説明

ガム材料用のポリマーベースとしての無定形ポリエステルの使用

本発明はガム材料用のポリマーベースとしての無定形ポリエステルの使用に関する。さらに本願は、そのようなポリエステルを含有するガム材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガム材料(Kaumassen)用のポリマーベースとしての無定形ポリエステルの使用に関する。さらに本願はそのようなポリエステルを含有するガム材料に関する。
【0002】
常用のガム材料(ガムベース;Kaubasen)は、合成の熱可塑性プラスチック、例えばポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリイソブテン、イソプレン−イソブテン−コポリマー(ブチル−ゴム)、スチレン−ブタジエン−コポリマー(SBR−ゴム)及びポリ酢酸ビニル(PVA)をベースとしている。これらのポリマーの場合に不利であるのは、それらの粘着性及び劣悪な生分解性である。無頓着に捨てられたチューインガムは永続的に不快なものである、それというのも一度表面上に付着すると、通例これらは多大な費用を伴って再び除去されうるに過ぎないからである。また、環境因子、例えば雨、太陽光;機械的摩耗及び微生物による分解によるそれらの分解は、それらの除去の問題が固有に解決されないほどゆっくりである。
【0003】
確かにUS 6,013,287には、末端基キャップされたポリエステルをベースとしており、かつ極めて粘着性であるはずのないチューインガムベースが記載されている。ポリエステルのアルコール成分は、グリセリン、プロピレングリコール及び1,3−ブタンジオールの中から選択されており、かつ酸成分はフマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、コハク酸及び酒石酸の中から選択されている。ポリエステル末端基は、単官能性アルコール又はモノカルボン酸でキャップされている。しかしながら不利であるのは、そのようなポリエステルが通常の環境影響下に、特に太陽光により、殆ど分解されないことである。
【0004】
EP-A 0711506には、ガムベース中に生分解性ポリエステル又は生分解性ポリカーボネートを含有する生分解性チューインガムが記載されている。ポリエステルもしくはポリカーボネートは、縮合導入された環状のエステルもしくはカーボネート、例えばラクチド、グリコリド(Glycolid)、δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−カプロラクトン及びトリメチルカーボネートをベースとしている。しかしながらそのようなポリエステル及びポリカーボネートの場合に不利であるのは、これらが紫外線により殆ど分解されないことである。そのうえこれらのポリエステルは僅かな加水分解安定性を有するので、チューインガムは迅速にその味覚的及び触覚的な性質(噛み心地)を失う。
【0005】
故に本発明の課題は、粘着性ではなく、かつ生分解可能であるだけでなく、紫外線により分解可能でもあるガム材料用のポリマーベースを提供することであった。さらにポリマーベースは同時に良好な加水分解安定性を有するべきである。
【0006】
前記課題は、繰返し単位として、
a)少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸、
b)少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸及び
c)少なくとも1つの分枝位置、飽和の環状部分構造及び/又は少なくとも1つのエーテル基を有する、少なくとも1つの脂肪族ジオール
を縮合導入された形で含有する無定形ポリエステルにより解決される。
【0007】
それゆえ本発明は、ガム材料用のポリマーベースとしてのそのようなポリエステルの使用並びにそのようなポリエステルを含有するガム材料に関する。
【0008】
「無定形」は本発明の範囲内で、ポリエステルの全質量に対して5質量%未満、好ましくは2質量%未満の結晶性含分を含有するポリエステルであると理解される。特に結晶性成分の含分は(少しでも存在している場合に)、通常の検出限界未満である。結晶性成分は本発明の範囲内で、DSC−測定(示差走査熱量測定;示差熱分析)の際に融解ピーク及び結晶化ピークを有する(吸熱相転移)ものであると理解される。逆に、相応して、無定形ポリエステルは、DSC−測定において測定可能な融解ピーク及び結晶化ピークを有しないものであると理解される。ポリエステルの無定形状態の決定のためのDSC−測定は、本発明の範囲内で次の方法に基づいている:使用されるのはSeiko社の名称Exstet DSC 6200Rの装置である。調べるべき試料10〜15mgは、窒素雰囲気下に20℃/minの加熱速度で−100℃から200℃に加熱され、かつ融解ピークが生じるかどうかが観察される。試料は直ちに引き続いて20℃/minの冷却速度で200℃から−100℃に冷却され、かつ結晶化ピークが生じるかどうかが観察される。対照として相応する空の試料るつぼが使用される。
