ガス貯蔵のための多孔質構造化有機フィルムの適用
【課題】ガス状実体を吸着剤材料と接触させる工程を含む、ガス状実体を貯蔵する方法であって、吸着剤材料に多孔質構造化有機フィルム(SOF)を用いる方法を提供する。
【解決手段】ガス状実体を貯蔵するための多孔質構造化有機フィルムおよび多孔質構造化有機フィルムにガス状実体を貯蔵するための方法であって、この多孔質構造化有機フィルムが、共有結合性有機骨格として整列された複数のセグメントおよび複数のリンカーを含み、ここで巨視的には、共有結合性有機骨格はフィルムであり、1つ以上のガス状実体に利用可能な複数の部位を含有する。
【解決手段】ガス状実体を貯蔵するための多孔質構造化有機フィルムおよび多孔質構造化有機フィルムにガス状実体を貯蔵するための方法であって、この多孔質構造化有機フィルムが、共有結合性有機骨格として整列された複数のセグメントおよび複数のリンカーを含み、ここで巨視的には、共有結合性有機骨格はフィルムであり、1つ以上のガス状実体に利用可能な複数の部位を含有する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多孔質材料は、比較的大きな比表面積を有するので、多量のガスまたは有機小分子を吸着できる。こうした多孔質材料は、ガス貯蔵、ガス分離、イオン輸送膜を含む用途に有用であることができ、一般には化学実体を材料を通して捕捉または輸送することが必要とされる用途に有用であることができる。加えて、多孔質材料は、誘電体、新規なコンポジット(例えばP/R、融合、薬物放出)、スーパーキャパシタ、または触媒作用のような他の用途に有用であり得る。永続的に多孔質である材料の大部分は、通常、耐火性粉末として得られる無機化合物であり、これはフィルムを創製するためには他の材料に埋め込まれる必要があり、そうすることでデバイスの一体化に適切となり得る(例えば、エレクトロニクス、燃料電池、バッテリ、ガス分離膜など)。
【0002】
典型的な多孔質材料は、2nm未満の孔サイズを有するミクロ多孔質材料、2nm〜50nmの孔サイズを有するメソ多孔質材料、および50nmより大きい孔サイズを有するマクロ多孔質材料を含む。1995年において、Omar Yaghiが、実用化に非常に近い金属有機配位ポリマーであるMOF(金属有機骨格)(Nature,1995,(378),703を参照)を合成した。新規な機能性分子材料として、MOFは、ゼオライトのモレキュラーシーブと同様の結晶性構造を有するだけでなく、その構造を設計することができる。MOFは、トポロジー構造を直接設計すること、および有機官能基を拡大させることによって、ナノサイズの孔チャンネルおよびキャビティを得ることができる。しかし、MOFは、化学安定性が比較的劣る。2005年には、Omar Yaghiは、有機多孔質骨格材料であるCOF(共有結合性有機骨格)(Science,2005,(310),1166を参照のこと)を開示したが、これは共有結合を介して連結される軽い元素(C、H、O、B)を含む。しかし、化学安定性の問題は全く解決されていない。
【0003】
COFは、これが高度にパターニングされることを目的とする点において、ポリマー/架橋ポリマーとは異なる。COF化学において、分子成分は、モノマーではなく分子ビルディングブロックと呼ばれる。COF合成の間に、分子ビルディングブロックは、二次元または三次元ネットワークを形成するように反応する。結果として、分子ビルディングブロックは、COF材料全体を通してパターニングされ、分子ビルディングブロックは、強い共有結合を通して互いに連結される。
【0004】
これまで開発されたCOFは、通常高い多孔性を有する粉末であり、並外れて密度が低い材料である。COFは、過去最高に近い水準の量のアルゴンおよび窒素を貯蔵できる。これら従来のCOFは有用であるが、向上した特徴の観点から従来のCOFよりも優る利点を提供する新規な材料が必要とされており、この必要性は本発明の実施形態によって対処される。
【0005】
従来のCOFの特性および特徴は、次の文書に記載されている:
【0006】
Yaghi et al.,米国特許第7,582,798号明細書;
【0007】
Yaghi et al.,米国特許第7,196,210号明細書;
【0008】
Shun Wan et al.,「A Belt−Shaped,Blue Luminescent,and Semiconducting Covalent
Organic Framework」,Angew.Chem.Int.Ed.,Vol.47,pp.8826−8830(ウェブ上での公開01/10/2008);
【0009】
Nikolas A.A.Zwaneveld et al.,「Organized Formation of 2D Extended Covalent Organic Frameworks at Surfaces,」J.Am.Chem.Soc.,Vol.130,pp.6678−6679(ウェブ上での公開04/30/2008);
【0010】
Adrien P.Cote et al.,「Porous,Crystalline,Covalent Organic Frameworks,”Science,Vol.310,pp.1166−1170(2005年11月18日);
【0011】
Hani El−Kaderi et al.,「Designed Synthesis of 3D Covalent Organic Frameworks,」Science,Vol.316,pp.268−272(2007年4月13日);
【0012】
Adrien P.Cote et al.,「Reticular Synthesis of Microporous and Mesoporous Covalent Organic Frameworks」J.Am.Chem.Soc.,Vol.129,12914−12915(ウェブ上での公開2007年10月6日);
【0013】
Omar M.Yaghi et al.,「Reticular synthesis and the design of new materials,」Nature,Vol.423,pp.705−714(2003年6月12日);
【0014】
Nathan W.Ockwig et al.,「Reticular Chemistry:Occurrence and Taxonomy of Nets and Grammar for the Design of Frameworks,」Acc.Chem.Res.,Vol.38,No.3,pp.176−182(ウェブ上での公開2005年1月19日);
【0015】
Pierre Kuhn et al.,「Porous,Covalent Triazine−Based Frameworks Prepared by Ionothermal Synthesis,」Angew.Chem.Int.Ed.,Vol.47,pp.3450−3453。(ウェブ上での公開2008年3月10日);
【0016】
Jia−Xing Jiang et al.,「Conjugated Microporous Poly(aryleneethylnylene)Networks,」Angew.Chem.Int.Ed.,Vol.46,(2008)pp,1−5(ウェブ上での公開2008年9月26日);
【0017】
Hunt,J.R.et al.「Reticular Synthesis of Covalent−Organic Borosilicate Frameworks」J.Am.Chem.Soc.,Vol.130,(2008),11872−11873。(ウェブ上での公開2008年8月16日);および
【0018】
Colson et al.「Oriented 2D Covalent Organic Frameworks Thin Films on Single−Layer」Science,332,228−231(2011)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
開発されているガス貯蔵材料はこれまで、圧縮または成形され、続いて使用のために円筒状容器に挿入される必要がある粉末である。貯蔵システムの幾何学形状およびフットプリントを最適化する際に、ガス貯蔵材料が粉末以外の形態、例えばフィルムであるならば、大きな利益を得ることができる。故に、依然として従来の多孔質材料に優る改善が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
ガス状実体を収着剤材料と接触させる工程を含むガス状実体を貯蔵する方法であって、この収着剤材料は多孔質構造化有機フィルム(SOF)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】図1Aは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1B】図1Bは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1C】図1Cは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1D】図1Dは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1E】図1Eは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1F】図1Fは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1G】図1Gは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1H】図1Hは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1I】図1Iは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1J】図1Jは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1K】図1Kは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1L】図1Lは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1M】図1Mは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1N】図1Nは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1O】図1Oは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図2】図2は、実施例1のSOFについてCO2ガス吸着等温線の図である。
【図3】図3は、実施例1のSOFについての孔サイズ分布の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
用語「SOF」または「SOF組成物」は、一般的に、巨視的な見方だとフィルムである、共有結合性有機骨格(COF)を指す。しかし、本開示に使用される場合、用語「SOF」は、グラファイト、グラフェンおよび/またはダイアモンドを包含しない。語句「巨視的な見方」は、例えばこのSOFの肉眼での見え方を指す。
【0023】
「収着」とは、原子または分子とターゲット材料との会合をもたらすプロセスを指す。収着は、吸着および吸収の両方を含む。
【0024】
多孔質SOFは、ガス状実体を貯蔵する(および場合により放出する)、ガス状実体を捕捉する(および場合により放出する)、特定のガス状実体を選択または精製する(および場合により放出する)、および/またはガス状実体を輸送することが所望され得るまたは必要とされ得る種々の用途に使用できる。本開示のSOFは、ガス貯蔵システム、特にモバイル用途について有益な設計を可能にする顕著な機会を提供する。
【0025】
「ガス状実体」という用語は、いずれかの分子および/または生物学的物質を指し、それらのイオンおよびラジカルを含み、高温および/または減圧の補助ありまたは補助なしのいずれかで、ガス相に導入されることができるものであり、例えばガス状化学実体を含む。
【0026】
「ガス状化学実体」という用語は、いずれかの分子を指し、それらのイオンおよびラジカルを含み、高温および/または減圧の補助ありまたは補助なしのいずれかで、ガス相に導入されることができるものである。
【0027】
「取り込み」という用語は、ガス状実体、例えばガス状化学実体および/またはターゲットガス状実体の、収着剤材料、例えばターゲットガス状実体と選択的に会合するように調整された収着剤材料との会合をもたらすプロセスを指す。
【0028】
多孔質SOFは、ガス状実体(またはガス状化学種)を吸着または吸収するために使用されてもよく、ガス状実体は多孔質SOFから脱着される条件に曝されてもよい。
【0029】
多孔質SOFは、1つ以上のタイプのガス状実体を取り込むためのデバイスに組み込まれてもよい。
【0030】
1つ以上のガス状実体の収着剤材料、例えば少なくとも1つの多孔質SOFを含む収着剤材料への取り込みは、可逆性または非可逆性であってもよい。
【0031】
デバイスにおいて収着剤材料は、SOFであってもなくてもよい、ガス透過性の三次元支持体に埋め込まれるまたは固定されてもよい。収着剤材料は、ガスを可逆的に取り込みまたは貯蔵するための孔を有していてもよい。収着剤材料は、ガスを可逆的に吸着または吸収してもよい。
