説明

ガラス封止部の検査装置及び検査方法

【課題】ガラス封止部のガラスの表面状態を、高価な検査装置を用いることなく効率的にガラスの表面状態を検査することができるガラス封止部の検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】ガラス封止部を備える被検査体20を検査位置に支持する支持部22と、前記被検査体20の上方に配置され、前記被検査体を照明する、リング状に光源が配置されたリング照明部24と、該リング照明部24の開口24bを通して、前記ガラス封止部に写り込む前記リング照明部24の光源24aの画像とともに前記ガラス封止部を撮影する撮像光学系30と、該撮像光学系30により撮影された画像データを解析し、前記ガラス封止部におけるガラスの表面状態を解析する画像解析部32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス端子等に設けられるガラス封止部の検査装置及びガラス封止部の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光素子を搭載した光半導体装置には、光素子を搭載するアイレットに、信号線等となるリードをガラス封止して形成される製品がある。図11(a)は、光半導体装置のリード10がガラス封止された部分の断面図を示す。リード10はアイレット12を厚さ方向に貫通して設けられた挿通孔12aに挿通され、挿通孔12a内にガラス14が充填されて、アイレット12に気密に封止される。
【0003】
このようなガラス封止部は、挿通孔12a内に十分な量のガラス14が充填されて封止されることが求められる。これは、ガラス封止部における気密性を確保し、リード10に確実にワイヤボンディングできるようにするためである。挿通孔12aに供給されたガラス14の分量が少ないと、リード10の支持性が低下し、リード10にワイヤボンディングした際に十分な接合強度が得られない場合があるからである。
このため、検査工程において、ガラス封止部に所要量のガラス14が充填されているか否かを検査することがなされている。ガラス封止部に所要量のガラス14が充填されているか否かの判断基準は、挿通孔12a内におけるガラス14の凹み分D(図11(b))が一定以下(たとえば、0.5mm以下)であれば良とするといった考え方である。
【特許文献1】特開平10−10053号公報
【特許文献2】特開平7−58500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アイレット12のガラス封止部についての検査は、従来は目視によって行っている。したがって、ガラス封止部の検査は非効率であるとともに、検査結果にばらつきがあるという問題があった。
ガラス封止部のガラスの充填状態を目視によらずに検査する方法としては、たとえば、レーザフォーカス式変位センサといった、基準位置からの高さ方向の変位を測定する装置を方法がある。しかしながら、レーザフォーカス式変位センサのような、特定点における高さを検知する方法の場合は、ガラス封止部内で複数ポイントを測定する必要があり、正確に高さ測定をすることができるものの、測定が煩雑になるという問題がある。また、マイクロレンズを使用して測定することも可能であるが、装置が高価であるという難点がある。
【0005】
本発明は、ガラス端子のガラス封止部のようなガラスの表面状態を検査する場合に、高価な検査装置を用いることなく、効率的にかつ確実にガラスの表面状態を検査することができるガラス封止部の検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は次の構成を備える。
すなわち、ガラス封止部の検査装置において、ガラス封止部を備える被検査体を検査位置に支持する支持部と、前記被検査体の上方に配置され、前記被検査体を照明する、リング状に光源が配置されたリング照明部と、該リング照明部の開口を通して、前記ガラス封止部に写り込む前記リング照明部の光源の画像とともに前記ガラス封止部を撮影する撮像光学系と、該撮像光学系により撮影された画像データを解析し、前記ガラス封止部におけるガラスの表面状態を解析する画像解析部とを備えることを特徴とする。なお、リング状に光源が配置されたリング照明部とは、光源が周方向に連続して配置されている場合、光源が周方向に所定間隔をあけて配置されている場合の双方を含む意である。また、ガラスの表面状態とは、基準高さ位置に対するガラス表面の高さ位置、ガラス表面の凹凸、傾斜状態等を意味する。
