説明

ガラス位置決め装置およびガラス位置決め方法

【課題】ガラスの寸法にバラつきがあったとしても、接着剤の塗布面の高さが一定になるようにガラスを位置決めすることを目的とする。
【解決手段】ガラスGに接着剤を塗布するために該ガラスを所定の位置に位置決めするガラス位置決め装置10であって、前記ガラスを挟んだ両側に配設され、前記ガラスを挟持する方向に沿って移動可能な位置決め部材31a、31bと、前記位置決め部材31a、31bの前記ガラス側にそれぞれ配設され、前記位置決め部材31a、31bが前記ガラスを挟持する方向の移動と共に移動され、前記ガラスを下方から固定する固定部材53a、53bと、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス位置決め装置およびガラス位置決め方法に関するものである。具体的には、接着剤塗布装置によって接着剤が塗布される自動車用のフロントガラスやリアガラスなどを位置決めする場合に用いられて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車用のフロントガラスやリアガラスなどのガラスを車体ボデーに取り付ける場合、ガラスの周縁にウレタン系の接着剤が塗布された後、車体ボデーに取り付けられる。ガラスを接着剤に塗布する工程では、ロボットなどの接着剤塗布装置がガラスの周縁に接着剤を自動的に塗布することで、その効率や精度の向上を図っている(特許文献1参照)。
【0003】
接着剤を塗布するとき、接着剤塗布装置はガラスが所定の位置に位置決めされていることを前提にしてガラスの周縁に接着剤を塗布している。そのため、従来から、ガラスを正確な位置に位置決めするためのガラス位置決め装置が用いられている。
【0004】
ここで、図5を参照して従来のガラス位置決め装置について説明する。
図5(a)は、従来のガラス位置決め装置の概略を示す平面図である。図5(b)は、従来のガラス位置決め装置の概略を示す側面図である。ガラス位置決め装置100の隣接した位置に、後述する図6に示す接着剤塗布装置140が配設されている。また、ガラス位置決め装置100は、ガラス搬送装置150のライン上に配設されている。
ここで、ガラス搬送装置150は、ガラスGの幅内で2列に配列されたベルト151を備えている。ガラス搬送装置150は、ベルト151上に載置されたガラスGをライン上の位置決め装置100が配設されている位置まで搬送する。
【0005】
ガラス位置決め装置100は、幅方向位置決め装置110、奥行き方向位置決め装置120、ガラス支持装置130を備えている。
幅方向位置決め装置110は、図5(a)に示すように、幅位置決め部材111a、111b、幅ラック部材112a、112b、ピニオン113、駆動装置114を備えている。幅位置決め部材111a、111bは、搬送されたガラスGを挟んで幅方向の両側に位置し、ベルト151の搬送面よりも上方に突出されている。幅ラック部材112a、112bはそれぞれ幅位置決め部材111a、111bから互いに近接する方向に延設されている。ピニオン113は、幅ラック部材112aおよび幅ラック部材112bのそれぞれに噛合している。駆動装置114は、幅位置決め部材111aをガラスGに近接または離間する方向に駆動する。
【0006】
奥行き方向位置決め装置120は、幅方向位置決め装置110と同様に構成されている。具体的には、奥行き方向位置決め装置120は、図5(a)に示すように、奥行き位置決め部材121a、121b、奥行きラック部材122a、122b、図示しないピニオン、駆動装置123を備えている。奥行き位置決め部材121a、121bは、搬送されたガラスGを挟んで奥行き方向の両側に位置し、ベルト151の搬送面よりも上方に突出されている。なお、ライン上流側の奥行き位置決め部材121bは、ガラス搬送時にはベルト151の搬送面よりも下方に位置し、ガラス通過後の奥行き位置決め時に上昇する。奥行きラック部材122a、122bはそれぞれ奥行き位置決め部材121a、121bから互いに近接する方向に延設されている。ピニオンは、上述した幅方向位置決め装置110のピニオン113の下方に配置され、奥行きラック部材122aおよび奥行きラック部材122bのそれぞれに噛合している。駆動装置123は、奥行き位置決め部材121aをガラスGに近接または離間する方向に駆動する。
【0007】
