説明

ガス絶縁電気機器

【課題】液化したガス絶縁媒体を再気化させて強制的に碍管中に噴出させ、寒冷地で使用しても絶縁信頼性を維持できるガス絶縁電気機器を提供する。
【解決手段】操作ロッド4等の機器部材を内部に配置する碍管3の下端部に端部板5を取り付け、碍管の内部にガス絶縁媒体を充填している。端部板5には、碍管3の内部と連通して液化したガス絶縁媒体を重力で自然落下させて導く配管10を設けている。この配管10に、液化したガス絶縁媒体を再気化させるヒータ11を備え、しかもヒータ11ガス排出側に、再気化させたガス絶縁媒体を碍管の内部に噴出させるガス送風ブロア12を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は碍管内にガス絶縁媒体を充填するガス絶縁遮断器やガス絶縁開閉装置等のガス絶縁電気機器に係り、特に液化したガス絶縁媒体を加熱手段で気化させて碍管内に再循環するガス絶縁電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ガス絶縁遮断器やガス絶縁開閉装置等のガス絶縁電気機器は、発電所や変電所に据え付けて電力系統に接続して使用する。この種のガス絶縁電気機器は、外気温度が高温となる場所ばかりでなく、当然のことながら寒冷地にも据え付けて使用する。
【0003】
ガス絶縁電気機器のうち、例えば碍子型のガス絶縁遮断器は、支持架台上に設ける碍管内に内部に機器本体を配置し、絶縁特性の良好な例えば六弗化硫黄(以下「SF」と略称する。)ガス等のガス絶縁媒体を充填して構成している。ガス絶縁媒体として使用するSFガスの場合、常温で4から5気圧の圧力にて充填している。
【0004】
一般に、SFガスは充填した内部圧力の程度によって変化するが、−20℃以下の温度で液化を開始する。したがって、このような外気温度となる寒冷地で使用するガス絶縁電気機器では、SFガスが凝縮する液化が起こり、碍管の内壁面に液滴となって付着し、ついには碍管の下方に流れ落ちてしまい、碍管内部のガス圧力が低くなってくる。
【0005】
このため、ガス絶縁電気機器内のガス絶縁媒体が液化してガス圧力が規定値以下になってくると、絶縁性能が次第に低下してしまい、ついには絶縁破壊の重大事故を引き起こす恐れがある。
【0006】
これを改善するため、碍管を用いたガス絶縁電気機器では、液化したガス絶縁媒体を加熱して再気化させることが行われている。例えば、特許文献1のガス絶縁電気機器装置では、碍管内の下方に液化ガス絶縁媒体を捕集する液溜めを形成しておき、配管の一方を下の液溜めにまた他方を上の碍管内に接続するように設け、この液溜めや配管の途中にヒータ等の加熱手段を設けておき、加熱手段により液化ガス絶縁媒体の再気化させて碍管内に戻すことが提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−62550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した特許文献1のガス絶縁電気機器は、液溜めや配管の途中に設ける加熱手段によって再気化したガス絶縁媒体を、配管の出口から碍管内に自然に上昇させるものであるため、ガス絶縁媒体の拡散が良好に行われず、寒冷地仕様としては不十分なものであった。
【0009】
特に、碍管を用いるガス絶縁電気機器の場合、特許文献1のように配管を設けるには、碍管内と連結する配管及び加熱手段の配置場所が限定されるから、小型軽量化するため直径の小さな碍管を用いる場合には、より一層配管や加熱手段の配置を工夫する必要が生ずる問題がある。
【0010】
本発明の目的は、液化したガス絶縁媒体を再気化させて強制的に碍管中に噴出させ、寒冷地で使用しても絶縁信頼性を維持できるガス絶縁電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のガス絶縁電気機器は、碍管の下端部に端部板を取り付け、前記碍管の内部に機器部材を配置すると共に、ガス絶縁媒体を充填し、前記端部板には碍管の内部と連通して液化したガス絶縁媒体を導く配管を設け、前記配管に液化したガス絶縁媒体を再気化させる加熱手段を備える際に、前記配管に備える加熱手段のガス排出側には、再気化させたガス絶縁媒体を前記碍管の内部に噴出させるガス送出手段を設けて構成したことを特徴としている。
【0012】
好ましくは、前記碍管を架台上に支持し、前記架台内に配管と加熱手段とガス送出手段とを配置して構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のようにガス絶縁電気機器を構成すれば、簡単な構造でガス絶縁媒体を再気化させて、ガス送出手段により強制的に碍管の内部に噴出させるので、ガス絶縁媒体がより上方まで上昇して拡散するから、寒冷地用のガス絶縁電気機器の絶縁信頼性を良好に維持することができる。また、ガス絶縁媒体を配管の内部に噴出させた再気化のガス絶縁媒体で、碍管の下部に留まっていたガス絶縁媒体を攪拌するため、ガス絶縁媒体が液化するのを抑制することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のガス絶縁電気機器は、端部板にて下端部を閉鎖する碍管内に、機器部材を配置してガス絶縁媒体を充填し、端部板に碍管の内部と連通して液化ガス絶縁媒体を導く配管を連結し、前記配管に液化ガス絶縁媒体を気化させる加熱手段を備えている。しかも、配管に備える加熱手段のガス排出側に、再気化されたガス絶縁媒体を碍管の内部に噴出させるガス送出手段を設けている。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明を適用したガス絶縁電気機器の実施例について、図1から図4を用いて説明する。図1に示す碍子型のガス絶縁遮断器は、内部の空間部に操作機構2を配置した架台1上に、支持用の碍管3を樹立しており、碍管3の内部には操作機構2に連なる操作ロッド4等の機器部材を配置し、また下端部に端部板5を固定して下端部を閉鎖している。
