説明

ガラスフィラーの製造方法

【課題】効率的にガラスクロスからガラスフィラーを得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】ガラスクロスにテトラアルコキシシランまたはシランカップリング剤を塗布する塗布工程、加熱工程、及び粉砕工程を含むガラスフィラーの製造方法において、加熱工程における加熱温度が300〜600℃の範囲であり、加熱時間が24〜72時間の範囲であり、塗布工程におけるガラス繊維織物が形態が解反された形状であり、加熱工程と粉砕工程におけるガラス繊維織物の形態が巻物の形状であることを特徴とするガラスフィラーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス繊維強化樹脂組成物に使用されるガラスフィラーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の電子材料に使用される熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂に対する補強材としては、ガラス繊維織物(以下「ガラスクロス」ともいう。)が主に使用されている。また剛性等の機械特性や電気特性の向上を目的に、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂に無機充填材(以下「フィラー」ともいう。)を混入して用いることもある。
このフィラーの材料については、タルク、水酸化アルミニウム、シリカ粉末、ガラス等が一般的に用いられている。これらのフィラーの製造方法としては、成分の純度・粒子径の均一性の高いものについてはゾルゲル法等の微粒子形成から得られる製造方法を使用する必要があるが、一般的には、固体である原料を粉砕することにより製造される。粉砕方法については具体的にはボールミル、回転粉砕機等が挙げられる。
【0003】
これに対して、プリント配線板の特性向上を目的として熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂に添加するフィラーに対しては、補強材であるガラスクロスと同等の特性を持つものが好ましく、ガラス、即ち通常のプリント配線板においてはEガラス、からなるフィラー(以下「ガラスフィラー」ともいう。)を用いる要求が高まってきている。
このガラスフィラーの製造方法として最も一般的な方法は、ガラスをボールミル等で粉砕する方法であり、ガラス繊維を使用することも提案されている。例えば、フィラメント(ガラス繊維)に表面処理剤を塗布し集束して巻取り、得られた巻取パッケージのガラス繊維を切断・乾燥し、次いで乾式粉砕機で粉砕する方法が、例えば特許文献1等に提案されているが、集束性が不十分であり、効率的な粉砕が出来ない課題が残る。
一方、ガラス織物をアルコキシシラン化合物で処理し、該シラン化合物が付着した状態で加熱して織物を構成するガラス繊維の引張強度を低下せしめる技術が、例えば特許文献2等に提案されている。
そこで、この技術を用いたガラスフィラーの製造方法が、例えば特許文献3および特許文献4で提案されている。
【0004】
特許文献3には、(1)ガラス繊維にテトラアルコキシシランを付着させて付着物を得る付着工程と、(2)上記付着物における上記テトラアルコキシシランを縮合物へと変化せしめて上記縮合物により上記ガラス繊維が被覆された被覆物をを得る反応工程と、(3)上記被覆物を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程を含む第1の製造方法と、(1)平均粒径0.1〜1000μmのガラス粒子にテトラアルコキシシランを付着させて付着物を得る付着工程と、(2)上記付着物における上記テトラアルコキシシランを縮合物へと変化せしめて上記縮合物により上記ガラス粒子が被覆された被覆物を得る反応工程と、(3)上記被覆物を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程を含む第2の製造方法の開示が提案されている。上記特許文献3においては、第1の製造方法におけるガラス繊維の形態は任意とされているが、実施例としてはガラス繊維ストランドを長さ9mmに切断したチョップドストランドについての開示しかない。
【0005】