【0032】
本明細書に提供されるデバイスは、1つ以上のガス状実体、例えばアンモニア、CO2、CO、水素、アミン、メタン、天然ガス、酸素、アルゴン、窒素および/またはアルゴンを含む小分子、および/または他の大分子、例えば揮発性有機化合物(VOC)として一般に既知のもの、アルカン、石油、ハロゲン化炭化水素の貯蔵のための貯蔵ユニットを含む。特定実施形態はまた、1つ以上のガス状実体の混合物のための貯蔵システムを含んでいてもよい。実施形態において、1つ以上のガス状実体は、所定時間、例えば所定の秒、分、時間、日または年の間、本開示のSOF中に貯蔵されることができる。
【0033】
ガスの「天然圧縮率」という用語は、例えば高圧力下にある場合のガスの公称挙動を指す。圧縮下、ガス状実体の濃度は増大する:所与の体積内では、低圧力下よりも高圧力下でより多くのガス状実体を貯蔵できる。故に、多孔質材料の孔体積内では、その天然圧縮率を超えてガス状実体を濃縮できる。
【0034】
ガス状化学実体は、ガス状化学実体の天然圧縮率よりも高い約1.05倍から、その液化時におけるガス状化学実体のおよその濃度まで、例えばガス状化学実体の天然圧縮率よりも高い約1.1倍から、液化時におけるガス状化学実体のおよその濃度まで、またはガス状化学実体の天然圧縮率よりも高い約1.5倍から液化時のガス状化学実体のおよその濃度までの濃度で、SOF中に存在し得る。
【0035】
一般に円筒状槽を必要とする従来の吸着粉末とは異なり、本開示の多孔質SOFは、モバイル用途に関するそれらの適用性は制限されない。例えば、多孔質SOFは、ガス貯蔵システムのための代替幾何学形状で存在してもよく、そうすることで、多孔質SOFは、SOFが首尾よく車両システムに導入される(例えば構造上の要素に一体化される)ことができるので、デバイス/車両に継ぎ目なしで一体化でき、または別の方法としてSOFシートは、現在の貯蔵幾何学形状、例えば円筒状槽などに含まれる貯蔵材料として機能するように適合できる。
【0036】
少なくとも1つの多孔質SOFを含む収着剤材料に1つ以上のガス状実体を取り込む方法が提供される。少なくとも1つの多孔質SOFを含む収着剤材料に1つ以上のガス状実体を取り込む方法が提供され、そうすることで1つ以上のガス状実体は、少なくとも1つの多孔質SOFを含む収着剤材料に貯蔵され得る。方法は、本開示の少なくとも1つの多孔質SOFを含む収着剤材料を、1つ以上のガス状実体と接触させる工程を含んでいてもよい。1つ以上のガス状実体の取り込みは、1つ以上のガス状実体の貯蔵を含んでいてもよい。1つ以上のガス状実体は、エネルギー供給源として使用するのに好適な条件下で貯蔵される。
【0037】
本開示の分離方法において、1つ以上のガス状実体は、本開示のSOFを含む収着剤材料と接触させる。
【0038】
利用される1つ以上のガス状実体は、1つ以上のターゲットガス状実体および1つ以上の非ターゲットガス状実体の混合物を含んでいてもよい。多孔質SOFは、ターゲットガス状実体の選択的取り込みのために利用可能な複数の部位を有する複数の孔を含んでいてもよい。方法は、1つ以上のターゲットガス状実体の選択的な取り込みのために、1つ以上のターゲットガス状実体を複数の利用可能な部位に拡散させることによって収着剤材料とガス状実体とを接触させることを含んでいてもよい。1つ以上のターゲットガス状実体は、混入物質であってもよい。
【0039】
非ターゲットガス状実体は、精製が所望されるような分子の組成物を含んでいてもよい。例えば、本開示の方法において、非ターゲットガス状実体は、水を含んでいてもよく、ガス状実体と収着剤材料とを接触させる工程は、水蒸気供給ストリームを収着剤材料と接触させる工程、および混入物質であってもよい1つ以上のターゲットガス状実体を選択的に取り込むことによって水蒸気を精製するために水蒸気を収着剤材料を通して拡散させる工程を含んでいてもよい。
【0040】
方法は、多孔質SOFを含むデバイスとガス状実体とを接触させる工程を含むガス状実体の取り込みのために提供される。
【0041】
SOFのセグメントは、所望の特性(例えば、特定の電気的または立体的特性)を有する部位を創製するために官能化されてもよい。このようにSOFが官能化できることは、孔が高濃度の秩序化部位を伴って並べられ得るので、例えばSOFそれぞれについて変更できる疎水性、親水性、極性、非極性、電子的、立体的特性、ならびに他の特性といった特性をSOFのセグメントおよびリンカーの官能化によって調整でき、多くの貯蔵、分離および/または触媒作用用途に有用である。
【0042】
多孔質SOFは、無機ゼオライトおよびMOFの両方よりも優れた利点(例えば高い安定性および特に加水分解安定性)を有するので、高効率の触媒作用、分離および貯蔵用途に適用できる。多孔質SOFは、ろ過、ガス貯蔵などに有用なナノ多孔質構造を有していてもよい。孔サイズは、約4オングストローム〜約40オングストローム、約6オングストローム〜約30オングストローム、または約7オングストローム〜20オングストロームの範囲であってもよい。多孔質SOFは、極性溶媒、非極性溶媒、酸性溶媒、塩基性溶媒、有機溶媒、および水を還流させる際に、MOFおよびCOFを超える並外れた化学安定性を有することができる。
【0043】
多孔質SOFを形成するために反応させるビルディングブロックは、有機的に並んだケージおよび所定のサイズおよび形状のチャンネルを提供してもよい。特定のビルディングブロックは、官能基がケージおよびチャンネルおよび/または孔に並ぶように選択され、および/またはさらに官能化されてもよい。実施形態において、特定のビルディングブロックは、所定の孔サイズを有する所望のSOF構造が得られるように、選択および/またはさらに官能化されてもよい。
【0044】
多孔質SOFは、1つ以上の次の特徴を含んでいてもよい:複数の孔の表面積が約75m2/gを超える、複数の孔の表面積が約75〜約3500m2/gである;複数の孔の表面積が約150〜約2000m2/gである;多孔質SOFを含む複数の孔の平均孔体積が約0.05〜約1.7cm3/g、例えば約0.1〜約1.6cm3/gの範囲である;多孔質SOFの骨格が約0.3〜約1.5g/cm3の範囲の密度を有する。
【0045】
多孔質SOFは、少なくとも200℃までの範囲の熱安定性、または少なくとも300℃までの範囲の熱安定性、例えば約250超過〜約700℃の範囲の熱安定性、例えば約300超過〜約450℃の範囲の熱安定性を含んでいてもよい。多孔質SOFは、約75m2/g〜約3500m2/gのラングミュア表面積を含んでいてもよい。
【0046】
多孔質SOFを含むガス貯蔵および/またはガス分離材料も提供される。本開示の多孔質SOFは、ガス分子を貯蔵または分離するために1つ以上の部位を含んでいてもよい。ビルディングブロックは、SOFの官能基がガス分子を貯蔵または分離するために1つ以上の部位を形成するように官能化されてもよい。本開示のガス貯蔵材料に貯蔵されてもよいガスとしては、極性ガス、非極性ガス、および/または多孔質SOFの孔の表面積における1つ以上の部位に結合するために利用可能な電子密度を含むガス分子を挙げることができる。こうした電子密度は、そこに含有される2つの原子間の複数の結合を有する分子または孤立電子対を有する分子を含み得る。こうしたガスの好適な例としては、アンモニア、アルゴン、メタン、天然ガス、水、窒素、酸素、硫化水素、チオフェン、二酸化硫黄、CO2、CO、水素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含むガスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
多孔質SOFは、ガス状実体(ガス、炭化水素、分子、原子など)を貯蔵するために使用されてもよい。多孔質SOFの貯蔵容量は、ガス状実体によって占有される利用可能な孔体積のパーセンテージの観点で記載されてもよい。多孔質SOFの利用可能な孔構造が全体的に占有されている場合、SOFは、100%の充填または貯蔵容量と記載できる。SOFの孔体積は、SOFの孔の体積/質量比(cm3/g)として規定されてもよく、こうした量は、ガス吸着測定から決定されてもよい。ガス状実体によって占有されるSOF孔構造の体積は、ガス状実体に曝される際に多孔質SOFの質量変化を測定し、既知または計算された分子体積値を用いることによりガス状実体の対応する体積を計算することによって決定できる。多孔質SOFについていかなる程度の充填容量が、選択されてもよい。保有された多孔質SOF系ガス状実体貯蔵システムは、約40%〜約100%、または約60%または約100%、または約80〜約95%の範囲の充填容量を有していてもよい。
【0048】
多孔質SOFを含むガス貯蔵材料は、ガス状混合物から所望のガスを分離するためにも使用できる材料、例えば貯蔵されるべきガスを(ガス状混合物から)回収するために使用できるガス貯蔵材料であってもよい。多孔質SOFを含むガス貯蔵材料は、水素(H2)を貯蔵するために使用される水素貯蔵材料であり、および場合により多孔質SOFを含むガス貯蔵材料が、貯蔵されるべきH2ガスを(ガス状混合物から)分離するために使用されてもよいH2貯蔵材料である。ガス貯蔵材料は、二酸化炭素(CO2)貯蔵材料、例えば貯蔵されるべきCO2を(ガス状混合物から)分離するために使用されてもよいCO2貯蔵材料であってもよい。
【0049】
他の材料に埋め込まれるまたは成形体に圧縮される必要がある粉末を使用する従来のガス分離プロセスとは対照的に、多孔質SOFは、直接フィルムの形状に形成でき、そうして所望によりさらなる処理を行わずに、圧力スイング吸着のようなプロセスに使用されてもよい。
【0050】
圧力スイング吸着(PSA)プロセスは、圧力下でガスが固体表面に引き付けられるかまたは「吸着される」傾向があるという事実に依る。圧力が高くなるにつれて、より多くのガスが吸着される;圧力が低下する場合、ガスは放出されるかまたは脱着される。PSAプロセスは異なるガスが異なる固体表面に多かれ少なかれ強く引き付けられる傾向があるので、混合物中のガスを分離するために使用できる。空気のようなガス混合物を、例えば酸素の場合よりも強く窒素を引き付ける吸着剤床を含有する容器に圧力下で通過させる場合、窒素の一部またはすべては、床に留まり、容器から出るガスは酸素が豊富になる。
【0051】
圧力スイング吸着プロセスは、多孔質材料(吸着剤)のガスに対する固有の親和性を用いることによってガス分子を選択的に「ろ過」する。本明細書に記載される方法、材料、組成物、デバイスおよびシステムは、ガス分子と相互作用する多孔質SOFを含む収着剤床を使用することによって圧力スイング吸着プロセスにおいて実質的な改善の達成を可能にし、ここで多孔質SOFを含む収着剤床は、粉末よりもむしろ永続的に多孔質の膜またはフィルムの形態である。
【0052】
多孔質SOFを含む床が、ガス、例えば窒素を吸着する容量の限度に到達する場合、圧力を低下させることによって、吸着されたガス、例えば窒素を放出させることにより再生できる。次いで、酸素が豊富な空気のようなターゲットガスが豊富な生成物を生じる別のサイクルのために準備される。これはまさに、呼吸のために酸素が豊富な空気を必要とする肺気腫患者などにより使用される携帯用酸素濃縮機に使用されるプロセスである。PSAは、現在粉末吸着剤を用いることによって制限されている。例えば、吸着床において、顕著な「デッドスペース」が粒子間に存在し、ここでは選択的な吸着が行われない。故に、必要とされる吸着剤の最適質量を収容するために、大きな体積が必要とされる。粉末を多孔質SOFを含む膜で置き換えることにより、吸着剤のより効率の良い圧縮が可能になり(例えば丸める/折り畳む/積み重ねる)、PSAプロセスのためのより小さい新規な幾何学形状/フットプリントについて選択肢を与え、これが特に、モバイル/携帯用ガス分離デバイス(例えば酸素濃縮機)に役立つ。
【0053】
本開示の多孔質SOFは、所望の形状、例えばフィルムに直接形成されてもよく、そうして所望によりさらなる処理を行わずに、可逆性の浸透プロセスのようなプロセスに使用できる。逆浸透は、浸透圧を上回る圧力を適用することによって、高濃度溶質領域から膜を通して低濃度溶質領域に溶媒を送り込むプロセスである。これは、外部圧力が適用されない場合には、低溶質濃度の領域から膜を通しての高濃度溶質領域への溶媒の自然な動きである浸透プロセスの逆である。多孔質SOFは、半透過性であってもよく、これは溶質ではなく溶媒の通過を可能にすることを意味する。多孔質SOFは、大抵の分離が生じる高密度バリア層を有する膜のような逆浸透のための膜であってもよい。多孔質SOF膜は、塩のような溶質の通過を防ぎつつ、この高密度層を通過するのは水だけであるように設計されてもよい。逆浸透プロセスは、一般に、膜の高濃度側に高圧を働かせることが必要とされ、新鮮な水および半塩水のような組成物については通常2〜17bar(30〜250psi)、海水について40〜70bar(600〜1000psi)であり、克服しなければならない天然浸透圧は約24bar(350psi)である。
【0054】
膜は、あらゆる程度にて、駆動力の下で、その構造内に実体(ガス状、化学的、生物学的など)を通過させることを制限または許容できる選択性バリアである。駆動力は、圧力勾配、濃度勾配、伝導力、温度勾配または機械的摂動を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0055】
