説明

ガラス溶融体清澄方法及びこの方法を実施する装置

【課題】通例の高清澄温度と適度の清澄剤濃度で、付加的な清澄装置を用いずに、バブルの少ないガラスセラミックグリーンガラスのガラス溶融体の製法を提供する。
【解決手段】清澄剤として酸化砒素及び酸化アンチモンを含まず、清澄剤として酸化錫を唯一の添加物として≦0.4重量%の濃度で含むリチウム・アルミニウム珪酸塩(LAS)ガラス系に基づくガラスバッチを作製する工程と、 式: t(min)(T,x)=2+[0.5・(1700−T(avg))]+[50・(0.40−x)] h但し、T(avg)≦1700℃及びx≦0.40%ここで、T(avg): 平均ガラス温度 x: 清澄剤濃度 t(min): 最小滞在時間による清澄すべきガラスの最小滞在時間(h)及び平均ガラス温度を満たす溶融バットを設計する工程と、バッチを溶融し、溶融体を温度<1700℃で、付加的な、特殊設計高温清澄ユニットを用いずに清澄する工程とを含んで成る方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLASガラスセラミックグリーンガラスのガラス溶融体を清澄する方法に関する。本発明はまた、この方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスを溶融する際、基礎材料又はバッチの化学的変態が相当量のガスを発生する。概算見積もりによれば、1.2kgのバッチは約1kgの溶融ガラスを生成する、即ち溶融工程においてバッチ重量の約1/5はガスとして放出される。他のガスはバッチから物理的に持っていかれるか、燃焼熱源により溶融ガラスに導入される。
【0003】
殆どのガスは実際にはガラスの初期溶融中に逃げるが、相当量のガスが溶融体に捕捉される。捕捉ガスの一部はガラス溶融体に融け、他の部分はガラス溶融体に局部ガス介在物、即ち所謂バブルとして残る。バブルはバブルの内圧が溶解ガスの平衡圧力より高い又は低いとき、膨張又は収縮する。ガスバブルには、種々の大きさがある。
【0004】
これ等のガスバブルはガラス溶融体から製造されるガラス又はセラミック完成品の品質にマイナスの影響をもつので、ガラス溶融体は清澄されてガスが除去される。
【0005】
用語「ガラスの清澄」は従って、いわゆる清澄領域で行われ、「実際の」溶融処理に後続する溶融処理工程を意味するものと理解される。
【0006】
ガスバブルと溶融体間の密度差による静的浮力のため、ガスバブルは実際、本質的に浮上し、次いで空気中に逃れようとする。だが、外部影響が無い限り、この過程にはかなりの時間を要し、滞在時間が結果として長くなり、製造工程がより高価なものとなる。従って、この過程を促進する付加的清澄工程を設けることが必要となる。
【0007】
これ等の清澄工程のため、種々の方法が開発され、知られている。
【0008】
例えば、DE19939771B4及びDE10003948A1には、溶融バットの後部に位置付けられる別個の高温清澄装置を用いることが開示されている。この装置は、高周波技術とスカリング(skulling)技術を用い、溶融体の粘性を低下させ、従ってガスバブルの浮上速度を増大させるため、適度の清澄剤濃度(<0.25重量%)で、より高い温度(>1750℃)を発生させるものである。一般には、この目的のために2つの独立した相互連結する清澄装置が設けられる。更に、WO02/16279A1(=DE19939787C2)には、還元剤との組み合わせでVにより着色されたLASガラスセラミック(LAS=リチウム・アルミニウム珪酸塩)の、標準的清澄剤As又はSbを用いずに、代替的清澄剤SnO又はCeO又は硫酸塩化合物又は塩化物化合物を用い、1975℃で1h(時間)行う高温清澄による製造が記載されている。この黒色様ガラスセラミックは一般に、料理用レンジの製造に用いられ、ブランド名Ceran Suprema(登録商標)の下で販売されている。
【0009】
これ等の付加的清澄装置は高価な設備投資費を要し、エネルギー効率が良くないので、稼働中に高いエネルギーコストを招き、また製造工程にかなりのコスト負担を置く。多種のガラスの製造法はまた、温度が高くなると、ガラス溶融体からの成分の蒸発を伴うと云う不利を共有している。これが、種々の望ましくない、不利な結果をもたらすことがある。
