説明

ガラスびんのコーティング方法及び装置

【課題】製びん機から徐冷炉までの搬送設備を変更することなく、最適なびん表面温度の範囲でホットエンドコーティングを行うことができるようにする。
【解決手段】複数のセクションを有する製びん機で成形されたガラスびんに徐冷炉の上流側でコーティングを行うコーティング方法において、成形後からコーティングを行う間に、各ガラスびんを、それが成形された製びん機のセクションに応じた加熱時間で加熱し、コーティング時のガラスびんの表面温度をコーティングに最適な温度に近づけることで、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるIS製びん機で成形したガラスびんに、徐冷炉の上流側でコーティングを行う方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスびんは、一般にIS製びん機と呼ばれる製びん機によって成形されている。IS製びん機には、複数のセクションがあり、各セクションにおいて粗型によるゴブからパリソンへの成形、仕上型によるびんパリソンから最終形状への吹製が行われる。
各セクションは1回に1個又は2個のガラスびんを成形し、成形したガラスびんはコンベアの上に送り出され、一列になって徐冷炉へと搬送される。コンベヤ上のびんはセクション1、2,3・・と順番に並ぶわけではなく、たとえば1−2−5−3−6−7−8−4の順に並んでいる。
【0003】
ガラスびんは、表面にマイクロクラックが発生すると強度が著しく減少する。これを防ぐために、いわゆるホットエンドコーティングが施される。ホットエンドコーティングは、徐冷炉の上流側にコーティングチャンバを設け、ここでスズ、チタニウムなどを含む反応ガスを作用させ、ガラスびんの表面にスズ、チタニウムなどの酸化物被膜を形成するものである。
ホットエンドコーティングを行うときのガラスびんの表面温度は、所定の範囲になければならない。
ガラスびんの表面温度が450℃未満であると、耐久性が低く、アルカリ洗浄により被膜が剥離し、また虹彩現象を生じて好ましくなく、700℃を超えるとガラスびんが変形しやすくなり、また、ガラスびん母体とコーティング被膜との間の熱膨張係数の差により被膜にクラックが発生しやすくなるため好ましくなく、500℃〜550℃が好適である。
【0004】
コンベア上を搬送されているガラスびんがコーティングチャンバに入るときの表面温度は、成形されたセクションによって異なる。各セクションからコーティングチャンバまでの搬送距離がそれぞれ異なるからである。
したがって、セクションによっては、コーティングを行うときの表面温度が好適な温度範囲に入らないことになる。
【0005】
このような事態を解消するために、下記特許文献1では、製びん機から徐冷炉までのコンベアを2つ設け、成形されたガラスびんを第一のコンベアから第二のコンベアに乗り移らせることによって、第二のコンベアでのガラスびんの並び方を、遠いセクションから近いセクションの順になるようにして、各セクションから送り出されてからコーティングチャンバに至るまでの時間を一定にする技術が提案されている。
これにより、どのセクションで成形されたガラスびんであっても、コーティングチャンバに入るときの表面温度はほぼ一定になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−157062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に提案されている技術は、確かにどのセクションで成形されたガラスびんであっても、コーティングチャンバに入るときの表面温度はほぼ一定になる。
しかし、第一、第二のコンベア、及び第一から第二のコンベアに乗り移らせるプッシャーなどの設備が必要で、製びん機から徐冷炉までの搬送設備を大幅に変更しなければならない。