【0009】
本発明により使用されるポリエステルは生分解性である。生分解性は、DIN V 54900によれば、ポリエステルが環境の影響下に、適切かつ検出可能な期間において分解することであると理解される。分解は、加水分解的に及び/又は酸化的に行われることができ、かつ大部分、微生物、例えば細菌、酵母、菌類及び藻類の作用により引き起こされる。生分解性は、例えば、ポリエステルが堆肥と混合され、かつ特定の時間に亘って貯蔵されることによって測定されることができる。ASTM D 5338、ASTM D 6400、EN 13432及びDIN V 54900によれば、CO−不含の空気を例えば、堆肥化の間に熟成した堆肥に通過させ、かつこれは定義された温度プログラムにかけられる。その際に生分解性は、試料の最大CO−放出(試料の炭素含量から計算)に対する試料の純−CO−放出の比(試料なしの堆肥によるCO−放出を差し引いた後の)に関して生分解性として定義される。生分解可能なポリエステルは通例、堆肥化の僅かの日後に既に明らかな分解現象、例えば菌成長、割れ形成及び孔形成を示す。
【0010】
生分解性は、ポリエステルが適している酵素の特定の量と共に、特定の温度で定められた期間に亘ってインキュベートされ、引き続いてインキュベーション媒体中に溶解された有機分解生成物の濃度が測定されることによっても測定されることができる。例えば、Y. Tokiwa他、American Chemical Society Symposium 1990, Chapter 12, “Biodegradation of Synthetic Polymers Containing Ester Bonds”に類似してポリエステルは所定の量の、例えばリゾプス アルヒズス(Rhizopus arrhizus)、リゾプス デレマー(Rhizopus delemar)、アクロモバクター属(Achromobacter)の種又はキャンディダ シリンドラセ(Candida cylindracea)由来のリパーゼと共に30〜37℃で数時間インキュベートされ、引き続いて不溶性成分を含まない反応混合物のDOC−値(溶存有機炭素;dissolved organic carbon)は測定されることができる。生分解性であるとして、本発明の範囲内で、35℃でのリゾプス アルヒズス由来のリパーゼでの酵素による処理後に、酵素で処理されなかった同一のポリエステルのそれよりも少なくとも10倍高いDOC−値が16h後に得られるようなそのようなポリエステルが当てはまる。
【0011】
本発明により使用されるポリエステルは特に紫外線によっても、すなわち太陽光により分解され、すなわちポリエステルは適切かつ検出可能な期間において分解し、その際に分解は本質的には太陽光により引き起こされる。UV分解性は例えば、ポリエステルに特定の放射強度の人工紫外線が特定の期間に亘り照射され、かつポリエステルの変化が測定されることによって測定されることができる。例えば、ポリエステルは300〜800nmの波長及び765W/mの出力で8週間照射され、かつそれらの粘度数は定期的に、例えば毎週測定される。紫外線により分解可能なポリエステルは通例、僅かの日後に既に明らかな変化、特に粘度数の明らかな減少を示す。紫外線により分解可能であるとして、本発明の範囲内で、粘度数が照射3週後に少なくとも50%だけ減少するポリエステルが当てはまる。
【0012】
芳香族ジカルボン酸a)は、芳香族系に結合されている2つのカルボキシル基を含有する。好ましくは芳香族系は、芳香族炭素化合物(Carboaromaten)、例えばフェニル又はナフチルである。多核の芳香族化合物の場合に、双方のカルボキシル基は同じ環上に又は異なる環上に結合されていてよい。芳香族系は、1つ又はそれ以上のアルキル基、例えばメチル基も有していてよい。芳香族ジカルボン酸は通例、炭素原子8〜12個を有する芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−及び2,6−ナフタレンジカルボン酸の中から選択されている。好ましい芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸並びにそれらの混合物である。特に、芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸であるか又は混合物の全質量に対して、テレフタル酸少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%及び特に少なくとも95質量%及び少なくとも1つの前記の芳香族C〜C12−ジカルボン酸を含有する芳香族ジカルボン酸の混合物である。
【0013】
脂肪族ジカルボン酸b)は通例、炭素原子4〜12個を有する脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸、それらの高級同族体及び立体異性体並びに混合物の中から選択されている。好ましい脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸並びにそれらの混合物である。特に、脂肪族C〜C12−ジカルボン酸は、アジピン酸であるか又は混合物の全質量に対してアジピン酸少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%及び特に少なくとも95質量%及び少なくとも1つの前記の脂肪族C〜C12−ジカルボン酸を含有する脂肪族ジカルボン酸の混合物である。