【0007】
前記撮像光学系は、前記ガラス封止部におけるガラスの表面位置の変位が、前記ガラス封止部に写り込む前記リング照明部の光源の画像のピント状態の変化としてとらえられるように被写界深度が設定されていることにより、前記画像解析部により画像データにおける明るさを解析して前記ガラス封止部のガラスの表面状態を解析することができる。
また、前記画像解析部は、前記画像データの明るさの度数分布を計測する手段を備えていることにより、正確にガラスの表面状態を把握することができる。
また、前記画像解析部は、前記画像データを微分処理し、画像データの明るさに変換する手段を備えていることによって、さらに正確にガラスの表面状態を把握することができる。
【0008】
また、ガラス封止部を備える被検査体の前記ガラス封止部に設けられたガラスの表面状態を検査する検査方法であって、リング照明部によりガラス封止部を備える被検査体を照明し、撮像光学系を用いて、前記ガラス封止部に写り込む前記リング照明部の光源の画像とともに前記ガラス封止部を撮影する工程と、画像解析部により、前記撮像光学系により撮影された画像データを解析し、前記ガラス封止部におけるガラスの表面状態を解析する工程とを備え、前記撮像光学系は、前記ガラス封止部におけるガラスの表面位置の変位が、前記ガラス封止部に写り込む前記リング照明部の光源の画像のピント状態の変化としてとらえられるように設定され、前記ガラスの表面状態を解析する工程においては、前記画像データの明るさの度数分布を計測する工程を備え、前記画像データの明るさの度数分布に基づいて前記ガラスの表面の状態を検知することを特徴とする。
【0009】
また、前記リング照明部により前記被検査体を照明する工程においては、円環状に光源を配置したリング照明部を使用することにより、ガラス封止部のガラス表面の略全域について検査することができる。
また、前記画像解析部によりガラスの表面状態を解析する工程においては、画像データを微分処理する工程を備え、前記画像データの明るさの度数分布を計測する工程においては、前記微分処理を施した画像データについて度数分布を計測することにより、ガラス封止部におけるガラスの表面状態を高精度に検査することができる。
また、前記画像解析部によりガラスの表面状態を解析する工程においては、画像データの不要部分を除去する工程を備えることにより、さらに高精度にガラスの表面状態を検知することができる。
【0010】
また、アイレットにリードをガラス封止したガラス封止部を備えるガラス端子を被検査体とする場合においては、前記リング照明部により前記被検査体を照明する工程においては、円環状に光源を配置したリング照明部を使用し、前記画像解析部によりガラスの表面状態を解析する工程においては、前記画像データを微分処理する工程と、前記画像データから前記リード及び前記アイレットの不要部分を除去する工程と、前記微分処理を施した画像データについて度数分布を計測する工程を備えることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るガラス封止部の検査装置及び検査方法によれば、ガラス封止部をリング照明部によって照明し、リング照明部に写り込む光源の像を撮像光学系によって撮影する方法によることで、容易にガラス封止部におけるガラスの表面状態を検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るガラス封止部の検査装置及び検査方法の適用例として、ガラス端子のリードをガラス封止したガラス封止部を検査する例について説明する。
(検査装置の構成)
図1に、ガラス端子のガラス封止部の検査に用いた検査装置の概略構成を示す。被検査体であるガラス端子20を検査する検査部は、ガラス端子20を位置決めしてセットするセット台22と、セット台22の上方に配置したリング照明部24と、リング照明部24の上部に、リング照明部24と同軸に配置した撮像光学系30とを備える。
【0013】
ガラス端子20は、アイレットに2本のリード21をガラス封止したものである。セット台22にはアイレットから下方に延出するリード21が挿入される挿入孔が設けられ、挿入孔の縁部にアイレットの周縁部が係止されて、セット台22にガラス端子20が支持される。
リング照明部24は、平面形状がリング状に形成された支持体の下面に、多数個のLED24aを周方向に一周する配置に互いに隣接させて取り付けたものである。実施形態においては、照明用の光源として赤色LEDを使用した。光源の光源色はとくには限定されない。リング照明部24の支持体の外周径は50mm、支持体の内周径は28mmである。リング照明部24は照明電源25に接続され、照明電源25によって点灯が制御される。
【0014】
撮像光学系30は、光学レンズ26とCCDカメラ28とを内蔵する。CCDカメラ28は、視野2.1mm×1.6mm、解像度640pix×480pix、分解能3.3μm/pixである。被検査体のガラス端子20に設けられているガラス封止部の径は1.1mmである。CCDカメラ28は、視野内に一つのガラス封止部の全体を画像として取り込むことができるように設定されている。
【0015】
CCDカメラ28によって取り込まれた画像の解析部として、画像解析部32と入力部34とモニター36を備える。画像解析部32はCCDカメラ28に接続され、入力部34とモニター36は画像解析部32に接続されている。
【0016】
(撮像光学系のセッティング)
被検査体であるガラス端子20の上方にリング照明部24を配置し、リング照明部24の中心線位置と同芯に撮像光学系30を配置する構成としているのは、リング照明部24の中央の開口24bを通して、ガラス端子20のガラス封止部をCCDカメラ28によって視認できるようにするためである。
本実施形態においては、ガラス端子20のガラス封止部にリング照明部24にリング状に配置されている光源の像が写りこ込むように、いいかえればガラス封止部によって反射した光源の像がCCDカメラ28によって視認される配置に撮像光学系30を配置する。
【0017】
図2に、CCDカメラ28によって視認されるガラス封止部の像の様子を示す。
図2(a)は、ガラス封止部に充填されたガラス14の表面が凹面状(図で下に凸)になった場合である。この場合は、写真に示すように、ガラス封止部のガラスに写り込む光源の像は二重のリング状になる。リング状に像が見えるのは、光源がリング状に配置されているからである。画像には、挿通孔の中央に挿通されたリード(中央の白い部分)と、その周囲のガラス(黒い部分)と、挿通孔の円形の縁部が写っている。
【0018】
図2(b)は、ガラス封止部に充填されたガラス14の表面が凸面状になった状態である。この場合には、写真に示すように一重のリング状に光源の像が写る。
図3に、ガラス封止部に充填されたガラス14の表面が凸面状となる場合と凹面状となる場合とで、光源の像が一重と二重になる原理を示す。
図3(a)は、ガラス14の表面が凸状になった場合で、この場合は、ガラス14の湾曲面(あるいは湾曲面と平面との境界部分)であるA点の位置での反射光によって一重のリング状の像が視認される。これに対して、ガラス14の表面が凹面状になった場合には、図3(b)に示すように、湾曲面(湾曲面と平面との境界部分)がB点とC点の2個所に生じることによって、二重のリング状の像となる。
【0019】
図2(c)は、ガラス封止部におけるガラス14の充填量が少ない場合で、アイレットの表面から見てガラス14の表面位置がかなり低い位置にある状態である。この場合には、CCDカメラ28によって視認される光源の像はぼやけた像となる。
【0020】
本実施形態における撮像光学系のセッティングにおいては、ガラス封止部にリング照明部24の光源の像が写り込むように設定することに加えて、ガラス封止部におけるガラス14の充填状態をガラス封止部に写り込んだ光源の像のピント状態の変化、いいかえれば光源の像の輝度の変化として捕らえられるように光学系を設定している。アイレットの表面を基準として、このアイレットの表面に対してガラス14の表面の位置が変位すると、CCDカメラ28によって視認される光源の像がぼけるのは、このようなセッティングとしていることによる。
【0021】
ガラス封止部におけるガラス14の充填状態の良否判定は、ガラス封止部のガラス14の表面がアイレットの表面を基準にしてどの程度下方にあるか(低位であるか)によって判定している。本実施形態においては、アイレットの表面よりもガラス14の表面が0.5mmを超えて下方に変位している場合に不良と判定する。したがって、ガラス封止部を視認する光学系は、ガラス封止部におけるガラス14の表面の高さ位置がアイレットの表面に対して0.5mm程度変位した場合に、ガラス封止部に写り込む光源の像の輝度変化として的確に捕らえられるように設定する。
【0022】
ガラス端子の製造工程を考えると、ガラス封止部のガラス分量がばらついてガラスの表面の高さ位置が±0.1mm程度ばらつくことは十分に考えられる。したがって、ガラス封止部の良否判定における測定誤差として±0.1mm程度のばらつきは許容される。このため、本実施形態では、光学系の被写界深度を±0.05mmに設定して計測を行った。
【0023】
(ガラス封止部の検査方法)
図1に示す検査装置を用いてガラス封止部におけるガラスの充填状態を検査する方法を図4にフロー図として示す。
まず、被検査体であるガラス端子20を被検査体の支持部としてのセット台22にセットし、CCDカメラ28の視野内にガラス端子20のガラス封止部を位置合わせし、CCDカメラ28によってガラス封止部を撮影して画像データを取得する(ステップ40)。次いで、取得した画像データを画像解析部32により画像解析するステップに進む。
【0024】
画像解析のステップでは、まず、撮影した画像に微分処理を行い、輝度変化の傾きを、明るさによって表現した画像に変換する(ステップ41)。
次いで、リード部分とガラス封止部の周囲のアイレットの部分をマスクして除去し、画像処理の際に不要となる部分を除去する(ステップ42)。
次に、処理後の画像について明るさを検知し輝度変化の傾きの度数を計測する(ステップ43)。処理後の画像の明るさは、前のステップにおける微分処理によって輝度変化の傾きに相当する。したがって、画像内の各点の明るさを検知し、画像内における明るさの度数分布を得ることによって輝度変化の傾きについての度数分布表が得られる。
【0025】
本実施形態の画像データの明るさは、0〜255までの範囲にある。画像内で黒となっている部分は明るさが0であり、光源の像がはっきりと写っている部分は、255に近い値となる。明るさの度数分布は、具体的には画像内における各点(各々の単位セル部分)の明るさを検知することによって、0〜255までの明るさについて度数分布表が得られる。
【0026】
画像解析によって得られる輝度変化の傾き(明るさ)は、CCDカメラ28によってガラス封止部を撮影して得られた光源の像のピント状態を反映する。すなわち、得られた画像の光源の像のピントが合っている場合は明るくなり、ピントが合っていないと明るさが低下する。撮像光学系のピントの位置はアイレットの表面位置を基準として設定するから、光源の像のピントが合っているということは、ガラス封止部のガラス14の表面位置がアイレットの表面から外れていない(基準位置に近い)ことを意味し、光源の像のピントが合っていないということは、ガラス14の表面の位置がアイレットの表面の位置から変位していることを意味する。
【0027】
図5に、CCDカメラ28によって取得したガラス封止部の画像と、画像に写っている光源の像の明るさ(グラフの横軸は像と交差する向き)を表すグラフを示す。
図5(a)は、ガラス封止部のガラス14の表面がアイレットの表面に近い位置、すなわち光源の像のピントが合った状態である。図5(b)は、光源の像のピントが合っていない場合である。2つのグラフを対比して見ると、光源の像の明るさに強弱があることがわかる。
図5(a)、(b)に示すように、CCDカメラ28によって取得された画像データの光源の像の明るさを比較することにより、画像のピントがあっているか否か、すなわち、ガラス封止部のガラス14の表面位置がアイレットの表面から大きく変位しているか否かを知ることができる。
【0028】
前述したステップ41においては、CCDカメラ28によって取得された画像データを微分処理し、光源の輝度変化の傾き(輝度変化の変化率)を表す画像に変換している。これは、取得された画像データを明るさ(輝度)のみによって比較すると、輝度変化の傾きが小さくても画像としては明るく表れる場合があり、画像のピント特性を正確に反映しない場合があり得るからである。
【0029】
画像データに微分処理を施し、画像処理に不要となるリード部分とガラス封止部の周囲のアイレットの部分を除去した後、処理後の画像について輝度変化の傾きの度数を計測し、輝度変化の傾きについての度数分布表を取得し、その結果に基づいて良否判定する(ステップ44)。
輝度変化の傾き(画像の明るさ)は、本実施形態の装置においては、0〜255の範囲に分布する。したがって、良不良を判定する閾値は、適宜設定することになる。
図6〜9に、実際のガラス端子についてガラス封止部を撮影し、画像処理した状態を示す。
【0030】
図6は、画像データに微分処理を施し、リードとアイレットの不要部分を除去した画像である。図6のサンプルは、ガラス封止部のガラス14の表面が凹面状となっているものである。
この処理後の画像について輝度変化の傾き(明るさ)を測定して得られた度数分布表では、輝度変化の傾きの値が255以上の度数が3275、輝度変化の傾きの値が234〜254までの度数は、合計300度数程度であった。
ガラス封止部の画像データを処理して測定したところ、光源の像のピントが合っていない場合には、画像内の明るさは200以下になった。画像データから良不良を判定する場合の判定基準(閾値)は、適宜設定することになるが、ここでは、光源の像のピントが合っている領域と考えられる明るさが234〜255の範囲について、度数がどのようになるかを調べている。
【0031】
図6の計測データでは、明るさ255以上のデータの度数が圧倒的に大きいことから、光源の画像のピントが正確に合っていること、すなわち、アイレットの表面からのガラス表面の凹み量は僅かであること(良品)を示す。
また、リング照明部24の光源の像が二重リング状にきれいに分離し、周方向に連続してあらわれることから、ガラス14の表面が全体としてバランスのよい均一な表面になっていることがわかる。
【0032】
図7は、ガラス封止部のガラス14の表面が凸面状になっているサンプルの例である。画像データに微分処理を施し、画像処理に不要なリードとアイレットの部分を除去している。
この画像について明るさの程度を測定して得られた度数分布表によると、明るさが255以上の度数が247、明るさが234〜254までの度数が合わせて90度数程度である。図6に示すガラス封止部にくらべると、234以上の度数は少ないことから、このサンプルのガラス表面のアイレット表面からの変位量は、図6のサンプルよりも大きいと考えられるが、このサンプルも良品と判定される。
また、このサンプルでは、リング照明部24の光源の像が半周程度しか表れないことから、ガラス14の表面が傾斜した状態になっていることがわかる。
【0033】
図8は、ガラス14の表面が凹面状となっているサンプルの例である。
図8に示す画像について、明るさを測定して得られた度数分布表では、明るさが255以上の度数が349、明るさが234〜254までの度数は、合わせて200度数程度であった。このサンプルも、234〜255の度数を有することから、良品と判定される。
また、このサンプルでは、リング照明部24の光源の像が周方向に連続していないことから、ガラス14の表面が傾斜していることがわかる。
【0034】
図9は、ガラス14の表面が凹面状となっているサンプルで、アイレット表面に対するガラス14の凹み量が大きなサンプルの例である。
図9に示す画像について、明るさを測定して得られた度数分布表では、明るさが255となる度数は0、明るさが234〜254までの度もすべて0であった。このサンプルの測定結果は、図6、7、8に示した測定結果とは対照的であり、明るさが234以上となる点がどこにも見出されない結果となっている。したがって、このサンプルは不良品と判定される。アイレットの表面位置からガラス14の表面位置が大きく外れている(低位となっている)ために、画像内において明るい点が得られなかったものである。
【0035】
図10に、不良品として判定されたいくつかのサンプルについて、アイレット表面からガラス14の表面までの凹み量についての実測値とともに、画像データ及び明るさの度数分布を計測した結果を示す。
図10に示したサンプルは、ガラス14のアイレット表面からの凹み量が、0.5323mm、0.5797mm、0.6634mm、0.7434mm、0.7842mm、0.8793mmとなっている6種類のサンプルである。これらのサンプルについての画像データを比較すると、ガラスの凹み量が大きくなるにしたがって、光源の像がぼやけていくことがわかる。ガラスの凹み量が大きくなるにしたがって光源の画像のピントのずれが大きくなっている。
【0036】
また、画像について明るさの度数分布を測定した結果は、いずれのサンプルについても、明るさが234〜255の範囲にはいる度数は一つもないことを示している。この測定結果は、画像解析によって求めた明るさの度数分布を基準として、製品の良否判定を行うことが有効であることを示す。明るさの度数分布を基準にして良否判定する際の基準は、適宜設定すればよいが、例として、明るさが234〜255の範囲にはいる度数が1つでもあれば良品とし、度数が1つもない場合には不良品とする方法が考えられる。
【0037】
本実施形態においては、ガラス封止部のガラス表面のアイレット表面からの凹み量を0.5mmまでは許容する条件として、光学系の被写界深度等の各種条件を設定した。明るさが234〜255の範囲について度数分布を調べたものも便宜的なものであって、判定条件は製品により、あるいは良否の判定条件によって適宜設定すればよい。
なお、上述した説明において、明るさが234〜255の範囲等した場合の「明るさ」は、画像データとして取得された明るさそのものを指しているのではなく、微分処理を行った後の画像における明るさである。もちろん、微分処理を行わない状態での画像内における明るさを比較して明るさについての度数分布を計測し、その結果に基づいて良否判定ができる場合には、画像の微分処理を行わなくてもよい。
【0038】
本発明に係るガラス封止部の検査方法は、ガラス封止部にリング照明部の光源の像を写り込ませ、光源の像のピント状態を検知してガラス封止部におけるガラスの状態(充填状態、ガラスの平面形状)を検知するものである。したがって、位置センサを用いて被検査体の表面位置を正確に測定するといった方法と比較すれば、測定精度は劣るが、上述した実施形態のように、ガラス表面の変位量が0.5mmを良否基準とし、測定誤差が±0.1mm程度まで許容する条件の場合には、有効に利用することができる。
【0039】
また、上記実施形態において、照明体としてリング照明部24を使用し、ガラス封止部にリング照明部24に設けたリング状の光源を写り込むように設定することにより、リード10の周囲を封止するガラス14の表面状態を周方向にわたって簡単に検知することができる。たとえば、ガラス封止部に写り込んだ光源の像が周方向に連続しない状態になれば、ガラスの表面が傾斜した状態にあるといったことを知ることができる。
照明体は、周方向に連続して光源を配置するかわりに、周方向に所定間隔をおいて複数個所に光源を配置する方法であっても、ガラスの周方向における表面状態を検知することができる。
本実施形態においては、ガラス封止部のガラスの表面の位置が1個所でも、基準位置(ガラスの凹み量が0.5mm以下)を超えれば良品とするから、このような場合には、リング状の光源を使用することは有効である。
【0040】
上述した実施形態は、ガラス端子のリードをガラス封止した部分に適用した例であるが、本発明はリードを封止したガラス封止部についての検査のみに適用されるものではない。たとえば、基体に設けた透孔をガラス封止したような場合に、そのガラスによる封止状態を検査するといったような場合にも、同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ガラス封止部の検査装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】ガラス封止部の構成と、ガラス封止部の画像データである。
【図3】ガラス封止部のガラスによる光反射を示す説明図である。
【図4】画像処理のフロー図である。
【図5】画像データと画像内の光源の像の明るさを示すグラフである。
【図6】画像データを微分処理し、不要部分を除去した画像である。
【図7】画像データを微分処理し、不要部分を除去した画像である。
【図8】画像データを微分処理し、不要部分を除去した画像である。
【図9】画像データを微分処理し、不要部分を除去した画像である。
【図10】不良品のガラス封止部について画像データ及び度数分布を示す図である。
【図11】光半導体装置のガラス封止部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 リード
12 アイレット
12a 挿通孔
14 ガラス
20 ガラス端子
21 リード
22 セット台
24 リング照明部
24a LED
24b 開口
25 照明電源
26 光学レンズ
28 CCDカメラ
30 撮像光学系
32 画像解析部
34 入力部
36 モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス封止部を備える被検査体を検査位置に支持する支持部と、
前記被検査体の上方に配置され、前記被検査体を照明する、リング状に光源が配置されたリング照明部と、
該リング照明部の開口を通して、前記ガラス封止部に写り込む前記リング照明部の光源の画像とともに前記ガラス封止部を撮影する撮像光学系と、
該撮像光学系により撮影された画像データを解析し、前記ガラス封止部におけるガラスの表面状態を解析する画像解析部と
を備えることを特徴とするガラス封止部の検査装置。
【請求項2】
前記撮像光学系は、前記ガラス封止部におけるガラスの表面位置の変位が、前記ガラス封止部に写り込む前記リング照明部の光源の画像のピント状態の変化としてとらえられるように被写界深度が設定されていることを特徴とする請求項1記載のガラス封止部の検査装置。
【請求項3】
前記画像解析部は、前記画像データの明るさの度数分布を計測する手段を備えていることを特徴とする請求項1または2記載のガラス封止部の検査装置。
【請求項4】
前記画像解析部は、前記画像データを微分処理し、画像データの明るさに変換する手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のガラス封止部の検査装置。
【請求項5】
前記リング照明部は、複数個のLEDを円環状に配置した光源を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のガラス封止部の検査装置。
【請求項6】
ガラス封止部を備える被検査体の前記ガラス封止部に設けられたガラスの表面状態を検査する検査方法であって、
リング照明部によりガラス封止部を備える被検査体を照明し、撮像光学系を用いて、前記ガラス封止部に写り込む前記リング照明部の光源の画像とともに前記ガラス封止部を撮影する工程と、
画像解析部により、前記撮像光学系により撮影された画像データを解析し、前記ガラス封止部におけるガラスの表面状態を解析する工程とを備え、
前記撮像光学系は、前記ガラス封止部におけるガラスの表面位置の変位が、前記ガラス封止部に写り込む前記リング照明部の光源の画像のピント状態の変化としてとらえられるように設定され、
前記ガラスの表面状態を解析する工程においては、前記画像データの明るさの度数分布を計測する工程を備え、前記画像データの明るさの度数分布に基づいて前記ガラスの表面の状態を検知することを特徴とするガラス封止部の検査方法。
【請求項7】
前記リング照明部により前記被検査体を照明する工程においては、
円環状に光源を配置したリング照明部を使用することを特徴とする請求項6記載のガラス封止部の検査方法。
【請求項8】
前記画像解析部によりガラスの表面状態を解析する工程においては、画像データを微分処理する工程を備え、
前記画像データの明るさの度数分布を計測する工程においては、前記微分処理を施した画像データについて度数分布を計測することを特徴とする請求項6または7記載のガラス封止部の検査方法。
【請求項9】
前記画像解析部によりガラスの表面状態を解析する工程においては、
画像データの不要部分を除去する工程を備えることを特徴とする請求項8記載のガラス封止部の検査方法。
【請求項10】
アイレットにリードをガラス封止したガラス封止部を備えるガラス端子を被検査体とする場合であって、
前記リング照明部により前記被検査体を照明する工程においては、円環状に光源を配置したリング照明部を使用し、
前記画像解析部によりガラスの表面状態を解析する工程においては、前記画像データを微分処理する工程と、前記画像データから前記リード及び前記アイレットの不要部分を除去する工程と、前記微分処理を施した画像データについて度数分布を計測する工程を備えることを特徴とする請求項6記載のガラス封止部の検査方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図11】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−133717(P2010−133717A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307094(P2008−307094)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】