また、ガラスびんが各セクションから送り出されてからコーティングチャンバに至るまでの時間は、最も遠いセクションからの時間に合わせることになるので、コーティングチャンバに入るときのガラスびんの表面温度が低くなりすぎるおそれがある。これを防ぐには、ガラスびんの成形温度を高くしなければならないが、成形温度を高くすることによって、ガラスびんの変形、びりなどの欠点が発生しやすくなるなどの悪影響が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、製びん機から徐冷炉までの搬送設備を変更することなく、また、ガラスびんの成形温度を変更することなく、コーティングチャンバに入るときのガラスびんの表面温度を一定にして、最適な温度範囲でコーティングを行うことができるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔請求項1〕
本発明は、複数のセクションを有する製びん機で成形されたガラスびんに徐冷炉の上流側でコーティングを行うコーティング方法において、成形後からコーティングを行う間に、各ガラスびんを、それが成形された製びん機のセクションに応じた加熱時間で加熱し、コーティング時のガラスびんの表面温度をコーティングに最適な温度に近づけることを特徴とするガラスびんのコーティング方法である。
【0010】
遠いセクションで成形されたガラスびんほど、コーティングチャンバに入るときの表面温度が低くなるから、遠いセクションで成形されたガラスびんほど加熱時間を長くすることで、コーティングチャンバに入るときの表面温度を実質的に一定にできる。
加熱時間は、各セクションで成形されたガラスびんがコーティングチャンバに至るまでの時間差、ガラスびんの大きさや肉厚、加熱手段の性能などを総合的に考慮して定めればよい。
【0011】
〔請求項2〕
また本発明は、複数のセクションを有する製びん機で成形されたガラスびんに徐冷炉の上流側でコーティングを行うコーティング方法において、コーティングを行う前に、各ガラスびんの表面温度を測定し、その測定温度に応じた加熱時間でガラスびんを加熱し、コーティング時のガラスびんの表面温度をコーティングに最適な温度に近づけることを特徴とするガラスびんのコーティング方法である。
【0012】
コーティングを行う前に、各ガラスびんの表面温度を測定し、その測定温度に応じた加熱時間、すなわち表面温度が低いものほど長い加熱時間で加熱することで、コーティングチャンバに入るときの表面温度を実質的に一定にできる。
このようにすることで、例えば、金型に離型剤を塗布した後のびん温度の低下や、金型交換後に定常状態になるまでのびん温度の変化にも影響されず、常にコーティングに最適なびん温度でコーティングを行うことができる。
測定温度に対する加熱時間は、ガラスびんの大きさや肉厚、加熱手段の性能などを総合的に考慮して定めればよい。
【0013】
〔請求項3〕
また本発明は、火口が2重管となっており、2重管の外側の管から種火としての低圧の燃焼ガス/助燃ガスの混合ガスを、内側の管から加熱用としての高圧の燃焼ガス/助燃ガスの混合ガスを噴出させ、前記内側の管の混合ガス噴出をON/OFFするバーナによって前記加熱時間の加熱を行う請求項1又は2に記載のコーティング方法である。
【0014】
このバーナは、外管から噴出する混合ガスは常に燃焼させておいて種火とする。内管から高圧の混合ガスを噴出させると、種火によって着火し、ガラスびんを加熱できる。内管の混合ガス噴出をON/OFFすることで、ガラスびんの加熱時間を調整できる。
このバーナは、着火応答性が非常に良く、例えば0.5秒間隔でON/OFFを繰り返しても失火しないようにできるので、きわめて細密に加熱時間を調整できる。
燃焼ガスは、LNG、水素など、助燃ガスは酸素、空気などである。取り扱い易さ、コストなどを考慮すると、燃焼ガスはLNG、助燃ガスは空気が好適である。
【0015】
〔請求項4〕
また本発明は、前記バーナが、縦横に複数個の前記火口がマトリックス状に並んだものである請求項3に記載のコーティング方法である。
【0016】
バーナの火口が横方向に複数個並んでいると、搬送手段上を搬送されているガラスびんに対して長時間加熱することが可能となる。
