説明

ガラス流出制御装置

【課題】溶融ガラス流出パイプの内径の大小を問わず、また、溶融ガラスを収容する大型の溶融槽を有するガラス溶融炉においても、ガラスの流出を停止させるガラス流出制御装置を提供すること。
【解決手段】ガラス流出制御装置10は、溶融ガラス流出パイプ7の側部7aを冷却する側面冷却手段20と、溶融ガラス流出パイプ7の延長方向Zに配置可能な溶融ガラス受け部40とを備える。ガラス流出制御装置10は、溶融ガラス受け部40を冷却する受部冷却手段50を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ガラスの流出を停止させるガラス流出制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス溶融炉によって溶融された溶融ガラスは、ガラス溶融炉に設けられた溶融ガラス流出パイプから流出する。従来、溶融ガラス流出パイプを流れる溶融ガラスを停止させるガラス流出制御装置は、弁機構や遮蔽物となる部品を溶融ガラス流出パイプに設けて、この部品によって溶融ガラスの流動を停止させる。
【0003】
しかし、溶融ガラス流出パイプを流れる溶融ガラスは高温であるため、弁機構などの部品は耐熱性を有する必要があった。また、高熱下では部品が熱により変形するため、部品の劣化が激しく、寿命が短いという問題が生じていた。
【0004】
特許文献1には、溶融ガラスの流出を停止させるために、溶融ガラス流出パイプの側面に溶融ガラスを冷却する冷却用流体を供給する冷却用流体供給部を配置することにより、溶融ガラス流出パイプの内部を流れる溶融ガラスを冷却して流出パイプから流出することを停止させるガラス流出制御装置が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1に記載のガラス流出制御装置は、溶融ガラス流出パイプの内径が数mmから十数mmの範囲にある、いわゆる小径の溶融ガラス流出パイプである場合に適用することができるが、溶融ガラス流出パイプの内径がそれ以上の範囲にあるいわゆる大径の溶融ガラス流出パイプである場合には適用することができなかった。
【0006】
なぜならば、大径の溶融ガラス流出パイプから一端流出しだした溶融ガラスが固化状態の粘度になる固化温度に低下させるまでの時間がかかるからである。仮にそのような大径の溶融ガラス流出パイプに特許文献1に記載のガラス流出制御装置を用いて溶融ガラス流出パイプの側面を冷却用流体供給部に冷却させても、溶融ガラス流出パイプの内部を流れる溶融ガラスの流出速度が速く、溶融ガラス流出パイプの内部が固化温度にならない。このため、溶融ガラスは溶融ガラス流出パイプから流出し続けてしまい、溶融ガラス流出パイプの側面を冷却するだけでは溶融ガラスの流出を止めることができなかった。
【0007】
また、溶融ガラス流出パイプの内径が数mmから十数mmの間にある小径の溶融ガラス流出パイプであっても、冷却用流体供給部が溶融ガラス流出パイプの側面のみを冷却する場合、溶融ガラスの温度が固化温度になるまでの時間がかかり、ガラス流出制御装置は流出を確実に停止させることは、困難であった。
【特許文献1】特開平6−166521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、溶融ガラス流出パイプの内径の大小を問わず、また、溶融ガラスを収容する大型の溶融槽を有するガラス溶融炉においても、ガラスの流出を停止させるガラス流出制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記のような問題に鑑み、パイプの径や溶融炉の大小を問わず、溶融ガラスの流出を停止することが可能なガラス流出制御装置を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
(1) 溶融ガラスの流出を少なくとも停止させるガラス流出制御装置であって、溶融ガラス流出パイプの側面を冷却する側面冷却手段と、前記溶融ガラス流出パイプの延長方向に配置可能な溶融ガラス受け部と、を備えるガラス流出制御装置。
【0011】
