説明

ガス調理器具

【課題】取手部材のみを昇降させることができ、かつ受け皿の出し入れをスムーズにできるガス調理器具を提供する。
【解決手段】ビルトインコンロによれば、取手部材16に設けられた取手部82を掴んで手前に引くことによって、受け皿60をレール機構30に載せて庫外に向かってスムーズに引き出すことができる。そして、取手部材16は、受け皿60の前端部の幅方向両側に対して、1対の連結ユニット70を介して昇降可能に連結されている。連結ユニット70は、互いに平行に配置された第1連結部材72及び第2連結部材73を備えている。第1連結部材72及び第2連結部材73の各両端部は、取手部材16と、受け皿60の両側に設けられた皿側取付板76に対して回動可能に各々軸支されている。よって、取手部材16を受け皿60に対して自由に昇降させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス調理器具に関し、詳細には、調理庫内でガスを燃焼させて被調理物の調理を行うガス調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調理庫内でガスを燃焼させて被調理物の調理を行うガス調理器具において、調理庫の前面に形成された開口部を開閉する開閉扉が、被調理物が載置される焼き網を備えた受け皿と分離されているものがある。例えば、受け皿と開閉扉とが分離されているとともに、受け皿の調理庫に対する出し入れ動作に連動して開閉扉が開口部を開閉するガス調理器具が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このようなガス調理器具では、受け皿に設けられた取手部材が受け皿よりも上方に突出している。よって、受け皿を引き出して、焼き網に対して被調理物を載せたり、取り出したりする際に、取手部材が邪魔となることがあった。
【0003】
そこで、例えば、グリル扉と受け皿との連結を、受け皿の後半部分に下方への回動が自在に係止され、かつグリル扉に締結された連結部材により行うグリルが知られている(例えば、特許文献2参照)。このグリルには、グリル扉の引き出し時において、受け皿がグリル庫に支持されて水平方向を保つ支持手段が設けられると共に、グリル扉をグリル庫に回動自在に支持する連結部材が付設されている。これらにより、グリル扉が引き出された際に、取手部材を有するグリル扉が降下するようになっているので、焼き網上に被調理物を載置する際に、グリル扉が邪魔になることがない。
【特許文献1】実開平6―4513号公報
【特許文献2】特開平6−70854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載のグリルでは、受け皿の後半部分に回動自在に係止された連結部材が下方に回動することで、その連結部材に連結されたグリル扉が降下する。そのため、受け皿を引き出す際に、受け皿の下側に回動する連結部材がグリルの開口に接触してしまい、スムーズに降下させることができないという問題点があった。
【0005】
また、受け皿をグリルに収納する際は、グリル扉をグリルに対して押し込むことによってなされるが、このとき、グリル下側の接触面に連結部材が当接して滑りながら押し込まれ、連結部材の傾斜によってグリル扉が徐々に上昇し、所定の高さ位置に戻るようになっている。つまり、連結部材がグリル下側の接触面に接触しながら押し込まれるので、その際に生じる摩擦によって、水受け皿をスムーズに収納できないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、取手部材のみを昇降させることができ、かつ受け皿の出し入れをスムーズにできるガス調理器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のガス調理器具は、被調理物を加熱するための調理庫と、当該調理庫内に収納され、前記被調理物を載せる焼き網が載置された受け皿と、当該受け皿を前記調理庫の前面の開口部から前方に引き出してスライドさせるスライド機構とを備え、前記受け皿の引出方向の前端部に取手部材を備えたガス調理器具において、前記取手部材は、前記開口部に対向配置され、前記開口部の一部又は全部を閉塞可能な支持板と、当該支持板の前記受け皿側とは反対の表面に設けられた取手部とから構成され、前記支持板の幅方向両端部と、前記受け皿の前記前端部の幅方向両端部との間は、長尺状の一対の第1連結部材で各々連結され、当該一対の第1連結部材の長手方向一端部は、前記支持板の前記幅方向両端部に対して回動可能に各々連結され、前記一対の第1連結部材の前記一端部とは反対の他端部は、前記受け皿の前記幅方向両端部に対して回動可能に各々連結されている。
【0008】