ガラス支持装置130は、図5(b)に示すように、複数の支持部材131、昇降装置132、複数の固定部材133を備えている。支持部材131は、所定のタイミングで昇降装置132によって上昇され、ガラスGの下面を下方から支持する。固定部材133は、所定のタイミングでガラスGの下面を吸着してガラスGを固定する。
【0008】
このように構成された従来のガラス位置決め装置100において、搬送されたガラスGの位置決めは、次のようにして行う。まず、昇降装置132が支持部材131を上昇させてガラスGをベルト151の搬送面よりも上方に支持する。
次に、幅方向位置決め装置110の駆動装置114および奥行き方向位置決め装置120の駆動装置123がそれぞれ駆動する。すると、幅位置決め部材111aがガラスG側に移動することで、幅ラック部材112a、112bおよびピニオン113を介して、幅位置決め部材111bもガラスG側に移動する。したがって、幅位置決め部材111a、111bはガラスGを幅方向に挟持する方向に移動する。
【0009】
同様に、奥行き位置決め部材121aがガラスG側に移動することで、奥行きラック部材122a、122bおよびピニオンを介して、奥行き位置決め部材121bもガラスG側に移動する。したがって、奥行き位置決め部材121a、121bはガラスGを奥行き方向に挟持する方向に移動する。各位置決め部材が移動することで、ガラスGは各位置決め部材に押されて、支持部材131上を摺動しながら各位置決め部材間の中心に移動する。
【0010】
次に、固定部材133がガラスGを吸着することで、ガラスGの位置決めが完了する。その後、幅方向位置決め装置110の駆動装置114および奥行き方向位置決め装置120の駆動装置123がそれぞれ駆動することで、幅位置決め部材111a、111bが互いに離間する方向に移動すると共に、奥行き位置決め部材121a、121bが互いに離間する方向に移動する。したがって、ガラスGの周囲には、接着剤塗布装置140がガラスGに接着剤を塗布するための空間が形成される。そして、接着剤塗布装置140は予めティーチングされた位置に沿って接着剤を塗布していく。
このとき、ガラスGはガラス位置決め装置100によって精度よく位置決めされているので、接着剤塗布装置140はガラスGの正しい位置に接着剤を塗布することができる。また、上述した支持部材131は、ガラスGの中央側を支持することからサイズが小さいガラスGであっても支持することができ、多品種のガラスGに対応して位置決めすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実公平6−3749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、同一サイズのガラスGであっても、ガラス製造時の製造誤差によって、サイズ寸法や板厚などのバラつきが生じてしまう。特に、中央が湾曲する曲げガラスにおいて中央の湾曲の度合(ダブりともいう)がバラついている場合、上述した従来のガラス位置決め装置100を用いて位置決めすると、接着剤塗布装置140が、正しい位置に接着剤を塗布することができないという問題がある。
【0013】
図6を参照して具体的に説明する。図6は、湾曲が異なるガラスGを支持部材131によって支持している状態を示す側面図である。ガラスG1は曲率が大きい、すなわち湾曲が深いガラスである。また、ガラスG2は曲率が小さい、すなわち湾曲が浅いガラスである。また、ガラスG3は湾曲が正常のガラスである。支持部材131はガラスGの中央側を支持することから、湾曲が異なる各ガラスGの縁部、すなわち塗布面の高さに相違が発生してしまう。したがって、ガラスG1は縁部が高い状態であり、ガラスG2は縁部が低い状態である。
【0014】
接着剤塗布装置140は、正常なガラスG2に対して接着剤を塗布するようにティーチングされている。したがって、ガラスG1に接着剤を塗布しようとすると接着剤塗布装置140のノズル141にガラスG1の縁部が干渉してしまう。一方、ガラスG2に接着剤を塗布しようとするとノズル141とガラスG2とが離れすぎているので、接着剤が垂れてしまい精度よく塗布することができない。