【0010】
ガスバブルの浮上速度を増大させるためのもう一つの可能性は、バブル径を大きくすることである。清澄で通例の温度上昇自体は、バブル径の大きな増大を招かない。温度依存酸化ステージを有する、多価の清澄剤の酸化物でガラスを化学的に清澄する方法はこの目的のために十分試され、大幅に最適化されている。特に、これ等の清澄剤には、Sb(V)酸化物、As(V)酸化物及びSn(IV)酸化物が含まれ、>1600℃の溶融/清澄温度で>0.5重量%の清澄剤が用いられる。これ等化学的清澄剤はガラス溶融体中でガスを放出し、ガスは物質移送プロセスの結果、ガスバブル内に移動する。ガスバブル内に移動したガス量は、望まれたバブル膨張を生じる。だが、清澄剤濃度が高くなると、バッチコストが高くなり、これらが蒸発する傾向があるため、ガラス内と熱成形工程の成形型内にかなりの問題を惹起する。
【0011】
ガラスの化学組成を大幅に不変に保つ、いわゆる物理的清澄方法も知られるようなってきている。ガラス溶融体の物理的清澄は、バブルを溶融体の表面に「強制的に」浮上させるために物理的方法を用いると云うことに基づく。そこでは、バブルは破裂し、その内容を放出し、又は溶融体中に溶解される。
【0012】
一つの変形物理的清澄方法は、いわゆる真空清澄法で、多数の関連特許文献、例えばEP0908417A2,DE10146884A1及びDE10223889A1に記載されている。真空清澄法も同様に、溶融体中に含まれるバブルを膨張させる。バブル膨張は、一方においてボイルの法則「p・V=一定」、即ち圧力pが減少すれば、体積Vは増大することにより決定され、他方においてバブルに含まれるガスの分圧は溶融体内のガスの分圧より低くなると云うことにより決定される。従って、ガスは溶融体から流出し、バブル内に流入する。この効果はバブルを膨張させ、溶融体の表面により急速に浮上させ、上部のオーブンスペースに逃れさせる。また、溶解ガスの自発的な、新たなバブル形成がいわゆる核で発生(ダム、ミニバブル)し、これが泡を発生させ、この傾向も適宜の方法で防止しなければならないことも留意する必要がある。
【0013】
製造法上、方法の環境上及び経済上の上記重大な不利益に拘わらず、実際問題として、上記清澄方法は高濃度の多価の清澄剤を用い、高溶融/清澄温度で、又は適度の清澄剤濃度の場合、高価な付加的清澄装置を用い、極めて高い清澄温度で行われることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
冒頭に記載の方法に基づいて、本発明の目的はガラスセラミックグリーンガラスのガラス溶融体を清澄するに際し、通例の高清澄温度で、付加的な特殊設計高温清澄装置を用いずに、適度の清澄剤濃度で、グリーンガラス中のバブル数が、従ってまたセラミック化製品中のバブル数も十分に低くなるように行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の実施態様によれば、この目的はガラスセラミックグリーンガラスのガラス溶融体の清澄方法であって、次の工程、即ち、
清澄剤として酸化砒素及び/又は酸化アンチモンを含まず、清澄剤としての酸化錫を唯一の添加物として≦0.4重量%の濃度で含むリチウム・アルミニウム珪酸塩(LAS)ガラス系に基づくガラスバッチを作製する工程と、
式:
【0016】
(min)(T,x)=2+[0.5・(1700−T(avg)]
+[50・(0.40−x)] h
但し、T(avg)≦1700℃及びx≦0.40%
ここで、T(avg): 最小滞在時間
x: 平均ガラス温度
(min): 清澄剤濃度
【0017】
による清澄すべきガラスの最小滞在時間及び平均ガラス温度に関して溶融バットを設計する工程と、
バッチを溶融し、溶融体を温度<1700℃で、付加的な、特殊設計高温清澄ユニットを用いずに清澄する工程と
を含んで成る方法によって達成される。
【0018】
本発明に従って採用される工程によって、代替的清澄剤の適度の濃度で、通常の平均ガラス温度にてLASガラスを経済的に清澄し、かつ、付加的装置を用いずに、溶融/清澄バットを用いることでグリーンガラス中の、従ってまた完成ガラスセラミック製品中のバブル数が<1バブル/溶融体1kgになる、即ちグリーンガラス及びガラスセラミック製品における高いバブル質が達成されることが可能になる。
