説明

ガス貯蔵装置

【課題】水素吸蔵材料の膨張が生じたときのタンク内の部材の破損をより確実に防止することができるガス貯蔵装置を提供する。
【解決手段】密閉された筒状のタンク20の内部空間において、径の異なる円筒仕切板40,41,42,43の軸線がタンク20の軸線に一致するように配置されるとともに、円筒仕切板40〜43の間に波板50,51,52が円筒仕切板に接合され、円筒仕切板40〜43の間における波板50〜52により区画形成され軸線方向に延びる各収容室70に粉末水素吸蔵合金60が充填されている。円筒仕切板40〜43における空間75,76,77を形成する部位に、径方向に屈曲する伸び代80,81,82,83が設けられ、粉末水素吸蔵合金60が流通する連通孔を有し円周方向に延びる波板50〜52における始端と終端との間で形成される空間75,76,77の容積が少なくとも粉末水素吸蔵合金60の膨張により増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素吸蔵材料を利用したガス貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス貯蔵装置として、タンク内に水素吸蔵材料を収容し、水素吸蔵材料に水素を吸蔵させて貯蔵を行うとともに、水素吸蔵材料から水素を放出させて利用するものが知られている。水素吸蔵材料の膨張等が生じても熱交換器の変形等を抑制する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のタンクでは、タンクは水素吸蔵合金及び熱交換器を内蔵しており、熱交換器は熱媒管に接合された複数の伝熱フィンを備え、伝熱フィンにより隣接する伝熱フィン間の空間が複数の領域に区画されている。領域には一部の領域を除いて粉末の水素吸蔵合金が充填され、水素吸蔵合金が充填されない領域が、水素吸蔵合金の膨張時の作用力により変形して膨張の作用力を吸収する吸収部を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−240983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載のタンクでは、伝熱フィンをロウ付け等で製作するため変形の自由度が少なかった。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、水素吸蔵材料の膨張が生じたときのタンク内の部材の破損をより確実に防止することができるガス貯蔵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明では、密閉された筒状のタンクの内部空間において、径の異なる複数の円筒仕切板がその軸線が前記タンクの軸線に一致するように配置されるとともに、前記タンクの半径方向に隣り合う前記円筒仕切板の間に水素吸蔵材料が流通する連通孔を有する波板が前記円筒仕切板に接合され、前記円筒仕切板の間において前記波板により区画形成され前記軸線方向に延びる各収容室に前記水素吸蔵材料が充填されているガス貯蔵装置であって、前記波板における始端と終端との間で形成される空間の容積が少なくとも水素吸蔵材料の膨張により増大する構成としたことを要旨とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、水素吸蔵材料の膨張が生じると、波板の始端と終端との間で形成される空間に水素吸蔵材料が波板の連通孔を介して流通して、その容積が増大する。これによりタンク内の部材の破損がより確実に防止される。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のガス貯蔵装置において、前記円筒仕切板における前記空間を形成する部位に、径方向に屈曲する伸び代を設けることにより、前記空間の容積が少なくとも水素吸蔵材料の膨張により増大する構成としたことを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、容易に、空間の容積が少なくとも水素吸蔵材料の膨張により増大する構成を構築することができる。
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載のガス貯蔵装置において、円周方向に延びる前記円筒仕切板における始端と終端との重なり部分を非接合状態にして、前記空間の容積が少なくとも水素吸蔵材料の膨張により増大する構成としたことを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明によれば、容易に、空間の容積が少なくとも水素吸蔵材料の膨張により増大する構成を構築することができる。
