ガラスロール及びガラスロールの処理方法
【課題】ロール・ツー・ロール装置によって、ガラスフィルムに所定の処理を連続的に施す場合であっても、ガラスフィルムの破損を確実に低減する。
【解決手段】ガラスフィルム2をロール状に巻き取ったガラスロール1であって、ガラスフィルム2に樹脂フィルム4を取り付けるとともに、樹脂フィルム4の少なくとも一部が、ガラスフィルム2の巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に配置されるように構成した。
【解決手段】ガラスフィルム2をロール状に巻き取ったガラスロール1であって、ガラスフィルム2に樹脂フィルム4を取り付けるとともに、樹脂フィルム4の少なくとも一部が、ガラスフィルム2の巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に配置されるように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイや太陽電池に用いられるガラス基板や、有機EL照明に用いられるカバーガラスなどに使用されるガラスフィルムの梱包形態、並びに当該ガラスフィルムの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、近年では、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用のガラス基板を始めとする各種ガラス板において、更なる薄板化が要請されている。そのため、当該要請を受けて、フィルム状まで薄板化が進められた、所謂ガラスフィルムの開発が進められており、例えば特許文献1に開示されているように、200μm以下の厚みをなすガラスフィルムが開発されるに至っている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、ガラスフィルムの梱包形態として、ガラスフィルムをロール状に巻き取ったガラスロールを採用することが開示されている。当該梱包形態は、ガラスフィルムが、その薄さから良好な可撓性を有するという特性を利用したものであって、梱包後のガラスフィルムの占有スペースの省スペース化を図ることができる等の利点がある。
【0004】
さらに、例えば特許文献3には、当該ガラスロールを繰り出しながら供給し、ガラスフィルムの表面に機能性膜を形成し、その後、機能性膜が表面に形成されたガラスフィルムを再度巻き取ることで、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式で、ガラスフィルムに機能性膜を形成することが開示されている。このようにすれば、ガラスロールからガラスフィルムを順次巻き出すだけで、ガラスフィルムに対して連続的に成膜処理を行うことができるので便宜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−133174号公報
【特許文献2】特表2002−544104号公報
【特許文献3】特開2007−119322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献3に開示されているように、ロール・ツー・ロール方式を実行する装置(以下、ロール・ツー・ロール装置という)は、巻出部と巻取部とを備えており、この巻出部から巻取部に向かって順次ガラスフィルムを供給しながら、巻出部と巻取部の間でガラスフィルムに成膜等の所定の処理を施すように構成されている。したがって、ロール・ツー・ロール装置によってガラスフィルムに所定の処理を施す場合には、まず初めに、巻出部にセットしたガラスロールから巻き出されたガラスフィルムを巻取部まで誘導し、ガラスフィルムを巻出部と巻取部との間に掛け渡す必要がある。
【0007】
しかしながら、ガラスフィルムを最初に巻出部から巻取部まで誘導する際には、ガラスフィルムの始端部の姿勢が不安定となり易く、ガラスフィルムの始端部が装置構成部材と不当に接触や衝突を繰り返し、当該始端部周辺に微小傷が付くという事態を招く場合がある。そして、このような事態が生じると、当該微小傷を原因としてガラスフィルムの始端部周辺が破損するという不具合が生じ得る。
【0008】
また、ガラスフィルムの始端部周辺に破損が生じたときには、当該破損によりガラスフィルムが途中で切断されてしまう場合もある。この場合、ロール・ツー・ロール装置内でガラスフィルムに所期の張力が作用しなくなり、ガラスフィルムの長手方向の中間部等においても撓みやバタツキが生じてしまう。その結果、ガラスフィルムの始端部以外においても、装置構成部材との間で無用な接触等が生じ、ガラスフィルムの破損の拡大を招くおそれがあり、大きな問題となる。
【0009】
以上の実情に鑑み、本発明は、ロール・ツー・ロール装置によりガラスフィルムに所定の処理を施す場合であっても、ガラスフィルムの破損を確実に低減することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ガラスフィルムをロール状に巻き取ったガラスロールであって、前記ガラスフィルムに樹脂フィルムを取り付けるとともに、該樹脂フィルムの少なくとも一部が、前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に配置されていることに特徴づけられる。
【0011】
このような構成によれば、ロール・ツー・ロール装置の巻出部から巻取部まで最初にガラスフィルムを誘導する際に、当該誘導作業を、ガラスフィルムに比べて高い破壊靭性を有する樹脂フィルムを先頭として行うことができる。そして、ガラスフィルムは、樹脂フィルムに牽引されるようにして、樹脂フィルムの後からロール・ツー・ロール装置内に誘導されるので、ガラスフィルムに装置構成部材との不当な接触や衝突が生じ難くなる。したがって、当該誘導作業時にガラスフィルムに破損が生じるという事態を確実に低減することが可能となる。
【0012】
上記の構成において、前記樹脂フィルムが、前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部に連結されていてもよい。
【0013】
このようにすれば、樹脂フィルムを、ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に簡単且つ確実に位置させることができる。
【0014】
この場合、前記樹脂フィルムが、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部にも連結され、該樹脂フィルムの少なくとも一部が、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部よりも巻出方向後方側に配置されていることが好ましい。
【0015】
ロール・ツー・ロール装置は、巻出部と巻取部との間に一定の張力を維持する必要があるが、ガラスフィルムの巻出方向の終端部に樹脂フィルムを連結すれば、ガラスフィルムの終端部が巻出部から送り出された後も、樹脂フィルムを介してガラスフィルムに一定の張力を作用させることができる。したがって、ガラスフィルムの終端部が巻出部から送り出された後もガラスフィルムに対して所定の処理を安定して行うことができ、ガラスフィルムの有効利用に寄与し得る。
【0016】
また、複数のロール・ツー・ロール装置で処理を施す場合には、以下のような作用効果を享受することができる。すなわち、この場合には、先行するロール・ツー・ロール装置の処理において終端部として取り扱われていた部分は最後に巻き取られるため、その後続のロール・ツー・ロール装置の処理においては始端部として取り扱われる。したがって、このようにガラスフィルムの始端部と終端部のそれぞれに樹脂フィルムを連結すれば、ロール・ツー・ロール装置毎に、樹脂フィルムが連結されている側が始端部となるようにガラスロールを巻き戻さなくても、常に樹脂フィルムが連結されている側を始端部として取り扱うことができるので、効率的な処理が可能となる。
【0017】
上記の構成において、前記ガラスフィルムと前記樹脂フィルムとが弾性部材を介して連結されていることが好ましい。
【0018】
ガラスフィルムと樹脂フィルムを連結する際に、ガラスフィルムの幅方向中心線と、樹脂フィルムの幅方向中心線とが、同一直線上に存在しない状態で、これらをロール・ツー・ロール装置に供給した場合には、次のような不具合が生じるおそれがある。すなわち、樹脂フィルムとガラスフィルムとの互いの幅方向中心線がズレが生じていると、ロール・ツー・ロール装置によりガラスフィルムのズレが無理に矯正されて、樹脂フィルムとの連結部においてガラスフィルムに曲げや捩れの応力が作用し、ガラスフィルムに破損が生じるおそれがある。
【0019】
そこで、当該破損を防止すべく、上述のようにガラスフィルムと樹脂フィルムとを弾性部材を介して連結することが好ましい。このようにすれば、ガラスフィルムの幅方向中心線と樹脂フィルムとの幅方向中心線とが同一直線上に存在しなくても、ガラスフィルムに張力が作用した時点で弾性部材が変形して、ガラスフィルムと樹脂フィルムの互いの幅方向中心線のズレが吸収される。したがって、当該弾性部材によるズレ吸収効果により、ガラスフィルムに曲げや捩れの応力が生じ難くなるので、ガラスフィルムに生じる破損を防止することが可能となる。なお、ガラスフィルムの巻出方向の終端部にも、樹脂フィルムが連結されている場合には、ガラスフィルムの巻出方向の始端部と終端部の双方において、ガラスフィルムと樹脂フィルムが弾性部材を介して連結されていることが好ましい。
【0020】
この場合、前記弾性部材が、前記ガラスフィルムの幅方向中心線と前記樹脂フィルムの幅方向中心線とを含む領域を連結していることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、弾性部材が、ガラスフィルムの幅方向中心線を含む領域と、樹脂フィルムの幅方向中心線を含む領域を連結することになるので、弾性部材による連結部の面積を小さくしても両者を安定した姿勢で連結することができる。そのため、弾性部材による連結部の面積の狭小化を図ることによって、ガラスフィルムと樹脂フィルムの幅方向中心線のズレを弾性部材の変形によって吸収する際にガラスフィルムに作用する応力を可及的に低減することが可能となる。したがって、ガラスフィルムの破損を防止する観点からも効果的である。
【0022】
上記の構成において、前記ガラスフィルムの端部に前記樹脂フィルムの端部を重ねた状態で、前記ガラスフィルムと前記樹脂フィルムとが連結されていることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、ガラスフィルムと樹脂フィルムの互いの端面同士が直接接触することがないので、ガラスフィルムの破損を防止する上で有利となる。
【0024】
上記の構成において、前記ガラスフィルムの一方側の面に前記ガラスフィルムよりも長尺な樹脂フィルムを重ねて取り付けるとともに、該樹脂フィルムを前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部から食み出させてもよい。
【0025】
このようにすれば、樹脂フィルムでガラスフィルムの一方側の面を保護しつつ、ロール・ツー・ロール装置により、ガラスフィルムの他方側の面に所定の処理を施すことが可能となる。
【0026】
この場合、前記樹脂フィルムが、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部側からも食み出していることが好ましい。
【0027】
このようにすれば、同一の樹脂フィルムがガラスフィルムの巻出方向の前後両側に食み出すことになる。そのため、ガラスフィルムの終端部がロール・ツー・ロール装置の巻出部から送り出された後も、樹脂フィルムを介してガラスフィルムに一定の張力を作用させることができる。したがって、ガラスフィルムの終端部が巻出部から送り出された後も所定の処理を安定して行うことができるので、ガラスフィルムの有効利用を図ることが可能となる。
【0028】