また、特許文献4には、ガラス繊維またはガラス繊維から構成される布の表面にテトラアルコキシシラン化合物または金属化合物を含む溶液を塗布し、180℃以上かつ該ガラスの軟化点以下の温度で加熱した後に粉砕する製造方法が開示されている。
そして、上記特許文献4においては、適当な大きさに切断した後に微細粉砕する旨の記載がなされている。
すなわち、上述の特許文献3,4においてはあらかじめ適当な大きさに切断したガラス繊維もしくはガラスクロス、またはガラス粒子を用いて、ガラスフィラーを製造する方法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平03−109232号公報
【特許文献2】特公昭63−005512号公報
【特許文献3】特開2003−192387号公報
【特許文献4】特開2004−067426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、あらかじめ適当な大きさに切断するという前処理なしに巻物の形状を有するガラスクロスをそのまま加熱、粉砕してガラスフィラーを効率的に得ることができるガラスフィラーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、解反したガラスクロスをテトラアルコキシシランまたはシランカップリング剤を処理した後に、巻物の形状を有するガラスクロスを特定の条件下で加熱後、そのままの形状で粉砕することが達成可能であることを見出し、本発明を達成した。
すなわち、本発明のガラスフィラーの製造方法は、ガラスクロスにテトラアルコキシシランまたはシランカップリング剤を塗布する塗布工程、加熱工程、及び粉砕工程を含むガラスフィラーの製造方法であって、加熱工程における加熱温度が300〜600℃の範囲であり、加熱時間が24〜72時間の範囲であり、塗布工程におけるガラス繊維織物の形態が解反された形状であり、加熱工程と粉砕工程におけるガラス繊維織物の形態が巻物の形状であることを特徴とするガラスフィラーの製造方法、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法は、あらかじめ適当な大きさに切断するという前処理なしに巻物の形状を有するガラスクロスをそのまま加熱、粉砕してガラスフィラーを効率的に得ることができる点に特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
第一に、本発明で使用するガラス繊維織物について説明する。
本発明におけるガラスクロスとは、後述する加熱工程により除去される成分、例えば糊剤等を除き、少なくとも90重量%以上がガラスであるガラス繊維織物をいう。
ガラスクロスの織物構造は平織り構造が好ましいが、繻子織り、綾織り、ナナコ織り等であってもよい。ガラスクロスを構成するガラス繊維の単糸径は、一般に使用されている3〜13μmのガラス繊維であるが、脆化効率を考慮すれば単糸径5μm以下のDヤーン、Cヤーンと言われるガラス繊維で構成されるガラスクロスが好ましい。より具体的には、スタイル1027、1037、1080、および1078等のガラスクロスが好ましく、スタイル1027および1037がより好ましい。
【0011】
また、使用するガラス種によって本発明の効果が大きく損なわれることはなく、いずれのガラス種も使用可能であるが、一般的にプリント配線板の補強材として使用されるEガラス(無アルカリガラス)に加え、低熱膨張率ガラスであるSガラス、低誘電率ガラスであるDガラス、高誘電率ガラスであるHガラスが好適である。本発明の製造方法によって得られたガラスフィラーをプリント配線板用のワニスに混合して使用する場合には、基本的にはプリント配線板に使用されるガラスクロスと同じ組成であることが好ましい。
ガラスクロスの形態は、心材に複数回巻きつけられた巻物の形状をとる。ガラスクロスの巻物長さは任意に設定できるが、例えば100mから4000mまでの巻物形状を有するガラスクロスが通常入手可能である。本発明においては、この形状のままの処理を可能としたことで、フィラーの効率的な製造を可能としている。
【0012】
第二に、塗布工程について説明する。
本発明においてガラスクロスにテトラアルコキシシランあるいはシランカップリング剤を塗布する場合、テトラアルコキシシランあるいはシランカップリング剤は水あるいは有機溶媒に溶解されたもののいずれの形態でも構わない。塗布方法は、含浸、スプレイ、はけやロールによる塗布など周知の方法が使用できる。ガラスクロスが巻物の形状のままでテトラアルコシキシシランあるいはシランカップリング剤を塗布しようとすると十分に塗布されない箇所が派生者酸いので、塗布工程においてはガラスクロスが解反された形状で塗布することが好ましい。