【0015】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、ガラスの寸法にバラつきがあったとしても、接着剤の塗布面の高さが一定になるようにガラスを位置決めすることができるガラス位置決め装置およびガラス位置決め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るガラス位置決め装置は、ガラスに接着剤を塗布するために該ガラスを所定の位置に位置決めするガラス位置決め装置であって、前記ガラスを挟んだ両側に配設され、前記ガラスを挟持する方向に沿って移動可能な位置決め部材と、前記位置決め部材の前記ガラス側にそれぞれ配設され、前記位置決め部材が前記ガラスを挟持する方向の移動と共に移動され、前記ガラスを下方から固定する固定部材と、を備えていることを特徴とする。
本発明に係るガラス位置決め方法は、ガラスに接着剤を塗布するために該ガラスを所定の位置に位置決めするガラス位置決め装置の位置決め方法であって、前記ガラスを挟んだ両側に配設された位置決め部材が、前記ガラスを挟持する工程と、前記位置決め部材のそれぞれ前記ガラス側であって且つ前記ガラスよりも下方に配設された固定部材が、前記位置決め部材の移動により前記位置決め部材に押圧されて移動する工程と、前記固定部材が、前記ガラスを下方から固定する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガラスの寸法にバラつきがあったとしても、接着剤の塗布面の高さが一定になるようにガラスを位置決めすることができるので、接着剤を精度よく塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ガラスに接着剤を塗布する製造ラインの一例を示す図である。
【図2】本実施形態に係るガラス位置決め装置を示す概略図である。
【図3】ガラス位置決め装置の動作を説明するための図である。
【図4】ガラス位置決め装置によって位置決めしたガラスに接着剤を塗布する状態を示す図である。
【図5】従来のガラス位置決め装置を示す概略図である。
【図6】従来のガラス位置決め装置によって位置決めしたガラスに接着剤を塗布する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、自動車用のフロントガラスやリアガラスなどのガラスを位置決めした状態で、ガラスの縁部にウレタン系の接着剤を塗布する。
まず、ガラスに接着剤を塗布する製造ラインについて図1を参照して説明する。図1は製造ラインの概略を示す平面図である。製造ライン1には、ガラスGに貼付されたテープを剥がす剥離工程2、ガラスGの縁部の塗布面の汚れを拭き取るワイプ工程3、ガラスGの縁部にガラスGと接着剤とを接着するためのプライマを塗布するプライマ工程4、ガラスGの縁部に接着剤を塗布する接着剤塗布工程5がある。各工程の近接した位置には、それぞれの作業を自動的に行うロボットが設置されている。
【0020】
また、製造ライン1には、ガラス搬送装置60が配設されている。ガラス搬送装置60は、ガラスGの幅内で2列に配列されたベルト61を備え、ベルト61上に載置されたガラスGを各工程に搬送する。なお、ガラスGは、平面視で台形状であり、中央が湾曲する曲げガラスである。ガラスGの縁部には所定の幅でセラミックが形成されている。ガラスGは、湾曲した外面がベルト61上に載置され、ガラスGの幅方向が搬送方向に対して直交する状態であり、奥行き方向が搬送方向に沿った状態で搬送される。
【0021】
接着剤塗布工程5には、接着剤を自動的に塗布する接着剤塗布装置70として、多関節アームを備えたロボットが設置されている。また、接着剤塗布工程5には、湾曲が異なるガラスであってもガラスを正確に位置決めすることができるガラス位置決め装置10が設置されている。
次に、本実施形態に係るガラス位置決め装置について図2を参照して説明する。図2(a)は、ガラス位置決め装置の概略を示す平面図である。図2(b)は、ガラス位置決め装置の概略を示す側面図である。
【0022】
ガラス位置決め装置10は、幅方向位置決め装置20、奥行き方向位置決め装置30、内側ガラス支持装置40、外側ガラス支持装置50を備えている。
幅方向位置決め装置20は、図2(a)に示すように、幅位置決め部材21a、21b、幅ラック部材22a、22b、ピニオン23、駆動装置24を備えている。幅位置決め部材21a、21bは、搬送されたガラスGを挟んで幅方向の両側に位置し、ベルト61の搬送面よりも上方に突出されている。幅ラック部材22a、22bはそれぞれ幅位置決め部材21a、21bから互いに近接する方向に延設されている。ピニオン23は、幅ラック部材22aおよび幅ラック部材22bのそれぞれに噛合している。駆動装置24は、幅位置決め部材21aをガラスGに近接または離間する方向に駆動する。駆動装置24は、例えば空圧式シリンダーなどが用いられる。
