説明

ガラス窓の断熱、結露防止構造

【課題】樹脂パネルの温度変化による膨縮変形に対応することができると共に、樹脂パネルのセットや取り外しを簡単に行うことができ、更には長期間安定して設置状態を維持することができる。
【解決手段】パッキング3と板ガラス4との間に差込部8aを差し込んでクリップ8を窓枠2の内周の上下、左右に設置する。板ガラス4の室内側に内部スペーサー6と外部スペーサー7とを介して取着する樹脂パネル5は、少なくともその左右と下の周縁部を、その端面とクリップ8におけるL字形の受け部8bの内底面8b′との間に、該樹脂パネル5の温度変化による膨縮変形に対応することができる間隔Lをとって嵌入する。樹脂パネル5の周縁に沿って配設する帯状の外部スペーサー7は、弾力性を有するものとする。クリップ8も含めて樹脂パネル5の周縁の全周にわたって封止兼用化粧テープ9を被着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新設或いは既存のガラス窓を断熱して結露を防止する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新設或いは既存のガラス窓を断熱して結露を防止する構造として、従来種々の提案がなされており、そしてそれらの殆どは、例えば特許文献1に示された如き構造である。
【0003】
該特許文献1に示された構造は、図7に示す通りであり、該図7において100は既存のガラス窓、101は窓枠、102は該窓枠101にパッキング103を介して嵌め付けた板ガラスである。そして、該ガラス窓100の板ガラス102の室内側に、窓枠101の内周に沿って配設した所定の厚味を有する帯状のスペーサー104及び板ガラス102の中央の適宜箇所にスポット的に配設した所定の厚味を有するスペーサー105とを介して板ガラス102の全面を覆う透明又は半透明な樹脂パネル106を取着し、板ガラス102と樹脂パネル106との間に断熱空気層107を形成してなる構造である。尚、前記スペーサー104は両面粘着テープ(図示せず。)をもって接着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−76545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
斯かる構造によれば、板ガラス102と樹脂パネル106との間に断熱空気層107が形成されていることから、結露を防止することができる。しかしまた、斯かる従来構造においては、次の如き問題点もある。それは、樹脂パネル106の四周の周縁全てが不動状態に固定されていることから、室内の温度変化により樹脂パネル106が膨張したり収縮したりして変形したときに、これに対応することができないことである。また、スペーサー104は両面粘着テープ(図示せず。)をもって板ガラス102と樹脂パネル106に接着するものであるから、設置に相当な手間と時間を要し、また一度セットしてしまうと簡単に樹脂パネル106を外すことができないという問題点もある。そしてこの場合には、、断熱空気層107内にゴミや虫等が侵入したり、或いは板ガラス102と樹脂パネル106の両方又はいずれかが汚れたり、傷ついたりしたときに、容易にこれに対応することができないことになる。更にまた、スペーサー104を両面粘着テープをもって接着する場合には、太陽光や温度による影響で粘着力が弱まり、樹脂パネル107が剥離する虞れがある。特に夏期の高温になる南や西側の窓に設置した場合において顕著である。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、樹脂パネルが温度変化により膨張したり、収縮したりして変形したとしても、これに対応することができ、また設置も簡単、迅速に行うことができると共に、一度セットした後でも容易に樹脂パネルを外すことができ、加えて太陽光や温度による影響を受けず、長期間安定して設置状態を維持することができるようになしたガラス窓の断熱、結露防止構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
而して、本発明の要旨とするところは、ガラス窓の板ガラスの室内側及び/又は室外側に、所定の厚味を有するスペーサーを介して板ガラスの全面を覆う透明又は半透明な樹脂パネルを取着すると共に該樹脂パネルの周囲を封止し、板ガラスと樹脂パネルとの間に断熱空気層を形成してなるガラス窓の断熱、結露防止構造において、前記スペーサーを、樹脂パネルの中央の適宜の箇所にスポット的に配設する内部スペーサーと、樹脂パネルの周縁に沿って配設する、スポンジ、ゴム等からなる弾力性を有する帯状の外部スペーサーとをもって構成し、バネ材からなり、差込部の前端に、該差込部と反対側に向けてL字形の受け部を連成したクリップを、その差込部を板ガラスの周縁を密封するパッキングと板ガラスとの間に差し込むことによって窓枠内周の上下、左右の適宜の位置に設置し、少なくとも前記樹脂パネルの左右と下の各周縁部を、その端面と該クリップにおけるL字形の受け部の内底面との間に、該樹脂パネルの温度変化による膨縮変形に対応することができる間隔をとって嵌入し、更に前記樹脂パネルの周縁の全周にわたって封止兼用化粧テープを被着してなることを特徴とするガラス窓の断熱、結露防止構造にある。
