説明

ガラス封着体、および、その製造方法

【課題】 放電空間の排気効率を維持しつつ、パネルと排気管との封着強度を高める。あるいは、パネルと排気管との封着強度を維持しつつ、放電空間の排気効率を高める。
【解決手段】ガラス封着体10は、平面表示装置の背面パネル40の外表面43と排気管60の先端面63とにより狭持された状態で軟化させて、背面パネル40に形成された排気孔42と排気管60の管内部61とが連通するように背面パネル40に排気管60を封着する。ガラス封着体10は、本体部11および環体部21を有する。本体部11は、円板形状のフリットガラスからなり、その中央に貫通孔12が形成されている。環体部21は、環状のフリットガラスからなり、本体部11の外周部分から本体部11の一方の面13上に突出している。本体部11を構成するフリットガラスの軟化点は、環体部21を構成するフリットガラスの軟化点に比べて低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面表示装置のパネルに排気管を封着するためのガラス封着体、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平面表示装置の背面パネルに排気管を封着するための従来のガラス封着体について、図8ないし図10を用いて説明する。図8(a)は、従来のガラス封着体を示した下面図であり、図8(b)は、図8(a)のXIII−XIII矢視断面図である。図9は、従来のガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着前におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。図10(a)は、従来のガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着後におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図であり、図10(b)は、図10(a)の部分拡大図である。
【0003】
例えば、プラズマディスプレイパネルなどの平面表示装置は、ガラス基板からなる前面パネル130および背面パネル140を有し、前面パネル130および背面パネル140の一方の面131,141には、それぞれ電極や蛍光面(図示しない)が形成されている。前面パネル130と背面パネル140とは、電極が形成された面131,141同士を対向させて、間隔を空けて配置されている。この間隔は、放電空間150と呼ばれ、ネオン(Ne)やキセノン(Xe)などの放電ガスが充填されている。
【0004】
ここで、平面表示装置の放電空間150の形成過程について、図9および図10を用いて説明する。
【0005】
まず、固定治具(図示しない)により、前面パネル130が上側、背面パネル140が下側に配置されように、前面パネル130および背面パネル140を水平に固定する。背面パネル140には、排気および放電ガスの充填のための排気孔142が形成されている。
【0006】
次に、背面パネル140の排気孔142と排気管160の管内部161とが連通するように、貫通孔112が形成されたガラス封着体110を介して、背面パネル140の下面143に排気管160を下方から押し当てる。
【0007】
次に、背面パネル140に排気管160を押し当てた状態で、フリットガラスからなるガラス封着体110を加熱し軟化させた後、冷却し硬化させることにより、背面パネル140に排気管160を封着する。
【0008】
その後、排気管160の下端側に排気装置(図示しない)を取り付けて、排気管160を介して、放電空間150の排気および放電空間150への放電ガスの充填を行い、排気管160を封じ切る。
【0009】
ここで、従来のガラス封着体110について、図8を用いて説明する。図8において、説明の都合上、本体部111と環体部121との境界を点線で描いた。
【0010】
ガラス封着体110は、本体部111および環体部121が一体に成型されてなる。本体部111は、その中央に貫通孔112が形成された円板状体である。また、環体部121は、本体部111の外縁から本体部111の一方の面113上に突出し、その内径が貫通孔112の径より大きい環状体である。本体部111と環体部121とは、同一の組成からなるフリットガラスにより構成されている。
【0011】
ガラス封着体110を介して背面パネル140に排気管160を下方から押し当てた状態では、本体部111の他方の面114が、背面パネル40の下面143に接触している。また、環体部121の環内部122には、排気管160の先端部162が挿入され、本体部111の一方の面113が、排気管160の先端面163に接触している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−234283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題について、図10を用いて説明する。
【0014】
背面パネル140に封着された排気管160に荷重が掛かると、ガラス封着体110が背面パネル140の下面143や排気管160の側面164から剥がれて、排気管160が背面パネル140から外れてしまう。
【0015】
特に、背面パネル140とガラス封着体110との濡れ角θ、あるいは、排気管160とガラス封着体110との濡れ角φが大きいと、ガラス封着体110が背面パネル140や排気管160から剥がれやすく、背面パネル140と排気管160との封着強度が低い。理想的には、封着ガラス110が背面パネル140の下面143や排気管160の側面164に向かって裾が広がるような形状(濡れ角θが90°以下)となるのが好ましい。
【0016】
ここで、軟化点の高いフリットガラスにより構成されたガラス封着体110を用いると、フリットガラスの軟化時において、フリットガラスの濡れ性が小さい。そのため、封着後において、背面パネル140とガラス封着体110との濡れ角θ、および、排気管160とガラス封着体110との濡れ角φが大きくなり、背面パネル140と排気管160との封着強度が低くなってしまう。
【0017】
一方、軟化点の低いフリットガラスにより構成されたガラス封着体110を用いると、フリットガラスの軟化時において、フリットガラスの濡れ性が大きい。そのため、封着後において、濡れ角θ,φが小さくなり、背面パネル140と排気管160との封着強度が高まる。
【0018】
ところで、上述したとおり、背面パネル140に排気管160を封着した後、排気装置により、排気管160を介して、放電空間150を排気する。この放電空間150の排気は、排気効率を高めるため、高温雰囲気下で行われることが好ましい。
【0019】
しかし、背面パネル140と排気管160との封着強度を考慮して、軟化点の低いフリットガラスにより構成されたガラス封着体110を用いると、放電空間150の排気時に、フリットガラスが軟化して、その軟化したフリットガラスが排気装置に吸い込まれ、排気装置が破損してしまう。
【0020】
要するに、封着強度を高めるために、軟化点の低いフリットガラスを用いると、排気時の雰囲気温度を下げる必要があるため、排気効率が低くなってしまう。逆に、排気効率を高めるために、排気時の雰囲気温度を上げるためには、軟化点の高いフリットガラスを用いる必要があり、そうすると、封着強度が低くなってしまう。
【0021】
そこで、本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、放電空間の排気効率を維持しつつ、パネルと排気管との封着強度を高めること、あるいは、パネルと排気管との封着強度を維持しつつ、放電空間の排気効率を高めることができるガラス封着体110を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的を達成するために、本発明に係るガラス封着体は、平面表示装置のパネルの外表面とその外表面に対して起立して配置された排気管の先端面とにより狭持された状態で軟化させて、前記パネルに形成された排気孔と排気管の管内部とが連通するように前記排気管を前記パネルの外表面に封着するガラス封着体であって、フリットガラスから構成されて中央に貫通孔が形成されたディスク状の本体部と、前記本体部を構成するフリットガラスに比べて軟化点の低いフリットガラスから構成されて前記本体部の外周部分に一体に設けられたリング状の環体部と、を具備したことを特徴とする。
【0023】
上記の目的を達成するために、本発明に係るガラス封着体の製造方法は、フリットガラスから構成されて中央に貫通孔が形成された円板状の本体部と、前記本体部を構成するフリットガラスに比べて軟化点の低いフリットガラスから構成されて前記本体部の外周面に一体に設けられたリング状の環体部とを具備し、平面表示装置のパネルの外表面とその外表面に対して起立して配置された排気管の先端面とにより狭持された状態で軟化させて、前記パネルに形成された排気孔と排気管の管内部とが連通するように前記排気管を前記パネルの外表面に封着するガラス封着体の製造方法であって、ガラス粉末、コージェライト、ジルコンおよびバインダを含む造粒物をプレス成型して、中央に貫通孔が形成された円板状の第1成型体を得る工程と、ガラス粉末、コージェライト、ジルコンおよびバインダを含む造粒物をプレス成型して、内径が前記第1成型体の外径より大きいリング形状であって充填率が前記第1成型体より小さい第2成型体を得る工程と、前記第2成型体の環内部の一端に前記第1成型体を配置して、前記第1成型体および前記第2成型体を焼成して、前記第1成型体と前記第2成型体とを一体にする工程と、を具備したことを特徴とするガラス封着体の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、放電空間の排気効率を維持しつつ、パネルと排気管との封着強度を高めること、あるいは、パネルと排気管との封着強度を維持しつつ、放電空間の排気効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体を示したものであって、(a)は、上面図、(b)は、(a)のI−I矢視断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着前におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。
【図3】(a)は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着後におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図であり、(b)は、(a)の部分拡大図である。
【図4】本発明の第1の実施形態(実施例1ないし3)に係るガラス封着体および比較例に係るガラス封着体の組成、軟化点および評価等を示した表である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体の製造過程を示したフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るガラス封着体を示したものであって、(a)は、上面図、(b)は、(a)のVI−VI矢視断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るガラス封着体を示したものであって、(a)は、上面図、(b)は、(a)のVII−VII矢視断面図である。
【図8】従来のガラス封着体を示したものであって、(a)は、下面図、(b)は、(a)のVIII−VIII矢視断面図である。
【図9】従来のガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着前におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。
【図10】(a)は、従来のガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着後におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図であり、(b)は、(a)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施形態]
本発明のガラス封着体の第1の実施形態について、図1ないし図5を用いて説明する。
【0027】
まず、本実施形態に係るガラス封着体10が適用される平面表示装置について、図2および図3を用いて説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着前におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図である。図3(a)は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体による封着を説明するための図であって、封着後におけるパネル、排気管およびガラス封着体を示した断面図であり、図3(b)は、図3(a)の部分拡大図である。
【0028】
ガラス封着体10が適用される平面表示装置として、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマアドレスリキッドクリスタルディスプレイ(PALC)、あるいは、蛍光表示管(VFD)が挙げられる。以下、PDPを例にして説明する。
【0029】
PDPは、ガラス基板からなる前面パネル30および背面パネル40を有する。図示しないが、前面パネル30の一方の面(電極形成面)31上には、表示電極が形成され、背面パネル40の一方の面(電極形成面)41上には、アドレス電極や蛍光面が形成されている。
【0030】
前面パネル30と背面パネル40とは、互いの電極形成面31,41同士を対向させて、間隔を空けて配置されている。この間隔は、放電空間50と呼ばれ、ネオン(Ne)やキセノン(Xe)などの放電ガスが充填されている。
【0031】
ここで、平面表示装置の放電空間50の形成過程について、図2および図3を用いて説明する。
【0032】
まず、固定治具(図示しない)により、前面パネル30が上側、背面パネル40が下側に配置されるように、前面パネル30および背面パネル40を水平に固定する。背面パネル40には、排気および放電ガスの充填のための排気孔42が形成されている。
【0033】
次に、背面パネル40の排気孔42の軸中心、ガラス封着体10の軸中心、および、排気管60の軸中心が一致するように、ガラス封着体10を介して、背面パネル40の下面(背面パネル40の外表面)43に排気管60を下方から垂直に押し当てる。このとき、ガラス封着体10は、背面パネル40と排気管60とにより狭持されている。ガラス封着体10には、貫通孔12が形成されているため、背面パネル40の排気孔42と排気管60の管内部61とが連通している。
【0034】
次に、背面パネル40に排気管60を押し当てた状態で、フリットガラスからなるガラス封着体10を加熱し軟化させた後、冷却し硬化させることにより、背面パネル40に排気管60を封着する。
【0035】
その後、排気管60の下端側に排気装置(図示しない)を取り付けて、排気管60の管内部61を介して、放電空間50の排気および放電空間50への放電ガスの充填を行い、排気管60を封じ切る。
【0036】
次に、本実施形態に係るガラス封着体10の構造について、図1ないし図4を用いて説明する。図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体を示した下面図であり、図1(b)は、図1(a)のI−I矢視断面図である。図4は、本発明の第1の実施形態(実施例1ないし3)に係るガラス封着体および比較例に係るガラス封着体の組成、軟化点および評価等を示した表である。
【0037】
ガラス封着体10は、本体部11および環体部21を有する。本体部11は、円板形状のフリットガラスからなり、その中央に貫通孔12が形成されている。環体部21は、環状のフリットガラスからなる。環体部21は、本体部11の外周部分から本体部11の一方の面(本体部11の突出側の面)13上に突出している。詳しくは、環体部21の一端の内周面と本体部11の外周面とが接していて、本体部11と環体部21とが一体となっている。
【0038】
ガラス封着体10を介して背面パネル40に排気管60を押し当てた状態では、本体部11の突出側の面13と反対側の面14が、背面パネル40の外表面(背面パネル40の下面)43に接触している。また、環体部21の環内部22には、排気管60の先端部62が挿入され、排気管60の先端面63が、本体部11の突出側の面13に接触している。
【0039】
なお、排気管60の先端部62が環体部21の環内部22に挿入できるように、環体部21の内径は、排気管60の先端面63の外径より僅かに大きい。また、本体部11の貫通孔12の径は、排気管60の先端面63の内径より小さい。
【0040】
本体部11および環体部21は、互いに異なるフリットガラスから構成されている。本体部11および環体部21を構成するフリットガラスは、鉛ホウ酸系ガラスでも良いが、環境上の観点から、ビスマス系ガラスが好ましい。背面パネル40および排気管60を構成するガラスの軟化点は、700〜850℃程度であるが、本体部11および環体部21を構成するフリットガラスの軟化点は、それに比べて低く、例えば、400〜500℃程度である。
【0041】
本体部11を構成するフリットガラスの軟化点は、環体部21を構成するフリットガラスの軟化点に比べて高い。例えば、図4に示したように、実施例1に係るガラス封着体10の本体部11および環体部21を構成するフリットガラスの軟化点は、それぞれ456℃、439℃である。
【0042】
次に、図4に示した実施例1ないし3に係るガラス封着体10の製造方法について、図4および図5を用いて説明する。図5は、本発明の第1の実施形態に係るガラス封着体の製造過程を示したフローチャートである。
【0043】
まず、図5に示したガラス組成となるように、各酸化物(Bi,B,ZnO,Al,SiO,CeO,Fe,CuO)を調合した2種のガラスバッチを用意する(S1,S7)。この2種のガラスバッチのそれぞれを熔解し、フレーク状に成形(S2,S8)した後、粉砕して、2種のガラス粉末を得る(S3,S9)。
【0044】
次に、この2種のガラス粉末のそれぞれにコージェライト、ジルコン、および、有機バインダを加えて混練し(S4,S10)、スプレードライヤにより造粒する(S5,S11)。
【0045】
次に、この2種の造粒物をそれぞれ金型に入れて、本体部11および環体部21の形状にプレス成型する(S6,S12)。ここで、環体部21の形状の成型物(第1成型体)が、本体部11の形状の成型物(第2成型体)に比べて、充填率(成型物の嵩密度/フリットガラスの真密度)が小さくなるように、プレス成型する(S6,S12)。
【0046】
その後、この2種の成型物をガラス封着体10の形状になるように組み合わせて焼成し(S7)、実施例1〜3に係るガラス封着体10を得る。環体部21の形状の成型物が、本体部11の形状の成型物に比べて、充填率が小さいので、焼成すると(S7)、環体部21の形状の成型物が、本体部11の形状の成型物に比べて、大きく縮径する。その結果、本体部11と環体部21とが一体となったガラス封着体10が得られる。
【0047】
なお、図5に示した比較例1および2に係るガラス封着体110は、本体部11および環体部21を構成するフリットガラスの組成が同一であるため、上述のS1〜S5の後に、造粒物をそれぞれ金型に入れて、ガラス封着体110の形状にプレス成型する(S6)。その後、この成型物を焼成して(S7)、比較例1および2に係るガラス封着体10を得る。
【0048】
次に、本実施形態に係るガラス封着体10の作用について、図3、図4、図6および図11を用いて説明する。
【0049】
上述したとおり、背面パネル40に封着された排気管60に荷重が掛かった場合に、背面パネル40の外表面43とガラス封着体10との濡れ角θ(以下、単に「濡れ角θ」という)が大きい程、ガラス封着体10の背面パネル40との接触部分に応力が集中しやすく、ガラス封着体10が背面パネル40から剥がれやすくなる。そのため、背面パネル40と排気管60との封着強度が低下する。一方、この濡れ角θが小さい程、ガラス封着体10の背面パネル40との接触部分に掛かる応力が分散され、ガラス封着体10が背面パネル40から剥がれにくくなる。そのため、背面パネル40と排気管60との封着強度を向上できる。
【0050】
図4に示したとおり、比較例1に係る従来のガラス封着体110を用いて、490℃で背面パネル40に排気管60を封着した場合には、濡れ角θは、114°となった。一方、実施例1ないし3に係るガラス封着体10を用いて、490℃で背面パネル40に排気管60を封着した場合には、濡れ角θは、それぞれ90°、86°、89°となり、比較例1に係るガラス封着体110を用いた場合に比べて小さくなった。
【0051】
すなわち、実施例1ないし3に係るガラス封着体10を用いると、比較例1に係る環体部110を用いた場合に比べて、背面パネル40と排気管60との封着強度を向上できる。
【0052】
この理由は、実施例1ないし3に係る環体部21が、比較例1に係る環体部121に比べて、軟化点の低い(流動性の大きい)フリットガラスにより構成されているからである。なお、図4に示した流動性とは、1cmの体積分(比重重量)のフリットガラスをφ12.7mmの円柱にプレス成型し、その成型物をガラス基板上に固定した状態において、490℃で10分間加熱して、フリットガラスが軟化流動した後の成型物の外径を測定したものである。
【0053】
ところで、上述したとおり、背面パネル40に排気管60を封着した後、排気装置により、排気管60を介して、放電空間50を排気する。この放電空間50の排気は、排気効率を高めるため、高温雰囲気下で行われることが好ましい。その一方、雰囲気の温度が高過ぎると、フリットガラスが軟化して、その軟化したフリットガラスが排気装置に吸い込まれ、排気装置が破損してしまう。
【0054】
ここで、比較例2に係るガラス封着体110は、実施例1ないし3に係るガラス封着体10を用いた場合と同程度の濡れ角θを形成するものである。この比較例2に係るガラス封着体110を用いて封着した場合において、その本体部111を構成するフリットガラスを470℃の雰囲気温度で放電空間150を排気すると、フリットガラスが軟化して、その軟化したフリットガラスが排気装置に吸い込まれるおそれがある。
【0055】
一方、実施例1ないし3に係るガラス封着体10を用いた場合において、その本体部11は排気管60の管内部61の空間に接するが、環体部21は管内部61に接していない。そのため、雰囲気温度を520℃と高くして放電空間50を排気しても、環体部21を構成するフリットガラスが排気装置によって管内部61側に吸い込まれるおそれがない。
【0056】
すなわち、実施例1ないし3に係るガラス封着体10を用いると、比較例2に係る環体部110を用いた場合に比べて、放電空間50の排気時の雰囲気温度を高くすることができるため、放電空間50の排気効率を高めることができる。
【0057】
本実施形態によれば、放電空間の排気効率を維持しつつ、パネルと排気管との封着強度を高めること、または、パネルと排気管との封着強度を維持しつつ、放電空間の排気効率を高めることができる。
【0058】
また、実施例1ないし3に係るガラス封着体10を用いると、比較例1に係る環体部110を用いた場合に比べて、排気管60の側面64とガラス封着体10との濡れ角φを小さくなり、背面パネル40と排気管60との封着強度を向上できる。
【0059】
[第2の実施形態]
本発明のガラス封着体の第2の実施形態について、図6を用いて説明する。図6(a)は、本発明の第2の実施形態に係るガラス封着体を示した上面図であり、図6(b)は、図6(a)のVI−VI矢視断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であるため、重複説明を省略する。
【0060】
本実施形態に係るガラス封着体10は、本体部11および環体部21を有する。本体部11は、円板形状のフリットガラスからなり、その中央に貫通孔12が形成されている。環体部21は、環状のフリットガラスからなる。環体部21は、本体部11の外周部分に配置されている。詳しくは、環体部21の内周面と本体部11の外周面とが接している。そして、本体部11と環体部21とが一体となって、円板形状を形成している。
【0061】
本体部11を構成するフリットガラスの軟化点は、環体部21を構成するフリットガラスの軟化点に比べて高い。
【0062】
本実施形態に係るガラス封着体10によっても、放電空間の排気効率を維持しつつ、パネルと排気管との封着強度を高めること、または、パネルと排気管との封着強度を維持しつつ、放電空間の排気効率を高めることができる。
【0063】
[第3の実施形態]
本発明のガラス封着体の第3の実施形態について、図7を用いて説明する。図7(a)は、本発明の第3の実施形態に係るガラス封着体を示した上面図であり、図7(b)は、図7(a)のVII−VII矢視断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であるため、重複説明を省略する。
【0064】
本実施形態に係るガラス封着体10は、本体部11および環体部21を有する。本体部11は、円板形状のフリットガラスからなり、その中央に貫通孔12が形成されている。環体部21は、環状のフリットガラスからなる。環体部21は、本体部11の外周部分から本体部11の一方の面13上に突出している。詳しくは、環体部21の一端面と本体部11の一方の面13とが接していて、本体部11と環体部21とが一体となっている。
【0065】
本体部11を構成するフリットガラスの軟化点は、環体部21を構成するフリットガラスの軟化点に比べて高い。
【0066】
本実施形態に係るガラス封着体10によっても、放電空間の排気効率を維持しつつ、パネルと排気管との封着強度を高めること、または、パネルと排気管との封着強度を維持しつつ、放電空間の排気効率を高めることができる。
【0067】
[他の実施形態]
第1ないし第3の実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、第1ないし第3の実施形態では、背面パネル40の外表面43が下面となるように背面パネル40を配置して、下方から排気管60を押し当てているが、逆に、背面パネル40の外表面43が上面となるように背面パネル40を配置して、上方から排気管60を押し当てても良い。
【符号の説明】
【0068】
10…ガラス封着体、11…本体部、12…貫通孔、13…本体部の一方の面、14…本体部の他方の面、15…本体部の外周面、21…環体部、22…環体部の環内部、30…前面パネル、31…前面パネルの電極形成面、40…背面パネル、41…背面パネルの電極形成面、42…背面パネルの排気孔、43…背面パネルの外表面、50…放電空間、60…排気管、61…排気管の管内部、62…排気管の先端部、63…排気管の先端面、64…排気管の側面、110…ガラス封着体、130…前面パネル、140…背面パネル、150…放電空間、160…排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面表示装置のパネルの外表面とその外表面に対して起立して配置された排気管の先端面とにより狭持された状態で軟化させて、前記パネルに形成された排気孔と排気管の管内部とが連通するように前記排気管を前記パネルの外表面に封着するガラス封着体であって、
フリットガラスから構成されて中央に貫通孔が形成された板状の本体部と、
前記本体部を構成するフリットガラスに比べて軟化点の低いフリットガラスから構成されて前記本体部の外周部分に一体に設けられたリング状の環体部と、
を具備したことを特徴とするガラス封着体。
【請求項2】
前記環体部の内周面が前記本体部の外周面と接していることを特徴とする請求項1に記載のガラス封着体。
【請求項3】
前記環体部は、前記本体部の一方の面上に突出していることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス封着体。
【請求項4】
前記本体部は、前記貫通孔が前記排気孔および前記排気管の管内部と連通するように配置され、前記パネルの外表面と前記環体部の環内部に挿入された前記排気管の先端面とに狭持されることを特徴とする請求項3に記載のガラス封着体。
【請求項5】
前記本体部は円板形状であって、前記本体部の外径が前記排気管の先端面の内径より大きいことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のガラス封着体。
【請求項6】
前記貫通孔の径が前記排気管の先端面の内径より小さいことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のガラス封着体。
【請求項7】
前記本体部および前記環体部を構成するフリットガラスが酸化ビスマス系フリットガラスであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のガラス封着体。
【請求項8】
フリットガラスから構成されて中央に貫通孔が形成された円板状の本体部と、前記本体部を構成するフリットガラスに比べて軟化点の低いフリットガラスから構成されて前記本体部の外周面に一体に設けられたリング状の環体部とを具備し、平面表示装置のパネルの外表面とその外表面に対して起立して配置された排気管の先端面とにより狭持された状態で軟化させて、前記パネルに形成された排気孔と排気管の管内部とが連通するように前記排気管を前記パネルの外表面に封着するガラス封着体の製造方法であって、
ガラス粉末、コージェライト、ジルコンおよびバインダを含む造粒物をプレス成型して、中央に貫通孔が形成された円板状の第1成型体を得る工程と、
ガラス粉末、コージェライト、ジルコンおよびバインダを含む造粒物をプレス成型して、内径が前記第1成型体の外径より大きいリング状であって充填率が前記第1成型体より小さい第2成型体を得る工程と、
前記第2成型体の環内部の一端に前記第1成型体を配置して、前記第1成型体および前記第2成型体を焼成して、前記第1成型体と前記第2成型体とを一体にする工程と、
を具備したことを特徴とするガラス封着体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−3397(P2011−3397A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145488(P2009−145488)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】