【0023】
奥行き方向位置決め装置30は、図2(a)に示すように、奥行き位置決め部材31a、31b、奥行きラック部材32a、32b、図示しないピニオン、駆動装置33、案内部材34、図示しないレールを備えている。なお、駆動装置33は、図2(a)では図示を省略し、図2(b)のみに図示している。奥行き位置決め部材31a、31bは、搬送されたガラスGを挟んで奥行き方向の両側に位置し、ベルト61の搬送面よりも上方に突出されている。本実施形態の奥行き位置決め部材31aは、ガラスGの幅方向に離間する一対で構成されている。同様に、奥行き位置決め部材31bも、ガラスGの幅方向に離間する一対で構成されている。なお、ライン上流側の奥行き位置決め部材31bは、ベルト61の搬送面よりも下方に下降できる。
【0024】
奥行きラック部材32a、32bはそれぞれ奥行き位置決め部材31a、31bから互いに近接する方向に延設されている。ピニオンは、上述した幅方向位置決め装置20のピニオン23の下方に配置され、奥行きラック部材32aおよび奥行きラック部材32bのそれぞれに噛合している。駆動装置33は、奥行き位置決め部材31aをガラスGに近接または離間する方向に駆動する(図2(b)参照)。駆動装置33は、例えば空圧式シリンダーなどが用いられる。案内部材34は、ガラスGの搬送方向と平行して2列に配列されている。案内部材34は、奥行き位置決め部材31a、31bがそれぞれガラスGに近接したり離間したりする移動をガイドする。図示しないレールは、案内部材34に対して平行に配設されている。
【0025】
内側ガラス支持装置40は、図2(b)に示すように、内側支持部材41、内側支持部材昇降装置42を備えている。本実施形態の内側支持部材41は、図2(a)に示すように、ガラスGの中央において幅方向および奥行き方向に離間した状態で4つ配置されている。内側支持部材41は、所定のタイミングで内側支持部材昇降装置42によって一斉に上昇することで、ガラスGの中央側の下面を下方から支持することができる。
【0026】
外側ガラス支持装置50は、図2(b)に示すように、外側支持部材51a、51b、昇降装置52a、52b、固定部材53a、53b、固定部材昇降装置54a、54b、戻し駆動装置55a、55b、ブレーキ装置56a、56bを備えている。なお、戻し駆動装置55bは、図2(a)にのみ図示している。外側支持部材51a、51bは、搬送されたガラスGの中央を挟んで奥行き方向の両側であって、奥行き位置決め部材31a、31bの内側に位置する。本実施形態の外側支持部材51aは、ガラスGの幅方向に離間する一対で構成されている。同様に、外側支持部材51bも、ガラスGの幅方向に離間する一対で構成されている。外側支持部材51a、51bは所定のタイミングで昇降装置52a、52bによって上昇することで、ガラスGの外側(縁部)の下面を下方から支持することができる。
【0027】
固定部材53aは、ガラスGの幅方向に離間する一対で構成されている。同様に、固定部材53bも、ガラスGの幅方向に離間する一対で構成されている。固定部材53a、53bは、それぞれ外側支持部材51a、51bの内側に位置している。固定部材53a、53bは、いわゆる吸着パットであり、ガラスGの下面を吸引することで吸着し、ガラスGが移動しないように固定する。固定部材53a、53bは所定のタイミングで固定部材昇降装置54a、54bによって下降することで、ガラスGの外側(縁部)の下面を下方から固定することができる。
なお、固定部材昇降装置54a、54bは、それぞれ昇降装置52a、52b上に設置され、固定部材53a、53bのみを昇降し、外側支持部材51a、51bを昇降することはできない。一方、昇降装置52a、52bは、固定部材53a、53bおよび外側支持部材51a、51bの下方に設置され固定部材53a、53bおよび外側支持部材51a、51bを一体的に昇降する。
【0028】
外側支持部材51aおよび固定部材53aは一体となって、奥行き位置決め部材31aの移動方向と同様、ガラスGに近接または離間する方向に沿って移動することができる。特に、外側支持部材51aおよび固定部材53aは、ガラスG側に移動する奥行き位置決め部材31aによって押圧されることで、奥行き位置決め部材31aと共に移動する。