(1)の発明によれば、側面冷却手段が溶融ガラス流出パイプの側面を冷却することにより、溶融ガラス流出パイプの中を流れる溶融ガラスが冷却され、溶融ガラスの粘度が高くなる。
【0012】
また、本発明によれば、ガラス流出制御装置は、溶融ガラス流出パイプの延長方向下側に配置可能な溶融ガラス受け部を有するので、冷却され粘度が高くなった溶融ガラスは、溶融ガラス受け部で受け止められ、さらに自然冷却により固化しガラスになる。固化したガラスは、溶融ガラス流出パイプからの溶融ガラスの流出を停止させる栓として機能する。なお、受け部の上面と、側面冷却手段の底部との間には、所定の寸法の隙間が形成されていてもよいし、受け部の上面と、側面冷却手段の底部とを隙間なく接触させてもよい。
【0013】
なお、本明細書において「下」とは、溶融ガラスの流体が流れ落ちる垂直方向の下方向を指す。また、「上」とは、「下」の反対方向を示す。
【0014】
(2) 前記溶融ガラス受け部を冷却する受部冷却手段を備える、(1)に記載のガラス流出制御装置。
【0015】
(2)の発明によれば、前記溶融ガラス受け部は、受け部冷却手段によって冷却される。このため、前記溶融ガラスを前記受け部でより効果的に冷却することができる。
【0016】
ここで、側面冷却手段及び受け部冷却手段は、いずれにおいても、空気、油、又は水を用いた冷却手段であってよい。コストが安価な点と、取り扱いが簡便な点を考慮すると、水が好ましい。
【0017】
(3) 前記溶融ガラス受け部を前記側面冷却手段に対して相対移動させる受け部移動手段を備える、(1)又は(2)に記載のガラス流出制御装置。
【0018】
(3)の発明によれば、溶融ガラス受け部は、側面冷却手段に対して相対的に移動が可能である。このため、前記溶融ガラスが側面を冷却された溶融ガラスパイプを通過して流出された後に、溶融ガラス受け部は、側面冷却手段に対して相対的に移動して溶融ガラスを受け止めることができる。溶融ガラスは、溶融ガラス受け部に受け止められる前にある程度冷却され、粘度が高くなっているので、受け部に受け止められる際に固化しやすい。
【0019】
(4) 前記溶融ガラス受け部は、該溶融ガラス受け部の上側の面を共同で形成する一対の溶融ガラス受け部材であって移動可能に保持された一対の溶融ガラス受け部材を含み、当該ガラス流出制御装置は、さらに、前記溶融ガラス受け部材が前記溶融ガラス受け部の上側の面を形成するように、前記一対の溶融ガラス受け部材を互いに当接させる当接プッシャを備える、(1)から(3)のいずれかに記載のガラス流出制御装置。
【0020】
(4)の発明によれば、溶融ガラス受け部は、分離した一対の溶融ガラス受け部材を有する。一対の溶融ガラス受け部材は、溶融ガラス受け部の上側の面を共同して形成するように、一方と他方から互いに向かって移動をし、当接する。この移動を可能とするために、溶融ガラス受け部材は、互いを当接させるための当接プッシャを備える。
【0021】
一対の溶融ガラス受け部材は、溶融ガラスが流れているところを切断するように、互いに向かって移動する。これにより、溶融ガラス受け部材を互いに当接させることで、溶融ガラス受け部材は溶融ガラスの流れをほとんどみだすことなく、すばやく切断することができる。
【0022】
(5) 前記溶融ガラス受け部は、溶融ガラス流出パイプの端部から所定の隙間を置いた位置で、溶融ガラスを受ける(1)から(4)のいずれかに記載のガラス流出制御装置。
【0023】
(5)の発明によれば、溶融ガラス流出パイプは溶融ガラス流出パイプの延出方向下側に端部を有する。溶融ガラス受け部は、端部から所定の間隔を置いた下側に配置されており、溶融ガラス流出パイプと溶融ガラス受け部の間には隙間がある。
【0024】
溶融ガラス流出パイプと受け部の間には、寸法的な余裕を有するので、溶融ガラス受け部が溶融ガラス流出パイプに接触して破損することがほとんどない。なお、溶融ガラスは、溶融ガラス受け部で受け止められて固化し、この所定の隙間を埋めることにより栓として作用する。
【0025】