多孔質SOFの少なくとも1つは、単層または多層膜を形成されてもよい。1つ以上の実質的にピンホールがないSOFまたはピンホールがないSOFであってもよい多孔質SOFを含む膜は、所望により他の膜、または他のガス分離技術、例えば溶媒吸収(例えばSelexol、Rectisol、Sulfinol、Benfield)、アミン吸収(例えばDEA、MDEA)、物理的吸着、低温技術などと組み合わせて使用されてもよい。多孔質SOFを含む膜は、ターゲットガスを含有する供給ガスをターゲットガスが豊富なガスストリームおよびターゲットガスを欠いたガスストリームに分離するために調整されてもよい(ターゲット種に対して既知の親和性を有する特定成分を選択することによって)。多孔質SOFを含む膜は、極性および非極性ガスを含む供給ガスを、極性ガスが豊富なガスストリームおよび極性ガスを欠いたガスストリームに分離するために使用されてもよい。
【0056】
ターゲットガスは、膜のユーザーにとって価値があるガスであってもよく、ユーザーが回収しようとするガスであってもよい。代替実施形態において、ターゲットガスは、所望でないガス、例えばユーザーがガスストリームから分離しようとする、例えばガスストリームを精製しようとするまたは環境を保護するための、汚染物質または混入物質であってもよい。
【0057】
多孔質SOFを含む膜は、極性ガス(CO2、H2S)を除去することによって、天然ガス(主にメタンを含む混合物)を精製するために使用されてもよい;合成ガスを精製するために;および水素からおよび燃料ガスからCO2を除去するために使用されてもよい。燃料ガスは、通常、暖炉、オーブン、炉、ボイラー、燃料機関、および発電所から生じる。燃料ガスの組成は、燃焼されているものに依存するが、通常それらは、大部分が、空気から誘導される窒素(通常2/3を超える)、燃焼から誘導されるCO2、および水蒸気ならびに酸素を含有する。燃料ガスはまた、粒子状物、一酸化炭素、酸化窒素および酸化硫黄といった汚染物質を少量パーセンテージで含有する。
【0058】
本明細書に記載される分離方法は、多孔質SOFを含む膜を使用し、ターゲットガスを含む供給ガスを、供給ガスよりターゲットガスが豊富な生成物ガスストリームおよび供給ガスよりもターゲットガスが少ない廃棄物ガスストリーム(これは分離プロセスを通してリサイクルされてもよい)に分離するために有用な場合がある。
【0059】
本開示の分離方法は、種々の多孔質SOF組成物を用いて分離されるべきおよび/または貯蔵されるべき1つ以上のガスの吸着等温線を測定することを含んでいてもよい。例えば、ガス状混合物、例えばCO2、メタン、一酸化炭素および窒素を含む例示的なガス状混合物からCO2を分離するために、吸着等温線が、各ガスについて種々の多孔質SOF組成物を用いて測定されてもよい。次いで、特定の多孔質SOF組成物は、分離されるべきおよび/または貯蔵されるべき所望のガス(例えばCO2)に関して不均衡に高い(または低い)親和性および容量)を有するように選択されてもよい。
【0060】
ガス状混合物は、所望のガス状実体について不均衡に高い親和性および容量(または不均衡に低い親和性および容量)を有する多孔質SOFを含むろ過/分離カラムを介してろ過または分離されてもよい。SOFについて特定のガスの親和性は、当該技術分野において共通して実施されているように、ゼロ被覆での吸着の等比体積熱を測定することによって決定できる。こうしたカラムは、多成分ガス中の他のガス状成分からCO2を分離できる多孔質SOF組成物を含んでいてもよい。実施形態において、こうしたカラムは、多成分ガス中の他のガス状成分から特定の異性体(例えば炭水化物異性体(例えばブタン異性体)および/またはキシレン異性体)を分離できる多孔質SOFを含んでいてもよい。多孔質SOFは、混合物、例えばガス状混合物の特定成分について不均衡に高い選択性、親和性および/または容量を有するように特別に設計されてもよい。多孔質SOFは、ガス状混合物のような混合物中の所望の成分以外の混合物中の各成分について不均衡に高い選択性、親和性および/または容量を有するように特別に設計されてもよい。
【0061】
本明細書に記載される多孔質SOFは、電池、燃料電池、水精製などに使用されるような膜に組み込まれてもよい。分離方法は、所定の成分を「欠いた」と言及されてもよい残余分をもたらし得る。分離方法は、所望の生成物を保持し得る流出物ストリームをもたらし得る。多孔質SOF組成物によって分離される供給物サイドおよび流出物サイドを有する分離システムを用いて多成分混合物、例えばガス状混合物から1つ以上の成分を分離する装置および方法も提供される。多孔質SOF組成物は、カラム中に存在してもよい。
【0062】
多孔質SOFを含むガス貯蔵材料が提供される。本明細書に記載される方法、組成物およびシステムによって貯蔵または分離されてもよいガスとしては、極性ガス分子、非極性ガス分子、および1つ以上の部位に結合するために利用可能な電子密度を含むガス分子が挙げられる。こうした電子密度は、そこに含有される2つの原子間の複数の結合を有する分子または孤立電子対を有する分子を含む。こうしたガスの好適な例としては、アンモニア、アルゴン、CO2、一酸化炭素、水素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含むガスを挙げることができる。実施形態において、多孔質SOFを含むガス結合材料は、所望のガス、例えばCO2をガス状混合物から分離するために使用されてもよい結合部位を保持する。
【0063】
ガス貯蔵部位は、所望のサイズまたは電荷を有する基で官能化されるSOF中の孔を含む。こうした基は、セグメントおよび/またはリンカーの一部であってもよい。この基は、キャップされたSOFの一部であってもよい。
【0064】
本明細書で記載される多孔質SOFは、ガス吸着のための複数の孔を含み、これが単峰型サイズ分布または多峰型サイズ分布(例えば二峰型、三峰型など)を有していてもよい。
【0065】
多孔質SOFは、複数のセグメント、共有結合性有機骨格(COF)として整列された複数のリンカーを含み、例えば「溶媒耐性」SOF、キャップされたSOF、コンポジットSOFおよび/または周期的SOFを含む。
【0066】
「実質的にピンホールがないSOF」または「ピンホールがないSOF」は、反応混合物から形成されてもよい。「実施的にピンホールのないSOF」は、平方cmあたりの2つの隣接セグメントコア間の距離を超えるピンホール、孔またはギャップを含有しない;またはcm2あたり約250ナノメートルを超える直径のピンホール、孔またはギャップが10個未満、またはcm2あたり約100ナノメートルを超える直径のピンホール、孔またはギャップが5個未満である。「ピンホールのないSOF」は、ミクロン2あたりの2つの隣接セグメントのコア間の距離を超えるピンホール、孔またはギャップを含有しない、またはミクロン2あたり約500オングストローム、約250オングストローム、または100オングストロームを超える直径のピンホール、孔またはギャップを含有しない。
【0067】
種々の例示的な分子ビルディングブロック、セグメントタイプ、リンカータイプ、SOFタイプ、キャッピング基、特定SOFタイプを合成するための方策の説明は、米国特許出願整理番号12/716,524;12/716,449;12/716,706;12/716,324;12/716,686;12/716,571;12/815,688;12/845,053;12/845,235;12/854,962;12/854,957;および12/845,052に詳述されている。
【0068】
本開示のSOFは、セグメント(S)を有する分子ビルディングブロックを含み、少なくとも2つの官能基を必要とする。官能基は、分子ビルディングブロックの反応性化学部分であり、SOF形成プロセス中に、セグメント同士を連結させる化学反応に関与する。セグメントは、官能基を支持し、官能基に関連しない全原子を含む分子ビルディングブロックの一部分である。分子ビルディングブロックの対称性は、分子ビルディングブロックセグメントの周辺付近の官能基(Fg)の位置決めに関連する。
【0069】
図1A、図1B、図1C、図1D、図1E、図1F、図1G、図1H、図1I、図1J、図1K、図1L、図1M、図1N、図1Oは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示す。こうした対称型要素は、使用され得るビルディングブロックに見出される。
【0070】
SOFのための分子ビルディングブロックとして機能し得る例示的な分子実体の例としては、炭素原子コアまたはケイ素原子コアを含有するビルディングブロック;アルコキシコアを含有するビルディングブロック;窒素原子コアまたはリン原子コアを含有するビルディングブロック;アリールコアを含有するビルディングブロック;カーボネートコアを含有するビルディングブロック;炭素環、炭素二環、または炭素三環のコアを含有するビルディングブロック;およびオリゴチオフェンコアを含有するビルディングブロックが挙げられる。多孔質SOF反応混合物中の上記1つ以上の分子ビルディングブロックの組み込みは、それぞれ炭素、窒素、ケイ素またはリン原子コア、アルキルコア、フルオロアルキルコア、アルコキシコア、アリールコア、カーボネートコア、炭素環式コア、炭素二環式コア、炭素三環式コアおよびオリゴチオフェンコアからなる群から選択される1つ以上のコアを有する複数のセグメントを有する多孔質SOFをもたらし得る。
【0071】
SOFは、理想的な三角形ビルディングブロック、歪んだ三角形ビルディングブロック、理想の四面体ビルディングブロック、歪んだ四面体ビルディングブロック、理想の正方形ビルディングブロック、および歪んだ正方形ビルディングブロックからなる群から選択される少なくとも1つの対称型ビルディングブロックを含む。官能基は単一原子を含んでいてもよく、または官能基は、ハロゲン、アルコール、エーテル、ケトン、カルボン酸、エステル、カーボネート、アミン、アミド、イミン、尿素、アルデヒド、イソシアネート、トシレート、アルケン、アルキンのような1つを超える原子を含んでいてもよい。
【0072】
キャッピングユニットは、単一タイプまたは2つ以上のタイプの官能基および/または化学部分を含んでいてもよい。セグメントは、官能基を保持し、官能基に関連しない全原子を含む分子ビルディングブロックの一部分である。SOFのセグメント(または複数のセグメントのうち1つ以上)は、炭素でない少なくとも1つの元素原子を含んでいてもよく、例えばセグメント構造は、水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレニウム、フッ素、ホウ素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つの原子を含む。
【0073】
リンカーは、分子ビルディングブロックおよび/またはキャッピングユニットに存在する官能基間での化学反応時にSOF中に現れる化学部分である。
【0074】
多孔質SOFは、単原子リンカー、単一共有結合リンカー、および二重共有結合リンカー、エステルリンカー、ケトンリンカー、アミドリンカー、アミンリンカー、イミンリンカー、エーテルリンカー、ウレタンリンカー、およびカーボネートリンカーからなる群から選択される1つ以上のリンカーを含んでいてもよい。
SOFのリンカー(または複数のリンカーのうち1つ以上)は、炭素でない少なくとも1つの元素原子を含んでいてもよく、例えばリンカーの構造は、水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレニウム、フッ素、ホウ素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つの原子を含む。
【0075】
SOFは、いずれかの好適なアスペクト比、例えば約30:1より大きく、または約50:1より大きいアスペクト比を有する。SOFのアスペクト比は、その平均厚さ(すなわち、最も短い寸法)に対する、その平均の幅または直径(厚さに対して次に大きな寸法)の比であると定義される。
【0076】
物理的に積み重ねられたまたは化学的に積み重ねられた多層SOFは、約20オングストローム超過、例えば約20オングストローム〜約10cm、または約0.1mmオングストローム〜約5mmの厚さを有していてもよい。原理上、このプロセスに関して、物理的に積み重ねられ得る層の数に制限はない。
【0077】
連結化学反応としては、例えば縮合、添加/削除、および添加反応を挙げることできる。SOFは、高い熱安定性(典型的には、周囲条件下で400℃よりも高い);有機溶媒への低い溶解度(化学安定性)、および多孔性(ゲストを可逆的に取り込むことができる)を有する。追加の機能は、従来のCOFに固有でない特性を示し、分子ビルディングブロックの選択によって生じてもよく、その分子組成が得られたSOFに追加の機能を提供する。
【0078】
分子ビルディングブロックの「偏った特性」という用語は、ある特定の分子組成物について存在することが知られている特性、またはセグメントの分子組成を観察すれば、当業者ならば合理的に特定可能な特性を指す。
【0079】
SOFの疎水性(超疎水性)、親水性、疎油性(超疎油性)、親油性、光発色性および/または電気活性(導体、半導体、電荷輸送材料)性質は、SOFの「追加機能」を表し得る特性の一部の例である。フッ素化セグメントとしては、例えばテトラフルオロヒドロキノン、ペルフルオロアジピン酸水和物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロプロピリデン)ジフェノールなどを挙げることができる。
