説明

ガラスブロック壁面構造、ガラスブロック壁の施工方法及びガラスブロック壁の補修方法

【課題】力骨に代わる引張抵抗材を採用したガラスブロック壁面構造、積みモルタルの充填不良を無くすガラスブロック壁の施工方法及びガラスブロック壁の補修方法を提供する。
【解決手段】本発明のガラスブロック壁10の構造は、枠体32内に、複数個のガラスブロック1が積みモルタル38を介して縦横に配列され、目地部10aの積みモルタル38の表面38aに、連続した引張抵抗材20が固着され、引張抵抗材20が化粧目地材39で被覆されてなる。また本発明の施工方法は、ガラスブロック1を積みモルタル38を介して積み、その表面38aに、引張抵抗材20を固着し、その上に化粧目地材39を被覆する。また本発明の補修方法は、破損した目地部から化粧目地材を除去し、露出させた積みモルタルの表面に、連続した引張抵抗材20を固着し、その上に化粧目地材39を被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の建築用中空ガラスブロック等を積層して構築されるガラスブロック壁面構造、ガラスブロック壁の施工方法、及びガラスブロック壁の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガラスブロック壁には、図5に示すように、建築用ガラスブロック1が用いられている。このガラスブロック1は、一対の有底無蓋の箱型形状を有し、底部が透光面1cとなるガラス成形体1a同士を、互いの開放端縁で熔着一体化させることによって作製され、表裏面の双方に額縁1b、1bに囲まれた透光面1c、1cを有する中空の建築材料であり、建物の外壁や内壁、間仕切り、あるいはベランダ等に広く使用されている。
【0003】
現在、市販されている通常サイズのガラスブロック1は、145mm×145mm×95mm、又は190mm×190mm×95mm等の寸法を有しており、肉厚は、透光面1cから額縁1bに到る部分が最も大きく、側面1dの熔着部1eに向かって小さくなっている。
【0004】
ガラスブロック壁は、図6に示すように、躯体31に取り付けられた金属製の枠体32内にすべり材33とエキスパンション材34とアンカーピース35とがセットされており、これらを介して枠体32内に、複数のガラスブロック1が積み上げられ、アンカーピース35の穴に挿入し固定されて約620mm以下の間隔で配筋され径5.5mmのステンレス製筋の2本をつなぎ筋で溶接した梯子状の縦力骨36、横力骨37(2本の筋の間隔は50mmと35mmの2種類がある)がガラスブロック1間に配筋されて、充填された積みモルタル38で目地部内に固定されている。この目地部の表面には化粧目地材39が充填され、枠体32と取り合う部分にはシリコーン系シーリング材40が配設されている。
【0005】
このようなガラスブロック壁は、風圧、地震力等の面外力を受けた場合、ガラスブロック1と積みモルタル38は圧縮力を負担するが、引張力は負担することができない。このためガラスブロック壁では、鉄筋コンクリート構造と同じ考え方で、引張力を通常620mm以下の間隔で積みモルタル38の内部にステンレス製の縦力骨36、横力骨37を配筋して、これを補っている。
【0006】
ガラスブロック壁を施工する場合、躯体31に取り付けられた金属製の枠体32内にすべり材33とエキスパンション材34とアンカーピース35とをセットし、このアンカーピース35の穴に縦力骨36となる50mm幅の2本の筋を挿入し固定する。次に、ガラスブロック1を目地部に積みモルタル38を充填しながら積み上げて、横力骨37となる35mm幅の2本の筋を縦力骨36の2本の筋の間に挿入する。この作業を繰り返してガラスブロック壁を施工していく。このブロック積みの作業が終了した後、目地部に化粧目地材39を充填し、枠体32と取り合う部分にはシリコーン系シーリング材40を充填し、ガラスブロック壁の施工を完了する。
【0007】
