説明

ガラス基板処理方法

【課題】アルカリガラス基板に含まれるアルカリ成分を低減することが可能なガラス基板処理方法を提供すること。
【解決手段】アルカリ成分を含むアルカリガラス基板を、水に接触させ、アルカリ成分の少なくとも一部を溶出させる。アルカリガラス基板の水との接触は、アルカリガラス基板を水中に浸漬することにより行うことが好ましい。また、上記水の温度は、30〜100℃の範囲内にあることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板処理方法に関し、さらに詳しくは、アクティブマトリクス型の液晶表示パネルの製造に用いるガラス基板の前処理などとして好適なガラス基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル(Liquid Crystal Display Panel)は、液晶材を挟んだ2枚の基板からなり、透過あるいは反射光量を電気的に制御可能な光学素子である。
【0003】
一方の基板であるアレイ基板としては、例えば、アクティブマトリクスアレイ基板などが知られている。このアクティブマトリクスアレイ基板は、通常、ガラス基板上にゲート配線とソース配線とがマトリックス状に配置されており、その交点部分に、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)などのアクティブ素子が形成され、このアクティブ素子に画素電極が接続されている。
【0004】
また、他方の基板であるカラーフィルタ基板としては、例えば、ガラス基板上に、不要な光の漏れを防ぐためにブラックマトリクスを形成した後、R(赤)、G(緑)、B(青)の着色層をパターン形成し、必要に応じて保護膜を形成した後、画素電極に対向する共通電極を形成したものなどが知られている。
【0005】
ところで、アクティブマトリクスアレイ基板を備えたアクティブマトリクス型の液晶表示パネルは、イオン性の汚染によって、TFTなど、アクティブ素子の特性低下が発生しやすいことが知られている。
【0006】
そのため、この種の液晶表示パネルに用いるガラス基板、とりわけ、アクティブマトリクスアレイ基板側のガラス基板には、イオン源となるNaOなどのアルカリ成分を含まない無アルカリガラス基板を使用するのが、当該液晶技術分野におけるこれまでの技術常識になっている(例えば、非特許文献1など)。
【0007】
また、無アルカリガラス基板を用いたとしても、TFTなどの安定性を考慮し、さらに、アルカリイオンの侵入を阻止するバリア膜を、ガラス基板表面に1枚以上介在させ、このバリア膜上にTFTなどが形成されることさえある。
【0008】
これに対し、同じフラットディスプレイパネル(FDP:Flat Display Panel)であっても、プラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)は、液晶表示パネルと全く表示構造が異なっており、アクティブ素子を有していない。
【0009】
そのため、PDPでは、アルカリ成分が全く問題にならず、ソーダ石灰ガラス基板などのアルカリガラス基板が多用されている。
【0010】
また、PDPは、その製造時の処理温度が液晶表示パネルの処理温度よりも高い。このため、最近では、ソーダ石灰ガラスの歪点を高温側にシフトさせた高歪点のガラス基板も使用され始めている。
【0011】
【非特許文献1】社団法人 日本半導体製造装置協会 編,「液晶ディスプレイ製造装置用語辞典」,第2版,日刊工業新聞社,1999年10月20日,p.10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、一般に、ガラス基板は、調合したガラス原料を溶融炉にて加熱溶融し、溶融ガラスとした後、これを板状に成形して徐冷し、所望の大きさに切断するなどして製造される。
【0013】
ここで、NaO源となる炭酸ナトリウムなどのアルカリ原料は、加熱溶融時における融点を下げる効果がある。そのため、これを添加しない無アルカリガラス基板の製造時には、アルカリガラス基板の製造時に比較して、溶融温度が必然的に高くなる。
【0014】
そうすると、そのような高温に耐え得るジルコニア系耐火物などの高価な炉材が必要になったり、高温溶融により溶融炉が劣化しやすくなったりするなど、ガラス基板の製造に困難を伴うようになる。
【0015】
そのため、無アルカリガラス基板は、アルカリガラス基板に比較して、その価格が高くなる傾向がある。
【0016】
近年、急速な勢いでパネルの大型化が進められている現況下では、液晶表示パネルの材料コスト全体に占めるガラス基板コストの比率が増大している。それ故、このまま高価な無アルカリガラスを使用し続けていては、コスト競争力の低下を招く。
【0017】