また、複数のロール・ツー・ロール装置で処理を施す場合には、以下のような作用効果を享受することができる。すなわち、この場合には、先行するロール・ツー・ロール装置の処理において終端部として取り扱われていた部分は最後に巻き取られるため、その後続のロール・ツー・ロール装置の処理においては始端部として取り扱われる。したがって、このように樹脂フィルムをガラスフィルムの始端部と終端部とのそれぞれから食み出させれば、ロール・ツー・ロール装置毎に、樹脂フィルムが食み出している側が始端部となるようにガラスロールを巻き戻さなくても、常に樹脂フィルムが食み出している側を始端部として取り扱うことができるため、効率的な処理が可能となる。
【0029】
上記の構成において、複数の前記ガラスフィルムが、同一の前記樹脂フィルムに取り付けられていてもよい。
【0030】
このようにすれば、予めユーザー等の要望により一定長さに切断された複数の短尺のガラスフィルムをロール・ツー・ロール装置に供することができる。また、欠陥などの存在により所定長さに満たない段階で切断された複数の短尺なガラスフィルムであっても、ガラスロールの状態で梱包することができる。その結果、長尺なガラスフィルムに限らず、短尺なガラスフィルムに対しても、ロール・ツー・ロール装置を利用して所定の処理を施すことが可能となる。
【0031】
上記の構成において、前記樹脂フィルムが一方の面に重ねて取り付けられた前記ガラスフィルムの他方の面に、前記樹脂フィルムとは別体の樹脂フィルムを重ねて取り付けてもよい。
【0032】
このようにすれば、ガラスフィルムの表裏面が樹脂フィルムによって保護される。そして、ロール・ツー・ロール装置により所定の処理が施される直前に、当該処理を施す側の面の樹脂フィルムを剥がせば、問題なく処理を実行することが可能となる。
【0033】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ロール状に巻き取られたガラスフィルムを有するガラスロールに対して、ロール・ツー・ロール装置により連続的に所定の処理を行うガラスロールの処理方法であって、前記ガラスフィルムに樹脂フィルムを取り付けると共に、該樹脂フィルムの少なくとも一部を前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に配置して、該樹脂フィルムを先頭として前記ガラスフィルムを前記ロール・ツー・ロール装置内に誘導することに特徴づけられる。
【0034】
このような方法によれば、既に述べた作用効果を同様に享受することができる。
【0035】
上記の方法において、前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に位置する部分の樹脂フィルムの長さが、前記ロール・ツー・ロール装置内での前記ガラスフィルムの搬送経路の全長以上の長さを有することが好ましい。
【0036】
このようにすれば、ロール・ツー・ロール装置の内部は、稼働当初、樹脂フィルムのみとなるので、ロール・ツー・ロール装置の内部への誘導作業をガラスフィルムの破損を気にすることなく円滑に行うことが可能となる。
【0037】
上記の方法において、前記樹脂フィルムの少なくとも一部が、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部よりも巻出方向後方側にも配置されていることが好ましい。なお、ここでいう樹脂フィルムは、ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に配置した樹脂フィルムと一体であってもよいし、別体であってもよい。
【0038】
このようにすれば、既に述べた作用効果を同様に享受し得る。
【0039】
この場合、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部よりも巻出方向後方側に位置する部分の樹脂フィルムの長さが、前記ロール・ツー・ロール装置内での前記ガラスフィルムの搬送経路の全長以上の長さを有することが好ましい。
【0040】
このようにすれば、ガラスフィルムの巻出方向の終端部に所定の処理を施す時点においても、ガラスフィルムに張力を作用させることができる。したがって、ガラスフィルムの全長に亘って安定した処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0041】
以上のような本発明によれば、ロール・ツー・ロール装置の巻出部から巻取部まで最初にガラスフィルムを誘導する際に、当該誘導作業を、ガラスフィルムに取り付けられた樹脂フィルムを先頭にして行うことができる。したがって、ロール・ツー・ロール装置の装置構成部材との接触が生じ易い始端部は樹脂フィルムにより構成されるため、当該誘導作業時に、ガラスフィルムが、装置構成部材と接触して破損するという事態を可及的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガラスロールの全体構成を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係るガラスロールの処理に使用されるロール・ツー・ロール装置を示す概略図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す平面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムと樹脂フィルムとの連結部を示す平面図であって、(a)は、ガラスフィルムに張力が作用する前の状態を、(b)は、ガラスフィルムに張力が作用した後の状態をそれぞれ示している。
【図5】本発明の第4の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムと樹脂フィルムとの連結部を示す平面図であって、(a)は、ガラスフィルムに張力が作用する前の状態を、(b)は、ガラスフィルムに張力が作用した後の状態をそれぞれ示している。
【図6】(a)は、本発明の第5の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す平面図であって、(b)は、(a)の側面図である。
【図7】本発明の第6の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す平面図である。
【図8】(a)は、本発明の第7の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す平面図であって、(b)は、(a)のA−A断面図である。
【図9】第7の実施形態に係るガラスロールの処理に使用されるロール・ツー・ロール装置を示す概略図である。
【図10】(a)は、本発明の第7の実施形態の変形例に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す平面図であって、(b)は、(a)のB−B断面図である。
【図11】本発明に係るガラスロールの処理に使用されるロール・ツー・ロール装置の変形例を示す概略図である。
【図12】本発明に係るガラスロールの処理に使用されるロール・ツー・ロール装置の別の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0044】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るガラスロールの全体構成を示す斜視図である。このガラスロール1は、ガラスフィルム2を巻芯3の外周面にロール状に巻き取ったものである。このガラスフィルム2の巻出方向の始端部には、樹脂フィルム4が連結されており、この樹脂フィルム4の一部が、ガラスフィルム2の始端部から巻出方向の前方側に突出している。詳細には、この実施形態では、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4は、互いの端部を重ねた状態で、双方に跨るように粘着テープ5を貼着することによって連結されている。
【0045】
ガラスフィルム2は、オーバーフローダウンドロー法により成形されたものであって、厚みが1μm〜200μm(好ましくは10μm〜100μm)を呈するものである。このような厚みに設定した理由は、当該数値範囲の厚みであれば、ガラスフィルム2に対して適度な可撓性と強度を付与することができ、巻き取り時において支障を来たすことがないためである。換言すれば、ガラスフィルム2の厚みが1μm未満であると、強度不足によって取り扱いが面倒になり、ガラスフィルム2の厚みが200μmを超えると、可撓性が不十分となって巻き取り半径を不当に大きくせざるを得なくなるという不具合が生じ得る。
【0046】
ガラスフィルム2の幅は、この実施形態では、12.5mm以上であるが、中でも、100mm以上であることが好ましく、300mm以上であることがより好ましく、500mm以上であることが更に好ましい。なお、ガラスフィルム2は、小型の携帯電話用等の小画面ディスプレイから大型のテレビ受像機等の大画面ディスプレイに至るまで、多岐に亘るデバイスに使用されるので、ガラスフィルム2の幅は、最終的には、使用されるデバイスの基板の大きさに応じて適宜選択することが好ましい。
【0047】
ガラスフィルム2のガラス組成としては、シリカガラスやホウケイ酸ガラスなどのケイ酸塩ガラスなどの種々のガラス組成を使用することができるが、無アルカリガラスであることが好ましい。これは、ガラスフィルム2にアルカリ成分が含有されていると、所謂ソーダ吹きと称される現象が生じて構造的に粗となり、ガラスフィルム2を湾曲させた場合に、経年劣化により構造的に粗となった部分から破損が生じるおそれがあるためである。なお、ここでいう無アルカリガラスとは、アルカリ成分を実質的に含有していないガラスのことであって、具体的には、アルカリ金属酸化物が1000ppm以下(好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下)であることをいう。
【0048】
また、ガラスフィルム2の強度確保の観点からは、ガラスフィルム2の少なくとも幅方向両端面は、レーザー割断により切断された切断面により構成されていることが好ましい。このようにすれば、ガラスフィルム2の幅方向両端面が、マイクロクラック等の破損原因となる欠陥のない高強度断面となる。具体的には、レーザー割断を利用した場合には、切断後に研磨等を施さなくても、ガラスフィルム2の幅方向両端面の算術平均粗さRa(JIS B0601:2001に準拠)を0.1μm以下(好ましくは、0.05μm以下)とすることができる。ここで、レーザー割断とは、レーザーの加熱作用による膨張と、冷媒の冷却作用による収縮とによって生じる熱応力を利用することで、初期クラックを進展させてガラスフィルム2を切断する方法である。
【0049】
樹脂フィルム4の厚みや幅は、特に限定されるものではないが、ガラスフィルム2と同一のロール・ツー・ロール装置内を通過させることを考慮すれば、ガラスフィルム2と同程度の厚みや幅を有することが好ましい。具体的には、樹脂フィルム4の厚みは、1〜200μmであることが好ましく、樹脂フィルム4の幅は、ガラスフィルム2の幅の0.5〜2倍(好ましくは0.9〜1.5倍)である。なお、樹脂フィルム4には、ガラスフィルム2を牽引するだけの強度が必要となるため、樹脂フィルム4を形成する材質等を考慮して最終的に厚みや幅が決定することが好ましい。
【0050】
樹脂フィルム4としては、例えば、アイオノマーフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム、ナイロン(登録商標)フィルム(ポリアミドフィルム)、ポリイミドフィルム、セロファンなどの有機樹脂フィルム(合成樹脂フィルム)などを使用することができる。更に、緩衝性能と強度を同時に確保する観点からは、樹脂フィルム4として、ポリエチレン発泡樹脂製シートなどの発泡樹脂フィルムを使用することが好ましい。
【0051】
次に、以上のように構成されたガラスロール1に対して所定の処理を施すためのロール・ツー・ロール装置と、その装置によるガラスフィルム2の処理手順を簡単に説明する。
【0052】
図2は、ロール・ツー・ロール装置の一例を示す概略図である。このロール・ツー・ロール装置は、搬送経路の上流端に配置された巻出部11と、搬送経路の下流端に配置された巻取部12とを有しており、この巻出部11と巻取部12との間で、ガラスフィルム2に対して所定の処理を施すものである。
【0053】
詳細には、巻出部11にガラスロール1をセットした後、搬送ローラ13a〜13nによって、巻出部11にセットされたガラスロール1から巻き出されたガラスフィルム2を下流側に順次搬送しながら、所定の処理を連続的に施した後、巻取部12で所定の処理が施されたガラスフィルム2を順次巻き取って、再度ガラスロール1を製作するようになっている。