バーナの火口が縦方向に複数個並んでいると、ガラスびんの縦方向の広い範囲を加熱できる。また、ガラスびんの上部と下部で温度が異なる場合、例えば上部の温度が下部よりも低い場合、加熱時間を上部を長く、下部を短くしてガラスびん全体を所定の温度範囲にすることも可能となる。
【0017】
〔請求項5〕
また本発明は、複数のセクションを有する製びん機で成形されたガラスびんにコーティングを行うコーティング装置であって、成形されたガラスびんを製びん機から徐冷炉に送る搬送手段と、徐冷炉手前の搬送手段上に設けられたコーティング手段と、コーティング手段の上流側に、搬送手段に沿って設けられた複数の加熱手段と、加熱手段のON/OFFを制御する制御手段を有し、制御手段が、各ガラスびんに対して、それが成形された製びん機のセクションに応じた数の加熱手段で加熱を行うようにして加熱時間を制御し、コーティング時のガラスびんの表面温度をコーティングに最適な温度に近づけることを特徴とするガラスびんのコーティング装置である。
【0018】
本発明は、請求項1のコーティング方法を実施するのに好適なコーティング装置である。
複数の加熱手段を搬送手段に沿って設け、ガラスびんが成形された製びん機のセクションに応じた加熱時間を、加熱する加熱手段の数で調整するので、加熱時間の制御を短時間から長時間まで容易に制御することができる。
搬送手段は、製びん機から徐冷炉に至る従来のコンベアを使用できる。
コーティング手段は、従来のコーティングチャンバを使用できる。
加熱手段は、ガスバーナなど任意のものを使用できる。
制御手段は、マイクロコンピュータ、プログラマブルシーケンサなどである。
【0019】
〔請求項6〕
また本発明は、複数のセクションを有する製びん機で成形されたガラスびんにコーティングを行うコーティング装置であって、成形されたガラスびんを製びん機から徐冷炉に送る搬送手段と、
徐冷炉手前の搬送手段上に設けられたコーティング手段と、コーティング手段の上流側に、搬送手段に沿って設けられた複数の加熱手段と、加熱手段の上流側に設けた温度センサAと、加熱手段のON/OFFを制御する制御手段を有し、制御手段が、各ガラスびんに対して、温度センサAで測定された測定温度に応じた数の加熱手段で加熱を行うようにして加熱時間を制御し、コーティング時のガラスびんの表面温度をコーティングに最適な温度に近づけることを特徴とするガラスびんのコーティング装置である。
【0020】
本発明は、請求項2のコーティング方法を実施するのに好適なコーティング装置である。
搬送手段、コーティング手段、加熱手段、制御手段は前記請求項5の場合と同じである。
温度センサは、例えば赤外線カメラを使用できる。
コーティングを行う前に、各ガラスびんの表面温度を温度センサAで測定し、その測定温度に応じた加熱時間、すなわち表面温度が低いものほど長い加熱時間で加熱することで、コーティングチャンバに入るときの表面温度を実質的に一定にできる。金型に離型剤を塗布した後のびん温度の低下や、金型交換後に定常状態になるまでのびん温度の変化にも影響されない。
また、複数の加熱手段を搬送手段に沿って設け、加熱を行う加熱手段の数で加熱時間を調整するので、加熱時間の制御を短時間から長時間まで容易に制御することができる。
【0021】
〔請求項7〕
また本発明は、加熱手段の上流側に温度センサAを設け、前記制御手段が、温度センサAで測定された測定温度に応じて、各セクションごとに設定されている、加熱を行う加熱手段の数、及び/又は各加熱手段の正面をガラスびんが通過するときのON時間のパラメータを変更する請求項5に記載のコーティング装置である。
【0022】
制御手段は、各セクションごとに設定されているパラメータ、すなわち、
(1)加熱を行う加熱手段の数
(2)各加熱手段の正面をガラスびんが通過するときのON時間