【0008】
また、上記構成において、内部スペーサーを、両面に粘着テープ又は吸盤により接着力を持たせた内部スペーサーとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記の如き構成であり、樹脂パネルは、少なくともその左右と下の周縁部を、その端面とクリップにおけるL字形の受け部の内底面との間に、該樹脂パネルの温度変化による膨縮変形に対応することができる間隔をとって嵌入してあると共に、樹脂パネルの周縁に沿って配設する帯状の外部スペーサーは、スポンジ、ゴム等からなる弾力性を有するものであるから、樹脂パネルが温度変化により膨張したり、収縮したりして変形したとしても、これに対応することができるものである。また、樹脂パネルの保持は、板ガラスの周縁を密封するパッキングと板ガラスとの間に差込部を差し込んでセットするクリップをもって行うものであるから、樹脂パネルの設置も従来の両面粘着テープによって行う場合に比してはるかに簡単、迅速に行うことができるものである。また、同様に一度セットした後でも容易に樹脂パネルを外すことができるものである。加えてバネ材からなるクリップをもって樹脂パネルを板ガラスの内面に保持するものであるから、従来の両面粘着テープを用いる場合の如き太陽光や温度による影響を受けず、長期間安定して設置状態を維持することができるものである。
【0010】
また、内部スペーサーが、両面に粘着テープ又は吸盤により接着力を持たせた内部スペーサーである場合には、樹脂パネルの温度変化による反りを抑制することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るガラス窓の断熱、結露防止構造の封止兼用化粧テープ被着前の室内側から看た状態図である。
【図2】部分拡大断面図である。
【図3】内部スペーサーの斜視図である。
【図4】内部スペーサーの他の例の斜視図である。
【図5】クリップの斜視図である。
【図6】クリップの側面図である。
【図7】従来構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図中、1は既存のガラス窓である。また、該ガラス窓1は、アルミサッシの窓枠2にパッキング3を介して板ガラス4を嵌め付けてなるものである。
【0014】
5は前記ガラス窓1における板ガラス4の室内側に、後記スペーサーを介して取着した透明又は半透明な樹脂パネルである。そして、該樹脂パネル5は前記板ガラス4の室内側の全面を覆い、該板ガラス4との間に断熱空気層Sを形成するものである。尚、該樹脂パネル5は、本実施形態においてはアクリル板を用いている。 また、断熱空気層Sは厚いほど効果があり、出来る限り厚くすることが望ましい。
【0015】
6は前記板ガラス4と前記樹脂パネル5との間に介在させる内部スペーサーであり、図3に示す本実施形態においては、透明又は半透明な弾力性を有する樹脂からなり、所定の厚味(本実施形態では3mm)を有すると共に円板状に成形している。また、その両面には粘着テープ6Aを貼着して接着力を持たせている。そして、該内部スペーサー6は、前記樹脂パネル5の中央の適宜の箇所に略30cm間隔でスポット的に配設する。尚、該内部スペーサー6の配し方は、前記板ガラス4と樹脂パネル5の大きさに応じて決定するものであり、図示した例においては中央部に縦に並べて3個配設した場合を示しているが、これに限られるものではなく、適宜に決定される。また、該内部スペーサーとしては、図4に示す如く、円柱状本体6aの両面に吸盤6b、6bを設けることにより接着力を持たせたものとしてもよい。
【0016】
7は前記板ガラス4と前記樹脂パネル5との間に介在させた、樹脂パネル5の周縁に沿って配設する帯状の外部スペーサーである。また、該外部スペーサー7は、スポンジ、ゴム等からなる弾力性を有するものである。また、その厚味は、前記内部スペーサー6と同じである。
【0017】
8は、前記窓枠2の内周の上下、左右の適宜の位置に設置したクリップである。また、該クリップ8は、ステンレスのバネ材からなり、差込部8aの前端に、該差込部8aと反対側に向けてL字形の受け部8bを連成してなるものであり、差込部8aを前記板ガラス4の周縁を密封するパッキング3と板ガラス4との間に差し込むことによって設置するものである。また、前記樹脂パネル5をL字形の受け部8b内に嵌入し、或いは取外すときには、バネ材からなるクリップ8の弾力性と樹脂パネル5の弾力性を利用し、ヘラ状の工具によってこれらを反らせて行うものである。
【0018】