【0014】
芳香族ジカルボン酸a)対脂肪族ジカルボン酸b)のモル比は、好ましくは1:4〜2:1、特に好ましくは1:2〜3:2及び特に2:3〜1:1である。
【0015】
脂肪族ジオールc)として、原則的に分枝鎖状の脂肪族ジオール、飽和の環状部分構造及び/又は少なくとも1つのエーテル基を有するものが考慮される。脂肪族ジオールは好ましくは、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール(ネオペンチルグリコール)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール並びにそれらの混合物の中から及び特に好ましくはネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びそれらの混合物の中から選択されている。
【0016】
さらに、ポリエステルは、c)とは異なるジオール20質量%まで、好ましくは10質量%まで及び特に5質量%までを縮合導入された形で含有していてよい。適しているジオールの例は、非分枝鎖状の脂肪族C〜C12−ジオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等である。質量%の記載は、ジオールc)及び前記の、c)とは異なるジオールの全量に対するものである。しかしながら好ましくはポリエステルはそのようなジオールを含有しない。
【0017】
好ましくは、本発明により使用されるポリエステルは繰返し単位としてさらに、エステル形成することができる少なくとも3つの基を有する少なくとも1つの化合物d)を縮合導入された形で含有する。
【0018】
分枝剤とも呼ばれる、そのような化合物d)は好ましくは、エステル結合を形成することができる官能基3〜10個、特に好ましくは官能基3〜6個を有する。特にこれらはヒドロキシ基及びカルボキシル基である。故に特に好ましい分枝剤d)はヒドロキシ基及び/又はカルボキシル基3〜6個を有する。
【0019】
好ましくは、その際にこれらの化合物は、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ポリエーテルトリオール、グリセリン、トリメシン酸、トリメリト酸、ピロメリト酸及びヒドロキシイソフタル酸の中から選択されている。特に好ましい分枝剤d)はグリセリンである。
【0020】
本発明により使用されるポリエステルは、分枝剤d)を、ポリエステル形成性成分の全質量に対して、好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.5〜3質量%及び特に1〜1.5質量%の量で含有する。
【0021】
さらに本発明により使用されるポリエステルは、1つ又はそれ以上の鎖長延長剤を縮合導入された形で含有していてよい。適している鎖長延長剤は特にイソシアナート、ジビニルエーテル及びビスオキサゾリンである。
【0022】
適しているイソシアナートは、芳香族又は脂肪族のジイソシアナート並びにより高官能性のイソシアナートである。適しているイソシアナートの例は次のものである:
・ 芳香族ジイソシアナート、例えばトルイレン−2,4−ジイソシアナート、トルイレン−2,6−ジイソシアナート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート、ナフチレン−1,5−ジイソシアナート及びキシリレン−ジイソシアナート、その際に2,2′−、2,4′−及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナートが好ましい。これらのジイソシアナートの混合物も適している。好ましいより高官能性のイソシアナートは、三核の芳香族トリイソシアナートであるトリ(4−イソシアナトフェニル)メタンである。多核の芳香族イソシアナートは例えば、1核又は2核のジイソシアナートの製造の際に生じる。
・ 脂肪族ジイソシアナート、特に、炭素原子2〜20個、好ましくは3〜12個を有する線状又は分枝鎖状のアルキレンジイソシアナート又はシクロアルキレンジイソシアナート、例えば1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート及びメチレン−ビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)。その際に1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート及びイソホロンジイソシアナートが好ましい。