また、請求項2に係る発明のガス調理器具は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記支持板の幅方向両端部と、前記受け皿の前記前端部の幅方向両端部との間は、前記一対の第1連結部材と、前記一対の第1連結部材の長手方向に対して平行に各々延設された長尺状の一対の第2連結部材とで連結され、前記一対の第2連結部材の長手方向各一端部は、前記支持板の前記幅方向両端部に対して回動可能に連結され、前記一対の第2連結部材の前記一端部とは反対の各他端部は、前記受け皿の前記幅方向両端部に対して回動可能に各々連結されている。
【0009】
また、請求項3に係る発明のガス調理器具は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記スライド機構は、前記調理庫の両側に設けられ、前記受け皿の前記引出方向に延設された固定レールと、当該固定レールに沿ってスライド可能に支持され、前記受け皿を支持する可動レールとから構成され、前記可動レールには前記受け皿が着脱可能に固定されている。
【0010】
また、請求項4に係る発明のガス調理器具は、請求項2又は3に記載の発明の構成に加え、前記取手部材は、前記第1連結部材及び前記第2連結部材の回動動作によって、前記受け皿に対して最上位置となる基本位置と、前記受け皿に対して最下位置となる下方移動位置との間を往復移動可能であって、前記第1連結部材には嵌合部が設けられ、前記受け皿には、前記嵌合部の移動軌跡中に各々配置され、前記嵌合部が嵌合する第1被嵌合部と、第2嵌合部とが各々設けられ、前記嵌合部が前記第1被嵌合部に嵌合することによって、前記取手部材が前記基本位置に保持され、前記嵌合部が前記第2被嵌合部に嵌合することによって、前記取手部材が前記下方移動位置に保持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係るガス調理器具では、受け皿は調理庫内に収納され、スライド機構によって、調理庫に対して出し入れされる。さらに、受け皿に設けられた取手部を掴みながら、調理庫の開口部に向かって押し込むことによって、開口部の一部又は全部が取手部材の支持板によって閉塞される。そして、取手部材の支持板と、受け皿の前端部との間は、一対の第1連結部材によってその両側が連結されている。さらに、これら各第1連結部材の長手方向両端部は、支持板及び受け皿に対して回動可能に各々連結されている。このような構造により、取手部材は、受け皿に対して、第1連結部材を介して回動可能となるので、取手部材のみを下方に移動させることができる。さらに、スライド機構によって受け皿が引き出された際には、受け皿の前端部の近傍において、第1連結部材が下方に回動し、取手部材のみが下方に移動する。これにより、受け皿を引き出す際に、第1連結部材は調理庫の他部材に干渉しないので、受け皿をスムーズに引き出すことができる。また、調理庫から受け皿を引き出した後で、ユーザの意志によって取手部材を下方に移動させることができるので、使い勝手のよいガス調理器具を提供することができる。
【0012】
また、請求項2に係るガス調理器具では、請求項1に記載の発明の効果に加え、支持板の幅方向両端部と、受け皿の前端部の幅方向両端部との間は、一対の第1連結部材と、これら第1連結部材に対して平行に各々延設された一対の第2連結部材とで連結されている。これにより、取手部材が、第1,第2連結部材を介して、保持部材の前端部に対して一回転するのを防止できる。また、第1,第2連結部材によって連結されているので、支持板の幅方向両端部と、受け皿の前端部の幅方向両端部との間を強固に連結することができる。また、取手部材の姿勢を一定に保ちつつ、その取手部材を上下に移動させることができるので、操作性を向上できる。
【0013】
また、請求項3に係るガス調理器具では、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、可動レールに受け皿が着脱可能に固定されているので、可動レールが固定レールに沿って移動することによって、受け皿をスライド移動させることができる。
【0014】
