ガラスロービング包装体、ガラスロービング梱包体及びその梱包方法
【課題】工程の増加や添加剤の付与、管理項目の増加等の制約が生じず、しかもガラスロービングの解舒作業時に崩れ現象が発生しがたいガラスロービング包装体と、その包装体を集積した梱包体及びその梱包方法を提供する。
【解決手段】厚さが20μm〜40μmのシュリンク包装フィルム20により略円柱形状のガラスロービング11の底面14または上面13の少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲まで被覆されて未被覆部13bが形成されてなる。また、ガラスロービング包装体10の2以上が、基台上にて整列梱包されてなるものである。さらに、包装フィルム20にてガラスロービング11の上面13又は底面14の少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲までを被覆して、未被覆部13bを設ける被覆工程と、得られた2以上の包装体10を基台上に配置する配設工程とよりなる。
【解決手段】厚さが20μm〜40μmのシュリンク包装フィルム20により略円柱形状のガラスロービング11の底面14または上面13の少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲まで被覆されて未被覆部13bが形成されてなる。また、ガラスロービング包装体10の2以上が、基台上にて整列梱包されてなるものである。さらに、包装フィルム20にてガラスロービング11の上面13又は底面14の少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲までを被覆して、未被覆部13bを設ける被覆工程と、得られた2以上の包装体10を基台上に配置する配設工程とよりなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SMC(Sheet Molding Compound)法、スプレーアップ(Spray up)法、フィラメントワインディング(Filament Winding、またはFW)法、マッチドダイ法、引き抜き法等の各種の成形方法により繊維強化樹脂(FRP)を製造する際に使用されるガラスロービング包装体、複数の該ガラスロービング包装体を梱包した梱包体及びその梱包方法に関する。
【0002】
一般にガラスロービング包装体、及び梱包体は、以下のようにして作製される。まず、均質化された熔融ガラスを白金製のブッシングと呼ばれ、その底面部に設けられた複数のノズルを有する耐熱性容器から引き出されることによってガラスモノフィラメントが連続成形される。ブッシングのノズルから成形されたガラスモノフィラメントは、その直径が数μmから数十μmで、各ガラスモノフィラメントの表面には集束剤が塗布され、数十から数千本のガラスモノフィラメントが1本あるいは数本のガラスストランドに束ねられ、ケーキとして巻き取られる。そしてこのケーキの形態でガラスストランドは乾燥される。次いで乾燥後のケーキからガラスストランドが解舒されながら複数本引き揃えられて、綾を掛けられながら巻き取り装置(ワインダー)により巻き取られてガラスロービングが作製される。その後ガラスロービングは、シュリンクフィルム(又は熱収縮フィルム)により包装されて包装体となり、基台(パレット)上に複数列、複数行、複数段に積載され、積載ロールは各ロールが連続的に使用可能なように、クリルと呼ばれ、切断後にストランドを分散、解離せしめる結び方でストランド末端同士をつないだ後、基台単位で一体化されて梱包体となる。
【0003】
近年、ガラスロービング包装体は、使用し易い形態として特許文献1にあるような大型のものが利用されるようになってきた。大型のガラスロービング包装体とは、質量が25kg以上のものである。このような大型のガラスロービング包装体は通常寸法のガラスロービング包装体と比較して包装体自体が重いため、複数のガラスロービング包装体を積層したままで解舒操作が行われる際に、梱包上段側のロール使用終了後のフィルム、あるいは終了間近の外層ロールのみとなった包装体あるいはフィルム等が、下段側のロールを解舒途中に下段側ロールへと崩れて落下し、下段側のロールからのストランドの走行動作を妨げてしまう。また、場合によっては走行停止に至る引掛かりと呼ばれるガラスロービングの崩れ現象による問題を発生するか、あるいは落下して崩れ落ちた包装体などが走行中のストランドに絡まってしまい、その一部が絡まり解消後も工程中に混入する不具合の原因となることもある。
【0004】
このような問題を解決するためには、特許文献2にあるようにガラスロービングを予め50〜100℃の温度で1〜8時間程度加熱することによってストランド同士を互いに接着させる操作、いわゆるリボナイゼーションを効かせる操作を行うことが開示されている。また特許文献2にはロービングの巻き密度を1.45〜1.75g/cm3とすることも開示されている。さらに特許文献3にあるように(イ)接着性フィルムを使用する方法、(ロ)シュリンクフィルム自体に接着性を持たせる方法、(ハ)接着剤の使用などもあり、この特許文献3では所定範囲の帯電性を有するシュリンクフィルムを採用するという方法も開示されている。
【特許文献1】特開2005−145715号公報
【特許文献2】特開平07−315689号公報
【特許文献3】特開2002−104497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしこれまで開示された技術、あるいは方法だけではガラスロービング包装体の解舒操作を行う際に発生する包装体の崩れ現象に対処する対策としては十分ではない。例えば、特許文献2のリボナイゼーションを効かす方法では、加熱工程を一つ増やさねばならないということになり、製造コストの増加に繋がる。巻き密度を所定範囲に整えるというのは、優れたものではあるが、巻き密度の管理が必要となる。また特許文献3に記載された各種の方法では、ガラスロービングやシュリンクフィルム以外の他の材料を準備する必要があるので、材料費が嵩むという問題がある。さらにシュリンクフィルムに所定範囲の帯電を施すためには特定の帯電防止剤の添加や静電電位測定器による測定管理が必要となる。
【0006】
そこで本発明者は研究を重ね、上述したような工程の増加や添加剤の付与、管理項目の増加などの制約が生じず、しかも包装体のガラスロービングの解舒作業に崩れ現象の発生しがたい適正な剛性を有する包装フィルムにより所定の包装を施されたガラスロービング包装体とその包装体を集積した梱包体及びその梱包方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガラスロービング包装体は、シュリンク包装フィルムによって略円柱形状を有するガラスロービングにシュリンク包装を施した包装体であって、前記フィルムは厚さが20μm〜40μmであり、前記ガラスロービングの底面または上面の少なくとも一方の面積に、その1割から9割の範囲まで該フィルムにより被覆されて未被覆部が形成されてなることを特徴とする。
【0008】
ここで、シュリンク包装フィルムによって略円柱形状を有するガラスロービングにシュリンク包装を施した包装体であって、前記フィルムは厚さが20μm〜40μmであり、前記ガラスロービングの底面または上面の少なくとも一方に、その面積の1割から9割の範囲まで該フィルムにより被覆されて未被覆部が形成されてなるとは、次のようなものである。すなわちその外形が略円柱形状を呈するガラスロービングの外表面に加熱収縮性を有する熱収縮フィルム、すなわちシュリンク包装フィルムを被覆することによって得られる略円柱形状のガラスロービングの包装体について、ガラスロービング側集面の全面が熱収縮フィルムで被覆され、かつ略円柱の底面あるいは上面の何れかの面部の全面積の10%から90%に熱収縮フィルムが被覆され、略円柱の底面あるいは上面の何れかの面部の中央部に熱収縮フィルムが未被覆の箇所のある状態となっていることを意味している。
【0009】
シュリンク包装フィルムの厚みは、20μmより薄くなると包装体自体が自立するための剛性が不足する場合もあり、包装フィルムがストランドの束と共に下段のガラスロービング包装体へと崩れ落ち、解舒動作の途中にあるストランドの束に絡みつき、引っ掛かった状態となる等し、いわゆる持ち上がりと呼ばれ、解舒の妨げになる動作不良現象を発生させることになる。このためフィルムの厚み寸法は20μm以上が必要である。またシュリンク包装フィルムの厚み寸法が40μmを越えると、ストランドの束のなくなった包装フィルムが下段のガラスロービングの解舒操作中も、その上方にいつまでも残留し続けることになり、解舒されつつあるストランドの走行動作を妨げる等して、ガラス糸の供給不良を生じる状態となる。このため、シュリンク包装フィルムの厚み寸法は、20μmから40μmの範囲とすることがよく、さらに好ましくは25μmから35μmの範囲とすることである。