【0054】
この実施形態では、巻出部11と巻取部12との間の搬送経路上に、上流側から順に、洗浄液(例えば、水)が貯溜された洗浄室14と、洗浄室14の洗浄液に浸漬されたガラスフィルム2を熱風等により乾燥させる乾燥室15と、ガラスフィルム2に蓄えられた静電気を取り除く除電室16とが配置されており、ガラスフィルム2に対して、上流側から順に洗浄処理、乾燥処理、除電処理が施されるようになっている。なお、図中において、17は液切り部であって、18は表面処理部である。
【0055】
そして、上述のように、ロール・ツー・ロール装置によってガラスフィルム2に洗浄等の所定の処理を施すためには、まず初めに、巻出部11にセットしたガラスロール1から巻き出されたガラスフィルム2を巻取部12まで誘導して、巻出部11と巻取部12との間にガラスフィルム2を掛け渡す必要がある。この際、ガラスフィルム2の巻出方向の始端部を先頭として、ロール・ツー・ロール装置の内部にガラスフィルム2を誘導すると、ガラスフィルム2の始端部がロール・ツー・ロール装置の装置構成部材と不当に接触や衝突を繰り返して、破損を来たすおそれがある。そこで、図1に示したように、ガラスフィルム2の始端部に樹脂フィルム4を連結し、この樹脂フィルム4を先頭として、ロール・ツー・ロール装置の内部にガラスフィルム2を誘導するようにしている。
【0056】
すなわち、樹脂フィルム4は、ガラスフィルム2に比べて高い破壊靭性を有するため、装置構成部材と接触して微小傷が生じたとしても当該微小傷を原因として破断を来たすことがない。したがって、樹脂フィルム4を先頭として、ガラスフィルム2をロール・ツー・ロール装置の内部にガラスフィルム2を誘導すれば、ガラスフィルム2に装置構成部材との不当な接触により傷が生じるという事態を確実に低減することができる。
【0057】
ここで、ガラスフィルム2の破損を防止する観点からは、ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に位置する部分の樹脂フィルム4の長さ(後述する図3に示すD1)が、ロール・ツー・ロール装置の内部の搬送経路の全長以上であることが好ましい。このようにすれば、ロール・ツー・ロール装置の内部は、稼働当初、樹脂フィルム4のみとなるので、巻出部11から巻取部12までの誘導作業をガラスフィルム2の破損を気にすることなく円滑に行うことが可能となる。
【0058】
なお、上記の実施形態では、巻芯3にガラスフィルム2をロール状に巻き付けてガラスロール1を製作する場合を説明したが、ガラスフィルム2の表面を保護する観点からは、ガラスフィルム2にいずれか一方側の面に緩衝シート(図示省略)を重ねた状態で、ガラスフィルム2と緩衝シートとを一緒に巻芯3に巻き取るようにすることが好ましい。この場合、ロール・ツー・ロール装置は、処理前にガラスフィルム2から緩衝シートを分離させる構成と、処理後に再び緩衝シートをガラスフィルム2に重ねて巻き取る構成とを備えていることが好ましい(例えば、後述する図9に示す樹脂フィルム4の巻取部19及び巻出部20を参照)。
【0059】
また、上記の実施形態では、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4を粘着テープ5で貼着して連結する場合を説明したが、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4を接着剤で接着して連結するようにしてもよい。この場合、接着剤としては、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4との接着部を再度分離可能なものを使用することが好ましい。
【0060】
また、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4は、互いの端部を重ねずに、両者の端部を突き合わせた状態、或いは間隔を置いて対向させた状態で、その端部間に跨るように粘着テープ5を掛け渡すことで連結してもよい。
【0061】
図3は、本発明の第2の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す図である。この第2の実施形態に係るガラスロール1が、第1の実施形態に係るガラスロール1と相違するところは、ガラスフィルム2の巻出方向の始端部と終端部の両方に、それぞれ樹脂フィルム4を連結した点にある。
【0062】
ロール・ツー・ロール装置は、巻出部11と巻取部12との間に一定の張力を維持する必要があるが、ガラスフィルム2の巻出方向の終端部に樹脂フィルム4を連結すれば、ガラスフィルム2の終端部が巻出部11から送り出された後も、樹脂フィルム4を介してガラスフィルム2に一定の張力を作用させることができる。したがって、ガラスフィルム2の終端部が巻出部11から送り出された後も、ガラスフィルム2に対して上述した洗浄等の所定の処理を行うことが可能となる。その結果、ガラスフィルム2に含まれる未処理領域を少なくして、ガラスフィルム2の有効利用を図ることができる。
【0063】
なお、ガラスフィルム2の有効利用を図る観点からは、ガラスフィルム2の巻出方向の終端部よりも巻出方向後方側に位置する部分の樹脂フィルム4の長さD2が、ロール・ツー・ロール装置の内部の搬送経路の全長以上であることが好ましい。このようにすれば、ガラスフィルム2の巻出方向の終端部まで、洗浄等の処理を安定して行うことが可能となるので、ガラスフィルム2の有効利用をより確実に図ることができる。なお、このとき、ガラスフィルム2の巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に位置する部分の樹脂フィルム4の長さD1も、ロール・ツー・ロール装置の内部の搬送経路の全長以上であることがより好ましい。
【0064】
図4(a),(b)は、本発明の第3の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムと樹脂フィルムとの連結部を示す図である。この第3の実施形態に係るガラスロール1が、第1〜2の実施形態に係るガラスロール1と相違するところは、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4とを、弾性部材である弾性粘着テープ6を介して連結した点にある。
【0065】
ガラスフィルム2の幅方向中心線L1と、樹脂フィルム4の幅方向中心線L2とが同一直線上にない場合には、ロール・ツー・ロール装置によりガラスフィルム2のズレ(傾き)が無理に矯正されて、樹脂フィルム4との連結部においてガラスフィルム2に曲げや捩れの応力が作用し、ガラスフィルム2が破損するという不具合を来たすおそれがある。
【0066】
そこで、図4(a)に示すように、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4とを弾性粘着テープ6で連結し、このような不具合を解消するようにしている。すなわち、このように弾性粘着テープ6を介してガラスフィルム2と樹脂フィルム4とを連結すれば、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1と樹脂フィルム4の幅方向中心線L2とが同一直線上に存在しなくても、図4(b)に示すように、ガラスフィルム2に張力が作用した時点で弾性粘着テープ6が変形して、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4の互いの幅方向中心線L1,L2のズレを吸収することができる。
【0067】
詳細には、図4(a)に示すように、樹脂フィルム4の幅方向中心線L2に対して、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1が傾いた状態で、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1の両側に弾性粘着テープ6が貼着されている場合には、図4(b)に示すように、幅方向中心線L1の一方側に位置する弾性粘着テープ6が伸張し、幅方向中心線L1の他方側に位置する弾性粘着テープ6が収縮する変形が生じる。そして、弾性粘着テープ6の当該変形により、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1の傾きが修正され、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4の互いの幅方向中心線L1,L2が同一直線上で略一致することになる。したがって、ガラスフィルム2に直接曲げや捩れの応力が生じ難くなるので、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4の互いの幅方向中心線L1,L2が同一直線上にない場合であっても、ガラスフィルム2が破損するという事態を確実に防止することが可能となる。
【0068】
なお、図4(a)及び図4(b)では、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1と樹脂フィルム4の幅方向中心線L2とが角度を持って交差している場合を説明したが、中心線L1と中心線L2とが互いに平行である場合でも、同様に弾性粘着テープ6が変形して、中心線L1と中心線L2のズレを吸収することができる。
【0069】
また、ガラスフィルム2の巻出方向の終端部にも、樹脂フィルム4が連結されている場合には、ガラスフィルム2の巻出方向の始端部と終端部の双方において、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4とが弾性粘着テープ6を介して連結されていることが好ましい。
【0070】
なお、弾性粘着テープ6としては、例えば、基材がポリエステルフィルムで構成されたテープなどが挙げられる。また、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4とを連結する弾性部材は、弾性粘着テープ6に限らず、弾性接着剤であってもよい。
【0071】
図5(a),(b)は、本発明の第4の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムと樹脂フィルムとの連結部を示す図である。この第4の実施形態に係るガラスロール1が、第3の実施形態に係るガラスロール1と相違するところは、弾性部材としての弾性粘着テープ6が、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1と樹脂フィルム4の幅方向中心線L2とを含む領域(図示例では1箇所のみ)を連結している点にある。
【0072】
詳細には、弾性粘着テープ6の幅方向中心が、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1及び樹脂フィルム4の幅方向中心線L2と一致している。また、弾性粘着テープ6の幅は、ガラスフィルム2及び樹脂フィルムの幅よりも小さく、弾性粘着テープ6の貼着領域内に、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1と、樹脂フィルム4の幅方向中心線L2との交点が含まれている。
【0073】
このようにすれば、弾性粘着テープ6が、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1を含む領域と、樹脂フィルム4の幅方向中心線L2を含む領域を連結することになるので、弾性粘着テープ6による連結部の面積を小さくしても両者を安定した姿勢で連結することができる。そのため、当該連結部の狭小化によって、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4の幅方向中心線L1,L2のズレを弾性粘着テープ6によって吸収する際にガラスフィルム2に作用する応力を可及的に低減できる。したがって、ガラスフィルム2の破損を防止する観点からも効果的である。また、弾性粘着テープ6が、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4の幅方向中心線上に位置するので、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4の幅方向中心線L1,L2のズレを吸収するのに必要な弾性粘着テープ6の変形量を小さく抑えることもできる。