【0016】
操作ロッド4に連なるリンク機構7等を配置する連結箱6を、碍管3の上端に取り付け、この連結箱6の両側に一対の碍管8A、8Bを水平に対向するように固定している。各碍管8A、8B内に、遮断部9A、9B等を配置しており、碍管3や各碍管8A、8Bの内部にSF等のガス絶縁媒体を充填する。
【0017】
碍管3の下端部に固定した端部板5には、図2及び図3に示すように架台1の空間部内に配置するU字状に形成した配管10の各端部を、碍管3の下端の内部と連通している。これにより、ガス絶縁遮断器を寒冷地で使用したとき、ガス絶縁媒体が液化して碍管3の内壁面に付着してから、下方に落下して溜まった液化ガス絶縁媒体を、端部板5に連結した配管10内に重力で自然落下させ、碍管3の外部に導き出すようにしている。
【0018】
配管10は、液化したガス絶縁媒体を落下させる側とは異なる他端側の途中に、ヒータ11等の加熱手段を設けており、碍管3の下端から配管10内に導かれた液化したガス絶縁媒体を、ヒータ11によって再気化させている。配管10は、ガス絶縁媒体を加熱するヒータ11を設けるため、伝熱性が良くて長期間の使用が可能な銅管等の金属製の管を使用する。
【0019】
しかも配管10には、本発明によりヒータ11で気化されたガス絶縁媒体のガス排出側には、駆動モータMで駆動するガス送風ブロア12等のガス送出手段を設けている。ガス送風ブロア12は、例えば図4に示す如くケーシング13内に、複数の回転羽16を有する回転体15を配置し、この回転体15の回転中心に吸い込み口14を有しており、またケーシング13の外周部に排気口17を有する送風ブロアを使用する。このガス送風ブロア12で、ヒータ11で加熱して再気化させたガス絶縁媒体を、碍管3の内部に噴出させるようにしている。
【0020】
ガス送風ブロア12の排出側は、再気化させたガス絶縁媒体を図2の一点差線の如く碍管3の内部の上方へ、より効果的に噴出させることができるように工夫している。即ち、図3に示すように配管10中のガス送風ブロア12の排出側に、延長管10Aを連結している。延長管10Aは、端部板5を貫通して碍管3の内部まで伸びるように設けており、液化したガス絶縁媒体が溜まる碍管3の下部より上方に開口させている。
【0021】
このように延長管10Aを設けると、ヒータ11で再気化したガス絶縁媒体を、ガス送風ブロア12で送り出して碍管3の下端面の端部板5よりも更に上方に噴出させている。再気化させたガス絶縁媒体が、碍管3の下端面よりも上方から噴出するようになるため、碍管3の下部付近内に存在する温度の低いガス絶縁媒体は攪拌されるから、ガス絶縁媒体の液化を抑制することができる。
【0022】
なお、本発明は図1の碍子型のガス遮断器ばかりでなく、支持用の碍管3の上方に垂直に碍管を固定して内部に遮断部を配置する形式のガス遮断器や、類似のガス絶縁機器に適用できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例である碍子型のガス絶縁遮断器を示す概略縦断面図である。
【図2】図1の一部の拡大概略縦断面図である。
【図3】図2の要部を拡大して示す概略縦断面図である。
【図4】本発明に用いるガス送風ブロアの例を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0024】
3、8A、8B…碍管、4…操作ロッド、5…端部板、10…配管、10A…延長管、11…ヒータ、12…ガス送風ブロア、M…駆動モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
碍管の下端部に端部板を取り付け、前記碍管の内部に機器部材を配置すると共に、ガス絶縁媒体を充填し、前記端部板には碍管の内部と連通して液化したガス絶縁媒体を導く配管を設け、前記配管に液化したガス絶縁媒体を再気化させる加熱手段を備えたガス絶縁電気機器において、前記配管に備える加熱手段のガス排出側には、再気化させたガス絶縁媒体を前記碍管の内部に噴出させるガス送出手段を設けて構成したことを特徴とするガス絶縁電気機器。
【請求項2】
請求項1において、前記碍管を架台上に支持し、前記架台内に配管と加熱手段とガス送出手段とを配置して構成したことを特徴とするガス絶縁電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−289624(P2009−289624A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141769(P2008−141769)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】