ガラスブロック壁の目地幅は通常10mmと非常に小さいものである。この目地部内に直径5.5mmのステンレス筋の梯子筋を納めるために、積みモルタル38の充填が非常に困難(特に縦目地の充填が難しい)であり、施工効率が非常に悪いものになっている。積みモルタル38の充填が不充分な場合、梯子筋状の力骨36、37が積みモルタル38と一体にならないため、力骨として引張力負担が充分できず、ガラスブロック壁の設計強度に至らないケースがある。この様に、設計強度が出ていない施工では、壁の崩壊までには至らないまでも、ガラスブロックの破損、目地クラックの発生、漏水などの不具合が発生し易い状態になる。
【0008】
そこで、このような問題に対処するため例えば、特許文献1、2には、壁の開口部の寸法に適応した形状のガラスブロック集合体を前以て製作しておき、施工現場においてはガラスブロック集合体の取り付け作業のみを行う施工方式が提案されている。また、簡単な構成によってブロック部材を用いたパネル構体の組み立て作業性及びパネル強度を改善することを目的として、特許文献3、4には、天板部と側板部をほぼコ字形に形成すると共に、側板部の端部にフランジ部を外方に向けて形成し、かつ側板部に所定の間隔でスリットを形成してなる第1の支持具と、第1の支持具のスリットに挿入可能な帯状の第2の支持具と、角形のブロック部材とを具備し、前記ブロック部材の前後面の両端部分及び両側面を、対をなす第1の支持具のフランジ部及び側板部にて支持すると共に、ブロック部材の上下面を第1の支持具のスリットに挿入した第2の支持具にて支持したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−230899号公報
【特許文献2】特開平9−4128号公報
【特許文献3】特開平9−41557号公報
【特許文献4】特開平10−212791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、予め作製しておくガラスブロックパネルでは、枠体により自由度が限られるので、躯体の様々な開口部に対応することが困難になる。また、個別に、枠体を作製すると、逆にコスト高になる。また、モルタルを使用しないガラスブロック壁は、目地幅が一定寸法となるため寸法調整などの点で、自由度が制限される問題がある。
【0011】
本発明は、積みモルタル中に埋設される力骨に代わって積みモルタルの表面に引張抵抗材を配設したガラスブロック壁面構造、この引張抵抗材を採用した積みモルタルの充填作業が容易なガラスブロック壁の施工方法、及び引張抵抗材を採用したガラスブロック壁の補修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るガラスブロック壁面構造は、躯体の開口部又は枠体内に、複数個のガラスブロックが積みモルタルを介して縦横に配列されており、ガラスブロック間の目地部が化粧目地材で被覆されてなるガラスブロック壁面構造であって、前記目地部に形成される積みモルタルの表面に、連続した引張抵抗材が固着されており、該引張抵抗材が前記化粧目地材により被覆されてなることを特徴とする。
【0013】
本発明のガラスブロック壁面構造では、積みモルタル中に力骨は配筋されておらず、それに代替するものとして、ガラスブロック間の目地部に形成される積みモルタルの表面に、力骨とほぼ同等の長さの連続した引張抵抗材を配設することで、ガラスブロック壁面の強度を維持するものである。また、目地部に形成される積みモルタルの表面に、連続した引張抵抗材が固着されているとは、定着により取り付けて配置されて鋼材などからなる引張抵抗材から突き出させた複数のアンカーを固化する前の積みモルタルに必要な長さだけ埋め込んで抜けないようにすること、固化した後の積みモルタルの表面及び/又は引張抵抗材の表面に、接着剤を塗布して硬化させることで固着させること、または、固化する前の積みモルタルの表面に、アンカーを埋設してネジ止めすること等を意味している。さらに、これら定着、接着、ネジ止めを、任意に組み合わせて積みモルタルの表面に連続した引張抵抗材を固着してもよい。
【0014】