【0019】
本方法はまた、清澄すべきガラスの最小滞在時間及び平均ガラス温度に関する溶融バットの設計に本質的に依存する。平均ガラス温度とは、粒子が全バット中を進むとき通常体験する平均温度である。滞在時間とは、粒子が溶融体内で過ごす時間を意味するものと理解され、これは就中、溶融工程の持続時間に依存し、これによれば、滞在時間が短いことはバブル質が不良であることの目安と理解されるべきである。
【0020】
第2実施態様によれば、上記目的はガラスセラミックグリーンガラス用ガラス溶融体の清澄方法であって、次の工程、即ち、
清澄剤として酸化砒素及び/又は酸化アンチモンを含まず、清澄剤としての酸化錫を唯一の添加物として0.4重量%の濃度で含むリチウム・アルミニウム珪酸塩(LAS)ガラス系に基づくガラスバッチを作製する工程と、
式:
【0021】
(min)(T,x)=−13+[0.5・(1750−T(avg)]
+[50・(0.40−x)] h
但し、T(avg)≦1720℃及びx≦0.40%
ここで、t(min): 最小滞在時間
(avg): 平均ガラス温度
x: 清澄剤濃度
【0022】
による清澄すべきガラスの最小滞在時間(h)及び平均ガラス温度に関して溶融バットを設計する工程と、
バッチを溶融し、溶融体を温度1720℃で、付加的な、特殊設計高温清澄ユニットを用いずに清澄する工程と
を含んで成る方法によって達成される。
【0023】
グリーンガラス内、従って完成ガラスセラミック製品中のバブル数は<0.1バブル/溶融体1kgである。
【0024】
両実施態様において、用語「バブル/kg」とは長スパン(径間)が>0.1mmのバブルを指す。バブルは概して丸くなく、変形され、一般に楕円面であるためバブルの最大長が測定のために用いられる。バブル寸法、従って長径間は正規分布の対象となり、平均長径間の用語はこの正規分布に係わる。
【0025】
バブルの測定は、ルーペ又は顕微鏡等の技術的補助、又は自動化された欠陥検出システム(反射光又は透過光法)を用いて目による視覚的に行うことができる。
【0026】
バブル寸法は、使用された測定方法によって測定できるバブルの向きの中で圧倒的に多い丸くないバブルの、最大測定可能長径間により決定される。これは、検出されたバブルが、可視方向により大きく、測定できない長径間をもつことを妨げない。
【0027】
意外にも、温度と時間は同一効果を有せず、この効果は清澄剤濃度と温度の関係に依存することが分かった。溶融バット内の流れは泡の多いガラス溶融体ができるだけ長く高温に曝されるように、だがこれが必ずしも溶融浴の表面においてではなく、高温ガラスが正確な時間にこの表面に達するように適宜調整される。
【0028】
この理由で、本発明はまた、上記方法を実施する装置であって、バブルの必要最小滞在時間と平均ガラス温度に関する設計が製品kg当り1バブルのバブル質に対して決定され、適合されたガラスレベルで、清澄剤濃度(x)が0.4重量%SnO、且つ平均ガラス温度T(avg)が1700℃の場合、この設計が次の式を満たす溶融体の最小滞在時間t(min)をもたらす溶融バット(1)を有する装置を提案する。
【0029】
(min)(T,x)=2+[0.5・(1700−T(avg)]
+[50・(0.40−x)] h
【0030】
もう一つの実施態様によれば、上記方法を実施する装置であって、バブルの必要最小滞在時間と平均ガラス温度に関する設計が製品当り0.1バブルのバブル質に対して決定され、適合されたガラスレベルで、清澄剤濃度(x)が0.4重量%SnO、且つ平均ガラス温度T(avg)が1720℃の場合、この設計が以下の式を満たす溶融体の最小滞在時間t(min)をもたらす溶融バット(1)を有する装置が提案される。
【0031】
(min)(T,x)=−13+[0.5・(1750−T(avg)]
+[50・(0.40−x)] h
【0032】
本発明による方法と本発明による装置の実施例は冒頭の請求の範囲中従属請求項に定義され、表及び図面に示すグラフ及び組込み溶融バット部品に関連した以下の説明から理解可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