【0010】
前記ガラスロービングの底面または上面に、その少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲まで被覆されて未被覆部が形成されてなるとは、ガラスロービングの底面または上面のいずれかにシュリンクフィルムが被覆されていない部位があり、その未被覆部の面積がガラスロービングの底面あるいは上面の面積に対して1割未満とならないように、かつ9割を越えないようにシュリンクフィルムが被覆されている状態である。シュリンクフィルムが被覆されていない部位が1割未満であると、上述したように包装体自体の剛性が不足するために問題が発生する場合がある。一方9割を越えると、包装フィルムが解舒途中のストランドの走行動作を妨げる場合も発生することとなるため好ましくない。以上のような観点から、より好ましくはシュリンク包装を施した略円柱形状を有するガラスロービングを包装した包装体について、略円柱の底面または上面の少なくとも一方の面積の15%から85%に熱収縮フィルムが被覆されていることであって、さらに好ましくは全面積の20%から80%に熱収縮フィルムが被覆されていることであり、一層好ましくは全面積の30%から70%に熱収縮フィルムが被覆されていることである。
【0011】
略円柱形状の底面あるいは上面の何れかの面部にある未被覆部分の形状については、どのような形状であってもよいが、例えば略楕円形状などの鋭角な部分がない輪郭を有する形状である方が、ストランドの走行中にシュリンク包装フィルムに引っ掛かる等の解舒における走行動作の問題が発生しにくい形状となるため好ましい。また包装体の略円柱形状の底面あるいは上面の何れかの面部にある未被覆部分の数は、1つであっても複数であってもよい。
【0012】
シュリンク包装フィルムの材質については、所定の加熱収縮性能を有する材料であれば、どのようなものであっても使用することができる。例えばポリオレフィン系フィルム、塩ビ製フィルム等を使用することができる。
【0013】
また本発明のガラスロービング包装体は、上述に加えシュリンク包装フィルムの未被覆部が略楕円形状であって、その最大開口径が100mm以上であるならば、ストランドの走行を妨げにくいため好ましい。
【0014】
ガラスロービング包装体の底面あるいは上面のシュリンク包装フィルムの未被覆部が略楕円形状であって、その最大開口径が100mm以上であるとは、略円柱形状を呈する包装体の底面か、あるいは上面にあるシュリンク包装フィルムの被覆されていない開口状態の部位の形状が楕円形か、あるいは楕円形に類似した形状であり、かつその略楕円形状の開口部の最大径の寸法が100mm以上であることを表している。
【0015】
本発明のガラスロービング包装体は、上述に加えその形態が巻き高さ(h)と円柱の外径(2r)との間に1.1≦(2r/h)≦4の関係を満足するならば好適であるが、その形態のみに限定されるものではない。さらにガラスロービングを構成するストランドについて、その断面形状は、真円から扁平円、中空円、矩形等の多様な形状を採用することが可能である。
【0016】
また本発明のガラスロービング包装体は、上述に加え質量が25kg以上であるならば、ガラスロービング同士のストランド末端の接続回数を減らすことができるため好ましい。
【0017】
ここで、質量が25kg以上であるとは、ガラスロービングのみの質量ではなく、ガラスロービングに包装フィルムの質量を合わせた包装体の質量が25kg以上ということである。質量が25kg未満であるなら、積層させた場合であっても上述したような問題は起こりにくい。このため25kg以上であることが要件となる。そしてこのような観点からより好ましくは30kg以上とすることであり、さらに好ましくは35kg以上とすることである。
【0018】
また本発明のガラスロービング包装体は、上述に加え収縮率が50%を越えるシュリンク包装フィルムによって被覆されてなるものであれば、ガラスロービングの寸法に比較して大きめの包装フィルムを選択することができるので、ロービングをシュリンク前の包装フィルム内に入れる操作が行い易い。
【0019】
収縮率が50%を越えるシュリンク包装フィルムによって被覆されてなるとは、熱収縮前の包装フィルムに対して、熱収縮後の包装フィルムの寸法がどれだけ収縮するかというシュリンク性能を表すものであり、本発明のガラスロービング包装体では、上述のような作業性を考慮するなら、収縮率の大きいシュリンク包装フィルムを採用する方が好ましく、包装作業に不慣れな作業者がこの工程を担う場合であっても作業を容易にするためには、好ましくは50%以上の収縮率を有するシュリンク包装フィルムを使用するのがよい。ちなみに本発明の収縮率は、横収縮率をあらわしている。
【0020】
そして使用するシュリンク包装フィルムとしては、他の作業性を向上させるように袋の開口側にマーキングや目印、切れ込みを設けたり、予め所定の折れ目が生じるような特徴を持たせたりすることもでき、所定の彩色を施す等の工夫を行うこともできる。また本発明に係るシュリンク包装フィルムについては、公知の方法により帯電防止剤、酸化防止剤、潤滑剤、粘着剤やフィルム強化剤等の表面処理剤をフィルムの表面の所定箇所、あるいは全面に塗布、被覆させることで包装フィルムの性能をより向上させることも必要に応じて可能である。
【0021】
本発明のガラスロービング梱包体は、上記に記載のガラスロービング包装体の2以上が、基台上に整列梱包されてなることを特徴とする。
【0022】
ここで、上記に記載のガラスロービング包装体の2以上が、基台上に整列梱包されてなるとは、フィルムによってシュリンク包装を施した略円柱形状を有するガラスロービングを包装した包装体であって、前記シュリンク包装フィルムは厚さが20μm〜40μmであり、該フィルムにより前記ガラスロービングの底面または上面の少なくとも一方が、その面積の1割から9割の範囲まで被覆されて、中央部に未被覆部が形成されてなるガラスロービング包装体を少なくとも2個以上集積して基台上にて一体化して梱包したものであることを表している。
【0023】
基台については、どのような形態、材質のものであっても、ガラスロービング包装体を複数集積して配置することが可能であって、搬送等に耐えるだけの機械的な強度を有するものであれば使用することができる。基台としては、例えば木製、金属製、合成樹脂製、FRP製等の材料を単独あるいは複数組み合わせて構成し、複数のガラスロービング包装体を積載しても経時的に大きな変形を生じず、ガラスロービング包装体そのものに損傷を誘発するような破損を生じたりすることがない剛性を有するものであるならば使用可能である。また、この基台としては、車載したり搬送したりする際に、フォークリフト等の爪が挿入可能な構造を有し、さらに車載等して搬送する際にロープ等で基台を固定することもあるため、固定し易いような突起や開口部等を有する形状、例えばパレット形状であることが好ましい。
【0024】
また基台上に集積する形状や方法については、基台上に積載するガラスロービング包装体の個数や、ガラスロービング包装体の大きさ、さらに一つのガラスロービング包装体にどれだけの糸口を設けるかによって適宜選択できるものである。好ましい集積の整列形状として、最も典型的なものを例示するならば、一段につき縦横2列の配列とし、3〜5段の段組構造を採用することで積層化することができる。また整列集積の方法については、最下段から順次上段まで積み上げてもよいし、予め他の箇所で整列配列させた状態とし、その形状のまま基板上へと移送して積載してもよい。
【0025】
またガラスロービングの搬送途中での位置ずれなどを防止するため、基台上に集積されたガラスロービング包装体の所定個所に結束バンドなどを使用して相互に固定することができる。結束バンドとしてはポリプロピレン、ポリエチレンさらにPET(ポリエチレンテレフタレート)等が好適であるが、所定の性能を満足すれば他のものを採用してもよい。
【0026】
また、集積状態のガラスロービング包装体の上方から集積物の全体を覆うフィルム等としては、防塵等の所望される機能を有するものであれば種々の材質を採用することが可能であって、必要に応じてさらにシュリンク包装を採用してもよい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等の合成樹脂製のストレッチシート状物、シュリンクフィルム等を採用することができるが、所望の機能を有するものであれば他の材料についても採用することが可能である。
【0027】