同様に、外側支持部材51bおよび固定部材53bは一体となって、奥行き位置決め部材31bの移動方向と同様、ガラスGに近接または離間する方向に沿って移動することができる。特に、外側支持部材51bおよび固定部材53bは、ガラスG側に移動する奥行き位置決め部材31bによって押圧されることで、奥行き位置決め部材31bと共に移動する。
なお、外側支持部材51a、51bおよび固定部材53a、53bは、上述した案内部材34によってガラスGに近接または離間する方向の移動がガイドされる。すなわち、案内部材34は、外側支持部材51a、51bおよび固定部材53a、53bと、奥行き位置決め部材31a、31bとの両方の移動をガイドする。
【0029】
戻し駆動装置55a、55bは、ガラスG側に移動された外側支持部材51a、51bおよび固定部材53a、53bをそれぞれ、ガラスGから離間する方向に駆動する。戻し駆動装置55a、55bは、例えば空圧式シリンダーなどが用いられる。
ブレーキ装置56a、56bは、外側支持部材51a、51bおよび固定部材53a、53bをそれぞれ所定の位置で制動し、その移動を規制する。ブレーキ装置56a、56bは、それぞれ外側支持部材51a、51bと一体的に設けられているので、外側支持部材51a、51bおよび固定部材53a、53bと共に移動する。ブレーキ装置56a、56bは、例えば空圧式ディスクブレーキが用いられ、案内部材34に対して平行に配設された図示しないレールを挟み込むことで、外側支持部材51a、51bおよび固定部材53a、53bを所定の位置で制動する。
【0030】
次に、上述したガラス位置決め装置10における、ガラスGの位置決め方法について図3を参照して説明する。図3(a)〜図3(c)は、ガラス位置決め装置の動作を示す側面図である。なお、図3(a)〜図3(c)では、ガラス位置決め装置10の中央から右側のみを図示しているが、左側でも右側と同様に動作する。
まず、ガラス位置決め装置10では、大きなサイズのガラスGであっても位置決めできるように、幅位置決め部材21aおよび幅位置決め部材21b、奥行き位置決め部材31aおよび奥行き位置決め部材31bは、それぞれ互いに離間した状態で待機している。また、外側支持部材51aおよび固定部材53a、外側支持部材51bおよび固定部材53bは、それぞれ奥行き位置決め部材31a、31bの内側で当接した状態で待機している。プライマ工程4によってプライマが塗布されたガラスGは、ガラス搬送装置60によって接着剤塗布工程5、すなわちガラス位置決め装置10に搬送される。このとき、搬送されるガラスGと衝突しないように、ガラス位置決め装置10の奥行き位置決め部材31bは一時的にベルト61の搬送面よりも下降する。
【0031】
(工程1)
まず、図3(a)に示すように内側支持部材昇降装置42が内側支持部材41を上昇させてガラスGをベルト61の搬送面よりも上方で支持する。このとき、内側支持部材41は、ガラスGの中央側を支持していることから、小さなサイズのガラスGであっても支持することができる。
【0032】
(工程2)
次に、幅方向位置決め装置20の駆動装置24が幅位置決め部材21aをガラスG側に移動させる。すると、幅ラック部材22a、22bおよびピニオン23を介して、幅位置決め部材21bもガラスG側に移動する。したがって、幅位置決め部材21a、21bは互いに近接する方向に移動し、ガラスGを幅方向で挟持する。
【0033】
(工程3)
工程2が終了すると、奥行き方向位置決め装置30の駆動装置33が奥行き位置決め部材31aをガラスG側に移動させる。すると、奥行きラック部材32a、32bおよびピニオンを介して、奥行き位置決め部材31bもガラスG側に移動する。したがって、奥行き位置決め部材31a、31bは互いに近接する方向に案内部材34にガイドされながら移動し、ガラスGを奥行き方向で挟持する。
【0034】