請求項4に記載のように、請求項2に記載のガス貯蔵装置において、前記波板は径方向において多層配置され、前記伸び代は各層で円周方向位置が揃えられているとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水素吸蔵材料の膨張が生じたときのタンク内の部材の破損をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態におけるガス貯蔵装置のタンクの断面図。
【図2】図1のA−A線での断面図。
【図3】タンクの要部拡大断面図。
【図4】タンクの要部拡大断面図。
【図5】第2の実施形態におけるガス貯蔵装置のタンクの断面図。
【図6】タンクの要部拡大断面図。
【図7】タンクの要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1には、本実施形態におけるガス貯蔵装置10の断面を示すとともに、図1のA−A線での断面を図2に示す。本実施形態のガス貯蔵装置10は、水素エンジン車(水素エンジンを搭載した自動車)に搭載される。
【0013】
ガス貯蔵装置10はタンク(水素貯蔵タンク)20を備えている。タンク20は略円筒形状をなしている。密閉された筒状のタンク20の内部空間において、タンク20内の長手方向略全体に亘って直線状に延びる水素流通管30と、円筒仕切板40,41,42,43と、波板50,51,52とが設けられている。円筒仕切板40〜43および波板50〜52は、金属製(例えば、アルミニウム合金製)の板材からなる。
【0014】
タンク20は金属製であるとともに、水素が満充填されて内部が所定の圧力(例えば、10MPa)となった場合でも十分耐えることができる強度を有している。そして、タンク20は、円筒部21と、その両端開口部に溶接された第1端壁22及び第2端壁23とから構成されることで内部が密閉されている。
【0015】
第1端壁22には、その中心部に、外側へ突出する水素ガス出入用の筒部24が設けられている。そして、筒部24には、ガス貯蔵装置10(タンク20)の使用状態を水素放出状態と水素充填状態との間で切り換えることができるように構成された図示しないバルブが装着されている。筒部24は、タンク20の軸心に対応するように配置された水素流通管30と連通することでタンク20の内部空間と水素ガス授受可能になっている。
【0016】
水素流通管30は、その両端部が第1,第2端壁22,23のそれぞれの内面に形成されたリング状の凹部22a,23aに嵌入されている。水素流通管30は、多孔質材からなり水素が厚さ方向に流通(透過)可能な筒壁31と、水素が流通可能な水素流通経路32とから構成されている。水素流通管30は、粉末の水素吸蔵合金60の通過を阻止するフィルタとしての機能を有している。なお、筒壁31は、水素吸蔵合金粉末が通過せず、水素のみを通すフィルター状のものであればよく、多孔質材に限定されない。
【0017】
複数の円筒仕切板40,41,42,43は径が異なっており、円筒仕切板40が最も小径であり、円筒仕切板41、円筒仕切板42、円筒仕切板43の順に径が大きくなっている。各円筒仕切板40,41,42,43は、その軸線がタンク20の軸線に一致するように配置されている。
【0018】
図2においてタンク20の半径方向に隣り合う円筒仕切板40と円筒仕切板41との間に波板50が配置されている。波板50は円筒仕切板40,41にロウ付けにより接合されている。そして、円筒仕切板40と円筒仕切板41との間において波板50により収容室70が区画形成され、収容室70はタンク20および円筒仕切板40〜43の軸線方向(図1のY方向)に延びている。同様に、タンク20の半径方向に隣り合う円筒仕切板41と円筒仕切板42との間に波板51が配置されている。波板51は円筒仕切板41,42にロウ付けにより接合されている。そして、円筒仕切板41と円筒仕切板42との間において波板51により収容室70が区画形成され、収容室70はタンク20および円筒仕切板40〜43の軸線方向に延びている。また、タンク20の半径方向に隣り合う円筒仕切板42と円筒仕切板43との間に波板52が配置されている。波板52は円筒仕切板42,43にロウ付けにより接合されている。そして、円筒仕切板42と円筒仕切板43との間において波板52により収容室70が区画形成され、収容室70はタンク20および円筒仕切板40〜43の軸線方向に延びている。
【0019】
各収容室70には水素吸蔵材料としての粉末水素吸蔵合金60が充填されている。