また、前記の基台、結束バンド、ガラスロービング包装体を集積した集積物全体の被覆フィルム以外に必要に応じて本発明のガラスロービング梱包体に使用するものとしては、側面や底面の保護等を目的として採用する保護板がある。この保護板としては、ガラスロービング包装体を基台上に積載する時等にガラスロービングあるいはその包装体を汚れや衝撃、摩擦等による機械的な損傷等から効率的に保護するものである。このような材料としては、例えば軽量の段ボール板、軽量ゴムシート、ウレタンシート等を使用することによって、目的を達成することもできる。また、保護板の所定箇所にスリット、凹凸状の窪みや突起等を設け、予め基板に設けた同形状の部位に合致させることで基板の所定箇所に配設する構造を採用することも可能である。また、複数の保護板として所望の形状、材質を有する板状体を使用することによって、それぞれの配設位置に合わせた性能を実現することや、あるいはガラスロービング梱包体の機械的強度の補償を行うことも可能である。
【0028】
そして、前記のようなガラスロービング梱包体の保護板の配設については、必要に応じて被覆フィルムで集積状態のガラスロービングの被覆を行う前、あるいは被覆した後に、所定位置に保護板を配設することによって最終的なガラスロービング梱包体を構成するものであってもよい。
【0029】
さらに、必要に応じて前記基台の四隅に設けた挿入孔に、充分な強度を有し、基台と同材質、あるいは異材質による柱状物を挿入する等して直立させ、キーや係止突起他の適切な方法によって固定し、その柱状物の上部にさらに他の基台、あるいは他のガラスロービング梱包体を構成した後の基台の所定箇所に配設することによって、複数のガラスロービング梱包体を複数段に段組した集積状態とすることも可能である。
【0030】
本発明のガラスロービング梱包体の梱包方法は、シュリンク包装フィルムによってガラスロービングの上面または底面の少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲まで被覆して未被覆部を設ける被覆工程と、得られた2以上のガラスロービング包装体を基台上に配置する配設工程とを有することを特徴とする。
【0031】
ここで、シュリンク包装フィルムによってガラスロービングの上面または底面の少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲まで被覆して未被覆部を設ける被覆工程と、得られた2以上のガラスロービング包装体を基台上に配置する配設工程とを有するとは、次のようなものである。すなわち略円柱形状の上面あるいは底面の何れかの中央部に少なくとも1つの開口部、すなわち未被覆の部分を有するようにシュリンク包装フィルムを被覆させた後に、その状態のまま適切な加熱手段により加熱し、シュリンク包装フィルムを熱収縮させて略円柱形状のガラスロービング外形の形状に沿うように密着した状態にしてガラスロービング包装体とし、こうして得られた少なくとも2個のガラスロービング包装体を基台上に設置することでガラスロービング梱包体とすることを表している。
【0032】
シュリンク包装フィルムにてガラスロービングの上面あるいは底面に未被覆を設けるように被覆する被覆工程について、使用するシュリンク包装フィルムの形状は特に限定されない。すなわち帯状のシュリンク包装フィルムをロービングの周囲に巻き付けるようにし、熱融着などによって形を整えてガラスロービングの上面あるいは底面に未被覆を設けるようにすることもできる。また、予め袋状のシュリンク包装フィルムを用意し、ガラスロービングを袋状のシュリンク包装フィルムに収納することもできる。袋状のシュリンク包装フィルムを使用する場合には、袋の開口部を略円柱形状の上面あるいは底面の所定位置に合わせるか、あるいは一端完全に密封した後に略円柱形状の上面あるいは底面の所定位置に所定形状の開口を設けるような加工を施してもよい。
【0033】
シュリンク包装フィルムで被覆されたガラスロービングを加熱して収縮させる際にはどのような加熱手段を講じてもよい。例えばトンネル炉のような連続式加熱炉で、所定スケジュールで加熱を行うこともできるし、バッチ式の加熱炉を採用することも可能である。さらに必要に応じて熱風加熱機やハンディータイプの工業用ドライヤーなどを使用して1個づつ加熱していくことも可能である。
【0034】
得られた2以上のガラスロービング包装体を基台上に配置する工程では、どのような方法でガラスロービング包装体を基台上に配置するものでもよい。例えば人力に頼るものであってもよいし、搬送ロボットなどを使用するものであっても支障ない。
【発明の効果】
【0035】
(1)以上のように、本発明のガラスロービング包装体は、シュリンク包装フィルムによって略円柱形状を有するガラスロービングにシュリンク包装を施した包装体であって、前記フィルムは厚さが20μm〜40μmであり、前記ガラスロービングの底面または上面の少なくとも一方の面積に、その1割から9割の範囲まで該フィルムにより被覆されて未被覆部が形成されてなるため、ガラスロービングが積層された状態で解舒される場合にも上段にある包装体が解舒途中のガラスストランドの走行動作を妨げる現象が発生しがたく、解舒操作を一時的に停止させるような問題の発生を抑止することができ、解舒工程の効率を向上させることが可能となる。
【0036】
(2)さらに本発明のガラスロービング包装体は、シュリンク包装フィルムの未被覆部が略楕円形状であって、その最大開口径が100mm以上であるならば、ストランドの走行動作に支障をきたす確率が小さくなるので、解舒操作に係る工程管理を省力化することが可能となるものである。
【0037】
(3)また本発明のガラスロービング包装体は、質量が25kg以上であるならば、ストランド末端同士の連結操作の手間を少なくすることができ、しかも積層されて使用される場合でもスムーズな解舒が行えるので、ガラスロービング包装体に関わる一連の作業を効率化することが可能となるものである。
【0038】
(4)また本発明のガラスロービング包装体は、収縮率が50%を越えるシュリンク包装フィルムによって被覆されてなるものであれば、ガラスロービングを包装する作業が容易に行え、作業効率が高くなるのでロービングをシュリンク包装するに要する作業時間を短縮することが可能となる。
【0039】
(5)さらに本発明のガラスロービング梱包体は、上記に記載のガラスロービング包装体の2以上が、基台上に整列梱包されてなるものであるため、搬送に好都合であるばかりでなく、搬送先での解舒作業が容易であって、種々の用途で使用しやすいものである。
【0040】
(6)また本発明のガラスロービング梱包体の梱包方法は、シュリンク包装フィルムによってガラスロービングの上面または底面の少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲まで被覆して未被覆部を設ける被覆工程と、得られた2以上のガラスロービング包装体を基台上に配置する配設工程とを有するため、過度の梱包を施すことによる高額の費用を要することもなく、顧客の工程においてガラスストランドの走行停止などに起因する滞りのない製造工程を構築することができ、安定した品位のガラス繊維製品を提供することが容易となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に本発明のガラスロービング包装体及びガラスロービング包装体を集積したガラスロービング梱包体とその梱包方法について、実施例に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0042】
図1に本発明のガラスロービング包装体の写真を示し、図2にその説明のための斜視図を示す。
【0043】
ガラスロービング包装体10は、Eガラスのモノフィラメント200本を1本とし、複数本合糸して4800texとしたガラスストランド30を巻き取ったものを包装したものであって、その質量は54kgである。このガラスロービング包装体10の外形は、略円柱状を有する回巻体状であって、その側周面12及び上面13が25μmの厚みを有するオレフィン系シュリンク包装フィルム20で被覆されており、上面13には被覆部13aと未被覆部13bとがある。この未被覆部13bは略楕円形状であってその最大径の寸法が300mmとなっており、略円柱形の上面13の面積に対して4割の面積がオレフィン系シュリンク包装フィルム20で被覆された状態となっている。このオレフィン系シュリンク包装フィルム20が適度な剛性を有しており、被覆部がガラスロービング11の上面13または底面14の少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲までにあることにより、ストランド30をガラスロービング11の内層から解舒していくことによって最外層のみが残るような状態になった場合であっても自立することができ、適正な面積を有する被覆部が上側のシュリンク袋の脱落を抑止することにより、複数のガラスロービング包装体10を積層した状態でガラスストランド30の解舒が行われても包装体10が下段のガラスロービング包装体10へと簡単に崩落してしまうことはない。