明細書の導入部で説明したように、清澄剤及びバッチ内のその濃度、平均ガラス温度及びガラス系に加えて、本発明による工程は溶融体kg当り<1バブルと云う高いバブル質を達成するため、清澄すべきガラスの最小滞在時間及び平均ガラス温度に関する溶融系の設計に依存する。
【0034】
プロセス・パラメタ間の関係を以下に説明する。
【0035】
始めに、LASグリーンガラスを製造して対応するガラスセラミックを得るに際して、種々の溶融バット及びSnO清澄剤濃度を用いて、様々のバット試験を行い、製品のバブル質に対するそれ等の影響を調べた。
【0036】
これ等バット試験と種々の溶融バットA,B及びCにおけるガラスセラミックの生成の結果が下の表1に纏められている。
【0037】
【表1】

【0038】
バットAは、低濃度清澄剤0.22重量%SnOを用い、試験1では高温清澄装置をオフにし、試験2では高温清澄装置をオンに切り換えてkg当り1バブルのバブル質を得たバットを指し、バットB及びCは付加的高温清澄装置を用いない通常のバットを指す。
【0039】
これと平行して、個々の試験/生成のバット操作特性を、数理シミュレーションを補助として計算した。当業者にとってこれ等計算のための既知の計算プログラムは入手可能であるから、これ等計算プログラムをここで更に論述しない。
【0040】
推断的パラメタ/特性値は、下の表2に纏められているように、シミュレーションで決定される。
【0041】
【表2】

【0042】
表1による試験の実際の質データと表2による数理シミュレーションの特性値/パラメタに基づいて、図1〜3に夫々のグラフとして表された以下の関係を相関することができる。
【0043】
I.最小滞在時間を略一定、平均温度を一定とした場合の結果「kg当りのバブル数」に対する清澄剤濃度の影響
この関係は、2つの清澄剤濃度0.2%SnO及び0.8%SnOでの図1のグラフに示されている。表1による試験番号は個々の相関点において示されている。このことは図2及び3にも当てはまる。
【0044】
II.最小滞在時間及び平均ガラス温度と結果「kg当りのバブル数」との関係
この関係は、図1による清澄剤濃度0.2%SnOと、最小滞在時間t(min)16.4h(時間)(試験3〜7)及び5.3h(時間)(試験1及び2)での直線カーブに基づいて図2に示されている。
【0045】
III.最小滞在時間を略一定、平均温度を一定とした場合の結果「kg当りのバブル数」に対する最小滞在時間の影響
この関係は同様に、図1による清澄剤濃度0.2%SnOと、最小滞在時間t(min)16.4h(時間)及び5.1h(時間)での直線カーブにより図3に示されている。
【0046】
図1〜3のグラフに基づいて、次の関係が得られる。
・ ガラス中のSnO濃度の0.2%の低下はバブル結果の1桁の悪化を意味する(図1より)。
・ 平均ガラス温度が20℃上昇すると、バブル結果が1桁改善される(図2、点3から点4への飛躍より)
・ 平均ガラス温度の2℃の低下は最小滞在時間の1hの増大により補われる(図3と共に図2より)。
【0047】
これに基づいて、所望清澄剤濃度x≦SnO0.4重量%、平均ガラス温度T(avg)≦1700℃及びkg当りバブル数<1として、最小滞在時間t(min)に対する次のパラメタが得られる。
【0048】
【表3】

【0049】
この関係は次の補外式でも表すことができる。
【0050】
(avg)≦1700℃及びx<0.40%に対して
(min)(T,x)=2+[0.5・(1700−T(avg)]
+[50・(0.40−x)] h
【0051】
上記グラフに基づいて、所望清澄剤濃度x≦SnO0.4重量%、平均ガラス温度T(avg)≦1720℃及びkg当りバブル数<0.1として、最小滞在時間t(min)に対する次のパラメタが得られる。
【0052】
【表4】

【0053】
この関係は次の補外式でも表すことができる。
【0054】
(avg)≦1720℃及びx<0.40%に対して
(min)(T,x)=−13+[0.5・(1750−T(avg)]
+[50・(0.40−x)] h
【0055】