なお、この隙間は、0.1mm以上であることが好ましく、特に、1mm以上であることが好ましく、さらに、2mm以上であることが最も好ましい。隙間が上記の範囲より小さいとパイプを破損しないために高い工作精度が要求され、装置製作やメンテナンスは高コストになるからである。また、この隙間は、25mm以下であることが好ましく、特に、20mm以下がより好ましく、さらに、15mm以下であることが最も好ましい。隙間が上記の範囲より大きいとガラス流を停止する効果が得られにくくなるからである。
【0026】
(6) 前記側面冷却手段は前記溶融ガラス流出パイプの端部を囲繞する内側面を有する端部囲繞部を備え、該端部囲繞部は、その内側面と前記溶融ガラス流出パイプの端部の外側面との間に所定の隙間を置いて配置された(1)から(5)のいずれかに記載のガラス流出制御装置。
【0027】
(6)の発明によれば、側面冷却手段は、端部囲繞部と溶融ガラス流出パイプの端部とが接触しないように、かつ、溶融ガラス流出パイプの端部を囲むように配置される端部囲繞部を備える。端部囲繞部の溶融ガラス流出パイプ側内側面と、溶融ガラス流出パイプの端部の外側面の間には、所定の隙間が形成されている。これにより、溶融ガラス流出パイプの端部から流出した溶融ガラスの流体は、溶融ガラス受け部で受け止められた後、この内側面に直接接するようにして固化する。このため、温度条件によっては、溶融ガラス受け部で受け止められた溶融ガラスが横方向に広がってしまう場合でも、効果的に溶融ガラスを固化できる。
【0028】
(7) 前記溶融ガラス流出パイプの端部は円柱形状の側面を有し、前記端部囲繞部の内側面は、前記溶融ガラス流出パイプの端部の外径よりも所定寸法だけ大きい円柱形状の側面を形成している、(6)に記載のガラス流出制御装置。
【0029】
(8) 前記端部囲繞部は、離接可能に保持された一対の端部囲繞部材を有し、前記一対の端部囲繞部材は、前記溶融ガラス流出パイプの端部を囲繞する内側面を共同で形成する湾曲側面部を側部に有する、(6)又は(7)に記載のガラス流出制御装置。
【0030】
(7)及び(8)の発明によれば、溶融ガラス流出パイプの端部は円柱状であり、これを囲む囲繞部の前記流出パイプ側の内側面は、円柱状に対応するように湾曲している。
【0031】
なお、側面冷却手段は、溶融ガラス流出パイプに対して非接触状態に保持されているので、溶融ガラスの流体を停止させるときだけ、溶融ガラス流出パイプの近傍に配置させることができる。換言すると、冷却手段を、溶融ガラス流出パイプから離接させ、溶融ガラスの流体の妨げとならない場所に収容することができる。
【0032】
(9) さらに、それぞれが各端部囲繞部材を前記溶融ガラス流出パイプの端部に向けて移動させる一対のアーム部と、互いに接触させた前記一対の端部囲繞部材が離れないように保持する外れ止め装置と、を備える(8)に記載のガラス流出制御装置。
【0033】
(9)の発明によれば、側面冷却手段は、端部囲繞部材を前記溶融ガラス流出パイプの端部に向けて移動させるための一対のアーム部を備える。このアーム部には、前記一対の端部囲繞部材が離れないように保持する外れ止め装置が設けられる。
【0034】
溶融ガラスは、溶融ガラスパイプと溶融ガラス受け部との間で一対の端部囲繞部材に圧力をかける。このため、この圧力によって一対の端部囲繞部材が離れて隙間が形成されてしまうと、この隙間から溶融ガラスが漏れ出てガラスが固化せず流出し続けてしまう。そこで、アーム部に設けられた、一対の端部囲繞部材が離れないように保持する外れ止め装置アーム部によって一対の端部囲繞部材が離れないようにする。このため、溶融ガラスが当接している部分の隙間から漏れ出ることも防止できる。
【0035】
(10) (1)から(9)のいずれかに記載のガラス流出制御装置を備える溶融ガラス製造装置。
【0036】
(10)の発明によれば、溶融ガラス製造装置は上述の作用効果を奏する。
【0037】
(11) 溶融ガラスの流出を停止するガラス流出制御方法であって、溶融ガラス流出パイプの端部を冷却する工程と、溶融ガラスを受ける工程と、を有するガラス流出制御方法。
【0038】
(12) さらに、受けた溶融ガラスを冷却する工程を有する(11)に記載のガラス流出制御方法。
