説明

ガラス板の支持構造

【課題】外壁として立設する高さが6mを超えるような大寸法のガラス板をセッティングブロックを介して下部フレーム内に自立支持させ、層間変位があっても破損させないようにする。
【解決手段】外壁として立設する面ガラス板の下辺にセッティングブロックを介して面ガラス板を自立させて支持するガラス板の支持構造において、前記隣接する矩形状の面ガラス板の四隅部に弾力性のある合成ゴム製または樹脂製の略三角形状のキャップを被着させ、さらに各キャップの外周面には硬質の樹脂製のL型部材を接着させて、並設する面ガラス板の夫々に被着したL型部材同士を背中合わせで当接させて、面ガラス板間の目地部の間隔を保持すると共に、地震による層間変位によって面ガラス板がロッキングした時の前記目地部の間隔を一定となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁として立設するガラス板の支持構造に関し、特に高さが約6メートルを超える大寸法であるガラス板をセッティングブロックを介して下部フレーム枠内で自立支持させ、地震による層間変位があってもガラス板を破損させないガラス板の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、採光、美観等を目的として、建物の外壁に大板ガラスを並設し大開口窓部を構成するガラススクリーンの形成において、ガラスリブを面ガラス板の各縦辺部に直交するように立設してシーリング材で接着し、面ガラス板を支持するガラスリブ工法や、面ガラス板の室内側に設けた金属製のバックマリオンに面ガラス板を構造用シーリング材によって接着支持させるSSG(Structural Sealant Glazing System)工法等の各種の方法が採用されてきた。
【0003】
前記リブガラスを用いるガラスリブ工法には、自立させる面ガラス板の自重による撓みと面ガラス板に加わる風荷重とをリブガラスを用いて支持するガラスリブ工法と、ガラス板の上端を吊り下げて支持する吊り下げリブ工法があり、立設する面ガラス板の高さや、該面ガラス板の厚み等によって選定基準が異なるが、例えばガラス板の板厚が19ミリの場合、概ね面ガラス板の高さが6メートル未満と低い場合は、ガラスリブ工法が用いられ、6メートル以上と高くなると、吊り下げリブ工法が用いられ、板厚が10ミリの場合、面ガラス板の高さが4.5メートル未満と低い場合は、ガラスリブ工法、4.5メートル以上と高くなると、吊り下げリブ工法が用いられている。
【0004】
また、ガラスリブを使わずサッシ枠等によって面ガラス板を支持する場合においても、ガラスリブを用いる場合と同様に、ガラス板の板厚19ミリで面ガラス板の高さが6メートル未満の場合には自立工法であり、6メートル以上の場合には、吊下げ工法が用いられている(非特許文献1)。
【0005】
前記吊下げ工法や、吊下げリブ工法の場合には、ガラス板を吊下げるための専用の吊下げ金具や、ガラス板の上部にガラス板の荷重を支えるための下地鉄骨の敷設が別途必要となり、コスト高要因となっていた。このため、近年、高さ寸法が6メートルを超える大板ガラスの場合でもガラス板をセッティングブロックを介して下部フレーム枠に直置きさせ自立させる試みが行なわれるようになってきた。
【0006】
しかしながら、高さが6メートルを超えるような大板ガラスをセッティングブロックを介して自立させると、大板ガラスの荷重は直方体形状のセッティングブロックに集中するため、この状態で、地震等による層間変位によって面ガラス板がロッキングしようとするとき、面ガラス板の下端辺はセッティングブロックの上部稜線部に線条で当接するため、合成ゴム製や合成樹脂製のセッティングブロックとするとセッティングブロックがガラス板の荷重で破損するトラブルが発生し、セッティングブロックを硝子板の荷重に耐えられる硬質樹脂製または金属製とすると、層間変位時や風圧荷重によるガラス板の揺動によってセッティングブロックとの当接部よりガラス板が破損するといったトラブルが発生するようになった。