そして、前記クリップ8と前記樹脂パネル5とは、樹脂パネル5の少なくともその左右と下の各周縁部を、その端面とクリップ8におけるL字形の受け部8bの内底面8b′との間に、該樹脂パネル5の温度変化による膨縮変形に対応することができる間隔Lをとって嵌入するものである。
【0019】
9はクリップ8も含めて前記樹脂パネル5の周縁の全周にわたって被着した封止兼用化粧テープである。また、該封止兼用化粧テープ9は、窓枠2と同色のものが好ましく、また裏面に塗布した熱融着剤を用い、或いは熱を要しない強力な接着剤を用いて被着する。
【0020】
次に、本実施形態の作用について説明する。
樹脂パネル5は、少なくともその左右と下の周縁部を、その端面とクリップ8におけるL字形の受け部8bの内底面8b′との間に、該樹脂パネル5の温度変化による膨縮変形に対応することができる間隔Lをとって嵌入してあると共に、樹脂パネル5の周縁に沿って配設する帯状の外部スペーサー7は、スポンジ、ゴム等からなる弾力性を有するものであるから、樹脂パネル5が温度変化により膨張したり収縮したりして変形したとしても、これに対応することができるものである。また、樹脂パネル5の保持は、板ガラス4の周縁を密封するパッキング3と板ガラス4との間に差し込んでセットするクリップ8をもって行うものであるから、樹脂パネル5の設置も従来の両面粘着テープによって行う場合に比してはるかに簡単、迅速に行うことができるものである。また、同様に一度セットした後でも容易に樹脂パネル5を取外すことができるものである。加えて、バネ材からなるクリップ8をもって樹脂パネル5を板ガラス4の内面に保持するものであるから、従来の両面粘着テープを用いる場合の如き太陽光や温度による影響も受けず、長期間安定して設置状態を維持することができるものである。また、内部スペーサー6が、両面に粘着テープ又は吸盤により接着力を持たせたものであるから、樹脂パネル5の温度変化による反りを抑制することができるものである。更に、板ガラス4が地震や衝撃で割れた場合に、これの室内への飛散を防止することができると共に、窓から侵入し難くなって、防犯上の効果も期待することができるものである。
【0021】
また、上記本実施形態は、樹脂パネル5を、ガラス窓1における板ガラス4の室内側に取着した場合であるが、これに限らず、図示はしないが、樹脂パネル5を、板ガラス4の室外側に取着するようにしてもよく、更には板ガラス4の室内側と室外側の両方に取着するようにしてもよい。これらは寒冷地や窓枠の状況に応じて適宜に選択すればよい。尚、具体的な構造は上記本実施形態と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0022】
1 既存のガラス窓
2 窓枠
3 パッキング
4 板ガラス
5 樹脂パネル
6 内部スペーサー
6A 粘着テープ
7 外部スペーサー
8 クリップ
8a クリップの差込部
8b クリップのL字形の受け部
9 封止兼用化粧テープ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス窓の板ガラスの室内側及び/又は室外側に、所定の厚味を有するスペーサーを介して板ガラスの全面を覆う透明又は半透明な樹脂パネルを取着すると共に該樹脂パネルの周囲を封止し、板ガラスと樹脂パネルとの間に断熱空気層を形成してなるガラス窓の断熱、結露防止構造において、前記スペーサーを、樹脂パネルの中央の適宜の箇所にスポット的に配設する内部スペーサーと、樹脂パネルの周縁に沿って配設する、スポンジ、ゴム等からなる弾力性を有する帯状の外部スペーサーとをもって構成し、バネ材からなり、差込部の前端に、該差込部と反対側に向けてL字形の受け部を連成したクリップを、その差込部を板ガラスの周縁を密封するパッキングと板ガラスとの間に差し込むことによって窓枠内周の上下、左右の適宜の位置に設置し、少なくとも前記樹脂パネルの左右と下の各周縁部を、その端面と該クリップにおけるL字形の受け部の内底面との間に、該樹脂パネルの温度変化による膨縮変形に対応することができる間隔をとって嵌入し、更に前記樹脂パネルの周縁の全周にわたって封止兼用化粧テープを被着してなることを特徴とするガラス窓の断熱、結露防止構造。
【請求項2】
内部スペーサーが、両面に粘着テープ又は吸盤により接着力を持たせた内部スペーサーである請求項1記載のガラス窓の断熱、結露防止構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−252328(P2011−252328A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127572(P2010−127572)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(300018253)株式会社ミナミヒーティングプラン (5)
【Fターム(参考)】