【0039】
(13) 溶融ガラス流出パイプの端部を冷却する工程が、溶融ガラスを受ける工程より先に開始されることを特徴とする(12)に記載のガラス流出制御方法。
【0040】
(14) 溶融ガラスを受ける工程は、ガラス流を挟み相対して位置する一対の溶融ガラス受け部材当接させることにより行われる(11)から(13)のいずれかに記載のガラス流出制御方法。
【0041】
(15) 前記溶融ガラス流出パイプの端部を所定の隙間を置いて冷却手段で囲い冷却する工程と、前記溶融ガラス流出パイプの端部の側面を所定の隙間を置いて囲い溶融ガラスを受ける工程と、前記隙間を満たす溶融ガラスを冷却する工程とを備える(11)から(14)のいずれかに記載のガラス流出制御方法。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、溶融ガラスの流出パイプの径の大小、溶融ガラスの溶融槽の大小を問わず、溶融ガラスの流出を停止するガラス流出制御装置及びガラス流出制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、共通するものについては同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。また、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
【0044】
[溶融ガラス製造装置]
図1は本発明に係るガラス流出制御装置10を備えた溶融ガラス製造装置1を示す。図2は、図1の側面図である。
【0045】
図1及び図2に示すように、溶融ガラス製造装置1はガラス流出制御装置10を備える。溶融ガラス製造装置1は、さらに、ほぼ直方体の外形を形成するフレーム2と、ガラス流出制御装置10を片持ち梁状に保持するアーム部3と、るつぼのようなガラスの原料を溶融させる溶融装置6と、溶融装置6によって溶融された溶融ガラスを流出させる溶融ガラス流出パイプ7と、フレーム2の中央に配置された金型搬送装置8と、を備える。金型搬送装置8の上には、溶融ガラス流出パイプ7から流出した溶融ガラスを受ける金型搬送台8aが移動可能に配置されている。溶融ガラス流出パイプ7の端部は円柱状である。
【0046】
ガラス流出制御装置10は、ガラスの原材料を溶融させる溶融装置6の下端から下方に延びる溶融ガラス流出パイプ7の下端部に、溶融ガラスの流出を停止させるときに、配置される。
【0047】
ガラス流出制御装置10は、一対のガラス流出制御片10a、10bを含む。一対のガラス流出制御片10a、10bは、それぞれ、フレーム2に組み付けられたレールを移動する一対のアーム部3の先端に組み付けられている。一対のアーム部3の他端は、フレーム2に組み付けられたボールスプライン軸を有する平行移動機構のような移動手段4に組み付けられている。移動手段4の入力軸は、駆動モータ(図示せず)の出力軸に組み付けられている。したがって、駆動モータの作動によって、移動手段4が作動し、一対のアーム部3、ひいては、一対のガラス流出制御片10a、10bが近寄ったり、離れたりする。
【0048】
一対のガラス流出制御片10a、10bは、互いに離れることを防止するために、後述するように、一対の外れ止め装置80(図11参照)をガラス流出制御片10a、10bの側部を跨ぐように備えている。
【0049】
[ガラス流出制御装置]
図3から図5に示すように、ガラス流出制御装置10は、溶融ガラス流出パイプ7の側部7aを冷却する側面冷却手段20と、溶融ガラス流出パイプ7の延長方向Zに配置可能な溶融ガラス受け部40とを備える。また、ガラス流出制御装置10は、溶融ガラス受け部40を冷却する受部冷却手段50を備える。
【0050】
[側面冷却手段]
側面冷却手段20は、溶融ガラス流出パイプ7の端部7bを囲繞する内側面を有する端部囲繞部21を備える。端部囲繞部21は、離接可能に保持された一対の端部囲繞部材23、24を有する。端部囲繞部材23、24は溶融ガラス流出パイプ7の端部7bを囲繞する内側面28を共同で形成する湾曲側面部25、26を有する。
【0051】