このとき、外側支持部材51aおよび固定部材53aは、奥行き位置決め部材31aの内側に当接しているので、奥行き位置決め部材31aに押圧されながら奥行き位置決め部材31aと同方向に案内部材34にガイドされながら移動する。同様に、外側支持部材51bおよび固定部材53bは、奥行き位置決め部材31bに押圧されながら奥行き位置決め部材31bと同方向に案内部材34にガイドされながら移動する。なお、外側支持部材51a、51bには戻し駆動装置55a、55bが接続され、戻し駆動装置55a、55bは外側支持部材51a、51bを奥行き位置決め部材31a、31bに向かって弱い力で押し続けている。しかしながら、駆動装置33は戻し駆動装置55a、55bよりも力が強いため、駆動装置33は奥行き位置決め部材31a、31bを介して外側支持部材51a、51bを移動させることが可能である。
【0035】
上述した工程2と工程3とによって、ガラスGの縁端は幅位置決め部材21a、21bおよび奥行き位置決め部材31a、31bに押されて、内側支持部材41上を摺動しながら幅位置決め部材21aと幅位置決め部材21bとの間および奥行き位置決め部材31aと奥行き位置決め部材31bとの間の中心に移動する。図3(b)は、ガラスGが奥行き位置決め部材31aと奥行き位置決め部材31bとの間に挟持された状態を示す図である。
【0036】
また、外側支持部材51a、51bはそれぞれ奥行き位置決め部材31a、31bによって押圧されながら移動したので、図3(b)に示す状態では奥行き位置決め部材31a、31bと密着している。したがって、奥行き位置決め部材31a、31bがガラスGを挟持している状態では、外側支持部材51a、51bは常にガラスGの縁端から水平方向に一定の距離、離間している。
【0037】
なお、駆動装置33では、奥行き位置決め部材31aをガラスG側に移動させるときに、パルス検出を行い、奥行き位置決め部材31aの移動量を検出している。また、戻し駆動装置55a、55bでも、奥行き位置決め部材31a、31bの押圧によって外側支持部材51a、51bが移動しているときに、パルス検出を行い、外側支持部材51a、51bの移動量を検出している。したがって、ガラス位置決め装置10では、検出した両者の移動量が同じである場合、奥行き位置決め部材31a、31bが外側支持部材51a、51bに密着して位置していると判断することができる。
【0038】
(工程4)
次に、外側ガラス支持装置50のブレーキ装置56a、56bが案内部材34に対して平行に配設された図示しないレールを挟持することで、外側支持部材51a、51bおよび固定部材53a、53bを動かないように規制する。したがって、外側支持部材51a、51bおよび固定部材53a、53bは、ガラスGの縁端から水平方向に一定の距離、離間した位置に固定される。
【0039】
(工程5)
次に、幅方向位置決め装置20の駆動装置24が駆動して、幅位置決め部材21a、21bを互いに離間する方向に移動させる。
同様に、奥行き方向位置決め装置30の駆動装置33が駆動して、奥行き位置決め部材31a、31bを互いに離間する方向に移動させる。このとき、外側支持部材51a、51bおよび固定部材53a、53bは、ブレーキ装置56a、56bによって図示しないレールに対して制動されているので、奥行き位置決め部材31a、31bのみが移動する。
【0040】
(工程6)
次に、昇降装置52a、52bが、外側支持部材51a、51bおよび固定部材53a、53bを上昇させる。したがって、図3(c)に示すように、外側支持部材51a、51bは、ガラスGの下面を下方から支持する。このとき、外側支持部材51a、51bによるガラスGを支持する位置は、ガラスGの縁端から水平方向に一定の距離、離間した位置である。
なお、この状態から、固定部材53a、53bによりガラスGを吸着して、ガラスGの位置決めを確定してもよいが、本実施形態ではガラスGを下方から支持したときの微小なずれやガラスGの形状の影響を考慮して、以下の工程を行う。
【0041】
(工程7)
図3(c)に示す状態から再度、幅方向位置決め装置20の駆動装置24が駆動して、幅位置決め部材21a、21bによって、ガラスGを幅方向で挟持する。同時に再度、奥行き方向位置決め装置30の駆動装置33が駆動して、奥行き位置決め部材31a、31bによって、ガラスGを奥行き方向で挟持する。この工程により、前工程の何れかでガラスGの位置がずれた場合であっても、外側支持部材51a、51b上を摺動しながら幅位置決め部材21aと幅位置決め部材21bとの間および奥行き位置決め部材31aと奥行き位置決め部材31bとの間の中心にガラスGの位置を修正することができる。
【0042】
(工程8)