【0074】
なお、図5(a)及び図5(b)では、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1と樹脂フィルム4の幅方向中心線L2とが角度を持って交差している場合を説明したが、中心線L1と中心線L2とが互いに平行である場合でも、同様に弾性粘着テープ6が変形して、中心線L1と中心線L2のズレを吸収することができる。
【0075】
図6(a),(b)は、本発明の第5の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す図である。この第5の実施形態に係るガラスロール1が、第1〜第4の実施形態に係るガラスロール1と相違するところは、ガラスフィルム2よりも長尺な一枚の樹脂フィルム4の上にガラスフィルム2を重ねて取り付けるとともに、樹脂フィルム4をガラスフィルム2の巻出方向の少なくとも始端部から食み出させた点にある。なお、図示例では、樹脂フィルム4が、ガラスフィルム2の巻出方向の始端部と終端部の双方から食み出した状態を示している。
【0076】
このようにすれば、樹脂フィルム4でガラスフィルム2の一方側の面を保護しつつ、ロール・ツー・ロール装置により、ガラスフィルム2の他方側の面に所定の処理を施すことが可能となる。
【0077】
この場合、ガラスフィルム2は、樹脂フィルム4に剥離可能に接着されていることが好ましい。この場合、ガラスフィルム2は樹脂フィルム4に取り付けられた状態となるので、仮にガラスフィルム2に破損等が生じてもガラス片が周囲に飛散するという事態を防止することができる。また、樹脂フィルム4がロール・ツー・ロール装置の途中で破損により切断されるという事態は生じ難いので、仮にガラスフィルム2が途中で破損により切断されるような事態が生じても、ガラスフィルム2に一定の張力を作用させることが可能となる。そのため、ロール・ツー・ロール工程の途中停止を防止することができる。
【0078】
また、電極等が形成されるガラスフィルム2の有効面は、他部材との直接的な接触を極力避ける必要があるため、樹脂フィルム4は、ガラスフィルム2の有効面と反対側の面に取り付けられることが好ましい。
【0079】
図7は、本発明の第6の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す図である。この第6の実施形態に係るガラスロール1が、第5の実施形態に係るガラスロール1と相違するところは、一枚の樹脂フィルム4の上に、その長手方向に間隔を置いて複数のガラスフィルム2が取り付けられている点にある。
【0080】
このようにすれば、予め一定長さに切断された複数の短尺なガラスフィルム2であったり、欠陥などの存在により所定長さに満たない段階で切断された複数の短尺なガラスフィルム2であっても、ガラスロール1の状態で梱包することが可能となる。また、ガラスロール1の状態で梱包することで、短尺なガラスフィルム2であっても、ロール・ツー・ロール方式を利用して所定の処理を施すことが可能となる。
【0081】
なお、この場合には、一枚の樹脂フィルム4の上に、取り付けられるガラスフィルム2の大きさ(主として搬送方向の長さ)は、特に限定されるものではなく、相互に不一致であってもよい。
【0082】
図8(a),(b)は、本発明の第7の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す図である。この第7の実施形態に係るガラスロール1が、第5〜6の実施形態に係るガラスロール1と相違するところは、ガラスフィルム2の表裏面全体を両側から挟持するように2枚の樹脂フィルム4を取り付けた点にある。
【0083】
このようにすれば、ガラスフィルム2の表裏面全体を樹脂フィルム4によって保護することができる。また、ロール・ツー・ロール装置により所定の処理が施される直前に、洗浄等の所定の処理を施す必要がある側の面に取り付けられた樹脂フィルム4を剥がせば、所定の処理を問題なく実行することが可能となる。
【0084】
詳細には、この場合に使用されるロール・ツー・ロール装置の一例としては、図2に示したロール・ツー・ロール装置の構成に加えて、例えば、図9に示すように、ガラスフィルム2の一方側の面に取り付けられた樹脂フィルム4を最初の処理工程である洗浄室14の上流側で巻き取って、ガラスフィルム2の一方側の面から樹脂フィルム4を取り外す巻取部19と、最後の処理工程である除電室16の下流側で樹脂フィルム4を巻き出して、ガラスフィルム2の一方側の面に再び樹脂フィルム4を取り付ける巻出部20とを備えたものが挙げられる。
【0085】
なお、このようにガラスフィルム2の表裏面全体を樹脂フィルム4で覆う場合には、ガラスフィルム2の有効面側に位置する樹脂フィルム4は、ガラスフィルム2との間で接着等によって接合されていないことが好ましい。これは、有効面側に樹脂フィルム4を接着等により接合すると、ガラスフィルム2の有効面から樹脂フィルム4を引き剥がした後に、有効面に接着成分等の異物が残存するおそれがあるためである。すなわち、ガラスフィルム2の有効面側の樹脂フィルム4は、ガラスフィルム2の有効面と反対側の樹脂フィルム4のみに接着等により接合されていることが好ましい。
【0086】
また、図10(a),(b)に示すように、2枚の樹脂フィルム4で、複数のガラスフィルム2の表裏面全体を覆うようにしてもよい。
【0087】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で実施することができる。例えば、上記の実施形態では、図2及び図9に示すロール・ツー・ロール装置を用いて、巻出部11と巻取部12との間で、ガラスフィルム2を搬送ローラ13a〜nによって蛇行させながら搬送するようにしているが、図11に示すように、巻出部11と巻取部12との間で、ガラスフィルム2を搬送ローラ13によって直線状に搬送するようにしてもよい。
【0088】
また、図12に示すように、ガラスフィルム2を立てた状態で、巻出部11と巻取部12との間を直線状に搬送するようにしてもよい。このようにガラスフィルム2を立てた状態でロール・ツー・ロール方式での処理を行うと、洗浄室14を設けて洗浄処理を行う場合には洗浄液の液切れが良好になるという利点がある。また、搬送ローラ13とガラスフィルム2の表面が直接接触しないため、搬送ローラ13との接触によってガラスフィルム2の表面に傷が付くという事態を確実に防止することもできる。なお、この場合において、ガラスフィルム2がばたつく場合には、ガラスフィルム2の上方に搬送ローラを追加して、ガラスフィルム2の上下両側を搬送ローラによって支持するようにしてもよい。
【0089】
また、上記の実施形態では、ガラスフィルム2をオーバーフローダウンドロー法により成形する場合を説明したが、ガラスフィルム2は、スロットダウンドロー法やリドロー法等のダウンドロー法によって成形されたものであってもよい。このようにダウンドロー法を使用すれば、フロート法によってガラスフィルム2を成形した場合のように、ガラスフィルム2の表面が錫等で汚染されていないので、ガラスフィルム2の表面を未研磨面のまま使用することができるという利点がある。ガラスロール1は、厚みの薄いガラスフィルム2を対象とするものなので、未研磨面のまま使用できるということは、ガラスフィルム2の破損リスクを低減する上でも非常に有利となる。なお、ガラスフィルム2の表面の平滑性を確保する観点からは、ダウンドロー法の中でも、オーバーフローダウンドロー法やリドロー法を採用するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイや太陽電池等のデバイスに使用されるガラス基板、及び有機EL照明のカバーガラスに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 ガラスロール
2 ガラスフィルム
3 巻芯
4 樹脂フィルム
5 粘着テープ
6 弾性粘着テープ(弾性部材)
11 巻出部
12 巻取部
14 洗浄室
15 乾燥室
16 除電室
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイや太陽電池に用いられるガラス基板や、有機EL照明に用いられるカバーガラスなどに使用されるガラスフィルムの梱包形態、並びに当該ガラスフィルムの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、近年では、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用のガラス基板を始めとする各種ガラス板において、更なる薄板化が要請されている。そのため、当該要請を受けて、フィルム状まで薄板化が進められた、所謂ガラスフィルムの開発が進められており、例えば特許文献1に開示されているように、200μm以下の厚みをなすガラスフィルムが開発されるに至っている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、ガラスフィルムの梱包形態として、ガラスフィルムをロール状に巻き取ったガラスロールを採用することが開示されている。当該梱包形態は、ガラスフィルムが、その薄さから良好な可撓性を有するという特性を利用したものであって、梱包後のガラスフィルムの占有スペースの省スペース化を図ることができる等の利点がある。
【0004】
さらに、例えば特許文献3には、当該ガラスロールを繰り出しながら供給し、ガラスフィルムの表面に機能性膜を形成し、その後、機能性膜が表面に形成されたガラスフィルムを再度巻き取ることで、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式で、ガラスフィルムに機能性膜を形成することが開示されている。このようにすれば、ガラスロールからガラスフィルムを順次巻き出すだけで、ガラスフィルムに対して連続的に成膜処理を行うことができるので便宜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−133174号公報
【特許文献2】特表2002−544104号公報
【特許文献3】特開2007−119322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献3に開示されているように、ロール・ツー・ロール方式を実行する装置(以下、ロール・ツー・ロール装置という)は、巻出部と巻取部とを備えており、この巻出部から巻取部に向かって順次ガラスフィルムを供給しながら、巻出部と巻取部の間でガラスフィルムに成膜等の所定の処理を施すように構成されている。したがって、ロール・ツー・ロール装置によってガラスフィルムに所定の処理を施す場合には、まず初めに、巻出部にセットしたガラスロールから巻き出されたガラスフィルムを巻取部まで誘導し、ガラスフィルムを巻出部と巻取部との間に掛け渡す必要がある。
【0007】
しかしながら、ガラスフィルムを最初に巻出部から巻取部まで誘導する際には、ガラスフィルムの始端部の姿勢が不安定となり易く、ガラスフィルムの始端部が装置構成部材と不当に接触や衝突を繰り返し、当該始端部周辺に微小傷が付くという事態を招く場合がある。そして、このような事態が生じると、当該微小傷を原因としてガラスフィルムの始端部周辺が破損するという不具合が生じ得る。
【0008】
また、ガラスフィルムの始端部周辺に破損が生じたときには、当該破損によりガラスフィルムが途中で切断されてしまう場合もある。この場合、ロール・ツー・ロール装置内でガラスフィルムに所期の張力が作用しなくなり、ガラスフィルムの長手方向の中間部等においても撓みやバタツキが生じてしまう。その結果、ガラスフィルムの始端部以外においても、装置構成部材との間で無用な接触等が生じ、ガラスフィルムの破損の拡大を招くおそれがあり、大きな問題となる。
【0009】
以上の実情に鑑み、本発明は、ロール・ツー・ロール装置によりガラスフィルムに所定の処理を施す場合であっても、ガラスフィルムの破損を確実に低減することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ガラスフィルムをロール状に巻き取ったガラスロールであって、前記ガラスフィルムに樹脂フィルムを取り付けるとともに、該樹脂フィルムの少なくとも一部が、前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に配置されていることに特徴づけられる。