内側面28は、溶融ガラス流出パイプ7の端部7bの外径よりも所定寸法だけ大きい円柱形状の側面を形成している(図11参照)。端部囲繞部材23、24(ひいては端部囲繞部21)は内側面28と溶融ガラス流出パイプ7の側部7aとの間に所定の隙間t1(図11参照)を置いて配置されている。
【0052】
なお、この隙間t1は、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることが最も好ましい。隙間t1が上記の範囲より小さい場合、パイプを破損しないために高い工作精度が要求され、装置製作やメンテナンスが高コストとなるからである。
【0053】
また、この隙間t1は、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることが最も好ましい。隙間t1が上記の範囲より大きい場合、冷却効果が得られにくくなるからである。本実施形態では、隙間t1は、約2.5mmとされている。
【0054】
溶融ガラス流出パイプ7に、耐火ファイバーからなる断熱マットのような断熱材を巻いている場合は、隙間t1はこの断熱材で満たされていてもよい。断熱マットは剛体ではないため、断熱マットの厚みを考慮した場合に隙間がなくても、パイプとの間に上記の隙間が形成されていればパイプが破損する恐れはないからである。
【0055】
したがって、側面冷却手段20は、溶融ガラスを流出させるための溶融ガラス流出パイプ7の端部7bの近傍に配置される。側面冷却手段20が溶融ガラス流出パイプ7及びその中を通る溶融ガラスを冷却することができれば、溶融ガラス流出パイプ7の側面近傍において、側面冷却手段20が配置される位置は限定されるものではない。好ましい態様としては、流出される溶融ガラスを十分に冷却するために、側面冷却手段20は、溶融ガラス流出パイプ7の端部7bの近傍に配置される。
【0056】
端部囲繞部材23、24は、それぞれ、溶融ガラス流出パイプ7の端部7bを冷却するため、端部囲繞部材23、24の内部に冷却手段を有する。より具体的には、端部囲繞部材23、24は内部が中空になっている。側面冷却手段20は、その内部に空気、油、水などを循環させる冷却手段により、溶融ガラス流出パイプ7の端部7bを、端部7bと内側面28との間にある溶融ガラスを介して冷却させる。冷却手段は、空気、油、水などを巡回させる従来公知の方法であってよいが、コストが安価で取り扱いが容易なため、内部に水を巡回させることが好ましい。
【0057】
また、端部囲繞部材23、24は、その形状、大きさは特に限定されない。溶融ガラスを収容する溶融装置6の大きさや、溶融ガラス流出パイプ7の径によって、適宜変更されてよい。
【0058】
[溶融ガラス受け部]
ガラス流出制御装置10は、溶融ガラス受け部40を側面冷却手段20に対して相対移動させる受け部移動手段60を備える。
【0059】
溶融ガラス受け部40は、溶融ガラス受け部40の上側の面を共同で形成する一対の矩形状の溶融ガラス受け部材41、42と、一対の溶融ガラス受け部材41、42を移動可能に保持する一対のチャンネル状のレール45、46とを有する。溶融ガラス受け部40は、溶融ガラス流出パイプ7から、側面冷却手段20によって冷却されることにより粘度が高くなった溶融ガラスを切断するように受けるためのものである。
【0060】
溶融ガラス受け部40は、溶融ガラス流出パイプ7の端部7b下側の延長方向に配置される。また、溶融ガラス受け部40は、端部7bから下側に所定の隙間を置いて設けられてよい。本実施形態では、この隙間は、10mmとされている。
【0061】
ガラス流出制御装置10は、溶融ガラス受け部材41、42が溶融ガラス受け部40の上側の面を形成するように、一対の溶融ガラス受け部材41、42を互いに当接させる受け部移動手段60を備える。受け部移動手段60は当接プッシャ61、62を備える。当接プッシャ61、62としては、エアーシリンダや油圧シリンダを挙げることができる。したがって、溶融ガラス受け部材41及び42は、それぞれ、当接プッシャ61及び62の作動に従って一対のレール45及び46に沿って移動するように、レール45及び46に配置されている。