次に、外側ガラス支持装置50のブレーキ装置56a、56bは、外側支持部材51a、51bの制動を解除する。続いて、外側ガラス支持装置50の戻し駆動装置55a、55bが、外側支持部材51a、51bを移動させて奥行き位置決め部材31a、31bに密着させる。この状態では、外側支持部材51a、51bはガラスGの縁端から水平方向に一定の距離、離間した状態である。
【0043】
(工程9)
次に、工程4と同様に、外側ガラス支持装置50のブレーキ装置56a、56bが案内部材34に対して平行に配設された図示しないレールを挟持することで、外側支持部材51a、51bおよび固定部材53a、53bを動かないように規制する。したがって、外側支持部材51a、51bおよび固定部材53a、53bは、ガラスGの縁端から水平方向に一定の距離、離間した位置に固定される。
(工程10)
次に、固定部材53a、53bがガラスGを吸引することで吸着した後、固定部材昇降装置54a、54bが、それぞれ固定部材53a、53bを下降させ、ガラスGの位置決めを確定する。
【0044】
(工程11)
次に、幅方向位置決め装置20の駆動装置24が駆動して、幅位置決め部材21a、21bを互いに離間する方向に移動させる。
同様に、奥行き方向位置決め装置30の駆動装置33が駆動して、奥行き位置決め部材31a、31bを互いに離間する方向に移動させる。このとき、外側支持部材51a、51bおよび固定部材53a、53bは、ブレーキ装置56a、56bによって案内部材34に対して平行に配設された図示しないレールに固定されているので、奥行き位置決め部材31a、31bのみが移動する。
【0045】
(工程12)
最後に、接着剤塗布装置70が固定部材53a、53bによって固定されたガラスGの縁部の塗布面に接着剤を塗布することで、接着剤塗布工程5が完了する。ここで、固定部材53a、53bは、ガラスGの縁端に近接した位置であって縁端から一定の距離、離間した位置で固定している。このように、ガラスGの縁端に近接した位置、ここではガラスGの外側を固定することで、湾曲が異なる各ガラスGの塗布面の高さに相違が生じない。
【0046】
具体的に図4を参照して説明する。図4は、上述したガラス位置決め装置10を用いて、湾曲が異なるガラスGを固定部材53a、53bによって固定している状態を示す側面図である。ガラスG1は曲率が大きい、すなわち湾曲が深いガラスである。また、ガラスG2は曲率が小さい、すなわち湾曲が浅いガラスである。また、ガラスG3は湾曲が正常のガラスである。図4に示すように、固定部材53a、53bがガラスGの縁端に近接した位置を固定することで、何れのガラスGであっても、ガラスGの縁部の塗布面の高さを同一にすることができる。
【0047】
このように、本実施形態に係るガラス位置決め装置によれば、ガラスの寸法にバラつきがあったとしても、ガラスの塗布面の高さが一定になるようにガラスを位置決めすることができる。したがって、接着剤塗布装置70がティーチングされている経路にしたがって、接着剤を塗布することで、精度よく接着剤を塗布することができる。また、内側支持部材41によって、ガラスGの中央側を支持した後に位置決めを行うことから、サイズが小さいガラスGであっても支持することができ、多機種のガラスGの位置決めを行うことができる。
【0048】
以上、本発明を上述した実施形態と共に説明したが、本発明はこの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
例えば、上述した実施形態では、外側支持部材51a、51bと固定部材53a、53bとを別々に設ける場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、外側支持部材51a、51bを省略し、固定部材53a、53bによりガラスGを支持する機能と、ガラスGを固定する機能を兼ねるように構成してもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、ガラスGの位置決め精度をより向上させるために、工程5から工程11を行っているが、迅速に位置決めを行う場合は、工程6から工程11を省略し、工程5の後に、固定部材53a、53bによってガラスGを固定することで位置決めを確定し、工程12に移行してもよい。あるいは、工程6から工程11を省略し、工程4と工程5との間に、固定部材53a、53bによってガラスGを固定することで位置決めを確定し、工程5の後に、工程12に移行してもよい。
【0050】