【0080】
多孔質SOFを製造するプロセスは、典型的には、多くの作業または工程を含み、いずれかの適切な順序で行ってもよく、または、2つ以上の作業を同時に行ってもよく、非常に近い時間に行ってもよい:
(a)それぞれ1個のセグメントと多くの官能基とを含む複数の分子ビルディングブロックおよびプレSOFを含む、液体を含有する反応混合物を調製する工程;
(b)この反応混合物を湿潤フィルムとして堆積させる工程;
(c)分子ビルディングブロックを含む湿潤フィルムの、複数のセグメントと、共有結合性有機骨格として整列した複数のリンカーとを含むSOFを含む乾燥したフィルム(乾燥SOF)への変化を促進し、この共有結合性有機骨格が、巨視的な見方だとフィルムである工程;
(d)場合により、コーティング基材からSOFを取り外し、自立型SOFを得る工程;
(e)場合により、この自立型SOFをロールへと加工する工程;
(f)場合により、このSOFを切断し、ベルトになるように縫い合わせる工程;
(g)場合により、SOF(上記SOF形成プロセスによって調製された)上にてSOF形成プロセスによって調製された)を基材として用い、次のSOF形成プロセスで上記SOF形成プロセスを行う工程;および
(h)場合により、上記乾燥SOFを活性化して複数の孔を空にして、SOFを形成後に残留し得るいずれかの残留化学種を除去する工程。
【0081】
キャッピングユニットおよび/または第2の成分は、工程a、bまたはcのいずれかの間に添加されてもよい。プロセス作用A:反応混合物は、液体に溶解するか、懸濁するか、または混合するような複数の分子ビルディングブロックを含む。1つ以上の分子ビルディングブロックが液体である場合、さらなる液体の使用は任意である。触媒は、場合により、作用Cの間に、プレSOF形成を可能にするおよび/またはSOF形成の動力学を変更するために反応混合物に添加されてもよい。反応混合物成分(分子ビルディングブロック、場合により液体、場合により触媒、場合により添加剤)は容器にて組み合わせられる。反応混合物はまた、湿潤フィルムとして反応混合物を堆積させる前に配合物成分の均一分布を確実にするために、混合、撹拌、ミル加工などを行ってもよい。
【0082】
反応混合物を、湿潤フィルムとして堆積させる前に加熱してもよい。これは、1つ以上の分子ビルディングブロックの溶解を助け、および/またはプレSOFを形成するために湿潤層を堆積させる前に反応混合物の部分反応によって、反応混合物の粘度を増大させてもよい。反応混合物の粘度は、約10〜約50,000cps、例えば約25〜約25,000cps、または約50〜約1000cpsの範囲である。ビルディングブロックの保有量は、約3〜100%、例えば、約5〜約50%、または約15〜約40%の範囲であってもよい。存在する場合、キャッピングユニット保有量は、約3重量%〜80重量%、例えば約5〜約50重量%、または約15〜約40重量%の範囲であるように選択されてもよい。
【0083】
分子ビルディングブロックおよびキャッピングユニットを保有すること、または反応混合物中の「保有量」は、分子ビルディングブロックと、場合により、キャッピングユニットおよび触媒との総重量を、反応混合物の総重量で割ったものであると定義される。
【0084】
反応混合物中で用いられる液体は、純粋な液体(例えば、溶媒)であってもよく、および/または溶媒混合物であってもよい。
【0085】
液体としては、アルカン;芳香族化合物;エーテル;エステル;ケトン;アミン;アミド;アルコール;ニトリル;ハロゲン化芳香族;ハロゲン化アルカン;および水などを挙げることができる。
【0086】
場合により、反応混合物中に触媒を存在させて、湿潤層の乾燥したSOFへの促進を補助してもよい。典型的な触媒の保有量は、反応混合物中の分子ビルディングブロックの保有量の約0.01%〜約25%、または約0.1%〜約5%の範囲である。触媒は、最終的なSOF組成物中に存在していてもよく、存在していなくてもよい。場合により、添加剤または第2の成分(例えば、ドーパント)が、反応混合物および湿潤層に存在していてもよく、または乾燥SOFに一体化されてもよい。用語「添加剤」または「第2の成分」とは、SOF中で共有結合しない原子または分子を指し、それらとしては、ポリマー材料、カーボンナノチューブ、ナノファイバー凝集体、金属粒子、貴金属、非貴金属およびそれらの合金、衝撃調整剤、強化繊維、潤滑剤、静電気防止剤、カップリング剤、湿潤剤、防霧剤、難燃剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、殺生物剤、染料、顔料、着臭剤、防臭剤、核形成剤などを挙げることができる。
【0087】
第2の成分または添加剤は、それぞれが、または組み合わせた状態で、組成物中に任意の望ましい量または任意の有効な量で存在していてもよく、例えば、組成物の約1重量%〜約50重量%、または約1重量%〜約20重量%の量で存在していてもよい。プロセス作用B:反応混合物を、湿潤フィルムとして種々の基材に適用してもよい。反応混合物は、約10nm〜約5mm、または約1μm〜約500μmの範囲の厚さを得るために、多くの液体堆積技術(スピンコーティング、ブレードコーティング、ウェブコーティング、浸漬コーティング、カップコーティング、ロッドコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレーコーティング、スタンピングなどを含む)を用いて、基材に適用されてもよい。プロセス作用C:用語「促進する」は、分子ビルディングブロックおよび/またはプレSOFの反応、例えば、ビルディングブロックおよび/またはプレSOFの官能基の化学反応を容易にする任意の適切な技術を指す。液体を除去して乾燥フィルムを作成する必要がある場合には、「促進する」は、液体を除去することも指す。用語「乾燥SOF」は、液体の含有量がSOFの約5重量%未満、または液体の含有量がSOFの2重量%未満の、実質的に乾燥したSOFを指す。
【0088】
湿潤層から乾燥SOFの形成の促進は、典型的には、オーブンでの乾燥、赤外線(IR)を含む、温度が40〜350℃の範囲での熱処理を含む。総加熱時間は、約4秒〜約24時間の範囲であることができる。炭素IRエミッタまたは短波IRエミッタに関する情報を以下の表にまとめている(表1)。
【表1】
【0089】
場合により、自立型SOFまたは可撓性基材によって支持されるSOFは、ロールに処理されてもよい。SOFは、貯蔵、取り扱いおよび種々の他の目的のためにロールに処理されてもよい。SOFは、多層構造化有機フィルムを与えるSOF形成プロセスに基材として使用されてもよい。多層SOFの層は、化学的に結合し、または物理的に接触してもよい。
【0090】
プロセス作用H:場合により乾燥SOFの活性化。
【0091】
場合により、乾燥SOFを活性化して複数の孔を空にして、SOFを形成後に残留し得るいずれかの残留化学種を除去してもよい。乾燥SOFを活性化することは、溶媒、例えば有機溶媒(例えば揮発性有機溶媒)中に、所定の時間、例えば約12時間以上、SOFを浸漬することを含んでいてもよい。場合により、溶媒は、一新されてもよく、浸漬工程は、SOFが含浸された溶媒中の残留種の溶出濃度が10ppm未満、または0.1ppm未満のレベルになるまで繰り返されてもよい。SOFは、場合により、上記浸漬工程のいずれか前後において、1つ以上の温度で加熱されてもよい(減圧ありまたはなし)。加熱温度は、乾燥SOFの熱特性および浸漬溶媒の同一性に基づいて選択されてもよい。例えば、一般に乾燥SOFは、150℃の温度に12時間加熱されてもよく、次いで10−5torrで60℃で12時間劣化をともなわずに加熱されてもよい。
【0092】
(作用A)次を組み合わせた:ビルディングブロック(4,4’,4’’,4’’’−(ビフェニル−4,4’−ジイルビス(アザネトリル))テトラキス(ベンゼン−4,1−ジイル))テトラメタノール[セグメント=(4,4’,4’’,4’’’−(ビフェニル−4,4’−ジイルビス(アザネトリル))テトラキス(ベンゼン−4,1−ジイル);Fg=アルコール(−OH);(1.48g,2.4mmol)]、および8.3gのN−メチルピリジノン。混合物を振とうし、均質溶液が得られるまで40℃に加熱した。室温までの冷却時、溶液を0.45ミクロンのPTFE膜を通してろ過した。ろ過された溶液に、N−メチルピロリドン中のp−トルエンスルホン酸10重量%溶液を0.15gとして送達される酸触媒を添加して、液体含有反応混合物を得た。
【0093】
(作用B)反応混合物を、10milギャップを有するバードバーを装備した定速ドローダウンコーターを用いて、金属化された(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射サイドに適用した。
【0094】
(作用C)湿潤層を支持する基材を、140℃に予熱された活性ベント型オーブンに素早く移し、40分間加熱した。これらの作用により、約5〜10ミクロンの範囲の厚さを有する乾燥SOFが得られた。SOFの色は緑−黄色であった。
【0095】
乾燥SOFは、SOF形成の後、残留し得るいずれかの化学種を有する孔を空にするために活性化した。乾燥SOFは、アセトンに12時間浸漬され、次いでアセトンを一新し、第2の浸漬を24時間行った。アセトン浸漬の後、乾燥SOFは、150℃で12時間加熱し、次いで60℃、10−5torrにて12時間加熱した。
【0096】
これらのフィルムの永続的な多孔性は、最新のガス吸着方法を用いて測定されたが、ここで活性化されたサンプルは、超臨界条件下でCO2に曝され、ガス吸着等温線を得た(図2)。密度汎関数理論を用いるこの等温線の続く評価は、材料の多孔性の計量的パラメータを予測する。
【0097】
SOFのラングミュア表面積は、155m2/g(+/−1.7m2/g)であると決定された。等温線の可逆性(すなわちCO2ガスの脱着)は、孔が永続的であり、ポリマー膜の場合で頻繁に見られるような崩壊を生じないことを示す。
【0098】
加えて、図2の等温線から、SOFにおける孔サイズの分布が、決定できる(図3)。図3における孔サイズ分布は、孔の2つのサイズが約6オングストローム(0.6nm)〜約8.5オングストローム(0.85nm)でSOF内に存在することを示す。これらの孔サイズは、車両用途では水素およびメタンのようなホストガス分子に適切であり、圧力スイング吸着プロセスを用いる燃焼廃棄物ガスストリームからのCO2の分離にも理想的である。SOFの多孔性は、SOF内において内部孔構造を変更するビルディングブロックを用いることによって推定的に調節できる。例えば、SOFは、他のより大きなおよび/または分岐ビルディングブロックおよびリンカーを用いることによって、SOF内のより「開放された」孔構造を有するように創製されてもよい。増大した多孔性を支持する分子ビルディングブロックのセグメントの例を以下に示す:
【化1】
【背景技術】
【0001】
多孔質材料は、比較的大きな比表面積を有するので、多量のガスまたは有機小分子を吸着できる。こうした多孔質材料は、ガス貯蔵、ガス分離、イオン輸送膜を含む用途に有用であることができ、一般には化学実体を材料を通して捕捉または輸送することが必要とされる用途に有用であることができる。加えて、多孔質材料は、誘電体、新規なコンポジット(例えばP/R、融合、薬物放出)、スーパーキャパシタ、または触媒作用のような他の用途に有用であり得る。永続的に多孔質である材料の大部分は、通常、耐火性粉末として得られる無機化合物であり、これはフィルムを創製するためには他の材料に埋め込まれる必要があり、そうすることでデバイスの一体化に適切となり得る(例えば、エレクトロニクス、燃料電池、バッテリ、ガス分離膜など)。
【0002】
典型的な多孔質材料は、2nm未満の孔サイズを有するミクロ多孔質材料、2nm〜50nmの孔サイズを有するメソ多孔質材料、および50nmより大きい孔サイズを有するマクロ多孔質材料を含む。1995年において、Omar Yaghiが、実用化に非常に近い金属有機配位ポリマーであるMOF(金属有機骨格)(Nature,1995,(378),703を参照)を合成した。新規な機能性分子材料として、MOFは、ゼオライトのモレキュラーシーブと同様の結晶性構造を有するだけでなく、その構造を設計することができる。MOFは、トポロジー構造を直接設計すること、および有機官能基を拡大させることによって、ナノサイズの孔チャンネルおよびキャビティを得ることができる。しかし、MOFは、化学安定性が比較的劣る。2005年には、Omar Yaghiは、有機多孔質骨格材料であるCOF(共有結合性有機骨格)(Science,2005,(310),1166を参照のこと)を開示したが、これは共有結合を介して連結される軽い元素(C、H、O、B)を含む。しかし、化学安定性の問題は全く解決されていない。
【0003】
COFは、これが高度にパターニングされることを目的とする点において、ポリマー/架橋ポリマーとは異なる。COF化学において、分子成分は、モノマーではなく分子ビルディングブロックと呼ばれる。COF合成の間に、分子ビルディングブロックは、二次元または三次元ネットワークを形成するように反応する。結果として、分子ビルディングブロックは、COF材料全体を通してパターニングされ、分子ビルディングブロックは、強い共有結合を通して互いに連結される。
【0004】