【0013】
テトラアルコシキシシランは4つのアルコキシ基がケイ素原子に結合した化合物であり、ガラス繊維に付着前に加水分解している状態でも構わない。すなわちアルコキシ基の一部あるいは全アルコキシ基が水等の反応により加水分解を生じて水酸基として存在している状態でもよい。テトラアルコキシシランはガラスへの付着前後で縮合が進んでいてもよいが、塗布の均一性や粉砕効率を考慮すれば縮合物が生じていないことがより好ましい。テトラアルコキシシランの構造については、アルコキシ基のアルキル部分の炭素数が1から12の直鎖もしくは分岐状又は環状であることが好ましく、さらに加水分解性からアルキル部分の炭素数は1から6がより好ましく、さらに1から4が更に好ましい。すなわちテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランであることが好ましい。特性上、安全上の観点からテトラエトキシシランが特に好ましい。テトラアルコキシシランは上述したテトラアルコキシシランを1種類以上含んでいることが好ましく、2種類以上含まれていてもよい。
【0014】
シランカップリング剤としては、エポキシ基を有するシランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられるが、特に限定されるのものではない。基本的にはプリント基板用途に使用されるものと同じもので良い。特にエポキシ樹脂に適するアミノ基を有するシランカップリング剤が好ましく、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びその塩酸塩、N−β−(N−ベンジルアミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン及びその塩酸塩、N−β−(N−ベンジルアミノエチルアミノプロピル)メチルメトキシシラン及びその塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシシラン等が使用できる。
塗布工程で使用するテトラアルコシキシランあるいはシランカップリング剤の溶液濃度は、特に限定するものでは無いが、ガラスクロスへの均一付着性向上や安全性の観点から0.1重量%以上であって10重量%未満であることが好ましい。
【0015】
第三に、加熱工程について説明する。
加熱温度は300〜600℃の範囲が好ましく、400〜600℃の範囲がより好ましい。効率の良い粉砕を得るための脆化状態を得るためには、加熱温度が300℃以上であることが好ましく、また、ガラスの歪点を超えてしまうために、本来の各種特性に影響を及ぼす可能性を避けるために600℃以下であることが好ましい。加熱時間は巻物の外側から内部まで斑無く熱が伝わるようにしなければならないことから24〜72時間の範囲の加熱時間が好ましい。
加熱時の投入形態については、後工程となる粉砕工程において、シート状での取り出されたものでは粉砕装置に投入した場合、作業者にシートがまとわりつく等の作業効率の低下、また繊維屑が広い面積にわたり飛散することから、効率良くガラス繊維を回収出来ない等の問題が生じる。これに対して巻物形状のものは、芯管に巻かれたガラスクロスを切断装置を用いてカットし、無駄無く塊状として回収でき、粉砕装置へ投入することが出来る。
【0016】
第四に、粉砕工程について説明する。
上記の塗布工程及び加熱工程を経たガラスクロス(以下「脆化処理されたガラスクロス」ともいう。)からなる材料はボールミル等の通常の粉体製造装置により粉砕する。粉砕の手法は特に限定されるものではなく、乾式または湿式のどちらを適用しても構わない。脆化処理されていることにより、ガラスフィラーの粉砕効率を高めるとともに、粒径が非常に小さく且つ粒度分布の良好な粉砕物を得ることができる。また特定の粒径が特に必要な場合は分級工程を実施した後にガラスフィラーとしても用いてもよい。