さて、本発明の定義に用いる特性により、これ等の式及び表3及び4が溶融バットの設計の基礎として用いられる。最小滞在時間の式で、±10%の精度が比較的現実的と見られる。可変パラメタに関して、システムの設計と式の遵守は上記数理シミュレーションにより達成される。
【0056】
必要な最小滞在時間t(min)と平均温度T(avg)を得るため、所定サイズのバットに対してバット設計は次の組込み部品の論理的選択を含む。
【0057】
・ 短絡流を阻止し、少ないガラスの重なりによって温度増大を得るための越流ダム
・ 主として表面における短絡流を阻止し、引き込み流を阻止するためのブリッジダム
・ 平均ガラス温度と流れ安定化を高めるための電気的補助加熱器
・ 低温底部ガラスを高温面に輸送することにより短絡流を阻止し、且つ平均ガラス温度を上昇させるため、ガラス流れ方向に対して横方向に配置した送風ノズル
・ 低温底部ガラスを高温面に輸送することにより短絡流を阻止し、流れを安定化し、且つ平均ガラス温度を上昇させるため、ガラス流れ方向に対して縦方向に配置した送風ノズル
・ 底部領域に低温部が発生するのを阻止し、従って平均ガラス温度を上昇させるための低ガラスレベル
【0058】
本発明の目的を達成するため、上記組込み部品に基づく対応バット設計の典型的な具体例を図4〜8に示す。各図において、Aは側面図、及びBは平面図である。
【0059】
溶融バットは参照番号1で示され、ガラス出口点は参照番号2で示されている。ガラスレベルhのガラス溶融浴は参照番号3で示されている。図4〜8の溶融バッチの左側にあるバッチ流入端投入点、付随する投入アセンブリ、いわゆるドッグハウス及びガラス浴の面に浮遊するバッチは、図には示されていない。溶融バットの典型的な燃料加熱の、いわゆる上部オーブンも簡単のため、示されていない。
【0060】
図4は、電気的補助加熱器を有するバット1の、列状に配置された電極として具体化され、平均ガラス温度を上昇させ、流れを安定化する働きをするバット設計を示している。バット1はまた、ガラス出口2を備えたバットの部分1aを仕切る越流ダム5を有する。越流ダム5はその上方にある小さなガラスはみ出し部dにより、短絡流、即ち程度の差はあれ強力な、ガラス出口2に直接向かう流れを阻止し、また温度を上昇させるように働く。
【0061】
図5は図4のバット設計において、ガラス流れ方向に対して横方向に線状に送風ノズル6が付加的に配置され、低温底部ガラスを高温面に輸送することにより短絡流を阻止し、流れを安定化し、且つ平均ガラス温度を上昇させるようにしたものである。
【0062】
図6は同様に図4の溶融バットにおいて、ブリッジダム7が付加的に設けられ、主として表面における短絡流を阻止し、引き込み流を阻止するようにしたものである。
【0063】
図7は、図6のブリッジダム7と図5の越流ダム5の組み合わせだが、電極4による電気的補助加熱器を用いない溶融バット設計を示す。更に、図5の設計と同様に、送風ノズル6がガラス流れ方向に対して横方向に設けられると共に、送風ノズル6と同じ機能の付加的素風ノズル8がガラス流れ方向に対して縦方向に配置されている。
【0064】
最後に、図8は図7の溶融バット設計において、ブリッジダムを省略したものを示している。
【0065】
一般に、ガラスレベルhを過度に高くするのは、底部に低温域が発生するのを阻止するため避けるべきであり、このことは平均ガラス温度を上昇させる一因となる。
【0066】
図4〜8に関連バット設計のために示した組込み部品、例えばブリッジダム又は越流ダム、送風ノズル及び電気的補助加熱器はそれ等自体既知である。それ等を用いて溶融バット内の流比に影響を及ぼすことは、例えばNoelle, Guentherによる書籍 ”Technik der Glasherstellung” 「ガラス製造の技術」, published by Deutscher Verlag fur Grundstoffindustrie (pp. 87ff) に記載、図示されている。
【0067】
本発明は上記式に従って必要な最小滞在時間と平均温度を得る工程の組み合わせに依存している、即ちシステムの設計と式の遵守は上記数理シミュレーションにより達成される。図4〜8に示した組込み部品は例示に過ぎず、他の組み合わせも可能である。