これまで開発されたCOFは、通常高い多孔性を有する粉末であり、並外れて密度が低い材料である。COFは、過去最高に近い水準の量のアルゴンおよび窒素を貯蔵できる。これら従来のCOFは有用であるが、向上した特徴の観点から従来のCOFよりも優る利点を提供する新規な材料が必要とされており、この必要性は本発明の実施形態によって対処される。
【0005】
従来のCOFの特性および特徴は、次の文書に記載されている:
【0006】
Yaghi et al.,米国特許第7,582,798号明細書;
【0007】
Yaghi et al.,米国特許第7,196,210号明細書;
【0008】
Shun Wan et al.,「A Belt−Shaped,Blue Luminescent,and Semiconducting Covalent
Organic Framework」,Angew.Chem.Int.Ed.,Vol.47,pp.8826−8830(ウェブ上での公開01/10/2008);
【0009】
Nikolas A.A.Zwaneveld et al.,「Organized Formation of 2D Extended Covalent Organic Frameworks at Surfaces,」J.Am.Chem.Soc.,Vol.130,pp.6678−6679(ウェブ上での公開04/30/2008);
【0010】
Adrien P.Cote et al.,「Porous,Crystalline,Covalent Organic Frameworks,”Science,Vol.310,pp.1166−1170(2005年11月18日);
【0011】
Hani El−Kaderi et al.,「Designed Synthesis of 3D Covalent Organic Frameworks,」Science,Vol.316,pp.268−272(2007年4月13日);
【0012】
Adrien P.Cote et al.,「Reticular Synthesis of Microporous and Mesoporous Covalent Organic Frameworks」J.Am.Chem.Soc.,Vol.129,12914−12915(ウェブ上での公開2007年10月6日);
【0013】
Omar M.Yaghi et al.,「Reticular synthesis and the design of new materials,」Nature,Vol.423,pp.705−714(2003年6月12日);
【0014】
Nathan W.Ockwig et al.,「Reticular Chemistry:Occurrence and Taxonomy of Nets and Grammar for the Design of Frameworks,」Acc.Chem.Res.,Vol.38,No.3,pp.176−182(ウェブ上での公開2005年1月19日);
【0015】
Pierre Kuhn et al.,「Porous,Covalent Triazine−Based Frameworks Prepared by Ionothermal Synthesis,」Angew.Chem.Int.Ed.,Vol.47,pp.3450−3453。(ウェブ上での公開2008年3月10日);
【0016】
Jia−Xing Jiang et al.,「Conjugated Microporous Poly(aryleneethylnylene)Networks,」Angew.Chem.Int.Ed.,Vol.46,(2008)pp,1−5(ウェブ上での公開2008年9月26日);
【0017】
Hunt,J.R.et al.「Reticular Synthesis of Covalent−Organic Borosilicate Frameworks」J.Am.Chem.Soc.,Vol.130,(2008),11872−11873。(ウェブ上での公開2008年8月16日);および
【0018】
Colson et al.「Oriented 2D Covalent Organic Frameworks Thin Films on Single−Layer」Science,332,228−231(2011)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
開発されているガス貯蔵材料はこれまで、圧縮または成形され、続いて使用のために円筒状容器に挿入される必要がある粉末である。貯蔵システムの幾何学形状およびフットプリントを最適化する際に、ガス貯蔵材料が粉末以外の形態、例えばフィルムであるならば、大きな利益を得ることができる。故に、依然として従来の多孔質材料に優る改善が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
ガス状実体を収着剤材料と接触させる工程を含むガス状実体を貯蔵する方法であって、この収着剤材料は多孔質構造化有機フィルム(SOF)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】図1Aは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1B】図1Bは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1C】図1Cは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1D】図1Dは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1E】図1Eは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1F】図1Fは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1G】図1Gは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1H】図1Hは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1I】図1Iは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1J】図1Jは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1K】図1Kは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1L】図1Lは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1M】図1Mは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1N】図1Nは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図1O】図1Oは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示した図である。
【図2】図2は、実施例1のSOFについてCO2ガス吸着等温線の図である。
【図3】図3は、実施例1のSOFについての孔サイズ分布の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
用語「SOF」または「SOF組成物」は、一般的に、巨視的な見方だとフィルムである、共有結合性有機骨格(COF)を指す。しかし、本開示に使用される場合、用語「SOF」は、グラファイト、グラフェンおよび/またはダイアモンドを包含しない。語句「巨視的な見方」は、例えばこのSOFの肉眼での見え方を指す。
【0023】
「収着」とは、原子または分子とターゲット材料との会合をもたらすプロセスを指す。収着は、吸着および吸収の両方を含む。
【0024】
多孔質SOFは、ガス状実体を貯蔵する(および場合により放出する)、ガス状実体を捕捉する(および場合により放出する)、特定のガス状実体を選択または精製する(および場合により放出する)、および/またはガス状実体を輸送することが所望され得るまたは必要とされ得る種々の用途に使用できる。本開示のSOFは、ガス貯蔵システム、特にモバイル用途について有益な設計を可能にする顕著な機会を提供する。
【0025】
「ガス状実体」という用語は、いずれかの分子および/または生物学的物質を指し、それらのイオンおよびラジカルを含み、高温および/または減圧の補助ありまたは補助なしのいずれかで、ガス相に導入されることができるものであり、例えばガス状化学実体を含む。
【0026】
「ガス状化学実体」という用語は、いずれかの分子を指し、それらのイオンおよびラジカルを含み、高温および/または減圧の補助ありまたは補助なしのいずれかで、ガス相に導入されることができるものである。
【0027】
「取り込み」という用語は、ガス状実体、例えばガス状化学実体および/またはターゲットガス状実体の、収着剤材料、例えばターゲットガス状実体と選択的に会合するように調整された収着剤材料との会合をもたらすプロセスを指す。
【0028】
多孔質SOFは、ガス状実体(またはガス状化学種)を吸着または吸収するために使用されてもよく、ガス状実体は多孔質SOFから脱着される条件に曝されてもよい。
【0029】
多孔質SOFは、1つ以上のタイプのガス状実体を取り込むためのデバイスに組み込まれてもよい。
【0030】
1つ以上のガス状実体の収着剤材料、例えば少なくとも1つの多孔質SOFを含む収着剤材料への取り込みは、可逆性または非可逆性であってもよい。
【0031】
デバイスにおいて収着剤材料は、SOFであってもなくてもよい、ガス透過性の三次元支持体に埋め込まれるまたは固定されてもよい。収着剤材料は、ガスを可逆的に取り込みまたは貯蔵するための孔を有していてもよい。収着剤材料は、ガスを可逆的に吸着または吸収してもよい。
【0032】
本明細書に提供されるデバイスは、1つ以上のガス状実体、例えばアンモニア、CO2、CO、水素、アミン、メタン、天然ガス、酸素、アルゴン、窒素および/またはアルゴンを含む小分子、および/または他の大分子、例えば揮発性有機化合物(VOC)として一般に既知のもの、アルカン、石油、ハロゲン化炭化水素の貯蔵のための貯蔵ユニットを含む。特定実施形態はまた、1つ以上のガス状実体の混合物のための貯蔵システムを含んでいてもよい。実施形態において、1つ以上のガス状実体は、所定時間、例えば所定の秒、分、時間、日または年の間、本開示のSOF中に貯蔵されることができる。
【0033】
ガスの「天然圧縮率」という用語は、例えば高圧力下にある場合のガスの公称挙動を指す。圧縮下、ガス状実体の濃度は増大する:所与の体積内では、低圧力下よりも高圧力下でより多くのガス状実体を貯蔵できる。故に、多孔質材料の孔体積内では、その天然圧縮率を超えてガス状実体を濃縮できる。
【0034】
ガス状化学実体は、ガス状化学実体の天然圧縮率よりも高い約1.05倍から、その液化時におけるガス状化学実体のおよその濃度まで、例えばガス状化学実体の天然圧縮率よりも高い約1.1倍から、液化時におけるガス状化学実体のおよその濃度まで、またはガス状化学実体の天然圧縮率よりも高い約1.5倍から液化時のガス状化学実体のおよその濃度までの濃度で、SOF中に存在し得る。
【0035】
一般に円筒状槽を必要とする従来の吸着粉末とは異なり、本開示の多孔質SOFは、モバイル用途に関するそれらの適用性は制限されない。例えば、多孔質SOFは、ガス貯蔵システムのための代替幾何学形状で存在してもよく、そうすることで、多孔質SOFは、SOFが首尾よく車両システムに導入される(例えば構造上の要素に一体化される)ことができるので、デバイス/車両に継ぎ目なしで一体化でき、または別の方法としてSOFシートは、現在の貯蔵幾何学形状、例えば円筒状槽などに含まれる貯蔵材料として機能するように適合できる。
【0036】
少なくとも1つの多孔質SOFを含む収着剤材料に1つ以上のガス状実体を取り込む方法が提供される。少なくとも1つの多孔質SOFを含む収着剤材料に1つ以上のガス状実体を取り込む方法が提供され、そうすることで1つ以上のガス状実体は、少なくとも1つの多孔質SOFを含む収着剤材料に貯蔵され得る。方法は、本開示の少なくとも1つの多孔質SOFを含む収着剤材料を、1つ以上のガス状実体と接触させる工程を含んでいてもよい。1つ以上のガス状実体の取り込みは、1つ以上のガス状実体の貯蔵を含んでいてもよい。1つ以上のガス状実体は、エネルギー供給源として使用するのに好適な条件下で貯蔵される。
【0037】
本開示の分離方法において、1つ以上のガス状実体は、本開示のSOFを含む収着剤材料と接触させる。
【0038】
利用される1つ以上のガス状実体は、1つ以上のターゲットガス状実体および1つ以上の非ターゲットガス状実体の混合物を含んでいてもよい。多孔質SOFは、ターゲットガス状実体の選択的取り込みのために利用可能な複数の部位を有する複数の孔を含んでいてもよい。方法は、1つ以上のターゲットガス状実体の選択的な取り込みのために、1つ以上のターゲットガス状実体を複数の利用可能な部位に拡散させることによって収着剤材料とガス状実体とを接触させることを含んでいてもよい。1つ以上のターゲットガス状実体は、混入物質であってもよい。
【0039】
非ターゲットガス状実体は、精製が所望されるような分子の組成物を含んでいてもよい。例えば、本開示の方法において、非ターゲットガス状実体は、水を含んでいてもよく、ガス状実体と収着剤材料とを接触させる工程は、水蒸気供給ストリームを収着剤材料と接触させる工程、および混入物質であってもよい1つ以上のターゲットガス状実体を選択的に取り込むことによって水蒸気を精製するために水蒸気を収着剤材料を通して拡散させる工程を含んでいてもよい。