により加熱時間の制御を行っているが、金型に離型剤を塗布した後や、金型交換の後のような場合は、ガラスびんの表面温度が通常と異なる状況になる。このような場合でも、温度センサAで測定された測定温度に応じて、最適な加熱時間となるように上記のパラメータを変更して加熱するので、金型に離型剤を塗布した後のびん温度の低下や、金型交換後に定常状態になるまでのびん温度の変化にも影響されず、常に最適なびん表面温度でのコーティングが可能となる。
【0023】
〔請求項8〕
また本発明は、前記加熱手段と前記コーティング手段の間に温度センサBを設け、前記制御手段が、前記温度センサBの測定温度に基づいて、前記加熱手段の数、及び/又は各加熱手段の正面をガラスびんが通過するときの加熱手段のON時間を調整する請求項5〜7のいずれかに記載のコーティング装置である。
【0024】
温度センサBでコーティングチャンバに入る前のガラスびんの表面温度が所定の範囲内にあるかどうかを確認する。温度センサBのデータは常に制御手段に送られ、表面温度が所定の範囲から外れた場合は、制御手段が加熱時間を調整する。
加熱時間の調整のためのパラメータは次の2つであり、これらのどちらか一方、又は双方を変更する。
(1)加熱を行う加熱手段の数
(2)各加熱手段の正面をガラスびんが通過するときのON時間
例えば、何らかの原因で第6セクションのガラスびんのコーティングチャンバに入る直前の表面温度が低すぎるようになった場合、それまでは8個の加熱手段で0.5秒ずつ加熱していたものを、8個の加熱手段で0.6秒ずつ加熱する、又は、9個の加熱手段で0.5秒ずつ加熱する、のようにパラメータを変更する自動制御を行う。
【0025】
また、温度センサBの温度データに基づき、表面温度が不良のびんを自動的に排除することができる。例えば、温度センサBとコーティングチャンバの間にプッシャー(びんを押し出す装置)、ブロワ(びんを吹き飛ばす装置)などの排除手段を設け、温度センサBの不良データを受けた制御手段が排除手段を作動させてそのびんを搬送手段上から排除することができる。
【0026】
〔請求項9〕
また本発明は、前記加熱手段が、火口が2重管となっており、2重管の外側の管から種火としての低圧の燃焼ガス/助燃ガスの混合ガスを、内側の管から加熱用としての高圧の燃焼ガス/助燃ガスの混合ガスを噴出させ、前記内側の管の混合ガス噴出をON/OFFすることで加熱のON/OFFを切り替えるバーナである請求項5〜8のいずれかに記載のコーティング装置である
【0027】
搬送手段で搬送されているガラスびんが1個の加熱手段の前を通過する時間は例えば1秒以下程度であるので、加熱手段にはON/OFFの素早い応答性が要求される。バーナを上記のように構成することで、着火応答性が非常に良くなり、例えば0.5秒間隔でON/OFFを繰り返しても着火もれがないようにできるので、各ガラスびんについて所望の加熱時間を確実に実行することができる。
【0028】
〔請求項10〕
また本発明は、前記バーナが、縦横に複数個の前記火口がマトリックス状に並んだものである請求項9に記載のコーティング装置である。
【0029】
このバーナの作用効果は、前記請求項4の場合と同様である。
【発明の効果】
【0030】
本発明のコーティング方法および装置は、IS製びん機のどのセクションで成形されたガラスびんに対しても、適正な表面温度でホットエンドコーティングを行うことができるので、不良コーティングびんの発生を防止することができる。
また、ガラスびんを加熱する加熱手段は、既存の搬送手段(コンベア)に沿って設けることができるので、搬送設備を大幅に変更する必要がなく、コスト的に有利である。
また、ガラスびんの成形温度を高くするなど、ガラスびんの成形条件の変更も必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例のコーティング装置の概略平面図である。
【図2】実施例のコーティング装置の要部斜視説明図である。
【図3】バーナの正面図である。
【図4】火口の説明図である。
【図5】バーナへの燃焼ガス及び助燃ガス供給経路の説明図である。
【図6】赤外線カメラ画像の説明図である。
【図7】制御手段を中心とした信号の流れの説明図である。
【図8】制御手段を中心とした信号の流れの説明図である。
