ状」とは、3個の電圧変成要素2〜2を圧力容器1の同一平面上でしかも、中心点1Cから等距離でかつ相互間の間隔を均等にして配置することにより、各鉄心3の長手方向中心軸3Lで正三角形(Δ)を作るように配置した状態において、各鉄心3の長手方向軸3Lを当該鉄心の中心点3Cを中心として一律に同一回転方向(例えば、反時計方向)に角度θ2だけ傾くように、3個の電圧変成要素2〜2を角度θ2だけ傾斜させた状態をいう。この傾斜角度θ2は10度〜20度くらいの角度が適切である。
【0017】
さらに、このように変形Δ状に配置された電圧変成要素2〜2の各鉄心3間に形成された空間部1Sを利用して、三相一括式の「切離装置または断路装置」(以下、切離装置で代表説明する)7を設ける(図1および図3を参照)。
【0018】
この切離装置7は、前述したように高圧巻線5を図示しないガス絶縁開閉装置の主回路と接続したり、あるいは開離したりするための装置であり、高圧巻線5および高圧シールド6に接続される固定電極8と、図示しないガス絶縁開閉装置の主回路母線に接続され、この固定電極8に接続あるいは開離(ON/OFF)する可動電極9と、各相の可動電極9を一括して操作するためのY字状をした絶縁性操作腕10と、この絶縁性操作腕10に連結され、圧力容器1の中心部1Cを通る軸線上に配置された駆動力伝達用の絶縁性操作ロッド11と、圧力容器1内の底部中心部領域に形成された空間部に配置されて前記絶縁性操作ロッド11を上下方向あるいは左右方向に操作する操作機構部12とから構成されている。
【0019】
以上のように構成した本発明のガス絶縁計器用変圧器によれば、圧力容器1の中心点1Cを囲むように電圧変成要素2〜2を「変形Δ状」に配置するので、誤差特性を改善させるために鉄心3の鉄心断面積を大きくした際に、圧力容器1の径方向への寸法増加の影響を最低限に抑えることができる。
【0020】
また、電界緩和用の高圧シールド6の形状を、他相形状に合わせて両端部が膨らんだ凹型形状とすることにより、他相との絶縁距離を確保しながら3個の電圧変成要素2〜2を密集配置することが可能となる。この結果、高精度な誤差特性を持つガス絶縁計器用変圧器を最低限の圧力容器寸法の増加で実現することができる。
また、切離装置7の絶縁性操作ロッド11を圧力容器1の中心部1Cの中心部に形成された空間部1Sに無理なく配置することができる。
【0021】
さらに、絶縁性操作ロッド11は、通常圧力容器1の底部を貫通して容器外部に設置された操作機構部12と接続されているが、本実施形態によれば圧力容器1の内部底部の中心部領域に存在する十分大きな空間部に操作機構12を配置することによって、圧力容器1の長手方向の寸法を従来例よりも縮小することができる。このことは、ガス絶縁計器用変圧器が母線上端部に取付けられた屋内用ガス絶縁開閉装置等では、その全高を改善できるメリットは極めて大きい。
【0022】
このように通常のガス絶縁計器用変圧器と変わらないサイズにて、誤差特性に優れた切離装置内蔵式のガス絶縁計器用変圧器を構成することが可能となり、切離装置付のガス絶縁計器用変圧器と通常のガス絶縁計器用変圧器が混在してガス絶縁開閉装置に装着される場合でも、予め最小寸法に統一した母線設計をすることが可能となる。
【0023】
なお、上記と同様の理由で圧力容器を拡大することなく、鉄心の鉄心窓枠を広げることもでき、高圧巻線1段当りの巻回数を増すことで、高圧巻線の製作作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態におけるガス絶縁計器用変圧器の平面図。
【図2】図1の特に電圧変成要素の位置関係を示す図。
【図3】図1のガス絶縁計器用変圧器の側面図。
【図4】従来例1のガス絶縁計器用変圧器の平面図。
【図5】従来例2のガス絶縁計器用変圧器の平面図。
【図6】従来例3のガス絶縁計器用変圧器の平面図。
【符号の説明】
【0025】
1…圧力容器、2…電圧変成要素、3…鉄心、4…低圧巻線、5…高圧巻線、6…高圧シールド、7…切離装置または断路装置、8…固定接点、9…可動接点、10・・・操作腕、11…操作ロッド、12…操作機構。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器と、
当該圧力容器内に絶縁ガスとともに三相分収納され、鉄心に巻回される低圧巻線および高圧巻線、高電圧側に配置した電界緩和用のシールドを有する電圧変成要素と、 前記圧力容器内に収納され、前記高圧巻線を高圧回路と接続あるいは開離するための切離装置または断路装置とを有するガス絶縁計器用変圧器において、
前記三相分の各電圧変成要素を、前記圧力容器内の同一平面上で中心部から等距離でかつほぼ正三角形に配置した状態で各電圧変成要素の中心軸を同一回転方向にほぼ同一角度だけ傾斜させて変形三角形配置にし、かつ、各電圧変成要素で囲まれた前記圧力容器中心部の軸線上に前記切離装置または断路装置の駆動力伝達用の絶縁性操作ロッドを配置したことを特徴とするガス絶縁計器用変圧器。
【請求項2】
前記各電圧変成要素の高圧シールドは、他相の電圧変成要素の加電または接地電位部と対向する面を凹面形状としたことを特徴とする請求項1記載のガス絶縁計器用変圧器。
【請求項3】
前記切離装置または断路装置の駆動力伝達用の絶縁性操作ロッドを操作する操作機構を、前記圧力容器底部の中心部領域に形成された空間部に配置したことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のガス絶縁計器用変圧器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−53409(P2008−53409A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227528(P2006−227528)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】