【0040】
方法は、多孔質SOFを含むデバイスとガス状実体とを接触させる工程を含むガス状実体の取り込みのために提供される。
【0041】
SOFのセグメントは、所望の特性(例えば、特定の電気的または立体的特性)を有する部位を創製するために官能化されてもよい。このようにSOFが官能化できることは、孔が高濃度の秩序化部位を伴って並べられ得るので、例えばSOFそれぞれについて変更できる疎水性、親水性、極性、非極性、電子的、立体的特性、ならびに他の特性といった特性をSOFのセグメントおよびリンカーの官能化によって調整でき、多くの貯蔵、分離および/または触媒作用用途に有用である。
【0042】
多孔質SOFは、無機ゼオライトおよびMOFの両方よりも優れた利点(例えば高い安定性および特に加水分解安定性)を有するので、高効率の触媒作用、分離および貯蔵用途に適用できる。多孔質SOFは、ろ過、ガス貯蔵などに有用なナノ多孔質構造を有していてもよい。孔サイズは、約4オングストローム〜約40オングストローム、約6オングストローム〜約30オングストローム、または約7オングストローム〜20オングストロームの範囲であってもよい。多孔質SOFは、極性溶媒、非極性溶媒、酸性溶媒、塩基性溶媒、有機溶媒、および水を還流させる際に、MOFおよびCOFを超える並外れた化学安定性を有することができる。
【0043】
多孔質SOFを形成するために反応させるビルディングブロックは、有機的に並んだケージおよび所定のサイズおよび形状のチャンネルを提供してもよい。特定のビルディングブロックは、官能基がケージおよびチャンネルおよび/または孔に並ぶように選択され、および/またはさらに官能化されてもよい。実施形態において、特定のビルディングブロックは、所定の孔サイズを有する所望のSOF構造が得られるように、選択および/またはさらに官能化されてもよい。
【0044】
多孔質SOFは、1つ以上の次の特徴を含んでいてもよい:複数の孔の表面積が約75m2/gを超える、複数の孔の表面積が約75〜約3500m2/gである;複数の孔の表面積が約150〜約2000m2/gである;多孔質SOFを含む複数の孔の平均孔体積が約0.05〜約1.7cm3/g、例えば約0.1〜約1.6cm3/gの範囲である;多孔質SOFの骨格が約0.3〜約1.5g/cm3の範囲の密度を有する。
【0045】
多孔質SOFは、少なくとも200℃までの範囲の熱安定性、または少なくとも300℃までの範囲の熱安定性、例えば約250超過〜約700℃の範囲の熱安定性、例えば約300超過〜約450℃の範囲の熱安定性を含んでいてもよい。多孔質SOFは、約75m2/g〜約3500m2/gのラングミュア表面積を含んでいてもよい。
【0046】
多孔質SOFを含むガス貯蔵および/またはガス分離材料も提供される。本開示の多孔質SOFは、ガス分子を貯蔵または分離するために1つ以上の部位を含んでいてもよい。ビルディングブロックは、SOFの官能基がガス分子を貯蔵または分離するために1つ以上の部位を形成するように官能化されてもよい。本開示のガス貯蔵材料に貯蔵されてもよいガスとしては、極性ガス、非極性ガス、および/または多孔質SOFの孔の表面積における1つ以上の部位に結合するために利用可能な電子密度を含むガス分子を挙げることができる。こうした電子密度は、そこに含有される2つの原子間の複数の結合を有する分子または孤立電子対を有する分子を含み得る。こうしたガスの好適な例としては、アンモニア、アルゴン、メタン、天然ガス、水、窒素、酸素、硫化水素、チオフェン、二酸化硫黄、CO2、CO、水素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含むガスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
多孔質SOFは、ガス状実体(ガス、炭化水素、分子、原子など)を貯蔵するために使用されてもよい。多孔質SOFの貯蔵容量は、ガス状実体によって占有される利用可能な孔体積のパーセンテージの観点で記載されてもよい。多孔質SOFの利用可能な孔構造が全体的に占有されている場合、SOFは、100%の充填または貯蔵容量と記載できる。SOFの孔体積は、SOFの孔の体積/質量比(cm3/g)として規定されてもよく、こうした量は、ガス吸着測定から決定されてもよい。ガス状実体によって占有されるSOF孔構造の体積は、ガス状実体に曝される際に多孔質SOFの質量変化を測定し、既知または計算された分子体積値を用いることによりガス状実体の対応する体積を計算することによって決定できる。多孔質SOFについていかなる程度の充填容量が、選択されてもよい。保有された多孔質SOF系ガス状実体貯蔵システムは、約40%〜約100%、または約60%または約100%、または約80〜約95%の範囲の充填容量を有していてもよい。
【0048】
多孔質SOFを含むガス貯蔵材料は、ガス状混合物から所望のガスを分離するためにも使用できる材料、例えば貯蔵されるべきガスを(ガス状混合物から)回収するために使用できるガス貯蔵材料であってもよい。多孔質SOFを含むガス貯蔵材料は、水素(H2)を貯蔵するために使用される水素貯蔵材料であり、および場合により多孔質SOFを含むガス貯蔵材料が、貯蔵されるべきH2ガスを(ガス状混合物から)分離するために使用されてもよいH2貯蔵材料である。ガス貯蔵材料は、二酸化炭素(CO2)貯蔵材料、例えば貯蔵されるべきCO2を(ガス状混合物から)分離するために使用されてもよいCO2貯蔵材料であってもよい。
【0049】
他の材料に埋め込まれるまたは成形体に圧縮される必要がある粉末を使用する従来のガス分離プロセスとは対照的に、多孔質SOFは、直接フィルムの形状に形成でき、そうして所望によりさらなる処理を行わずに、圧力スイング吸着のようなプロセスに使用されてもよい。
【0050】
圧力スイング吸着(PSA)プロセスは、圧力下でガスが固体表面に引き付けられるかまたは「吸着される」傾向があるという事実に依る。圧力が高くなるにつれて、より多くのガスが吸着される;圧力が低下する場合、ガスは放出されるかまたは脱着される。PSAプロセスは異なるガスが異なる固体表面に多かれ少なかれ強く引き付けられる傾向があるので、混合物中のガスを分離するために使用できる。空気のようなガス混合物を、例えば酸素の場合よりも強く窒素を引き付ける吸着剤床を含有する容器に圧力下で通過させる場合、窒素の一部またはすべては、床に留まり、容器から出るガスは酸素が豊富になる。
【0051】
圧力スイング吸着プロセスは、多孔質材料(吸着剤)のガスに対する固有の親和性を用いることによってガス分子を選択的に「ろ過」する。本明細書に記載される方法、材料、組成物、デバイスおよびシステムは、ガス分子と相互作用する多孔質SOFを含む収着剤床を使用することによって圧力スイング吸着プロセスにおいて実質的な改善の達成を可能にし、ここで多孔質SOFを含む収着剤床は、粉末よりもむしろ永続的に多孔質の膜またはフィルムの形態である。
【0052】
多孔質SOFを含む床が、ガス、例えば窒素を吸着する容量の限度に到達する場合、圧力を低下させることによって、吸着されたガス、例えば窒素を放出させることにより再生できる。次いで、酸素が豊富な空気のようなターゲットガスが豊富な生成物を生じる別のサイクルのために準備される。これはまさに、呼吸のために酸素が豊富な空気を必要とする肺気腫患者などにより使用される携帯用酸素濃縮機に使用されるプロセスである。PSAは、現在粉末吸着剤を用いることによって制限されている。例えば、吸着床において、顕著な「デッドスペース」が粒子間に存在し、ここでは選択的な吸着が行われない。故に、必要とされる吸着剤の最適質量を収容するために、大きな体積が必要とされる。粉末を多孔質SOFを含む膜で置き換えることにより、吸着剤のより効率の良い圧縮が可能になり(例えば丸める/折り畳む/積み重ねる)、PSAプロセスのためのより小さい新規な幾何学形状/フットプリントについて選択肢を与え、これが特に、モバイル/携帯用ガス分離デバイス(例えば酸素濃縮機)に役立つ。
【0053】
本開示の多孔質SOFは、所望の形状、例えばフィルムに直接形成されてもよく、そうして所望によりさらなる処理を行わずに、可逆性の浸透プロセスのようなプロセスに使用できる。逆浸透は、浸透圧を上回る圧力を適用することによって、高濃度溶質領域から膜を通して低濃度溶質領域に溶媒を送り込むプロセスである。これは、外部圧力が適用されない場合には、低溶質濃度の領域から膜を通しての高濃度溶質領域への溶媒の自然な動きである浸透プロセスの逆である。多孔質SOFは、半透過性であってもよく、これは溶質ではなく溶媒の通過を可能にすることを意味する。多孔質SOFは、大抵の分離が生じる高密度バリア層を有する膜のような逆浸透のための膜であってもよい。多孔質SOF膜は、塩のような溶質の通過を防ぎつつ、この高密度層を通過するのは水だけであるように設計されてもよい。逆浸透プロセスは、一般に、膜の高濃度側に高圧を働かせることが必要とされ、新鮮な水および半塩水のような組成物については通常2〜17bar(30〜250psi)、海水について40〜70bar(600〜1000psi)であり、克服しなければならない天然浸透圧は約24bar(350psi)である。
【0054】
膜は、あらゆる程度にて、駆動力の下で、その構造内に実体(ガス状、化学的、生物学的など)を通過させることを制限または許容できる選択性バリアである。駆動力は、圧力勾配、濃度勾配、伝導力、温度勾配または機械的摂動を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0055】
多孔質SOFの少なくとも1つは、単層または多層膜を形成されてもよい。1つ以上の実質的にピンホールがないSOFまたはピンホールがないSOFであってもよい多孔質SOFを含む膜は、所望により他の膜、または他のガス分離技術、例えば溶媒吸収(例えばSelexol、Rectisol、Sulfinol、Benfield)、アミン吸収(例えばDEA、MDEA)、物理的吸着、低温技術などと組み合わせて使用されてもよい。多孔質SOFを含む膜は、ターゲットガスを含有する供給ガスをターゲットガスが豊富なガスストリームおよびターゲットガスを欠いたガスストリームに分離するために調整されてもよい(ターゲット種に対して既知の親和性を有する特定成分を選択することによって)。多孔質SOFを含む膜は、極性および非極性ガスを含む供給ガスを、極性ガスが豊富なガスストリームおよび極性ガスを欠いたガスストリームに分離するために使用されてもよい。
【0056】
ターゲットガスは、膜のユーザーにとって価値があるガスであってもよく、ユーザーが回収しようとするガスであってもよい。代替実施形態において、ターゲットガスは、所望でないガス、例えばユーザーがガスストリームから分離しようとする、例えばガスストリームを精製しようとするまたは環境を保護するための、汚染物質または混入物質であってもよい。
【0057】
多孔質SOFを含む膜は、極性ガス(CO2、H2S)を除去することによって、天然ガス(主にメタンを含む混合物)を精製するために使用されてもよい;合成ガスを精製するために;および水素からおよび燃料ガスからCO2を除去するために使用されてもよい。燃料ガスは、通常、暖炉、オーブン、炉、ボイラー、燃料機関、および発電所から生じる。燃料ガスの組成は、燃焼されているものに依存するが、通常それらは、大部分が、空気から誘導される窒素(通常2/3を超える)、燃焼から誘導されるCO2、および水蒸気ならびに酸素を含有する。燃料ガスはまた、粒子状物、一酸化炭素、酸化窒素および酸化硫黄といった汚染物質を少量パーセンテージで含有する。
【0058】
本明細書に記載される分離方法は、多孔質SOFを含む膜を使用し、ターゲットガスを含む供給ガスを、供給ガスよりターゲットガスが豊富な生成物ガスストリームおよび供給ガスよりもターゲットガスが少ない廃棄物ガスストリーム(これは分離プロセスを通してリサイクルされてもよい)に分離するために有用な場合がある。
【0059】
本開示の分離方法は、種々の多孔質SOF組成物を用いて分離されるべきおよび/または貯蔵されるべき1つ以上のガスの吸着等温線を測定することを含んでいてもよい。例えば、ガス状混合物、例えばCO2、メタン、一酸化炭素および窒素を含む例示的なガス状混合物からCO2を分離するために、吸着等温線が、各ガスについて種々の多孔質SOF組成物を用いて測定されてもよい。次いで、特定の多孔質SOF組成物は、分離されるべきおよび/または貯蔵されるべき所望のガス(例えばCO2)に関して不均衡に高い(または低い)親和性および容量)を有するように選択されてもよい。
【0060】
ガス状混合物は、所望のガス状実体について不均衡に高い親和性および容量(または不均衡に低い親和性および容量)を有する多孔質SOFを含むろ過/分離カラムを介してろ過または分離されてもよい。SOFについて特定のガスの親和性は、当該技術分野において共通して実施されているように、ゼロ被覆での吸着の等比体積熱を測定することによって決定できる。こうしたカラムは、多成分ガス中の他のガス状成分からCO2を分離できる多孔質SOF組成物を含んでいてもよい。実施形態において、こうしたカラムは、多成分ガス中の他のガス状成分から特定の異性体(例えば炭水化物異性体(例えばブタン異性体)および/またはキシレン異性体)を分離できる多孔質SOFを含んでいてもよい。多孔質SOFは、混合物、例えばガス状混合物の特定成分について不均衡に高い選択性、親和性および/または容量を有するように特別に設計されてもよい。多孔質SOFは、ガス状混合物のような混合物中の所望の成分以外の混合物中の各成分について不均衡に高い選択性、親和性および/または容量を有するように特別に設計されてもよい。