【図9】制御手段を中心とした信号の流れの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0032】
図1〜5は、実施例のコーティング装置に関するものである。
このコーティング装置は、成形されたガラスびんGを徐冷炉に送る搬送手段であるコンベア2、徐冷炉手前の搬送手段上に設けられたコーティング手段であるコーティングチャンバ4、コーティングチャンバ4上流側にコンベア2に沿って設けられた加熱手段である複数のバーナ31、加熱手段(複数のバーナ31)の上流側に設けた温度センサA、加熱手段(複数のバーナ31)とコーティングチャンバ4の間に設けた温度センサB、及び加熱手段のON/OFFを制御する制御手段を有する。
加熱手段であるバーナ31は、コンベアの右側(上流側から見て)に11個(バーナa〜バーナk)並べられて右バーナユニット3aを、コンベアの左側(上流側から見て)に11個(バーナa〜バーナk)並べられて左バーナユニット3bを構成している。左右のバーナは、原則として、左右対応するものが同時に火炎を噴き出し、左右両側からびんを加熱する。
【0033】
IS製びん機1は、この場合第1セクションから第6セクションの6個のセクション(図1における丸数字はセクション番号を表す。)を有し、第1セクションがコンベアの最も下流側でコーティングチャンバに近く、第6セクションが最も上流側でコーティングチャンバから遠くなっている。
製びん機1の各セクションで成形されたガラスびんGは、図1の矢印のようにコンベア2の上に送り出され、下流側に向かって一列で搬送されていく。
したがって、製びん機の第1セクションで成形されたびんの搬送距離が最も短く、第6セクションで成形されたびんの搬送距離が最も長くなる。通常の場合、温度センサAで測定されるびん表面温度は、第1セクションのびんが最も高く、第6セクションのびんが最も低くなる。
【0034】
コンベア2上を搬送されるガラスびんGは、バーナユニット3a,3bの間を通過するときに適宜時間加熱され、表面温度の均一化がなされる。その後、コーティングチャンバ4内に入って搬送されている間にコーティングが行われ、コーティングチャンバ4を出てからプッシャー6によって徐冷炉5に送り込まれる。
【0035】
加熱手段であるバーナ31は、横方向に3列、縦方向に14段の火口がマトリックス状に配置され、この場合、上の5段が肩部加熱用、中央の6段が胴部加熱用、下の3段が裾部加熱用となっており(図3)、それぞれガラスびんGの肩部、胴部、裾部を加熱する。
【0036】
図4に示すように、火口32は外管33と内管34の2重管となっており、外管33と内管34の間の外管吹出口35からは、燃焼ガス(LNG)と助燃ガス(空気)の混合ガス(以下単に「混合ガス」という。)が種火として低圧(例えば0.1kg/cm)で噴出し、内管吹出口36からは、混合ガスがガラスびんを加熱するために高圧(例えば0.2kg/cm)で噴出する。
外管噴出口35からの種火は常時着火しており、内管吹出口から混合ガスが噴出すると種火によって自動的に着火し、バーナがON状態となってガラスびんを加熱する。内管吹出口からの混合ガスの噴出を停止するとバーナがOFF状態となる。
種火が内管の周囲にあるので、内管から混合ガスが噴出するときの着火応答性がきわめて良く、0.5秒間隔でON/OFFを繰り返しても着火もれがない。
【0037】
図5の上段は、種火用の外管吹出口35に供給するガスの経路、下段は、びん加熱用の内管吹出口36に供給するガスの経路を示している。
【0038】
〈外管吹出口35に供給するガスの経路〉
助燃ガスである空気は、高圧空気タンクからフィルタを通ってチリなどが除去され、レギュレータにより所定の圧力に圧力調整され、ベンチェリーミキサにいたる。
燃焼ガスであるLNGは、LNGボンベからゼロガバナで大気圧に圧力調整され、ベンチェリーミキサにいたる。
ベンチェリーミキサにおいて、空気とLNGが所定の割合で混合され、混合ガスは外管吹出口35から吹き出して燃焼し、種火となる。
【0039】