また、請求項4に係るガス調理器具では、請求項2又は3に記載の発明の効果に加え、第1連結部材及び第2連結部材の回動動作によって、取手部材を、最上位置となる基本位置と、最下位置となる下方移動位置との間を往復移動させることができる。さらに、第1連結部材に設けられた嵌合部を第1被嵌合部に嵌合させることによって、把持部材が基本位置に保持されるので、把持部材を必要な時にだけ下方に移動させることができる。さらに、嵌合部を第2被嵌合部に嵌合させることによって、把持部材が下方移動位置に保持されるので、把持部材を下方に移動させたままの状態で保持できる。つまり、把持部材が勝手に上方に移動することがないので、安全なガス調理器具を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態であるビルトインコンロ1について、図面を参照して説明する。図1は、ビルトインコンロ1の斜視図である。図2は、受け皿60を引き出した状態のビルトインコンロ1の斜視図である。図3は、受け皿60をレール機構30から取り外した状態のビルトインコンロ1の斜視図である。図4は、図2に示すI−I線矢視方向断面図である。図5は、図1に示すII−II線矢視方向断面図である。なお、図1に示すビルトインコンロ1が本発明の「ガス調理器具」に相当する。
【0016】
はじめに、ビルトインコンロ1の全体構造について概略的に説明する。図1に示すように、ビルトインコンロ1は、略直方体状の筐体2を備えている。筐体2の天面にはトッププレート4が設けられている。トッププレート4の左右両側には、ガスバーナ5,7が各々設けられ、それらガスバーナ5,7に挟まれる中央奥側には、とろ火用のガスバーナ6が設けられている。これらガスバーナ5,6,7の各中心部には、調理容器の底部に当接して、その底部温度を検知するための温度センサ5a,6a,7aが各々設けられている。ガスバーナ5,6,7の各上部周囲には、調理容器を載置するための五徳9,10,11が各々設けられている。
【0017】
トッププレート4の後端側には、後述するグリル庫45(図4参照)に連通する排気口13が設けられている。排気口13には、複数の孔を有する排気カバー14a,14bが設置されている。
【0018】
筐体2の幅方向中央の内側には、筐体2の前後方向に長手を有し、被調理物を庫内で加熱するためのグリル庫45(図5参照)が組み込まれている。図2,図3に示すように、グリル庫45の前面には開口部8が形成され、該開口部8は、筐体2の正面中央に形成された矩形状の開口12の内側に配置されている。開口部8の上端部にはグリル庫45の左右方向に延びる支軸48(図4,図6参照)が設けられ、その支軸48に対して開閉扉15が回動可能に軸支されている。これにより、開口部8は開閉扉15によって開閉される。開閉扉15の下方には、受け皿60をグリル庫45から引き出すための取手部材16が設けられている。なお、図4に示すグリル庫45が本発明の「調理庫」に相当する。
【0019】
図2に示すように、受け皿60は、グリル庫45(図3参照)内に設けられたレール機構30によって、グリル庫45の内側と外側との間をスライド可能に支持されている。よって、取手部材16を手前に引くと、その取手部材16の裏側に連結された受け皿60が庫外にスライドして引き出されるようになっている。この受け皿60には焼き網27が載置されている。よって、受け皿60を庫外に引き出した状態において、焼き網27上に被調理物を載せたり、焼き網27上に載せられた被調理物を取り出すことができる。さらに、本実施形態では、図3に示すように、受け皿60はレール機構30に対して着脱可能である。よって、加熱調理後に、受け皿60をレール機構30から取り外すことによって、受け皿60に載せられた被調理物を所望の場所にそのまま運ぶことができる。
【0020】
また、グリル庫45には、レール機構30による受け皿60のスライド動作に連動して、開閉扉15を開閉させるための扉連動機構50(図4参照)が設けられている。この扉連動機構50によれば、図4,図5に示すように、受け皿60を庫内に収納することで開閉扉15は自動的に閉じられ、その反対に、受け皿60を庫外に引き出すことで開閉扉15が自動的に開かれる。なお、レール機構30の構造、および扉連動機構50の構造については後述する。
【0021】
ところで、図1,図2に示すように、筐体2の正面左側には、ガスバーナ5を点火するための点火スイッチ17が設けられている。その点火スイッチ17の右隣りには、ガスバーナ6を点火するための点火スイッチ18が設けられている。さらに、グリル庫45の開閉扉15を挟んで、筐体2の正面右側には、ガスバーナ7を点火するための点火スイッチ20が設けられている。その点火スイッチ20の左隣りには、グリル庫45の内側に設けられたグリルバーナ(図示外)を点火するための点火スイッチ19が設けられている。さらに、各点火スイッチ17〜20の上側には、対応する各バーナの火力をそれぞれ調節するための火力調節レバー21〜24が各々設けられている。
【0022】
また、筐体2の正面左下であって、点火スイッチ17,18の下側には、ビルトインコンロ1を操作するための操作パネル25が回動可能に設けられている。未使用時には筐体2の内側に収納され、使用時には収納状態の操作パネル25を押下することで、筐体2の外側に回動されて操作可能となる。一方、筐体2の正面右下であって、点火スイッチ19,20の下側には、ビルトインコンロ1の電源を供給する乾電池を格納するための電池ボックス26が設けられている。