【0062】
溶融ガラス受け部40は、一対の溶融ガラス受け部材41、42を冷却する受け部冷却手段を備えてよい。受け部冷却手段は、空気、油、水などを用いた公知の冷却手段であってよい。受け部冷却手段は、好ましくは、コストが安価で取り扱いが容易な水を用いた冷却手段がよい。
【0063】
溶融ガラス受け部40は、1つの溶融ガラス受け部材で一体に形成されて溶融ガラスを受けてもよい。
【0064】
[外れ止め装置]
外れ止め装置80は、四角柱状の差し込みピン部材81と、差し込みピン部材81の先端が挿入される挿入穴82が形成されている挿入受け部材83と、垂直方向に形成され挿入穴82に貫通する抜け止めピン挿入穴86と、挿入穴82に配置された抜け止めピン支持部材87と、抜け止めピン支持部材87に当接するように、抜け止めピン挿入穴86に差し込まれた抜け止めピン88とを有する。差し込みピン部材81の先端には、抜け止めピン88が挿通可能な穴89が形成されている。
【0065】
[ガラス流出制御装置の制御方法]
以上のガラス流出制御装置10は、以下のようにして、溶融ガラスを流出させる。
【0066】
ガラス流出制御装置10は、金型搬送装置8が金型搬送台8aをフレーム2の中に配置しているとき、駆動モータ(図示せず)を作動させて、アーム部3ひいては、ガラス流出制御片10a、10bを互いに最も離れた位置に移動させる。これにより、溶融ガラス流出パイプ7と金型搬送台8aとの間には、ガラス流出制御装置10が配置していないので、溶融ガラス流出パイプ7から流出した溶融ガラスは、直接、金型に流れる。
【0067】
このとき、ガラス流出制御装置10は、当接プッシャ61、62を一対の溶融ガラス受け部材41、42が上からみて端部囲繞部材23、24に隠れるように、作動させる。
【0068】
ガラス流出制御装置10は、以下のようにして、溶融ガラスの流出を止める。
【0069】
図6から図11に示すように、ガラス流出制御装置10は、先ず、一対のガラス流出制御片10a、10bが互いに接触するように、駆動モータ(図示せず)を作動させる。これにより、溶融ガラス流出パイプ7の端部7bの近傍に所定の隙間を置いて、一対のガラス流出制御片10a、10bが位置する。
【0070】
さらに、図10に示すように、四角柱状の差し込みピン部材81の先端が、挿入穴82に挿通される。これにより、差し込みピン部材81が挿入穴82に配置された抜け止めピン支持部材87を押し込み、抜け止めピン支持部材87の上に当接していた抜け止めピン88が差し込みピン部材81の先端に形成されている穴89に差し込まれる。これにより、一端当接した一対のガラス流出制御片10a、10bは、互いに離れることができなくなる。
【0071】
図9及び図11に示すように、溶融ガラスは、溶融ガラス流出パイプ7と溶融ガラス受け部材41、42との間の所定の隙間でその一部が固化しても、固化していない部分が流れ落ちてこの隙間に圧力をかける場合がある。そこで、外れ止め装置80によって一対の端部囲繞部材23、24が離れないようにする。さらに、外れ止め装置80は、溶融ガラスが当接している部分の隙間から漏れ出ることも防止する。
【0072】
ガラス流出制御装置10は、次に、側面冷却手段20を作動させて、溶融ガラス流出パイプ7の側部7aを冷却する側部冷却工程を行う。これにより、溶融ガラス流出パイプ7の側部7aが冷却され、この部分を流れる溶融ガラスの粘度が高くなる。しかし、一対の溶融ガラス受け部材41、42は、上からみて端部囲繞部材23、24に隠れる位置に配置しているので、粘度が高くなった溶融ガラスは、溶融ガラス流出パイプ7から流出し続ける。
【0073】
ガラス流出制御装置10は、次に、当接プッシャ61、62を作動させて、溶融ガラス流出パイプ7の端部7bから所定の距離を置いて溶融ガラスを受ける溶融ガラス受け工程を行う。これにより、溶融ガラス受け部材41、42が、端部囲繞部材23、24が形成する内側面28を塞ぐ。そして、冷却され粘度が高くなった溶融ガラスは、溶融ガラス受け部で受け止められ、さらに自然冷却により固化する。固化したガラスは、溶融ガラス流出パイプ7からの溶融ガラスの流出を停止させる栓として機能する。