・ イソシアヌレート、特に、炭素原子2〜20個、好ましくは炭素原子3〜12個を有するアルキレンジイソシアナート又はシクロアルキレンジイソシアナート、例えばイソホロンジイソシアナート又はメチレン−ビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)から誘導される脂肪族イソシアヌレート、例えばn−ヘキサメチレンジイソシアナートから誘導されるイソシアヌレート、特にn−ヘキサメチレンジイソシアナートの環状のトリマー、ペンタマー又は高級オリゴマー。
【0023】
適しているジビニルエーテルは、常用かつ商業的に入手可能な全てのジビニルエーテルである。好ましいジビニルエーテルは、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル及び1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル又はそれらの混合物である。
【0024】
適しているビスオキサゾリンは式
【0025】
【化1】

で示される2,2′−ビスオキサゾリンであり、式中、Aは、単結合、C〜C−アルキレン橋、例えば1,2−エチレン、1,2−又は1,3−プロピレン、1,2−、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレン、又はフェニレンを表し、縮合導入された形で含有する。
【0026】
ビスオキサゾリンは、例えばAngew. Chem. Int. Ed., 11巻(1972)、287-288頁に記載された方法により入手可能である。
【0027】
好ましいビスオキサゾリンは、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニル)メタン、1,2−ビス(2−オキサゾリニル)エタン、1,3−ビス(2−オキサゾリニル)プロパン、1,4−ビス(2−オキサゾリニル)ブタン、1,4−ビス(2−オキサゾリニル)ベンゼン、1,3−ビス(2−オキサゾリニル)ベンゼン及び1,2−ビス(2−オキサゾリニル)ベンゼンである。
【0028】
本発明により使用されるポリエステルが、そのような鎖長延長剤を有する場合には、これらはポリエステル形成性成分a)、b)及びc)の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%、特に好ましくは0.05〜4質量%の量で、含まれている。
【0029】
好ましくはポリエステルは、鎖長延長剤を含有しない、すなわちポリエステルの全質量に対して、鎖長延長剤0.1質量%未満を含有する。
【0030】
好ましくは本発明により使用されるポリエステルは、成分a)、b)、c)及びd)少なくとも95質量%、特に好ましくは少なくとも96質量%及び特に少なくとも98質量%、例えば98〜99.9質量%から構成されている。
【0031】
本発明により使用されるポリエステルは、好ましくは−60〜0℃、特に好ましくは−50℃〜0℃のガラス転移温度Tを有する。記載されたT−値はDSC−測定により測定された。DSC−測定は当業者に公知である技術水準の常法により行われた。
【0032】
そのうえ、本発明により使用されるポリエステルは、通例30〜250ml/g、好ましくは50〜200ml/g及び特に80〜150ml/gの範囲内の粘度数により特徴付けられている(o−ジクロロベンゼン/フェノール(質量比50:50)中、ポリエステル0.5質量%の濃度で25℃の温度でEN ISO 1628-1により測定)。
【0033】
本発明により使用すべきポリエステルの製造はそれ自体として公知の方法により行われ、これらは例えばSorensen及びCampbell、"Preparative Methods of Polymer Chemistry", Interscience Publishers, Inc., New York, 1961, 111〜127頁; Encycl., of Polym. Science and Eng., 12巻, 第2版, John Wiley & Sons, 1988, 1〜75頁; Kunststoff-Handbuch、3/1巻, Carl Hanser Verlag, Muenchen、1992、15〜32頁; WO 92/13019; EP-A 568593; EP-A 565235; EP-A 28687; EP-A 792309及びEP-A 792310に記載されており、これに関して本明細書に全面的に関連づけられる。
【0034】
前記製造方法において、ジカルボン酸a)及びb)は酸の形で又はエステル形成性誘導体として使用されることができる。エステル形成性誘導体は例えば、これらの酸の無水物又はそれらのエステル、例えばC〜C−アルカノール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール又はn−ヘキサノールとのエステルである。相応することは成分d)に、これがカルボキシル基を有する場合に、当てはまる。
【0035】