【0023】
次に、レール機構30の構造について説明する。図4に示すように、レール機構30は、グリル庫45の左右の両側壁の各内面の下端部に沿って各々固定された一対の固定レール31と、該一対の固定レール31の内側に沿ってグリル庫45の前後方向にスライド可能に支持された一対の第1可動レール32と、該一対の第1可動レール32の内側に沿ってグリル庫45の前後方向にスライド可能に支持された一対の第2可動レール33とからなる。なお、図4では、一対の各レールのうち、右側の各レールについてのみ図示している。
【0024】
そして、固定レール31と第1可動レール32とが互いにすれ違う間には、複数の小型ローラが並列してなるローラユニット(図示外)が配設されている。第1可動レール32と第2可動レール33とが互いにすれ違う間にも、同様のローラユニット(図示外)が配設されている。さらに、固定レール31の前端側には、第1ストッパ(図示外)が設けられている。第1可動レール32の後端側には、第1可動レール32が引き出された際に、第1ストッパに係止する第1係止部(図示外)が設けられている。これらにより、固定レール31から第1可動レール32が抜けるのを防止できる。
【0025】
また、第1可動レール32の前端側には、第2ストッパ(図示外)が設けられている。第2可動レール33の後端側には、第2可動レール32が引き出された際に、第2ストッパに係止する第2係止部(図示外)が設けられている。これにより、第1可動レール32から第2可動レール33が抜けるのを防止できる。このような構成からなるレール機構30において、一対の第2可動レール32の前側には、受け皿60を着脱可能に保持するための正面視矩形状の保持枠40が組み付けられている。
【0026】
ここで、保持枠40の構造について説明する。図3に示すように、保持枠40は、右側の第2可動レール32に固定された長尺状の右枠部41と、左側の第2可動レール32に固定された長尺状の左枠部42と、右枠部41の前端部と左枠部42の前端部との間に渡設された長尺状の前方枠部43と、右枠部41の後端部と左枠部42の後端部との間に渡設された長尺状の後方枠部44とからなる。これら右枠部41、左枠部42、前方枠部43、後方枠部44は、何れも長手方向に直交する断面が略L字状に形成されている。
【0027】
そして、右枠部41及び左枠部42は、一対の第2可動レール32の上面を覆いつつ、第2可動レール32の内面に沿って略直角に屈曲されている。右枠部41について、前方枠部43の上面を覆う部分の外側の一端部であってグリル庫45の前方側には、扉連動機構50の後述する連結アーム53の一端部に軸支されたローラ55に当接して、グリル庫45の奥側に付勢するための当接部36が設けられている。
【0028】
このような構成からなる保持枠40の内側に対して、受け皿60の底部が嵌ると共に、右枠部41及び左枠部42に対して、受け皿60の左右両縁部が載置されることによって、保持枠40に受け皿60が保持される。
【0029】
このように、受け皿60は保持枠40に保持された状態で、レール機構30によってスライド移動するので、グリル庫45に対して受け皿60は接触しない。よって、受け皿60をグリル庫45に対して滑らかに出し入れできる。さらに、受け皿60がグリル庫45に擦れることで生じる摩擦音を生じないので、受け皿60の出し入れを静音化できる。また、受け皿60は、第1,第2可動レール32,33を介して固定レール31に沿って移動するので、グリル庫45内におけるスライド経路が決まっている。これにより、グリル庫45内で受け皿60がガタつくことが無く、スライド動作に不具合を生じないので、受け皿60の出し入れを滑らかにかつ安定して行うことができる。
【0030】
次に、開閉扉15の開閉構造について、図6を参照して説明する。図6は、支軸48に軸支される開閉扉15の斜視図である。開閉扉15は、矩形状の本体枠95を備えている。本体枠95の略中央には矩形状の開口であるガラス窓部96が形成されている。本体枠95の左右両端部には、本体枠95の裏面に対して略直角に延設された側面視L字型の支持部97,98が設けられている。これら支持部97,98において、開閉扉15を上下方向に立てた状態の各上部には、支軸48が挿通される支軸挿通孔99が各々設けられている。それら支軸挿通孔99の各下方には、後述する連結アーム53の一端部を回動可能に軸支するための連結孔100が各々設けられている。そして、本体枠95に対して、その裏側からガラス窓部96を覆うようにして一枚のガラス板110が固定されている。
【0031】
このような構成からなる開閉扉15において、支持部97,98の一対の支軸挿通孔99,99に対して支軸48が挿通される。そして、その支軸48の長手方向中央部が、グリル庫45の開口部8を形成する開口端の上端部に固定され、支軸48の長手方向両端部が、筐体2の開口12を形成する各内面に固定される。これにより、開閉扉15は支軸48に対して独立して回動する。
【0032】
さらに、支軸48において、本体枠95の内側に相当する部分の左右両側には、コイル状のトルクバネ58が各々外挿されている。トルクバネ58の一端部に形成されたループ状の固定部58aは、本体枠59の支持部97,98の各内面に固定される。他方、トルクバネ58の他端部は支軸48に固定される。そして、固定部58aが略水平とした状態で、トルクバネ58の他端部が支軸48に対して固定される。つまり、開閉扉15が開いた状態が、トルクバネ58にトルクがかけられていない状態となる。そのため、開閉扉15の自重によって下方に回動しようとしても、トルクバネ58の付勢によって、開閉扉15の開かれた状態が保持される。そして、開閉扉15を閉じることによって、トルクバネ58にトルクがかかるようになっている。
【0033】
次に、扉連動機構50の構造について説明する。図4に示すように、扉連動機構50は、開閉扉15の支持部97,98に各々設けられた連結孔100に一端側が回動可能に連結された連結アーム53と、該連結アーム53の他端部に設けられ、グリル庫45に向かって略直角に延設された長孔軸54と、該長孔軸54に軸支されたローラ55と、グリル庫45の左右の側壁46の下側にかつグリル庫45の前後方向に延設され、前記ローラ55をガイドするための長孔51とからなる。
【0034】
連結アーム53はグリル庫45の前方に向かって膨出するように2カ所で曲げられている。長孔51は、連結アーム53の他端部をグリル庫45の奥側にガイドするために、グリル庫45の前側から奥側に向かって略水平に延設されている。さらにその奥側で上方に屈曲させることによって、開閉扉15の閉塞時における連結アーム53の他端部の移動を規制している。
【0035】
次に、扉連動機構50の動作について説明する。図4に示すように、まず、受け皿60が庫外に引き出された状態では、開閉扉15はトルクバネ58の付勢によって開いた状態に保持されている。つまり、開閉扉15は上方に跳ね上がっているので、連結アーム53の他端部に軸支されたローラ55は、グリル庫45の側壁46に設けられた長孔51の前側まで引き戻された状態となっている。次いで、受け皿60をグリル庫45内に収納するために、取手部材16を筐体2に向かって押すことによって、受け皿60をグリル庫45の内側に向かってスライドさせる。すると、保持枠40に設けられた当接部36が、グリル庫45の長孔51に遊挿されたローラ55に当接する。
【0036】
さらに、取手部材16を押し込むことによって、当接部36がローラ55をグリル庫45の奥側に付勢するので、ローラ55は長孔51の内縁に沿って転動する。そして、ローラ55がグリル庫45の奥側に移動することによって、連結アーム53の他端部がグリル庫45の奥側に引っ張られる。これに伴い、トルクバネ58の付勢に抗して、開閉扉15が引っ張られて下方に回動する。そして、受け皿60がグリル庫45内に収納され、取手部材16がグリル庫45の前方の開口端に当接した状態で開閉扉15は完全に閉じた状態(図5参照)となる。このとき、保持枠40の後方枠部44に固定された突起部38(図15参照)が、グリル庫45の背壁の内面下部に固定された保持ユニット(図示外)によって、左右両側から挟まれて挟持される。これにより保持枠40がグリル庫45内に固定される。
【0037】
そして、受け皿60を庫外に引き出す場合は、上記説明した流れと逆である。図5に示すように、まず、取手部材16を手前に徐々に引き出すと、ローラ55に対する当接部36の付勢が無くなるので、当接部36が前側に移動するのに伴ってローラ55が前方に移動する。これは、トルクバネ58の付勢が支配的となるので、開閉扉15が押し上げられ、これに伴って連結アーム53の他端部に軸支されたローラ55がグリル庫45の前方に引っ張られるからである。こうして、図4に示すように、ローラ55から当接部36が離間して、受け皿60が庫外に引き出された状態では、開閉扉15は跳ね上げられ、グリル庫45の開口部8を完全に露呈した状態とすることができる。
【0038】
次に、受け皿60について説明する。図7は、受け皿60の平面図であり、図8は、取手部材16の周囲の部分拡大図(取手部材16:基本位置)である。図9は、取手部材16の周囲の部分拡大図(取手部材16:中間位置)である。図10は、取手部材16の周囲の部分拡大図(取手部材16:最下方位置)である。図7に示す受け皿60は、焼き網27(図2参照)上に載せられた被調理物から落下する油、水、焦げ等を受けるものである。そして、その前側部分には、取手部材16が昇降可能に連結されている。
【0039】
図7に示すように、受け皿60は平面視長方形状に形成されている。その底部には、上方に隆起する平面視帯状の一対のリブ67,68が受け皿60の前後方向に設けられている。受け皿60の幅方向左右両端部には、外方に向かって略水平に延設され、受け皿60を保持する保持枠40の右枠部41及び左枠部42(図3参照)に対して、引っ掛けるための右方縁部61及び左方縁部62が各々設けられている。受け皿60の前後方向の前端側には、前方に向かって略水平に延設された前方縁部63が設けられ、後端側には、後方に向かって略水平に延設された後方縁部64が設けられている。前方縁部63には、焼き網27(図3参照)の脚部(図示外)を差し込んで位置決めるするための差込孔63aが設けられている。後方縁部64にも同様の差込孔64a,64bが各々設けられている。さらに、前方縁部63の前端部には、取手部材16に当接させて支持するための側面視逆L字形状の当接部材69(図7参照)が設けられている。
【0040】
また、右方縁部61の前方部分には、垂直方向に延設された正面視矩形状の皿側取付板76(図7,図8参照)が設けられている。皿側取付板76には、図8に示すように、後述する連結ユニット70の第1,第2連結部材72,73の各一端部が、軸支部93,94によって回動可能に各々連結されている。さらに、皿側取付板76の受け皿60側とは反対側の外面において、その上部には正面視円形状に形成された嵌着凹部77が設けられ、その下部にも円形状に形成された嵌着凹部78が各々設けられている。これら嵌着凹部77,78は、第1連結部材72と共に回動する嵌着凸部74(図8参照)の回動軌跡上に各々配置されている。これら嵌着凹部77,78には、後述する第1連結部材72の内面に設けられた嵌着凸部74が各々嵌着する。これにより、第1連結部材72の位置を保持できるようになっている。また、図7に示すように、左方縁部62の前方部分にも、同様の構造を備えた皿側取付板76が設けられている。なお、図8に示す嵌着凹部77,78が本発明の「被嵌合部」に相当する。
【0041】
次に、取手部材16の構造について説明する。図7,図8に示すように、取手部材16は、正面視横長の長方形状に形成された板状の取手裏板81を備えている。取手裏板81の表面の中段には、略水平に延設されると共に、前方に向かって突出する取手部82が設けられている。その取手部82の下側には、取手部82の裏側に手を差し込むための凹部(図示外)が形成されている。なお、図8に示す取手裏板81が本発明の「支持板」に相当する。
【0042】
次に、取手部材16と受け皿60との連結構造について説明する。図7,図8に示すように、取手部材16を構成する取手裏板81の幅方向両端部と、受け皿60の右方縁部61及び左方縁部62との間は、後述する2本の連結部材を備えた連結ユニット70で各々連結されている。図8に示すように、取手裏板81の幅方向両端部の各上部には、取手裏板81の裏面から表面に向かう方向に窪んだ取付凹部83(図8参照)が各々設けられている。これら取付凹部83の底面には、側面視半円状の支持板85,86が上下方向に並んで各々配設されている。支持板85,86には、後述する第1連結部材72,73の前記一端部とは反対の各他端部が回動可能に各々軸支されている。
【0043】
ここで、連結ユニット70について説明する。図8に示すように、連結ユニット70は、長尺状の第1連結部材72と、長尺状の第2連結部材73とを備えている。第1連結部材72の長手方向一端部は、取手部材16の取手裏板81の取付凹部83の下部に設けられた支持板86の軸支部91を中心に回動可能に軸支されている。さらに、第1連結部材72の他端部は、受け皿60に設けられた皿側取付板76の軸支部93を中心に回動可能に軸支されている。また、第1連結部材72の受け皿60側に向く内面には、半球状に突出する嵌着凸部74が設けられている。
【0044】
一方、第2連結部材73は、第1連結部材72の上側であって、かつ平行に配置されると共に、その長手方向一端部は、取手裏板81の取付凹部83の上部に設けられた支持板85の軸支部92を中心に回動可能に軸支されている。さらに、第2連結部材73の他端部は、受け皿60に設けられた皿側取付板76の軸支部94を中心に回動可能に軸支されている。このような構成からなる連結ユニット70によって、受け皿60に対して取手部材16が昇降可能となっている。なお、図8に示す嵌着凸部74が本発明の「嵌合部」に相当する。
【0045】