また、本発明のガラスブロック壁面構造は、引張抵抗材が、ステンレス鋼よりなるもの、又は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維の何れかの繊維により補強されたFRP等の複合材よりなるものであることを特徴とするものである。
【0015】
本発明で使用する引張抵抗材としては、許容引張応力の大きな材料であり、かつ温度変化、水分、アルカリ性に関して耐久性のある材料であることが重要である。
【0016】
また、本発明のガラスブロック壁面構造は、引張抵抗材が、薄板状体または棒状体であり、積みモルタルと接する面側に、積みモルタルに埋入する複数のアンカー部が形成されてなることを特徴とする。
【0017】
本発明のガラスブロック壁面構造で用いる引張抵抗材が、薄板状体または棒状体であるとは、ガラスブロック間の目地部に位置する積みモルタルの表面に、配置及び接着可能な帯状鋼等の薄板状体または角棒、チャンネル、H形鋼、I形鋼等の棒状体であれば使用可能である。また、積みモルタルと接する面側に、積みモルタルに埋入する複数のアンカー部が形成されてなるとは、薄板状体または棒状体の積みモルタルの表面側に配置される表面に、先端が尖っているくさび形状、三角形状等のアンカーとして作用する突起部が複数突設されており、積みモルタルに、容易に埋入させることができるものであれば使用可能である。
【0018】
また、本発明のガラスブロック壁の施工方法は、躯体の開口部又は枠体内に、複数個のガラスブロックを積みモルタルを介して縦横に配列させて積層する積層工程と、ガラスブロック間の目地部の積みモルタルの表面に、連続した引張抵抗材を配設して固着する引張抵抗材固着工程と、固着した引張抵抗材の表面を化粧目地材により被覆する仕上げ工程とを有することを特徴とする。
【0019】
本発明のガラスブロック壁の施工方法において、ガラスブロック間の目地部の積みモルタルの表面に、連続した引張抵抗材を配設して固着する引張抵抗材固着工程は、ガラスブロック間の目地部の積みモルタルの表面に、従来の力骨と同様に、連続した引張抵抗材を、化粧目地でカバーする被覆代を設定した上で、定着、接着、又は埋設アンカーにネジ止め等により固着するものである。また、アンカー部が突設されてなる引張抵抗材の場合には、積みモルタルの表面に、アンカーとして作用する突起を埋設させることで、積みモルタルに対して引張抵抗材を強固に定着により固着させるものである。
【0020】
本発明のガラスブロック壁の施工方法で、躯体の開口部又は枠体内に、複数個のガラスブロックを積みモルタルを介して縦横に配列させて積層する積層工程としては、施工現場で作業者が積層する現場施工法や工場でパネル化する施工方法が使用可能である。
【0021】
本発明のガラスブロック壁の施工方法で、引張抵抗材の表面に、化粧目地材を被覆する仕上げ工程は、目地部の引張抵抗材の表面を、耐候性に優れた化粧目地モルタル等の化粧目地材により被覆することで、外観上の美観を整えるものである。
【0022】
本発明に係るガラスブロック壁の補修方法は、ガラスブロック壁面の破損した目地部から化粧目地を除去して積みモルタルの表面を露出させる化粧目地剥離工程と、露出させた積みモルタルの表面に、連続した引張抵抗材を固着する引張抵抗材固着工程と、固着した引張抵抗材の表面を化粧目地材により被覆する仕上げ工程とを有することを特徴とする。
【0023】
従来のガラスブロック壁面構造では、風圧などの面外力により、積みモルタルが充填不足や、壁面に作用した想定以上の面外力に起因して目地クラックが発生した場合、従来の方法ではガラスブロック壁を解体して積みかえる補修工事が必要となっていた。しかし、本発明のガラスブロック壁の補修方法では、引張抵抗材を採用することで、解体することなく既存のガラスブロック壁を補修するものである。
【0024】
本発明において、ガラスブロック壁面の破損した目地部から化粧目地を除去する化粧目地剥離工程としては、ディスクサンダ、チス等の剥離工具を使用して、ガラスブロック、積みモルタルから化粧目地材を剥離し、積みモルタルの表面を露出させることを意味している。
【0025】