【0011】
このような構成によれば、ロール・ツー・ロール装置の巻出部から巻取部まで最初にガラスフィルムを誘導する際に、当該誘導作業を、ガラスフィルムに比べて高い破壊靭性を有する樹脂フィルムを先頭として行うことができる。そして、ガラスフィルムは、樹脂フィルムに牽引されるようにして、樹脂フィルムの後からロール・ツー・ロール装置内に誘導されるので、ガラスフィルムに装置構成部材との不当な接触や衝突が生じ難くなる。したがって、当該誘導作業時にガラスフィルムに破損が生じるという事態を確実に低減することが可能となる。
【0012】
上記の構成において、前記樹脂フィルムが、前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部に連結されていてもよい。
【0013】
このようにすれば、樹脂フィルムを、ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に簡単且つ確実に位置させることができる。
【0014】
この場合、前記樹脂フィルムが、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部にも連結され、該樹脂フィルムの少なくとも一部が、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部よりも巻出方向後方側に配置されていることが好ましい。
【0015】
ロール・ツー・ロール装置は、巻出部と巻取部との間に一定の張力を維持する必要があるが、ガラスフィルムの巻出方向の終端部に樹脂フィルムを連結すれば、ガラスフィルムの終端部が巻出部から送り出された後も、樹脂フィルムを介してガラスフィルムに一定の張力を作用させることができる。したがって、ガラスフィルムの終端部が巻出部から送り出された後もガラスフィルムに対して所定の処理を安定して行うことができ、ガラスフィルムの有効利用に寄与し得る。
【0016】
また、複数のロール・ツー・ロール装置で処理を施す場合には、以下のような作用効果を享受することができる。すなわち、この場合には、先行するロール・ツー・ロール装置の処理において終端部として取り扱われていた部分は最後に巻き取られるため、その後続のロール・ツー・ロール装置の処理においては始端部として取り扱われる。したがって、このようにガラスフィルムの始端部と終端部のそれぞれに樹脂フィルムを連結すれば、ロール・ツー・ロール装置毎に、樹脂フィルムが連結されている側が始端部となるようにガラスロールを巻き戻さなくても、常に樹脂フィルムが連結されている側を始端部として取り扱うことができるので、効率的な処理が可能となる。
【0017】
上記の構成において、前記ガラスフィルムと前記樹脂フィルムとが弾性部材を介して連結されていることが好ましい。
【0018】
ガラスフィルムと樹脂フィルムを連結する際に、ガラスフィルムの幅方向中心線と、樹脂フィルムの幅方向中心線とが、同一直線上に存在しない状態で、これらをロール・ツー・ロール装置に供給した場合には、次のような不具合が生じるおそれがある。すなわち、樹脂フィルムとガラスフィルムとの互いの幅方向中心線がズレが生じていると、ロール・ツー・ロール装置によりガラスフィルムのズレが無理に矯正されて、樹脂フィルムとの連結部においてガラスフィルムに曲げや捩れの応力が作用し、ガラスフィルムに破損が生じるおそれがある。
【0019】
そこで、当該破損を防止すべく、上述のようにガラスフィルムと樹脂フィルムとを弾性部材を介して連結することが好ましい。このようにすれば、ガラスフィルムの幅方向中心線と樹脂フィルムとの幅方向中心線とが同一直線上に存在しなくても、ガラスフィルムに張力が作用した時点で弾性部材が変形して、ガラスフィルムと樹脂フィルムの互いの幅方向中心線のズレが吸収される。したがって、当該弾性部材によるズレ吸収効果により、ガラスフィルムに曲げや捩れの応力が生じ難くなるので、ガラスフィルムに生じる破損を防止することが可能となる。なお、ガラスフィルムの巻出方向の終端部にも、樹脂フィルムが連結されている場合には、ガラスフィルムの巻出方向の始端部と終端部の双方において、ガラスフィルムと樹脂フィルムが弾性部材を介して連結されていることが好ましい。
【0020】
この場合、前記弾性部材が、前記ガラスフィルムの幅方向中心線と前記樹脂フィルムの幅方向中心線とを含む領域を連結していることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、弾性部材が、ガラスフィルムの幅方向中心線を含む領域と、樹脂フィルムの幅方向中心線を含む領域を連結することになるので、弾性部材による連結部の面積を小さくしても両者を安定した姿勢で連結することができる。そのため、弾性部材による連結部の面積の狭小化を図ることによって、ガラスフィルムと樹脂フィルムの幅方向中心線のズレを弾性部材の変形によって吸収する際にガラスフィルムに作用する応力を可及的に低減することが可能となる。したがって、ガラスフィルムの破損を防止する観点からも効果的である。
【0022】
上記の構成において、前記ガラスフィルムの端部に前記樹脂フィルムの端部を重ねた状態で、前記ガラスフィルムと前記樹脂フィルムとが連結されていることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、ガラスフィルムと樹脂フィルムの互いの端面同士が直接接触することがないので、ガラスフィルムの破損を防止する上で有利となる。
【0024】
上記の構成において、前記ガラスフィルムの一方側の面に前記ガラスフィルムよりも長尺な樹脂フィルムを重ねて取り付けるとともに、該樹脂フィルムを前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部から食み出させてもよい。
【0025】
このようにすれば、樹脂フィルムでガラスフィルムの一方側の面を保護しつつ、ロール・ツー・ロール装置により、ガラスフィルムの他方側の面に所定の処理を施すことが可能となる。
【0026】
この場合、前記樹脂フィルムが、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部側からも食み出していることが好ましい。
【0027】
このようにすれば、同一の樹脂フィルムがガラスフィルムの巻出方向の前後両側に食み出すことになる。そのため、ガラスフィルムの終端部がロール・ツー・ロール装置の巻出部から送り出された後も、樹脂フィルムを介してガラスフィルムに一定の張力を作用させることができる。したがって、ガラスフィルムの終端部が巻出部から送り出された後も所定の処理を安定して行うことができるので、ガラスフィルムの有効利用を図ることが可能となる。
【0028】
また、複数のロール・ツー・ロール装置で処理を施す場合には、以下のような作用効果を享受することができる。すなわち、この場合には、先行するロール・ツー・ロール装置の処理において終端部として取り扱われていた部分は最後に巻き取られるため、その後続のロール・ツー・ロール装置の処理においては始端部として取り扱われる。したがって、このように樹脂フィルムをガラスフィルムの始端部と終端部とのそれぞれから食み出させれば、ロール・ツー・ロール装置毎に、樹脂フィルムが食み出している側が始端部となるようにガラスロールを巻き戻さなくても、常に樹脂フィルムが食み出している側を始端部として取り扱うことができるため、効率的な処理が可能となる。
【0029】
上記の構成において、複数の前記ガラスフィルムが、同一の前記樹脂フィルムに取り付けられていてもよい。
【0030】
このようにすれば、予めユーザー等の要望により一定長さに切断された複数の短尺のガラスフィルムをロール・ツー・ロール装置に供することができる。また、欠陥などの存在により所定長さに満たない段階で切断された複数の短尺なガラスフィルムであっても、ガラスロールの状態で梱包することができる。その結果、長尺なガラスフィルムに限らず、短尺なガラスフィルムに対しても、ロール・ツー・ロール装置を利用して所定の処理を施すことが可能となる。
【0031】
上記の構成において、前記樹脂フィルムが一方の面に重ねて取り付けられた前記ガラスフィルムの他方の面に、前記樹脂フィルムとは別体の樹脂フィルムを重ねて取り付けてもよい。
【0032】
このようにすれば、ガラスフィルムの表裏面が樹脂フィルムによって保護される。そして、ロール・ツー・ロール装置により所定の処理が施される直前に、当該処理を施す側の面の樹脂フィルムを剥がせば、問題なく処理を実行することが可能となる。
【0033】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ロール状に巻き取られたガラスフィルムを有するガラスロールに対して、ロール・ツー・ロール装置により連続的に所定の処理を行うガラスロールの処理方法であって、前記ガラスフィルムに樹脂フィルムを取り付けると共に、該樹脂フィルムの少なくとも一部を前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に配置して、該樹脂フィルムを先頭として前記ガラスフィルムを前記ロール・ツー・ロール装置内に誘導することに特徴づけられる。
【0034】
このような方法によれば、既に述べた作用効果を同様に享受することができる。
【0035】
上記の方法において、前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に位置する部分の樹脂フィルムの長さが、前記ロール・ツー・ロール装置内での前記ガラスフィルムの搬送経路の全長以上の長さを有することが好ましい。
【0036】
このようにすれば、ロール・ツー・ロール装置の内部は、稼働当初、樹脂フィルムのみとなるので、ロール・ツー・ロール装置の内部への誘導作業をガラスフィルムの破損を気にすることなく円滑に行うことが可能となる。
【0037】
上記の方法において、前記樹脂フィルムの少なくとも一部が、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部よりも巻出方向後方側にも配置されていることが好ましい。なお、ここでいう樹脂フィルムは、ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に配置した樹脂フィルムと一体であってもよいし、別体であってもよい。
【0038】
このようにすれば、既に述べた作用効果を同様に享受し得る。
【0039】
この場合、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部よりも巻出方向後方側に位置する部分の樹脂フィルムの長さが、前記ロール・ツー・ロール装置内での前記ガラスフィルムの搬送経路の全長以上の長さを有することが好ましい。
【0040】
このようにすれば、ガラスフィルムの巻出方向の終端部に所定の処理を施す時点においても、ガラスフィルムに張力を作用させることができる。したがって、ガラスフィルムの全長に亘って安定した処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0041】
以上のような本発明によれば、ロール・ツー・ロール装置の巻出部から巻取部まで最初にガラスフィルムを誘導する際に、当該誘導作業を、ガラスフィルムに取り付けられた樹脂フィルムを先頭にして行うことができる。したがって、ロール・ツー・ロール装置の装置構成部材との接触が生じ易い始端部は樹脂フィルムにより構成されるため、当該誘導作業時に、ガラスフィルムが、装置構成部材と接触して破損するという事態を可及的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガラスロールの全体構成を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係るガラスロールの処理に使用されるロール・ツー・ロール装置を示す概略図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す平面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムと樹脂フィルムとの連結部を示す平面図であって、(a)は、ガラスフィルムに張力が作用する前の状態を、(b)は、ガラスフィルムに張力が作用した後の状態をそれぞれ示している。