【0068】
原則として、LASガラス系に対して茲に記載された方法によれば、他のガラス系に対するバット設計の対応する式も実験により決定される量及び値により、また数理シミュレーションにより設定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】滞在時間と平均温度を一定にした、清澄剤濃度の結果「kg当りバブル」に対する影響を示すグラフである。
【図2】最小滞在時間及び平均ガラス温度と結果「kg当りバブル」間の関係を示すグラフである。
【図3】平均ガラス温度を略一定にした、最小滞在時間の結果「kg当りバブル」に対する影響を示すグラフである。
【図4】電気的補助加熱器と関連して越流ダムをもつ溶融バットの設計を概略的に示す。
【図5】追加の送風ノズルをガラス流方向に対して横配置で設けた図4の溶融バット設計を概略的に示す。
【図6】ブリッジダムを付加的に設けた図4の溶融バット設計を概略的に示す。
【図7】図6のブリッジダム及び図5の越流ダムをもつが、電気的補助加熱器をもたない溶融バット設計であって、追加の送風ノズルをガラス流方向に対して横配置と縦配置の両方で設けたものを概略的に示す。
【図8】ブリッジダムをもたない図7の溶融バット設計を概略的に示す。
【符号の説明】
【0070】
1 溶融バット
2 ガラス出口
3 ガラス溶融浴
4 電極
5 越流ダム
6 送風ノズル
7 ブリッジダム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミックグリーンガラスのガラス溶融体の清澄方法であって、次の工程、即ち、
清澄剤として酸化砒素及び/又は酸化アンチモンを含まず、清澄剤として酸化錫を唯一の添加物として≦0.4重量%の濃度で含むリチウム・アルミニウム珪酸塩(LAS)ガラス系に基づくガラスバッチを作製する工程と、
式:
(min)(T,x)=2+[0.5・(1700−T(avg))]
+[50・(0.40−x)] h
但し、T(avg)≦1700℃及びx≦0.40%
ここで、T(avg): 平均ガラス温度
x: 清澄剤濃度
(min): 最小滞在時間
によって、清澄すべきガラスの最小滞在時間(h)及び平均ガラス温度を満たす溶融バットを設計する工程と、
バッチを溶融し、溶融体を温度<1700℃で、付加的な特殊設計高温清澄装置を用いずに清澄する工程と
を含んで成る方法。
【請求項2】
ガラスセラミックグリーンガラスのガラス溶融体の清澄方法であって、次の工程、即ち、
清澄剤として酸化砒素及び/又は酸化アンチモンを含まず、清澄剤として酸化錫を唯一の添加物として≦0.4重量%の濃度で含むリチウム・アルミニウム珪酸塩(LAS)ガラス系に基づくガラスバッチを作製する工程と、
式:
(min)(T,x)=−13+[0.5・(1750−T(avg)]
+[50・(0.40−x)] h
但し、T(avg)≦1720℃及びx≦0.40%
ここで、t(min): 最小滞在時間
(avg): 平均ガラス温度
x: 清澄剤濃度
によって、清澄すべきガラスの最小滞在時間(h)及び平均ガラス温度を満たす溶融バットを設計する工程と、
バッチを溶融し、溶融体を温度≦1720℃で、付加的な特殊設計高温清澄装置を用いずに清澄する工程と
を含んで成る方法。
【請求項3】
作製されるLASガラス系のガラスバッチが、主結晶層としての高石英混合結晶への酸化バナジウム混合物により暗色着色したガラスセラミックを生成し、このガラスセラミックは還元剤を添加しなくても、可視スペクトルにおける光透過率がτ<5%であり、1600nmにおけるIR透過率が>65%である請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
酸化錫の清澄剤濃度が≦0.35重量%、好ましくは≦0.3重量%、特に好ましくは≦0.25重量%である請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の方法。
【請求項5】
ガラス溶融体が、酸化錫濃度0.4重量%、最小ガラス滞在時間7h、及び平均ガラス温度1690℃で製造される請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の方法。