また、露出させた積みモルタル自体に損傷が生じている場合には、積みモルタルに対して親和性に優れた樹脂モルタル、セメントペースト等の充填材や接着剤を使用し、充填して補強する補強工程を追加する。
【0026】
その後、引張抵抗材固着工程は、積みモルタルの表面に、連続した引張抵抗材を、接着剤、又はあと施工アンカーとネジ止め等により、固着するものである。また、仕上げ工程は、上記の施工方法と同様に目地部の引張抵抗材の表面を、耐候性に優れた化粧目地モルタル等の化粧目地材により被覆することで、外観上の美観を整えるものである。
【0027】
また、本発明のガラスブロック壁の補修方法は、塑性変形の生じたガラスブロック壁の変形を、たわみ/スパン比で1/500以下の変形量に矯正する矯正工程を有することを特徴とする。
【0028】
塑性変形を生じたガラスブロック壁とは、例えば地震時に家具が倒れてガラスブロック壁に衝突、その他の衝突事故、暴風等の外的負荷により、弾性限度以上のたわみが発生して、変形が戻らない状態のものを意味している。また、たわみ/スパン比とは、例えば、対象とするガラスブロック壁のスパンが直線状の場合、たわみはその直線から逸脱している部位の高さであり、スパンの寸法に対するその高さとの比を意味している。また、ガラスブロック壁の塑性変形の変形量がたわみ/スパン比で1/500を超えて残っていると、外観上の問題がある。本発明の補修方法では、矯正工程が、たわみ/スパン比で1/500を超えて塑性変形が生じているガラスブロック壁を、1/500以下の変形量に矯正することが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明のガラスブロック壁面構造は、目地部に形成される積みモルタルの表面に、連続した引張抵抗材が固着されており、該引張抵抗材が前記化粧目地材により被覆されてなるので、ガラスブロック壁としての必要強度を十分に確保した上で、従来使用していた力骨を使用することなく、モルタルの充填が容易であり、施工の作業性が大幅に改善される。
【0030】
また、本発明のガラスブロック壁面構造は、引張抵抗材が、ステンレス鋼よりなるもの、又は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維の何れかの繊維により補強された複合材よりなるものであるので、許容引張応力が大きく、かつ温度変化、水分、アルカリ性に関して耐久性のある材料を採用することで、ガラスブロック壁に風圧力などの面外力が作用した場合に、引張力が作用する面に設置した引張抵抗材により引張力を負担することが可能となり、圧縮力を負担するガラスブロックとモルタルと力学的につり合い、面として安定した状態となる。
【0031】
さらに、本発明のガラスブロック壁面構造の引張抵抗材に、耐久性のある材料を採用することで、温度変化、水分、モルタルのアルカリ性に対して安定した耐久性が要求される外壁面として使用されるガラスブロック壁面に好適なものとなる。
【0032】
また、本発明のガラスブロック壁面構造は、引張抵抗材が、薄板状または棒状であることにより、積みモルタルと化粧目地材の小さな断面内に設けることが可能なため、施工作業上都合が良い。また、引張抵抗材の積みモルタルと接する面側に、積みモルタルと定着が取れるように複数のアンカー部が形成されていることにより、積みモルタルと引張抵抗材とが一体となるため力学的に安定した状態を保つことができる。
【0033】
本発明に係るガラスブロック壁の施工方法は、躯体の開口部又は枠体内に、複数個のガラスブロックを積みモルタルを介して縦横に配列させて積層する積層工程と、ガラスブロック間の目地部の積みモルタルの表面に、連続した引張抵抗材を配設して固着する引張抵抗材固着工程と、固着した引張抵抗材の表面を化粧目地材により被覆する仕上げ工程と、を有するので、上記の効果を発揮する本発明のガラスブロック壁面構造を容易に実現することができる。
【0034】
本発明のガラスブロック壁の補修方法は、ガラスブロック壁面の破損した目地部から化粧目地を除去して積みモルタルの表面を露出させる化粧目地剥離工程と、露出させた積みモルタルの表面に、連続した引張抵抗材を固着する引張抵抗材固着工程と、固着した引張抵抗材の表面を化粧目地材により被覆する仕上げ工程と、を有するので、ガラスブロック壁の解体や、破損していないガラスブロックの積み替えを必要としない。
