説明

ガラス物品製造装置及びガラス物品製造方法

【課題】ガラス物品製造装置に使用される溶融窯や供給用流路の壁部の耐久性を向上させること。
【解決手段】ガラス物品製造装置は、溶融ガラスの供給源となる溶融窯2と、該溶融窯2から流出した溶融ガラスを下流側に向かって供給する供給用流路7と、該供給用流路7の下流端に通じる成形部5とを備える。供給用流路7における分岐流路4の周壁41が、金属製部材で構成される。この金属製部材は、その厚さ方向に積層する3層構造であり、両端側のそれぞれの層が白金又は白金合金から成り、中央の層がイリジウム又はイリジウム合金から成る。中央の層よりも両端側の層の方が、白金の含有率が大きく且つイリジウムの含有率が小さい。両端側の層のそれぞれで、イリジウムの含有率よりも白金の含有率の方が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガラス板等のガラス物品を製造するガラス物品製造装置の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、例えばガラス板等のガラス物品の製造時には、溶融ガラスの供給源となる溶融窯と、この溶融窯から流出した溶融ガラスを下流側に向かって供給するための供給用流路と、該供給用流路の下流端に通じる成形部とを備えたガラス物品製造装置が使用される。
【0003】
この種のガラス物品製造装置では、溶融窯や供給用流路の壁部を、その高温での化学的、物理的安定性から、白金又は白金合金からなる金属製部材で構成することや、それらの壁部を、内面側に上記の金属製部材(板状体)が貼り付けられたジルコン耐火物等の煉瓦で構成することが行なわれていた。
【0004】
一方、近年においては、溶融窯や供給用流路の壁部又はその内面側に使用される金属製部材の材料として、白金又は白金合金に比して、より高温での化学的、物理的安定性を有するイリジウムが注目されている。
【0005】
ところが、イリジウムは、融点が2400℃以上と高いが、空気中等の酸素雰囲気下では酸化し易く、その酸化物は、1060℃で揮発してしまう。
【0006】
このような問題に対して、例えば、特許文献1,2では、イリジウム又はイリジウム合金からなる構造体の一方の表面に、少なくとも白金とイリジウムを含む金属層が設けられ、この表面に白金又は白金合金からなる金属層が設けられたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−167674号公報
【特許文献2】特開2002−180268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1,2に開示された3層の金属層は、中間層が白金とイリジウムを含む合金で形成され、その両端側のそれぞれの層は、イリジウム又はイリジウム合金と、白金又は白金合金との異なる金属材料で形成されている。この場合、白金は、イリジウムより熱膨張係数が高く(線膨張係数:白金9.1×10-6/℃、イリジウム6.8×10-6/℃)、その差がかなり大きい。
【0009】
従って、特許文献1,2に開示された3層の金属層において、熱を受けた場合に、白金又は白金合金の層がイリジウム又はイリジウム合金の層より熱膨張し、イリジウム又はイリジウム合金の層の側に屈曲するような変形が発生する。このため、この3層の金属層を溶融窯や供給用流路の壁部に使用した場合、溶融ガラスの熱により、この3層の金属層が変形し、これに起因して破損等が発生し耐久性が低下する恐れがある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、ガラス物品製造装置に使用される溶融窯や供給用流路の壁部の耐久性を向上させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための本発明のガラス物品製造装置は、溶融ガラスの供給源となる溶融窯と、該溶融窯から流出した溶融ガラスを下流側に向かって供給する供給用流路と、該供給用流路の下流端に通じる成形部とを備えたガラス物品製造装置において、前記溶融窯と前記供給用流路とにおける上下流方向の少なくとも一部を形成する壁部または該壁部の内面側部位が、白金とイリジウムとを含む金属製部材で構成されると共に、前記金属製部材は、その厚さ方向の中央部よりも両端部の方が、白金の含有率が大きく且つイリジウムの含有率が小さく、その厚さ方向の両端部のそれぞれで、イリジウムの含有率よりも白金の含有率の方が大きいことに特徴づけられる。
【0012】