〈内管吹出口36に供給するガスの経路〉
内管吹出口36に供給するガスの経路は、基本的には前記の外管吹出口35に供給するガスの経路と同じであるが、空気経路、LNG経路共に、ベンチェリーミキサにいたる手前に電磁弁が設けられている点で異なる。
電磁弁によって経路の開閉がなされ、「開」にすることで、混合ガスが内管吹出口36から噴出して種火によって着火し、びんの加熱が行われ(ON状態)、「閉」にすることで混合ガスの内管吹出口36からの噴出が停止し(OFF状態)、びんの加熱は実質的に行われない。
電磁弁の開閉制御は、制御手段であるマイクロコンピュータからのON/OFF信号により行われる。
【0040】
内管吹出口36に供給するガスの経路は、1個のバーナにつき、肩部加熱用、胴部加熱用、裾部加熱用の3系統が独立して設けられており、それぞれ別個にON/OFF制御される。
【0041】
図6は、温度センサA,B(赤外線カメラ)で捉えたびん形状を模式的に示し、指定された部分「X」「Y」「Z」の測定温度が、それぞれ肩部の測定温度(X)、胴部の測定温度(Y)、裾部の測定温度(Z)として、制御手段に送られる。
【0042】
図7は、制御手段(マイクロコンピュータ)による制御方法の1例を示している。
この例は、制御手段が、各ガラスびんに対して、それが成形された製びん機のセクションに応じた数の加熱手段及で加熱を行うようにして加熱時間を制御し、コーティング時のガラスびんの表面温度をコーティングに最適な温度に近づけるものである。
【0043】
IS製びん機に附属している制御システムは、各セクションから成形したびんをコンベア上に送り出すたびにそのびんを成形したセクション番号を表す信号(セクション信号)を出力し、制御手段に送る。また、製びん機の動作速度やコンベア2の搬送速度は、製びん機の制御システムが出力する同期タイミング信号(パルス)に基づいている。
したがって、制御手段が製びん機の制御システムからセクション信号を受けとった後、バーナをONに(着火)するタイミングとなる、びんが各バーナの正面に来るまでの時間(パルス数)は定まっているから、各バーナについてONタイミングのパルス数を設定しておくことで、ONタイミングを制御できる。
各バーナをOFFするタイミングは、バーナをONしてからの秒数(例えば0.6秒)で設定できる。これは、各加熱手段の正面をガラスびんが通過するときのバーナON時間で、各セクションごと、さらに各加熱部分(肩部、胴部、裾部)ごとに設定しておく。
【0044】
実際に加熱を行うバーナの数は、各セクションごと、さらに各加熱部分(肩部、胴部、裾部)ごとに設定しておく。
例えば、第1セクションの肩部は片側につき(以下同じ)0個、胴部は1個、裾部は0個、第6セクションの肩部は8個、胴部は9個、裾部は8個といった具合である。
また、加熱を行うバーナの数によって、どのバーナをONにするかも設定しておく。たとえば、1個の場合はバーナa、5個の場合はバーナa,c,e,g,iといった具合である。
【0045】
この実施例は、ガラスびんをそれが成形された製びん機のセクションに応じた加熱時間で加熱するので、コーティングチャンバに入るときの表面温度を実質的に一定にできる。また、加熱時間を、実際に加熱する加熱手段の数で調整するので、加熱時間の制御を短時間から長時間まで容易かつ確実に制御することができる。
【0046】
図8は、制御手段(マイクロコンピュータ)による制御方法の他例を示している。
これは、制御手段が、各ガラスびんに対して、温度センサAで測定された測定温度に応じた数の加熱手段で加熱を行うようにして加熱時間を制御し、コーティング時のガラスびんの表面温度を最適な温度に近づけるものである。
加熱時間は、
(1)実際に加熱を行う加熱手段の数
及び/又は
(2)各加熱手段の正面をガラスびんが通過するときのON時間
を調整することで行う。
【0047】
この例の場合、バーナユニット3a,3bの上流側に、温度センサA(赤外線カメラ)が、バーナユニット3a,3bとコーティングチャンバ4の間に温度センサB(赤外線カメラ)が設けられ、コンベア2上を搬送されているガラスびんGの肩部、胴部、裾部の所定部分の表面温度を測定する(図6)。