本発明の製造方法によって得られたガラスフィラーは、必要に応じてシランカップリング剤等で表面処理することにより、マトリックス樹脂との接着性、吸湿特性を改善し、好適に使用することができる。特に使用される基板がプリント配線板のようにガラスクロスで補強されているものであれば、該ガラスクロスの表面処理と同等の表面処理をガラスフィラーに適応すればガラスクロスとマトリックス樹脂に発現される効果が、ガラスフィラーとマトリックス樹脂にも形成され、基板全体の特性が向上する。
【0017】
ガラスフィラーを配合するマトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂あるいはその混合物が適用される。熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、フッ素樹脂等が使用され、加熱された樹脂に混練機を用いてガラスフィラーを配合する。また熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂等が使用される。この場合はガラスフィラーを樹脂ワニス中に添加し、攪拌することにより、ガラスフィラーを配合する。
これらのマトリックス樹脂に対するガラスフィラーの配合量は目的に応じて適宜選択されるが、マトリックス樹脂100重量部に対して、ガラスフィラー5〜150重量部が目安とされる。
【実施例】
【0018】
以下に、本発明の好適な実施例などを用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例などにより何ら限定されるものではない。
・ガラスからなる材料の粉砕方法
装置 :横型ボールミル粉砕機(浅田鉄工株式会社製300L−SEM)
ドラム回転数 :33rpm
ボール形状 :20mmφ及び30mmφ(材質:ジルコニア)
投入粉砕ドラム容積 :300l
粉砕時間 :1時間
【0019】
[実施例1]
幅1260mmのスタイル1037ガラスクロス(旭化成エレクトロニクス製、単糸径4.5μm)を解反した状態でテトラエトキシシラン(4g/l)水溶液に浸漬することによって塗布し、ライン速度30m/min、乾燥温度170℃、炉内滞留時間1分間で乾燥し、金属製芯管に1000m巻き取ってロールを得た。そのロールをそのまま、400℃のオーブンに投入し24時間加熱した。オーブンからロールを取り出し、幅方向にカッターでクロスを切断してガラスクロスの巻物を芯管からはずし、ガラスクロス塊を前述した粉砕機に投入し、粉砕を行った。脆化処理されたガラスクロスをオーブンから取り出してから粉砕機投入までの所要時間は1時間であった。レーザ回折/散乱式粒径分布測定装置(堀場製作所株式会社製、製品名:LA−950V2)により測定した結果、平均粒径2.1μmのガラスフィラーを得ることが出来た。
ガラスフィラー採取後、粉砕機内を観察したところ、未粉砕のガラス繊維が無いことを確認した。
【0020】
[実施例2]
幅1260mmのスタイル1027ガラスクロス(旭化成エレクトロニクス製、単糸径4.1μm)を使用した以外は実施例1と同様にして、塗布、加熱、及び粉砕を行った。脆化処理されたガラスクロスをオーブンから取り出してから粉砕機投入までの所要時間は1時間であった。平均粒径1.8μmのガラスフィラーを得ることが出来た。
ガラスフィラー採取後、粉砕機内を観察したところ、未粉砕のガラス繊維が無いことを確認した。
【0021】
[実施例3]
幅1260mmのスタイル1027ガラスクロスを解反した状態でシランカップリング剤γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製 製品名Z−6011)(4g/l)水溶液に浸漬することによって塗布し、ライン速度30m/min、乾燥温度170℃、炉内滞留時間1分間で乾燥し、金属製芯管に1000m巻き取ってロールを得た。そのロールをそのまま、400℃のオーブンに投入し24時間加熱した。オーブンからロールを取り出し、幅方向にカッターでクロスを切断してガラスクロスの巻物を芯管からはずし、ガラスクロス塊を前述した粉砕機に投入し、粉砕を行った。脆化処理されたガラスクロスをオーブンから取り出してから粉砕機投入までの所要時間は1時間であった。平均粒径1.8μmのガラスフィラーを得ることが出来た。
ガラスフィラー採取後、粉砕機内を観察したところ、未粉砕のガラス繊維が無いことを確認した。
[比較例1]
加熱時間を2時間とした以外は実施例1と同様にして、塗布、加熱、及び粉砕を行った。脆化処理されたガラスクロスをオーブンから取り出してから粉砕機投入までの所要時間は1時間であった。平均粒径2.1μmのガラスフィラーを得ることが出来た。