【0035】
また、本発明のガラスブロック壁の補修方法は、塑性変形の生じたガラスブロック壁の変形を、たわみ/スパン比で1/500以下の変形量に矯正する矯正工程を有するので、比較的大きい塑性変形が生じたガラスブロック壁であっても、ガラスブロック壁の解体や、破損していないガラスブロックの積み替えを必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の建築用ガラスブロック壁面構造の説明図であって、(A)はガラスブロック壁の引張抵抗材配置の説明図、(B)は(A)の部分破断説明図。
【図2】(A)は本発明の建築用ガラスブロック壁面構造の目地部断面図、(B)はアンカー部(突起)を有する引張抵抗材の平面図、(C)は(B)の引張抵抗材の側面図。
【図3】本発明のガラスブロック壁の補修方法の説明図であって、(A)はガラスブロック壁面の破損した目地部から化粧目地を除去する化粧目地剥離工程の説明図、(B)は露出させた積みモルタルに生じている損傷に充填材を充填して補強する補強工程の説明図、(C)は積みモルタルの表面に、引張抵抗材を接着剤で固着する引張抵抗材固着工程の説明図、(D)は引張抵抗材の表面に、化粧目地材を被覆する仕上げ工程の説明図。
【図4】本発明の他のガラスブロック壁の補修方法の説明図であって、(A)は塑性変形の生じたガラスブロック壁面の説明図、(B)は矯正工程の平面説明図。
【図5】ガラスブロックの説明図。
【図6】従来のガラスブロック壁面構造の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明のガラスブロック壁面構造、ガラスブロック壁の施工方法及びガラスブロ
ック壁の補修方法の実施形態について、図を参照して説明する。
【実施例1】
【0038】
図1(A)に示すように、本発明のガラスブロック壁10は、アルミニウム製の枠体32の開口部(寸法 幅:2020×高さ:3020mm)に、190mm×190mm×厚さ95mmのガラスブロック1を、10列×15段で施工したものである。図1(B)に示すように、下枠32aには水抜きプレート32bが配置され、縦枠32c及び上枠32dには、厚み10mmのポリエチレンフォームからなるエキスパンション材34が取り付けられている。また、枠体32の立ち上がり部分32eには、厚み1mmのブチルゴムテープからなるすべり材33を貼り付け、ガラスブロック1と枠体32の縁切りを行い、地震時や温度膨張時にガラスブロック1に応力が加わらないようにしている。
【0039】
図1(A)に示すガラスブロック壁10の目地部10aには、積みモルタル38の表面38aに、断面が幅8mm×厚さ2mmで、ステンレス鋼のSUS304製の引張抵抗材20が4個のガラスブロック1を取り囲むように配設されており、縦方向の引張抵抗材20は、長さが2990mm、水平方向の引張抵抗材20は長さが1990mmである。図2(A)に示すように、図2(B)、(C)に示す形状の引張抵抗材20が、その6mm×2mm厚の突起した三角形状のアンカー部21を積みモルタル38に埋設した状態で定着されている。また、目地部に固着された引張抵抗材20の表面は、化粧目地モルタル39により被覆仕上げされている。また、枠体32とガラスブロック1との間には、ポリエチレン製の図示しないバックアップ材が充填され、さらにシリコーン系シーリング材40が充填された構造となっている。
【0040】