【0061】
本明細書に記載される多孔質SOFは、電池、燃料電池、水精製などに使用されるような膜に組み込まれてもよい。分離方法は、所定の成分を「欠いた」と言及されてもよい残余分をもたらし得る。分離方法は、所望の生成物を保持し得る流出物ストリームをもたらし得る。多孔質SOF組成物によって分離される供給物サイドおよび流出物サイドを有する分離システムを用いて多成分混合物、例えばガス状混合物から1つ以上の成分を分離する装置および方法も提供される。多孔質SOF組成物は、カラム中に存在してもよい。
【0062】
多孔質SOFを含むガス貯蔵材料が提供される。本明細書に記載される方法、組成物およびシステムによって貯蔵または分離されてもよいガスとしては、極性ガス分子、非極性ガス分子、および1つ以上の部位に結合するために利用可能な電子密度を含むガス分子が挙げられる。こうした電子密度は、そこに含有される2つの原子間の複数の結合を有する分子または孤立電子対を有する分子を含む。こうしたガスの好適な例としては、アンモニア、アルゴン、CO2、一酸化炭素、水素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含むガスを挙げることができる。実施形態において、多孔質SOFを含むガス結合材料は、所望のガス、例えばCO2をガス状混合物から分離するために使用されてもよい結合部位を保持する。
【0063】
ガス貯蔵部位は、所望のサイズまたは電荷を有する基で官能化されるSOF中の孔を含む。こうした基は、セグメントおよび/またはリンカーの一部であってもよい。この基は、キャップされたSOFの一部であってもよい。
【0064】
本明細書で記載される多孔質SOFは、ガス吸着のための複数の孔を含み、これが単峰型サイズ分布または多峰型サイズ分布(例えば二峰型、三峰型など)を有していてもよい。
【0065】
多孔質SOFは、複数のセグメント、共有結合性有機骨格(COF)として整列された複数のリンカーを含み、例えば「溶媒耐性」SOF、キャップされたSOF、コンポジットSOFおよび/または周期的SOFを含む。
【0066】
「実質的にピンホールがないSOF」または「ピンホールがないSOF」は、反応混合物から形成されてもよい。「実施的にピンホールのないSOF」は、平方cmあたりの2つの隣接セグメントコア間の距離を超えるピンホール、孔またはギャップを含有しない;またはcm2あたり約250ナノメートルを超える直径のピンホール、孔またはギャップが10個未満、またはcm2あたり約100ナノメートルを超える直径のピンホール、孔またはギャップが5個未満である。「ピンホールのないSOF」は、ミクロン2あたりの2つの隣接セグメントのコア間の距離を超えるピンホール、孔またはギャップを含有しない、またはミクロン2あたり約500オングストローム、約250オングストローム、または100オングストロームを超える直径のピンホール、孔またはギャップを含有しない。
【0067】
種々の例示的な分子ビルディングブロック、セグメントタイプ、リンカータイプ、SOFタイプ、キャッピング基、特定SOFタイプを合成するための方策の説明は、米国特許出願整理番号12/716,524;12/716,449;12/716,706;12/716,324;12/716,686;12/716,571;12/815,688;12/845,053;12/845,235;12/854,962;12/854,957;および12/845,052に詳述されている。
【0068】
本開示のSOFは、セグメント(S)を有する分子ビルディングブロックを含み、少なくとも2つの官能基を必要とする。官能基は、分子ビルディングブロックの反応性化学部分であり、SOF形成プロセス中に、セグメント同士を連結させる化学反応に関与する。セグメントは、官能基を支持し、官能基に関連しない全原子を含む分子ビルディングブロックの一部分である。分子ビルディングブロックの対称性は、分子ビルディングブロックセグメントの周辺付近の官能基(Fg)の位置決めに関連する。
【0069】
図1A、図1B、図1C、図1D、図1E、図1F、図1G、図1H、図1I、図1J、図1K、図1L、図1M、図1N、図1Oは、例示的なビルディングブロックについて、対称型の要素の概略を示す。こうした対称型要素は、使用され得るビルディングブロックに見出される。
【0070】
SOFのための分子ビルディングブロックとして機能し得る例示的な分子実体の例としては、炭素原子コアまたはケイ素原子コアを含有するビルディングブロック;アルコキシコアを含有するビルディングブロック;窒素原子コアまたはリン原子コアを含有するビルディングブロック;アリールコアを含有するビルディングブロック;カーボネートコアを含有するビルディングブロック;炭素環、炭素二環、または炭素三環のコアを含有するビルディングブロック;およびオリゴチオフェンコアを含有するビルディングブロックが挙げられる。多孔質SOF反応混合物中の上記1つ以上の分子ビルディングブロックの組み込みは、それぞれ炭素、窒素、ケイ素またはリン原子コア、アルキルコア、フルオロアルキルコア、アルコキシコア、アリールコア、カーボネートコア、炭素環式コア、炭素二環式コア、炭素三環式コアおよびオリゴチオフェンコアからなる群から選択される1つ以上のコアを有する複数のセグメントを有する多孔質SOFをもたらし得る。
【0071】
SOFは、理想的な三角形ビルディングブロック、歪んだ三角形ビルディングブロック、理想の四面体ビルディングブロック、歪んだ四面体ビルディングブロック、理想の正方形ビルディングブロック、および歪んだ正方形ビルディングブロックからなる群から選択される少なくとも1つの対称型ビルディングブロックを含む。官能基は単一原子を含んでいてもよく、または官能基は、ハロゲン、アルコール、エーテル、ケトン、カルボン酸、エステル、カーボネート、アミン、アミド、イミン、尿素、アルデヒド、イソシアネート、トシレート、アルケン、アルキンのような1つを超える原子を含んでいてもよい。
【0072】
キャッピングユニットは、単一タイプまたは2つ以上のタイプの官能基および/または化学部分を含んでいてもよい。セグメントは、官能基を保持し、官能基に関連しない全原子を含む分子ビルディングブロックの一部分である。SOFのセグメント(または複数のセグメントのうち1つ以上)は、炭素でない少なくとも1つの元素原子を含んでいてもよく、例えばセグメント構造は、水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレニウム、フッ素、ホウ素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つの原子を含む。
【0073】
リンカーは、分子ビルディングブロックおよび/またはキャッピングユニットに存在する官能基間での化学反応時にSOF中に現れる化学部分である。
【0074】
多孔質SOFは、単原子リンカー、単一共有結合リンカー、および二重共有結合リンカー、エステルリンカー、ケトンリンカー、アミドリンカー、アミンリンカー、イミンリンカー、エーテルリンカー、ウレタンリンカー、およびカーボネートリンカーからなる群から選択される1つ以上のリンカーを含んでいてもよい。
SOFのリンカー(または複数のリンカーのうち1つ以上)は、炭素でない少なくとも1つの元素原子を含んでいてもよく、例えばリンカーの構造は、水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレニウム、フッ素、ホウ素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも1つの原子を含む。
【0075】
SOFは、いずれかの好適なアスペクト比、例えば約30:1より大きく、または約50:1より大きいアスペクト比を有する。SOFのアスペクト比は、その平均厚さ(すなわち、最も短い寸法)に対する、その平均の幅または直径(厚さに対して次に大きな寸法)の比であると定義される。
【0076】
物理的に積み重ねられたまたは化学的に積み重ねられた多層SOFは、約20オングストローム超過、例えば約20オングストローム〜約10cm、または約0.1mmオングストローム〜約5mmの厚さを有していてもよい。原理上、このプロセスに関して、物理的に積み重ねられ得る層の数に制限はない。
【0077】
連結化学反応としては、例えば縮合、添加/削除、および添加反応を挙げることできる。SOFは、高い熱安定性(典型的には、周囲条件下で400℃よりも高い);有機溶媒への低い溶解度(化学安定性)、および多孔性(ゲストを可逆的に取り込むことができる)を有する。追加の機能は、従来のCOFに固有でない特性を示し、分子ビルディングブロックの選択によって生じてもよく、その分子組成が得られたSOFに追加の機能を提供する。
【0078】
分子ビルディングブロックの「偏った特性」という用語は、ある特定の分子組成物について存在することが知られている特性、またはセグメントの分子組成を観察すれば、当業者ならば合理的に特定可能な特性を指す。
【0079】
SOFの疎水性(超疎水性)、親水性、疎油性(超疎油性)、親油性、光発色性および/または電気活性(導体、半導体、電荷輸送材料)性質は、SOFの「追加機能」を表し得る特性の一部の例である。フッ素化セグメントとしては、例えばテトラフルオロヒドロキノン、ペルフルオロアジピン酸水和物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロプロピリデン)ジフェノールなどを挙げることができる。
【0080】
多孔質SOFを製造するプロセスは、典型的には、多くの作業または工程を含み、いずれかの適切な順序で行ってもよく、または、2つ以上の作業を同時に行ってもよく、非常に近い時間に行ってもよい:
(a)それぞれ1個のセグメントと多くの官能基とを含む複数の分子ビルディングブロックおよびプレSOFを含む、液体を含有する反応混合物を調製する工程;
(b)この反応混合物を湿潤フィルムとして堆積させる工程;
(c)分子ビルディングブロックを含む湿潤フィルムの、複数のセグメントと、共有結合性有機骨格として整列した複数のリンカーとを含むSOFを含む乾燥したフィルム(乾燥SOF)への変化を促進し、この共有結合性有機骨格が、巨視的な見方だとフィルムである工程;
(d)場合により、コーティング基材からSOFを取り外し、自立型SOFを得る工程;
(e)場合により、この自立型SOFをロールへと加工する工程;
(f)場合により、このSOFを切断し、ベルトになるように縫い合わせる工程;
(g)場合により、SOF(上記SOF形成プロセスによって調製された)上にてSOF形成プロセスによって調製された)を基材として用い、次のSOF形成プロセスで上記SOF形成プロセスを行う工程;および
(h)場合により、上記乾燥SOFを活性化して複数の孔を空にして、SOFを形成後に残留し得るいずれかの残留化学種を除去する工程。
【0081】
キャッピングユニットおよび/または第2の成分は、工程a、bまたはcのいずれかの間に添加されてもよい。プロセス作用A:反応混合物は、液体に溶解するか、懸濁するか、または混合するような複数の分子ビルディングブロックを含む。1つ以上の分子ビルディングブロックが液体である場合、さらなる液体の使用は任意である。触媒は、場合により、作用Cの間に、プレSOF形成を可能にするおよび/またはSOF形成の動力学を変更するために反応混合物に添加されてもよい。反応混合物成分(分子ビルディングブロック、場合により液体、場合により触媒、場合により添加剤)は容器にて組み合わせられる。反応混合物はまた、湿潤フィルムとして反応混合物を堆積させる前に配合物成分の均一分布を確実にするために、混合、撹拌、ミル加工などを行ってもよい。
【0082】
反応混合物を、湿潤フィルムとして堆積させる前に加熱してもよい。これは、1つ以上の分子ビルディングブロックの溶解を助け、および/またはプレSOFを形成するために湿潤層を堆積させる前に反応混合物の部分反応によって、反応混合物の粘度を増大させてもよい。反応混合物の粘度は、約10〜約50,000cps、例えば約25〜約25,000cps、または約50〜約1000cpsの範囲である。ビルディングブロックの保有量は、約3〜100%、例えば、約5〜約50%、または約15〜約40%の範囲であってもよい。存在する場合、キャッピングユニット保有量は、約3重量%〜80重量%、例えば約5〜約50重量%、または約15〜約40重量%の範囲であるように選択されてもよい。
【0083】
分子ビルディングブロックおよびキャッピングユニットを保有すること、または反応混合物中の「保有量」は、分子ビルディングブロックと、場合により、キャッピングユニットおよび触媒との総重量を、反応混合物の総重量で割ったものであると定義される。
【0084】
反応混合物中で用いられる液体は、純粋な液体(例えば、溶媒)であってもよく、および/または溶媒混合物であってもよい。
【0085】
液体としては、アルカン;芳香族化合物;エーテル;エステル;ケトン;アミン;アミド;アルコール;ニトリル;ハロゲン化芳香族;ハロゲン化アルカン;および水などを挙げることができる。
【0086】