このような構成によれば、金属製部材の厚さ方向の中央部と両端部とでは、白金の含有率とイリジウムの含有率とに明らかな差が生じるのに対して、その厚さ方向の一端部と他端部とでは、何れもイリジウムの含有率よりも白金の含有率の方が大きいことから、その一端部と他端部との間で材質に大差が生じることを回避し得る。従って、金属製部材における厚さ方向の両端部のそれぞれでの熱膨張係数を同等にすることが可能となり、金属製部材についてその厚さ方向の一方に屈曲するような大きな変形を抑制することができる。これにより、この金属製部材が、溶融ガラスの熱によって変形することに起因して破損するという不都合を回避して、壁部の耐久性を向上させることが可能となり、溶融ガラスの円滑な流通を確保することができる。
【0013】
また、金属製部材におけるイリジウムの含有率が厚さ方向で中央部より両端部が小さいので、金属製部材の表裏面から、イリジウムが揮発することによって金属製部材が損耗することを抑制できる。このことからも、壁部の耐久性を向上させることができる。
【0014】
上記の構成において、前記金属製部材は、その厚さ方向に積層する3層構造とされると共に、その両端側のそれぞれの層が白金又は白金合金から成り、その中央の層がイリジウム又はイリジウム合金から成ることが好ましい。
【0015】
このような層構造とすれば、この金属製部材を容易に製造することができる。
【0016】
上記の構成において、前記両端側のそれぞれの層における厚みの差が、0〜500μmであることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、両端側のそれぞれの層での熱膨張係数の差を適切に小さくすることが可能となり、熱によって金属製部材が屈曲するような変形を抑制できるので、より確実に壁部の耐久性を向上させることが可能となる。
【0018】
上記の構成において、前記両端側のそれぞれの層は、成分とその比率が相互に同一であることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、両端側の層での熱膨張係数が実質的に同一となり、壁部の耐久性を向上させる効果が確実に享受できる。
【0020】
上記の何れかの構成において、前記白金合金が、イリジウム、ロジウム、金、パラジウム、ルテニウムの少なくとも1種を含む合金であり、前記イリジウム合金が、白金、ロジウム、金、パラジウム、ルテニウムの少なくとも1種を含む合金であることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、金属製部材の化学的、物理的な特性を向上することができる。
【0022】
上記何れかの構成において、前記金属製部材は、前記壁部を形成する管状体であることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、管状体の内面側と外面側との熱膨張差に起因して該管状体に不当な変形が生じることを抑制できるため、管状体の内部通路を流通する溶融ガラスの流れに乱れが生じることを回避し得る。
【0024】
上記何れかの構成において、前記金属製部材は、前記壁部の少なくとも溶融ガラスと接触する内面側部位を形成する板状体であることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、壁部の内面側部位が薄肉である板状体で形成されているにも拘わらず、この板状体の厚み方向の熱膨張差に起因する不当な変形が生じ難しくなるため、この場合にも、板状体により形成される通路を溶融ガラスが円滑に流通できる。
【0026】
前記課題を解決するための本発明のガラス物品製造方法は、上記何れかに記載のガラス物品製造装置を用いて、ガラス物品を製造することに特徴付けられる。
【0027】
この方法の構成は、上述の本発明に係るガラス物品製造装置の構成と実質的に同一であるので、その作用効果は、当該装置について既に述べたものと実質的に同一である。
【発明の効果】
【0028】
以上のように本発明によれば、ガラス物品製造装置に使用される溶融窯や供給用流路の壁部の変形を抑制することができるので、溶融ガラスの流通障害を生じることなく、その耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係るガラス物品製造装置の一構成例を示す平面断面図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】壁部の厚さ方向でのイリジウムと白金の含有率を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0031】