ガラスフィラー採取後、粉砕機内を観察したところ、未粉砕のガラス繊維が投入量に対して10重量%残留していることを確認した。
【0022】
[比較例2]
幅1260mmのスタイル1027ガラスクロスを用い加熱時間を2時間とした以外は実施例1と同様にして塗布、加熱、及び粉砕を行った。脆化処理されたガラスクロスをオーブンから取り出してから粉砕機投入までの所要時間は1時間であった。平均粒径1.8μmのガラスフィラーを得ることが出来た。
ガラスフィラー採取後、粉砕機内を観察したところ、未粉砕のガラス繊維が投入量に対して8重量%残留していることを確認した。
【0023】
[比較例3]
幅1260mmのスタイル1037ガラスクロスを解反した状態でテトラエトキシシラン(4g/l)水溶液に浸漬することによって塗布し、ライン速度30m/min、乾燥温度170℃、炉内滞留時間1分間で乾燥し、1000mを金属製芯管に巻き取らない状態のまま金属製容器に投入した。ガラスクロスの入った該金属製容器を400℃のオーブンに投入し2時間加熱した。オーブンから金属容器を取り出し、ガラスクロスを前述した粉砕機に投入し、粉砕を行った。取り出しから粉砕機投入までの所要時間は3時間であった。平均粒径2.1μmのガラスフィラーを得ることが出来た。
ガラスフィラー採取後、粉砕機内を観察したところ、未粉砕のガラス繊維が投入量に対して20重量%残留していることを確認した。
【0024】
[比較例4]
幅1260mmのスタイル1027ガラスクロスを解反した状態でテトラエトキシシラン(4g/l)水溶液に浸漬することによって塗布し、ライン速度30m/min、乾燥温度170℃、炉内滞留時間1分間で乾燥し、1000mを金属製芯管に巻き取らない状態のまま金属製容器に投入した。ガラスクロスの入った該金属製容器を400℃のオーブンに投入し2時間加熱した。オーブンから金属容器を取り出し、ガラスクロスを前述した粉砕機に投入し、粉砕を行った。取り出しから粉砕機投入までの所要時間は3時間であった。平均粒径1.8μmのガラスフィラーを得ることが出来た。
ガラスフィラー採取後、粉砕機内を観察したところ、未粉砕のガラス繊維が投入量に対して18重量%残留していることを確認した。
【0025】
[比較例5]
幅1260mmのスタイル1027ガラスクロスを解反した状態でテトラエトキシシラン(4g/l)水溶液に浸漬することによって塗布し、ライン速度30m/min、乾燥温度170℃、炉内滞留時間1分間で乾燥し、1000mを金属製芯管に巻き取らない状態のまま金属製容器に投入した。ガラスクロスの入った該金属製容器を400℃のオーブンに投入し24時間加熱した。オーブンから金属容器を取り出し、ガラスクロスを前述した粉砕機に投入し、粉砕を行った。取り出しから粉砕機投入までの所要時間は3時間であった。平均粒径1.8μmのガラスフィラーを得ることが出来た。
ガラスフィラー採取後、粉砕機内を観察したところ、未粉砕のガラス繊維が投入量に対して15重量%残留していることを確認した。
以上のこれらの実施例及び比較例の結果からわかるように、本発明により、効率的にガラスフィラーを得ることができる脆化処理方法を含むガラスフィラーの製造方法が提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の、ガラスフィラーの製造方法は、電子材料の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスクロスにテトラアルコキシシランまたはシランカップリング剤を塗布する塗布工程、加熱工程、及び粉砕工程を含むガラスフィラーの製造方法であって、加熱工程における加熱温度が300〜600℃の範囲であり、加熱時間が24〜72時間の範囲であり、塗布工程におけるガラス繊維織物の形態が解反された形状であり、加熱工程と粉砕工程におけるガラス繊維織物の形態が巻物の形状であることを特徴とするガラスフィラーの製造方法。

【公開番号】特開2009−173472(P2009−173472A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11224(P2008−11224)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】