【0007】
地震等による層間変位によって面ガラス板のロッキングを容易とする工夫としては、例えば、特開昭60−188563号公報には、対象となる壁パネルがガラス板ではなく、ALC板、PC板、軽量コンクリート板、硅酸カルシウム板、岩綿押出成形板、セラミック板、石膏板などその材質が比較的柔らかいものであるが、壁パネルの相対する端辺を保持する壁パネル受け材と、壁パネルとの間にクリアランスを有し、前記壁パネルの一端辺中心部には壁を面内方向で回転させる支点を設けてあることを特徴とする非耐力壁の耐震ジョイントが記載されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開昭60−188563号公報
【非特許文献1】板ガラス総合カタログ、セントラル硝子株式会社発行、2003年1月1日印刷発行(第105頁、表1「ガラス・スクリーン工法の選定基準」)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1は、パネル材の下端面に直接金属棒を当接、あるいは下端面に切欠き部を設けて該切欠き部に金属棒を当接させて該金属棒を支点にして、あるいはまた下端面に金属板の中央部に円形突起部を下向きに膨出させたものを壁パネルの中央下端部にビス等で取り付けて、該円形突起部を支点にしてパネルを面内方向に回転させようとするもので、パネル材に代えてガラス板としたとき、パネル材の下端面に直接金属棒を当接したり、あるいは下端面に切欠き部を設けて該切欠き部に金属棒を当接させ、該金属棒を支点にしてガラス板を支持すると、ガラス板は該支点部より割れる恐れが高いという問題点があった。
【0009】
また、ガラス板の下端面に金属板の中央部に円形突起部を下向きに膨出させたものを壁パネルの中央下端部に取り付けるに当り、ガラス板端面にビスで取り付けることはできないという問題点があった。
【0010】
これに対して、本発明は、通常、吊下げ工法や、吊下げリブ工法が採用されるような高さ寸法が6メートルを超えるガラス板であっても、複数個のセッティングブロックを介して自立させ、地震による層間変位がおきてもガラス板やセッティングブロックを破損させることなく容易にガラス板をロッキングさせることができることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、外壁として立設する面ガラス板の下辺にセッティングブロックを介して面ガラス板を自立させて支持するガラス板の支持構造において、前記隣接する矩形状の面ガラス板の四隅部に弾力性のある合成ゴム製または樹脂製の略三角形状のキャップを被着させ、さらに各キャップの外周面には硬質の樹脂製のL型部材を接着させて、並設する面ガラス板の夫々に被着したL型部材同士を背中合わせで当接させて、面ガラス板間の目地部の間隔を保持すると共に、地震による層間変位によって面ガラス板がロッキングした時の前記目地部の間隔を一定となるようにしたことを特徴とするガラス板の支持構造である。
【0012】
あるいは、本発明は、前記面ガラス板の下部隅部のL型部材に代えて、面ガラス板の下部隅部に被冠させた隣接するキャップ間に、下部フレーム枠側より立設した金属製の下部固定板を設け、面ガラス板間の目地部の下部側の間隔を保持すると共に、層間変位時のガラス板のロッキング時に面ガラス板の下端部の位置が面内方向にずれないようにして、層間変位前後の面ガラス板の下端位置を一定とすることができることを特徴とする上述のガラス板の支持構造である。
【0013】
あるいはまた、本発明は、前記キャップおよびL型部材を面ガラス板の工場出荷前に面ガラス板の四隅部に予め接着したことを特徴とする上述のガラス板の支持構造である。
【発明の効果】
【0014】