先ず、図1に基づいて、本発明の実施形態に係るガラス物品製造装置1の平面視における全体構成を説明する。このガラス物品製造装置1は、溶融ガラスの供給源となる略矩形の溶融窯2と、該溶融窯2の流出口2aに連通された分配部(清澄槽)3と、該分配部3の下流側端部に連通された複数本の分岐流路4とを有し、これらの分岐流路4の下流端はそれぞれ成形部5に通じている。なお、分岐流路4は、図例では2本であるが、3本以上であってもよく、或いは分岐しない単一の流路であってもよい。また、溶融窯2は、例えば上流側から下流側に向かって直列に又は並列に二以上が連通した状態で配列されるもの等であってもよい。
【0032】
更に、溶融窯2は、底壁21、側壁22〜25、及びその上方全域を覆うアーチ形の天井壁(図示略)とを有すると共に、下流側の側壁24の幅方向中央部に流出口2aが形成され、該流出口2aを上流端に有する幅狭の流出路6を介して溶融窯2と分配部3とが連通している。また、分配部3は、底壁31、側壁32〜35、及びその上方全域を覆うアーチ形の天井壁(図示略)とを有すると共に、流出路6は、底壁61、側壁62、63、及びその上方全域を覆うアーチ形の天井壁(図示略)を有する。これら溶融窯2、分配部3、流出路6における底壁、側壁、天井壁(壁部)は、例えばジルコン耐火物等の煉瓦から成る。
【0033】
分配部3における上流側の側壁32の幅方向中央部には、流出路6の下流端が開口すると共に、該分配部3における下流側の側壁34の幅方向複数箇所には、下流側に向かって延出された複数の分岐流路4の上流端が開口している。これらの複数の分岐流路4は、相互に平行に配列されると共に、個々の分岐流路4は全てが直線状に延びている。本実施形態では、溶融窯2から溶融ガラスを成形部5に供給する供給用流路7が、流出路6と分配部3と分岐流路4とで構成され、これらの分岐流路4は、管状体で構成されている。
【0034】
図2に示すように、分岐流路4を構成する管状体の周壁41は、金属製部材で構成されており、この金属製部材は、3層構造であり、その厚さ方向で積層する3層L1〜L3から成る。周壁41の厚さ方向で両端側の層L1,L3が白金又は白金合金から成り、中央の層L2がイリジウム又はイリジウム合金から成る。白金の含有率は、中央の層L2より両端側の層L1,L3が大きく、イリジウムの含有率は、中央の層L2より両端側の層L1,L3が小さい。両端側の層L1,L3のそれぞれでは、白金の含有率は、イリジウムの含有率より大きい。本実施形態では、両端側の層L1,L3は、その厚みとその成分とその比率が相互に同一であるが、これに限定されるものではない。
【0035】
周壁41の内側の層L1は、溶融ガラスgに接触する一方、周壁41の外側の層L3は、溶融ガラスgに接触していない。
【0036】
両端側の層L1,L3に白金合金が使用される場合には、白金合金は、イリジウム、ロジウム、金、パラジウム、ルテニウムの少なくとも1種を含む合金であることが好ましい。一方、中央の層L2にイリジウム合金が使用される場合には、イリジウム合金は、白金、ロジウム、金、パラジウム、ルテニウムの少なくとも1種を含む合金であることが好ましい。
【0037】
3層L1〜3の各層の厚みは10〜1000μm、特に100〜500μmが好適である。この厚みが10μmより少ないと、その層の化学的、物理的特性が十分に発揮されない可能性があり、1000μmを超えると製造コストが高騰する可能性がある。両端側の層L1,L3は、それらの厚みの差が、0〜500μm、0〜300μm、0〜200μm、0〜100μm、特に0〜90μmであることが好適であり、0μmであることが最適である。この差が500μmを超えると、層L1と層L3の熱膨張率の差による影響が大きくなり、周壁41が熱によって変形する可能性が高くなる。すなわち、当該発明を実施すると経時と共に、層L1と層L3から層L2へ白金が、層L2から層L1及び層L3へイリジウムが境界面を介して相互に拡散する。このため層L1と層L3の厚みの差が大きいと、層L1と層L3の白金及びイリジウムの含有率の差が大きくなり、これにより層L1と層L3の熱膨張率が違ってしまう。従って、前述のように周壁41が変形する可能性が高くなることになる。
【0038】
以上のように構成された本発明の実施形態に係るガラス物品製造装置1では、以下の効果が享受できる。
【0039】
分岐流路4を管状体で構成し、その周壁41の両端側の層L1,L3の厚みとその成分比率を相互に同一にすれば、両端側の層L1,L3のそれぞれでの熱膨張係数が相互に同一となる。従って、周壁41の内面側と外面側との熱膨張差に起因して周壁41に不当な変形が生じることを抑制できる。これにより、この周壁41が、溶融ガラスの熱によって変形することに起因して破損するという不都合を回避して、周壁41の耐久性を向上させることが可能となり、溶融ガラスの円滑な流通を確保することができる。