次に、施工手順は、まず、下部からガラスブロック1間の目地部10aに、積みモルタル38を充填しながら積み上げる作業を行う。この作業は、先出の図5に示すような従来の施工方法から、力骨36、37とアンカーピース35の施工を除いたものであり、力骨に邪魔されないので積みモルタル38が簡単に、しかも良好に充填することができる。枠体32と取り合う目地幅は15mm、ガラスブロック1、1間の目地幅を10mmとして、ガラスブロック1を10列×15段全てを積んだ後、積みモルタル38が完全に硬化する前に、図1に示す目地部10aの室内側及び室外側の両面に、図2に示す引張抵抗材20の突起しているアンカー部21を表面38aから積みモルタル38に食い込ませてコテで押さえ込みながら一体化を図る。この状態で引張抵抗材20は積みモルタル38が硬化するまで粘着テープ等で仮止めしておく。この作業は、水平方向と垂直方向に行うものとする。引張抵抗材20の配筋ピッチは、従来の力骨と同じ断面積であれば、従来と同じピッチで行い、断面積が小さいときは、引張抵抗材20の配筋ピッチを小さくして行うものとする。また、水平方向と垂直方向の引張抵抗材20の交差部分は、突起しているアンカー部21が重ならないように配慮し、コテで押さえ込みながら隙間ができないように施工する。施工上、水平方向の引張抵抗材20を全て取り付けた後に垂直方向の引張抵抗材20を取り付ける方法が望ましい。
【0041】
積みモルタル38の表面に引張抵抗材20を設置して固着した後に、その表面側に化粧目地モルタル39を充填し仕上げる。また、アルミニウム製の枠体32とガラスブロック1、1間には、ポリエチレン製の図示しないバックアップ材を充填した後に、シリコーン系シーリング材40を充填し施工を終了する。
【実施例2】
【0042】
次に、本発明のガラスブロック壁の補修方法について説明する。まず、図3(A)に示すように、ガラスブロック壁50の破損した目地部50aから、ディスクサンダ、チス等の剥離工具を使用して、ガラスブロック1間の化粧目地59を剥離し、積みモルタル58の表面58aを露出させる。次いで、図3(B)に示すように、露出させた積みモルタル58自体に損傷Dが生じている場合、積みモルタル58に対して親和性に優れた樹脂モルタル、又はセメントペースト等の充填材Jを充填して補強する。次に、図3(C)に拡大して示すように、補強後の積みモルタル58の表面58aに、引張抵抗材20を早強性のエポキシ樹脂からなる接着剤Sで固着する。最後に、図3(D)に示すように、引張抵抗材20の表面に、新たな化粧目地材59を被覆して仕上げる。このようにガラスブロックを積み替えることなく補修することで、補修後のガラスブロック壁60は、図1、2に示す本発明のガラスブロック壁10とほぼ同等の強固な構造とすることができる。
【実施例3】
【0043】
次に、本発明の塑性変形の生じたガラスブロック壁の変形を矯正して補修する方法について説明する。
【0044】
まず、試験的に塑性変形の生じたガラスブロック壁を作製する。ガラスブロック壁の寸法は、190×190×95mmのガラスブロックを目地幅10mmで10列×10段(約2000mm×2000mm)に積みモルタルを使用して積み、化粧目地仕上げする。この時、2列2段ごとにステンレス製の梯子状力骨を目地内に設置する。図4(A)に示すガラスブロック壁70に、強制的に衝撃力を与えるために、45kgのショットバッグSBを振り子式で高さ1200mmから衝突させて、たわみδ/スパンL比=1/50の塑性変形70aを生じさる。塑性変形70aの変形量であるたわみδは、2000mmのスパンLに対して、約40mmである。
【0045】
次に、ガラスブロック壁70の補修では、ガラスブロック壁70の破損した目地部から、ディスクサンダ、チス等の剥離工具を使用して、ガラスブロック間の化粧目地を剥離し、積みモルタルの表面を露出させる。次に、塑性変形70aを矯正するために、面外方向のたわみδが最大である中央部に油圧ジャッキY1と、その反対面の左右に約500mm離れたところとに油圧ジャッキY2、Y3をそれぞれ設置し、急激な力が作用しないように油圧ジャッキY1により徐々に加圧することで、塑性変形70aを矯正する。面外方向の変形量のたわみδの確認は、油圧ジャッキによる加圧面と反対の面に水糸を張り行う。変形量のたわみδがゼロになったところで、図3(A)に示すような、加圧面と反対の面に露出させた積みモルタル自体に損傷が生じている部分に、図3(B)に示すように、積みモルタルに対して親和性に優れた樹脂モルタル、又はセメントペースト等の充填材を充填して補強する。次に、図3(C)に拡大して示すように、補強後の積みモルタルの表面に、引張抵抗材20を早強性のエポキシ樹脂からなる接着剤Sで固着する。最後に、図3(D)に示すように、引張抵抗材20の表面に、新たな化粧目地材59を被覆して仕上げる。