【0048】
ガラスびんGが温度センサAの正面に搬送されてきて、温度センサAが所定の画像(図6)を捉えると、肩部X、胴部Y、裾部Zの測定温度を制御手段に出力する。
制御手段は、その測定温度に応じて、バーナユニット3a,3bの加熱時間を制御する。
【0049】
各バーナ31のONタイミングは、制御手段が温度センサAの測定温度を受け取ったときからの時間で設定できる。例えば、バーナaは2秒後、バーナbは3.2秒後、バーナcは4.4秒後といった具合である。なお、コンベア2に取り付けたエンコーダ(図示せず)のパルス数や製びん機制御システムの同期タイミング信号のパルス数で設定することもできる。
【0050】
各バーナをOFFするタイミングは、バーナをONしてからの秒数(例えば0.6秒)で設定できる。これは、各加熱手段の正面をガラスびんが通過するときのバーナON時間で、各セクションごと、さらに各加熱部分(肩部、胴部、裾部)ごとに設定しておく。
【0051】
温度センサの測定温度に対する、加熱するバーナの数は、各加熱部分(肩部、胴部、裾部)ごとに設定しておく。
例えば、肩部の測定温度が550℃以上の場合は0個、545℃〜550℃の場合は1個、540〜545℃の場合は2個、・・・・500℃以下の場合は8個、胴部の測定温度が540℃以上の場合は0個、535〜540℃の場合は1個、530〜535℃の場合は2個、・・・・490℃以下の場合は7個、といった具合である。
【0052】
加熱を行うバーナの数によって、どのバーナをONにするかを設定しておくのは、前記図7の実施例の場合と同様である。
【0053】
バーナユニット3a,3bを通過して加熱が終了したびんGが温度センサBの正面に搬送されてきて、温度センサBが所定の画像(図6)を捉えると、肩部X、胴部Y、裾部Zの測定温度を制御手段に出力する。
制御手段は、その測定温度が所定の範囲から外れていると、加熱するバーナの数、及び/又はバーナのON時間のパラメータを変更する。
例えば、肩部の測定温度が0〜10℃低いときは、肩部を加熱するバーナの数を1個増やす、又はバーナのON時間を0.1秒増やす、といった具合である。
【0054】
この実施例は、コーティングを行う前に、各ガラスびんの表面温度を温度センサAで測定し、その測定温度に応じた加熱時間、すなわち表面温度が低いものほど長い加熱時間で加熱することで、コーティングチャンバに入るときの表面温度を実質的に一定にできる。金型に離型剤を塗布した後のびん温度の低下や、金型交換後に定常状態になるまでのびん温度の変化にも影響されない。
さらに、加熱後のびん表面温度を温度センサBで監視し、万一、びん表面温度が所定の範囲から外れた場合は、自動的にパラメータを修正するので、常に最適な温度範囲でのコーティングが可能となる。
【0055】
図9は、制御手段(マイクロコンピュータ)による制御方法の他例を示している。
これは、前記図7と図8の制御方法を組み合わせたものである。
これは、通常は前記図7の制御方法で加熱時間が制御されており、離型材の塗布や型替えで、1又はそれ以上のセクションで成形されたびん表面温度に異常が発生した場合、その温度変化を温度センサAで検出し、制御手段が自動的にそのセクションの前記パラメータ(1)及び/又は(2)を修正する。温度変化の程度に応じてどのようにパラメータを変更するかは事前に設定しておけばよい。
【0056】
また、加熱後のびん表面温度を温度センサBで監視し、万一、びん表面温度が所定の範囲から外れた場合は、自動的にパラメータを修正するのは前記図8の実施例と同様である。
【符号の説明】
【0057】
1 IS製びん機
2 コンベア
3a 右バーナユニット
3b 左バーナユニット
31 バーナ
32 火口
33 外管
34 内管
35 外管吹出口
36 内管吹出口
4 コーティングチャンバ
5 徐冷炉
6 プッシャー
G ガラスびん