次に、連結ユニット70による取手部材16の昇降動作について、図8乃至図10を参照して説明する。図8は、取手部材16の周囲の部分拡大図(取手部材:基本位置)である。図9は、取手部材16の周囲の部分拡大図(取手部材:中間位置)である。図10は、取手部材16の周囲の部分拡大図(取手部材:下方位置)である。図7,図8に示すように、受け皿60に対して、取手部材16が最上方に位置した状態では、取手裏板81の裏面が当接部材69に当接する。この取手部材16の位置を「基本位置」とする。取手部材16が基本位置の状態では、第1連結部材72の嵌着凸部74は、皿側取付板76に設けられた嵌着凹部77に嵌着している。これにより、第1連結部材72の回動が制限されるので、取手部材16は基本位置に保持される。
【0046】
次に、取手部材16を下方に移動させる場合、取手部82を掴みつつ下方に押し下げる。すると、嵌着凹部77に嵌着していた嵌着凸部74が離脱するので、第1連結部材72の回動が許容される。そして、取手部82を下方に押し下げるにつれて、図9に示すように、第1連結部材72及び第2連結部材73を介して、取手裏板81が垂直な姿勢を保ったまま下方に移動する。さらに、取手裏板81が最下方位置にまで移動すると、図10に示すように、第1連結部材72の嵌着凸部74が嵌着凹部78に嵌着する。これにより、第1連結部材72の回動が制限されるので、取手部材16が「最下方位置」に保持される。このように、受け皿60をグリル庫45から外側に引き出し、取手部材16を基本位置から最下方位置まで下げることによって、受け皿60より上に突出していた取手部材16が下がるので邪魔とならない。よって、焼き網27上に被調理物を載せたり、取り出したりすることが容易にできる。
【0047】
このように、連結ユニット70では、取手部材16と受け皿60との連結を、第1連結部材72のみならず、第2連結部材73が用いられている。これにより、取手部材16が受け皿60に対して一回転しないように制限をかけることができる。さらに、第1連結部材72及び第2連結部材73の回動範囲を制限できるので、取手裏板81を垂直姿勢を保持したままで昇降させることが可能である。また、第1連結部材72及び第2連結部材73の2本の連結部材で連結していることから、取手部材16と受け皿60と連結を強固にすることができる。よって、取手部材16の昇降が何度も繰り返されて使用頻度が高い場合にも十分に耐えることができる。
【0048】
さらに、連結ユニット70によって、取手部材16のみをユーザの意志によって昇降させることができるので、受け皿60を引き出している途中で、取手部材16が勝手に下方に移動してしまうようなこともない。さらに、レール機構30によって受け皿60がスライド移動している際中に、取手部材16が勝手に下方に移動しないので、受け皿60のスムーズな移動を妨げるおそれもない。また、取手部材16の姿勢を一定に保ちつつ、その取手部材16を上下に移動させることができるので、操作性を向上できる。このようにして、使い勝手の良いグリルを備えたビルトインコンロ1を提供することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のビルトインコンロ1によれば、取手部材16に設けられた取手部82を掴んで手前に引くことによって、受け皿60をレール機構30に載せて庫外に向かってスムーズに引き出すことができる。そして、取手部材16は、受け皿60の前端部の幅方向両側に対して、1対の連結ユニット70を介して昇降可能に連結されている。連結ユニット70は、互いに平行に配置された第1連結部材72及び第2連結部材73を備えている。第1連結部材72及び第2連結部材73の各両端部は、取手部材16と、受け皿60の両側に設けられた皿側取付板76に対して回動可能に各々軸支されている。これにより、取手部材16を受け皿60に対して自由に昇降させることができる。
【0050】
また、第1連結部材72の内面には嵌着凸部74が設けられている。受け皿60に設けられた皿側取付板76には、嵌着凹部77,78が上下に各々設けられている。そして、第1連結部材72が取手部材16の昇降に合わせて揺動し、嵌着凸部74が嵌着凹部77に嵌着することによって、第1連結部材72の揺動が制限され、取手部材16が基本位置に保持される。また、取手部材16を下方に押し下げ、嵌着凸部74を嵌着凹部78に嵌着させることによって、取手部材16を最下方位置に保持することができる。このように、本実施形態では、簡易な構造によって、取手部材16を2つの高さ位置に保持できるので、取手部材16が勝手に昇降するのを防止できる。
【0051】
なお、本発明に係るガス調理器具は、上記実施形態に限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変形してもよい。上記実施形態では、取手部材16を2つの高さ位置に保持できるようにしたが、受け皿60に設けられた皿側取付板76に嵌着凸部74を嵌着させるための嵌着穴を2つ以上設けてもよい。この場合、取手部材16の高さ位置を複数設定することができる。