【0046】
その後、油圧ジャッキY1〜Y3を取り除いた後に、反対面と同様の処理を施してガラスブロック壁70の補修を完了する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、中空ガラス体を採用した建築用ガラスブロック壁面構造に好適なものであるが、これ以外にも、積みモルタルを使用した目地部を有する他のブロック壁面構造にも適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 ガラスブロック
1a ガラス成形体
1b 額縁
1c 透光面
1d 側面
1e 熔着部
10、50、60、70 ガラスブロック壁
10a、50a 目地部
20 引張抵抗材
21 アンカー部
31 躯体
32 枠体
32a 下枠
32b 水抜きプレート
32c 縦枠
32d 上枠
32e 立ち上がり部分
33 すべり材(ブチルゴムテープ)
34 エキスパンション材
35 アンカーピース
36 縦力骨
37 横力骨
38、58 積みモルタル
38a、58a モルタル表面
39、59 化粧目地材
40 シーリング材
L スパン
S 接着剤
SB ショットバッグ
J 充填材(樹脂モルタル、セメントペースト)
Y1、Y2、Y3 油圧ジャッキ
δ たわみ(変形量)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体の開口部又は枠体内に、複数個のガラスブロックが積みモルタルを介して縦横に配列されており、ガラスブロック間の目地部が化粧目地材で被覆されてなるガラスブロック壁面構造であって、
前記目地部に形成される積みモルタルの表面に、連続した引張抵抗材が固着されており、該引張抵抗材が前記化粧目地材により被覆されてなることを特徴とするガラスブロック壁面構造。
【請求項2】
引張抵抗材が、ステンレス鋼よりなるもの、又は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維の何れかの繊維により補強された複合材よりなるものであることを特徴とする請求項1に記載のガラスブロック壁面構造。
【請求項3】
引張抵抗材が、薄板状体または棒状体であり、積みモルタルと接する面側に、積みモルタルに埋入する複数のアンカー部が形成されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガラスブロック壁面構造。
【請求項4】
躯体の開口部又は枠体内に、複数個のガラスブロックを積みモルタルを介して縦横に配列させて積層する積層工程と、ガラスブロック間の目地部の積みモルタルの表面に、連続した引張抵抗材を配設して固着する引張抵抗材固着工程と、固着した引張抵抗材の表面を化粧目地材により被覆する仕上げ工程と、を有することを特徴とするガラスブロック壁の施工方法。
【請求項5】
ガラスブロック壁面の破損した目地部から化粧目地を除去して積みモルタルの表面を露出させる化粧目地剥離工程と、露出させた積みモルタルの表面に、連続した引張抵抗材を固着する引張抵抗材固着工程と、固着した引張抵抗材の表面を化粧目地材により被覆する仕上げ工程と、を有することを特徴とするガラスブロック壁の補修方法。
【請求項6】
塑性変形の生じたガラスブロック壁の変形を、たわみ/スパン比で1/500以下の変形量に矯正する矯正工程を有することを特徴とする請求項5に記載のガラスブロック壁の補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−216227(P2010−216227A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11681(P2010−11681)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】