【0040】
また、金属製部材におけるイリジウムの含有率は、中央の層L2より両端側の層L1,L3が小さいので、金属製部材の表裏面から、イリジウムが揮発することによって金属製部材が損耗することを抑制できる。このことからも、周壁41の耐久性を向上させることができる。
【0041】
上記の実施形態では、周壁41を構成する金属製部材は、3層構造であるが、必ずしも、層構造を有していなくてもよい。すなわち、図3に例示するように、イリジウムや白金の含有率が周壁41の厚さ方向で中央から両端に向かって徐々に変化するように構成されていてもよい。この場合でも、両端のそれぞれでは、白金の含有率がイリジウムの含有率より大きい。また、図3に例示するように、イリジウム、白金の含有率は、最大で100%になる必要は無く、また、最小で0%になる必要もない。図3では、イリジウムの含有率が最大(白金の含有率が最小)になる位置が厚さ方向の中央であるが、これに限定されず、両端近傍でなければよい。また、図3では、両端側を比較すると、イリジウム、白金の含有率が同じであるが、異なっていてもよい。
【0042】
イリジウムの含有率は、両端では10%以下が好ましく、中央では30%以上が好ましい。イリジウムの含有率が、両端で10%を超えると、使用中に、イリジウムが酸化して揮発する可能性が高くなる。イリジウムの含有率が、中央で30%未満になると、イリジウムの化学的、物理的に有利な特性が十分に享受できなくなる可能性がある。
【0043】
白金の含有率は、両端では70%以上が好ましく、中央では70%以下が好ましい。白金の含有率が、両端で70%未満になると、白金の化学的、物理的に有利な特性が十分に享受できなくなる可能性がある。白金の含有率が、中央で70%を超えると、中央でのイリジウムの含有率が小さくなり、イリジウムの化学的、物理的に有利な特性が十分に享受できなくなる可能性がある。
【0044】
本発明のガラス物品製造装置は、無アルカリガラス(特に、ガラス組成として質量%で、SiO2 50〜70%、Al23 10〜25%、B23 3〜20%、MgO 0〜10%、CaO 3〜15%、BaO 0〜10%、SrO 0〜10%含有する無アルカリガラス)からなるガラス板の製造装置として好適である。この無アルカリガラスは、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のガラス基板として好適であり、また、高温で製造する必要性が高く、しかも高品位が要求される。このため、本発明のガラス物品製造装置を用いる必要性が高く、それによる効果が相対的に高くなる。なお、「無アルカリガラス」とは、ガラス組成中のアルカリ金属酸化物の含有量が1000ppm未満のガラスを指す。
【実施例1】
【0045】
本発明者は、本発明の実施例に係るガラス物品製造装置と、比較例としてのガラス物品製造装置の評価を行なった。本実施例の構成は、上記実施形態と同様であり、分岐流路4の周壁41が3層L1〜L3から成る金属製部材で構成されており、周壁41の内側の層L1は、溶融ガラスg(例えば、日本電気硝子株式会社製OA−10G)に接触し、周壁41の外側の層L3は、被覆されておらず、大気に接している。層L1に接触する溶融ガラスgは、1400〜1750℃である。比較例は、周壁41の構造が異なるだけで、その他の構成は実施例と同様である。
【0046】
評価は、60日使用後の装置(周壁41の周辺)について、変形の有無、イリジウムの揮発による損耗の有無を調べ、その程度も含めて総合評価した。実施例と比較例の条件と、その調査結果と総合評価を表1と表2に示す。なお、表1,2の総合評価で、符号○は良好、符号△はやや良好、符号×は不良を意味している。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
実施例1〜6では、両端側の層L1,L3の厚さと成分が相互に同一である。実施例1,2では両端側の層L1,L3の成分が白金で、中央の層L2の成分がイリジウムである。実施例3,4では、両端側の層L1,L3の成分が白金とイリジウムの合金である。実施例5,6では、両端側の層L1,L3の成分にロジウムが含まれている。実施例7,8では、両端側の層L1,L3の厚さが相互に異なる。
【0050】
比較例1では、イリジウムの含有率が、両端側の層L1,L3より中央層L2の方が小さく、白金の含有率が、両端側の層L1,L3より中央層L2の方が大きい。両端側の層L1,L3のそれぞれで、イリジウムの含有率よりも白金の含有率の方が小さい。比較例2,3では、3層ではなく、2層で周壁41が構成されている。