【0052】
また、本実施形態では、開閉扉15と受け皿60とが分離されているビルトインコンロ1を一例として説明したが、開閉扉と受け皿とが一体になった一般的なコンロにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ビルトインコンロ1の斜視図である。
【図2】受け皿60を引き出した状態のビルトインコンロ1の斜視図である。
【図3】受け皿60をレール機構30から取り外した状態のビルトインコンロ1の斜視図である。
【図4】図2に示すI−I線矢視方向断面図である。
【図5】図1に示すII−II線矢視方向断面図である。
【図6】開閉扉15の斜視図である。
【図7】受け皿60の平面図である。
【図8】取手部材16の周囲の部分拡大図(取手部材16:基本位置)である。
【図9】取手部材16の周囲の部分拡大図(取手部材16:中間位置)である。
【図10】取手部材16の周囲の部分拡大図(取手部材16:最下方位置)である。
【符号の説明】
【0054】
1 ビルトインコンロ
8 開口部
16 取手部材
27 焼き網
30 レール機構
31 固定レール
32 第1可動レール
33 第2可動レール
45 グリル庫
60 受け皿
70 連結ユニット
72 第1連結部材
73 第2連結部材
74 嵌着凸部
76 皿側取付板
77 嵌着凹部
78 嵌着凹部
81 取手裏板
82 取手部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を加熱するための調理庫と、当該調理庫内に収納され、前記被調理物を載せる焼き網が載置された受け皿と、当該受け皿を前記調理庫の前面の開口部から前方に引き出してスライドさせるスライド機構とを備え、前記受け皿の引出方向の前端部に取手部材を備えたガス調理器具において、
前記取手部材は、
前記開口部に対向配置され、前記開口部の一部又は全部を閉塞可能な支持板と、
当該支持板の前記受け皿側とは反対の表面に設けられた取手部と
から構成され、
前記支持板の幅方向両端部と、前記受け皿の前記前端部の幅方向両端部との間は、長尺状の一対の第1連結部材で各々連結され、
当該一対の第1連結部材の長手方向一端部は、前記支持板の前記幅方向両端部に対して回動可能に各々連結され、
前記一対の第1連結部材の前記一端部とは反対の他端部は、前記受け皿の前記幅方向両端部に対して回動可能に各々連結されたことを特徴とするガス調理器具。
【請求項2】
前記支持板の幅方向両端部と、前記受け皿の前記前端部の幅方向両端部との間は、前記一対の第1連結部材と、前記一対の第1連結部材の長手方向に対して平行に各々延設された長尺状の一対の第2連結部材とで連結され、
前記一対の第2連結部材の長手方向各一端部は、前記支持板の前記幅方向両端部に対して回動可能に連結され、
前記一対の第2連結部材の前記一端部とは反対の各他端部は、前記受け皿の前記幅方向両端部に対して回動可能に各々連結されたことを特徴とする請求項1に記載のガス調理器具。
【請求項3】
前記スライド機構は、
前記調理庫の両側に設けられ、前記受け皿の前記引出方向に延設された固定レールと、
当該固定レールに沿ってスライド可能に支持され、前記受け皿を支持する可動レールと
から構成され、
前記可動レールには前記受け皿が着脱可能に固定されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス調理器具。
【請求項4】
前記取手部材は、前記第1連結部材及び前記第2連結部材の回動動作によって、前記受け皿に対して最上位置となる基本位置と、
前記受け皿に対して最下位置となる下方移動位置と
の間を往復移動可能であって、
前記第1連結部材には嵌合部が設けられ、
前記受け皿には、前記嵌合部の移動軌跡中に各々配置され、前記嵌合部が嵌合する第1被嵌合部と、第2嵌合部とが各々設けられ、
前記嵌合部が前記第1被嵌合部に嵌合することによって、前記取手部材が前記基本位置に保持され、
前記嵌合部が前記第2被嵌合部に嵌合することによって、前記取手部材が前記下方移動位置に保持されることを特徴とする請求項2又は3に記載のガス調理器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−54116(P2010−54116A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219396(P2008−219396)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000112015)パロマ工業株式会社 (298)
【Fターム(参考)】