この問題に対し、本件発明者によるこれまでの研究成果によれば、従来の技術常識に反して、意外にも、アクティブマトリクス型の液晶表示パネルのガラス基板として、バリア膜を使用することなく、アルカリガラス基板を用いることが可能であることが判明している。
【0018】
しかしながら、パネル信頼性の観点からは、アルカリガラス基板中に含まれるアルカリ成分は出来る限り少ないに越したことはない。
【0019】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、本発明の解決しようとする課題は、アルカリガラス基板に含まれるアルカリ成分を低減することが可能なガラス基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決すべく、本発明らは種々の検討を重ねた。その結果、アルカリ原料の添加によって製造されているアルカリガラス基板を後処理することにより、当該基板中に含まれるアルカリ成分を低減することができれば、ガラス基板の製造性を損なわないで済み、ガラス基板の価格上昇を抑制することが可能となり、ひいては、パネル材料コストの低減を図ることができるのではないかと考えるに至った。しかも、製造されたままのアルカリガラス基板をそのままパネルに使用するよりも、パネル性能への影響を一層少なくでき、有利ではないかと考えるに至った。これらの知見に基づき、本発明をなすに至ったものである。
【0021】
すなわち、本発明に係るガラス基板処理方法は、アルカリ成分を含むアルカリガラス基板を、水に接触させ、上記アルカリ成分の少なくとも一部を溶出させるアルカリ溶出工程を有することを要旨とする。
【0022】
ここで、上記アルカリガラス基板の水との接触は、上記アルカリガラス基板を水中に浸漬することにより行うことが好ましい。
【0023】
また、上記水の温度は、30〜100℃の範囲内にあることが好ましい。
【0024】
また、上記アルカリ溶出工程を複数回繰り返すことが好ましい。
【0025】
また、水に接触させる前の上記アルカリガラス基板は、アルカリ成分として、NaOとKOとを合計で6〜15重量%含んでいると良い。
【0026】
また、アルカリ成分としてNaOとKOとを含む場合、KO/NaO(重量比)は2以上であると良い。
【0027】
一方、本発明に係るアクティブマトリクス型の液晶表示パネルは、上記ガラス基板処理方法により処理されたガラス基板を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るガラス基板処理方法によれば、アルカリガラス基板を水に接触させ、当該基板中に含まれるアルカリ成分を溶出させる。そのため、アルカリガラス基板製造後の後処理により、当該基板中に含まれるアルカリ成分を低減させることができる。また、その処理も特殊な薬液などを使用する必要がなく、極めて簡単な処理で済む。
【0029】
それ故、ガラス基板の製造性を損なわないで済み、ガラス基板の価格上昇を抑制することが可能となり、ひいては、これを液晶表示パネルのガラス基板に用いることで、パネル材料コストの低減を図ることが可能になる。しかも、製造されたままのアルカリガラス基板を、そのままのアルカリ含有量にてパネルに使用する場合に比較して、パネル性能への影響を一層少なくすることが可能になる。
【0030】
この際、上記アルカリガラス基板の水との接触を、上記アルカリガラス基板を水中に浸漬することにより行う場合には、アルカリ成分の溶出が容易になる。また、当該処理も行いやすい。
【0031】
また、上記水の温度が30〜100℃の範囲内にある場合には、特にアルカリ成分が溶出しやすくなる。
【0032】
また、上記アルカリ溶出工程を複数回繰り返した場合には、アルカリガラス基板中に含まれるアルカリ成分をより少なくすることが可能になる。
【0033】
ここで、水に接触させる前のアルカリガラス基板中に含まれるアルカリ成分として、NaOとKOとの合計が6重量%以上であれば、ガラス製造時におけるガラス溶融温度が高くなり過ぎず、均質性、清澄性も良好で、ガラス基板の製造コストの低減に寄与しやすい点で好ましい。一方、NaOとKOとの合計が15重量%以下であれば、高歪点を維持しやすいため、熱的に安定で、体積抵抗率が低下し過ぎなくなる点で好ましい。
【0034】
また、水に接触させる前のアルカリガラス基板が、アルカリ成分としてNaOとKOとを含む場合、KO/NaO(重量比)が2以上であるときには、混合アルカリ効果により、ガラス中でのアルカリイオンの移動を抑制しやすくなる。
【0035】
そのため、上記の通り処理されたガラス基板を液晶表示パネルのガラス基板に適用すれば、本処理によるアルカリ成分の低減効果と、当該処理後にガラス基板中に残存するアルカリ成分の移動抑制効果との相乗効果により、パネル信頼性を一層向上させやすくなる利点がある。