場合により、反応混合物中に触媒を存在させて、湿潤層の乾燥したSOFへの促進を補助してもよい。典型的な触媒の保有量は、反応混合物中の分子ビルディングブロックの保有量の約0.01%〜約25%、または約0.1%〜約5%の範囲である。触媒は、最終的なSOF組成物中に存在していてもよく、存在していなくてもよい。場合により、添加剤または第2の成分(例えば、ドーパント)が、反応混合物および湿潤層に存在していてもよく、または乾燥SOFに一体化されてもよい。用語「添加剤」または「第2の成分」とは、SOF中で共有結合しない原子または分子を指し、それらとしては、ポリマー材料、カーボンナノチューブ、ナノファイバー凝集体、金属粒子、貴金属、非貴金属およびそれらの合金、衝撃調整剤、強化繊維、潤滑剤、静電気防止剤、カップリング剤、湿潤剤、防霧剤、難燃剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、殺生物剤、染料、顔料、着臭剤、防臭剤、核形成剤などを挙げることができる。
【0087】
第2の成分または添加剤は、それぞれが、または組み合わせた状態で、組成物中に任意の望ましい量または任意の有効な量で存在していてもよく、例えば、組成物の約1重量%〜約50重量%、または約1重量%〜約20重量%の量で存在していてもよい。プロセス作用B:反応混合物を、湿潤フィルムとして種々の基材に適用してもよい。反応混合物は、約10nm〜約5mm、または約1μm〜約500μmの範囲の厚さを得るために、多くの液体堆積技術(スピンコーティング、ブレードコーティング、ウェブコーティング、浸漬コーティング、カップコーティング、ロッドコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレーコーティング、スタンピングなどを含む)を用いて、基材に適用されてもよい。プロセス作用C:用語「促進する」は、分子ビルディングブロックおよび/またはプレSOFの反応、例えば、ビルディングブロックおよび/またはプレSOFの官能基の化学反応を容易にする任意の適切な技術を指す。液体を除去して乾燥フィルムを作成する必要がある場合には、「促進する」は、液体を除去することも指す。用語「乾燥SOF」は、液体の含有量がSOFの約5重量%未満、または液体の含有量がSOFの2重量%未満の、実質的に乾燥したSOFを指す。
【0088】
湿潤層から乾燥SOFの形成の促進は、典型的には、オーブンでの乾燥、赤外線(IR)を含む、温度が40〜350℃の範囲での熱処理を含む。総加熱時間は、約4秒〜約24時間の範囲であることができる。炭素IRエミッタまたは短波IRエミッタに関する情報を以下の表にまとめている(表1)。
【表1】
【0089】
場合により、自立型SOFまたは可撓性基材によって支持されるSOFは、ロールに処理されてもよい。SOFは、貯蔵、取り扱いおよび種々の他の目的のためにロールに処理されてもよい。SOFは、多層構造化有機フィルムを与えるSOF形成プロセスに基材として使用されてもよい。多層SOFの層は、化学的に結合し、または物理的に接触してもよい。
【0090】
プロセス作用H:場合により乾燥SOFの活性化。
【0091】
場合により、乾燥SOFを活性化して複数の孔を空にして、SOFを形成後に残留し得るいずれかの残留化学種を除去してもよい。乾燥SOFを活性化することは、溶媒、例えば有機溶媒(例えば揮発性有機溶媒)中に、所定の時間、例えば約12時間以上、SOFを浸漬することを含んでいてもよい。場合により、溶媒は、一新されてもよく、浸漬工程は、SOFが含浸された溶媒中の残留種の溶出濃度が10ppm未満、または0.1ppm未満のレベルになるまで繰り返されてもよい。SOFは、場合により、上記浸漬工程のいずれか前後において、1つ以上の温度で加熱されてもよい(減圧ありまたはなし)。加熱温度は、乾燥SOFの熱特性および浸漬溶媒の同一性に基づいて選択されてもよい。例えば、一般に乾燥SOFは、150℃の温度に12時間加熱されてもよく、次いで10−5torrで60℃で12時間劣化をともなわずに加熱されてもよい。
【0092】
(作用A)次を組み合わせた:ビルディングブロック(4,4’,4’’,4’’’−(ビフェニル−4,4’−ジイルビス(アザネトリル))テトラキス(ベンゼン−4,1−ジイル))テトラメタノール[セグメント=(4,4’,4’’,4’’’−(ビフェニル−4,4’−ジイルビス(アザネトリル))テトラキス(ベンゼン−4,1−ジイル);Fg=アルコール(−OH);(1.48g,2.4mmol)]、および8.3gのN−メチルピリジノン。混合物を振とうし、均質溶液が得られるまで40℃に加熱した。室温までの冷却時、溶液を0.45ミクロンのPTFE膜を通してろ過した。ろ過された溶液に、N−メチルピロリドン中のp−トルエンスルホン酸10重量%溶液を0.15gとして送達される酸触媒を添加して、液体含有反応混合物を得た。
【0093】
(作用B)反応混合物を、10milギャップを有するバードバーを装備した定速ドローダウンコーターを用いて、金属化された(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射サイドに適用した。
【0094】
(作用C)湿潤層を支持する基材を、140℃に予熱された活性ベント型オーブンに素早く移し、40分間加熱した。これらの作用により、約5〜10ミクロンの範囲の厚さを有する乾燥SOFが得られた。SOFの色は緑−黄色であった。
【0095】
乾燥SOFは、SOF形成の後、残留し得るいずれかの化学種を有する孔を空にするために活性化した。乾燥SOFは、アセトンに12時間浸漬され、次いでアセトンを一新し、第2の浸漬を24時間行った。アセトン浸漬の後、乾燥SOFは、150℃で12時間加熱し、次いで60℃、10−5torrにて12時間加熱した。
【0096】
これらのフィルムの永続的な多孔性は、最新のガス吸着方法を用いて測定されたが、ここで活性化されたサンプルは、超臨界条件下でCO2に曝され、ガス吸着等温線を得た(図2)。密度汎関数理論を用いるこの等温線の続く評価は、材料の多孔性の計量的パラメータを予測する。
【0097】
SOFのラングミュア表面積は、155m2/g(+/−1.7m2/g)であると決定された。等温線の可逆性(すなわちCO2ガスの脱着)は、孔が永続的であり、ポリマー膜の場合で頻繁に見られるような崩壊を生じないことを示す。
【0098】
加えて、図2の等温線から、SOFにおける孔サイズの分布が、決定できる(図3)。図3における孔サイズ分布は、孔の2つのサイズが約6オングストローム(0.6nm)〜約8.5オングストローム(0.85nm)でSOF内に存在することを示す。これらの孔サイズは、車両用途では水素およびメタンのようなホストガス分子に適切であり、圧力スイング吸着プロセスを用いる燃焼廃棄物ガスストリームからのCO2の分離にも理想的である。SOFの多孔性は、SOF内において内部孔構造を変更するビルディングブロックを用いることによって推定的に調節できる。例えば、SOFは、他のより大きなおよび/または分岐ビルディングブロックおよびリンカーを用いることによって、SOF内のより「開放された」孔構造を有するように創製されてもよい。増大した多孔性を支持する分子ビルディングブロックのセグメントの例を以下に示す:
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状実体を貯蔵するための方法であって、この方法が:
ガス状実体を収着剤材料と接触させる工程であって、この収着剤材料が、少なくとも第1のセグメントタイプを含む複数のセグメントおよび共有結合性有機骨格(COF)として整列された少なくとも第1のリンカータイプを含む複数のリンカー、および複数の孔を含む多孔質構造化有機
フィルム (SOF)を含み、
第1のセグメントタイプおよび/または第1のリンカータイプが炭素でない少なくとも1つの原子を含み、および
複数の孔が、ガス状実体の取り込みおよび貯蔵のために利用可能な複数の部位を含む、工程;および
このガス状実体が所定の期間貯蔵される工程を含む、方法
【請求項2】
前記ガス状実体と収着剤材料との接触工程がさらに、前記ガス状実体を、その天然圧縮率について観察される濃度を超えて濃縮する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス状化学実体は、ガス状化学実体の天然圧縮率の約1.1倍超過からガス状化学実体のその液化時のおよその濃度までの濃度にてSOF中に存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
所定の期間が約30秒〜約1年である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化学実体の取り込みおよび貯蔵が可逆性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記SOFが、少なくとも200℃までの熱安定性範囲、および/または約75m2/g〜約3500m2/gのラングミュア表面積を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記多孔質SOFが以下によって調製される、請求項1に記載の方法:
(a)次を含む液体含有反応混合物を調製する工程: それぞれセグメントおよび官能基を含む複数の分子ビルディングブロック;
(b)この反応混合物を湿潤膜として堆積させる工程;
(c)湿潤フィルムの乾燥SOFを形成するための変化を促進する工程;および
(d)前記複数の孔を空にすることによって、前記乾燥SOFを活性化して、SOFの形成後に残留し得るいずれかの残留化学種を実質的に除去する工程。
【請求項8】
前記多孔質SOFが官能化される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記SOFが多層シートである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記単層または多層シートが、槽中の貯蔵材料として機能するように適合される、請求項1に記載の方法。
【請求項1】
ガス状実体を貯蔵するための方法であって、この方法が:
ガス状実体を収着剤材料と接触させる工程であって、この収着剤材料が、少なくとも第1のセグメントタイプを含む複数のセグメントおよび共有結合性有機骨格(COF)として整列された少なくとも第1のリンカータイプを含む複数のリンカー、および複数の孔を含む多孔質構造化有機
フィルム (SOF)を含み、
第1のセグメントタイプおよび/または第1のリンカータイプが炭素でない少なくとも1つの原子を含み、および
複数の孔が、ガス状実体の取り込みおよび貯蔵のために利用可能な複数の部位を含む、工程;および
このガス状実体が所定の期間貯蔵される工程を含む、方法
【請求項2】
前記ガス状実体と収着剤材料との接触工程がさらに、前記ガス状実体を、その天然圧縮率について観察される濃度を超えて濃縮する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス状化学実体は、ガス状化学実体の天然圧縮率の約1.1倍超過からガス状化学実体のその液化時のおよその濃度までの濃度にてSOF中に存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
所定の期間が約30秒〜約1年である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化学実体の取り込みおよび貯蔵が可逆性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記SOFが、少なくとも200℃までの熱安定性範囲、および/または約75m2/g〜約3500m2/gのラングミュア表面積を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記多孔質SOFが以下によって調製される、請求項1に記載の方法:
(a)次を含む液体含有反応混合物を調製する工程: それぞれセグメントおよび官能基を含む複数の分子ビルディングブロック;
(b)この反応混合物を湿潤膜として堆積させる工程;
(c)湿潤フィルムの乾燥SOFを形成するための変化を促進する工程;および
(d)前記複数の孔を空にすることによって、前記乾燥SOFを活性化して、SOFの形成後に残留し得るいずれかの残留化学種を実質的に除去する工程。
【請求項8】
前記多孔質SOFが官能化される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記SOFが多層シートである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記単層または多層シートが、槽中の貯蔵材料として機能するように適合される、請求項1に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図1K】
【図1L】
【図1M】
【図1N】
【図1O】
【図2】
【図3】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図1K】
【図1L】
【図1M】
【図1N】
【図1O】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2013−27866(P2013−27866A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−142860(P2012−142860)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]