このようにして、波板50,51,52が円筒仕切板40,41,42,43に仕切られた状態で、径方向に3層配置され、円筒仕切板40〜43と波板50〜52を用いた構造(金属ハニカムフィン)を構築している。つまり、円筒仕切板40,41を第1および第2の円筒仕切板としたとき、円筒仕切板40,41の間に波板50が接合され、円筒仕切板40,41の間において波板50により区画形成され軸線方向に延びる各収容室70に水素吸蔵材料が充填されている。同様に、円筒仕切板41,42を第1および第2の円筒仕切板としたとき、円筒仕切板41,42の間に波板51が接合され、円筒仕切板41,42の間において波板51により区画形成され軸線方向に延びる各収容室70に水素吸蔵材料が充填されている。さらに、円筒仕切板42,43を第1および第2の円筒仕切板としたとき、円筒仕切板42,43の間に波板52が接合され、円筒仕切板42,43の間において波板52により区画形成され軸線方向に延びる各収容室70に水素吸蔵材料が充填されている。
【0020】
このような円筒仕切板40〜43と波板50〜52を用いた構造(金属ハニカムフィン)とすることによって、粉末水素吸蔵合金60を小さな部屋に分けて充填することができ、より伝熱性能や水素吸蔵合金の保持機能を向上させることができる。
【0021】
また、波板50,51,52および円筒仕切板40,41,42,43は粉末水素吸蔵合金60が流通する連通孔Hを有する。具体的には、例えば粉末水素吸蔵合金60の粒径が0.05mm、連通孔Hの径が1〜2mm程度であり、連通孔Hを粉末水素吸蔵合金60が通過可能であるとともに水素ガスが通過可能である。
【0022】
さらに、図3に示すように、円筒仕切板40,41間において、円周方向に延びる1枚の波板50における始端50aと終端50bとの間で空間75が形成されている。同様に、円筒仕切板41,42間において、円周方向に延びる1枚の波板51における始端51aと終端51bとの間で空間76が形成されている。また、円筒仕切板42,43間において、円周方向に延びる1枚の波板52における始端52aと終端52bとの間で空間77が形成されている。空間75,76,77は、収容室70と同様にタンク20の長手方向に延びている。
【0023】
円筒仕切板40における空間75を形成する部位に、外径側にV字状に屈曲する伸び代80が設けられている。同様に、円筒仕切板41における空間75,76を形成する部位に、外径側にV字状に屈曲する伸び代81が設けられている。また、円筒仕切板42における空間76,77を形成する部位に、内径側にV字状に屈曲する伸び代82が設けられている。さらに、円筒仕切板43における空間77を形成する部位に、内径側にV字状に屈曲する伸び代83が設けられている。このように伸び代80,81,82,83は径方向に山・谷型に屈曲しており、これにより、空間75,76,77は、その容積が少なくとも粉末水素吸蔵合金60の膨張により増大する構成となっている。
【0024】
次に、このように構成したガス貯蔵装置10の作用を説明する。
ガス貯蔵装置10のタンク20は図示しない筒状のハウジング内に横置き状態で配置される。ハウジング内にタンク20が配置されると、熱媒通路が形成され、この熱媒流路を流れる熱媒(自動車用不凍液)がタンク20の外周面と接するようになっている。そして、内部にタンク20が配置されたハウジングを水素エンジン車に取り付けることで、ガス貯蔵装置10(タンク20)は水素エンジン車に搭載される。
【0025】
ここで、ガス貯蔵装置10のタンク20から水素エンジンに水素を供給する際には、図示しないバルブが水素放出状態に切り換えられてタンク20から水素が放出される。タンク20から放出された水素は、筒部24を通して水素エンジンに供給される。タンク20から水素が放出されると、粉末水素吸蔵合金60の水素吸蔵・放出反応が放出側へ移動して粉末水素吸蔵合金60から水素が放出される。ここで、粉末水素吸蔵合金60による水素の放出は吸熱反応を伴うので水素の放出に必要な熱が熱媒により供給されないと、粉末水素吸蔵合金60は顕熱を消費して水素を放出するためその温度が低下する。しかし、熱媒流路を所定温度の熱媒が流れることで、タンク20と熱交換が行われ、粉末水素吸蔵合金60はタンク20及び波板50,51.52,53を介して予め設定された温度に加熱されて、水素放出の反応が円滑に進行する。
【0026】
収容室70に収容された粉末水素吸蔵合金60は水素を放出し、放出された水素は筒壁31の微細な孔を経て水素流通経路32に至る。そして、水素流通経路32からタンク20の外部へ放出され、筒部24を通して水素エンジンへと供給される。粉末水素吸蔵合金60の温度は、熱媒の温度あるいは流量が調整されることで水素の放出反応が円滑に進行する温度に保持されるため、水素エンジンで必要な水素量に対応した水素の放出が効率よく行われる。
【0027】
また、水素を放出したタンク20に再び水素を充填、即ち粉末水素吸蔵合金60に水素を吸蔵させる場合は、バルブが水素充填状態に切り換えられて水素を筒部24から水素流通管30の水素流通経路32に流入させる。水素流通経路32内に流入した水素は、タンク20の長手方向全体に亘って流通し、筒壁31の微細な孔を経て収容室70に至り、その後、収容室70に収容された粉末水素吸蔵合金60と反応して水素化物となることで粉末水素吸蔵合金60に吸蔵される。なお、粉末水素吸蔵合金60に対する水素の供給は、タンク20内が所定の圧力(例えば、10MPa)となるまで行われる。