酸−又はヒドロキシ−末端基の過剰量が所望であるかどうかに依存して、酸成分a)もしくはb)又はジオール成分c)のいずれかは過剰量で使用されることができる。しかしながら好ましくは、酸成分a)及びb)及びジオール成分c)は[a)+b)]:c)=1:1〜1:2.5、特に好ましくは1:1.1〜1:1.5のモル比で使用される。
【0036】
単に一例として、ポリエステル形成性成分を、まず最初に160〜230℃の範囲内の温度で溶融物中で大気圧で、好ましくは不活性ガス雰囲気下に、引き続いて所望の分子量までの重縮合の完了のために180〜260℃の温度で及び減圧下に、反応させることを挙げることができる(Tsai他、Polymer 1990、31、1589参照)。
【0037】
本発明の別の対象は、少なくとも1つの前記に定義されたようなポリエステル並びに少なくとも1つの別の添加剤を含有しているガム材料である。
【0038】
ガム材料(ガムベース)とは、一般的に、チューインガムの、水に不溶性で、消化の悪く、噛む際に可塑性になる成分を呼ぶ(Roempp Chemie-Lexikon, 第9版, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 2181頁参照)。通常、ガム材料はポリマーベースに加えて、通例可塑剤及び乳化剤として役立ち、かつ触覚的な性質(噛み心地、口当たり)を改善する、別の添加剤、例えば樹脂、ろう、脂肪及び油、さらに無機充填剤、着色剤、漂白剤及び酸化防止剤を含有する。
【0039】
好ましくは、ガム材料はポリエステルを、ガム材料の全質量に対して20〜90質量%、特に好ましくは20〜70質量%及び特に20〜50質量%の量で含有する。
【0040】
適している樹脂は、例えばコロホニウム−誘導体、例えばコロホニウムのペンタエリトリトール−エステル、水素化された又は部分水素化されたコロホニウム及びコロホニウムのグリセリン−エステル、水素化された、部分水素化された、部分二量化された又は重合されたコロホニウム、さらにテルペン−樹脂、例えば重合されたα−又はβ−ピネンである。ガム材料が樹脂を含有する場合には、これらは通例、ガム材料の全質量に対して5〜30質量%の量で含まれている。
【0041】
適しているろうは、例えば植物ろう、例えばカンデリラろう及びカルナウバろう、動物ろう、例えばみつろう及びラノリン、及び石油化学ろう、例えばパラフィンろう及びミクロワックス(ミクロクリスタンワックス)である。ガム材料がろうを含有する場合には、これらは通例、ガム材料の全質量に対して1〜15質量%の量で含まれている。
【0042】
適している脂肪及び油は、例えば獣脂、水素化された獣脂、水素化及び部分水素化された植物油、例えば大豆油、ひまわり油、とうもろこし油、なたね油、落花生油、パーム油及び綿実油、カカオバター、グリセリンモノステアレート、グリセリントリアセテート、レシチン、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド及び脂肪酸トリグリセリド、アセチル化モノグリセリド、脂肪酸、例えばステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸及びリノール酸、並びにそれらの混合物である。ガム材料が脂肪及び油を含有する場合には、これらは通例、ガム材料の全質量に対して5〜30質量%の量で含まれている。
【0043】
適している充填剤は、例えば炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウム、粉砕した石灰石、タルク、ケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウム及びケイ酸アルミニウム、粘土、酸化アルミニウム、酸化チタン、リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウム及びリン酸三カルシウム、セルロースポリマー及びそれらの混合物である。ガム材料が充填剤を含有する場合には、これらは通例、ガム材料の全質量に対して5〜30質量%の量で含まれている。
【0044】
“着色剤”という概念は、ここでは及び以下に天然染料、天然と同一の染料及び合成染料並びに顔料を含む。適している着色剤及び漂白剤は特に、食品に適しているもの、例えば果物−及び野菜抽出物、二酸化チタン及びそれらの混合物である。ガム材料が着色剤及び漂白剤を含有する場合には、これらは通例、ガム材料の全質量に対して0.01〜1質量%の量で含まれている。
【0045】
適している酸化防止剤は、食品に適しているもの、例えばブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン及び没食子酸プロピルである。ガム材料が酸化防止剤を含有する場合には、これらは通例、ガム材料の全質量に対して0.01〜1質量%の量で含まれている。
【0046】
そのうえガム材料は天然のエラストマー、例えばチクル、ジェルトン、レッチェカスピ(Lechi caspi)、グッタハンカン(Gutta Hang Kang)、グッタソー(Gutta Soh)、グッタシアク(Gutta Siak)、マッサランドババラタ(Massaranduba balata)、マッサランドバチョコレート(Massaranduba chocolate)等を含有していてよい。ガム材料が天然のエラストマーを含有する場合には、これらは通例、ガム材料の全質量に対して1〜30質量%の量で含まれている。