通常であれば、吊下げ工法や、吊下げリブ工法を採用するような高さ寸法である6メートルを超えるガラス板であっても、複数個のセッティングブロックを介して自立させることができるので、吊下げ工法や、吊下げリブ工法のようなガラス板の上端辺を挟持する吊下げ金具や、ガラス板を吊下げ支持する為の下地鉄骨を設けないで、地震による層間変位時に面ガラス板をロッキングさせて、ガラス板を破損させないガラス板の支持構造とすることができる。
【0015】
さらにまた、前記隣接する矩形状のガラス板の四隅部に弾力性のあるゴム製または樹脂製のキャップを設け、さらに各キャップの外周面に硬質樹脂製のL型部材を接着させたので、ガラス板を左右に並設させると、各ガラス板のL型部材同士が背中合わせで当接するように配設され、隣接するガラス板間の縦目地部の間隔を一定とすることができ、層間変位によってガラス板がロッキングした場合であっても、該樹脂製のキャップが互いに斜め上下にずれた状態で当接状態となるので、ロッキング状態であっても縦目地部の間隔を一定に保つことができ、ガラススクリーンの美観を保つだけでなく、ガラス板同士の接触による破損もない。
【0016】
さらにまた、前記面ガラス板のロッキング時に下部隅部のL型部材に代えて、面ガラス板の下部隅部に被冠させた隣接するキャップ間に、下部フレーム枠側より立設した金属製の下部固定板を設け、面ガラス板間の目地部の下部側の間隔を保持すると共に、層間変位時のガラス板のロッキング時に面ガラス板の下端部の位置が面内方向にずれないようにした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図8に示すように、複数枚の面ガラス板1、1、・・を上部フレーム枠11と下部フレーム枠12内で左右に一列に並設し、自立させてガラススクリーン10を形成する。
【0018】
前記面ガラス板1、1、・・の支持構造は、図4〜図6に示すように、セッティングブロック2の面外方向から見た底面形状を弧状面、あるいは弧状面の中央部分2aを水平面とし、底面の左右両側部分2b、2bが下部フレーム枠12との間に隙間部を有している。
【0019】
また、前記セッティングブロック2は面ガラス板1の荷重に耐えられる硬質の樹脂製または金属製であり、上方側に開口部を有した断面略コ字形状の開口部内の底面に緩衝ゴムシート3を介して面ガラス板1を挿入し、セッティングブロック2の開口部の左右の側壁と面ガラス板1間にバックアップ材4、4を設け、該バックアップ材4、4と前記開口部間にシール材8を充填してセッティングブロック2を面ガラス板1の下辺に接着させた。
【0020】
前記バックアップ材4、4は、セッティングブロック2内の面ガラス板1の位置を確定させる為に配置するものである。
【0021】
尚、セッティングブロック2の材質が金属製の場合には、セッティングブロック2の断面略コ字形状の開口部内の底面側にポリカーボネート等の樹脂シート3’を設け、その上に緩衝ゴムシート3を重ねて配設し、面ガラス板1を挿入配設した。
【0022】
また、ガラス板の下端辺に設けたセッティングブロックを金属製としたので、大寸法のガラス板の荷重によってセッティングブロックが変形したり破損したりすることもない。
【0023】
さらに、セッティングブロックの上端側に開口部を有した縦断面形状が略コ字形状の開口部を有して面ガラス板の下端辺と嵌合接着させて一体化させたので、層間変位の発生時には、ガラス板とセッティングブロックとが一体化してロッキングし、セッティングブロックと当接するガラス板の下端部に無理な力が加わることがない。
【0024】
前記セッティングブロック2は、建物の建設現場において面ガラス板1の下端辺に接着させる現場施工でも良いが、接着剤の乾燥に約1週間程度の時間が掛かるため、効率良い施工を行なう為に面ガラス板1の工場出荷に先立って予め面ガラス板1の下端辺に接着しておくのが望ましい。
【0025】
前記セッティングブロック2は、地震による層間変位時に面ガラス板とともにセッティングブロックをロッキング可能な形状、すなわち、面ガラス板1を面外方向から見た場合に底面形状を緩やかなカーブの弧状面、あるいは弧状面の中央部分2aをフラットな水平面として、該下辺の両側部分2b、2bが下部フレーム枠12との間に隙間部を有している。
【0026】
さらにまた、セッティングブロック2の底面の中央部の形状がフラット面で左右両側に傾斜面、あるいは底面全体が弧状面のいずれかであって、下部フレーム枠12との間に隙間部を有しているので、層間変位時に底辺の中央部2aのフラット面と左右部分2bの傾斜面との交点、または弧状面とベースブロック5の上面または下部フレーム枠の内部底面との当接点9(図5参照)を中心として、面ガラス板のロッキングを容易とすることができる。
【0027】
1枚の面ガラス板1の幅によって、その下端辺の下部に配置するセッティングブロック2の個数は変化する。すなわち、面ガラス板1の幅が狭い場合は、セッティングブロック2を1個設ければ良く、面ガラス板1の幅が広い場合は、複数個のセッティングブロック2、2、・・を左右均等にバランス良く設ければ良い。
【0028】
1枚の面ガラス板1の下辺にセッティングブロック2を1個だけ配置する場合は、図4、図7(c)に示すような横長のセッティングブロック2で、その下辺の中央部分2aが水平なフラット面、左右部分2b、2bが傾斜面または弧状面としたものを下辺の中心位置に配置するのが良い。
【0029】
これは層間変位の発生していない通常状態において、ガラス板1がその下辺の中央部分2aのフラット面で安定して自立でき、層間変位が発生した場合、セッティングブロック2と面ガラス板1が接着されていると、フラットな中央部分2aと傾斜面の左右部分2b、2bとの境界線を支点として面ガラス板1がロッキングしやすい状態になるためである。
【0030】
1枚の面ガラス板1の下辺にセッティングブロック2を複数個配置する場合は、少なくともコーナーに最も近い位置に配置されたセッティングブロック2の面ガラス板1の前記コーナー寄り部分2bが、傾斜面または弧状面となっていれば良いが、セッティングブロック2の下辺の中央部分2aが水平なフラット面、左右部分2b、2bが傾斜面または弧状面としたものであっても良い。
【0031】
例えば、図7(a)に示すようにセッティングブロック2を2個設けた場合には、セッティングブロック2の下面の面ガラス板1のコーナー寄り部分のみを、傾斜面としたもの、あるいは、図7(b)に示すように、セッティングブロック2の下辺の中央部分2aが水平なフラット面、左右部分2b、2bが傾斜面または弧状面としたもので、各セッティングブロック2が面ガラス板1の下辺の中心より左右に等距離で左右対称となるような位置に配置されていれば良い。
【0032】
これは、層間変位の発生していない通常状態で、面ガラス板1を複数個のセッティングブロック2、2の下辺を結んだ仮想のフラット面で安定して支持できるためであり、セッティングブロック2と面ガラス板1は接着されているので、層間変位が発生すると前記傾斜面2bとフラット面2aとの境界線を支点として面ガラス板1がロッキングしようとすることになる。
【0033】
もちろん、セッティングブロック2を複数個配置する場合、図7(b)に示すように、上記に係らず、各セッティングブロック2、2、・・の下面の左右両方に傾斜面2b、2bを設けても良い。
【0034】
また、図2に示したように、矩形状の前記面ガラス板1の四隅部には、該面ガラス板1の面外方向から見た形状が略三角形状の合成ゴム製または樹脂製のキャップ30を冠着させ、該キャップ30の外周端面には硬質樹脂製のL型部材31を接着させた。
【0035】
また、矩形状の四隅部にキャップ30、30’を冠着した前記面ガラス板1、1同士を並設し、面ガラス板1、1のL型部材31と隣接する面ガラス板1のL型部材31とを背中合わせで当接させ、隣接する面ガラス板1、1間の目地部7にはシーリング材を充填した。
【0036】
このように、隣接する前記ガラス板1の上部側のキャップ部30を背中合わせに当接させることによって、面ガラス板1、1間の上部側に間隔保持部材を設けなくても目地部7の上部側の間隔を一定とすることができる。
【0037】
また、図3に示したように、前記面ガラス板1の下部側の四隅部については、該面ガラス板1の面外方向から見た形状が略三角形状のゴム製または樹脂製のキャップ30’を冠着させ、上部側の隅部に設けたようなL型部材に代えて、下部側で隣接するキャップ30’、30’間には、下部フレーム枠の下部ベースプレート13より立設した金属製の下部固定板32を設けて、面ガラス板1、1間の目地部7の間隔を保持すると共に、層間変位時のガラス板1のロッキング時に面ガラス板1の下端部の位置が面内方向にずれないようにし、層間変位の復帰後の面ガラス板1の位置を層間変位前の当初の位置とすることができる。
【0038】
もちろん、隣接する面ガラス板1、1間の下部側に、金属製の下部固定板32を設けることによって、面ガラス板1全体の左右方向への移動や、位置ずれを防ぐことができるため、層間変位によって上部フレーム枠11が変位したときに、面ガラス板1、1、・・のロッキングが容易となる。
【0039】
これにより、層間変位時のガラス板のロッキング時に面ガラス板の下端部の位置が面内方向にずれないようにでき、層間変位前後の面ガラス板の下端位置を一定とすることができ、ガラス板間の目地幅を一定とすることができるので、ガラススクリーンの美観を保つことができる。
【0040】
また、図1に示すように、層間変位によって、各面ガラス板1、1、・・がロッキングすると、各ガラス板1、1の上部隅部で背中合わせ状態で当接するキャップ部30同士が互いに斜め上下方向の反対方向に摺動するが、該隣接するキャップ部30、30同士が当接している限りは、ロッキング状態であっても目地部7の間隔を一定とすることができ、面ガラス板1同士を接触させないようにして 破損を防止できる。
【0041】
これによって、前記隣接する矩形状のガラス板の四隅部に弾力性のあるゴム製または樹脂製のキャップを設け、さらに各キャップの外周面に硬質樹脂製のL型部材を接着させたので、ガラス板を左右に並設させると、各ガラス板のL型部材同士が背中合わせで当接するように配設され、隣接するガラス板間の縦目地部の間隔を一定とすることができ、層間変位によってガラス板がロッキングした場合であっても、該樹脂製のキャップが互いに斜め上下にずれた状態で当接状態となるので、ロッキング状態であっても縦目地部の間隔を一定に保つことができ、ガラススクリーンの美観を保つだけでなく、ガラス板同士の接触による破損もない。
【0042】
また、前記面ガラス板の下部隅部のL型部材に代えて、面ガラス板の下部隅部に被冠させた隣接するキャップ間に、下部フレーム枠側より立設した金属製の下部固定板を設け、面ガラス板間の目地部の下部側の間隔を保持すると共に、層間変位時のガラス板のロッキング時に面ガラス板の下端部の位置が面内方向にずれないようにしたので、層間変位前後の面ガラス板の下端位置を一定とすることができ、ガラス板間の目地幅を一定とすることができるので、ガラススクリーンの美観を保つことができる。
【0043】
また、図8に示すように、前記面ガラス板1、特に高さ方向が6メートルを超えるような大寸法の面ガラス板1を自立させて左右に隣接するように並設してガラススクリーン10を形成すると、面ガラス板1の自重や、風荷重等の面外方向からの荷重により面ガラス板1の撓みや変形が発生するため、面ガラス板1の縦辺部を締付支持する支持金具20等の各種手段を用いて保持するようにする。
【0044】
前記支持金具20は、図9に示すように、左右に隣接する面ガラス板1、1、・・間の縦目地部7内に頭部形状が略円形状、四角形状の鍔部を有する締付ボルト21を室外面側から挿通させ、室内面側に設けた締付ナット22と螺合させ、それぞれ緩衝材として弾性ゴムシートを介して面ガラス板の縦辺エッジを締付支持するものであり、図示しないが緩衝材としての弾性ゴムシートの周囲、かつ締付ボルト21と締付ナット22間にシール材を充填するのが好ましい。
【0045】
尚、前記締付ボルト21の鍔部の幅寸法は面ガラス板間の目地部7の幅寸法よりも大寸法とし、締付ボルト21の鍔部と締付ナット22とで面ガラス板1の縦辺エッジ部分を挟持させる。また、支持金具20を配設する間隔は、建物の形状、高さ等による設計風圧や、面ガラス板1の厚みおよび高さ寸法に応じて所定の設定されるピッチ間隔で配設すれば良い。そのピッチ間隔は概ね1500mm程度であればよい。
【0046】
図9に示したように、前記支持金具20の締付ボルト21の先端ボルト部を構造支柱24に固着した連結部材23に螺合連結させた。
【0047】
このように、隣接する面ガラス板1の縦辺エッジ間の目地部に挿入した締付ボルト21と締付ナット22とで、該エッジ部を挟むようにして設けた締付金具を連結金具23を介して立設する構造支柱24と連結固定したことにより、面ガラス板1の自重および面ガラス板にかかる風圧荷重を受け止めることができるようにした。
【0048】
前記構造支柱24としては、金属製の板状部材や円筒状の構造支柱が用いられるが、ワイヤーやロッドを水平垂直にトラスを形成させて配設し、テンションを持たせたトラス構造、あるいはまた面ガラス板の縦目地部に沿ってガラスリブを配設する構造等でも良い。
【0049】
尚、面ガラス板1の四隅部に設けたキャップ30、30’、およびエッジ部を挟持する緩衝材としては、EPDM(エチレンプロピレン・ジエン・モノマー)ゴムやクロロプレンゴム等の合成の成形ゴムを使用し、そのショア硬度は60〜90度の弾性力のあるものとするが、硬度が70〜80度程度のものが望ましい。
【0050】
また、支持金具20としては、ステンレス等の錆びない金属が望ましく、また、前記上部フレーム枠11、および下部フレーム枠12としてはアルミニウム製のものが美観上好ましい。さらに、面ガラス板1とサッシ枠2間に充填するシーリング材15としては、シリコーン系シーリング材を使用するのが良い。尚、シーリング材15を充填する前に、下部フレーム枠12内の面ガラス板1間にバックアップ材16を配設するのが良い。
【0051】
また、隣接する面ガラス板1、1の縦辺エッジ間に挿入した支持金具20、20、・・によって、面ガラス板1の縦辺エッジを挟んで支持するケースで説明したが、これに代えて面ガラス板1の縦辺を図示しないサッシ枠で支持するようにしても良い。
【0052】
この場合は、前記構造支柱24は不要となるが、面ガラス板1の自重をセッティングブロック2で受ける為、面ガラス板1の高さが高くなって面ガラス板1の荷重が大きくなると、層間変位の発生によりサッシ枠と共にガラス板1がロッキングしようとすると、セッティングブロックを面ガラス板1の下端辺の挙動に追従させて面ガラス板1が破損するのを抑えることができる。
【0053】
もちろん、前記面ガラス板1の高さ方向が大寸法でなくても、面ガラス板1を自立させて左右に隣接するように並設してガラススクリーン10を形成すると、風荷重等の面外方向からの荷重により面ガラス板1の撓みや変形が発生するため、面ガラス板1の縦辺部を締付支持する支持金具20や、縦辺にサッシ枠等の各種手段を用いて保持することが必要である。
【実施例】
【0054】
図8に示すように、本発明のガラス板の支持構造で用いる面ガラス板1としては、一実施例として、板厚25mm、高さ11,000mm、幅1,800mとした寸法のフロートガラスに飛散防止フイルムを貼着したものを用いた。また、隣接する面ガラス板1、1、・・間の目地部の間隔を20mm、支持金具20の締付ボルト21の鍔部の外径を85mmとした。
【0055】
また、構造支柱24は、図9に示すように、幅250mm、厚み70mmの水平断面が矩形状の金属製とし、面ガラス板から約200mm程度離れた位置に立設させた。
【0056】
この場合に用いたセッティングブロックは、図5、図6に示す構造のものとし、その材質をアルミニウム製とし、その大きさは長さ300mm、高さ40mmの断面コ字状のものとした。下面の中央部2aの幅L1は100mmであり、左右部分2bの幅L2は各100mmとし、左右部分2bの傾斜面の端部の隙間は、上下方向の最大部分が5mmであり、前記各面ガラス板1の下端面に前記のセッティングブロック2を2個、それぞれ面ガラス板の中心から等距離位置に配設した。
【0057】
前記セッティングブロック2は、その開口部内の底面より樹脂シート3’と緩衝ゴムシート3の2種類のシートを介して面ガラス板1を挿入し、セッティングブロック2の開口部の左右の側壁と面ガラス板1間に、面ガラス板1とセッティングブロック2との間隔保持材として、バックアップ材2を設け、該バックアップ材2と前記開口部間にシール材8を充填固化させてセッティングブロック2を面ガラス板1の下辺に接着させた。
【0058】
セッティングブロック2のコ字状の内面と面ガラス板1の下端部間には、ポリカーボネート製の樹脂シートと緩衝ゴムシート3を重ねて配設したが、セッティングブロック側をポリカーボネート製の樹脂シート3’、面ガラス板の下端面側を緩衝ゴムシート3とした。
【0059】
また、セッティングブロック2の下面位置にはセッティングブロック2の長さよりも僅かに長いベースブロック5を介して下部フレーム枠12内に載置した。
【0060】
前記ベースブロック5はボルト等で下部フレーム枠12に固定されており、前記下部フレーム枠12は、ベースプレート13を介して床面14に固設されている。
【0061】
前記ベースブロック5の両端にはそれぞれ上方に僅かに突出するストッパー6、6が設けられているが、これはベースブロック5上に載置されたセッティングブロック2が面ガラス板1と共に移動可能な範囲を規制するものである。このため、ストッパー6がベースブロック5の上端より突出している部分の長さは、セッティングブロック2の下面の左右部分2bの最大隙間高さよりも僅かに長くし、セッティングブロック2の位置ズレの範囲を規制している。
【0062】
このような、通常であれば、吊下げ工法や、吊下げリブ工法を採用するような高さ寸法が11メートルのガラス板であっても、セッティングブロックを介して自立させることができ、該セッティングブロックをアルミニウム材製としたので、ガラス板の荷重によってセッティングブロックが変形したり破損したりすることもなかった。
【0063】
また、面ガラス板1とセッティングブロック2とを接着させて一体化させたので、層間変位の発生時に、ロッキングも容易となり、セッティングブロック2と当接する面ガラス板1の下端部に無理な力が加わることがなく、面ガラス板1の破損もなかった。
【0064】
さらにまた、図2に示すように、前記隣接する矩形状の面ガラス板1の四隅部には弾力性のあるEPDMゴム等の合成ゴム製のキャップ30、30、3を設け、さらに上部側の各キャップ30、30の外周面には硬質樹脂製のL型部材31、31を接着させた。
【0065】
また、図3に示すように、面ガラス板1の下部隅部に被冠させたキャップ30’、30’間には、下部フレーム枠12側より金属製の下部固定板32を立設した。
【0066】
さらにまた、面ガラス板1を左右に並設させ、各面ガラス板1の上部部隅側に設けたL型部材31同士が背中合わせで当接するように配設され、前記面ガラス板1の下部隅部側に被冠させたキャップ30’、30’間に、下部フレーム枠12側より立設した金属製の下部固定板32を設け、面ガラス板1間の目地部7の下部側の間隔を保持すると共に、層間変位時の面ガラス板1のロッキング時に面ガラス板1の下端部の位置が面内方向にずれないようにしたので、層間変位前後の面ガラス板1の下端位置を一定とすることができ、ガラス板1、1間の目地部7の幅を一定とすることができ、ガラススクリーン10の美観を保つことができる。
【0067】
また、前記キャップ30、・・、30’、・・およびL型部材31を面ガラス板1の工場出荷前に面ガラス板1の四隅部に予め接着したので、現場接着施工に比べて作業工期の短縮を図ることができる。
【0068】
さらにまた、左右に隣接する面ガラス板1、1間の縦目地部内に挿通させた略円形状の頭部を有する締付ボルト21と締付ナット22によって、面ガラス板1の縦辺エッジ部を挟むように支持金具20を設け、該支持金具20を立設する板状の構造支柱24に固定したので、面ガラス板1の自重および面ガラス板1にかかる風圧荷重を受け止めることができた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、建物の外壁として立設するガラス板の支持構造に関し、特に高さが約6メートルを超える大寸法であるガラス板をセッティングブロックを介して下部フレーム枠内で自立支持させ、地震による層間変位があってもガラス板を破損させないガラス板の支持構造において、通常、吊下げ工法や、吊下げリブ工法が採用されるような高さ寸法が6メートルを超えるガラス板の支持構造として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明のガラススクリーンのロッキング時の正面図。
【図2】図1のA部の拡大図で、本発明の支持構造でガラス板の上部隅部にキャップを被着した状態の正面図。
【図3】図1のB部の拡大図で、本発明の支持構造でガラス板の下部隅部にキャップを被着した状態の正面図。
【図4】本発明のガラス板の支持構造の斜視図。
【図5】本発明のガラス板の支持構造の正面図。
【図6】本発明のガラス板の支持構造の縦断面図。
【図7】本発明のガラス板の支持構造の正面図。
【図8】本発明のガラススクリーンの正面図。
【図9】本発明のガラス板の縦辺を支持金具によって挟持した状態を示す支持構造の横断面図。
【符号の説明】
【0071】
1 面ガラス板
2 セッティングブロック
2a 中央部分
2b 左右部分(傾斜部)
3 緩衝ゴムシート
3’ 樹脂シート
4 バックアップ材
5 ベースブロック
6 ストッパ
7 目地部
8 シール材

10 ガラススクリーン
11 上部フレーム枠
12 下部フレーム枠
13 ベースプレート
14 床
15 シーリング材
16 バックアップ材
20 支持金具
21 締付ボルト
22 締付ナット
23 連結部材
24 構造支柱
25 緩衝材
30、30’ キャップ
31 L型部材
32 下部固定板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁として立設する面ガラス板の下辺にセッティングブロックを介して面ガラス板を自立させて支持するガラス板の支持構造において、前記隣接する矩形状の面ガラス板の四隅部に弾力性のある合成ゴム製または樹脂製の略三角形状のキャップを被着させ、さらに各キャップの外周面には硬質の樹脂製のL型部材を接着させて、並設する面ガラス板の夫々に被着したL型部材同士を背中合わせで当接させて、面ガラス板間の目地部の間隔を保持すると共に、地震による層間変位によって面ガラス板がロッキングした時の前記目地部の間隔を一定となるようにしたことを特徴とするガラス板の支持構造。
【請求項2】
前記面ガラス板の下部隅部のL型部材に代えて、面ガラス板の下部隅部に被冠させた隣接するキャップ間に、下部フレーム枠側より立設した金属製の下部固定板を設け、面ガラス板間の目地部の下部側の間隔を保持すると共に、層間変位時のガラス板のロッキング時に面ガラス板の下端部の位置が面内方向にずれないようにして、層間変位前後の面ガラス板の下端位置を一定とすることができることを特徴とする請求項1記載のガラス板の支持構造。
【請求項3】
前記キャップおよびL型部材は、面ガラス板の工場出荷前に面ガラス板の四隅部に予め接着されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス板の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−32029(P2007−32029A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215011(P2005−215011)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】