【0044】
このガラスロービング包装体10は、次のような手順で作製されたものである。まずEガラスとなるように調整された原料が、ガラス溶融炉で均質に熔融されて溶融ガラスとなった後、溶融ガラスはブッシングのノズルよりモノフィラメントとして引き出されて集束剤を塗布してケーキに巻き取られて乾燥される。さらに複数のケーキからガラスストランド30が解舒されながら複数本引き揃えられて、綾を掛けられながら巻き取り装置(ワインダー)により巻き取られてロール外径寸法が420mm、内径寸法が90mm、ロール高さが270mmのガラスロービング11が作製される。次いでガラスロービング包装体10の包装手順は、このガラスロービング11の寸法に合わせオレフィン系シュリンク包装フィルム20で作成した袋体内にガラスロービング11を収納する。そしてシュリンク包装フィルム20の袋体に収納されたガラスロービング11を最高温度170℃に設定した連続加熱炉内にて加熱処理し、50%を越える収縮率で収縮させてガラスロービング包装体10を得ることになる。
【0045】
次いでガラスロービング包装体を集積したガラスロービング梱包体について説明する。図3には、図2のガラスロービング包装体10をパレット形状の木製基台60上に4段に積層し、計16個のガラスロービング包装体10を集積したガラスロービング梱包体50を示す。このガラスロービング梱包体50の梱包方法は以下のようになる。
【0046】
まず前記の包装手順により得られたガラスロービング包装体10の4つを整列配列することのできる面積を有する木製基台60に1つずつ搬送機を用いて整列させていき、この4つのガラスロービング包装体10を最下段として上段に同じように作製したガラスロービング包装体10を積み重ねて積層していき、4層の積層状態とする。そしてクリルでストランド30の末端同士を繋ぎ、各段を結束バンド80で固定した後に、その上から梱包袋(パレットシュリンク袋)70としてポリエチレン製のシュリンク袋を被せて加熱収縮させてガラスロービング梱包体50を得ることになる。
【実施例2】
【0047】
本発明のガラスロービング包装体10を積層した状態からの解舒性能を比較するための試験を以下の手順で行った。
【0048】
まず梱包する試験体のガラスロービング包装体10は、以下の手順で作製した。表1には、試験に使用した試験体の性状とその試験結果とをまとめて示す。
【0049】
各試験体は、実施例1と同様の手順で4800texのEガラス製のガラスロービング11を、その寸法、質量についても実施例1と同じものとなるように作製した。次いで試料No1と試料No.2は、フィルム厚みと材質、そして略円柱形状の上面の被覆面積比率がそれぞれ表1の条件となるようにシュリンク包装フィルム20を加熱して収縮率が約62%〜66%程度まで収縮させて、被覆処理を行い、ガラスロービング包装体10の試験体を得た。
【0050】
得られたガラスロービング包装体10の試験体をそれぞれ木製の基台上に2段に整列積層してガラスストランドの解舒操作を行い、その際に、最外層ストランドが崩落することによる引掛かりの有無、上段に残ったガラスロービング包装体10のシュリンク包装フィルムの崩落による引掛かりの有無、さらに解舒時のストランド走行がシュリンクフィルムにより妨げとなる引掛かりの発生有無について調査した。作製したガラスロービング包装体10の試験体の性状と評価結果は、表1のようになった。
【0051】
【表1】
【0052】
評価の結果、試験体No.1は、オレフィン系のシュリンク包装フィルム材質で、フィルム20の厚みが25μm、被覆部の面積比率が4割、未被覆部の最大寸法が300mmの特徴を有するガラスロービング包装体10であるが、解舒操作において引掛かりは全く発生せず、ガラスストランド30のスムーズな解舒操作が行えるものであり、崩落現象も発生しないものであった。
【0053】
また、試験体No.2は試験体No.1と同じ材質で、フィルム厚みを30μm、被覆部の面積比率を5割、略楕円形状の未被覆部の最大寸法を300mmとしたものであって、熱収縮後のシュリンク包装フィルム20が適正な剛性を有しており、解舒操作における問題は、試験体No.1と同様に発生しなかった。
【0054】
[比較例]次いで実施例2の比較例として、実施例2と同様の手順で試験体No.3と試験体No.4、試験体No.5を作製し実施例と同様の評価を行った。ただ、試験体No.3については、シュリンク包装フィルムはオレフィン系の材質であるもののフィルムの厚みを15μmとし、予め小さい寸法の袋体を準備して、被覆部の面積比率が4割、未被覆部の最大径寸法が300mmであり、解舒操作を行ったところ最外層ストランドの崩落による引掛かりが発生する結果となり、ロール単位で最後までの解舒が完了しなかったため、上段ガラスロービング崩落による引掛かりや解舒時のストランドの引掛かりを確認することはできなかった。
【0055】
試験体No.4については、フィルムの厚みが50μmで被覆部の面積比率が9.2割、未被覆部の最大径寸法が90mmであり、非常に剛性の高いシュリンク包装フィルムであるので、崩落などの問題は発生しないものの解舒時にストランドがシュリンク包装フィルムに引掛かり、解舒操作の効率が悪いものであった。
【0056】
【表2】
【0057】
試験体No.5については、フィルムの厚みは30μmで、被覆部の面積比率が0.9割と1割未満であって、未被覆部の最大径寸法が360mmであり、最外層ストランドの崩落による引掛かりは起こらなかったものの、上段に残っていたガラスロービング包装体の空になったシュリンク包装フィルムの崩落が発生する結果となり、それによる引掛かりが認められた。ただ、ストランドが残存するフィルムに引掛かることはなかった。
【0058】
以上の実施例と比較例についての一連の評価結果から、本発明のガラスロービング包装体は、ストランドの解舒操作中に発生するストランドの引掛かり現象が発生せず、SMC法、スプレーアップ法、フィラメントワインディング法、引き抜き法等の成形方法により繊維強化複合材料(FRP)を成形するに使用されるガラスロービング包装体として好ましいものであることが明瞭となった。また、このような本発明のガラスロービング包装体を複数積層したガラスロービング梱包体は、解舒操作が容易で効率的な解舒が行えるものであった。さらに、本発明のガラスロービング梱包体の梱包方法により、迅速かつ的確に本発明のガラスロービング梱包体を作製することができた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
上記本発明のガラスロービング包装体に関する発明は、ガラス繊維以外のアラミド繊維、炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の他の繊維にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のガラスロービング包装体の写真。
【図2】本発明のガラスロービング包装体の斜視図。
【図3】本発明のガラスロービング梱包体の斜視図。
【符号の説明】
【0061】
10 ガラスロービング包装体
11 ガラスロービング
12 側周面
13 上面
13a 被覆部
13b 未被覆部
14 底面
20 シュリンク包装フィルム
30 ストランド
50 ガラスロービング梱包体
60 基台
70 梱包袋
80 結束バンド
【技術分野】
【0001】
本発明は、SMC(Sheet Molding Compound)法、スプレーアップ(Spray up)法、フィラメントワインディング(Filament Winding、またはFW)法、マッチドダイ法、引き抜き法等の各種の成形方法により繊維強化樹脂(FRP)を製造する際に使用されるガラスロービング包装体、複数の該ガラスロービング包装体を梱包した梱包体及びその梱包方法に関する。
【0002】
一般にガラスロービング包装体、及び梱包体は、以下のようにして作製される。まず、均質化された熔融ガラスを白金製のブッシングと呼ばれ、その底面部に設けられた複数のノズルを有する耐熱性容器から引き出されることによってガラスモノフィラメントが連続成形される。ブッシングのノズルから成形されたガラスモノフィラメントは、その直径が数μmから数十μmで、各ガラスモノフィラメントの表面には集束剤が塗布され、数十から数千本のガラスモノフィラメントが1本あるいは数本のガラスストランドに束ねられ、ケーキとして巻き取られる。そしてこのケーキの形態でガラスストランドは乾燥される。次いで乾燥後のケーキからガラスストランドが解舒されながら複数本引き揃えられて、綾を掛けられながら巻き取り装置(ワインダー)により巻き取られてガラスロービングが作製される。その後ガラスロービングは、シュリンクフィルム(又は熱収縮フィルム)により包装されて包装体となり、基台(パレット)上に複数列、複数行、複数段に積載され、積載ロールは各ロールが連続的に使用可能なように、クリルと呼ばれ、切断後にストランドを分散、解離せしめる結び方でストランド末端同士をつないだ後、基台単位で一体化されて梱包体となる。
【0003】
近年、ガラスロービング包装体は、使用し易い形態として特許文献1にあるような大型のものが利用されるようになってきた。大型のガラスロービング包装体とは、質量が25kg以上のものである。このような大型のガラスロービング包装体は通常寸法のガラスロービング包装体と比較して包装体自体が重いため、複数のガラスロービング包装体を積層したままで解舒操作が行われる際に、梱包上段側のロール使用終了後のフィルム、あるいは終了間近の外層ロールのみとなった包装体あるいはフィルム等が、下段側のロールを解舒途中に下段側ロールへと崩れて落下し、下段側のロールからのストランドの走行動作を妨げてしまう。また、場合によっては走行停止に至る引掛かりと呼ばれるガラスロービングの崩れ現象による問題を発生するか、あるいは落下して崩れ落ちた包装体などが走行中のストランドに絡まってしまい、その一部が絡まり解消後も工程中に混入する不具合の原因となることもある。
【0004】
このような問題を解決するためには、特許文献2にあるようにガラスロービングを予め50〜100℃の温度で1〜8時間程度加熱することによってストランド同士を互いに接着させる操作、いわゆるリボナイゼーションを効かせる操作を行うことが開示されている。また特許文献2にはロービングの巻き密度を1.45〜1.75g/cm3とすることも開示されている。さらに特許文献3にあるように(イ)接着性フィルムを使用する方法、(ロ)シュリンクフィルム自体に接着性を持たせる方法、(ハ)接着剤の使用などもあり、この特許文献3では所定範囲の帯電性を有するシュリンクフィルムを採用するという方法も開示されている。
【特許文献1】特開2005−145715号公報
【特許文献2】特開平07−315689号公報
【特許文献3】特開2002−104497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしこれまで開示された技術、あるいは方法だけではガラスロービング包装体の解舒操作を行う際に発生する包装体の崩れ現象に対処する対策としては十分ではない。例えば、特許文献2のリボナイゼーションを効かす方法では、加熱工程を一つ増やさねばならないということになり、製造コストの増加に繋がる。巻き密度を所定範囲に整えるというのは、優れたものではあるが、巻き密度の管理が必要となる。また特許文献3に記載された各種の方法では、ガラスロービングやシュリンクフィルム以外の他の材料を準備する必要があるので、材料費が嵩むという問題がある。さらにシュリンクフィルムに所定範囲の帯電を施すためには特定の帯電防止剤の添加や静電電位測定器による測定管理が必要となる。
【0006】
そこで本発明者は研究を重ね、上述したような工程の増加や添加剤の付与、管理項目の増加などの制約が生じず、しかも包装体のガラスロービングの解舒作業に崩れ現象の発生しがたい適正な剛性を有する包装フィルムにより所定の包装を施されたガラスロービング包装体とその包装体を集積した梱包体及びその梱包方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガラスロービング包装体は、シュリンク包装フィルムによって略円柱形状を有するガラスロービングにシュリンク包装を施した包装体であって、前記フィルムは厚さが20μm〜40μmであり、前記ガラスロービングの底面または上面の少なくとも一方の面積に、その1割から9割の範囲まで該フィルムにより被覆されて未被覆部が形成されてなることを特徴とする。
【0008】
ここで、シュリンク包装フィルムによって略円柱形状を有するガラスロービングにシュリンク包装を施した包装体であって、前記フィルムは厚さが20μm〜40μmであり、前記ガラスロービングの底面または上面の少なくとも一方に、その面積の1割から9割の範囲まで該フィルムにより被覆されて未被覆部が形成されてなるとは、次のようなものである。すなわちその外形が略円柱形状を呈するガラスロービングの外表面に加熱収縮性を有する熱収縮フィルム、すなわちシュリンク包装フィルムを被覆することによって得られる略円柱形状のガラスロービングの包装体について、ガラスロービング側集面の全面が熱収縮フィルムで被覆され、かつ略円柱の底面あるいは上面の何れかの面部の全面積の10%から90%に熱収縮フィルムが被覆され、略円柱の底面あるいは上面の何れかの面部の中央部に熱収縮フィルムが未被覆の箇所のある状態となっていることを意味している。
【0009】
シュリンク包装フィルムの厚みは、20μmより薄くなると包装体自体が自立するための剛性が不足する場合もあり、包装フィルムがストランドの束と共に下段のガラスロービング包装体へと崩れ落ち、解舒動作の途中にあるストランドの束に絡みつき、引っ掛かった状態となる等し、いわゆる持ち上がりと呼ばれ、解舒の妨げになる動作不良現象を発生させることになる。このためフィルムの厚み寸法は20μm以上が必要である。またシュリンク包装フィルムの厚み寸法が40μmを越えると、ストランドの束のなくなった包装フィルムが下段のガラスロービングの解舒操作中も、その上方にいつまでも残留し続けることになり、解舒されつつあるストランドの走行動作を妨げる等して、ガラス糸の供給不良を生じる状態となる。このため、シュリンク包装フィルムの厚み寸法は、20μmから40μmの範囲とすることがよく、さらに好ましくは25μmから35μmの範囲とすることである。
【0010】
前記ガラスロービングの底面または上面に、その少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲まで被覆されて未被覆部が形成されてなるとは、ガラスロービングの底面または上面のいずれかにシュリンクフィルムが被覆されていない部位があり、その未被覆部の面積がガラスロービングの底面あるいは上面の面積に対して1割未満とならないように、かつ9割を越えないようにシュリンクフィルムが被覆されている状態である。シュリンクフィルムが被覆されていない部位が1割未満であると、上述したように包装体自体の剛性が不足するために問題が発生する場合がある。一方9割を越えると、包装フィルムが解舒途中のストランドの走行動作を妨げる場合も発生することとなるため好ましくない。以上のような観点から、より好ましくはシュリンク包装を施した略円柱形状を有するガラスロービングを包装した包装体について、略円柱の底面または上面の少なくとも一方の面積の15%から85%に熱収縮フィルムが被覆されていることであって、さらに好ましくは全面積の20%から80%に熱収縮フィルムが被覆されていることであり、一層好ましくは全面積の30%から70%に熱収縮フィルムが被覆されていることである。
【0011】
略円柱形状の底面あるいは上面の何れかの面部にある未被覆部分の形状については、どのような形状であってもよいが、例えば略楕円形状などの鋭角な部分がない輪郭を有する形状である方が、ストランドの走行中にシュリンク包装フィルムに引っ掛かる等の解舒における走行動作の問題が発生しにくい形状となるため好ましい。また包装体の略円柱形状の底面あるいは上面の何れかの面部にある未被覆部分の数は、1つであっても複数であってもよい。
【0012】
シュリンク包装フィルムの材質については、所定の加熱収縮性能を有する材料であれば、どのようなものであっても使用することができる。例えばポリオレフィン系フィルム、塩ビ製フィルム等を使用することができる。
【0013】
また本発明のガラスロービング包装体は、上述に加えシュリンク包装フィルムの未被覆部が略楕円形状であって、その最大開口径が100mm以上であるならば、ストランドの走行を妨げにくいため好ましい。
【0014】
ガラスロービング包装体の底面あるいは上面のシュリンク包装フィルムの未被覆部が略楕円形状であって、その最大開口径が100mm以上であるとは、略円柱形状を呈する包装体の底面か、あるいは上面にあるシュリンク包装フィルムの被覆されていない開口状態の部位の形状が楕円形か、あるいは楕円形に類似した形状であり、かつその略楕円形状の開口部の最大径の寸法が100mm以上であることを表している。
【0015】
本発明のガラスロービング包装体は、上述に加えその形態が巻き高さ(h)と円柱の外径(2r)との間に1.1≦(2r/h)≦4の関係を満足するならば好適であるが、その形態のみに限定されるものではない。さらにガラスロービングを構成するストランドについて、その断面形状は、真円から扁平円、中空円、矩形等の多様な形状を採用することが可能である。
【0016】
また本発明のガラスロービング包装体は、上述に加え質量が25kg以上であるならば、ガラスロービング同士のストランド末端の接続回数を減らすことができるため好ましい。
【0017】
ここで、質量が25kg以上であるとは、ガラスロービングのみの質量ではなく、ガラスロービングに包装フィルムの質量を合わせた包装体の質量が25kg以上ということである。質量が25kg未満であるなら、積層させた場合であっても上述したような問題は起こりにくい。このため25kg以上であることが要件となる。そしてこのような観点からより好ましくは30kg以上とすることであり、さらに好ましくは35kg以上とすることである。
【0018】
また本発明のガラスロービング包装体は、上述に加え収縮率が50%を越えるシュリンク包装フィルムによって被覆されてなるものであれば、ガラスロービングの寸法に比較して大きめの包装フィルムを選択することができるので、ロービングをシュリンク前の包装フィルム内に入れる操作が行い易い。
【0019】
収縮率が50%を越えるシュリンク包装フィルムによって被覆されてなるとは、熱収縮前の包装フィルムに対して、熱収縮後の包装フィルムの寸法がどれだけ収縮するかというシュリンク性能を表すものであり、本発明のガラスロービング包装体では、上述のような作業性を考慮するなら、収縮率の大きいシュリンク包装フィルムを採用する方が好ましく、包装作業に不慣れな作業者がこの工程を担う場合であっても作業を容易にするためには、好ましくは50%以上の収縮率を有するシュリンク包装フィルムを使用するのがよい。ちなみに本発明の収縮率は、横収縮率をあらわしている。
【0020】
そして使用するシュリンク包装フィルムとしては、他の作業性を向上させるように袋の開口側にマーキングや目印、切れ込みを設けたり、予め所定の折れ目が生じるような特徴を持たせたりすることもでき、所定の彩色を施す等の工夫を行うこともできる。また本発明に係るシュリンク包装フィルムについては、公知の方法により帯電防止剤、酸化防止剤、潤滑剤、粘着剤やフィルム強化剤等の表面処理剤をフィルムの表面の所定箇所、あるいは全面に塗布、被覆させることで包装フィルムの性能をより向上させることも必要に応じて可能である。
【0021】
本発明のガラスロービング梱包体は、上記に記載のガラスロービング包装体の2以上が、基台上に整列梱包されてなることを特徴とする。
【0022】
ここで、上記に記載のガラスロービング包装体の2以上が、基台上に整列梱包されてなるとは、フィルムによってシュリンク包装を施した略円柱形状を有するガラスロービングを包装した包装体であって、前記シュリンク包装フィルムは厚さが20μm〜40μmであり、該フィルムにより前記ガラスロービングの底面または上面の少なくとも一方が、その面積の1割から9割の範囲まで被覆されて、中央部に未被覆部が形成されてなるガラスロービング包装体を少なくとも2個以上集積して基台上にて一体化して梱包したものであることを表している。
【0023】
基台については、どのような形態、材質のものであっても、ガラスロービング包装体を複数集積して配置することが可能であって、搬送等に耐えるだけの機械的な強度を有するものであれば使用することができる。基台としては、例えば木製、金属製、合成樹脂製、FRP製等の材料を単独あるいは複数組み合わせて構成し、複数のガラスロービング包装体を積載しても経時的に大きな変形を生じず、ガラスロービング包装体そのものに損傷を誘発するような破損を生じたりすることがない剛性を有するものであるならば使用可能である。また、この基台としては、車載したり搬送したりする際に、フォークリフト等の爪が挿入可能な構造を有し、さらに車載等して搬送する際にロープ等で基台を固定することもあるため、固定し易いような突起や開口部等を有する形状、例えばパレット形状であることが好ましい。
【0024】
また基台上に集積する形状や方法については、基台上に積載するガラスロービング包装体の個数や、ガラスロービング包装体の大きさ、さらに一つのガラスロービング包装体にどれだけの糸口を設けるかによって適宜選択できるものである。好ましい集積の整列形状として、最も典型的なものを例示するならば、一段につき縦横2列の配列とし、3〜5段の段組構造を採用することで積層化することができる。また整列集積の方法については、最下段から順次上段まで積み上げてもよいし、予め他の箇所で整列配列させた状態とし、その形状のまま基板上へと移送して積載してもよい。
【0025】
またガラスロービングの搬送途中での位置ずれなどを防止するため、基台上に集積されたガラスロービング包装体の所定個所に結束バンドなどを使用して相互に固定することができる。結束バンドとしてはポリプロピレン、ポリエチレンさらにPET(ポリエチレンテレフタレート)等が好適であるが、所定の性能を満足すれば他のものを採用してもよい。
【0026】
また、集積状態のガラスロービング包装体の上方から集積物の全体を覆うフィルム等としては、防塵等の所望される機能を有するものであれば種々の材質を採用することが可能であって、必要に応じてさらにシュリンク包装を採用してもよい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等の合成樹脂製のストレッチシート状物、シュリンクフィルム等を採用することができるが、所望の機能を有するものであれば他の材料についても採用することが可能である。
【0027】
また、前記の基台、結束バンド、ガラスロービング包装体を集積した集積物全体の被覆フィルム以外に必要に応じて本発明のガラスロービング梱包体に使用するものとしては、側面や底面の保護等を目的として採用する保護板がある。この保護板としては、ガラスロービング包装体を基台上に積載する時等にガラスロービングあるいはその包装体を汚れや衝撃、摩擦等による機械的な損傷等から効率的に保護するものである。このような材料としては、例えば軽量の段ボール板、軽量ゴムシート、ウレタンシート等を使用することによって、目的を達成することもできる。また、保護板の所定箇所にスリット、凹凸状の窪みや突起等を設け、予め基板に設けた同形状の部位に合致させることで基板の所定箇所に配設する構造を採用することも可能である。また、複数の保護板として所望の形状、材質を有する板状体を使用することによって、それぞれの配設位置に合わせた性能を実現することや、あるいはガラスロービング梱包体の機械的強度の補償を行うことも可能である。
【0028】
そして、前記のようなガラスロービング梱包体の保護板の配設については、必要に応じて被覆フィルムで集積状態のガラスロービングの被覆を行う前、あるいは被覆した後に、所定位置に保護板を配設することによって最終的なガラスロービング梱包体を構成するものであってもよい。
【0029】
さらに、必要に応じて前記基台の四隅に設けた挿入孔に、充分な強度を有し、基台と同材質、あるいは異材質による柱状物を挿入する等して直立させ、キーや係止突起他の適切な方法によって固定し、その柱状物の上部にさらに他の基台、あるいは他のガラスロービング梱包体を構成した後の基台の所定箇所に配設することによって、複数のガラスロービング梱包体を複数段に段組した集積状態とすることも可能である。
【0030】
本発明のガラスロービング梱包体の梱包方法は、シュリンク包装フィルムによってガラスロービングの上面または底面の少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲まで被覆して未被覆部を設ける被覆工程と、得られた2以上のガラスロービング包装体を基台上に配置する配設工程とを有することを特徴とする。
【0031】
ここで、シュリンク包装フィルムによってガラスロービングの上面または底面の少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲まで被覆して未被覆部を設ける被覆工程と、得られた2以上のガラスロービング包装体を基台上に配置する配設工程とを有するとは、次のようなものである。すなわち略円柱形状の上面あるいは底面の何れかの中央部に少なくとも1つの開口部、すなわち未被覆の部分を有するようにシュリンク包装フィルムを被覆させた後に、その状態のまま適切な加熱手段により加熱し、シュリンク包装フィルムを熱収縮させて略円柱形状のガラスロービング外形の形状に沿うように密着した状態にしてガラスロービング包装体とし、こうして得られた少なくとも2個のガラスロービング包装体を基台上に設置することでガラスロービング梱包体とすることを表している。
【0032】
シュリンク包装フィルムにてガラスロービングの上面あるいは底面に未被覆を設けるように被覆する被覆工程について、使用するシュリンク包装フィルムの形状は特に限定されない。すなわち帯状のシュリンク包装フィルムをロービングの周囲に巻き付けるようにし、熱融着などによって形を整えてガラスロービングの上面あるいは底面に未被覆を設けるようにすることもできる。また、予め袋状のシュリンク包装フィルムを用意し、ガラスロービングを袋状のシュリンク包装フィルムに収納することもできる。袋状のシュリンク包装フィルムを使用する場合には、袋の開口部を略円柱形状の上面あるいは底面の所定位置に合わせるか、あるいは一端完全に密封した後に略円柱形状の上面あるいは底面の所定位置に所定形状の開口を設けるような加工を施してもよい。
【0033】
シュリンク包装フィルムで被覆されたガラスロービングを加熱して収縮させる際にはどのような加熱手段を講じてもよい。例えばトンネル炉のような連続式加熱炉で、所定スケジュールで加熱を行うこともできるし、バッチ式の加熱炉を採用することも可能である。さらに必要に応じて熱風加熱機やハンディータイプの工業用ドライヤーなどを使用して1個づつ加熱していくことも可能である。
【0034】
得られた2以上のガラスロービング包装体を基台上に配置する工程では、どのような方法でガラスロービング包装体を基台上に配置するものでもよい。例えば人力に頼るものであってもよいし、搬送ロボットなどを使用するものであっても支障ない。
【発明の効果】
【0035】
(1)以上のように、本発明のガラスロービング包装体は、シュリンク包装フィルムによって略円柱形状を有するガラスロービングにシュリンク包装を施した包装体であって、前記フィルムは厚さが20μm〜40μmであり、前記ガラスロービングの底面または上面の少なくとも一方の面積に、その1割から9割の範囲まで該フィルムにより被覆されて未被覆部が形成されてなるため、ガラスロービングが積層された状態で解舒される場合にも上段にある包装体が解舒途中のガラスストランドの走行動作を妨げる現象が発生しがたく、解舒操作を一時的に停止させるような問題の発生を抑止することができ、解舒工程の効率を向上させることが可能となる。
【0036】
(2)さらに本発明のガラスロービング包装体は、シュリンク包装フィルムの未被覆部が略楕円形状であって、その最大開口径が100mm以上であるならば、ストランドの走行動作に支障をきたす確率が小さくなるので、解舒操作に係る工程管理を省力化することが可能となるものである。
【0037】
(3)また本発明のガラスロービング包装体は、質量が25kg以上であるならば、ストランド末端同士の連結操作の手間を少なくすることができ、しかも積層されて使用される場合でもスムーズな解舒が行えるので、ガラスロービング包装体に関わる一連の作業を効率化することが可能となるものである。
【0038】
(4)また本発明のガラスロービング包装体は、収縮率が50%を越えるシュリンク包装フィルムによって被覆されてなるものであれば、ガラスロービングを包装する作業が容易に行え、作業効率が高くなるのでロービングをシュリンク包装するに要する作業時間を短縮することが可能となる。
【0039】
(5)さらに本発明のガラスロービング梱包体は、上記に記載のガラスロービング包装体の2以上が、基台上に整列梱包されてなるものであるため、搬送に好都合であるばかりでなく、搬送先での解舒作業が容易であって、種々の用途で使用しやすいものである。
【0040】
(6)また本発明のガラスロービング梱包体の梱包方法は、シュリンク包装フィルムによってガラスロービングの上面または底面の少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲まで被覆して未被覆部を設ける被覆工程と、得られた2以上のガラスロービング包装体を基台上に配置する配設工程とを有するため、過度の梱包を施すことによる高額の費用を要することもなく、顧客の工程においてガラスストランドの走行停止などに起因する滞りのない製造工程を構築することができ、安定した品位のガラス繊維製品を提供することが容易となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に本発明のガラスロービング包装体及びガラスロービング包装体を集積したガラスロービング梱包体とその梱包方法について、実施例に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0042】
図1に本発明のガラスロービング包装体の写真を示し、図2にその説明のための斜視図を示す。
【0043】
ガラスロービング包装体10は、Eガラスのモノフィラメント200本を1本とし、複数本合糸して4800texとしたガラスストランド30を巻き取ったものを包装したものであって、その質量は54kgである。このガラスロービング包装体10の外形は、略円柱状を有する回巻体状であって、その側周面12及び上面13が25μmの厚みを有するオレフィン系シュリンク包装フィルム20で被覆されており、上面13には被覆部13aと未被覆部13bとがある。この未被覆部13bは略楕円形状であってその最大径の寸法が300mmとなっており、略円柱形の上面13の面積に対して4割の面積がオレフィン系シュリンク包装フィルム20で被覆された状態となっている。このオレフィン系シュリンク包装フィルム20が適度な剛性を有しており、被覆部がガラスロービング11の上面13または底面14の少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲までにあることにより、ストランド30をガラスロービング11の内層から解舒していくことによって最外層のみが残るような状態になった場合であっても自立することができ、適正な面積を有する被覆部が上側のシュリンク袋の脱落を抑止することにより、複数のガラスロービング包装体10を積層した状態でガラスストランド30の解舒が行われても包装体10が下段のガラスロービング包装体10へと簡単に崩落してしまうことはない。
【0044】
このガラスロービング包装体10は、次のような手順で作製されたものである。まずEガラスとなるように調整された原料が、ガラス溶融炉で均質に熔融されて溶融ガラスとなった後、溶融ガラスはブッシングのノズルよりモノフィラメントとして引き出されて集束剤を塗布してケーキに巻き取られて乾燥される。さらに複数のケーキからガラスストランド30が解舒されながら複数本引き揃えられて、綾を掛けられながら巻き取り装置(ワインダー)により巻き取られてロール外径寸法が420mm、内径寸法が90mm、ロール高さが270mmのガラスロービング11が作製される。次いでガラスロービング包装体10の包装手順は、このガラスロービング11の寸法に合わせオレフィン系シュリンク包装フィルム20で作成した袋体内にガラスロービング11を収納する。そしてシュリンク包装フィルム20の袋体に収納されたガラスロービング11を最高温度170℃に設定した連続加熱炉内にて加熱処理し、50%を越える収縮率で収縮させてガラスロービング包装体10を得ることになる。
【0045】
次いでガラスロービング包装体を集積したガラスロービング梱包体について説明する。図3には、図2のガラスロービング包装体10をパレット形状の木製基台60上に4段に積層し、計16個のガラスロービング包装体10を集積したガラスロービング梱包体50を示す。このガラスロービング梱包体50の梱包方法は以下のようになる。
【0046】
まず前記の包装手順により得られたガラスロービング包装体10の4つを整列配列することのできる面積を有する木製基台60に1つずつ搬送機を用いて整列させていき、この4つのガラスロービング包装体10を最下段として上段に同じように作製したガラスロービング包装体10を積み重ねて積層していき、4層の積層状態とする。そしてクリルでストランド30の末端同士を繋ぎ、各段を結束バンド80で固定した後に、その上から梱包袋(パレットシュリンク袋)70としてポリエチレン製のシュリンク袋を被せて加熱収縮させてガラスロービング梱包体50を得ることになる。
【実施例2】
【0047】
本発明のガラスロービング包装体10を積層した状態からの解舒性能を比較するための試験を以下の手順で行った。
【0048】
まず梱包する試験体のガラスロービング包装体10は、以下の手順で作製した。表1には、試験に使用した試験体の性状とその試験結果とをまとめて示す。
【0049】
各試験体は、実施例1と同様の手順で4800texのEガラス製のガラスロービング11を、その寸法、質量についても実施例1と同じものとなるように作製した。次いで試料No1と試料No.2は、フィルム厚みと材質、そして略円柱形状の上面の被覆面積比率がそれぞれ表1の条件となるようにシュリンク包装フィルム20を加熱して収縮率が約62%〜66%程度まで収縮させて、被覆処理を行い、ガラスロービング包装体10の試験体を得た。
【0050】
得られたガラスロービング包装体10の試験体をそれぞれ木製の基台上に2段に整列積層してガラスストランドの解舒操作を行い、その際に、最外層ストランドが崩落することによる引掛かりの有無、上段に残ったガラスロービング包装体10のシュリンク包装フィルムの崩落による引掛かりの有無、さらに解舒時のストランド走行がシュリンクフィルムにより妨げとなる引掛かりの発生有無について調査した。作製したガラスロービング包装体10の試験体の性状と評価結果は、表1のようになった。
【0051】
【表1】
【0052】
評価の結果、試験体No.1は、オレフィン系のシュリンク包装フィルム材質で、フィルム20の厚みが25μm、被覆部の面積比率が4割、未被覆部の最大寸法が300mmの特徴を有するガラスロービング包装体10であるが、解舒操作において引掛かりは全く発生せず、ガラスストランド30のスムーズな解舒操作が行えるものであり、崩落現象も発生しないものであった。
【0053】
また、試験体No.2は試験体No.1と同じ材質で、フィルム厚みを30μm、被覆部の面積比率を5割、略楕円形状の未被覆部の最大寸法を300mmとしたものであって、熱収縮後のシュリンク包装フィルム20が適正な剛性を有しており、解舒操作における問題は、試験体No.1と同様に発生しなかった。
【0054】
[比較例]次いで実施例2の比較例として、実施例2と同様の手順で試験体No.3と試験体No.4、試験体No.5を作製し実施例と同様の評価を行った。ただ、試験体No.3については、シュリンク包装フィルムはオレフィン系の材質であるもののフィルムの厚みを15μmとし、予め小さい寸法の袋体を準備して、被覆部の面積比率が4割、未被覆部の最大径寸法が300mmであり、解舒操作を行ったところ最外層ストランドの崩落による引掛かりが発生する結果となり、ロール単位で最後までの解舒が完了しなかったため、上段ガラスロービング崩落による引掛かりや解舒時のストランドの引掛かりを確認することはできなかった。
【0055】
試験体No.4については、フィルムの厚みが50μmで被覆部の面積比率が9.2割、未被覆部の最大径寸法が90mmであり、非常に剛性の高いシュリンク包装フィルムであるので、崩落などの問題は発生しないものの解舒時にストランドがシュリンク包装フィルムに引掛かり、解舒操作の効率が悪いものであった。
【0056】
【表2】
【0057】
試験体No.5については、フィルムの厚みは30μmで、被覆部の面積比率が0.9割と1割未満であって、未被覆部の最大径寸法が360mmであり、最外層ストランドの崩落による引掛かりは起こらなかったものの、上段に残っていたガラスロービング包装体の空になったシュリンク包装フィルムの崩落が発生する結果となり、それによる引掛かりが認められた。ただ、ストランドが残存するフィルムに引掛かることはなかった。
【0058】
以上の実施例と比較例についての一連の評価結果から、本発明のガラスロービング包装体は、ストランドの解舒操作中に発生するストランドの引掛かり現象が発生せず、SMC法、スプレーアップ法、フィラメントワインディング法、引き抜き法等の成形方法により繊維強化複合材料(FRP)を成形するに使用されるガラスロービング包装体として好ましいものであることが明瞭となった。また、このような本発明のガラスロービング包装体を複数積層したガラスロービング梱包体は、解舒操作が容易で効率的な解舒が行えるものであった。さらに、本発明のガラスロービング梱包体の梱包方法により、迅速かつ的確に本発明のガラスロービング梱包体を作製することができた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
上記本発明のガラスロービング包装体に関する発明は、ガラス繊維以外のアラミド繊維、炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の他の繊維にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のガラスロービング包装体の写真。
【図2】本発明のガラスロービング包装体の斜視図。
【図3】本発明のガラスロービング梱包体の斜視図。
【符号の説明】
【0061】
10 ガラスロービング包装体
11 ガラスロービング
12 側周面
13 上面
13a 被覆部
13b 未被覆部
14 底面
20 シュリンク包装フィルム
30 ストランド
50 ガラスロービング梱包体
60 基台
70 梱包袋
80 結束バンド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュリンク包装フィルムによって略円柱形状を有するガラスロービングにシュリンク包装を施した包装体であって、
前記フィルムは厚さが20μm〜40μmであり、前記ガラスロービングの底面または上面の少なくとも一方の面積に、その1割から9割の範囲まで該フィルムにより被覆されて未被覆部が形成されてなることを特徴とするガラスロービング包装体。
【請求項2】
シュリンク包装フィルムの未被覆部が略楕円形状であって、その最大開口径が100mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のガラスロービング包装体。
【請求項3】
質量が25kg以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガラスロービング包装体。
【請求項4】
収縮率が50%を越えるシュリンク包装フィルムによって被覆されてなることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のガラスロービング包装体。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載のガラスロービング包装体の2以上が、基台上に整列梱包されてなることを特徴とするガラスロービング梱包体。
【請求項6】
シュリンク包装フィルムによってガラスロービングの上面または底面の少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲まで被覆して未被覆部を設ける被覆工程と、得られた2以上のガラスロービング包装体を基台上に配置する配設工程とを有することを特徴とするガラスロービング梱包体の梱包方法。
【請求項1】
シュリンク包装フィルムによって略円柱形状を有するガラスロービングにシュリンク包装を施した包装体であって、
前記フィルムは厚さが20μm〜40μmであり、前記ガラスロービングの底面または上面の少なくとも一方の面積に、その1割から9割の範囲まで該フィルムにより被覆されて未被覆部が形成されてなることを特徴とするガラスロービング包装体。
【請求項2】
シュリンク包装フィルムの未被覆部が略楕円形状であって、その最大開口径が100mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のガラスロービング包装体。
【請求項3】
質量が25kg以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガラスロービング包装体。
【請求項4】
収縮率が50%を越えるシュリンク包装フィルムによって被覆されてなることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のガラスロービング包装体。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載のガラスロービング包装体の2以上が、基台上に整列梱包されてなることを特徴とするガラスロービング梱包体。
【請求項6】
シュリンク包装フィルムによってガラスロービングの上面または底面の少なくとも一方の面積の1割から9割の範囲まで被覆して未被覆部を設ける被覆工程と、得られた2以上のガラスロービング包装体を基台上に配置する配設工程とを有することを特徴とするガラスロービング梱包体の梱包方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2007−69985(P2007−69985A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119890(P2006−119890)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】
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