【0028】
ここで、水素の吸蔵反応は発熱反応であるので、水素の吸蔵反応で発生した熱を除去しないと吸蔵反応は円滑に進行しない。しかし、水素を充填する際には熱媒流路に低温の熱媒が流れるため、熱媒とタンク20との熱交換が行われる。この時、粉末水素吸蔵合金60から発生した熱は波板50,51,52およびタンク20を介して熱媒に吸熱されタンク20外に運搬される。したがって、粉末水素吸蔵合金60の温度は水素の吸蔵反応が円滑に進行する温度に保持されるため、水素の吸蔵が効率よく行われる。
【0029】
粉末水素吸蔵合金60は水素を吸蔵する際に膨張が生じる。すると、波板50,51,52における始端50a,51a,52aと終端50b,51b,52bとの間で形成される空間75,76,77に水素吸蔵材料(粉末水素吸蔵合金60)が波板50,51,52の連通孔Hを介して流通する。そして伸び代80〜83が変形して、図4に示すように、空間75,76,77の容積が増大する。これによりタンク20内の円筒仕切板40〜43や波板50〜52の破損を防ぐことができる。また、変形することで最外周の円筒仕切板43(フィン外周面)とタンク内壁20aとの密着性も向上する。即ち、半径方向への変形も伴うので最外周の円筒仕切板43(フィン外周面)のタンク内壁20aとの密着性も向上して熱交換性能が向上する。
【0030】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)水素吸蔵材料(粉末水素吸蔵合金60)が流通する連通孔Hを有し円周方向に延びる波板50,51,52における始端50a,51a,52aと終端50b,51b,52bとの間で形成される空間75,76,77の容積が少なくとも水素吸蔵材料(粉末水素吸蔵合金60)の膨張により増大する構成とした。詳しくは、円筒仕切板40〜43における空間75,76,77を形成する部位に、径方向に屈曲する伸び代80,81,82,83を設けることにより、空間75,76,77の容積が少なくとも水素吸蔵材料(粉末水素吸蔵合金60)の膨張により増大する構成とした。これにより、水素吸蔵材料(粉末水素吸蔵合金60)の膨張が生じたときの変形の自由度が高くタンク20内の部材(円筒仕切板40〜43や波板50〜52)の破損をより確実に防止することができる。
【0031】
(2)波板50,51,52は径方向において多層配置され、伸び代80〜83は各層で円周方向位置が揃えられているので、揃えられていない場合に比べて、波板50,51,52の変形(図3で矢印に示す円周方向の変形)を容易に行わせることができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0032】
本実施形態においては、図5,6に示すように、円筒仕切板40における始端40aと終端40bとが重なっており、その重なり部分90が非接合状態にされている。同様に、円筒仕切板41における始端41aと終端41bとが重なっており、その重なり部分91が非接合状態にされている。また、円筒仕切板42における始端42aと終端42bとが重なっており、その重なり部分92が非接合状態にされている。さらに、円筒仕切板43における始端43aと終端43bとが重なっており、その重なり部分93が非接合状態にされている。
【0033】
このようにして、円筒仕切板40,41を、円周方向に延びる1枚の第1の円筒仕切板および1枚の第2の円筒仕切板としたとき、円筒仕切板40,41における始端と終端との重なり部分90,91を非接合状態にして、空間75の容積が少なくとも粉末水素吸蔵合金60の膨張により増大する構成としている。また、円筒仕切板41,42を、円周方向に延びる1枚の第1の円筒仕切板および1枚の第2の円筒仕切板としたとき、円筒仕切板41,42における始端と終端との重なり部分91,92を非接合状態にして、空間76の容積が少なくとも粉末水素吸蔵合金60の膨張により増大する構成としている。さらに、円筒仕切板42,43を、円周方向に延びる1枚の第1の円筒仕切板および1枚の第2の円筒仕切板としたとき、円筒仕切板42,43における始端と終端との重なり部分92,93を非接合状態にして、空間77の容積が少なくとも粉末水素吸蔵合金60の膨張により増大する構成としている。また、円筒仕切板40は始端40aに対し終端40bを外径側に重ね、円筒仕切板41は始端41aに対し終端41bを内径側に重ね、円筒仕切板42は始端42aに対し終端42bを外径側に重ね、円筒仕切板43は始端43aに対し終端43bを内径側に重ねている。
【0034】