【0047】
特別な実施態様において、ガム材料は動物由来の成分、特に動物ろう、脂肪及び油を含有しないので、これらは適法の(koschere)食品の要求を満たす。
【0048】
本発明によるガム材料は、技術水準の常法により、例えば成分の均質混合により得ることができる。
【0049】
最後に、本発明の対象は、上記で定義されたようなガム材料並びに別の添加剤成分、特に少なくとも1つの甘味料及び少なくとも1つの風味付け剤を含有するチューインガムである。
【0050】
通常、チューインガムは、水に不溶性のガム材料、水溶性含分及び風味付け剤からなる(US 6,013,287及びEP-A 0711506参照)。
【0051】
水溶性成分は、一般的に可塑剤及び甘味料を含む。可塑剤は、チューインガムの噛み心地及び口当たりを改善するためにチューインガムに添加される。
【0052】
適している可塑剤の例はグリセリン、レシチン及びそれらの混合物である。可塑剤及び乳化剤として、さらにソルビトール、水素化されたデンプン水解物、とうもろこしシロップ並びにそれらの混合物が使用されることができる。
【0053】
甘味料は、糖並びに糖代用物及び甘味剤を含む。
【0054】
適している糖は、例えばサッカロース、デキストロース、マルトース、デキストリン、転化糖、グルコース、フルクトース、ガラクトース等並びにそれらの混合物である。
【0055】
適している糖代用物の例は、糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール、イソマルト(パラチニット)、キシリトール、水素化されたデンプン水解物、マルチトール、ラクチトール等並びにそれらの混合物である。
【0056】
(人工)甘味剤として、例えばスクラロース、アスパルテーム、アセスルファム−塩、アリテーム、サッカリン及びその塩、サイクラミン酸塩、グリシルリチン、ジヒドロカルコン、タウマチン、モネリン、ズルチン、ステビオシド等を挙げることができる。
【0057】
適している風味付け剤は通例、水に不溶性であり、かつ植物油及び果実油、例えば柑橘油、果実エッセンス、ペパーミント油、クラウゼミント油(スペアミント)、他のミント油、ちょうじ油、アニス油等を含む。人工の風味付け剤も使用されることができる。
【0058】
好ましくは、ガム材料はチューインガム中に、チューインガムの全質量に対して、5〜95質量%、特に好ましくは10〜50質量%及び特に20〜35質量%の量で含まれている。
【0059】
本発明によるチューインガムは、水溶性成分をチューインガムの全質量に対して、好ましくは3〜94.9質量%、特に好ましくは49〜89.5質量%の量で含有する。
【0060】
風味付け剤は本発明によるチューインガム中にチューインガムの全質量に対して、好ましくは0.1〜2質量%、特に好ましくは0.5〜1質量%の量で含まれている。
【0061】
特別な実施態様において、チューインガムは動物由来の成分、特に動物ろう、脂肪及び油を含有しないので、これは適法の食品の要求を満たす。
【0062】
本発明によるチューインガムは技術水準の常用の方法により、例えば成分の均質混合により得ることができる。
【0063】
前記の無定形ポリエステルをポリマーベースとして含有する、ガム材料及びチューインガムはまた、より粗い表面、例えばコンクリート上に、事実上粘着性ではなく、良好な加水分解安定性を有し、かつ生物学的に及び太陽光により良好に分解される。
【0064】
次の例は本発明を説明するが、しかしながら本発明を限定するものではない。
【0065】
実施例
1.ポリエステルの製造
1.1
テレフタル酸746g(4.5mol)、アジピン酸803g(5.5mol)、ジエチレングリコール1272g(12mol)及びグリセリン33.7g(0.37mol)を、Tsai他、Polymer、31、1589 (1990)の溶融縮合法により重共縮合させた。得られたポリエステルは125ml/gの粘度数を有していた(前記のように測定)。
【0066】
1.2
テレフタル酸747g(4.5mol)、アジピン酸803g(5.5mol)、ネオペンチルグリコール1248g(12mol)及びグリセリン33.8g(0.37mol)を、同様にTsai他、Polymer、31、1589 (1990)の溶融縮合法により重共縮合させた。得られたポリエステルは132ml/gの粘度数を有していた(前記のように測定)。
【0067】
比較例1
L−ラクチド25mol%、D−ラクチド25mol%及びε−カプロラクトン50mol%を、EP-A 0711 506、例3により重共縮合させた。得られたポリエステルは100ml/gの粘度数を有していた(前記のように測定)。
【0068】
2.使用例
例1及び2から及び比較例1からのポリエステル並びに比較例2として中程度の分子量のポリイソブテンを、それらの除去可能性、加水分解安定性、UV分解性及び生分解性に関して調べた。