【0036】
一方、本発明に係るアクティブマトリクス型の液晶表示パネルは、上記ガラス基板処理方法により処理されたガラス基板を有している。そのため、大幅に材料コストの低減を図ることが可能であるとともに、脱アルカリ処理を施さないアルカリガラス基板を用いた液晶表示パネルに比較して、パネル信頼性も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本実施形態に係るガラス基板処理方法(以下、「本処理方法」ということがある。)および液晶表示パネル(以下、「本パネル」ということがある。)について詳細に説明する。
【0038】
1.本処理方法
本処理方法は、アルカリガラス基板中に含まれるアルカリ成分を溶出させるアルカリ溶出工程を有している。
【0039】
本処理方法は、例えば、ガラスメーカーにより製造されたアルカリガラス基板を、液晶表示パネルのガラス基板として用いる際に、事前処理として、予め当該ガラス基板に対して好適に適用することが可能な方法である。
【0040】
ここで、本処理方法では、アルカリガラス基板中に含まれる、NaO、KOなどのアルカリ成分を主にアルカリイオンとして溶出させる。本処理方法を経た後は、当初のアルカリガラス基板中に含まれていたアルカリ成分は、ほとんど全て溶出していても良いし、一部がガラス中に残存していても構わない。
【0041】
すなわち、当初のアルカリガラス基板中に含まれていたアルカリ成分のうち、少なくともその一部が溶出していれば良い。当該処理後において、アルカリガラス基板中に含まれるアルカリ成分が、当該処理前に比較して減少しておれば、本処理方法による目的は達せられる。
【0042】
本処理方法では、アルカリガラス基板中に含まれるアルカリ成分を溶出させるために、アルカリガラス基板と水とを接触させる。水としては、蒸留水、イオン交換水、その他の添加物を含む水、これらの水蒸気などを用いることができる。
【0043】
上記水との接触は、特に限定されるものではなく、各種の方法を採用することができる。具体的には、例えば、アルカリガラス基板を水中に浸漬する方法、アルカリガス基板に水をかける方法、アルカリガラス基板を水蒸気中にさらす方法などを例示することができる。
【0044】
好ましくは、比較的簡易な処理であり、かつ、水との接触が多く、アルカリ成分を溶出させやすいなどの観点から、アルカリガラス基板を水中に浸漬する方法を好適に用いることができる。
【0045】
この際、上記水の温度は、特に限定されるものではないが、アルカリ成分が溶出しやすくなる、取扱いが容易であるなどの観点から、30〜100℃の温度範囲内から選択するのが好ましい。
【0046】
上記水の温度の下限は、40℃以上がより好ましく、45℃以上がさらにより好ましい。一方、上記水の温度の上限は、95℃以下がより好ましく、90℃以下がさらにより好ましい。
【0047】
なお、アルカリガラス基板を水中に浸漬する場合、上記温度範囲外の水中に、アルカリガラス基板を浸漬した後、当該水の温度を上記温度範囲内としても良い。また、当初から上記温度範囲内にある水中に、アルカリガラス基板を浸漬しても良い。
【0048】
また、水の加熱手段は、特に限定されるものではなく、各種の公知の加熱手段を適用することができる。
【0049】
本処理方法において、上記水とアルカリガラス基板とを接触させる時間は、接触させる水の温度、含まれるアルカリ成分割合などによっても異なる。
【0050】
上記接触時間が過度に長くなると、例えば、処理速度が低下したり、その処理による効果も飽和したりするなどの傾向が見られる。一方、上記接触時間が過度に短くなると、アルカリ溶出量が少なくなるなどの傾向が見られる。例えば、液晶表示パネルの生産性、所望するアルカリ残存割合などを考慮して設定すれば良い。
【0051】
上記接触時間の下限は、十分なアルカリ溶出効果を得るなどの観点から、好ましくは、30秒以上であり、より好ましくは、1分以上である。
【0052】
本処理方法では、上記アルカリ溶出工程を1回だけ行っても良い、複数回繰り返し行っても良い。複数回繰り返し行った場合には、アルカリガラス基板中に含まれるアルカリ成分をより少なくすることができる。これは、上記アルカリ溶出工程を繰り返すと、その度毎に、溶出したアルカリ成分が系外へ取り除かれるため、溶出が生じやすくなるためであると推定される。
【0053】
もっとも、上記アルカリ溶出工程を過度に繰り返しても、その効果は次第に飽和するし、処理速度も低下する。そのため、上記アルカリ溶出工程を行う回数は、これらに留意すると良い。
【0054】
次に、上記アルカリ溶出に供するアルカリガラス基板について、詳細に説明する。
【0055】
アルカリガラス基板とは、ソーダ石灰系ガラスなど、NaO、KOなどのアルカリ成分を含むガラス基板のことであり、アルカリ成分を含まない無アルカリガラス基板と区別される。
【0056】
もっとも、無アルカリガラス基板といえども、通常、アルカリ成分を全く含まないという意味で用いられることはない。1%未満のオーダーで不純物としてアルカリ成分が存在するものも、当液晶業界では無アルカリガラス基板と称されている。
【0057】
本処理方法において、水と接触させる前の上記アルカリガラス基板は、アルカリ成分として、NaOおよびKOを含む場合、NaOとKOとの合計の含有量としては、6〜15重量%の範囲内にあることが好ましい。
【0058】
両含有量の下限が6重量%以上であれば、ガラス製造時におけるガラス溶融温度が高くなり過ぎず、均質性、清澄性も良好で、ガラス基板の製造コストの低減に寄与しやすい点で好ましい。なお、6%未満になると、より高温での溶融に耐えうる高価な設備が必要となるし、ガラス溶融も不十分になる傾向が見られる。
【0059】
一方、両含有量の上限が15重量%以下であれば、高歪点を維持しやすいため、熱的に安定で、体積抵抗率が低下し過ぎない点で好ましい。
【0060】
また、水と接触させる前の上記アルカリガラス基板が、アルカリ成分としてNaOとKOとを含む場合、KO/NaO(重量比)は2以上であると良い。混合アルカリ効果により、ガラス中でのアルカリイオンの移動を抑制しやすくなるからである。
【0061】
以上を満たすアルカリガラス基板は、例えば、旭硝子株式会社、日本電気硝子株式会社、セントラル硝子株式会社などから入手することが可能である。
【0062】
2.本パネル
本パネルは、上述した本処理方法により処理されたガラス基板(以下、「処理済みガラス基板」ということがある。)を有するアクティブマトリクス型の液晶表示パネルである。
【0063】
具体的には、本パネルは、アクティブマトリクスアレイ基板と、これに対向して設けられたカラーフィルタ基板と、両基板の間に封入された液晶材とを備えている。そして、上記両基板のうち、少なくとも一方の基板を構成するガラス基板が、上記処理済みガラス基板よりなる。
【0064】
なお、両基板のうち、何れか一方の基板のガラス基板が上記処理済みガラス基板である場合には、他方の基板のガラス基板は本処理方法により処理されていないアルカリガラス基板や無アルカリガラス基板であっても良い。
【0065】
好ましくは、両基板のガラス基板とも、上記処理済みガラス基板であると良い。パネル信頼性をより向上させやすいからである。
【0066】
上記アクティブマトリクスアレイ基板が有するアクティブ素子(スイッチング素子)としては、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と称する。)が好ましい。従来に比較して低廉なTFT液晶表示パネルを提供することが可能となるからである。
【0067】
アクティブマトリクスアレイ基板がTFTを有する場合、TFTの構造は、特に限定されるものではなく、逆スタガー型構造、正スタガー型構造の何れであっても良い。
【0068】
上記TFTの構造としては、好ましくは、逆スタガー型構造を採用すると良い。逆スタガー構造は、正スタガー構造に比較して、半導体層とアルカリガラス基板との距離が遠くなる。また、アルカリガラス基板上にはゲート絶縁膜も成膜されている。したがって、アルカリイオンによる影響をより受け難くできる利点があるからである。
【0069】
以下、逆スタガー型構造のTFTを有するアクティブマトリクスアレイ基板(以下、「TFTアレイ基板」と称する。)を備えた本パネルの構成の一例につき、図面を用いて具体的に説明する。
【0070】
図1は、本パネルが備えうるTFTアレイ基板の1つの画素領域の一例を模式的に示した平面図である。図2は、図1中のA−A’線に沿った本パネルの断面図である。なお、以下では、TFTアレイ基板およびカラーフィルタ基板の両基板が処理済みガラス基板を備える場合について説明を行っている。
【0071】
図2に示すように、本パネル10は、TFTアレイ基板12と、これに対向して設けられたカラーフィルタ基板14と、両基板12、14の間に封入された液晶材16とを備えている。
【0072】
図1に示すように、TFTアレイ基板12は、処理済みガラス基板18上に、相互に平行に延びる複数のゲート配線20と、ゲート配線20と直交して相互に平行に延びる複数のソース配線22と、各ゲート配線20の間にゲート配線20に沿って相互に平行に延びる複数の補助容量配線24と、ゲート配線20およびソース配線22の各交差部分に設けられたTFT26と、各TFT26に対応して一対のゲート配線20および一対のソース配線22で囲まれる領域に設けられ、1つの画素を構成する画素電極28とを備えている。
【0073】
図1および図2に示すように、TFT26は、ゲート配線22に電気的に接続されたゲート電極30と、ゲート電極30を覆うゲート絶縁膜32と、ゲート絶縁膜32を介してゲート電極30の上方に形成された半導体層34(真性半導体層34a、不純物添加半導体層34b)と、半導体層34上に形成されたソース電極36およびドレイン電極38とを有している。
【0074】
半導体層34のソース領域およびドレイン領域は、コンタクト層として機能する不純物添加半導体層34bを介して、ソース電極36およびドレイン電極38にそれぞれ電気的に接続されている。
【0075】
TFT26のドレイン電極38には、補助容量配線24に至るまでドレイン配線40が延設されている。ドレイン配線40のうち、補助容量配線24とゲート絶縁膜32を介して対向する部分が補助容量電極42として機能する。また、補助容量配線24のうち、補助容量電極42とゲート絶縁膜32を介して対向する部分が補助容量対向電極(図示されない)として機能する。
【0076】
TFT26上には、絶縁膜44が形成されている。この絶縁膜44は、TFT26のチャネル部の保護膜としても機能する。ドレイン電極38上に位置する絶縁膜44の表面には、コンタクトホール46が形成されている。画素電極28は、コンタクトホール46を通じて、TFT26のドレイン電極38と電気的に接続されている。そして、画素電極28上には、配向膜(図示されない)が形成されている。
【0077】
一方、カラーフィルタ基板14は、処理済みガラス基板18’上に、カラーフィルタ層(図示されない)、オーバーコート層(保護膜)(図示されない)、共通電極48が順に積層された積層構造を有している。そして、共通電極48上には、配向膜(図示されない)が形成されている。
【0078】
カラーフィルタ層には、各画素電極28に対応して赤、緑および青のうちの1色の着色層が設けられ、各着色層の間にはブラックマトリクスが設けられている。
【0079】
上述した両基板12、14の間に挟持される液晶材16は、特に限定されることなく、種々の表示モード用の液晶材を用いることができる。例えば、旋光性を利用するTN(Twisted Nematic)モードの液晶材や、複屈折性を利用するECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶材などを用いることができる。ECBモードのなかでも、VA(Vertically Aligned)モードは、高コントラスト比を実現することができる。VAモードの液晶材としては、例えば、負の誘電異方性を有するネマチック液晶材などを例示することができる
【0080】
なお、液晶材16の封入に用いるシール剤(図示されず)としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱硬化性樹脂と紫外線硬化性樹脂との混合物などを例示することができる。
【0081】
上記構成を備えた本パネルは、上記処理済みガラス基板上に、例えば、公知の各種成膜方法、フォトリソグラフィー技術などを適用して製造したアクティブマトリクスアレイ基板およびカラーフィルタ基板を、シール材にて貼り合わせ、シール材の内側に液晶材を封入してパネル化するなどして得ることができる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例を用いて本発明に係るガラス基板処理方法について説明する。
【0083】
(実施例1)
先ず、直径70mm、厚み1.1mmのアルカリガラス基板(NaO:4.3重量%、KO:8.6重量%、歪点583℃、表面積794cm)を10枚準備した。
【0084】
次いで、これら試料を、50℃に加熱した蒸留水220ml中に20時間浸漬した。その後、蒸留水中から上記試料を取り出し、蒸留水と試料とを分離した。
【0085】
次いで、高速液体クロマトグラフィー装置により、上記処理後の蒸留水に含まれるナトリウムイオンおよびカリウムイオンの溶出量を、それぞれNaOおよびKO換算で求めた。なお、このときの装置の検出限界は、NaO:0.02(10−9mol/cm)、KO:0.04(10−9mol/cm)である。
【0086】
その結果、NaO:1.77(10−9mol/cm)、KO:0.46(10−9mol/cm)であった。この結果から、上記処理により、確かにアルカリ成分が溶出していることが確認できた。
【0087】
次いで、上記処理終了後、処理後の蒸留水を新しい蒸留水に入れ替え、同様の処理(水温50℃)を繰り返した。その後、同様にしてナトリウムイオンおよびカリウムイオンの溶出量を、それぞれNaOおよびKO換算で求めた。
【0088】
その結果、NaO:0.48(10−9mol/cm)、KO:0.11(10−9mol/cm)であった。この結果から、上記処理を複数回繰り返し行うことにより、さらにアルカリ成分を溶出させることが可能であることが確認できた。もっとも、前回の処理に比較すると、ともに溶出量が少なくなる傾向があることが分かった。
【0089】
(実施例2)
50mm×50mm、厚み0.7mmのソーダライムガラス基板(NaO:13重量%、歪点513℃)を使用した点、蒸留水を50mlとした点以外は実施例1と同様にして、アルカリ溶出試験を行った。但し、このときの装置の検出限界は、NaO:0.9(10−9mol/cm)、KO:0.6(10−9mol/cm)である。
【0090】
その結果、1回目の処理では、NaO:3.8(10−9mol/cm)、KO:検出限界以下であった。また、2回目の処理では、NaO:3.0(10−9mol/cm)、KO:検出限界以下であった。この結果から、ソーダライムガラス基板の場合にも、アルカリ成分が溶出しているが、複数回処理を行っても、溶出量はそれほど変わらないことが分かった。
【0091】
(実施例3)
1回目の処理時における水温を80℃とするとともに、2回目の処理時における水温を50℃とした点、さらに、3回目の処理を水温50℃で行った点以外は実施例1と同様にして、アルカリ溶出試験を行った。
【0092】
(実施例4)
さらに、3回目の処理を水温50℃で行った点以外は実施例1と同様にして、アルカリ溶出試験を行った。
【0093】
図3に、実施例3および実施例4における処理方法によるアルカリ溶出試験の結果を示す。
【0094】
図3によれば、1回目の処理における水温をそれ以降の処理における水温より相対的に高くすることで、アルカリ成分の溶出量が増加することが分かった。また、2回目の処理以降におけるアルカリ成分の溶出量は、水温によらずそれほど大きな差がない傾向があることが分かった。
【0095】
この結果から、1回目の処理における水温をそれ以降の処理における水温より相対的に高くした方が、本処理による効果が大きく、有利であることが分かった。
【0096】
以上、本発明の一実施形態および一実施例について説明したが、上記実施形態および実施例は本発明を何ら限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形・改良することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶表示パネルが備えうるTFTアレイ基板の1つの画素領域の一例を模式的に示した平面図である。
【図2】図1中のA−A’線に沿った本パネルの断面図である。
【図3】実施例3および実施例4における処理方法によるアルカリ溶出試験の結果を示した図である。
【符号の説明】
【0098】
10 液晶表示パネル
12 TFTアレイ基板(アクティブマトリクスアレイ基板)
14 カラーフィルタ基板
16 液晶材
18 処理済みガラス基板
18’ 処理済みガラス基板
26 TFT(アクティブ素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ成分を含むアルカリガラス基板を、水に接触させ、前記アルカリ成分の少なくとも一部を溶出させるアルカリ溶出工程を有することを特徴とするガラス基板処理方法。
【請求項2】
前記アルカリガラス基板の水との接触は、前記アルカリガラス基板を水中に浸漬することにより行われることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板処理方法。
【請求項3】
前記水の温度は、30〜100℃の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス基板処理方法。
【請求項4】
前記アルカリ溶出工程を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のガラス基板処理方法。
【請求項5】
前記水に接触させる前のアルカリガラス基板は、アルカリ成分として、NaOとKOとを合計で6〜15重量%含むことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のガラス基板処理方法。
【請求項6】
O/NaO(重量比)が2以上であることを特徴とする請求項5に記載のガラス基板処理方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載のガラス基板処理方法により処理されたガラス基板を有するアクティブマトリクス型の液晶表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−156161(P2008−156161A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346998(P2006−346998)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】