このように、ロウ付けしない部分の重ね方を段毎に交互にしておくことで、円周方向への可変性を確保する。この場合、重なり部分90〜93が各層で円周方向位置で揃えられている。
【0035】
そして、図7に示すように、水素吸蔵材料(粉末水素吸蔵合金60)の膨張が生じると、波板50,51,52における始端50a,51a,52aと終端50b,51b,52bとの間で形成される空間75,76,77に水素吸蔵材料(粉末水素吸蔵合金60)が波板50,51,52を介して流通して、その容積が増大する。このようにして、収容室70の容積は、粉末水素吸蔵合金60が水素を吸蔵する際に膨張して大きくなり、円筒仕切板40〜43や波板50,51,52に大きな圧力が作用することを抑制でき、タンク20内の円筒仕切板40〜43や波板50〜52の破損をより確実に防止することができる。
【0036】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・波板50〜52における始端50a,51a,52aと終端50b,51b,52bとの間で形成される空間75〜77の容積は膨張により増大した後において収縮する力が作用したときに容積が戻ってもよいし、戻らなくてもよい。ただし、戻らない方がより好ましい。
【0037】
・上記実施形態では円筒仕切板を4つ設けるとともに波板を3つ設けた場合について述べたが(タンク20内において波板を3層(3段)積層したが)、これは一例にすぎず他の形態でもよく、円筒仕切板を3つ以下や5つ以上としたり、波板を2つ以下や4つ以上設けてもよい(2層(2段)以下であっても、4層(4段)以上であってもよい)。
【0038】
・図3において波板を多層に配置した場合において波板における始端と終端との間で形成される空間(容積が可変とした空間)75〜77を円周方向位置を揃えたが、揃えない態様で実施してもよい。
【0039】
・熱媒は不凍液を用いたが、他にも例えば水でもよい。
・水素吸蔵材料として水素吸蔵合金でなくてもよく、例えば非金属でもよく、水素を吸蔵可能な材料であればよい。
【0040】
・ガス貯蔵装置を水素エンジン車に搭載する場合について説明したが、これに限ることはなく、他にも例えば燃料電池自動車に搭載する場合等であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…ガス貯蔵装置、20…タンク、40…円筒仕切板、40a…始端、40b…終端、41…円筒仕切板、41a…始端、41b…終端、42…円筒仕切板、42a…始端、42b…終端、43…円筒仕切板、43a…始端、43b…終端、50…波板、50a…始端、50b…終端、51…波板、51a…始端、51b…終端、52…波板、52a…始端、52b…終端、60…粉末水素吸蔵合金、70…収容室、75,76,77…空間、80,81,82,83…伸び代、90,91,92,93…重なり部分、H…連通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉された筒状のタンクの内部空間において、径の異なる複数の円筒仕切板がその軸線が前記タンクの軸線に一致するように配置されるとともに、前記タンクの半径方向に隣り合う前記円筒仕切板の間に水素吸蔵材料が流通する連通孔を有する波板が前記円筒仕切板に接合され、前記円筒仕切板の間において前記波板により区画形成され前記軸線方向に延びる各収容室に前記水素吸蔵材料が充填されているガス貯蔵装置であって、
前記波板における始端と終端との間で形成される空間の容積が少なくとも水素吸蔵材料の膨張により増大する構成としたことを特徴とするガス貯蔵装置。
【請求項2】
前記円筒仕切板における前記空間を形成する部位に、径方向に屈曲する伸び代を設けることにより、前記空間の容積が少なくとも水素吸蔵材料の膨張により増大する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のガス貯蔵装置。
【請求項3】
円周方向に延びる前記円筒仕切板における始端と終端との重なり部分を非接合状態にして、前記空間の容積が少なくとも水素吸蔵材料の膨張により増大する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のガス貯蔵装置。
【請求項4】
前記波板は径方向において多層配置され、前記伸び代は各層で円周方向位置が揃えられていることを特徴とする請求項2に記載のガス貯蔵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−255723(P2010−255723A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105482(P2009−105482)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】