【0069】
2.1 除去可能性
ポリマーシート10g(5×7cm)を、室温でコンクリート床上に押しつけ、手で除去した。除去されたポリマーの質量を測定した。その際に測定されたポリマー質量を次のように評価した。
除去されたポリマーの質量[g] 評点
8〜 10 1
6〜7.9 2
4〜5.9 3
0〜3.9 4
例1及び2及び比較例1及び2からのポリマーの除去可能性は、次の第1表に記載されたように評価された:
【0070】
【表1】

【0071】
前記の表が示しているように、本発明により使用されるポリエステルは、技術水準のポリマーよりも本質的により良好にコンクリート床から除去されることができる。
【0072】
2.2 加水分解安定性
前記のポリマーを水中に30℃で貯蔵し、粘度数の減少を2もしくは4週間後に測定した。
【0073】
結果は次の第2表に記載されている。
【0074】
【表2】

【0075】
前記の表が示しているように、本発明により使用されるポリエステルは技術水準のポリエステルよりも本質的により加水分解安定である。
【0076】
2.3 UV分解性
UV分解性の測定のために、Heraeus社の高速露光装置“SUNTEST”を使用した。300〜800nmの波長及び765W/mの出力で照射した。ポリマーを、これらの条件下に全部で8週間に亘って露光し、その際にポリマーの粘度数をその都度1、2、3、4、6及び8週間後に測定した。結果は次の第3表に記載されている。
【0077】
【表3】

【0078】
前記の表が示しているように、本発明により使用されるポリエステルは技術水準のポリエステルよりも本質的により良好に紫外線により分解可能である。
【0079】
3.4 生分解性
生分解性の測定のために、その都度無定形ポリマー30mg、リン酸水素カリウム緩衝液2ml(20mM、pH 7.0)及びSigma社のリゾプス アルヒズス(Rhizopus arrhizus)由来のリパーゼ100単位(1単位は毎分オレイン酸1μmolを遊離させる酵素量に相当)を2mlエッペンドルフ−反応容器中に添加した。反応混合物を、35℃で16時間、振とう器上でインキュベートした。インキュベーション後、反応混合物を遠心分離し、上澄みのDOC−値(溶存有機炭素)を測定した。DOC−測定のために、Shimadzu DOC−分析器を使用した。それに類似して、DOC−測定をそれぞれ、緩衝液及び酵素のみを有するもの(酵素対照)及び緩衝液及びポリマーのみを有するもの(空試験値)について実施した。結果は次の第4表に記載されている。
【0080】
【表4】

【0081】
前記の表が示しているように、本発明により使用されるポリエステルは極めて良好に生分解されるのに対して、通常のガム材料において使用されるポリイソブテンは殆ど分解されない。
【0082】
3.ガムベース
第5表に記載された成分を、記載された質量比で互いに均質混合してガムベースとした。このためにはニーダー中でまず最初にポリエステルを140℃に混練下に加熱し、引き続いて逐次充填剤、樹脂、脂肪及びろうを添加し、前記成分を混練して均一な材料とした。
【0083】
【表5】

【0084】
ポリエステルとして例1及び2のポリエステルを使用した。充填剤として石灰石を使用した。ろうとしてミクロクリスタンワックスを使用した。使用した樹脂は、Eastman社の名称Picolite C 115及びMBG 429のコロホニウム誘導体であった。脂肪として水素化された又は部分水素化された植物油もしくはグリセリンモノステアレートを使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰返し単位として、
a)少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸、
b)少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸及び
c)少なくとも1つの分枝位置、飽和の環状部分構造及び/又は少なくとも1つのエーテル基を有する、少なくとも1つの脂肪族ジオール
を縮合導入された形で含有する無定形ポリエステルの、ガム材料用のポリマーベースとしての使用。
【請求項2】
a)対b)のモル比が1:4〜2:1である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
ポリエステルのガラス転移温度Tが0〜−60℃である、請求項1から2までのいずれか1項記載の使用。
【請求項4】
芳香族ジカルボン酸が、テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸の中から選択されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
脂肪族ジカルボン酸が、C〜C12−ジカルボン酸の中から選択されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
脂肪族C〜C12−ジカルボン酸が、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸の中から選択されている、請求項5記載の使用。