【0051】
実施例1〜6では、変形や揮発による損耗が見られず、良好な結果となっていることが把握できる。また、実施例7,8では、変形が少し見られるものの短期的に見れば問題となるレベルではない。これらの実施例に比較して、比較例1では、揮発による損耗が見られ、比較例2では、変形が見られ、比較例3では変形と揮発による損耗の両方が見られ、不良となっていることが分かる。
【0052】
上記実施形態では、周壁41は、3層L1〜L3から成る金属製部材だけで構成されているが、この3層L1〜L3から成る金属製部材を例えばジルコン耐火物等の煉瓦の内側に配設することによって周壁41を構成してもよい。この場合、金属製部材は、壁部41の少なくとも溶融ガラスと接触する内面側部位を形成する板状体であればよい。また、周壁41以外の溶融窯2や供給用流路7の壁部に、本発明を適用してもよいのは勿論のことである。
【0053】
また、上記実施形態では、分岐流路4は、管状体で構成されており、周壁41を有するものであるが、これに限定されるものではない。例えば、分岐流路4は、底壁、側壁、及びその上方全域を覆うアーチ形の天井壁を有するものであってもよいし、上方領域が開放されたものであってもよい。
【0054】
本発明は以上の説明に限定されることなく、その技術的思想の範囲内であれば、様々な変形が可能である。例えば、本発明を清澄槽や攪拌槽に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 ガラス物品製造装置
2 溶融窯
3 分配部
4 分岐流路
41 周壁(壁部)
5 成形部
6 流出路
7 供給用流路
g 溶融ガラス
L1〜L3 層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスの供給源となる溶融窯と、該溶融窯から流出した溶融ガラスを下流側に向かって供給する供給用流路と、該供給用流路の下流端に通じる成形部とを備えたガラス物品製造装置において、
前記溶融窯と前記供給用流路とにおける上下流方向の少なくとも一部を形成する壁部または該壁部の内面側部位が、白金とイリジウムとを含む金属製部材で構成されると共に、
前記金属製部材は、その厚さ方向の中央部よりも両端部の方が、白金の含有率が大きく且つイリジウムの含有率が小さく、その厚さ方向の両端部のそれぞれで、イリジウムの含有率よりも白金の含有率の方が大きいことを特徴とするガラス物品製造装置。
【請求項2】
前記金属製部材は、その厚さ方向に積層する3層構造とされると共に、その両端側のそれぞれの層が白金又は白金合金から成り、その中央の層がイリジウム又はイリジウム合金から成ることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品製造装置。
【請求項3】
前記両端側のそれぞれの層における厚みの差が、0〜500μmであることを特徴とする請求項2に記載のガラス物品製造装置。
【請求項4】
前記両端側のそれぞれの層は、成分とその比率が相互に同一であることを特徴とする請求項3に記載のガラス物品製造装置。
【請求項5】
前記白金合金が、イリジウム、ロジウム、金、パラジウム、ルテニウムの少なくとも1種を含む合金であり、
前記イリジウム合金が、白金、ロジウム、金、パラジウム、ルテニウムの少なくとも1種を含む合金であることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載のガラス物品製造装置。
【請求項6】
前記金属製部材は、前記壁部を形成する管状体であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のガラス物品製造装置。
【請求項7】
前記金属製部材は、前記壁部の少なくとも溶融ガラスと接触する内面側部位を形成する板状体であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のガラス物品製造装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載のガラス物品製造装置を用いて、ガラス物品を製造することを特徴とするガラス物品製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−180243(P2012−180243A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45137(P2011−45137)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】