【0074】
換言すると、溶融ガラスが側部7aを冷却された溶融ガラスパイプを通過して流出された後に、溶融ガラス受け部材41、42は、側面冷却手段20に対して相対的に移動して溶融ガラスを受け止める。溶融ガラスは、溶融ガラス受け部材41、42に受け止められる前にある程度冷却され、粘度が高くなっているので、溶融ガラス受け部材41、42に受け止められる際に固化しやすい。
【0075】
なお、ガラス流出制御装置10は、受け部冷却手段を作動させて、溶融ガラス受け部材41、42を強制的に冷却させる。
【0076】
また、一対の溶融ガラス受け部材41、42は、溶融ガラスが流れているところを切断するように、互いに向かって移動する。換言すると、一対の溶融ガラス受け部材は、溶融ガラス受け部の上側の面を共同して形成するように、一方と他方から互いに向かって移動をし、当接する。これにより、溶融ガラス受け部材41、42を互いに当接させることで溶融ガラス受け部材は、溶融ガラスの流れをほとんどみだすことなくすばやく切断することができる。
【0077】
溶融ガラス流出パイプ7と溶融ガラス受け部材41、42の間には隙間があるので、溶融ガラスは、溶融ガラス受け部材41、42で受け止められて固化して、この所定の隙間を埋める栓として作用する。
【0078】
側面冷却手段20は、端部囲繞部材23、24と溶融ガラス流出パイプ7の端部7bとが接触しないように、かつ、溶融ガラス流出パイプ7の端部7bを所定の間隔を置いて囲むように配置されているので、溶融ガラス流出パイプ7の端部7bから流出した溶融ガラスの流体は、溶融ガラス受け部材41、42で受け止められた後、この隙間に入り込むようにして固化する。このため溶融ガラス自体がこの隙間を塞ぐ栓となって溶融ガラスが停止する。
【0079】
上記の構成により、本発明のガラス流出制御装置は、溶融ガラスが溶融ガラス受け部材に受け止められて固化する作用、又は溶融ガラスが側面冷却手段の端部囲繞部材と溶融ガラス流出パイプとの隙間に入り込むようにして固化する作用、又はそれらの両方の作用によってガラス流を停止することができる。
【0080】
ガラス流出制御装置10は、さらに、溶融ガラス流出パイプ7の端部を所定の隙間を置いて冷却手段で囲い冷却する工程と、溶融ガラス流出パイプ7の端部の側面を所定の隙間を置いて囲い溶融ガラスを受ける工程と、隙間を満たす溶融ガラスを冷却する工程とを備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の溶融ガラス製造装置を示す正面図である。
【図2】図1に示す溶融ガラス製造装置の側面図である。
【図3】図1に示すガラス流出制御装置の斜視図である。
【図4】図3に示すガラス流出制御装置の側面図である。
【図5】図1に示す外れ止め装置の部分断面図である。
【図6】図3に示すガラス流出制御装置の動作を説明するための斜視図である。
【図7】図6に続くガラス流出制御装置の動作を説明するための斜視図である。
【図8】図7に続くガラス流出制御装置の動作を説明するための斜視図である。
【図9】図8に示すガラス流出制御装置の側面図である。
【図10】図8に示す外れ止め装置の部分断面図である。
【図11】図8に示すガラス流出制御装置の側面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 溶融ガラス製造装置
2 フレーム
3 アーム部
4 移動手段
6 溶融装置
7 溶融ガラス流出パイプ
7a 側部
7b 端部
8 金型搬送装置
8a 金型搬送台
10 ガラス流出制御装置
10a、10b ガラス流出制御片
20 側面冷却手段
21 端部囲繞部
23、24 端部囲繞部材
25、26 湾曲側面部
28 内側面
40 溶融ガラス受け部
41、42 溶融ガラス受け部材
45、46 レール
50 受部冷却手段
60 受け部移動手段
61、62 当接プッシャ
80 外れ止め装置
81 差し込みピン部材
82 挿入穴
83 挿入受け部材
86 抜け止めピン挿入穴
87 抜け止めピン支持部材