【請求項7】
脂肪族ジオールが、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノールの中から選択されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
ポリエステルが、繰返し単位としてさらに、
d)エステル形成することができる少なくとも3つの基を有する少なくとも1つの化合物
を縮合導入された形で含有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
エステル形成することができる少なくとも3つの基を有する化合物が、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ポリエーテルトリオール、グリセリン、トリメシン酸、トリメリト酸、ピロメリト酸及びヒドロキシイソフタル酸の中から選択されている、請求項8記載の使用。
【請求項10】
ポリエステルが成分d)をポリエステル形成性成分の全質量に対して、0.1〜5質量%の量で縮合導入された形で含有する、請求項8又は9記載の使用。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に定義されたような少なくとも1つのポリエステル並びに少なくとも1つの別の添加剤を含有している、ガム材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰返し単位として、
a)少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸、
b)少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸及び
c)少なくとも1つの分枝位置、飽和の環状部分構造及び/又は少なくとも1つのエーテル基を有する、少なくとも1つの脂肪族ジオール
を縮合導入された形で含有し、その際にa)対b)のモル比が1:4〜2:1である、無定形ポリエステルの、ガム材料用のポリマーベースとしての使用。
【請求項2】
ポリエステルのガラス転移温度Tが0〜−60℃である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
芳香族ジカルボン酸が、テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸の中から選択されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の使用。
【請求項4】
脂肪族ジカルボン酸が、C〜C12−ジカルボン酸の中から選択されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
脂肪族C〜C12−ジカルボン酸が、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸の中から選択されている、請求項記載の使用。
【請求項6】
脂肪族ジオールが、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノールの中から選択されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
ポリエステルが、繰返し単位としてさらに、
d)エステル形成することができる少なくとも3つの基を有する少なくとも1つの化合物
を縮合導入された形で含有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
エステル形成することができる少なくとも3つの基を有する化合物が、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ポリエーテルトリオール、グリセリン、トリメシン酸、トリメリト酸、ピロメリト酸及びヒドロキシイソフタル酸の中から選択されている、請求項記載の使用。
【請求項9】
ポリエステルが成分d)をポリエステル形成性成分の全質量に対して、0.1〜5質量%の量で縮合導入された形で含有する、請求項又は記載の使用。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項に定義されたような少なくとも1つの無定形ポリエステル並びに樹脂、ろう、脂肪及び油の中から選択される少なくとも1つの別の添加剤を含有している、ガム材料。

【公表番号】特表2006−524723(P2006−524723A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505302(P2006−505302)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004484
【国際公開番号】WO2004/096886
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】