また、上述した実施形態のガラス位置決め装置は、接着剤をガラスに塗布する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、上述した製造ライン1のプライマ工程4に用いることができる。すなわち、接着剤に限らず、ガラスの所定の位置に塗布剤を塗布する工程にも用いることができる。
【0051】
また、上述した実施形態では、駆動装置33および戻し駆動装置55a、55bに、パルス検出機能付きの空圧式シリンダーを用い、ブレーキ装置に56a、56bに空圧式ディスクブレーキを用いることで、コストを低減させると共に保守性を向上させている。しかしながら、この場合に限られず、NCロケータやサーボシリンダなどを用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
10:ガラス位置決め装置 20:幅方向位置決め装置 21a、21b:幅位置決め部材 22a、22b:幅ラック部材 23:ピニオン 24:駆動装置 30:奥行き方向位置決め装置 31a、31b:奥行き位置決め部材 32a、32b:奥行きラック部材 33:駆動装置 34:案内部材 40:内側ガラス支持装置 41:内側支持部材 42:内側支持部材昇降装置 50:外側ガラス支持装置 51a、51b:外側支持部材 52a、52b:昇降装置 53a、53b:固定部材 54a、54b:固定部材昇降装置 55a、55b:戻し駆動装置 56a、56b:ブレーキ装置 60:ガラス搬送装置 61:ベルト 70:接着剤塗布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスに接着剤を塗布するために該ガラスを所定の位置に位置決めするガラス位置決め装置であって、
前記ガラスを挟んだ両側に配設され、前記ガラスを挟持する方向に沿って移動可能な位置決め部材と、
前記位置決め部材の前記ガラス側にそれぞれ配設され、前記位置決め部材が前記ガラスを挟持する方向の移動と共に移動され、前記ガラスを下方から固定する固定部材と、を備えていることを特徴とするガラス位置決め装置。
【請求項2】
前記位置決め部材を、前記ガラスを挟持する方向に沿って移動させる駆動装置を更に備え、
前記固定部材は、前記駆動装置によって前記ガラスを挟持する方向に移動される前記位置決め部材に押圧されることで移動することを特徴とする請求項1に記載のガラス位置決め装置。
【請求項3】
前記位置決め部材によって前記ガラスを挟持した状態の位置で、前記固定部材の移動を規制するブレーキ装置を更に備えていることを特徴とする請求項2に記載のガラス位置決め装置。
【請求項4】
前記固定部材の移動を案内する案内部材と、該案内部材に対して平行に配設されたレールと、を更に備え、
前記ブレーキ装置は前記固定部材と共に移動され、
前記固定部材は、前記ブレーキ装置が前記レールに対して制動することで移動が規制されることを特徴とする請求項3に記載のガラス位置決め装置。
【請求項5】
前記案内部材は、前記位置決め部材の移動を案内することを特徴とする請求項4に記載のガラス位置決め装置。
【請求項6】
前記ガラスの中央側であって且つ前記ガラスよりも下方に配設された支持部材を更に備え、
前記位置決め部材は、前記支持部材によって支持されたガラスを挟持することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のガラス位置決め装置。
前記
【請求項7】
ガラスに接着剤を塗布するために該ガラスを所定の位置に位置決めするガラス位置決め装置の位置決め方法であって、
前記ガラスを挟んだ両側に配設された位置決め部材が、前記ガラスを挟持する工程と、
前記位置決め部材のそれぞれ前記ガラス側であって且つ前記ガラスよりも下方に配設された固定部材が、前記位置決め部材の移動により前記位置決め部材に押圧されて移動する工程と、
前記固定部材が、前記ガラスを下方から固定する工程とを有することを特徴とするガラス位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−111606(P2012−111606A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262492(P2010−262492)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】