88 抜け止めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスの流出を少なくとも停止させるガラス流出制御装置であって、
溶融ガラス流出パイプの側面を冷却する側面冷却手段と、
前記溶融ガラス流出パイプの延長方向に配置可能な溶融ガラス受け部と、を備えるガラス流出制御装置。
【請求項2】
前記溶融ガラス受け部を冷却する受部冷却手段を備える、請求項1に記載のガラス流出制御装置。
【請求項3】
前記溶融ガラス受け部を前記側面冷却手段に対して相対移動させる受け部移動手段を備える、請求項1又は2に記載のガラス流出制御装置。
【請求項4】
前記溶融ガラス受け部は、該溶融ガラス受け部の上側の面を共同で形成する一対の溶融ガラス受け部材であって移動可能に保持された一対の溶融ガラス受け部材を含み、
当該ガラス流出制御装置は、さらに、前記溶融ガラス受け部材が前記溶融ガラス受け部の上側の面を形成するように、前記一対の溶融ガラス受け部材を互いに当接させる当接プッシャを備える、請求項1から3のいずれかに記載のガラス流出制御装置。
【請求項5】
前記溶融ガラス受け部は、前記溶融ガラス流出パイプの端部から所定の隙間を置いた位置で、溶融ガラスを受ける請求項1から4のいずれかに記載のガラス流出制御装置。
【請求項6】
前記側面冷却手段は前記溶融ガラス流出パイプの端部を囲繞する内側面を有する端部囲繞部を備え、該端部囲繞部は、その内側面と前記溶融ガラス流出パイプの端部の外側面との間に所定の隙間を置いて配置された請求項1から5のいずれかに記載のガラス流出制御装置。
【請求項7】
前記溶融ガラス流出パイプの端部は円柱形状の側面を有し、
前記端部囲繞部の内側面は、前記溶融ガラス流出パイプの端部の外径よりも所定寸法だけ大きい円柱形状の側面を形成している、請求項6に記載のガラス流出制御装置。
【請求項8】
前記端部囲繞部は、離接可能に保持された一対の端部囲繞部材を有し、
前記一対の端部囲繞部材は、前記溶融ガラス流出パイプの端部を囲繞する内側面を共同で形成する湾曲側面部を有する、請求項6又は7に記載のガラス流出制御装置。
【請求項9】
さらに、それぞれが各端部囲繞部材を前記溶融ガラス流出パイプの端部に向けて移動させる一対のアーム部と、
互いに接触させた前記一対の端部囲繞部材が離れないように保持する外れ止め装置と、を備える請求項8に記載のガラス流出制御装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のガラス流出制御装置を備える溶融ガラス製造装置。
【請求項11】
溶融ガラスの流出を停止させるガラス流出制御方法であって、
溶融ガラス流出パイプの側部を冷却する側部冷却工程と、前記溶融ガラス流出パイプの端部から所定の距離を置いて溶融ガラスを受ける溶融ガラス受け工程と、を有するガラス流出制御方法。
【請求項12】
さらに、前記溶融ガラス受け工程で受けた溶融ガラスを冷却する端部冷却工程を有する請求項11に記載のガラス流出制御方法。
【請求項13】
前記端部冷却工程は、前記溶融ガラス受け工程より先に開始されることを特徴とする請求項12に記載のガラス流出制御方法。
【請求項14】
前記溶融ガラス受け工程は、ガラス流を挟み相対して位置する一対の溶融ガラス受け部材が互いに相対する溶融ガラス受け部材に当接することにより行われる請求項11から13のいずれかに記載のガラス流出制御方法。
【請求項15】
前記溶融ガラス流出パイプの端部を所定の隙間を置いて冷却手段で囲い冷却する工程と、
前記溶融ガラス流出パイプの端部の側面を所定の隙間を置いて囲い溶融ガラスを受ける工程と、
前記隙間を満たす溶融ガラスを冷却する工程とを備える請求項11から14のいずれかに記載のガラス流出制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−320789(P2007−320789A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150536(P2006−150536)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】