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセクションを有する製びん機で成形されたガラスびんに徐冷炉の上流側でコーティングを行うコーティング方法において、
成形後からコーティングを行う間に、各ガラスびんを、それが成形された製びん機のセクションに応じた加熱時間で加熱し、コーティング時のガラスびんの表面温度をコーティングに最適な温度に近づけることを特徴とするガラスびんのコーティング方法。
【請求項2】
複数のセクションを有する製びん機で成形されたガラスびんに徐冷炉の上流側でコーティングを行うコーティング方法において、
コーティングを行う前に、各ガラスびんの表面温度を測定し、その測定温度に応じた加熱時間でガラスびんを加熱し、コーティング時のガラスびんの表面温度をコーティングに最適な温度に近づけることを特徴とするガラスびんのコーティング方法。
【請求項3】
火口が2重管となっており、2重管の外側の管から種火としての低圧の燃焼ガス/助燃ガスの混合ガスを、内側の管から加熱用としての高圧の燃焼ガス/助燃ガスの混合ガスを噴出させ、前記内側の管の混合ガス噴出をON/OFFするバーナによって前記加熱時間の加熱を行う請求項1又は2に記載のコーティング方法。
【請求項4】
前記バーナが、縦横に複数個の前記火口がマトリックス状に並んだものである請求項3に記載のコーティング方法。

【請求項5】
複数のセクションを有する製びん機で成形されたガラスびんにコーティングを行うコーティング装置であって、
成形されたガラスびんを製びん機から徐冷炉に送る搬送手段と、
徐冷炉手前の搬送手段上に設けられたコーティング手段と、
コーティング手段の上流側に、搬送手段に沿って設けられた複数の加熱手段と、
加熱手段のON/OFFを制御する制御手段を有し、
制御手段が、各ガラスびんに対して、それが成形された製びん機のセクションに応じた数の加熱手段及で加熱を行うようにして加熱時間を制御し、コーティング時のガラスびんの表面温度をコーティングに最適な温度に近づけることを特徴とするガラスびんのコーティング装置。
【請求項6】
複数のセクションを有する製びん機で成形されたガラスびんにコーティングを行うコーティング装置であって、
成形されたガラスびんを製びん機から徐冷炉に送る搬送手段と、
徐冷炉手前の搬送手段上に設けられたコーティング手段と、
コーティング手段の上流側に、搬送手段に沿って設けられた複数の加熱手段と、
加熱手段の上流側に設けた温度センサAと、
加熱手段のON/OFFを制御する制御手段を有し、
制御手段が、各ガラスびんに対して、温度センサAで測定された測定温度に応じた数の加熱手段で加熱を行うようにして加熱時間を制御し、コーティング時のガラスびんの表面温度をコーティングに最適な温度に近づけることを特徴とするガラスびんのコーティング装置。
【請求項7】
加熱手段の上流側に温度センサAを設け、前記制御手段が、温度センサAで測定された測定温度に応じて、各セクションごとに設定されている、加熱を行う加熱手段の数、及び/又は各加熱手段の正面をガラスびんが通過するときのON時間のパラメータを変更する請求項5に記載のコーティング装置。
【請求項8】
前記加熱手段と前記コーティング手段の間に温度センサBを設け、
前記制御手段が、前記温度センサBの測定温度に基づいて、前記加熱手段の数、及び/又は各加熱手段の正面をガラスびんが通過するときの加熱手段のON時間を調整する請求項5〜7のいずれかに記載のコーティング装置。
【請求項9】
前記加熱手段が、火口が2重管となっており、2重管の外側の管から種火としての低圧の燃焼ガス/助燃ガスの混合ガスを、内側の管から加熱用としての高圧の燃焼ガス/助燃ガスの混合ガスを噴出させ、前記内側の管の混合ガス噴出をON/OFFすることで加熱のON/OFFを切り替えるバーナである請求項5〜8のいずれかに記載のコーティング装置。
【請求項10】
前記バーナが、縦横に複数個の前記火口がマトリックス状に並んだものである請求項9に記載のコーティング装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate