説明

ガラス構造

本発明は、静的かつ動的に載荷された構造の合わせガラスペイン(2)のための固定手段に関し、少なくとも1つの挟持要素(4)を備え、それによって合わせガラスペイン(2)を支持構造(6)に固定することができる。本発明によれば、合わせガラスペイン(2)は、静的かつ動的に載荷可能な支持ガラスペイン(8)と、注型樹脂層(10)を介して支持ガラスペイン(8)に接合され、導電性の透明な導体パス(14)を備える少なくとも1つの被覆ガラスペイン(12)とから成る。前記少なくとも1つの挟持要素(4)は、合わせガラスペイン(2)を固定する役をする挟持力を合わせガラスペイン(2)の支持ガラスペイン(8)にのみ及ぼす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる、合わせガラスペイン(laminated glass pane)の締着手段に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような合わせガラスペインの締着手段は、静的かつ動的に載荷された建造物において必要とされ、合わせガラスペインは少なくとも1つの挟持要素と支持構造とにより締着される。
【0003】
静的かつ動的に載荷された構造においては、合わせガラスペインがホルダ、挟持ファスナ、もしくはスポットファスナにより取り付けられる。静的および/または動的に載荷されたガラス構造とは、例えば、屋根用のオーバーヘッドグレージング、ガラス壁、ファサード、もしくはオールガラスドア等とされる。これらの場合、合わせガラスペインは、例えば、積層挟持ホルダとして設計の、もしくは穿孔内に設けられた挟持ホルダによって支持構造に押圧当接される。これらの合わせガラスペインに、導電性の、透明な導体パスを設けたカバーガラスペイン等の付加的カバーガラスペインが備えられる場合には、合わせガラスペインに対する挟持圧力によって付加的カバーガラスペインの剥離を生じる。付加的層によって合わせガラスペインの全体的構造が軟弱化し、そのような合わせガラスに対する挟持力を正確に計算することができず、その結果、そのような合わせガラスペインは静的かつ動的に載荷された構造用として認可されなくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、付加的カバーガラスペインが使用される場合にも、静的かつ動的に載荷された構造における合わせガラスペインの信頼し得る締着が可能とされる、合わせガラスペインのための締着手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴によって解決される。
【0006】
本発明は、前記合わせガラスペインに、静的かつ動的に載荷可能な支持ガラスペインと、注型樹脂の層によって前記支持ガラスペインに接合された少なくとも1つのカバーガラスペインとを備え、前記カバーガラスペインに導電性の、透明な導体パスが設けられ、それによって前記少なくとも1つの挟持要素が前記合わせガラスペインを締着する挟持力を前記合わせガラスペインの前記支持ガラスペインにのみ及ぼすことをその利点とする。
【0007】
原則として、支持ガラスペインとして選択される公認のガラス構造は、オールガラスドアの場合等には強化単体ペインとされ、あるいはフェイルセイフグレージングおよびオーバーヘッドグレージング等においては強化もしくは非強化単体ペインにPVB薄膜を施した合わせガラスとされる。
【0008】
その支持ガラスペインには、注型樹脂を使用して、導電性の、透明な導体パスをもつカバーガラスペインが接着される。
【0009】
締着手段は、その締着力を合わせガラスペインの支持ガラスペインにのみ及ぼす挟持要素とされる。したがって、この挟持要素の挟持力が及ぶため、カバーガラスペインが積層品ペインから剥離し得ない。
【0010】
挟持要素の挟持力は正確に計算可能なため、そのような合わせガラスペインは、静的かつ動的に載荷されたガラス構造にも採用可能とされる。
【0011】
支持ガラスペインは、強化単体ペイン、あるいは複数の強化もしくは非強化単体ペインにPVB薄膜を施した合わせガラスの複合物とすることが可能とされる。
【0012】
カバーガラスペインには、透明な導電性の導体パスに接続された電流負荷を備えることが可能とされる。それによって、合わせガラスペインに、例えば、光源もしくはセンサを設けることが可能とされ、その光源は単に照明用、あるいは信号および情報の伝達用、あるいは単なる装飾材として使用される。
【0013】
挟持要素は、支持ガラスペインの背後に係合するフランジ部を備え、それによって合わせガラスペイン全体を支持構造、例えば、ポスト/クロスバーもしくは他の支持構造に押圧当接するのに適したものとすることが好ましい。
【0014】
挟持要素は、支持ガラスペインのリセスに挿通可能とされる。好ましくは、リセスは孔とされるが、なお挟持要素の設計次第により、他に挟持要素に適した形態のものとすることができる。合わせガラスペインの周辺においても、リセスは必ずしも孔とするには及ばない。
【0015】
一実施形態においては、挟持要素が合わせガラスペインに一体化され、カバーガラスペインが合わせガラスペインの前面を被覆する。したがって、カバーガラスペインは、支持ガラスペインのリセスを挟持要素によって被覆し、合わせガラスペイン全体を外部に対して封止する。これは、合わせガラスペインがシャワー室等の水回り区域、湿潤区域、もしくは屋根構造等の外部区域で使用される場合に特に有利とされる。合わせガラスペインが封止されることによって、湿気は導電性導体パスおよび電流負荷には到達し得ない。
【0016】
合わせガラスペインの周辺部では、カバーガラスペインが支持ガラスペインに対して後退し、それによって少なくとも1つの挟持要素が支持ガラスペインの背後に係合可能とすることができる。
【0017】
その代替として、合わせガラスペインの周辺領域においては、カバーガラスペインの挟持要素区域のみを窪みとすることができよう。
【0018】
別の実施形態においては、挟持要素が合わせガラスペインを貫通するとされ、カバーガラスペインが支持ガラスペインのリセスに比して大きいリセスを有するため、両リセスに挿通するのに適した挟持要素が支持ガラスペインの背後にのみ係合する。
【0019】
一実施形態においては、挟持要素がその外側のカバーガラスペインと同一面に揃うとされる。このようにして、合わせガラスペインは平滑な外面を示し、挟持要素とカバーガラスペインの間の間隙にはプラスチック材料を充填することが可能とされる。したがって、合わせガラスペインの締着ポイントにおけるシーリングも併せて達成される。
【0020】
電流負荷は、片側もしくは両側に光を発する複数の発光ダイオードとすることが可能とされる。
【0021】
挟持要素はまた、カバーガラスペインの導電性導体パスへの給電のためにも使用可能とされる。そのため、挟持要素には、カバーガラスペインの導電性の、透明な導体パスに接続された電流接続要素を備える。カバーガラスペインの外側縁端もしくはリセス縁端には、対応する電気伝導層の電流接続を備える。
【0022】
挟持要素には、単独の電流接続を設けることも、あるいは複数の電流接続要素に給電もしくは制御信号を供給可能な複数の相互絶縁されたセグメントを備えることも可能とされる。
【0023】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1の実施形態は、支持ガラスペイン8と、注型樹脂10の層を介して支持ガラスペイン8に接着されたカバーガラスペイン12とによる合わせガラスペイン2を示す。
【0025】
支持ガラスペインは、強化もしくは非強化単体ペイン8a、8bにPVB薄膜を施した積層複合ガラスとされる。
【0026】
カバーガラスペインは、通常もしくは強化フロートガラス製とされ、例えばITOコーティング等により製作可能の、透明な導電性導体パス14を含む。導体パス14は、片側もしくは両側に光を発するLED等の電気負荷16に接続される。
【0027】
カバーガラスプレート12もまた、強化もしくは非強化単体ペイン、あるいは強化もしくは非強化積層複合ガラスにより製作可能とされる。
【0028】
支持ガラスペイン8は、種別試験され、静的かつ動的に載荷された構造用途向けとして公認のものとされる。これは、例えば、オーバーヘッドグレージング、パラペットエレメントのフェイルセイフグレージングならびにオールガラスドアに関して重要とされる。
【0029】
カバーガラスペイン12は、そのような公認の支持ガラスペイン8に注型樹脂10の層を使用して接着され、合わせガラス8の締着ポイントで、締着手段の挟持力が支持ガラス8にのみ及ぼされるように、カバーガラス12が支持ガラスから後退する。ガラス縁端のずれは、同時にカバーガラスペイン12から給電用接続ケーブルを引き出すために利用される。
【0030】
図1の実施形態においては、この縁端のずれを段付き孔とし、リセス9が支持ガラスペイン8に設けられ、リセス11がカバーガラスペイン12に設けられる。
【0031】
カバーガラスペインおよび関係する注型樹脂10の層のリセス11は、リセス9より径を大とすることによって、挟持要素4により形成される締着手段が支持ガラスペイン8にのみ据えられ、支持ガラスペイン8にのみ力を及ぼす。
【0032】
挟持要素4は、合わせガラスペイン2をポスト構造もしくはポスト/クロスバー構造等の支持構造6に対して挟着する。図解を簡潔とするため、挟持要素4をねじ継手として示す。即ち、挟持要素4は、外側の六角ソケットおよびその対向端のねじ部により支持構造6内にねじ込むのに適し、それによって挟持要素が挟持力を支持ガラスペイン8に及ぼす。シール13を、支持構造6と支持ガラスペイン8の間ならびに支持ガラスペイン8と挟持要素4の間に設けることが可能とされる。しかし、挟持要素4のフランジ部18を支持ガラスペイン8に直接挟着することも可能とされる。
【0033】
導体パス14には、挟持要素4を介して、単線もしくは複線ケーブルにより給電可能とし、それによって電気負荷16に給電する。
【0034】
ねじの形態等による挟持要素4自体は、接地接続用等の導体として使用可能とされ、挟持要素4は、例えば図1および2の左手で明らかなように、導体パス14により、接続ポイント20で、例えば陰端子に電気的に接続される。右手では、例えば陽端子が別の接続ポイントに設けられる。
【0035】
複線ケーブルにより、別の導体パス14を設けて給電が可能とされる。
【0036】
図1および2は、カバーガラスペイン12のリセス11内に挿着して挟持要素4を隠すのに適したカバー要素22を示す。
【0037】
それに代えて、図3に示すように、カバー要素22を挟持要素4に固定もしくは一体形成することも可能とされる。
【0038】
図3はさらに、2枚の隣接する合わせガラスペイン2が挟持要素4を使用して支持構造6に締着されることにおいて図1の実施形態と異なる。この場合、注型樹脂10の層を伴うカバーガラス要素12のみが窪んで挟持要素4を受ける。
【0039】
図4は、挟持要素4を合わせガラスペイン2に一体化した本発明の別の実施形態を示す。この場合、カバーガラスペイン12を連続体とし、挟持要素4のフランジ部18を注型樹脂10の層内に埋込みとする。
【0040】
支持ガラスペイン8は、挟持要素4に対応して窪み、これにおいては挟持要素4を単体部品もしくは、図4に示すように、複数部品要素とすることが可能とされる。
【0041】
ここにおいても、挟持要素4が挟持力を支持ガラスペイン8にのみ及ぼすことが保証される。
【0042】
挟持要素4には、給電ライン24用の溝を設けることが可能とされる。
【0043】
挟持要素4は、円錐状部分28として形成された円錐状設計とし、支持ガラスペイン8のリセスを円錐状部分28に合わせた傾斜部分とすることができる。
【0044】
図1から3の実施形態と異なり、支持構造6は、ポスト/クロスバー構造とせず、締着ねじを使用して挟持要素4を支持構造にねじ留めするのに適した平坦な支持構造とされる。
【0045】
支持ガラスペイン8には、まず挟持要素4が取り付けられ、次いでカバーガラスペイン12が注型樹脂10の層を使用して張り合わせられる。合わせガラスペイン2の前面がカバーガラスペイン12に被覆されるために、水が導電性導体パス14に達しないことがこのような合わせガラスペイン2の重要な長所とされる。
【0046】
図5は、挟持要素4がカバーガラスペイン12と同一面に揃う、図1の実施形態に類似の別の実施形態を示す。シーリング材30が挟持要素4とカバーガラスペイン12もしくは注型樹脂10の層との間のリセス11に注入され、このシーリング材もカバーガラスペイン12および挟持要素4と面一とされる。支持構造に対する締着法は、図4の方法と同じとされる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】挟持要素を合わせガラスペインの段付き孔に据えた第1実施形態を示す図である。
【図2】挟持要素を円錐状とする第2実施形態を示す図である。
【図3】2つの隣接する合わせガラスペイン間における本発明による挟持要素を示す図である。
【図4】挟持要素を合わせガラスペインに一体化した別の実施形態を示す図である。
【図5】挟持要素を合わせガラスペインの外面に面一とするさらに別の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静的かつ動的に載荷された構造の合わせガラスペイン(2)の締着手段であって、少なくとも1つの挟持要素(4)を備え、それによって合わせガラスペイン(2)を支持構造(6)に締着可能な締着手段において、
前記合わせガラスペイン(2)に、静的かつ動的に載荷可能な支持ガラスペイン(8)と、注型樹脂(10)の層によって前記支持ガラスペイン(8)に接合された少なくとも1つのカバーガラスペイン(12)とを備え、前記カバーガラスペインに導電性の、透明な導体パス(14)が設けられ、それによって前記少なくとも1つの挟持要素(4)が前記合わせガラスペイン(2)を締着する挟持力を前記合わせガラスペイン(2)の前記支持ガラスペイン(8)にのみ及ぼすことを特徴とする締着手段。
【請求項2】
前記支持ガラスペイン(8)を強化単体ガラスペインとする請求項1に記載の締着手段。
【請求項3】
前記支持ガラスペイン(8)を、複数の強化もしくは非強化単体ペイン(8a、8b)にPVB薄膜を施した複合ガラス積層品とする請求項1に記載の締着手段。
【請求項4】
前記カバーガラスペイン(12)に、前記導電性の、透明な導体パス(14)に接続された電流負荷(16)を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の締着手段。
【請求項5】
前記少なくとも1つの挟持要素(4)が前記支持ガラスペイン(8)の背後に係合するフランジ部(18)を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の締着手段。
【請求項6】
各挟持要素(4)が前記支持ガラスペイン(8)のリセス(9)に挿通される請求項1から5のいずれか一項に記載の締着要素。
【請求項7】
前記少なくとも1つの挟持要素(4)が前記合わせガラスペイン(2)に一体化され、前記カバーガラスペイン(12)が前記合わせガラスペイン(2)の前面を被覆する請求項6に記載の締着手段。
【請求項8】
前記カバーガラスペイン(12)が前記支持ガラスペイン(8)から後退する縁端部内に前記挟持要素(4)が前記支持ガラスペイン(8)を保持する請求項1から5に記載の締着手段。
【請求項9】
前記カバーガラスペイン(12)のみが前記挟持要素(4)の面域で前記合わせガラスペイン(2)の前記縁端部で窪む請求項1から5のいずれか一項に記載の締着手段。
【請求項10】
前記カバーガラスペイン(12)が前記リセス(9)に対して大きいリセス(11)を有し、両リセス(9、11)に挿通するのに適した前記挟持要素(4)が前記支持ガラスペイン(8)を保持する請求項6に記載の締着手段。
【請求項11】
前記挟持要素(4)が前記カバーペイン(12)と同一面に揃う請求項10に記載の締着手段。
【請求項12】
前記挟持要素(4)と前記カバーガラスペイン(12)の間の間隙がプラスチック材料により封止される請求項10または11に記載の締着手段。
【請求項14】
前記電流負荷(16)を、片側もしくは両側に光を発する複数の発光ダイオードとする請求項4から13のいずれか一項に記載の締着手段。
【請求項15】
前記少なくとも1つの挟持要素(4)に、前記カバーガラスペイン(12)の導電性導体パス(14)に給電する電流接続要素(20)を備える請求項1から14のいずれか一項に記載の締着手段。
【請求項16】
前記電流接続要素(20)が前記カバーガラスペイン(12)に面する前記挟持要素(4)の部分から突出する請求項15に記載の締着手段。
【請求項17】
前記挟持要素(4)に、複数の電流接続要素(20)に給電もしくは制御信号を供給する複数の相互絶縁されたセグメントを備える請求項1から16のいずれか一項に記載の締着手段。
【請求項18】
前記挟持要素(4)に、前記支持構造(6)に締着するためのねじを備える請求項1から17のいずれか一項に記載の締着手段。
【請求項19】
前記支持ガラスペイン(8)の前記少なくとも1つのリセス(9)に、前記挟持要素(4)の円錐状部(28)に適応した傾斜部(26)を備える請求項6から18のいずれか一項に記載の締着手段。
【請求項20】
支持構造(6)と、該支持構造(6)に請求項1から18のいずれか一項に記載の締着手段により締着された複数の合わせガラスペイン(2)とを備えるガラス構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−524011(P2007−524011A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554421(P2004−554421)
【出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013122
【国際公開番号】WO2004/048736
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(502184471)
【Fターム(参考)】