【図5】本発明の第4の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムと樹脂フィルムとの連結部を示す平面図であって、(a)は、ガラスフィルムに張力が作用する前の状態を、(b)は、ガラスフィルムに張力が作用した後の状態をそれぞれ示している。
【図6】(a)は、本発明の第5の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す平面図であって、(b)は、(a)の側面図である。
【図7】本発明の第6の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す平面図である。
【図8】(a)は、本発明の第7の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す平面図であって、(b)は、(a)のA−A断面図である。
【図9】第7の実施形態に係るガラスロールの処理に使用されるロール・ツー・ロール装置を示す概略図である。
【図10】(a)は、本発明の第7の実施形態の変形例に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す平面図であって、(b)は、(a)のB−B断面図である。
【図11】本発明に係るガラスロールの処理に使用されるロール・ツー・ロール装置の変形例を示す概略図である。
【図12】本発明に係るガラスロールの処理に使用されるロール・ツー・ロール装置の別の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0044】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るガラスロールの全体構成を示す斜視図である。このガラスロール1は、ガラスフィルム2を巻芯3の外周面にロール状に巻き取ったものである。このガラスフィルム2の巻出方向の始端部には、樹脂フィルム4が連結されており、この樹脂フィルム4の一部が、ガラスフィルム2の始端部から巻出方向の前方側に突出している。詳細には、この実施形態では、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4は、互いの端部を重ねた状態で、双方に跨るように粘着テープ5を貼着することによって連結されている。
【0045】
ガラスフィルム2は、オーバーフローダウンドロー法により成形されたものであって、厚みが1μm〜200μm(好ましくは10μm〜100μm)を呈するものである。このような厚みに設定した理由は、当該数値範囲の厚みであれば、ガラスフィルム2に対して適度な可撓性と強度を付与することができ、巻き取り時において支障を来たすことがないためである。換言すれば、ガラスフィルム2の厚みが1μm未満であると、強度不足によって取り扱いが面倒になり、ガラスフィルム2の厚みが200μmを超えると、可撓性が不十分となって巻き取り半径を不当に大きくせざるを得なくなるという不具合が生じ得る。
【0046】
ガラスフィルム2の幅は、この実施形態では、12.5mm以上であるが、中でも、100mm以上であることが好ましく、300mm以上であることがより好ましく、500mm以上であることが更に好ましい。なお、ガラスフィルム2は、小型の携帯電話用等の小画面ディスプレイから大型のテレビ受像機等の大画面ディスプレイに至るまで、多岐に亘るデバイスに使用されるので、ガラスフィルム2の幅は、最終的には、使用されるデバイスの基板の大きさに応じて適宜選択することが好ましい。
【0047】
ガラスフィルム2のガラス組成としては、シリカガラスやホウケイ酸ガラスなどのケイ酸塩ガラスなどの種々のガラス組成を使用することができるが、無アルカリガラスであることが好ましい。これは、ガラスフィルム2にアルカリ成分が含有されていると、所謂ソーダ吹きと称される現象が生じて構造的に粗となり、ガラスフィルム2を湾曲させた場合に、経年劣化により構造的に粗となった部分から破損が生じるおそれがあるためである。なお、ここでいう無アルカリガラスとは、アルカリ成分を実質的に含有していないガラスのことであって、具体的には、アルカリ金属酸化物が1000ppm以下(好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下)であることをいう。
【0048】
また、ガラスフィルム2の強度確保の観点からは、ガラスフィルム2の少なくとも幅方向両端面は、レーザー割断により切断された切断面により構成されていることが好ましい。このようにすれば、ガラスフィルム2の幅方向両端面が、マイクロクラック等の破損原因となる欠陥のない高強度断面となる。具体的には、レーザー割断を利用した場合には、切断後に研磨等を施さなくても、ガラスフィルム2の幅方向両端面の算術平均粗さRa(JIS B0601:2001に準拠)を0.1μm以下(好ましくは、0.05μm以下)とすることができる。ここで、レーザー割断とは、レーザーの加熱作用による膨張と、冷媒の冷却作用による収縮とによって生じる熱応力を利用することで、初期クラックを進展させてガラスフィルム2を切断する方法である。
【0049】
樹脂フィルム4の厚みや幅は、特に限定されるものではないが、ガラスフィルム2と同一のロール・ツー・ロール装置内を通過させることを考慮すれば、ガラスフィルム2と同程度の厚みや幅を有することが好ましい。具体的には、樹脂フィルム4の厚みは、1〜200μmであることが好ましく、樹脂フィルム4の幅は、ガラスフィルム2の幅の0.5〜2倍(好ましくは0.9〜1.5倍)である。なお、樹脂フィルム4には、ガラスフィルム2を牽引するだけの強度が必要となるため、樹脂フィルム4を形成する材質等を考慮して最終的に厚みや幅が決定することが好ましい。
【0050】
樹脂フィルム4としては、例えば、アイオノマーフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム、ナイロン(登録商標)フィルム(ポリアミドフィルム)、ポリイミドフィルム、セロファンなどの有機樹脂フィルム(合成樹脂フィルム)などを使用することができる。更に、緩衝性能と強度を同時に確保する観点からは、樹脂フィルム4として、ポリエチレン発泡樹脂製シートなどの発泡樹脂フィルムを使用することが好ましい。
【0051】
次に、以上のように構成されたガラスロール1に対して所定の処理を施すためのロール・ツー・ロール装置と、その装置によるガラスフィルム2の処理手順を簡単に説明する。
【0052】
図2は、ロール・ツー・ロール装置の一例を示す概略図である。このロール・ツー・ロール装置は、搬送経路の上流端に配置された巻出部11と、搬送経路の下流端に配置された巻取部12とを有しており、この巻出部11と巻取部12との間で、ガラスフィルム2に対して所定の処理を施すものである。
【0053】
詳細には、巻出部11にガラスロール1をセットした後、搬送ローラ13a〜13nによって、巻出部11にセットされたガラスロール1から巻き出されたガラスフィルム2を下流側に順次搬送しながら、所定の処理を連続的に施した後、巻取部12で所定の処理が施されたガラスフィルム2を順次巻き取って、再度ガラスロール1を製作するようになっている。
【0054】
この実施形態では、巻出部11と巻取部12との間の搬送経路上に、上流側から順に、洗浄液(例えば、水)が貯溜された洗浄室14と、洗浄室14の洗浄液に浸漬されたガラスフィルム2を熱風等により乾燥させる乾燥室15と、ガラスフィルム2に蓄えられた静電気を取り除く除電室16とが配置されており、ガラスフィルム2に対して、上流側から順に洗浄処理、乾燥処理、除電処理が施されるようになっている。なお、図中において、17は液切り部であって、18は表面処理部である。
【0055】
そして、上述のように、ロール・ツー・ロール装置によってガラスフィルム2に洗浄等の所定の処理を施すためには、まず初めに、巻出部11にセットしたガラスロール1から巻き出されたガラスフィルム2を巻取部12まで誘導して、巻出部11と巻取部12との間にガラスフィルム2を掛け渡す必要がある。この際、ガラスフィルム2の巻出方向の始端部を先頭として、ロール・ツー・ロール装置の内部にガラスフィルム2を誘導すると、ガラスフィルム2の始端部がロール・ツー・ロール装置の装置構成部材と不当に接触や衝突を繰り返して、破損を来たすおそれがある。そこで、図1に示したように、ガラスフィルム2の始端部に樹脂フィルム4を連結し、この樹脂フィルム4を先頭として、ロール・ツー・ロール装置の内部にガラスフィルム2を誘導するようにしている。
【0056】
すなわち、樹脂フィルム4は、ガラスフィルム2に比べて高い破壊靭性を有するため、装置構成部材と接触して微小傷が生じたとしても当該微小傷を原因として破断を来たすことがない。したがって、樹脂フィルム4を先頭として、ガラスフィルム2をロール・ツー・ロール装置の内部にガラスフィルム2を誘導すれば、ガラスフィルム2に装置構成部材との不当な接触により傷が生じるという事態を確実に低減することができる。
【0057】
ここで、ガラスフィルム2の破損を防止する観点からは、ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に位置する部分の樹脂フィルム4の長さ(後述する図3に示すD1)が、ロール・ツー・ロール装置の内部の搬送経路の全長以上であることが好ましい。このようにすれば、ロール・ツー・ロール装置の内部は、稼働当初、樹脂フィルム4のみとなるので、巻出部11から巻取部12までの誘導作業をガラスフィルム2の破損を気にすることなく円滑に行うことが可能となる。
【0058】
なお、上記の実施形態では、巻芯3にガラスフィルム2をロール状に巻き付けてガラスロール1を製作する場合を説明したが、ガラスフィルム2の表面を保護する観点からは、ガラスフィルム2にいずれか一方側の面に緩衝シート(図示省略)を重ねた状態で、ガラスフィルム2と緩衝シートとを一緒に巻芯3に巻き取るようにすることが好ましい。この場合、ロール・ツー・ロール装置は、処理前にガラスフィルム2から緩衝シートを分離させる構成と、処理後に再び緩衝シートをガラスフィルム2に重ねて巻き取る構成とを備えていることが好ましい(例えば、後述する図9に示す樹脂フィルム4の巻取部19及び巻出部20を参照)。
【0059】
また、上記の実施形態では、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4を粘着テープ5で貼着して連結する場合を説明したが、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4を接着剤で接着して連結するようにしてもよい。この場合、接着剤としては、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4との接着部を再度分離可能なものを使用することが好ましい。
【0060】
また、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4は、互いの端部を重ねずに、両者の端部を突き合わせた状態、或いは間隔を置いて対向させた状態で、その端部間に跨るように粘着テープ5を掛け渡すことで連結してもよい。
【0061】
図3は、本発明の第2の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す図である。この第2の実施形態に係るガラスロール1が、第1の実施形態に係るガラスロール1と相違するところは、ガラスフィルム2の巻出方向の始端部と終端部の両方に、それぞれ樹脂フィルム4を連結した点にある。
【0062】
ロール・ツー・ロール装置は、巻出部11と巻取部12との間に一定の張力を維持する必要があるが、ガラスフィルム2の巻出方向の終端部に樹脂フィルム4を連結すれば、ガラスフィルム2の終端部が巻出部11から送り出された後も、樹脂フィルム4を介してガラスフィルム2に一定の張力を作用させることができる。したがって、ガラスフィルム2の終端部が巻出部11から送り出された後も、ガラスフィルム2に対して上述した洗浄等の所定の処理を行うことが可能となる。その結果、ガラスフィルム2に含まれる未処理領域を少なくして、ガラスフィルム2の有効利用を図ることができる。
【0063】
なお、ガラスフィルム2の有効利用を図る観点からは、ガラスフィルム2の巻出方向の終端部よりも巻出方向後方側に位置する部分の樹脂フィルム4の長さD2が、ロール・ツー・ロール装置の内部の搬送経路の全長以上であることが好ましい。このようにすれば、ガラスフィルム2の巻出方向の終端部まで、洗浄等の処理を安定して行うことが可能となるので、ガラスフィルム2の有効利用をより確実に図ることができる。なお、このとき、ガラスフィルム2の巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に位置する部分の樹脂フィルム4の長さD1も、ロール・ツー・ロール装置の内部の搬送経路の全長以上であることがより好ましい。
【0064】
図4(a),(b)は、本発明の第3の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムと樹脂フィルムとの連結部を示す図である。この第3の実施形態に係るガラスロール1が、第1〜2の実施形態に係るガラスロール1と相違するところは、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4とを、弾性部材である弾性粘着テープ6を介して連結した点にある。
【0065】
ガラスフィルム2の幅方向中心線L1と、樹脂フィルム4の幅方向中心線L2とが同一直線上にない場合には、ロール・ツー・ロール装置によりガラスフィルム2のズレ(傾き)が無理に矯正されて、樹脂フィルム4との連結部においてガラスフィルム2に曲げや捩れの応力が作用し、ガラスフィルム2が破損するという不具合を来たすおそれがある。
【0066】
そこで、図4(a)に示すように、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4とを弾性粘着テープ6で連結し、このような不具合を解消するようにしている。すなわち、このように弾性粘着テープ6を介してガラスフィルム2と樹脂フィルム4とを連結すれば、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1と樹脂フィルム4の幅方向中心線L2とが同一直線上に存在しなくても、図4(b)に示すように、ガラスフィルム2に張力が作用した時点で弾性粘着テープ6が変形して、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4の互いの幅方向中心線L1,L2のズレを吸収することができる。
【0067】
詳細には、図4(a)に示すように、樹脂フィルム4の幅方向中心線L2に対して、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1が傾いた状態で、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1の両側に弾性粘着テープ6が貼着されている場合には、図4(b)に示すように、幅方向中心線L1の一方側に位置する弾性粘着テープ6が伸張し、幅方向中心線L1の他方側に位置する弾性粘着テープ6が収縮する変形が生じる。そして、弾性粘着テープ6の当該変形により、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1の傾きが修正され、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4の互いの幅方向中心線L1,L2が同一直線上で略一致することになる。したがって、ガラスフィルム2に直接曲げや捩れの応力が生じ難くなるので、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4の互いの幅方向中心線L1,L2が同一直線上にない場合であっても、ガラスフィルム2が破損するという事態を確実に防止することが可能となる。
【0068】
なお、図4(a)及び図4(b)では、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1と樹脂フィルム4の幅方向中心線L2とが角度を持って交差している場合を説明したが、中心線L1と中心線L2とが互いに平行である場合でも、同様に弾性粘着テープ6が変形して、中心線L1と中心線L2のズレを吸収することができる。
【0069】
また、ガラスフィルム2の巻出方向の終端部にも、樹脂フィルム4が連結されている場合には、ガラスフィルム2の巻出方向の始端部と終端部の双方において、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4とが弾性粘着テープ6を介して連結されていることが好ましい。
【0070】
なお、弾性粘着テープ6としては、例えば、基材がポリエステルフィルムで構成されたテープなどが挙げられる。また、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4とを連結する弾性部材は、弾性粘着テープ6に限らず、弾性接着剤であってもよい。
【0071】
図5(a),(b)は、本発明の第4の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムと樹脂フィルムとの連結部を示す図である。この第4の実施形態に係るガラスロール1が、第3の実施形態に係るガラスロール1と相違するところは、弾性部材としての弾性粘着テープ6が、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1と樹脂フィルム4の幅方向中心線L2とを含む領域(図示例では1箇所のみ)を連結している点にある。
【0072】
詳細には、弾性粘着テープ6の幅方向中心が、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1及び樹脂フィルム4の幅方向中心線L2と一致している。また、弾性粘着テープ6の幅は、ガラスフィルム2及び樹脂フィルムの幅よりも小さく、弾性粘着テープ6の貼着領域内に、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1と、樹脂フィルム4の幅方向中心線L2との交点が含まれている。
【0073】
このようにすれば、弾性粘着テープ6が、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1を含む領域と、樹脂フィルム4の幅方向中心線L2を含む領域を連結することになるので、弾性粘着テープ6による連結部の面積を小さくしても両者を安定した姿勢で連結することができる。そのため、当該連結部の狭小化によって、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4の幅方向中心線L1,L2のズレを弾性粘着テープ6によって吸収する際にガラスフィルム2に作用する応力を可及的に低減できる。したがって、ガラスフィルム2の破損を防止する観点からも効果的である。また、弾性粘着テープ6が、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4の幅方向中心線上に位置するので、ガラスフィルム2と樹脂フィルム4の幅方向中心線L1,L2のズレを吸収するのに必要な弾性粘着テープ6の変形量を小さく抑えることもできる。
【0074】
なお、図5(a)及び図5(b)では、ガラスフィルム2の幅方向中心線L1と樹脂フィルム4の幅方向中心線L2とが角度を持って交差している場合を説明したが、中心線L1と中心線L2とが互いに平行である場合でも、同様に弾性粘着テープ6が変形して、中心線L1と中心線L2のズレを吸収することができる。
【0075】
図6(a),(b)は、本発明の第5の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す図である。この第5の実施形態に係るガラスロール1が、第1〜第4の実施形態に係るガラスロール1と相違するところは、ガラスフィルム2よりも長尺な一枚の樹脂フィルム4の上にガラスフィルム2を重ねて取り付けるとともに、樹脂フィルム4をガラスフィルム2の巻出方向の少なくとも始端部から食み出させた点にある。なお、図示例では、樹脂フィルム4が、ガラスフィルム2の巻出方向の始端部と終端部の双方から食み出した状態を示している。
【0076】
このようにすれば、樹脂フィルム4でガラスフィルム2の一方側の面を保護しつつ、ロール・ツー・ロール装置により、ガラスフィルム2の他方側の面に所定の処理を施すことが可能となる。
【0077】
この場合、ガラスフィルム2は、樹脂フィルム4に剥離可能に接着されていることが好ましい。この場合、ガラスフィルム2は樹脂フィルム4に取り付けられた状態となるので、仮にガラスフィルム2に破損等が生じてもガラス片が周囲に飛散するという事態を防止することができる。また、樹脂フィルム4がロール・ツー・ロール装置の途中で破損により切断されるという事態は生じ難いので、仮にガラスフィルム2が途中で破損により切断されるような事態が生じても、ガラスフィルム2に一定の張力を作用させることが可能となる。そのため、ロール・ツー・ロール工程の途中停止を防止することができる。
【0078】
また、電極等が形成されるガラスフィルム2の有効面は、他部材との直接的な接触を極力避ける必要があるため、樹脂フィルム4は、ガラスフィルム2の有効面と反対側の面に取り付けられることが好ましい。
【0079】
図7は、本発明の第6の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す図である。この第6の実施形態に係るガラスロール1が、第5の実施形態に係るガラスロール1と相違するところは、一枚の樹脂フィルム4の上に、その長手方向に間隔を置いて複数のガラスフィルム2が取り付けられている点にある。
【0080】
このようにすれば、予め一定長さに切断された複数の短尺なガラスフィルム2であったり、欠陥などの存在により所定長さに満たない段階で切断された複数の短尺なガラスフィルム2であっても、ガラスロール1の状態で梱包することが可能となる。また、ガラスロール1の状態で梱包することで、短尺なガラスフィルム2であっても、ロール・ツー・ロール方式を利用して所定の処理を施すことが可能となる。
【0081】
なお、この場合には、一枚の樹脂フィルム4の上に、取り付けられるガラスフィルム2の大きさ(主として搬送方向の長さ)は、特に限定されるものではなく、相互に不一致であってもよい。
【0082】
図8(a),(b)は、本発明の第7の実施形態に係るガラスロールのガラスフィルムを直線上に展開した状態を示す図である。この第7の実施形態に係るガラスロール1が、第5〜6の実施形態に係るガラスロール1と相違するところは、ガラスフィルム2の表裏面全体を両側から挟持するように2枚の樹脂フィルム4を取り付けた点にある。
【0083】
このようにすれば、ガラスフィルム2の表裏面全体を樹脂フィルム4によって保護することができる。また、ロール・ツー・ロール装置により所定の処理が施される直前に、洗浄等の所定の処理を施す必要がある側の面に取り付けられた樹脂フィルム4を剥がせば、所定の処理を問題なく実行することが可能となる。
【0084】
詳細には、この場合に使用されるロール・ツー・ロール装置の一例としては、図2に示したロール・ツー・ロール装置の構成に加えて、例えば、図9に示すように、ガラスフィルム2の一方側の面に取り付けられた樹脂フィルム4を最初の処理工程である洗浄室14の上流側で巻き取って、ガラスフィルム2の一方側の面から樹脂フィルム4を取り外す巻取部19と、最後の処理工程である除電室16の下流側で樹脂フィルム4を巻き出して、ガラスフィルム2の一方側の面に再び樹脂フィルム4を取り付ける巻出部20とを備えたものが挙げられる。
【0085】
なお、このようにガラスフィルム2の表裏面全体を樹脂フィルム4で覆う場合には、ガラスフィルム2の有効面側に位置する樹脂フィルム4は、ガラスフィルム2との間で接着等によって接合されていないことが好ましい。これは、有効面側に樹脂フィルム4を接着等により接合すると、ガラスフィルム2の有効面から樹脂フィルム4を引き剥がした後に、有効面に接着成分等の異物が残存するおそれがあるためである。すなわち、ガラスフィルム2の有効面側の樹脂フィルム4は、ガラスフィルム2の有効面と反対側の樹脂フィルム4のみに接着等により接合されていることが好ましい。
【0086】
また、図10(a),(b)に示すように、2枚の樹脂フィルム4で、複数のガラスフィルム2の表裏面全体を覆うようにしてもよい。
【0087】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で実施することができる。例えば、上記の実施形態では、図2及び図9に示すロール・ツー・ロール装置を用いて、巻出部11と巻取部12との間で、ガラスフィルム2を搬送ローラ13a〜nによって蛇行させながら搬送するようにしているが、図11に示すように、巻出部11と巻取部12との間で、ガラスフィルム2を搬送ローラ13によって直線状に搬送するようにしてもよい。
【0088】
また、図12に示すように、ガラスフィルム2を立てた状態で、巻出部11と巻取部12との間を直線状に搬送するようにしてもよい。このようにガラスフィルム2を立てた状態でロール・ツー・ロール方式での処理を行うと、洗浄室14を設けて洗浄処理を行う場合には洗浄液の液切れが良好になるという利点がある。また、搬送ローラ13とガラスフィルム2の表面が直接接触しないため、搬送ローラ13との接触によってガラスフィルム2の表面に傷が付くという事態を確実に防止することもできる。なお、この場合において、ガラスフィルム2がばたつく場合には、ガラスフィルム2の上方に搬送ローラを追加して、ガラスフィルム2の上下両側を搬送ローラによって支持するようにしてもよい。
【0089】
また、上記の実施形態では、ガラスフィルム2をオーバーフローダウンドロー法により成形する場合を説明したが、ガラスフィルム2は、スロットダウンドロー法やリドロー法等のダウンドロー法によって成形されたものであってもよい。このようにダウンドロー法を使用すれば、フロート法によってガラスフィルム2を成形した場合のように、ガラスフィルム2の表面が錫等で汚染されていないので、ガラスフィルム2の表面を未研磨面のまま使用することができるという利点がある。ガラスロール1は、厚みの薄いガラスフィルム2を対象とするものなので、未研磨面のまま使用できるということは、ガラスフィルム2の破損リスクを低減する上でも非常に有利となる。なお、ガラスフィルム2の表面の平滑性を確保する観点からは、ダウンドロー法の中でも、オーバーフローダウンドロー法やリドロー法を採用するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイや太陽電池等のデバイスに使用されるガラス基板、及び有機EL照明のカバーガラスに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 ガラスロール
2 ガラスフィルム
3 巻芯
4 樹脂フィルム
5 粘着テープ
6 弾性粘着テープ(弾性部材)
11 巻出部
12 巻取部
14 洗浄室
15 乾燥室
16 除電室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフィルムをロール状に巻き取ったガラスロールであって、
前記ガラスフィルムに樹脂フィルムを取り付けるとともに、該樹脂フィルムの少なくとも一部が、前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に配置されていることを特徴とするガラスロール。
【請求項2】
前記樹脂フィルムが、前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のガラスロール。
【請求項3】
前記樹脂フィルムが、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部にも連結されており、該樹脂フィルムの少なくとも一部が、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部よりも巻出方向後方側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のガラスロール。
【請求項4】
前記ガラスフィルムと前記樹脂フィルムとが弾性部材を介して連結されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のガラスロール。
【請求項5】
前記弾性部材が、前記ガラスフィルムの幅方向中心線と前記樹脂フィルムの幅方向中心線とを含む領域を連結していることを特徴とする請求項4に記載のガラスロール。
【請求項6】
前記ガラスフィルムの端部に前記樹脂フィルムの端部を重ねた状態で、前記ガラスフィルムと前記樹脂フィルムとが連結されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のガラスロール。
【請求項7】
前記ガラスフィルムの一方側の面に前記ガラスフィルムよりも長尺な樹脂フィルムを重ねて取り付けるとともに、該樹脂フィルムを前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部から食み出させたことを特徴とする請求項1に記載のガラスロール。
【請求項8】
前記樹脂フィルムが、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部側からも食み出していることを特徴とする請求項7に記載のガラスロール。
【請求項9】
複数の前記ガラスフィルムが、同一の前記樹脂フィルムに取り付けられていることを特徴とする請求項7又は8に記載のガラスロール。
【請求項10】
前記樹脂フィルムが一方の面に重ねて取り付けられた前記ガラスフィルムの他方の面に、前記樹脂フィルムとは別体の樹脂フィルムを重ねて取り付けたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のガラスロール。
【請求項11】
ロール状に巻き取られたガラスフィルムを有するガラスロールに対して、ロール・ツー・ロール装置により連続的に所定の処理を行うガラスロールの処理方法であって、
前記ガラスフィルムに樹脂フィルムを取り付けると共に、該樹脂フィルムの少なくとも一部を前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に配置して、該樹脂フィルムを先頭として前記ガラスフィルムを前記ロール・ツー・ロール装置内に誘導することを特徴とするガラスロールの処理方法。
【請求項12】
前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に位置する部分の樹脂フィルム4の長さが、前記ロール・ツー・ロール装置内での前記ガラスフィルムの搬送経路の全長以上の長さを有することを特徴とする請求項11に記載のガラスロールの処理方法。
【請求項13】
前記樹脂フィルムの少なくとも一部が、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部よりも巻出方向後方側にも配置されていることを特徴とする請求項11又は12に記載のガラスロールの処理方法。
【請求項14】
前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部よりも巻出方向後方側に位置する部分の樹脂フィルムの長さが、前記ロール・ツー・ロール装置内での前記ガラスフィルムの搬送経路の全長以上の長さを有することを特徴とする請求項13に記載のガラスロールの処理方法。
【請求項1】
ガラスフィルムをロール状に巻き取ったガラスロールであって、
前記ガラスフィルムに樹脂フィルムを取り付けるとともに、該樹脂フィルムの少なくとも一部が、前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に配置されていることを特徴とするガラスロール。
【請求項2】
前記樹脂フィルムが、前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のガラスロール。
【請求項3】
前記樹脂フィルムが、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部にも連結されており、該樹脂フィルムの少なくとも一部が、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部よりも巻出方向後方側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のガラスロール。
【請求項4】
前記ガラスフィルムと前記樹脂フィルムとが弾性部材を介して連結されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のガラスロール。
【請求項5】
前記弾性部材が、前記ガラスフィルムの幅方向中心線と前記樹脂フィルムの幅方向中心線とを含む領域を連結していることを特徴とする請求項4に記載のガラスロール。
【請求項6】
前記ガラスフィルムの端部に前記樹脂フィルムの端部を重ねた状態で、前記ガラスフィルムと前記樹脂フィルムとが連結されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のガラスロール。
【請求項7】
前記ガラスフィルムの一方側の面に前記ガラスフィルムよりも長尺な樹脂フィルムを重ねて取り付けるとともに、該樹脂フィルムを前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部から食み出させたことを特徴とする請求項1に記載のガラスロール。
【請求項8】
前記樹脂フィルムが、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部側からも食み出していることを特徴とする請求項7に記載のガラスロール。
【請求項9】
複数の前記ガラスフィルムが、同一の前記樹脂フィルムに取り付けられていることを特徴とする請求項7又は8に記載のガラスロール。
【請求項10】
前記樹脂フィルムが一方の面に重ねて取り付けられた前記ガラスフィルムの他方の面に、前記樹脂フィルムとは別体の樹脂フィルムを重ねて取り付けたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のガラスロール。
【請求項11】
ロール状に巻き取られたガラスフィルムを有するガラスロールに対して、ロール・ツー・ロール装置により連続的に所定の処理を行うガラスロールの処理方法であって、
前記ガラスフィルムに樹脂フィルムを取り付けると共に、該樹脂フィルムの少なくとも一部を前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に配置して、該樹脂フィルムを先頭として前記ガラスフィルムを前記ロール・ツー・ロール装置内に誘導することを特徴とするガラスロールの処理方法。
【請求項12】
前記ガラスフィルムの巻出方向の始端部よりも巻出方向前方側に位置する部分の樹脂フィルム4の長さが、前記ロール・ツー・ロール装置内での前記ガラスフィルムの搬送経路の全長以上の長さを有することを特徴とする請求項11に記載のガラスロールの処理方法。
【請求項13】
前記樹脂フィルムの少なくとも一部が、前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部よりも巻出方向後方側にも配置されていることを特徴とする請求項11又は12に記載のガラスロールの処理方法。
【請求項14】
前記ガラスフィルムの巻出方向の終端部よりも巻出方向後方側に位置する部分の樹脂フィルムの長さが、前記ロール・ツー・ロール装置内での前記ガラスフィルムの搬送経路の全長以上の長さを有することを特徴とする請求項13に記載のガラスロールの処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−132350(P2010−132350A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217055(P2009−217055)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】
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