【請求項6】
ガラス溶融体が、酸化錫濃度0.35重量%、最小ガラス滞在時間9.5h、及び平均ガラス温度1690℃で製造される請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ガラス溶融体が、酸化錫濃度0.3重量%、最小ガラス滞在時間12h、及び平均ガラス温度1690℃で製造される請求項4に記載の方法。
【請求項8】
ガラス溶融体が、酸化錫濃度0.25重量%、最小ガラス滞在時間14.5h、及び平均ガラス温度1690℃で製造される請求項4に記載の方法。
【請求項9】
ガラス溶融体が、酸化錫濃度0.2重量%、最小ガラス滞在時間12h、及び平均ガラス温度1700℃で製造される請求項4に記載の方法。
【請求項10】
ガラス溶融体が、酸化錫濃度0.2重量%、最小ガラス滞在時間17h、及び平均ガラス温度1690℃で製造される請求項4に記載の方法。
【請求項11】
ガラス溶融体が、酸化錫濃度0.2重量%、最小ガラス滞在時間22h、及び平均ガラス温度1680℃で製造される請求項4に記載の方法。
【請求項12】
ガラス溶融体が、酸化錫濃度0.1重量%、最小ガラス滞在時間17h、及び平均ガラス温度1700℃で製造される請求項4に記載の方法。
【請求項13】
ガラス溶融体が、酸化錫濃度0.1重量%、最小ガラス滞在時間22h、及び平均ガラス温度1690℃で製造される請求項4に記載の方法。
【請求項14】
ガラス溶融体が、酸化錫濃度0.1重量%、最小ガラス滞在時間27h、及び平均ガラス温度1680℃で製造される請求項4に記載の方法。
【請求項15】
ガラス溶融体が、酸化錫濃度0.1重量%、最小ガラス滞在時間17h、及び平均ガラス温度1720℃で製造される請求項2又は請求項4の何れかに記載の方法。
【請求項16】
ガラスバットが数理シミュレーションにより設計される請求項1〜請求項15の何れか1つに記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜請求項16の何れか1つに記載の方法を実施する装置であって、バブルの必要最小滞在時間と平均ガラス温度に関する設計が製品kg当り1バブルのバブル質に対して決定され、適合されたガラスレベルで、清澄剤濃度(x)が≦0.4重量%SnO、且つ平均ガラス温度T(avg)が≦1700℃の場合、この設計が以下の式、即ち
(min)(T,x)=2+[0.5・(1700−T(avg)]
+[50・(0.40−x)] h
を満たす溶融体の最小滞在時間t(min)をもたらす溶融バット(1)を有する装置。
【請求項18】
請求項1〜請求項16の何れか1つに記載の方法を実施する装置であって、バブルの必要最小滞在時間と平均ガラス温度に関する設計が製品kg当り0.1バブルのバブル質に対して決定され、適合されたガラスレベルで、清澄剤濃度(x)が≦0.4重量%SnO、且つ平均ガラス温度T(avg)が≦1720℃の場合、この設計が以下の式、即ち
(min)(T,x)=−13+[0.5・(1750−T(avg)]
+[50・(0.40−x)] h
を満たす溶融体の最小滞在時間t(min)をもたらす溶融バット(1)を有する装置。
【請求項19】
溶融バットにおける必要最小滞在時間と平均ガラス温度を達成するため、ブリッジダム(7)、越流ダム(5)、電気的補助加熱器(4)、ガラス流に対して横方向に配置された送風ノズル(5)又はガラス流に対して縦方向に配置された送風ノズル(8)として具体化される個々の又は組み合わせの組込み部品が設けられる請求項17又は請求項18の何れかに記載の装置。
【請求項20】
溶融バットの設計と式に対する遵守が数理シミュレーションにより決定される請求項17〜請求項19の何れか1つに記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−55893(P2007−55893A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−226688(P2006−226688)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】